JP6544187B2 - 積層体、およびディスプレイ用前面板 - Google Patents

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Description

本発明は表面硬度、耐衝撃性、耐熱性および層間密着性に優れる積層体、ならびに該積層体を備えるディスプレイ用前面板に関する。
従来、電子機器のディスプレイ用カバー材等の分野では、硬度、耐熱性、透明性の観点から、広くガラスが用いられてきた。しかしながら、ガラスは衝撃により割れ易く、また重量が重いことから樹脂材料での代替が検討されている。
ポリカーボネート樹脂板は、透明性を有し、耐衝撃性や耐熱性に優れるため、防音隔壁やカーポート、看板、グレージング材、照明用器具などに利用されているが、表面硬度が低いために傷がつきやすいという欠点があり、用途が制限されていた。
そこで、かかる欠点を改良したカバー材として、例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂とを共押出した積層体のアクリル樹脂層上にハードコート処理を施した樹脂積層体が開示されている。特許文献1に記載の樹脂積層体によれば、比較的良好な表面硬度と耐衝撃性を発現することが可能であった。しかしながら、アクリル樹脂は表面硬度に優れるものの耐衝撃性に劣るため、特に薄型化、軽量化の観点から樹脂積層体の総厚みを薄くした場合には、アクリル樹脂の特性が顕著になり、耐衝撃性が低下するという問題があった。
そこで、近年、アクリル樹脂を利用せず、組成を調整したポリカーボネート樹脂層を複数積層した積層体により、表面硬度と耐衝撃性とを兼備させる検討がなされている。例えば、特許文献2には、構造の一部に〔−CH−O−〕で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂層(A層)と、芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)とを積層することを特徴とする積層体が提案されている。
特許文献2に開示されている積層体によれば、優れた表面硬度と耐衝撃性とを兼備させることが可能であった。
特開2006−103169号公報 特開2011−201304号公報
しかしながら、特許文献2に記載の積層体では、ポリカーボネート樹脂層(A層)と芳香族ポリカーボネート樹脂層(B層)との層間密着性が不十分となる場合があった。
そこで、本発明は、優れた表面硬度と耐衝撃性とを兼備し、且つ、優れた層間密着性と耐熱性とも兼備する積層体、および、該積層体を備えるディスプレイ用前面板を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のポリカーボネート樹脂からなる層と、芳香族ポリカーボネート樹脂からなる層と、を有する積層体が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の態様は、構造の一部に下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含み、ガラス転移温度が110℃以上であるポリカーボネート樹脂(A)からなるA層と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)からなるB層と、を有し、上記A層と上記B層との剥離強度が3.0N/10mm巾以上であることを特徴とする積層体である。
Figure 0006544187
本発明の第1の態様において、上記ポリカーボネート樹脂(A)が、さらに、下記式(2)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位(b)を含むことが好ましい。
Figure 0006544187
本発明の第1の態様において、上記ポリカーボネート樹脂(A)が、上記トリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位(b)を10〜50モル%の割合で含むことが好ましい。
本発明の第1の態様において、上記A層の厚みが1〜200μmであることが好ましい。
本発明の第1の態様に係る積層体は、総厚みが10〜3000μmであることが好ましい。
本発明の第1の態様に係る積層体は、少なくとも一方の面にハードコート層を有していてもよい。
本発明の第2の態様は、上記本発明の第1の態様に係る積層体を備えるディスプレイ用前面板である。
本発明によれば、優れた表面硬度と耐衝撃性とを兼備し、且つ、優れた層間密着性と耐熱性とも兼備する積層体、および、該積層体を備えるディスプレイ用前面板を提供することができる。
以下、本発明の実施形態の一例としての積層体(「本積層体」と称することがある。)について説明する。但し、本発明が、本積層体に限定されるものではない。
本積層体は、構造の一部に下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含み、ガラス転移温度が110℃以上であるポリカーボネート樹脂(A)からなるA層と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)からなるB層と、を有し、上記A層と上記B層との剥離強度が3.0N/10mm巾以上であることを特徴とする。
Figure 0006544187
<A層>
A層は、構造の一部に下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含み、ガラス転移温度が110℃以上であるポリカーボネート樹脂(A)からなる。A層は、本積層体に高い表面硬度を付与するともに、耐衝撃性、打ち抜き加工性、および、耐熱性を付与する層である。
Figure 0006544187
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニドおよびイソイデットが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、生物起源物質を原料として糖質から製造可能なエーテルジオールである。とりわけイソソルビドは、澱粉から得られるD−グルコースを水添してから脱水することにより安価に製造可能であって、資源として豊富に入手することが可能である。これら事情により、イソソルビドが最も好ましい。
上記A層に用いるポリカーボネート樹脂(A)の、構造の一部に上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)の含有割合としては、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、また、90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましい。
上記含有割合を上記範囲とすることで、該ポリカーボネート樹脂の硬度は芳香族ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂との中間の値を取るようになり、表層にアクリル樹脂層が配置されたディスプレイ用前面板よりも打ち抜き加工性が飛躍的に向上する。
具体的には、上記含有割合が90モル%以下であることによって、表面硬度や耐熱性が優れ、かつ耐衝撃性および層間密着性の低下を抑止できるため、打ち抜き加工時の歩留まりの低下およびディスプレイ用前面板としての製品を取扱う際の破損などの種々の不具合を防止できる。
一方、上記含有割合が50モル%以上であることによって、耐衝撃性や打ち抜き加工性が優れ、かつ表面硬度や耐熱性の低下を抑止できる。また、本積層体は、少なくとも一方の面にハードコート層を配置することでさらに十分な表面硬度を得ることが可能となり、ディスプレイ用前面板および透明建材のいずれの用途向けにも好適となる。
上記ポリカーボネート樹脂(A)に優れた層間密着性と耐熱性とを兼備させるために、ポリカーボネート樹脂(A)は、上記構造単位(a)以外の構造単位として、下記式(2)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位(b)を含むことが好ましい。
Figure 0006544187
ポリカーボネート樹脂(A)中に占める構造単位(b)の含有割合が10モル%以上、50モル%以下であることが好ましい。構造単位(b)の含有割合の下限としては、より好ましくは25モル%であり、さらに好ましくは30モル%である。一方、構造単位(b)の含有割合の上限としては、より好ましくは45モル%であり、さらに好ましくは40モル%である。構造単位(b)の含有割合をかかる範囲内とすることで、本積層体に優れた層間密着性と耐熱性とを兼備させることができる。
さらに、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上記構造単位(a)および上記構造単位(b)以外の構造単位を含んでいてもよい。上記構造単位(a)および上記構造単位(b)以外の構造単位としては、芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が好ましく用いられる。例えば、国際公開第2004/111106号パンフレットに記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位や、国際公開第2007/148604号パンフレットに記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。
上記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。
上記脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、5員環構造または6員環構造を含むものであることが好ましい。6員環構造は共有結合によって椅子形または舟形に固定されていてもよい。5員環構造または6員環構造である脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、得られるポリカーボネートの耐熱性を高くすることができる。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
上記5員環構造または6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、上述の国際公開第2007/148604号に記載のものを挙げることができる。中でも、シクロヘキサンジメタノール、アダマンタンジオールおよびペンタシクロペンタデカンジメタノールを好適に例示することができる。
上記A層に用いるポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定され、110℃以上であり、155℃以下であることが好ましく、120℃以上、155℃以下であることがより好ましく、130℃以上、155℃以下であることがさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度を上記下限値以上とすることにより、本積層体に搬送時、保管時、使用時などで想定される熱環境に十分耐え得る優れた耐熱性を付与することができる。一方、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度を上限値以下とすることにより、後述する芳香族ポリカーボネート樹脂(B)からなるB層との積層体を得る際に、加工温度を合わせることができる。尚、通常は単一のガラス転移温度を有することが好ましい。
上記ガラス転移温度は、上記構造単位(a)の含有割合、好ましい形態において含まれる上記構造単位(b)の含有割合、ならびに/または、所望により含んでいてもよい脂肪族ジヒドロキシ化合物および/もしくは脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の種類や含有割合を適宜選択することで調整が可能である。
一般的に、上記構造単位(a)の含有量が多ければ多いほどポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は高くなる傾向がある。所望のガラス転移温度を得るためには、上記構造単位(a)の含有量は50モル%以上であることが好ましく、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがさらに好ましい。
上記A層に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、一般に用いられる重合方法で製造することができ、ホスゲン法または炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法のいずれでもよい。なかでも、重合触媒の存在下に、構造の一部に上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、トリシクロデカンジメタノールと、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを反応させるエステル交換法が好ましい。
エステル交換法は、構造の一部に上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、トリシクロデカンジメタノールと、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加し、エステル交換反応を行う製造方法である。
炭酸ジエステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネートおよびジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
このようにして得られた本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度の下限は、0.20dl/g以上が好ましく、0.30dL/g以上がより好ましく、0.35dL/g以上が更に好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
なお、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、中央理化社製DT−504型自動粘度計にてウベローデ型粘度計を用い、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度が0.60g/dlになるように精密に調整した後に、温度20.0℃±0.1℃で、下記に基づき測定する。
溶媒の通過時間t0、溶液の通過時間tから、下記式:
ηrel=t/t0
より相対粘度ηrelを求め、 相対粘度ηrelから、下記式:
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
より比粘度ηspを求める。
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、下記式:
ηred=ηsp/c
より還元粘度(換算粘度)ηredを求める。
上記A層に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、近紫外〜可視光波長領域での光吸収が殆ど無いため、特段の紫外線吸収剤を配合しなくても経時的な黄変劣化が起こらない利点がある。しかしA層を透過した紫外線がB層で吸収されてB層が黄変劣化することを抑制するために、A層に必要最低限の紫外線吸収剤を配合することができる。
上記紫外線吸収剤としては、公知のもの、例えば各種市販のものを特に制限なく使用できる。中でも、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂への添加に通常用いられるものを好適に用いることができる。例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等のベンゾオキサジン系紫外線吸収剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、を挙げることができる。紫外線吸収剤の融点としては、特に120℃〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃以上の紫外線吸収剤を使用することにより、紫外線吸収剤が時間経過とともに成形品表面に凝集するブリードアウト現象により成形体表面が汚れたり、口金や金属ロールを用いて成形する場合には、ブリードアウトによりそれらが汚れたりすることを防止し、成形品表面の曇りを減少させ改善することが容易になる。
より具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を好ましく使用でき、これらの中でも、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル) −6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールが特に好ましい。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記紫外線吸収剤の添加量は、A層で用いるポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.0001重量部以上、1重量部以下の割合で添加することが好ましく、0.0005重量部以上、0.5重量部以下の割合で添加することがより好ましく、0.001重量部以上、0.2重量部以下の割合で添加することがさらに好ましい。かかる範囲で紫外線吸収剤を添加することにより、A層表面への紫外線吸収剤のブリードやA層の機械特性低下を生じることなく、本積層体の耐候性を向上することができる。
商業的に入手可能な紫外線吸収剤の一例としては、BASF社製の商品名「チヌビン1577FF」を挙げることができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて屋外用途を想定した透明建材を製造する際に、通常は紫外線吸収剤の配合量を低減させる目的で、高濃度の紫外線吸収剤を配合した極薄い芳香族ポリカーボネート樹脂表層と、低濃度の紫外線吸収剤を配合または全く含まない芳香族ポリカーボネート樹脂基材層とを積層する積層板を用いる。
しかしながら、本積層体はA層を日射が当たる方の表層面または両表層面に配置されるように使用すれば、そこに添加すべき紫外線吸収剤の配合量を大幅に低減させることができる。
本発明におけるA層は、任意の添加成分として、透明着色剤、ブルーイング剤、酸化防止剤および熱安定剤などを、本発明の本質を損なわない範囲で含有してもよい。
本発明におけるA層はその共重合成分を調整することにより高表面硬度のものから、比較的低表面硬度だが耐衝撃性に優れるものまで製造することができる。また組成や配合比の異なる複数種の層を積層して、これをA層としてもよい。
本積層体におけるA層の厚みは1μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましい。A層の厚みが1μm以上であることにより、積層体の表面硬度をも向上させることが可能である。また、A層に各種添加剤を付与して、添加剤による機能を発現させることができる。例えば、A層に紫外線吸収剤を配合した場合には、隣接するB層への紫外線透過を抑止できることができる。
また、A層の厚みの上限値は、特段の制限はないが、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。A層の厚みが200μm以下であることにより、表面硬度を維持しながら打ち抜き加工性や耐衝撃性を十分確保することができ、また積層体の薄肉軽量化を図ることもできる。
本発明におけるA層は単層で製造した後に、後述する芳香族ポリカーボネート樹脂(B)からなるB層と積層してもよいが、工程の簡略化および歩留まり向上などの観点から、上記B層と共押出しして製膜する方法で製造することが好ましい。
上記A層を単層で製造する場合の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、Tダイキャスト法およびカレンダー法などの公知の方法を用いることができる。
<B層>
B層は、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)からなる層であり、本積層体に耐衝撃性、打ち抜き加工性、および、耐熱性を付与する層である。B層に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、単独重合体または共重合体のいずれであってもよい。また、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、分岐構造であっても、直鎖構造であってもよいし、さらに分岐構造と直鎖構造との混合物であってもよい。
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の製造方法は、例えば、ホスゲン法、エステル交換法およびピリジン法などの公知のいずれの方法を用いてもかまわない。以下一例として、エステル交換法による芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の製造方法を説明する。
エステル交換法は、2価フェノールと炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加し、溶融エステル交換縮重合を行う製造方法である。
上記2価フェノールの代表例としては、ビスフェノール類が挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールAが好ましく用いられる。また、ビスフェノールAの一部または全部を他の2価フェノールで置き換えてもよい。
上記他の2価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォキシドおよびビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどの化合物、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのアルキル化ビスフェノール類、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのハロゲン化ビスフェノール類が挙げられる。
上記炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネートおよびジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
B層に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量(Mv)は、力学特性と成形加工性とのバランスから、通常、8,000以上、30,000以下であることが好ましく、10,000以上、25,000以下であることがより好ましい。
なお、粘度平均分子量(Mv)はウベローデ型粘度計を用い、ポリカーボネート樹脂試料の塩化メチレン溶液(濃度:0.6g/dl)を調製し、20℃におけるηspを測定し、以下の式(I)および(II)より求める。
ηsp/C=[η]×(1+0.28ηsp) (I)
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83 (II)
式(I)中、ηspはポリカーボネート樹脂試料の塩化メチレン中20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としては、ポリカーボネート樹脂試料の濃度が0.6g/dlの溶液を使用する。
また、上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の還元粘度は、A層に用いるポリカーボネート樹脂(A)と同様に測定され、通常、0.23dl/g以上0.72dl/g以下であることが好ましく、0.27dl/g以上0.61dl/g以下であることがより好ましい。
また、本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とは、2価フェノールに由来する構造単位中、50モル%以上(好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上)が一つ以上の芳香環を有するものをいい、上記芳香環は置換基を有していてもよい。
また、上記A層に用いるポリカーボネート樹脂(A)、およびB層に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の内、複数に該当するものについては、上記A層に用いるポリカーボネート樹脂に含むものとする。さらに、本発明においては、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)を1種のみを単独、または2種以上を混合して使用してもよい。
B層に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)のガラス転移温度は、通常150℃付近であり、耐熱性に優れる。A層を構成するポリカーボネート樹脂(A)の加工温度とB層を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の加工温度とが離れており、B層を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の加工温度を低下させる必要がある場合、上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、上記例示した樹脂に溶融混練しても可視光透過性を維持するようなガラス転移温度が低い樹脂を混合してもよい。
例えば、SK・ケミカル社の「スカイグリーンJ2003」、およびイーストマン・ケミカル社の「イースター・コポリマー6763」などを挙げることができる。通常これら成分はB層を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂(B)全体のうち、0重量%以上、30重量%以下の範囲で配合することが好ましい。
なお、ここで言う可視光透過性とは、積層体が無色透明と目視観察されることである。
B層に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)には、一般に用いられる各種の添加剤を本発明の本質を損なわない範囲で添加してもよく、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、難燃剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤および染顔料などが挙げられる。
<本積層体の製造方法>
A層とB層とを積層する本積層体の製造方法は特に制限されるものではないが、より好適な方法は前述の通り両者を共押出しして製膜する方法である。具体的に説明すると、B層を構成する樹脂を供給する主押出機と、A層を構成する樹脂を供給する副押出機とを備える。
主押出機の温度設定は通常220℃以上、300℃以下であることが好ましく、220℃以上、280℃以下であることがより好ましい。また、副押出機は通常220℃以上、260℃以下であることが好ましく、220℃以上、250℃以下であることがより好ましい。
共押出しする方法としては、例えば、マルチマニホールド方式およびフィードブロック方式などの公知の方法を用いることができる。ダイ温度は通常220℃以上、260℃以下であることが好ましく、230℃以上、260℃以下であることがより好ましい。キャストロールは通常100℃以上、190℃以下であることが好ましく、100℃以上、170℃以下であることがより好ましい。ロール配置は縦型または横型のいずれでも構わない。
本積層体は、A層とB層とを各々少なくとも一層以上積層してあれば、その構成は特に制限されるものではない。例えば、B層の両面にA層を積層し、A/B/A型2種3層の積層体としてもよい。この場合も両者を共押出しして製膜する方法で製造することが好ましい。該2種3層の積層体は両面のA層厚みを揃えて中心対称構造にすると、環境反りや捻れのおそれを低減させることができるので好適である。
<ハードコート処理とその方法>
本積層体は、上記A層が従来の芳香族ポリカーボネート樹脂より表面硬度が高いため、透明建材、電気電子機器の小型表示窓など特段の表面硬度が要求されない用途の場合、そのまま各種用途に用いることができる。
また、本積層体は、頻繁に手が触れるため耐擦傷性が要求される用途、例えば、タッチパネル機能を有する携帯電話、カーナビゲーション、液晶ペンタブレット等のディスプレイ用前面板として用いる場合には、少なくとも前面側A層の表面にハードコート処理を施してなるハードコート層を有していてもよい。
ハードコート処理の方法は一般に熱硬化または紫外線硬化がある。熱硬化の場合はポリオルガノシロキサンや架橋型アクリルなどのハードコート剤が好適に用いられる。紫外線硬化の場合は1官能または多官能アクリレートモノマーまたはオリゴマーなどを複数組み合わせ、これに光重合開始剤を硬化触媒として添加したハードコート剤が好適に用いられる。
このようなハードコート剤にはポリカーボネート樹脂用として市販されているものがあり、硬度および取扱性などを考慮して適宜選択する。さらに必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、帯電防止剤および防曇剤などを適宜添加してもよい。
積層体が非対称積層構造だったり前面側のみハードコート処理を施したりした結果、積層体が反ったり捻れたりして平板状に製品内に組み込むことが困難になる場合、背面側にもハードコート処理をしてこれを抑制することができる。こうすることで、積層体を取扱う際に背面側に意図せず傷を付けるおそれが少なくなる利点も有る。背面側ハードコート処理は、前面側のものと同様に行うことが好ましい。
ハードコート処理を行う方法は、ディッピング、かけ流し、スプレー、ロールコータおよびフローコータなどの他、押出製膜後にインラインでハードコート剤を基材上に連続で塗工して硬化させる方法でもよい。
好ましくはインラインコート法であり、さらに好ましくは無溶媒系の紫外線硬化性ハードコート剤を用いたインラインコート法である。このように選択することで、工程の簡略化、溶媒を使用しないことによる環境負荷低減および溶媒揮発のためのエネルギーコスト低減などの効果が見込まれる。
本積層体におけるハードコート層の厚みは、下限としては硬化後で1μm以上とすることが好ましく、2μm以上とするのがより好ましい。このような下限値とすることで積層体の表面硬度を十分高めることができる。一方上限としては20μm以下とするのが好ましく、15μm以下とするのがより好ましい。このような上限値とすることで耐衝撃性および打ち抜き加工性などを低下させずに表面硬度を高めることができる。
<反射防止層、防汚層>
また、本積層体の前面側A層の表面には、本発明の本質を損なわない範囲で反射防止層または防汚層を設けることもできる。これらの層を設けることで、特に屋外で使用する画像表示装置のディスプレイ用前面板に本積層体を用いた場合に、画像の視認性をより一層向上させることができる。
反射防止層または防汚層は、各々の機能を持つ層をそれぞれ積層することによって設けてもよく、両方の機能を併せ持つ層を積層することによって設けても構わない。
上記反射防止層は、反射防止機能を高める層であると同時に、耐磨耗性、帯電防止機能および撥水性の機能を高める層である。反射防止層は、従来公知の材料、例えば、無機物質(光学用フィラー)、バインダー樹脂、添加剤および溶剤などを配合させた液をコーティングして設けることができる。
上記防汚層は防汚性を高める層であり、従来公知の材料、例えば、フッ素系シランカップリング剤などを用いることができる。
上記反射防止層、または上記防汚層の積層方法は、上記ハードコート層と同様の方法でコーティングによって設けることができる。また、これに限定されるものではなく、あらかじめフィルム、シートなどの形状のものを、必要であれば公知の接着剤を用いて積層して設けてもよい。さらに熱可塑性樹脂であれば、A層およびB層とともに共押出しして設けることもできる。
<印刷層>
本積層体には、さらに印刷層を設けることができる。印刷層は、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷およびスクリーン印刷などの公知の印刷の方法で設けられる。
印刷層の絵柄は、石目調、木目調、幾何学模様および抽象模様等任意である。部分印刷でも全面ベタ印刷でもよく、部分印刷層とベタ印刷層の両方が設けられていてもよい。
また、印刷層は本積層体におけるA層およびB層のいずれの表面に印刷して設けてもよい。印刷層は、積層体の最表面に上記のハードコート層、反射防止層または防汚層を設ける場合は、それらの層を設ける前の工程において印刷層を印刷して設けることが好ましい。さらに印刷層は、上記の反射防止層または防汚層として設けることもできる。
印刷層に用いられる印刷用インクに含有される顔料や溶剤は特に限定されること無く、一般的に利用されるものを適用することができる。特に、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を含むものは、印刷層を設けた場合においても、本積層体を層間剥離等の支障なく作製することが可能となることから好適である。
本積層体の総厚みは、10μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、250μm以上であることがさらに好ましく、また3000μm以下であることが好ましく、2000μm以下であることがより好ましく、1000μm以下であることがさらに好ましい。かかる範囲にあることで、現行使用されている芳香族ポリカーボネート樹脂シートの代替として容易に適用できる。
本積層体は層間密着性に優れた積層体であって、その指標である上記A層と上記B層との剥離強度は3.0N/10mm巾以上であることが重要であり、5.0N/10mm巾以上であることが好ましく、8.0N/10mm巾以上であることがより好ましい。A層とB層との剥離強度がかかる範囲にあることにより、ルーター加工、打ち抜き加工などの加工時、および高温高湿環境での使用時における層間の剥離を防止できる。
ここで、A層とB層との剥離強度とは、引っ張り試験機((株)インテスコ社製205X)を用いて、幅10mmに切り出したA層のみをチャックした後、引っ張り速度60mm/分の条件で180度方向にA層をB層から引き剥がした際に測定される剥離強度(N/10mm巾)を意味する。
剥離強度は、上記A層中の構造単位(a)の含有割合を適宜選択することで調整可能である。
所望の剥離強度を得るためには、上記A層中の構造単位(a)の含有割合は90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましい。一方、耐熱性および表面硬度も兼備するためには、上記A層中の構造単位(a)の含有割合は50モル%以上であることが好ましく、55モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることがさらに好ましい。
上記A層中には、優れた層間密着性と耐熱性とを兼備させるため、構造単位(a)のほか、上述した構造単位(b)を含むことがより好ましく、さらに脂肪族ジヒドロキシ化合物および/または脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましい。剥離強度は、構造単位(a)と構造単位(b)との含有割合を適宜選択することでも調節可能である。
また、剥離強度は、A層とB層との共押出シートの製造方法および加工条件によっても調整可能である。フィードブロック方式により製造する場合は、フィードブロックの設計や粘度差によってはA層とB層との層厚み比率を合わせるのが難しい場合があるものの、A層とB層との合流後のメルトライン長が長いため剥離強度を向上させるのに有利である。一方で、層厚み比率の調整を重視する場合は、マルチマニホールド方式を選択すると有利であり、必要に応じて適宜選択可能である。
また、ダイおよびフィードブロックの温度を樹脂原料が分解しない範囲において高温にすることによっても剥離強度を向上させることができる。ダイ温度およびフィードブロック温度は通常220℃以上、260℃以下であることが好ましく、230℃以上、260℃以下であることがより好ましい。
本積層体は表面硬度に優れた積層体であって、その指標である鉛筆硬度は、ハードコート層を有さない場合、荷重750gfでの試験において、F以上であることが好ましく、H以上であることがさらに好ましい。また、ハードコート層を有する場合、3H以上であることが好ましく、4H以上であることがさらに好ましい。鉛筆硬度がかかる範囲にあることで、耐擦傷性に優れ、ディスプレイ用前面板などの用途に好適な積層体を提供することができる。
例えば、上記A層の厚み、上記機能付与層の厚みまたは上記ポリカーボネート樹脂の組成を、本明細書に記載の好ましい範囲で調整することによって、鉛筆硬度をかかる範囲とすることができる。
本積層体は耐衝撃性に優れた積層体であって、その指標である破壊エネルギー(kgf・mm)は、200kgf・mm以上であることが好ましく、500kgf・mm以上であることがより好ましく、800kgf・mm以上であることがさらに好ましい。破壊エネルギーがかかる範囲にあることによって、例えばディスプレイ用前面板などの製造時における打ち抜き加工性に優れた積層体を提供することができる。
打ち抜き加工性は、後述するように打ち抜き試験片の加工断面が荒れたり、クラックが入ったりしていないかなどの点を目視により定性的に評価することができる。
例えば、上記A層の厚み、上記ポリカーボネート樹脂の組成または本積層体の総厚みを、本明細書に記載の好ましい範囲で調整することによって、破壊エネルギーをかかる範囲とすることができる。
また、本積層体は上記A層を構成するポリカーボネート樹脂(A)への少量の紫外線吸収剤の添加でも耐黄変劣化性に優れた積層体であって、その指標である色差は、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。色差がかかる範囲にあることによって、全光線透過率の低下やヘーズの上昇、さらには外観の悪化を抑制した積層体を提供することができる。
例えば、上記A層を構成するポリカーボネート樹脂(A)100重量%に対し、好ましくは1.0重量%以上であって最小限の紫外線吸収剤を添加したり、上記A層の厚みを本明細書に記載の好ましい範囲で調整したりすることによって、色差をかかる範囲とすることができる。
<本積層体の用途>
本積層体は、前述の製造方法によってフィルム、シートおよびプレートなどの形状に成形される。成形された本積層体は、透明性、表面硬度、耐衝撃性、打ち抜き加工性、耐熱性、層間密着性および耐黄変劣化性に優れる。
そのため、本積層体の用途は特に制限されるものではないが、例えば、建材、内装部品のほか、タッチパネル機能を有する携帯電話、カーナビゲーションまたは液晶ペンタブレット等ディスプレイ用前面板、樹脂被覆金属板用シート、成形(真空・圧空成形、熱プレス成形など)用シート、着色プレート、透明プレート、シュリンクフィルム、シュリンクラベル、シュリンクチューブ、自動車用メーターパネルの前面板等の自動車内装材、家電製品部材およびOA機器部材などに使用できる。
本積層体は、成形用シートとして用いて種々の二次加工を施すことができ、加熱成形することによって熱成形体とすることもできる。熱成形の方法としては特に限定されず、例えば、ブリスター成形、真空成形および圧空成形などの公知の成形方法を利用することができる。
一般に熱成形用材料として使用されている汎用の芳香族ポリカーボネート樹脂の場合には、表面硬度が低く傷が入りやすいという点や、ガラス転移温度が高いために成形が容易でないという問題点がある。また、印刷を設ける熱成形用途の場合には、耐溶剤性の悪さに起因する印刷インキによるクラックの発生が生じるなどの問題点がある。
一方、本発明のポリカーボネート樹脂を用いた積層体は、従来使用されてきた芳香族ポリカーボネート樹脂板よりもA層のガラス転移温度を低くすることができるため熱成形が容易であり、耐熱性と二次加工性とを兼ね備えたシートを得ることができる。
また、本積層体のA層は、構造内に通常芳香族環を有さないか、有している場合でもその存在比率が芳香族ポリカーボネート樹脂より低い。そのため、A層を前面側とすることにより、B層の芳香族環による紫外線吸収とそれに起因する樹脂劣化が生じにくいため耐候性に優れており、表面硬度や耐溶剤性の向上も期待できる。
したがって、本積層体は、特に、屋外で使用する場合に劣化を抑えることができ、例えば紫外線硬化型のハードコート層などの紫外線により硬化させる材料を表面に形成する際に紫外線の影響を低く抑えることができる。また、印刷を施し使用したりする熱成形用途に好適に使用することができる。
また、本積層体は熱成形が容易であるため深絞りが可能であり、例えば深絞り高さが必要とされる形状または特殊な形状の熱成形用途にも好適に使用することができる。
上記の熱成形体の用途も特に限定されないが、例えば、印刷適性、耐候性および耐熱性を必要とする用途としては、自動販売機内で使用される模擬缶(いわゆるダミー缶)およびバックライト付き広告表示板などが挙げられる。また、深絞り適性を必要とする用途としては、例えば、卵パックなどの食品用包装材および医薬品用のプレススルーパック(PTP)などが挙げられる。
また、上記の熱成形体にさらに溶融樹脂を射出成形して裏打ち層を形成することにより、意匠性に優れたインモールド成形体を製造することもできる。この場合、熱成形体の一方の面に印刷層を設け、当該印刷面側に射出成形することによって印刷層を保護することができる。
なお、一旦熱成形によって二次加工した後に溶融樹脂を射出成形する場合だけでなく、熱成形と射出成形とを金型内で同時に行ってもよく、シート状の積層体を用いて一段階でインモールド成形体を得ることもできる。当該インモールド成形体の用途としては、例えば、自動車内装材、家電製品部材およびOA機器部材などが挙げられる。
<用語の説明>
一般的に「フィルム」とは、長さおよび幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JIS K−6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
<測定および評価方法>
実施例および比較例における評価および測定は以下の方法で行った。
[耐熱性]
(ガラス転移温度)
実施例および比較例で使用した樹脂のガラス転移温度を、示差走査熱量計(Diamond DSC パーキンエルマージャパン製)を用いて、昇温速度:10℃/minで測定した。表裏層(第1層および第3層)に使用した樹脂についての測定結果を表1に示す。
[層間密着性]
(剥離強度)
実施例および比較例で得られた積層体について、引っ張り試験機((株)インテスコ社製205X)を用いて、幅10mmに切り出したA層のみをチャックした後、引っ張り速度60mm/分の条件で180度方向にA層をB層から引き剥がし、A層とB層の剥離強度(N/10mm巾)を測定した。結果を表1に示す。
(剥離容易性)
実施例および比較例で得られた積層体について、カッターナイフで(A層)に切り込みを入れた後、手でA層のみをつかみ積層体の面方向に引張った時に、A層が剥がれるかどうかを確認した。剥がれやすさは下記の基準で評価した。表1に、実施例および比較例の評価結果を示した。
○・・・ほとんど剥がすことができない。
△・・・部分的に剥がすことができる。
×・・・容易に全面剥がすことができる。
[耐衝撃性]
(破壊エネルギー)
実施例および比較例で得られた積層体について、ハイドロショット高速衝撃試験器(島津製作所社製「HTM−1型」)を用いて、縦方向100mm×横方向100mmの大きさに切り出したシートを試料とし、クランプで固定し、温度23℃でシート中央に直径が1/2インチの撃芯を落下速度3m/秒で落として衝撃を与え、試料が破壊するときの破壊エネルギー(kgf・mm)を測定した。破壊エネルギーが200kgf・mm以上のものを合格とした。結果を表1に示す。
[表面硬度]
(鉛筆硬度)
実施例および比較例で得られた積層体について、JIS K5400に基づき、サンプルの第1層の表面に対して、荷重750gfの条件にて試験を実施し硬度の判定を行った。結果を表1に示す。
<材料>
実施例で使用した樹脂は以下のとおりである。
(A−1)本発明におけるA層を構成する樹脂として、イソソルビドに由来する構造単位(a)とトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位(b)とのモル%が(70/30)であるポリカーボネート樹脂。
(ガラス転移温度=129℃、還元粘度:0.53dl/g)
(B)本発明におけるB層を構成する樹脂として、芳香族ポリカーボネート樹脂である、住化スタイロンポリカーボネート社製、「カリバー301−15」。
(ガラス転移温度=149℃)
一方、比較例においては、本発明におけるA層を構成する樹脂として、(A−1)の代わりに以下の樹脂(A−2)、および(A−3)を使用した。
(A−2)イソソルビドに由来する構造単位(a)と1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位(c)のモル%が(70/30)であるポリカーボネート樹脂。
(ガラス転移温度=120℃、還元粘度:0.56dl/g)
(A−3)イソソルビドに由来する構造単位(a)と1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位(c)とのモル%が(50/50)であるポリカーボネート樹脂。
(ガラス転移温度=100℃、還元粘度:0.57dl/g)
<積層体の製造>
(実施例1)
(A−1)をφ40mm単軸押出機を用いて樹脂温度230℃で溶融混練し、230℃に設定した2種3層のマルチマニホールド式の口金より第1層、第3層として押出した。また、同時に(B)をφ65mm単軸押出機を用いて樹脂温度270℃で溶融混練し、同様の口金より第2層として押出した。次いで、この共押出シートを約120℃のキャスティングロールにて冷却し、実施例1に係る積層体を得た。この時それぞれの層の厚みは、第1層/第2層/第3層が0.07/0.56/0.07(mm)となるよう溶融樹脂の吐出量を調整した。
(比較例1)
実施例1において、(A−1)の代わりに(A−2)を用い、口金の設定温度を210℃とした以外は同様にして、比較例1に係る積層体を得た。
(比較例2)
実施例1において、(A−1)の代わりに(A−2)を用いた以外は同様にして、比較例2に係る積層体を得た。
(比較例3)
実施例1において、(A−1)の代わりに(A−3)を用い、口金の設定温度を210℃、キャスティングロールの温度を90℃とした以外は同様にして、比較例3に係る積層体を得た。
Figure 0006544187
表1より、本発明の積層体は層間密着性に優れていた。一方、比較例1に係る積層体は層間密着性に劣っていた。比較例2に係る積層体は、比較例1に係る積層体と比較するとやや層間密着性が改善されるものの、性能は不十分であった。比較例3に係る積層体は、層間密着性には優れるものの、表面硬度および耐熱性が実用上十分ではなかった。よって、本発明の積層体は、優れた表面硬度と耐衝撃性とを兼ね備え、且つ、優れた耐熱性と層間密着性とも兼ね備えていることが確認された。

Claims (5)

  1. 構造の一部に下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含み、ガラス転移温度が110℃以上であるポリカーボネート樹脂(A)からなるA層と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)からなるB層と、を有し、
    前記ポリカーボネート樹脂(A)が、さらに、下記式(2)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位(b)を10〜50モル%の割合で含み、
    前記A層と前記B層との剥離強度が3.0N/10mm巾以上であることを特徴とする積層体。
    Figure 0006544187

    Figure 0006544187
  2. 前記A層の厚みが1〜200μmである、請求項1に記載の積層体。
  3. 総厚みが10〜3000μmである、請求項1または2に記載の積層体。
  4. 少なくとも一方の面にハードコート層を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 請求項1からのいずれか1項に記載の積層体を備えるディスプレイ用前面板。
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