JP6836896B2 - 透明樹脂積層体 - Google Patents

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本発明は、透明な基材材料や保護材料に使用される樹脂積層体に関する。より詳しくは、低温での熱成形性や印刷性に優れ、且つ、色付き及び色ムラの発生を抑制する樹脂積層体に関する。
アクリル樹脂は表面硬度、透明性、耐擦傷性および耐候性などに優れる。一方、ポリカーボネート樹脂は耐衝撃性などに優れる。このことからアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層とを有する積層体は、表面硬度、透明性、耐擦傷性、耐候性および耐衝撃性などに優れ、自動車部品、家電製品、電子機器および携帯型情報端末の表示窓に用いられている。
近年、デザインニーズの多様化に伴い、ディスプレイデバイスの前面板などにも真空成形や圧空成形などの熱成形によってデザイン性を高めた製品が求められている。アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層とを有する積層体は上記のような優れた性能面から前面板への適用が試みられている。しかし、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層とを有する積層体を熱成形すると、ポリカーボネート樹脂が十分に伸びる温度までシートを加熱する必要があり、アクリル樹脂に対して過剰な熱を加えることとなるため、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層との界面に剥離が生じて、表面が白化したり、クラックが生じたりすることがある。一方、白化・クラックの発生を抑制するために、成形温度を低くすると金型の形状を再現しない「スプリングバック」が生じることがある。
特許文献1には、熱成形時の白化やクラックが発生せず、真空成形や圧空成形など熱成形するのに好適な成形用樹脂シートとして、芳香族ポリカーボネート樹脂と、他の樹脂とのポリマーアロイからなるポリカーボネート系樹脂とアクリル系樹脂とのガラス転移温度差が絶対値が30℃以内であることを特徴とする成形用樹脂シートが開示されている。しかし、当該文献のシートにおいては、ポリマーアロイとして得られたポリカーボネート系樹脂の熱による分解が発生しやすく、その結果、黒点やブツなどの発生が多いことが確認されている。また、ポリマーアロイとして得られたポリカーボネート系樹脂を用いた場合には、アクリル系樹脂との共押出時に、樹脂界面で積層不良(界面乱れ)が発生することがある。
特許文献2には、真空成形や圧空成形など熱成形するのに好適な成形用樹脂シートとして、特定の末端基を有するポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂との成形用樹脂シートが開示されている。かかる樹脂シートはアクリル系樹脂との共押出時には、熱成形時の白化・クラックの発生が抑制され、良好な外観を有するが、液晶ディスプレイを組み込んだ熱成形品に表示された映像を偏光メガネ(サングラス)を通して観察した時に色付き及び色ムラが発生する場合があるという問題があった。
特開2009−196153号公報 国際公開第2016/060100号公報
本発明は、低温での熱成形性又は印刷性に優れ、且つ、色付き及び色ムラの発生が抑制された熱成形体を成形可能である樹脂積層体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させた。具体的には、本発明は以下の通りである。
[1] ポリカーボネート系樹脂層(A)の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂層(B)が共押出成形により積層されてなる樹脂積層体であって、
前記ポリカーボネート系樹脂層(A)は下記一般式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造と2価フェノールから誘導される構成単位とを有する、重量平均分子量20,000〜37,000のポリカーボネート系樹脂(A)を含み、
前記樹脂積層体の幅方向の加熱収縮率(S1)が−10〜0%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0〜10%であり、且つ、レターデーション値が1500nm以下である、樹脂積層体。
(式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は炭素数8〜36のアルケニル基を表し、
〜Rはそれぞれ水素、ハロゲン、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数6〜12のアリール基を表し、置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
[2] 前記1価フェノールは、下記一般式(2)で表わされる、上記[1]に記載の樹脂積層体。
(式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を表す。)
[3] Rが炭素数14〜18のアルキル基である、上記[2]に記載の樹脂積層体。
[4] 前記ポリカーボネート系樹脂(A)は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される構成単位を主成分とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[5] 前記アクリル系樹脂層(B)の厚さが10〜200μmであり、前記ポリカーボネート系樹脂層(A)および前記アクリル系樹脂層(B)の総厚が200〜3,000μmである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[6] 前記ポリカーボネート系樹脂層(A)および前記アクリル系樹脂層(B)の少なくとも一方が紫外線吸収剤を含有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[7] 前記アクリル系樹脂層(B)上にハードコート層をさらに有する、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[8] 前記樹脂積層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理および防汚処理の少なくとも一つが施されてなる、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[8−1] 熱成形用の上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[9] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂積層体を熱曲げ加工された熱成形体。
[10] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂積層体上の前記ポリカーボネート系樹脂層(A)側に印刷層を有し、前記印刷層上に溶融樹脂の射出成形体からなる裏打ち層を有する、インモールド成形体。
[11] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂積層体、上記[9]に記載の熱成形体、または上記[10]に記載のインモールド成形体を含む透明基板材料。
[12] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂積層体、上記[9]に記載の熱成形体、または上記[10]に記載のインモールド成形体を含む、透明保護材料。
[13] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂積層体、上記[9]に記載の熱成形体、または上記[10]に記載のインモールド成形体を含む、タッチパネル前面保護板。
[14] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂積層体、上記[9]に記載の熱成形体、または上記[10]に記載のインモールド成形体を含む、カーナビ用、OA機器用または携帯電子機器用の前面板。
[15] ポリカーボネート系樹脂層(A)の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂層(B)が積層されてなる樹脂積層体の製造方法であって、
ダイから共押出した溶融状態のポリカーボネート系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)とを、第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、前記第2冷却ロールに巻き掛けた後、少なくとも1本の後段冷却ロールに巻きかけることにより樹脂積層体を得ること含み、
前記後段冷却ロールの温度が175℃以上であり、
前記ポリカーボネート系樹脂層(A)は下記一般式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造と2価フェノールから誘導される構成単位とを有する、重量平均分子量20,000〜37,000のポリカーボネート系樹脂(A)を含む、製造方法。
(式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は炭素数8〜36のアルケニル基を表し、
〜Rはそれぞれ水素、ハロゲン、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数6〜12のアリール基を表し、置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
本発明によれば、低温での熱成形又は印刷性に優れ、かつ、色付き及び色ムラの発生が抑制された熱成形品を成形可能である樹脂積層体が提供される。すなわち、本発明の樹脂積層体は熱成形時の白化・クラックの発生が抑制され、良好な外観を有する成形品が得られる。また、本発明の樹脂積層体の熱成形品は、当該熱成形品に組み込まれた液晶ディスプレイの映像を偏光メガネ(サングラス)を通して観察した場合に色付き及び色ムラの発生を抑制することができる。
該樹脂積層体は透明基板材料や透明保護材料として用いることができる。具体的には携帯電話端末、携帯型電子遊具、携帯情報端末、モバイルPCといった携帯型のディスプレイデバイスや、ノート型PC、デスクトップ型PC液晶モニター、カーナビ液晶モニター、液晶テレビといった設置型のディスプレイデバイスなどにおいて、例えばこれらの機器を保護する前面板として、好適に使用することができる。
実施形態に係る樹脂積層体の製造方法を示す概略説明図である。
以下、本発明について製造例や実施例等を例示して詳細に説明するが、本発明は例示される製造例や実施例等に限定されるものではなく、本発明の内容を大きく逸脱しない範囲であれば任意の方法に変更して実施することができる。
<樹脂積層体>
本発明の一形態は、ポリカーボネート系樹脂層(A)の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂層(B)が共押出成形により積層されてなる樹脂積層体に関する。本形態樹脂積層体において、前記ポリカーボネート系樹脂層(A)は下記一般式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造と2価フェノールから誘導される構成単位とを有する、重量平均分子量20,000〜37,000のポリカーボネート系樹脂(A)を含み、前記樹脂積層体の幅方向の加熱収縮率(S1)が−10〜0%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0〜10%であり、且つ、レターデーション値が1500nm以下であることを特徴とする。
アクリル系樹脂層(B)は、ポリカーボネート系樹脂層(A)の片面に設けられていてもよいし、ポリカーボネート系樹脂層(A)の両面に設けられていてもよい。
(式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は炭素数8〜36のアルケニル基を表し、
〜Rはそれぞれ水素、ハロゲン、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数6〜12のアリール基を表し、置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
本願発明者らは、驚くべきことに、特定の末端構造を有するポリカーボネート樹脂を用いて樹脂積層体を構成し、かつ、樹脂積層体の加熱収縮率及びレターデーション値を特定範囲とすることにより、良好な熱成形性及び印刷性に優れ、かつ、色つき及び色ムラの発生が抑制された熱成形品を成形可能であることを見出した。本発明の一形態の樹脂積層体は、幅方向の加熱収縮率(S1)が−10〜0%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0〜10%であり、且つ、レターデーション値が1500nm以下である。本発明の樹脂積層体によれば、熱成形時の白化・クラックの発生が抑制され、良好な外観を有する成形品が得られ、さらに当該成形品に組み込まれた液晶ディスプレイの映像を偏光メガネ(サングラス)を通して観察した場合に色付き及び色ムラの発生が抑制される。また、かかる構成の樹脂積層体を用いることで、熱成形による白化・クラックの発生及び色付き及び色ムラの発生を低減又は防止することができる。また、本発明者らは、特定の末端構造を有するポリカーボネート樹脂を用い、かつ、共押出後の冷却温度を制御することで上記形態の樹脂積層体を得ることができることを見出した。すなわち、共押出成形において少なくとも3本の冷却ロールを用い、第3冷却ロール(後段冷却ロール)の温度を175℃以上とすることにより樹脂積層体の加熱収縮率およびレターデーション値を特定範囲とすることができることを見出した。
すなわち、本発明の他の一形態は、ポリカーボネート系樹脂層(A)の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂層(B)が積層されてなる樹脂積層体の製造方法に関する。当該製造方法は、ダイから共押出した溶融状態のポリカーボネート系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)とを、第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、前記第2冷却ロールに巻き掛けた後、少なくとも1本の後段冷却ロールに巻きかけることにより樹脂積層体を得ること含む。そして、前記後段冷却ロールの温度が175℃以上であり、前記ポリカーボネート系樹脂層(A)は下記一般式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造と2価フェノールから誘導される構成単位とを有する、重量平均分子量20,000〜37,000のポリカーボネート系樹脂(A)を含む。
<ポリカーボネート系樹脂層(A)>
ポリカーボネート系樹脂層(A)は、ポリカーボネート系樹脂(A)を主な成分とする。
ポリカーボネート系樹脂(A)は、分子主鎖中に2価フェノールおよびカーボネート結合剤を反応させた炭酸エステル結合を含む。即ち、−[O−R−OCO]−単位を有するものである。式中のRは、脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基及び芳香族基の双方を含む基であり、Rは直鎖構造又は分岐構造を有する。そして、実施形態のポリカーボネート系樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造(末端構造(1−a))と2価フェノールから誘導される構成単位とを有する。好ましい実施形態において、ポリカーボネート系樹脂(A)は、末端構造(1−a)を有するポリカーボネート樹脂を主成分とする。ここで、「ポリカーボネート樹脂を主成分とする」とは、ポリカーボネート樹脂の含有量が50質量%を超えることを意味する。ポリカーボネート系樹脂(A)は、末端構造(1−a)を有するポリカーボネート樹脂を75質量%以上含んでいるのが好ましく、90質量%以上含んでいるのがより好ましく、実質的に末端構造(1−a)を有するポリカーボネート樹脂からなるのがさらに好ましい。
一般式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造(1−a)を有することにより、ポリカーボネート樹脂はガラス転移温度を低くすることができる。これにより、良好な熱成形性、特に低温での良好な熱成形性が得られ、例えば、120℃〜130℃の低温で熱プレスした場合であっても熱成形不良やスプリングバックの発生を抑制することができる。一実施形態において、ポリカーボネート系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は118〜132℃が好ましく、120〜130℃がより好ましく、125℃〜128℃が特に好ましい。
(式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は炭素数8〜36のアルケニル基を表し、
〜Rはそれぞれ水素、ハロゲン、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数6〜12のアリール基を表し、置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
末端構造(1−a)を有するポリカーボネート樹脂は、例えば、上記一般式(1)に示す末端停止剤、カーボネート結合剤、及び2価フェノールを反応させることで得ることができる。上記式(1)の末端停止剤を用いることにより、ポリカーボネート樹脂は一般式(1−a)で表される末端構造を有する。
(末端停止剤:1価フェノール)
一般式(1)の1価フェノールは、下記式(2)で表される1価フェノールであることが好ましい。
(式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を表す。)
一般式(1)又は一般式(2)におけるRの炭素数は特定の数値範囲内である。具体的には、Rの炭素数の上限値は、36であり、22がより好ましく、18が特に好ましい。また、Rの炭素数の下限値は、8であり、12がより好ましく、14が特に好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)におけるRの炭素数が増加しすぎると、1価フェノール(末端停止剤)の有機溶剤溶解性が低下する傾向があり、ポリカーボネート樹脂製造時の生産性が低下することがある。
一例として、Rの炭素数が36以下であれば、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性が高く、経済性も良い。Rの炭素数が22以下、特に18以下であれば、1価フェノールは、特に有機溶剤溶解性に優れており、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性を非常に高くすることができ、経済性も向上する。
一般式(1)又は一般式(2)におけるRの炭素数が小さすぎると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が十分に低い値とはならず、熱成形性が低下することがある。Rの炭素数が8以上であると一般的なポリカーボネート樹脂と比較して、溶融流動性が高く、環境湿度変化に伴う吸水膨張率が低く、ガラス転移温度が低くなる。Rの炭素数が12以上、特に14以上であると、これらの効果はより顕著なものとなり、より好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)におけるRは、熱安定性の点からアルキル基が好ましい。
として、例えば、炭素数16のアルキル基を有する1価フェノール(末端停止剤)を使用した場合、ガラス転移温度、溶融流動性、成形性、耐ドローダウン性、ポリカーボネート樹脂製造時の1価フェノールの溶剤溶解性が優れており、本発明に用いるポリカーボネート樹脂に使用する末端停止剤として、特に好ましい。
すなわち、一実施形態において、一般式(1)又は一般式(2)におけるRは、炭素数16のアルキル基である。例えば、ポリカーボネート系樹脂(A)は、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル(すなわち、上記一般式(1)においてRが1−ヘキサデシル基である化合物)またはパラヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステル(すなわち、上記一般式(1)においてRが2−ヘキシルデシル基である化合物)から誘導される末端構造の1つ以上を有することが特に好ましい。
一般式(1)におけるR〜Rは、好ましくは反応性や色相、熱安定性の点で、水素、炭素数1〜3のアルキル基であり、特に好ましくは、反応性や色相、熱安定性の点で、これらがいずれも水素である、すなわち、上記一般式(2)で表される1価フェノールである。
なお、一般式(1)又は一般式(2)におけるR〜Rにおけるアルキルおよびアルケニルは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
本発明のポリカーボネート系樹脂(A)は、材料に対する要求特性により、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で主骨格や末端停止剤を他の構造のものと併用したり、上記一般式(1)で表される1価フェノール以外の末端停止剤を使用したポリカーボネート樹脂と混合したりしてもよい。本発明のポリカーボネート系樹脂(A)においては、全末端停止剤中の80mol%以上が上記一般式(1)で表される1価フェノールであることが好ましく、全末端停止剤中の90mol%以上が上記一般式(1)で表される1価フェノールであることがより好ましく、全末端停止剤が上記一般式(1)で表される1価フェノールであることが特に好ましい。すなわち、全末端構造中の好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、特に好ましくは100mol%が上記一般式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造(1−a)であることが好ましい。
他に併用してもよい末端停止剤としては、フェノール;p−クレゾール、o−クレゾール、2,4−キシレノール、p−t−ブチルフェノール、o−アリルフェノール、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−クミルフェノール、p−フェニルフェノール、o−フェニルフェノール、p−トリフルオロフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルルフェノール、オイゲノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、ミリスチルフェノール、パルミチルフェニール、ステアリルフェノール、ベヘニルフェノール等のアルキルフェノール;及びパラヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アミルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル等のパラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルが挙げられる。また、これらの末端停止剤(1価フェノール)を2種類以上併用して使用することも可能である。
合成条件によっては、末端停止剤と反応することなく、フェノール性OH基のままの末端基が形成され得る。このフェノール性OH基は、少ないほど好ましい。具体的には、全末端基中の80mol%以上が上記式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造(1−a)で封止されていることが好ましく、全末端基中の90mol%以上が上記式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造(1−a)で封止されていることが特に好ましい。
(2価フェノール)
本発明のポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノールから誘導される構成単位は特に限定されない。
2価フェノールの例として、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルジフェニルエーテル、4,4−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げることができる。機械特性と熱特性とのバランスの面から好ましくは、ビス(4−ヒドロキフェニル)アルカン類であり、より好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。これらの2価フェノールは、単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。特に好ましくは、2価フェノールは、主として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから構成されることが好ましい。すなわち、ポリカーボネート系樹脂(A)は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される構成単位を主成分とすることが好ましい。なお、「主として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される構成される」とは、ポリカーボネート樹脂を構成する2価フェノールから誘導される全構成単位に対する2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される構成単位の割合が50モル%以上であることをいい、80モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
本発明のポリカーボネート系樹脂(A)は、材料に対する要求特性により、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂(R)を含んでいてもよい。ポリカーボネート系樹脂(A)に含まれる他の樹脂(R)としては、ポリエステル系樹脂がある。ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸を主成分として含んでいればよく、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。
例えば、主成分であるエチレングリコール80〜60(モル比率)に対して1,4−シクロヘキサンジメタノールを20〜40(モル比率、合計100)含むグリコール成分が重縮合してなるポリエステル系樹脂(所謂「PETG」)が好ましい。また、ポリカーボネート系樹脂(A)には、エステル結合及びカーボネート結合をポリマー骨格中に有するポリエステルカーボネート系樹脂が含まれていてもよい。
これらの他の樹脂(R)の含有量は、ポリカーボネート系樹脂(A)の物性を損なわない範囲であることが好ましい。例えば、樹脂(R)は、ポリカーボネート系樹脂層(A)を構成する樹脂成分(100質量%)中、0〜50質量%の割合で含まれることが好ましく、0〜30質量%がより好ましく、0〜20質量%がさらに好ましく、0〜10質量%が特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、1価フェノール(末端停止剤)の使用量によって分子量が制御される。
主骨格のために使用する2価フェノールの重合度と、1価フェノールの使用量は次式に示される。
1価フェノールの使用量(モル)
=2価フェノールの使用量(モル)÷主骨格の重合度×2
この式に基づいて、1価フェノールと2価フェノールの使用量が定められるが、2価フェノールの使用量(モル):1価フェノールの使用量(モル)の好ましい範囲は、50:1〜15:1であり、さらに好ましくは40:1〜17:1の範囲である。
本発明において、ポリカーボネート系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、樹脂積層体の耐衝撃性および成形条件に影響する。つまり、重量平均分子量が小さ過ぎる場合は、樹脂積層体の耐衝撃性が低下する傾向がある。重量平均分子量が大き過ぎる場合は、ポリカーボネート系樹脂(A)を含む樹脂層を積層させる時に過剰な熱源を必要とする場合がある。また重量平均分子量が大き過ぎる場合は成形方法によっては高い温度が必要になる場合があり、ポリカーボネート系樹脂(A)およびアクリル系樹脂(B)が高温にさらされることになり、その熱安定性に悪影響を及ぼす場合やアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層との界面に剥離が生じる場合がある。したがって、ポリカーボネート系樹脂(A)の重量平均分子量は、20,000〜37,000が好ましく、22,000〜33,000がより好ましい。さらに好ましくは25,000〜31,000である。
<ポリカーボネート系樹脂(A)の重量平均分子量の測定法>
ポリカーボネート系樹脂(A)の重量平均分子量は、特開2007−179018号公報の段落0061〜0064の記載に基づいて測定することができる。測定法の詳細を以下に示す。
標準ポリマーとしてポリスチレン(PS)を使用して測定を行った後、ユニバーサルキャリブレーション法により、溶出時間とポリカーボネート(PC)の分子量との関係を求めて検量線とする。そして、PCの溶出曲線(クロマトグラム)を検量線の場合と同一の条件で測定し、溶出時間(分子量)とその溶出時間のピーク面積(分子数)とから各平均分子量を求める。分子量Miの分子数をNiとすると、重量平均分子量は、以下のように表される。また換算式は以下の式を使用した。
(重量平均分子量)
Mw=Σ(NiMi)/Σ(NiMi)
(換算式)
MPC=0.47822MPS1.01470
なお、MPCはPCの分子量、MPSはPSの分子量を示す。
本発明に使用されるポリカーボネート系樹脂(A)は、例えば、前記一般式(1)で表される1価フェノールと2価フェノールとカーボネート結合剤とを含む反応原料を反応させることにより製造される。製造方法の一例は、国際公開第2016/060100号公報(特に段落〔0052〕〜〔0059〕)に記載されており、当該開示内容は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
カーボネート結合剤としては、ホスゲン、トリホスゲン、炭酸ジエステル、及び、一酸化炭素または二酸化炭素などのカルボニル系化合物が例示される。合成方法は特に制限されず公知のホスゲン法(界面重合法)、エステル交換法(溶融法)等、使用するモノマーにより適宜選択できる。
実施形態のポリカーボネート系樹脂(A)は、下記一般式(8)で表されるアルコール含有量が500ppm以下であることが好ましく、1ppm〜500ppmであることがより好ましく、1ppm〜300ppmであることがさらに好ましく、1ppm〜200ppmであることが特に好ましい。
(一般式(8)中、Rは一般式(1)中のRと同じである。)
末端停止剤として用いられる上記一般式(1)のパラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルは、一般的に、カルボン酸であるパラヒドロキシ安息香酸と一般式(8)のアルキルアルコールとの縮合反応などにより製造される。生成されたパラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルは通常、不純物として末端停止剤の原料に由来するアルキルアルコール成分を含有する。したがって、パラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルを末端停止剤として用いて製造されたポリカーボネート樹脂も通常、不純物として一定量の一般式(8)のアルキルアルコールを含有する。なお、上記パラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルの製造方法は例示であり、一般式(1)で表される1価フェノールの製造方法が上記方法に制限されるわけではない。
ポリカーボネート系樹脂(A)における一般式(8)のアルコール含有量が500ppm以下である場合には、ポリカーボネート樹脂の耐湿熱性が向上するとともに、ガス発生およびロール汚れが抑制され、フィルムの生産性が向上する。ポリカーボネート樹脂中の一般式(8)のアルコール含有量を1ppm未満にすることは精製技術的に難しく、また、たとえ1ppm未満であっても、1ppm以上である場合と比較して、耐湿熱性及びフィルム生産性の面で有意な差はない。
ポリカーボネート系樹脂中の一般式(8)のアルコール含有量は、高速液体クロマトグラフ−飛行時間型質量分析計(LC−Tof−MS)を用いて測定することができる。測定条件の一例は以下の通りである。
<LC−Tof−MSの測定条件>
・1価フェノール(末端停止剤)測定時LC条件
LC:Waters Acquity UPLC H−Class
カラム:SSC PEGASIL C4
(内径4.6mm、長さ250mm、粒子径5μm)
温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出器:PDA(190〜400nm)
注入量:25μL
溶離液:HO/MeCN=2/8(isocratic)
・ポリカーボネート樹脂測定時LC条件
LC:Waters Acquity UPLC H−Class
カラム:SSC PEGASIL C4
(内径4.6mm、長さ250mm、粒子径5μm)
温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出器:PDA(190〜400nm)
注入量:5μL
溶離液:A:HO、B:MeCN、C:THF
・1価フェノール(末端停止剤)およびポリカーボネート樹脂測定時MS条件
MS:Waters Xevo G2−S Tof
スキャン範囲、速度:50〜1200/1.0sec
イオン化法:APCI(+)
Analysis mode:Sensitivity mode
Dynamic range:Normal
Corona電流:3μA
Sampling cone電圧:30V
Source Offset:80
Collision energy:off
Source温度:150℃
IonSabreProbe温度:500℃
Cone gas流量:50L/min
Desolvation gas流量:1200L/min
内部標準物質(質量補正):Leucine Enkephalin、1ng/μL
内部標準流速:10μL/min
本発明のポリカーボネート樹脂中の一般式(8)のアルコール含有量を低減する方法は、特に限定されない。例えば、(i)反応原料として用いられる末端停止剤である一般式(1)のパラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルを精製し、末端停止剤に含まれる一般式(8)のアルコール含有量を低減する方法;(ii)本発明のポリカーボネート樹脂を精製し、ポリカーボネート樹脂中の一般式(8)のアルコール含有量を低減する方法;などが挙げられ、好ましくは(i)の方法である。(i)の方法としては、例えば、前記一般式(8)で表わされるアルコールの含有量が5000ppm以下(より好ましくは1ppm〜3000ppm)である前記一般式(1)で表される1価フェノールを末端停止剤として用いる方法がある。例えば、当該1価フェノールを再結晶により精製して一般式(8)で表わされるアルコールの含有量が低減する方法が挙げられる。具体的には、一般式(1)で表される1価フェノールを再結晶溶媒に完全に溶解させた後に、冷却して晶析させ、これをろ過回収して、精製された1価フェノールを得ることができる。再結晶溶媒としては、特に限定されないが、一般式(1)で表わされる1価フェノールと一般式(8)で表わされるアルコールの溶解度差が大きいという点で、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒を用いることが好ましい。1価フェノールを溶解させる再結晶溶媒の温度は、一般式(1)で表わされる1価フェノールと一般式(8)で表わされるアルコールの溶解度差が大きいという点で30℃〜70℃が好ましい。また、冷却温度は一般式(1)で表わされる1価フェノールと一般式(8)で表わされるアルコールの溶解度差が大きいという点で0℃〜30℃が好ましい。上記再結晶は、1回または複数回行うことができる。再結晶を2回以上繰り返すことにより、1価フェノール中の前記一般式(8)で表わされるアルコールの含有量を一層低減することができ、これにより、一般式(8)のアルコールの量が一層低減されたポリカーボネート樹脂を得ることができる。
<アクリル系樹脂層(B)>
アクリル系樹脂層(B)は、アクリル系樹脂(B)を主な成分とする
クリル系樹脂(B)は、(1)1種類以上のアクリル化合物単量体からなる重合体、(2)アクリル化合物単量体と他の単量体との共重合体、または(3)上記(1)の重合体及び上記(2)の共重合体のポリマーアロイであることが好ましい。中でも、アクリル系樹脂層(B)は、耐熱性の向上による高温高湿な環境の変形を防止する点から、(2)アクリル化合物単量体と他の単量体との共重合体又は(3)上記(1)の重合体及び上記(2)の共重合体のポリマーアロイであることが好ましい。
「アクリル化合物単量体と他の単量体との共重合体」において、アクリル化合物単量体とともに使用してもよい「他の単量体」としては、芳香族ビニル単量体及び不飽和ジカルボン酸無水物単量体が挙げられる。
一実施形態のアクリル系樹脂(B)は、アクリル化合物単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、および、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位を含む共重合体を含む。例えば、アクリル系樹脂(B)として、アクリル化合物単量体単位を5〜92質量%、芳香族ビニル単量体単位を5〜80質量%、および、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位を3〜30質量%含む共重合体が挙げられる。
一実施形態では、アクリル系樹脂(B)はアクリル化合物単量体と他の単量体との共重合体である。例えば、アクリル系樹脂(B)として、アクリル化合物単量体単位を57〜92質量%(より好ましくは66〜86質量%、特に好ましくは76質量%)、芳香族ビニル単量体単位を5〜25質量%(より好ましくは11〜21質量%、特に好ましくは16質量%)、および、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位を3〜18質量%(より好ましくは5〜13質量%、特に好ましくは8質量%)含む共重合体を使用することで、85℃85%の高温高湿下で反り抑制効果を付与することができる。
「上記の単独重合体及び/又は共重合体のポリマーアロイ」としては、例えば、アクリル化合物単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、および、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位を含む共重合体(b1)とアクリル化合物単量体単位のみからなる重合体(b2)とのポリマーアロイが挙げられる。例えば、アクリル化合物単量体単位を5〜35質量%(より好ましくは7〜30質量%、特に好ましくは25質量%)、芳香族ビニル単量体単位を40〜80質量%(より好ましくは50〜75質量%、特に好ましくは50質量%)、および、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位を5〜30質量%(より好ましくは10〜25質量%、特に好ましくは20質量%)含む共重合体(b1)を25〜85質量部(より好ましくは40〜75質量部、さらに好ましくは60〜75質量部、特に好ましくは60質量部)と、アクリル化合物単量体単位のみからなる重合体(b2)を15〜75質量部(より好ましくは25〜60質量部、さらに好ましくは25〜40質量部、特に好ましくは40質量部)のポリマーアロイを使用することで、85℃85%の高温高湿下で反り抑制効果を付与することができる。
本発明において、アクリル系樹脂(B)としてのポリマーアロイの製造方法には特に制限はなく、必要な成分を、例えばタンブラー、ヘンシェルミキサー、またはスーパーミキサーなどの混合機を用いて予め混合しておき、その後バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機、または加圧ニーダーなどの機械で溶融混練するといった公知の方法が適用できる。
本明細書において、「アクリル化合物単量体」には、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルが含まれるものとする。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル及びメタクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。その中でも、共重合体のポリマーアロイでの相溶性の観点からメタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。これらのアクリル化合物単量体は2種以上を混合してもよい。
芳香族ビニル単量体としては、特に限定されず、任意の公知の芳香族ビニル単量体を用いる事が出来るが、入手の容易性の観点から、スチレン、α―メチルスチレン、o―メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、相溶性の観点からスチレンが特に好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は2種以上を混合してもよい。
不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の酸無水物が挙げられ、アクリル樹脂との相溶性の観点から無水マレイン酸が好ましい。これらの不飽和ジカルボン酸無水物単量体は2種以上を混合してもよい。
<各種材料製造方法>
本発明の一形態は、ポリカーボネート系樹脂層(A)の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂層(B)が積層されてなる樹脂積層体の製造方法に関する。本発明の樹脂積層体の製造方法は、特に限定されない。例えば、個別に形成したアクリル系樹脂層(B)と、ポリカーボネート系樹脂層(A)とを積層して両者を加熱圧着する方法、個別に形成したアクリル系樹脂層(B)とポリカーボネート系樹脂層(A)とを積層して、両者を接着剤によって接着する方法、アクリル系樹脂層(B)とポリカーボネート系樹脂層(A)とを共押出成形する方法、予め形成しておいたアクリル系樹脂層(B)を用いて、ポリカーボネート系樹脂層(A)をインモールド成形して一体化する方法、などの各種方法があるが、製造コストや生産性の観点からは、共押出成形する方法が好ましい。
共押出成形する方法としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂層(A)及びアクリル系樹脂層(B)を各々別々の押出機で加熱溶融し、Tダイのスリット状の吐出口からそれぞれを押出して積層し、次いで冷却ロールに密着固化させるようにする製造方法を挙げることができる。
図1は、実施形態に係る樹脂積層体の製造方法を示す概略説明図である。実施形態の製造方法は、ダイ1から共押出した溶融状態のポリカーボネート系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)とを、第1冷却ロール2と第2冷却ロール3との間に挟み込み、前記第2冷却ロール3に巻き掛けた後、少なくとも1本の後段冷却ロール4に巻きかけることを含む。その後、ピンチロール5に送り込むことにより樹脂積層体が得られる。
図1に示す形態では、まず、ポリカーボネート系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)とをそれぞれ別の押出機(図示せず)で加熱溶融し、共押出成形用のダイ1から共押出して積層する。
押出機で加熱溶融する温度は、ポリカーボネート系樹脂(A)およびアクリル系樹脂(B)のそれぞれの樹脂温度のガラス転移温度(Tg)よりも80〜150℃高い温度が好ましい。一般的には、ポリカーボネート系樹脂(A)を押出するメイン押出機の温度条件は通常200〜290℃、好ましくは210〜280℃とすることであり、アクリル系樹脂(B)を押出するサブ押出機の温度条件は通常180〜280℃、好ましくは190〜270℃とすることである。
2種類の溶融樹脂の共押出する方法としては、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式などの公知の方法を採用することができる。
例えば、フィードブロック方式の場合であれば、フィードブロックで積層した溶融樹脂をTダイなどのシート成形ダイに導き、シート状に成形した後、表面が鏡面処理された成形ロール(ポリッシングロール)に流入されてバンクを形成し、該成形ロール通過中に鏡面仕上げと冷却を行うようにすればよい。
マルチマニホールド方式の場合にはマルチマニホールドダイ内で積層した溶融樹脂を、ダイ内部でシート状に成形した後、成形ロールにて表面仕上げ及び冷却を行うようにすればよい。
いずれにしても、ダイ1の温度は通常230〜290℃、中でも好ましくは250〜280℃に設定する。
次いで、ダイ1から共押出されたシート状ないしフィルム状の積層体を、少なくとも3本の冷却ロールに巻きかけることによって冷却固化する。具体的には、溶融状態の積層体を第1冷却ロール2と第2冷却ロール3との間に挟み込み、第2冷却ロールに巻き掛けた後、少なくとも1本の後段冷却ロールに巻き掛ける。その後、上下に配置された一対のピンチロール5に送り込むことにより樹脂積層体を得る。
成形(冷却)ロールとしては剛体ロールや弾性ロールがあり、いずれを用いても構わない。一実施形態において、冷却ロール(2,3,4)は剛体ロールである。樹脂積層体の表面を鏡面処理するため、剛体ロールは鏡面仕上げされていることが好ましい。
表面を鏡面処理するためには第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、前記第2冷却ロールに巻き掛けた後、少なくとも1本の後段冷却ロールでポリカーボネート系樹脂(A)面を巻き掛けることが好ましい。第1冷却ロールおよび第2冷却ロールの温度は通常70〜150℃、中でも80〜135℃に設定することが好ましい。
ロール周速度は、例えば0.5〜30.0m/min、中でも好ましくは0.8〜6.0m/minに設定する。
後段冷却ロールとピンチロールの速度比は、例えば後段冷却ロール速度(m/min)/後段冷却ロール速度(m/min)=0.5〜1.2、中でも好ましくは0.7〜1.0に設定する。
本発明の製造方法は、第2冷却ロールに巻き掛けた後の後段冷却ロールの温度が制御されることが好ましい。すなわち、実施形態の製造方法において、後段冷却ロールの温度は、175℃以上である。175℃以上であれば加熱収縮率およびリターデーション値が所望の範囲とできるために好ましく、より好ましくは180℃以上である。一般に、後段冷却ロールの温度を高くすると加熱収縮率(S1)は低下し、加熱収縮率(S2)は低くし、リターデーション値は低下する傾向がある。なお、140〜160℃では後段冷却ロールを剥がれる際に積層シートとロールが粘着してしまい、押出と垂直方向に剥がれムラ(剥離マーク)が発生するため好ましくない。後段冷却ロールの温度の上限は特に制限されないが、後段冷却ロールの巻きつき防止の点から好ましくは210℃以下、より好ましくは200℃以下である。第3冷却ロール以降の後段冷却ロールを複数本用いた構成とする場合、少なくとも1本の後段冷却ロールの温度が上記範囲にあればよい。好ましくは第3冷却ロールの温度を上記範囲(175℃以上、より好ましくは180℃以上)とする。本発明において「後段冷却ロールの温度」とは、循環する熱媒体の後段冷却ロール入口での温度をさす。
上記の通り、本発明の樹脂積層体は、ポリカーボネート樹脂を主成分とするポリカーボネート系樹脂(A)シートの少なくとも一方の面に、アクリル系樹脂(B)が積層されてなる樹脂積層体である。
本発明において、アクリル系樹脂層(B)の厚さは、樹脂積層体の表面硬度や耐衝撃性に影響する。つまり、アクリル系樹脂層(B)の厚さが薄すぎると表面硬度が低下する傾向がある。アクリル系樹脂層(B)の厚さが大きすぎると耐衝撃性が低下する傾向がある。アクリル系樹脂層(B)の厚さは10〜200μmが好ましく、30〜180μmがより好ましい。さらに好ましくは40〜150μmである。
本発明において、ポリカーボネート系樹脂層(A)およびアクリル系樹脂層(B)の総厚は耐衝撃性に影響する。ポリカーボネート系樹脂層(A)およびアクリル系樹脂層(B)の総厚が薄すぎると耐衝撃性が低下する傾向がある。ポリカーボネート系樹脂層(A)およびアクリル系樹脂層(B)の総厚は100〜3,000μmが好ましく、200〜3,000μmがより好ましく、さらに好ましくは300〜3,000μmである。
実施形態の樹脂積層体は、幅方向の加熱収縮率(S1)が−10〜0%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0〜10%であり、且つ、レターデーション値が1500nm以下である。本発明において、加熱収縮率は、180℃の熱雰囲気下で30分放置したときの樹脂積層体の押出方向および垂直方向である幅方向の加熱収縮率(S1)とシートの押出方向の加熱収縮率(S2)であり、以下の式を使用して算出する。
(加熱収縮率)
幅方向の加熱収縮率(S1)(%)=
[(加熱前の押出と垂直方向の長さ)−(加熱後の押出と垂直方向の長さ)]×100
押出方向の加熱収縮率(S2)(%)=
[(加熱前の押出方向の長さ)−(加熱後の押出方向の長さ)]×100
例えば、2種類の溶融樹脂を共押出する方法で樹脂積層体を連続的に生産する場合、押出方向に引張りの力が加わり、縮む方向に内部応力が残るため、押出方向の加熱収縮率(S2)は正の値(+)、すなわち0%以上になる傾向がある。押出と垂直方向には、ポアソン効果により、伸びる方向に内部応力が残るため、幅方向の加熱収縮率(S1)は負の値(−)、すなわち0%以下になる傾向がある。なお、加熱収縮率の正の値(+)の結果は収縮したことを、負の値(−)の結果は膨張したことを示す。
加熱収縮率が大きいと印刷塗装の乾燥時に亀裂が発生しやすくなる。このため、積層シートの幅方向の加熱収縮率(S1)が−10〜0%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0〜10%であることが好ましく、幅方向の加熱収縮率(S1)が−5〜0%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0〜10%であることがより好ましく、幅方向の加熱収縮率(S1)が−5〜−0.01%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0.1〜10%であることがさらに好ましく、幅方向の加熱収縮率(S1)が−3.0〜−0.01%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0.01〜9.5%であることが特に好ましい。一実施形態において、幅方向の加熱収縮率(S1)が−3.0〜−1.0%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0.01〜9.5%である。
加熱収縮率を上記範囲とする方法としては、弾性ロールを使用すること、ロール速度とピンチロールとの速度比を1.0に近づけること、及び/又は、後段冷却ロール温度を175℃以上にすることが挙げられる。例えば、後段冷却ロール温度を175℃以上にすると加熱収縮率(S1)及び加熱収縮率(S2)は小さくなる傾向がある。
実施形態の樹脂積層体は、レターデーション値が1500nm以下である。本発明において、レターデーションは590nm波長におけるシート面内の遅相軸の主屈折率をnx、進相軸の主屈折率をny、シートの厚みをdとしたとき、(nx−ny)×dを、nm単位で表現したものをいう。
レターデーションが2000〜3000nmの積層シートを偏光メガネ(サングラス)や3D用液晶シャッターメガネを通して液晶表示装置(TN方式液晶、VA方式液晶、IPS方式液晶など)を観察した場合、積層体シートのレターデーション及びそのムラに起因した色付き及び色ムラが発生する。積層シートのレターデーションを1500nm以下にすることで、該レターデーションの色度図上における分布が白色に近い領域に位置し、色付き及び色ムラの発生を抑制する効果があり、レターデーション1000nm以下がより好ましい。レターデーション値の下限は低いほど好ましく特に制限されないが、0nmに近いことが好ましい。
レターデーションを0nmに近づける方法としては、弾性ロールを使用すること、ロール速度とピンチロールとの速度比を1.0に近づけること、及び/又は、後段冷却ロール温度を175℃以上にすることが挙げられる。
本発明において、樹脂積層体(シート)の外観上、全光線透過率は好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。全光線透過率の上限値は、好ましくは95%である。
樹脂積層体(シート)のHaze(ヘイズ)は好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。Hazeの下限値は好ましくは0%である。ただし、スモーク色などの色つきの樹脂積層体(シート)の外観は上記の全光線透過率およびHazeに限らない。
<任意の添加剤>
本発明において、基材層を形成するポリカーボネート系樹脂層(A)および/または表層を形成するアクリル系樹脂層(B)には、上述の主たる成分以外の成分を含めることができる。
例えば、ポリカーボネート系樹脂層(A)およびアクリル系樹脂層(B)の少なくとも一方が、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が多過ぎると、成形法によっては過剰な紫外線吸収剤が高い温度がかかることによって飛散し、成形環境を汚染するため不具合を起こす場合がある。このことから紫外線吸収剤の含有割合は0〜5質量%が好ましく、0〜3質量%がより好ましく、さらに好ましくは0〜1質量%である。紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジ([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((2−エチルヘキシル)オキシ)フェノール(Tinuvin1600)などのトリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられる。混合の方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。
本発明において、基材層を形成するポリカーボネート系樹脂層(A)および/または表層を形成するアクリル系樹脂層(B)には、上記紫外線吸収剤以外にも、各種添加剤を混合して使用することができる。そのような添加剤としては、例えば、抗酸化剤や抗着色剤、抗帯電剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、樹脂改質剤、相溶化剤、有機フィラーや無機フィラーといった強化材などが挙げられる。混合の方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。
<任意の処理>
本発明において、アクリル系樹脂層(B)の表面、またはポリカーボネート系樹脂層(A)の表面にハードコート処理を施してもよい。例えば、熱エネルギーおよび/または光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料を用いるハードコート処理によりハードコート層を形成する。熱エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、ポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などの熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。また、光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、1官能および/または多官能であるアクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーからなる樹脂組成物に光重合開始剤が加えられた光硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
好ましくは、実施形態の樹脂積層体はアクリル系樹脂層(B)上、すなわち、ポリカーボネート系樹脂層(A)とは反対側の表面上にハードコート層をさらに有する。
本発明におけるアクリル系樹脂層(B)の表面、またはポリカーボネート系樹脂層(A)の表面に施す光硬化性ハードコート塗料としては、例えば、1,9−ノナンジオールジアクリレート20〜60質量%と、1,9−ノナンジオールジアクリレートと共重合可能な2官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーならびに2官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または2官能以上の多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または2官能以上の多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる化合物40〜80質量%とからなる樹脂組成物の100質量部に、光重合開始剤が1〜10質量部添加された光硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
本発明におけるハードコート塗料を塗布する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビートコート法、捌け法などが挙げられる。
ハードコート層の密着性を向上させる目的で、ハードコート処理前に塗布面の前処理を行うことがある。前処理方法としては、サンドブラスト法、溶剤処理法、コロナ放電処理法、クロム酸処理法、火炎処理法、熱風処理法、オゾン処理法、紫外線処理法、樹脂組成物によるプライマー処理法などの公知の方法が挙げられる。
本発明におけるアクリル系樹脂層(B)、ポリカーボネート系樹脂層(A)及びハードコート層の各材料、例えば、アクリル系樹脂(B)およびポリカーボネート系樹脂(A)等は、フィルター処理によりろ過精製されることが好ましい。フィルターを通して精製あるいは積層する事により異物や欠点といった外観不良が少ない樹脂積層体を得ることが出来る。ろ過方法に特に制限はなく、溶融ろ過、溶液ろ過、あるいはその組み合わせ等を使うことが出来る。
使用するフィルターに特に制限はなく、公知のものが使用でき、各材料の使用温度、粘度、ろ過精度により適宜選ばれる。フィルターの濾材としては、特に限定されないがポリプロピレン、コットン、ポリエステル、ビスコースレイヨンやグラスファイバーの不織布あるいはロービングヤーン巻物、フェノール樹脂含浸セルロース、金属繊維不織布焼結体、金属粉末焼結体、ブレーカープレート、あるいはこれらの組み合わせなど、いずれも使用可能である。特に耐熱性や耐久性、耐圧力性を考えると金属繊維不織布を焼結したタイプが好ましい。
ろ過精度は、ポリカーボネート系樹脂(A)については、50μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。またハードコート剤のろ過精度は、樹脂積層体の最表層に塗布される事から、20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
アクリル系樹脂(B)およびポリカーボネート系樹脂(A)のろ過については、例えば熱可塑性樹脂溶融ろ過に用いられているポリマーフィルターを使うことが好ましい。ポリマーフィルターは、その構造によりリーフディスクフィルター、キャンドルフィルター、パックディスクフィルター、円筒型フィルターなどに分類されるが、特に有効ろ過面積が大きいリーフディスクフィルターが好適である。
本発明の樹脂積層体には、その片面または両面に耐指紋処理、反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理の少なくとも一つを施すことができる。反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理の方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、反射低減塗料を塗布する方法、誘電体薄膜を蒸着する方法、帯電防止塗料を塗布する方法などが挙げられる。
<熱曲げ加工>
本発明の樹脂積層体の熱曲げ加工は、特に限定されない。例えば、プレス機に凸型(オス型)と凹型(メス型)の型を取り付け、加熱軟化させた積層シートをその2つの型で挟む「熱プレス」、加熱軟化させた積層シートと凸型(オス型)の型を真空状態にすることで積層シートを型に密着させ、望む形状に仕上げる「真空成形」、加熱軟化させた積層シートと凸型(オス型)の型を大気圧よりも大きな圧力を加えることで積層シートを型に密着させ、望む形状に仕上げる「圧空成形」がある。本発明の樹脂積層体は、低温(例えば120〜130℃)で熱曲げ加工した場合であってもスプリングバックしないされた熱成形体を得ることができる。
<熱成形体>
従来のポリカーボネート樹脂(例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社から市販されている、ユーピロンS−2000、ユーピロンS−1000、ユーピロンE−2000)を使用した積層シートを熱プレスする場合、135〜145℃下でポリカーボネート樹脂が十分に伸長するまでシートを加熱する必要があり、その結果、アクリル樹脂に対して過剰な熱が加わるため、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層との界面に剥離が生じて、表面が白化したり、クラックが生じたりする場合があった(以下、「熱成形不良」)。一方、熱成形不良を抑制するために、120℃〜130℃の低温での熱プレスを行うと金型の形状を再現せずに、金型の形状から平らに戻ろうとする「スプリングバック」が生じることがある。
これに対して、本発明の実施形態の樹脂積層体は、特定のポリカーボネート樹脂を用い、熱プレスする場合、120℃〜130℃の低温で熱プレスした場合であっても、熱成形不良やスプリングバックが発生しないため、低温での意匠性に優れた熱成形体を得ることができる。
<インモールド成形体>
また、本樹脂積層体は上記のような特徴を備えているため、例えば樹脂積層体上のポリカーボネート系樹脂層(A)側に印刷層を形成して熱成形する一方、前記印刷層側に溶融樹脂を射出成形して裏打ち層を形成することにより、意匠性に優れたインモールド成形体を製造することもできる。
<用途>
実施形態の成形品(例えば熱成形体またはインモールド成形体)は、上述した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の樹脂積層体を含む成形品である。成形品の形状、模様、色彩、寸法等に制限はなく、その用途に応じて任意に設定すればよい。
実施形態の樹脂積層体、熱成形体またはインモールド成形体は、低温(例えば120〜130℃)での熱成形性や印刷性に優れ、かつ、色付き及び色ムラの発生を抑制することができる。したがって、透明基材材料や透明保護材料などとして好適に用いられる。具体的には、携帯電話端末、携帯型電子遊具、携帯情報端末、モバイルPCといった携帯型のディスプレイデバイスや、ノート型PC、デスクトップ型PC液晶モニター、カーナビ液晶モニター、液晶テレビといった設置型のディスプレイデバイスなどの透明基板材料および透明保護材料(例えば、前面板)として使用することができ、中でも、高意匠性が要求されるタッチパネル前面保護板や、カーナビ用、OA機器用または携帯電子機器用の前面板として好適に用いられる。
以下、実施例により本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
<評価>
1.外観
積層体の外観観察をし、下記の基準で判定を行った。
○(合格):剥離マークの発生なし。
×(不合格):剥離マークが発生。
2.加熱収縮率測定
積層体の中心を100mm×100mmの正方形に試験片を切り出し、加熱前の押出方向の長さおよび押出と垂直方向の長さをそれぞれ測定した。ついで、金属バットにベビーパウダー(和光堂(株)製の「シッカロー・ハイ」)を敷いて、その上に前記試験片のアクリル系樹脂(B)が上面になるように置き、180℃のオーブンで30分投入し、自然冷却した後に、加熱後の押出方向の長さおよび押出と垂直方向の長さをそれぞれ測定した。得られた長さは以下の式を用いて、加熱収縮率を算出した。
幅方向の加熱収縮率(S1)(%)=
[(加熱前の押出と垂直方向の長さ)−(加熱後の押出と垂直方向の長さ)]×100
押出方向の加熱収縮率(S2)(%)=
[(加熱前の押出方向の長さ)−(加熱後の押出方向の長さ)]×100
+の結果は収縮したことを、−の結果は膨張したことを示す。
3.印刷試験
積層体の中心を押出方向200mm×70mmの長方形に切り出し、ポリカーボネート系樹脂(A)層に、黒インク(品名:SS8 911墨(東洋インキ(株)製)と品名:S719 溶剤 IKC(東洋インキ(株)製)を100vol%:20vol%で混ぜた液)を30μm厚みのアプリケーター(40mm幅)で試験片の押出方向に塗り、90℃のオーブンで30分投入し、自然冷却した後に、印刷塗装面の観察をし、下記の基準で判定を行った。
○(合格):印刷塗装面に亀裂なし。
×(不合格):印刷塗装面に亀裂あり。
4.レターデーション測定
RETS-100 (大塚電子(株)製)を用いて、積層体の590nm波長におけるレターデーション測定を行った。
5.色付き及び色ムラの評価
積層体で作製した液晶表示装置の前面板について、実際のTN方式液晶パネルに装着した後、液晶ディスプレイ装置(NVIDIA社製の3Dディスプレイ)に組み込んだ。そして、3D用TN液晶シャッターメガネ(GEFORCE 3D VISION Model:P701)を装着した状態で、液晶ディスプレイに表示された映像の観察し、下記の基準で判定を行った。
○(合格):色付き及び色ムラが無し。
×(不合格):色付き及び色ムラの発生。
6.全光線透過率測定
反射・透過率計HR−100型(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて樹脂積層体の全光線透過率をJIS K7361−1に準じて測定し、下記の基準で全光線透過率試験の合否判定を行った。
○(合格):樹脂積層体の全光線透過率≧75%
×(不合格):上記の範囲以外
7.Haze測定
反射・透過率計HR−100型(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて樹脂積層体のHazeをJIS K7136に準じて測定し、下記の基準でHaze試験の合否判定を行った。
○(合格):樹脂積層体のHaze≦30%
×(不合格):上記の範囲以外
8.熱プレス成形加工性
1mmtのシートが20mmRのアクリル系樹脂(B)が凸になるように、凸型(オス型)と凹型(メス型)の型を作製した。積層体を成形前に100℃で予備加熱し、金型温度120℃で3分間プレスを行い、自然冷却することにより、熱プレス成形品を作製した。その後、熱プレス成形品を20mmRの円筒に沿わせて、下記の基準で判定を行った。
○(合格):円筒に沿う。(スプリングバック無し)
×(不合格):円筒に沿わない。(スプリングバック有り)
<各種材料>
ポリカーボネート系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)について、下記に示す材料を使用した。
A−1:ポリカーボネート樹脂:下記製造例1に合成法を記載
A−2:ポリカーボネート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ユーピロンE−2000(末端基:p−tert−ブチルフェノール)
B−1:アクリル系樹脂:デンカ株式会社製 R100
B−2:アクリル系樹脂:株式会社クラレ製メチルメタクリレート樹脂 パラペットHR−L
B−3:アクリル系樹脂:旭化成ケミカルズ株式会社製 デルペット980N
B−4:アクリル系樹脂:デンカ株式会社製 R200
<ポリカーボネート系樹脂(A)の合成>
合成例1 〔ポリカーボネート樹脂末端停止剤の合成〕
有機化学ハンドブックP143〜150に基づき、東京化成工業(株)製4−ヒドロキシ安息香酸と東京化成工業(株)製1−ヘキサデカノールを用いて脱水反応によるエステル化を行い、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル(CEPB)を得た。
<樹脂ペレットの製造>
製造例1 〔ポリカーボネート系樹脂(A−1)ペレットの製造〕
9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液57.2kgに、新日鐵住友化学(株)製のビスフェノールA(以下、BPAという)7.1kg(31.14mol)とハイドロサルファイト30gとを加えて溶解した。これにジクロロメタン40kgを加え、撹拌しながら、溶液温度を15℃〜25℃の範囲に保ちつつ、ホスゲン4.33kgを30分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液6kg、ジクロロメタン11kg、及び末端停止剤としてのパラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル(CEPB)551g(1.52mol)をメチレンクロライド10kgに溶解させた溶液を加え、激しく撹拌して乳化させた。さらにその後、重合触媒として10mlのトリエチルアミンを溶液に加え、約40分間重合させた。
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHが中性になるまで純水で水洗を繰り返した。この精製されたポリカーボネート樹脂溶液から有機溶媒を蒸発留去することによりポリカーボネート樹脂粉末を得た。
得られたポリカーボネート樹脂粉末を、スクリュー径35mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度260℃で溶融混練して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ポリカーボネート樹脂粉末のガラス転移温度は126℃であり、重量平均分子量は29,000であった。なお、ポリカーボネート樹脂粉末の重量平均分子量は上記<ポリカーボネート系樹脂(A)の重量平均分子量の測定法>にて説明した方法により測定した。
製造例2〔アクリル系樹脂(B11)ペレットの製造〕
アクリル系樹脂(B)として、R100(B−1)(スチレン:無水マレイン酸:MMAの質量比=65:15:20、重量平均分子量:170,000)75質量部と、パラペットHR−L(B−2)(メチルメタクリレート樹脂100%、重量平均分子量:90,000)25質量部との合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP−36(株式会社ADEKA製) 0.05質量%、およびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H−100、理研ビタミン株式会社製) 0.2質量%、酸化防止剤2,6−ジ−ターシャリーブチル−クレゾール(製品名:K−NOX、共同薬品株式会社製) 0.1質量%、紫外線吸収剤Tinuvin1600(BASFジャパン株式会社製) 0.7質量%を加え、ブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM−26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。
製造例3〔アクリル系樹脂(B12)ペレットの製造〕
アクリル系樹脂(B)として、デルペット980N(B−2)(スチレン:無水マレイン酸:MMAの質量比=16:8:76、重量平均分子量:133,000)を100質量部に対して、リン系添加剤PEP−36 0.05質量%、およびステアリン酸モノグリセリド 0.2質量%、酸化防止剤2,6−ジ−ターシャリーブチル−クレゾール 0.1質量%、紫外線吸収剤Tinuvin1600 0.7質量%を加え、製造例2と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
製造例4〔アクリル系樹脂(B13)ペレットの製造〕
アクリル系樹脂(B)として、R200(B−3)(スチレン:無水マレイン酸:MMAの質量比=55:20:25、重量平均分子量:185,000)60質量部と、パラペットHR−L(B1−2)(メチルメタクリレート樹脂100%、重量平均分子量:90,000)40質量部との合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP−36 0.05質量%、およびステアリン酸モノグリセリド 0.2質量%、酸化防止剤2,6−ジ−ターシャリーブチル−クレゾール 0.1質量%、紫外線吸収剤Tinuvin1600 0.7質量%を加え、製造例2と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
<樹脂積層体の製造>
実施例1
軸径32mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、全押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結されたTダイとを有する多層押出機に各押出機と連結したマルチマニホールドダイとを有する多層押出装置を用いて樹脂積層体を成形した。軸径32mmの単軸押出機に製造例2で得たアクリル系樹脂(B11)を連続的に導入し、シリンダー温度240℃、吐出量を2.1kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート系樹脂(A−1)を連続的に導入し、シリンダー温度280℃、吐出量を30.0kg/hで押し出した。全押出機に連結されたフィードブロックは2種2層の分配ピンを備え、フィードブロックの温度270℃にして(B11)と(A−1)とを導入し積層した。その先に連結された温度270℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、前記第2冷却ロールに巻き掛けた後、第2冷却ロールでポリカーボネート系樹脂(A)面を巻き掛けた。ロール温度が第1冷却ロールは110℃、第2冷却ロールは120℃、後段冷却ロール(第3冷却ロール)は180℃とした3本の鏡面仕上げの剛体ロールで鏡面を転写しながら冷却し、ロール周速度は0.8m/min、後段冷却ロールとピンチロールの速度比は0.9にし、(B11)と(A−1)との積層体(E11)を得た。得られた積層体(E11)の全体厚みは1000μm、B11から成る層の厚みは中央付近で60μmであった。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
実施例2
第3冷却ロールを190℃とした以外は実施例1と同様な成形条件で積層体(E12)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
実施例3
樹脂(B11)の代わりに樹脂(B12)を使用した以外は、実施例1と同様にして(B12)と(A−1)との積層体(E13)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
実施例4
第3冷却ロールを190℃とした以外は実施例3と同様な成形条件で積層体(E14)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
実施例5
樹脂(B11)の代わりに樹脂(B13)を使用した以外は、実施例1と同様にして(B13)と(A−1)との積層体(E15)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
実施例6
第3冷却ロールを190℃とした以外は実施例5と同様な成形条件で積層体(E16)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例1
第3冷却ロールを110℃とした以外は実施例1と同様な成形条件で積層体(F11)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例2
第3冷却ロールを120℃とした以外は実施例1と同様な成形条件で積層体(F12)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例3
第3冷却ロールを130℃とした以外は実施例1と同様な成形条件で積層体(F13)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例4
第3冷却ロールを140℃とした以外は実施例1と同様な成形条件で積層体(F14)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例5
第3冷却ロールを150℃とした以外は実施例1と同様な成形条件で積層体(F15)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例6
第3冷却ロールを160℃とした以外は実施例1と同様な成形条件で積層体(F16)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例7
第3冷却ロールを170℃とした以外は実施例1と同様な成形条件で積層体(F17)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例8
樹脂(A−1)の代わりに樹脂(A−2)を使用し、第3冷却ロールを110℃とした以外は、実施例1と同様にして(B11)と(A−2)との積層体(F18)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例9
第3冷却ロールを120℃とした以外は比較例8と同様な成形条件で積層体(F19)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例10
第3冷却ロールを130℃とした以外は比較例8と同様な成形条件で積層体(F20)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例11
第3冷却ロールを140℃とした以外は比較例8と同様な成形条件で積層体(F21)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例12
第3冷却ロールを150℃とした以外は比較例8と同様な成形条件で積層体(F22)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例13
第3冷却ロールを160℃とした以外は比較例8と同様な成形条件で積層体(F23)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例14
第3冷却ロールを170℃とした以外は比較例8と同様な成形条件で積層体(F24)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例15
第3冷却ロールを180℃とした以外は比較例8と同様な成形条件で積層体(F25)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例16
第3冷却ロールを190℃とした以外は比較例8と同様な成形条件で積層体(F26)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例17
第3冷却ロールを200℃とした以外は比較例8と同様な成形条件で積層体(F27)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例18
第3冷却ロールを110℃とした以外は実施例3と同様な成形条件で積層体(F28)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例19
第3冷却ロールを120℃とした以外は実施例3と同様な成形条件で積層体(F29)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例20
第3冷却ロールを130℃とした以外は実施例3と同様な成形条件で積層体(F30)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例21
第3冷却ロールを140℃とした以外は実施例3と同様な成形条件で積層体(F31)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例22
第3冷却ロールを150℃とした以外は実施例3と同様な成形条件で積層体(F32)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例23
第3冷却ロールを160℃とした以外は実施例3と同様な成形条件で積層体(F33)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例24
第3冷却ロールを170℃とした以外は実施例3と同様な成形条件で積層体(F34)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例25
第3冷却ロールを140℃とした以外は実施例5と同様な成形条件で積層体(F35)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
比較例26
第3冷却ロールを170℃とした以外は実施例5と同様な成形条件で積層体(F36)を得た。得られた積層体の評価結果を表1に示す。
以上のように、本発明による樹脂積層体はポリカーボネート系樹脂層(A)にアクリル系樹脂層(B)が積層された樹脂積層体である。そして、ポリカーボネート系樹脂層(A)を特定の末端基を有し、特定の分子量を有するポリカーボネート樹脂で構成し、かつ、樹脂積層体の加熱収縮率およびレターデーション値が特定範囲にあることで、本発明による樹脂積層体は低温での熱成形性や印刷性に優れ、且つ、液晶ディスプレイを組み込んだ熱成形品に表示された映像を、偏光メガネを通して観察した時に色付き及び色ムラの発生を抑制するという特徴を有する。
例えば、特定の末端基を有するポリカーボネート樹脂(A−1)をポリカーボネート系樹脂(A)として用いた積層体(実施例1〜2)は、特定の末端基を有しないポリカーボネート樹脂(A−2)をポリカーボネート系樹脂に用いた積層体(比較例8〜17)より、低温での熱成形性に優れている(120℃での熱プレス成形加工性を参照)。
特定の末端基を有するポリカーボネート樹脂(A−1)をポリカーボネート系樹脂(A)として用いた積層体であっても、特定の幅方向・押出方向の加熱収縮率でない積層体(比較例1〜7,18〜26)は印刷時に塗装面に亀裂が発生した。特に、第3冷却ロールの温度を140〜160℃とした積層体(比較例4〜6,21〜23,25)では、後段冷却ロールを剥がれる際に積層シートとロールが粘着してしまい、押出と垂直方向に剥がれムラ(剥離マーク)が発生し、外観が悪化した。
また、特定のレターデーション値でない積層体(比較例8〜17)は偏光メガネを通して観察した時に色付き及び色ムラが発生した。
一方、本発明による積層体(実施例1〜6)は、従来のアクリル樹脂とポリカーボネートの積層体より、低温での熱成形性や印刷性に優れ、且つ、液晶ディスプレイを組み込んだ熱成形品に表示された映像を、偏光メガネを通して観察した時に色付き及び色ムラの発生を抑制することができた。
本発明の樹脂積層体は、低温での熱成形性や印刷性に優れ、且つ、液晶ディスプレイを組み込んだ熱成形品に表示された映像を、偏光メガネを通して観察した時に色付き及び色ムラの発生を抑制することができる。本発明による樹脂積層体は、透明基材材料や透明保護材料などとして好適に用いられ、特に携帯電話端末、携帯型電子遊具、携帯情報端末、モバイルPCといった携帯型のディスプレイデバイスや、ノート型PC、デスクトップ型PC液晶モニター、カーナビ液晶モニター、液晶テレビといった設置型のディスプレイデバイスなどの前面板として好適に用いられることができる。
1 ダイ
2 第1冷却ロール
3 第2冷却ロール
4 後段冷却ロール
5 ピンチロール

Claims (15)

  1. ポリカーボネート系樹脂層(A)の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂層(B)が共押出成形により積層されてなる樹脂積層体であって、
    前記ポリカーボネート系樹脂層(A)は下記一般式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造と2価フェノールから誘導される構成単位とを有する、重量平均分子量20,000〜37,000のポリカーボネート系樹脂(A)を含み、
    前記樹脂積層体の幅方向の加熱収縮率(S1)が−10〜0%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0〜10%であり、且つ、レターデーション値が1500nm以下である、樹脂積層体。
    (式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は炭素数8〜36のアルケニル基を表し、
    〜Rはそれぞれ水素、ハロゲン、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数6〜12のアリール基を表し、置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
  2. 前記1価フェノールは、下記一般式(2)で表わされる、請求項1に記載の樹脂積層体。
    (式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を表す。)
  3. が炭素数14〜18のアルキル基である、請求項2に記載の樹脂積層体。
  4. 前記ポリカーボネート系樹脂(A)は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される構成単位を主成分とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
  5. 前記アクリル系樹脂層(B)の厚さが10〜200μmであり、前記ポリカーボネート系樹脂層(A)および前記アクリル系樹脂層(B)の総厚が200〜3,000μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
  6. 前記ポリカーボネート系樹脂層(A)および前記アクリル系樹脂層(B)の少なくとも一方が紫外線吸収剤を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
  7. 前記アクリル系樹脂層(B)上にハードコート層をさらに有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
  8. 前記樹脂積層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理および防汚処理の少なくとも一つが施されてなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂積層体を熱曲げ加工された熱成形体。
  10. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂積層体上の前記ポリカーボネート系樹脂層(A)側に印刷層を有し、前記印刷層上に溶融樹脂の射出成形体からなる裏打ち層を有する、インモールド成形体。
  11. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂積層体、請求項9に記載の熱成形体、または請求項10に記載のインモールド成形体を含む透明基板材料。
  12. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂積層体、請求項9に記載の熱成形体、または請求項10に記載のインモールド成形体を含む、透明保護材料。
  13. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂積層体、請求項9に記載の熱成形体、または請求項10に記載のインモールド成形体を含む、タッチパネル前面保護板。
  14. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂積層体、請求項9に記載の熱成形体、または請求項10に記載のインモールド成形体を含む、カーナビ用、OA機器用または携帯電子機器用の前面板。
  15. ポリカーボネート系樹脂層(A)の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂層(B)が積層されてなる樹脂積層体の製造方法であって、
    ダイから共押出した溶融状態のポリカーボネート系樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)とを、第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、前記第2冷却ロールに巻き掛けた後、少なくとも1本の後段冷却ロールに巻きかけることにより樹脂積層体を得ること含み、
    前記後段冷却ロールの温度が175℃以上であり、
    前記ポリカーボネート系樹脂層(A)は下記一般式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造と2価フェノールから誘導される構成単位とを有する、重量平均分子量20,000〜37,000のポリカーボネート系樹脂(A)を含む、製造方法。
    (式中、Rは、炭素数8〜36のアルキル基、又は炭素数8〜36のアルケニル基を表し、
    〜Rはそれぞれ水素、ハロゲン、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数6〜12のアリール基を表し、置換基は、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。)
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