JP7231466B2 - 透明樹脂積層体 - Google Patents
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Description
また、ビスフェノールCに由来する構造単位からなるポリカーボネート樹脂の表層とビスフェノールAに由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂からなる層とを備える積層体は、85℃85%の高温高湿下で反りを抑えられるが、ディスプレイの加工メーカーからは85℃85%の高温高湿下で反りを更に抑制することが求められている。
<1> 下記式[1]で表されるビスフェノールAに由来する構造単位を主成分とするポリカーボネート系樹脂(A)を含む層の少なくとも一方の面に、変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層が積層されてなる樹脂積層体であって、
<2> 前記変性ポリカーボネート系樹脂(B)が、ポリマーアロイである、上記<1>に記載の樹脂積層体である。
<3> 前記変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層の厚さが20~250μmであり、前記樹脂積層体の全体厚みが0.05~3.5mmの範囲である、上記<1>または<2>に記載の樹脂積層体である。
<4> 前記変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層および前記ポリカーボネート系樹脂(A)を含む層の少なくとも一方が紫外線吸収剤を含有する、上記<1>~<3>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<5> 前記変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層の表面にハードコート層をさらに備える、上記<1>~<4>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<6> 前記樹脂積層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理および防汚処理からなる群から選択されるいずれか一つ以上の処理が施されてなる、上記<1>~<5>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<7> 上記<1>~<6>のいずれかに記載の樹脂積層体を含む透明基板材料である。
<8> 上記<1>~<6>のいずれかに記載の樹脂積層体を含む透明保護材料である。
<9> 上記<1>~<6>のいずれかに記載の樹脂積層体を含むタッチパネル前面保護板である。
<10> 上記<1>~<6>のいずれかに記載の樹脂積層体を含む、OA機器用または携帯電子機器用の前面板である。
本発明におけるポリカーボネート系樹脂(A)を含む層に使用されるポリカーボネート系樹脂(A)は、下記式[1]で表されるビスフェノールAに由来する構造単位を主成分とするポリカーボネート系樹脂(A)である。
ここで、「ビスフェノールAに由来する構造単位を主成分とする」とは、ビスフェノールAに由来する構造単位が50重量%を超えることを意味する。ポリカーボネート系樹脂(A)は、ビスフェノールAに由来する構造単位が75質量%以上を含んでいるのが好ましく、ビスフェノールAに由来する構造単位が90質量%以上を含んでいるのがより好ましい。ビスフェノールAに由来する構造単位を増やすことで耐衝撃性に優れた樹脂積層体を得ることができる。
R2~R5はそれぞれ水素、ハロゲン、又は置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基若しくは炭素数6~12のアリール基を表し、置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基である。)
一例として、R1の炭素数が36以下であれば、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性が高く、経済性も良い。R1の炭素数が22以下であれば、1価フェノールは、特に有機溶剤溶解性に優れており、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性を非常に高くすることができ、経済性も向上する。
一般式[4]又は一般式[5]におけるR1の炭素数が小さすぎると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が十分に低い値とはならず、熱成形性が低下することがある。
ポリカーボネート系樹脂(A)の重量平均分子量は、特開2007-179018号公報の段落0061~0064の記載に基づいて測定することができる。測定法の詳細を以下に示す。
[重量平均分子量の測定条件]
装置 Waters社製「Aliance」
カラム 昭和電工製「Shodex K-805L」(2本)
検出器 UV検出器:254nm
溶離液 クロロホルム
(重量平均分子量)
Mw=Σ(NiMi2)/Σ(NiMi)
(換算式)
MPC=0.47822MPS1.01470
なお、MPCはPCの分子量、MPSはPSの分子量を示す。
本発明に使用される変性ポリカーボネート系樹脂(B)は、ビスフェノールCに由来する構造単位(b1)と、ビスフェノールAPに由来する構造単位(b2)とを含むが、それぞれの構成要素について以下に説明する。
本発明に使用される変性ポリカーボネート系樹脂(B)は、ポリマーアロイであることが、狙い通りの構造単位割合を有する樹脂を得る観点から好ましい。
他の樹脂としては、芳香族(メタ)アクリレート単量体単位5~80質量%およびメチルメタクリレート単量体単位95~20質量%からなるアクリル系共重合体がある。ここで、芳香族(メタ)アクリレート単量体単位としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが例示できる。例えば、フェニルメタクリレート34質量%とメチルメタクリレート66質量%の共重合体である所謂「三菱レイヨン(株)製のメタブレン(MATABLEN)H-880」が好ましい。
変性ポリカーボネート系樹脂(B)の重量平均分子量は、上述した<ポリカーボネート系樹脂(A)の重量平均分子量の測定法>と同様の方法に基づいて測定することができる。
本発明において、変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層の厚さは、樹脂積層体の表面硬度やコストに影響する。つまり、変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層の厚さが薄すぎると表面硬度が低くなり好ましくない。変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層の厚さが大きすぎるとコスト高になり好ましくない。変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層の厚さは20~250μmが好ましく、30~200μmがより好ましい。さらに好ましくは60~150μmである。
本発明において、基材層を形成するポリカーボネート系樹脂(A)および/または表層を形成する変性ポリカーボネート系樹脂(B)には、上述の主たる成分以外の成分を含めることができる。
本発明において、変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層の表面、またはポリカーボネート系樹脂(A)を含む層の表面にハードコート処理を施してもよい。例えば、熱エネルギーおよび/または光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料を用いるハードコート処理によりハードコート層を形成する。熱エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、ポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などの熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。また、光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、1官能および/または多官能であるアクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーからなる樹脂組成物に光重合開始剤が加えられた光硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
樹脂積層体の中央付近から縦10cm、横6cmの試験片を切り出した。試験片を2点支持型のホルダーにセットして温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機に24時間以上投入して状態調整した後、反りを測定した。このときの値を処理前反り量の値とした。次に試験片をホルダーにセットして温度85℃、相対湿度85%に設定した環境試験機の中に投入し、その状態で120時間保持した。さらに温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機の中にホルダーごと移動し、その状態で4時間保持後に再度反りを測定した。このときの値を処理後反り量の値とした。反りの測定には、電動ステージ具備の3次元形状測定機を使用し、取り出した試験片を上に凸の状態で水平に静置し、1mm間隔でスキャンし、中央部の盛り上がりを反りとして計測した。処理前後の反り量の差、すなわち、(処理後反り量)-(処理前反り量)を反り変化量として評価した。その際、変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層側が凸の場合は「-」符号、ポリカーボネート系樹脂(A)を含む層側が凸の場合は「+」符号で評価した。
JIS K 5600-5-4に準拠し、樹脂積層体の中央付近の変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層の表面に対して角度45度、荷重750gで変性ポリカーボネート系樹脂(B)を含む層の表面に次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。
反射・透過率計HR-100型(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて樹脂積層体の全光線透過率をJIS K7361-1に準じて評価した。
反射・透過率計HR-100型(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて樹脂積層体のHazeをJIS K7136に準じて評価した。
ポリカーボネート系樹脂(A-1)及びビスフェノールCに由来する構造単位(b1)を有するポリカーボネート系樹脂(b1-1)として、下記に示す材料を使用したが、これらに限定されるわけではない。
ポリカーボネート系樹脂(A-1):三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ユーピロンE-2000(ビスフェノールAに由来する構造単位:100重量%、重量平均分子量:34,000、ガラス転移温度:147℃)
ビスフェノールCに由来する構造単位(b1)を有するポリカーボネート系樹脂(b1-1):三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ユーピロンKS3412UR 7533NS(ビスフェノールCに由来する構造単位:98重量%以上、重量平均分子量:34,000、ガラス転移温度:116℃)
100リットル反応容器に、8.0質量/質量%の水酸化ナトリウム水溶液34リットルを加え、ビスフェノールAP5.8kg(本州化学工業株式会社製、20mol)とハイドロサルファイト10gを加え溶解した。これにジクロロメタン22リットルを加え、15℃に保ちながら撹拌しつつ、ホスゲン2.6kgを30分かけて吹き込んだ。
吹き込み終了後、1分間激しく撹拌して反応液を乳化させ、p-ターシャルブチルフェノール150g(1.00mol)を加え、さらに10分間撹拌後、20mlのトリエチルアミンを加え、さらに50分撹拌を継続し重合させた。
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液の導電率が10μS/cm以下になるまで水洗を繰り返し、精製した重合樹脂液を得た。得られた樹脂液濃度をジクロロメタンで希釈し10.0質量/質量%に調整した。得られた樹脂液の内、5kgを45℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去して白色粉末状沈殿物を得た。得られた沈殿物を濾過し、120℃、24時間乾燥して、ビスフェノールAPに由来する構造単位(b2)を有するポリカーボネート系樹脂(b2-1)の粉末を得た。(ビスフェノールAPに由来する構造単位:100重量%、重量平均分子量:14,000、ガラス転移温度:170℃)
上記のユーピロンKS3412UR 7533NS(b1-1)を89質量部と、上記のビスフェノールAPに由来する構造単位(b2)を有するポリカーボネート系樹脂(b2-1)を11質量部との合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP-36(株式会社ADEKA製)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H-100、理研ビタミン株式会社製)0.2質量部を加え、ブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM-26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度270℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。(重量平均分子量:33,000、ガラス転移温度:120℃)
上記のユーピロンKS3412UR 7533NS(b1-1)を82質量部と、上記のビスフェノールAPに由来する構造単位(b2)を有するポリカーボネート系樹脂(b2-1)を18質量部との合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP-36(株式会社ADEKA製)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H-100、理研ビタミン株式会社製)0.2質量部を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。(重量平均分子量:31,000、ガラス転移温度:121℃)
上記のユーピロンKS3412UR 7533NS(b1-1)の100質量部に対して、リン系添加剤PEP36(株式会社ADEKA製)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H-100、理研ビタミン株式会社製)0.2質量部を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
軸径32mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、全押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結されたTダイとを有する多層押出機に各押出機と連結したマルチマニホールドダイとを有する多層押出装置を用いて樹脂積層体を成形した。軸径32mmの単軸押出機に製造例1で得た樹脂(B-1)を連続的に導入し、シリンダー温度270℃、吐出量を2.4kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート系樹脂(A-1)を連続的に導入し、シリンダー温度280℃、吐出量を30.0kg/hで押し出した。全押出機に連結されたフィードブロックは2種2層の分配ピンを備え、温度270℃にして樹脂(B-1)と樹脂(A-1)を導入し積層した。その先に連結された温度270℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度130℃、140℃、180℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、樹脂(B-1)と樹脂(A-1)との樹脂積層体(D-1)を得た。得られた樹脂積層体(D-1)の全体厚みは中央付近で1000μm、樹脂(B-1)から成る層の厚みは中央付近で75μmであった。高温高湿環境下の反り変化量は-146μm、鉛筆引っかき硬度試験の結果はH、全光線透過率は90.3%、Hazeは0.3%であった。
樹脂(B-1)の代わりに樹脂(B-2)を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂(B-2)と樹脂(A-1)との樹脂積層体(D-2)を得た。得られた樹脂積層体(D-2)の全体厚みは中央付近で1000μm、樹脂(B-2)から成る層の厚みは中央付近で75μmであった。高温高湿環境下の反り変化量は-66μm、鉛筆引っかき硬度試験の結果はH、全光線透過率は90.3%、Hazeは0.3%であった。
樹脂(B-1)の代わりに樹脂(C-1)を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂(C-1)と樹脂(A-1)との樹脂積層体(E-1)を得た。得られた樹脂積層体(E-1)の全体厚みは中央付近で1000μm、樹脂(C-1)から成る層の厚みは中央付近で75μmであった。高温高湿環境下の反り変化量は-209μm、鉛筆引っかき硬度試験の結果はH、全光線透過率は90.3%、Hazeは0.3%であった。
即ち、ビスフェノールC単量体単位(b1-1)とビスフェノールAP単量体単位(b2-1)とを含む変性ポリカーボネート系樹脂(B)を使用した実施例1及び実施例2の樹脂積層体と、ビスフェノールC単量体単位(b1-1)のみを使用した比較例1の樹脂積層体とを比較すると、実施例1及び実施例2の樹脂積層体の方が高温高湿環境下の反り変化量が小さかった。また、実施例1及び実施例2と比較例1は同じ鉛筆硬度であった。
Claims (10)
- 前記変性ポリカーボネート系樹脂(B)が、ポリマーアロイである、請求項1に記載の樹脂積層体。
- 前記変性ポリカーボネート系樹脂(B)を主成分として含む層の厚さが20~250μmであり、前記樹脂積層体の全体厚みが0.05~3.5mmの範囲である、請求項1または2に記載の樹脂積層体。
- 前記変性ポリカーボネート系樹脂(B)を主成分として含む層および前記ポリカーボネート系樹脂(A)を主成分として含む層の少なくとも一方が紫外線吸収剤を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂積層体。
- 前記変性ポリカーボネート系樹脂(B)を主成分として含む層の表面にハードコート層をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂積層体。
- 前記樹脂積層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理および防汚処理からなる群から選択されるいずれか一つ以上の処理が施されてなる、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂積層体。
- 請求項1~6のいずれかに記載の樹脂積層体を含む透明基板材料。
- 請求項1~6のいずれかに記載の樹脂積層体を含む透明保護材料。
- 請求項1~6のいずれかに記載の樹脂積層体を含むタッチパネル前面保護板。
- 請求項1~6のいずれかに記載の樹脂積層体を含む、OA機器用または携帯電子機器用の前面板。
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