JP2023137992A - 多層体、透明基板、透明保護フィルム、タッチパネル前面保護フィルム、および、ディスプレイデバイス用の前面板 - Google Patents

多層体、透明基板、透明保護フィルム、タッチパネル前面保護フィルム、および、ディスプレイデバイス用の前面板 Download PDF

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正樹 平林
Masaki Hirabayashi
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Abstract

【課題】高温高湿下に曝されても耐反り変形性に優れた多層体、ならびに、透明基板、透明保護フィルム、タッチパネル前面保護フィルム、および、ディスプレイデバイス用の前面板を提供すること。【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)を含む層の少なくとも一方の面上に、熱可塑性樹脂(B)を含む層を有し、前記熱可塑性樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および環状酸無水物単量体単位(b3)を含み、熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、ビニル芳香族単量体単位(b2)の割合が12質量%以上であり、熱可塑性樹脂(B)の総量に対する(b1)、(b2)、(b3)それぞれの割合、B1、B2、B3が式(1)を満たす、多層体。0.15≦|0.0465×B1+0.0323×B2-0.3903×B3|≦1.0・・(1)【選択図】図1

Description

本発明は、多層体、透明基板、透明保護フィルム、タッチパネル前面保護フィルム、および、ディスプレイデバイス用の前面板に関する。
(メタ)アクリル樹脂は、表面硬度、透明性、耐擦傷性および耐候性などに優れる。一方、ポリカーボネート樹脂は耐衝撃性などに優れる。このことからアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する多層体は、表面硬度、透明性、耐擦傷性、耐候性および耐衝撃性などに優れ、自動車部品、家電製品、電子機器および携帯型情報端末のディスプレイに用いられている。しかし、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する多層体は、高温高湿下である屋外や車中で使用される場合に、反りが発生する問題を抱えている。
例えば、特許文献1ではメタクリル樹脂とスチレン共重合体を含む樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する多層体が報告されている。かかる多層体は、85℃85%RHの高温高湿下で反りを抑えることが報告されている。
国際公開第2015/050051号
しかしながら、上記特許文献1に記載の多層体は、85℃85%RHの高温高湿下での反り変化量が大きい場合もあり、その後の印刷加工等で不具合が発生する場合がある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、高温高湿下に曝されても耐反り変形性に優れた多層体、ならびに、透明基板、透明保護フィルム、タッチパネル前面保護フィルム、および、ディスプレイデバイス用の前面板を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
<1>ポリカーボネート樹脂(A)を含む層の少なくとも一方の面上に、熱可塑性樹脂(B)を含む層を有し、
前記熱可塑性樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)を含み、熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、ビニル芳香族単量体単位(b2)の割合が12質量%以上であり、
式(1)を満たし、
ポリカーボネート樹脂(A)が式(2)で表される1価フェノールから誘導される末端構造を有する、
多層体。
0.15≦|0.0465×B1+0.0323×B2-0.3903×B3|≦1.0・・(1)
(式(1)中、B1は熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合(質量%)を示す。B2は熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、ビニル芳香族単量体単位の割合(質量%)を示す。B3は、熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、環状酸無水物単量体単位の割合(質量%)を示す。)
Figure 2023137992000002
(式(2)中、Rは、炭素数7以下の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~7のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、置換基は、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルキル基、またはフェニル基であり、Lは単結合または-C(=O)O-を表す。)
<2>前記熱可塑性樹脂(B)が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)を含む共重合体、ならびに/または、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)の少なくとも1種の単量体単位を含む重合体を含む、<1>に記載の多層体。
<3>前記熱可塑性樹脂(B)に含まれる環状酸無水物単量体単位(b3)が、無水マレイン酸単位を含む、<1>または<2>に記載の多層体。
<4>前記熱可塑性樹脂(B)に含まれるビニル芳香族単量体単位(b2)が、スチレン単位を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の多層体。
<5>前記ポリカーボネート樹脂(A)を含む層、および/または、前記熱可塑性樹脂(B)を含む層が、紫外線吸収剤を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の多層体。
<6>前記多層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理および防汚処理の少なくとも1つが施されている、<1>~<5>のいずれか1つに記載の多層体。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載の多層体を含む、透明基板。
<8><1>~<6>のいずれか1つに記載の多層体を含む、透明保護フィルム。
<9><1>~<6>のいずれか1つに記載の多層体を含む、タッチパネル前面保護フィルム。
<10><1>~<6>のいずれか1つに記載の多層体を含む、ディスプレイデバイス用の前面板。
本発明によれば、高温高湿下に曝されても耐反り変形性に優れた多層体、ならびに、透明基板、透明保護フィルム、タッチパネル前面保護フィルム、および、ディスプレイデバイス用の前面板が提供可能になった。
本実施形態の多層体の製造方法の一例を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本明細書では、置換および無置換を記していない表記は、無置換の方が好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、メタクリルが好ましい。
本明細書において、ppmは質量ppmを意味する。
本明細書における多層体は、それぞれ、フィルムまたはシートの形状をしているものを含む趣旨である。「フィルム」および「シート」とは、それぞれ、長さと幅に対して、厚さが薄く、概ね、平らな成形体をいう。また、本明細書における「フィルム」および「シート」は、単層であっても多層であってもよい。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
本実施形態の多層体は、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層の少なくとも一方の面上に、熱可塑性樹脂(B)を含む層を有し、前記熱可塑性樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)を含み、熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、ビニル芳香族単量体単位(b2)の割合が12質量%以上であり、式(1)を満たし、ポリカーボネート樹脂(A)が式(2)で表される1価フェノールから誘導される末端構造を有することを特徴とする。
0.15≦|0.0465×B1+0.0323×B2-0.3903×B3|≦1.0・・(1)
(式(1)中、B1は熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合(質量%)を示す。B2は熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、ビニル芳香族単量体単位の割合(質量%)を示す。B3は、熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、環状酸無水物単量体単位の割合(質量%)を示す。)
Figure 2023137992000003
(式(2)中、Rは、炭素数7以下の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~7のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、置換基は、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルキル基、またはフェニル基であり、Lは単結合または-C(=O)O-を表す。)
このような構成とすることにより、高温高湿下に曝されても耐反り変形性に優れた多層体が得られる。
具体的には、本発明者が(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)を含む熱可塑性樹脂について、種々のフィルムを検討した結果、上記式(1)を満たす場合に、高温高湿下における反りを効果的に抑制できることを見出した。
すなわち、多層体の厚さが1000μmのものにおいて、高温高湿下に晒した後の反りが200μm以下であれば、性能要求を満たすものとして、多層体について検討した。なお、多層体の厚が1000μmより厚い場合、および、1000μmよりも薄い場合においても、多層体の厚みに応じた反りを効果的に抑制できる。
より具体的には、熱可塑性樹脂(B)における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)およびビニル芳香族単量体単位(b2)の割合が多くなると、多層体は、熱可塑性樹脂(B)を含む層側が凹むことを見出した。特に、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)の割合が多いと、アクリル酸エステル単量体単位(b1)は、通常、芳香環が無いため、ビニル芳香族単量体単位(b2)よりも水を吸収しやすく、凹状の反りへの影響が大きめであると推測された。
一方、環状酸無水物単量体単位(b3)の割合が多くなると、多層体は、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層側が凹む。すなわち、熱可塑性樹脂(B)を含む層側がドーム型(凸状、後述の実施例における-)に反ることが分かった。これは、環状酸無水物単量体単位(b3)が環状無水物であるため、水分の影響を受けにくく、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層の反りに影響されやすいことが分かった。ポリカーボネート樹脂(A)を含む層は、縮みやすいため、多層体は、熱可塑性樹脂(B)を含む層側がドーム型(凸状、後述の実施例における-)に反ると推測された。
本実施形態では、これらの推測と多数のサンプルの実測結果により、式(1)を見出したものである。
また、熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、ビニル芳香族単量体単位(b2)の割合を12質量%以上とすることにより、得られる多層体の虹ムラを抑制できた。
一方、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が低いと、高温高湿下に曝されても耐反り変形性が劣ってしまう。本実施形態では、所定の末端構造を有するポリカーボネート樹脂を用いてこの点を担保している。
本実施形態における多層体は、後述する実施例における<高温高湿環境下の反り試験>に従って測定した反り変化量が、絶対値で200μm以下であることが好ましく、190μm以下であることがより好ましく、180μm以下であることが特に好ましい。上記反り変化量の絶対値が200μm以下であることにより、目視での多層体の変形が困難になるレベルとすることができる。
本実施形態において、式(1)は、0.15≦|0.0465×B1+0.0323×B2-0.3903×B3|≦1.0である。本明細書では、「0.0465×B1+0.0323×B2-0.3903×B3」を「式(1)の値」ということがある。すなわち、本発明においては、式(1)の値の絶対値が0.15以上1.0以下であり、式(1)の値は、正の値、すなわち、0.15以上1.0以下でることが好ましい。また、式(1)の値の絶対の下限値は、0.2以上、0.3以上であってもよい。
<ポリカーボネート樹脂(A)を含む層>
本実施形態の多層体は、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層を含む。
ポリカーボネート樹脂(A)を含む層は、ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とする層である。ここで、「ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とする」とは、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層中のポリカーボネート樹脂(A)の含有量が50質量%を超えることを意味する。ポリカーボネート樹脂(A)を含む層は、75質量%以上のポリカーボネート樹脂(A)を含んでいることが好ましく、90質量%以上のポリカーボネート樹脂(A)を含んでいることがより好ましく、95質量%以上のポリカーボネート樹脂(A)を含んでいることがさらに好ましく、実質的にポリカーボネート樹脂(A)のみからなることがさらに好ましい。
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂(A)は式(2)で表される1価フェノールから誘導される末端構造を有する。
Figure 2023137992000004
(式(2)中、Rは、炭素数7以下の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~7のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、置換基は、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルキル基、またはフェニル基であり、Lは単結合または-C(=O)O-を表す。)
は、炭素数7以下の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、炭素数7以下の直鎖または分岐のアルキル基、または、炭素数7以下の直鎖または分岐のアルケニル基が好ましく、炭素数6以下の直鎖または分岐のアルキル基、または、炭素数6以下の直鎖または分岐のアルケニル基がより好ましく、t-ブチル基がさらに好ましい。
~Rは、それぞれ独立に、水素原子が好ましい。
Lは単結合が好ましい。
また、式(2)において、水酸基(OH)と-L-Rとは、パラ位、メタ位、オルト位のいずれの位置関係であってもよいが、パラ位となるように設けられていることが好ましい。
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂(A)は分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む。すなわち、-[O-R-OCO]-単位(式中、Rが脂肪族基、芳香族基、または脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造および/または分岐構造を持つものを示す)を含むものであれば特に限定されるものではないが、特に下記式(3)の構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。このようなポリカーボネート樹脂を使用することで、耐衝撃性に優れた多層体を得ることができる。
Figure 2023137992000005
本実施形態では、ポリカーボネート樹脂(A)の末端基を除く全構成単位の、好ましくは90質量%以上が、より好ましくは95質量%以上が、さらに好ましくは98質量%以上が、式(3)の構造単位であることが好ましい。
具体的には、ポリカーボネート樹脂(A)として、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社から市販されている、ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000)等を用いることができる。
本実施形態で用いられるポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、132℃以上であることが好ましく、135℃以上であることがより好ましく、137℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましく、145℃以上であることが一層好ましく、150℃以上であってもよい。また、本実施形態で用いられるポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、160℃以下であることが好ましく、155℃以下であることがより好ましく、さらには、154℃以下、153℃以下、152℃以下であってもよい。
前記ポリカーボネート樹脂(A)を含む層に含まれる他の樹脂としては、ポリエステル樹脂がある。ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸を主成分として含んでいればよく、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。例えば、主成分であるエチレングリコール80~60(モル比率)に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールを20~40(モル比率、合計100)含むグリコール成分とジカルボン酸成分とが重縮合してなるポリエステル樹脂、いわゆる、「PETG」が好ましい。また、ポリカーボネート樹脂(A)には、エステル結合とカーボネート結合をポリマー骨格中に有するポリエステルカーボネート樹脂が含まれていてもよい。
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂(A)の重量平均分子量は、15,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、25,000以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる多層体の耐衝撃性が向上する傾向にある。また、ポリカーボネート樹脂(A)の重量平均分子量は、75,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましく、65,000以下であることがさらに好ましく、60,000以下であることが一層好ましい。上記上限値以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層を積層させる時に過剰な熱源を必要とせず、成形法によらず高い温度の必要が低くなり、ポリカーボネート樹脂(A)が高温に晒されることを効果的に回避できる。結果として、ポリカーボネート樹脂(A)の熱安定性が効果的に維持できる。
従って、多層体の耐衝撃性および成形条件の観点から上記範囲が好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)の重量平均分子量は、特開2007-179018号公報の段落0061~0064の記載に基づいて測定することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。測定法の詳細を以下に示す。
Figure 2023137992000006
標準ポリマーとしてポリスチレン(PS)を使用して測定を行った後、ユニバーサルキャリブレーション法により、溶出時間とポリカーボネート(PC)の分子量との関係を求めて検量線とする。そして、PCの溶出曲線(クロマトグラム)を検量線の場合と同一の条件で測定し、溶出時間(分子量)とその溶出時間のピーク面積(分子数)とから各平均分子量を求める。分子量Miの分子数をNiとすると、重量平均分子量は、以下のように表される。また、換算式は以下の式を使用した。
(重量平均分子量)
Mw=Σ(NiMi)/Σ(NiMi)
(換算式)
MPC=0.47822MPS1.01470
なお、MPCはPCの分子量、MPSはPSの分子量を示す。
本実施形態で用いられるポリカーボネート樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)はメルトインデクサーを用いて、温度300℃、1.2kg荷重下の条件で測定した。ポリカーボネート樹脂(A)のMFRは、0.5g/10分以上であることが好ましく、1.0g/10分以上であることがより好ましく、1.5g/10分以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、多層体の成形性がより向上する傾向にある。また、前記MFRは、12.0g/10分以下であることが好ましく、10.0g/10分以下であることがより好ましく、8.0g/10分以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。
本実施形態で用いられるポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、公知のホスゲン法(界面重合法)、エステル交換法(溶融法)等が例示される。
その他、ポリカーボネート樹脂の詳細は、特開2019-035001号公報の段落0040~0073の記載、特開2018-103518号公報の段落0016~0043の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
ポリカーボネート樹脂(A)を含む層は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、各種樹脂添加剤を含有していてもよい。樹脂添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、滴下防止剤、染料および顔料(カーボンブラックを含む)、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、樹脂改質剤、相溶化剤、有機フィラーや無機フィラーといった強化材などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)と他の成分の混合の方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。
ポリカーボネート樹脂(A)を含む層は、上述の通り、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケートなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジンなどのトリアジン系紫外線吸収剤、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルメタクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルアクリレート、3-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]プロピルメタクリレート、3-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]プロピルアクリレート、4-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]ブチルメタクリレート、4-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]ブチルアクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、4-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]ブチルメタクリレート、4-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]ブチルアクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5カルボキシレート、2-(アクリロイルオキシ)エチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、4-(メタクリロイルオキシ)ブチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、4-(アクリロイルオキシ)ブチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート等などのセサモール型ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)を含む層が紫外線吸収剤を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層100質量部に対し、0.001質量部以上であることが好ましく、また、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形法によっては過剰な紫外線吸収剤が高い温度がかかることによって起こる飛散を効果的に抑制でき、成形環境の汚染を効果的に抑制できる。
ポリカーボネート樹脂(A)を含む層は、紫外線吸収剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)を含む層に紫外線吸収剤を配合する場合、その混合の方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。
ポリカーボネート樹脂(A)を含む層は、上述の通り、酸化防止剤を含んでいてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。中でも本実施形態においては、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤(より好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)が好ましい。リン系酸化防止剤は、樹脂組成物や平板状成形体の色相に優れることから特に好ましい。
リン系酸化防止剤は、ホスファイト系酸化防止剤が好ましく、以下の式(P1)または(P2)で表されるホスファイト化合物が好ましい。
Figure 2023137992000007
(式(P1)中、R11およびR12はそれぞれ独立に、炭素数1~30のアルキル基または炭素数6~30のアリール基を表す。)
Figure 2023137992000008
(式(P2)中、R13~R17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6~20のアリール基または炭素数1~20のアルキル基を表す。)
上記式(P1)中、R11、R12で表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。R11、R12がアリール基である場合、以下の式(1-a)、(1-b)、または(1-c)のいずれかで表されるアリール基が好ましい。式中の*は結合位置を表す。
Figure 2023137992000009
(式(1-a)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基を表す。式(1-b)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基を表す。)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特開2018-090677号公報の段落0063、特開2018-188496号公報の段落0076の記載を参照でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
酸化防止剤は、上記の他、特開2017-031313号公報の段落0057~0061の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
ポリカーボネート樹脂(A)が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.008質量部以上であることがより好ましい。また、前記酸化防止剤の含有量の上限値としては、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層100質量部に対して、0.5質量部以下が好ましく、0.3質量部以下がより好ましく、0.2質量部以下がさらに好ましく、0.15質量部以下であることが一層好ましく、0.10質量部以下であることがさらに一層好ましく、0.08質量部以下であることが特に一層好ましい。
酸化防止剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、色相、耐熱変色性がより良好な多層体を得ることができる。また、酸化防止剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、耐熱変色性を悪化させることなく、湿熱安定性が良好な多層体を得ることができる。
酸化防止剤は、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は合計量が上記範囲となることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)を含む層は、また、離型剤を含むことも好ましい。
離型剤を含むことにより、多層体の成形性を向上させることができる。
離型剤の種類は特に定めるものではないが、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、数平均分子量100~5,000のポリエーテル、ポリシロキサン系シリコーンオイル等が挙げられる。
離型剤の詳細は、国際公開第2015/190162号の段落0035~0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
ポリカーボネート樹脂(A)が離型剤を含む場合、離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることがさらに好ましい。上限値としては、0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以下であることがさらに好ましい。
離型剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)を含む層に含まれる材料、例えば、ポリカーボネート樹脂(A)は、フィルター処理によりろ過精製されることが好ましい。フィルターを通して精製あるいは積層する事により異物や欠点といった外観不良が少ない多層体を得ることができる。ろ過方法に特に制限はなく、溶融ろ過、溶液ろ過、あるいはその組み合わせ等を用いることが出来る。
使用するフィルターに特に制限はなく、公知のものが使用でき、各材料の使用温度、粘度、ろ過精度等により適宜選ばれる。フィルターの濾材としては、特に限定されないが、ポリプロピレン、コットン、ポリエステル、ビスコースレイヨンやグラスファイバーの不織布あるいはロービングヤーン巻物、フェノール樹脂含浸セルロース、金属繊維不織布焼結体、金属粉末焼結体、ブレーカープレート、あるいはこれらの組み合わせなど、いずれも使用可能である。特に耐熱性や耐久性、耐圧力性を考えると金属繊維不織布を焼結したタイプが好ましい。
ろ過精度は、フィルターの平均孔径が、例えば50μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。また、ろ過フィルターの平均孔径の下限は、例えば、1μm以上であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)のろ過については、例えば、公知の熱可塑性樹脂の溶融ろ過に用いられているポリマーフィルターを使うことが好ましい。ポリマーフィルターは、その構造によりリーフディスクフィルター、キャンドルフィルター、パックディスクフィルター、円筒型フィルターなどに分類されるが、特に有効ろ過面積が大きいリーフディスクフィルターが好適である。
また、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層は単層であってもよいし、多層であってもよい。通常は、単層である。
ポリカーボネート樹脂(A)を含む層は、特に制限はないが、例えば、1μm以上であり、30μm以上であることが好ましく、35μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることが一層好ましく、100μm以上であることがより一層好ましく、300μm以上であることがさらに一層好ましく、500μm以上であることが特に一層好ましく、700μm以上であってもよい。また、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層の厚みは、10,000μm以下であることが好ましく、5,000μm以下であることがより好ましく、3,000μm以下であってもよく、2,500μm以下であってもよく、1,500μm以下であってもよく、1,200μm以下であってもよく、1,100μm以下であってもよい。
<熱可塑性樹脂(B)を含む層>
本実施形態の多層体は、熱可塑性樹脂(B)を含む層を含む。
熱可塑性樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)を含むが、本実施形態の効果を損なわない範囲で、その他の単量体単位を含んでもよい。
熱可塑性樹脂(B)を含む層は、熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層である。ここで、「熱可塑性樹脂(B)を主成分とする」とは、熱可塑性樹脂(B)を含む層中の熱可塑性樹脂(B)の含有量が50質量%を超えることを意味する。さらに、熱可塑性樹脂(B)を含む層は、75質量%以上の熱可塑性樹脂(B)を含んでいることが好ましく、90質量%以上の熱可塑性樹脂(B)を含んでいることがより好ましく、95質量%以上の熱可塑性樹脂(B)を含んでいることがさらに好ましく、実質的に熱可塑性樹脂(B)のみからなることがさらに好ましい。
前記熱可塑性樹脂(B)に含まれる(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)としては、特に定めるものではないが、式(b1)で表される単量体単位であることが好ましい。
式(b1)
Figure 2023137992000010
(式(b1)中、Raは、水素原子またはメチル基であり、Raは、脂肪族基である。)
上記式(b1)において、Raは、水素原子またはメチル基であり、メチル基が好ましい。Raは、脂肪族基であり、直鎖または分岐の脂肪族基であることが好ましく、直鎖の脂肪族基であることがより好ましい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルキニル基(シクロアルキニル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)等が例示され、アルキル基が好ましく、直鎖または分岐のアルキル基がより好ましく、直鎖のアルキル基がさらに好ましい。Raである脂肪族基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましく、1または2であることが一層好ましく、1であることがより一層好ましい。
式(b1)で表される(メタ)アクリレートは、アルキル(メタ)アクリレート(好ましくはアルキルメタクリレート)であることが好ましく、メチル(メタ)アクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)であることがより好ましい。メチルメタクリレートを用いることにより、得られる多層体の衝撃強さと鉛筆硬度が向上する傾向にある。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸3-メトキシブチル、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸ペンタフルオロエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸3-ジメチルアミノエチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸1-メチルシクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロオクチル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-イルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸アラルキルエステルなどが挙げられ、入手性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、およびメタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル等のアクリル酸エステルが好ましく、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルが最も好ましい。
熱可塑性樹脂(B)の総量に対する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)(好ましくはメタクリル酸メチル)の割合は、35質量%以上であることが好ましく、37質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることが一層好ましく、48質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、表面硬度(例えば、鉛筆硬度)がより向上する傾向にある。また、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)の割合は、86質量%以下であることが好ましく、84質量%以下であることがより好ましく、82質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが一層好ましく、78質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、多層体の熱可塑性樹脂(B)を含む層側が凹状に反ることを効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂(B)に含まれるビニル芳香族単量体単位(b2)としては、特に限定されず、任意の公知のビニル芳香族単量体を用いることができる。
ビニル芳香族単量体は、ビニル基と芳香環基を有する化合物であり、(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能な化合物を広く採用できる。ビニル芳香族単量体は、CH=CH-L-Arで表される化合物であることが好ましい。ここで、Lは単結合または2価の連結基であり、単結合または式量100~500の2価の連結基であることが好ましく、単結合または式量100~300の2価の連結基であることがより好ましく、単結合であることがさらに好ましい。Lが2価の連結基の場合、脂肪族炭化水素基または、脂肪族炭化水素基と-O-との組み合わせからなる基であることが好ましい。ここで、式量とは、ビニル芳香族単量体のLに相当する部分の1モル当たりの質量(g)を意味する。以下、他の「式量」についても同様に考える。Arは芳香環基であり、置換または無置換の、ベンゼン環基またはナフタレン環(好ましくはベンゼン環)であることが好ましく、無置換のベンゼン環基であることがさらに好ましい。
より具体的には、ビニル芳香族単量体は式(b2)で表されるビニル芳香族単量体を含むことが好ましい。
式(b2)
Figure 2023137992000011
(式(b2)中、Raは、置換基であり、naは、0~6の整数である。)
式(b2)中、Raは、置換基であり、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子、フッ素原子または臭素原子)、水酸基、アルキル基(好ましくは炭素数1~5のアルキル基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~5のアルケニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~5のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくはフェノキシ基)が例示される。naが2以上のとき、複数のRaは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
naは、5以下の整数であることが好ましく、4以下の整数であることがより好ましく、3以下の整数であることがさらに好ましく、2以下の整数であることが一層好ましく、1以下の整数であることがより一層好ましく、0であることがさらに一層好ましい。
ビニル芳香族単量体は、分子量104~600の化合物であることが好ましく、分子量104~400の化合物であることがより好ましく、104~200であることがさらに好ましい。
ビニル芳香族単量体は、具体的には、入手の容易性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられ、入手性の観点から、スチレン、α-メチルスチレンが好ましく、スチレンが最も好ましい。
熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、ビニル芳香族単量体単位(b2)(好ましくはスチレン)の割合は12質量%以上であり、14質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、16質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、屈折率が向上し、熱可塑性樹脂(B)とポリカーボネート樹脂(A)との屈折率差が小さくなるため、外観が向上する傾向にある。また、前記ビニル芳香族単量体単位(b2)の割合は50質量%以下であることが好ましく、48質量%以下であることがより好ましく、46質量%以下であることがさらに好ましく、42質量%以下であることが一層好ましく、38質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、多層体の熱可塑性樹脂(B)を含む層側が凹状に反ることを効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ビニル芳香族単量体単位(b2)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂(B)に含まれる環状酸無水物単量体単位(b3)としては、無水マレイン酸単位、イタコン酸無水物単位、シトラコン酸無水物単位、アコニット酸無水物単位が挙げられ、入手性の観点から、無水マレイン酸単位が好ましい。前記環状酸無水物単量体単位(b3)は2種以上を混合してもよい。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)以外の他の単量体単位を含んでいてもよい。
他の単量体単位としては、N-置換型マレイミド単量体などが挙げられる。N-置換型マレイミド単量体としては、N-フェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ニトロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミドなどのN-アリールマレイミド等が挙げられ、入手性の観点からN-フェニルマレイミドが好ましい。これらのN-置換型マレイミド単量体は2種以上を混合してもよい。
熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、環状酸無水物単量体単位(b3)(好ましくは無水マレイン酸)の割合は、6質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、多層体の熱可塑性樹脂(B)を含む層側が凹状に反ることを効果的に抑制できる傾向にある。また、前記環状酸無水物単量体単位(b3)の割合は、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、14質量%以下であることが一層好ましく、13質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、多層体は、熱可塑性樹脂(B)を含む層側が凸状に反ることを効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、環状酸無水物単量体単位(b3)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂(B)は、末端基を除く全単量体単位の好ましくは90質量%以上が、より好ましくは95質量%以上が、さらに好ましくは98質量%以上が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)で占められることが好ましい。
熱可塑性樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)を含む共重合体、ならびに/または、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)の少なくとも1種の単量体単位を含む重合体であることが好ましい。
具体的には、以下の(共)重合体から選択されるブレンド物であってもよい。
(b1)/(b2)/(b3)の3元共重合体
(b1)/(b2)の2元共重合体
(b1)/(b3)の2元共重合体
(b2)/(b3)の2元共重合体
(b1)の重合体
(b2)の重合体
(b3)の重合体
上記(b1)、(b2)、(b3)はそれぞれ1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。例えば、(b1)の種類が異なる3元共重合体を2種ブレンドしてもよい。また、例えば、(b1)の種類が異なる2種の(b1)の重合体を用いてもよい。
熱可塑性樹脂(B)の好ましい実施形態の一例は、(b1)/(b2)/(b3)の3元共重合体、(b2)/(b3)の2元共重合体、および、(b1)の重合体から選択される重合体によって式(1)を満たすように調整されることである。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂(B)の製造方法は、特に限定されないが、公知の溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法等、適宜選択できる。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂(B)の重量平均分子量は、1,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱可塑性樹脂(B)の強度が向上する傾向にあり、多層体の耐衝撃性が向上する傾向にある。また、前記熱可塑性樹脂(B)の重量平均分子量は、400,000以下であることが好ましく、300,000以下であることがより好ましく、200,000以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、大多層体成形時に装置への負荷を小さくでき、装置故障といった問題を効果的に抑制できる。
上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度は、100℃以上であることが好ましく、115℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる多層体について、熱環境において変形や割れをより生じにくくすることができる。また、前記熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度は、190℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好まい。前記上限値以下とすることにより、鏡面ロールや賦形ロールによる連続式熱賦形、あるいは鏡面金型や賦形金型によるバッチ式熱賦形などの加工性に優れる傾向にある。
熱可塑性樹脂(B)を含む層が、2種以上の熱可塑性樹脂(B)を含む場合、混合物のガラス転移温度とする。
ガラス転移温度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
熱可塑性樹脂(B)を含む層は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、各種樹脂添加剤を含有していてもよい。樹脂添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、滴下防止剤、染料および顔料(カーボンブラックを含む)、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、樹脂改質剤、相溶化剤、有機フィラーや無機フィラーといった強化材などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤等の詳細は、上述のポリカーボネート樹脂(A)を含む層で述べた事項と同義であり、好ましい範囲も同様である。
本実施形態の一例として、熱可塑性樹脂(B)を含む層が紫外線吸収剤を含む態様が挙げられる。
本実施形態において、熱可塑性樹脂(B)と他の成分含む組成物(例えば、ペレット等)の製造方法には特に制限はなく、必要な成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの混合機を用いて予め混合しておき、その後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダーなどの機械で溶融混練するといった公知の方法が適用できる。
また、熱可塑性樹脂(B)を含む層は単層であってもよいし、多層であってもよい。通常は、単層である。
本実施形態において、熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚さは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、40μm以上であることが一層好ましく、50μm以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる多層体の表面硬度を高くできる傾向にある。前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚さは、250μm以下であることが好ましく、180μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることがさらに好ましく、90μm以下であることが一層好ましく、70μm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる多層体の耐衝撃性がより向上する傾向にある。
本実施形態の多層体における熱可塑性樹脂(B)の表面の鉛筆硬度は、H以上であることが好ましく、また、3H以下であることが好ましく、2H以下であってもよい。鉛筆硬度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層と熱可塑性樹脂(B)を含む層の合計厚みは、0.04mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましく、0.5mm以上であることが一層好ましく、0.8mm以上であることがより一層好ましい。前記ポリカーボネート樹脂(A)を含む層と熱可塑性樹脂を含む層の合計厚みは、3.0mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましく、2.0mm以下であることがさらに好ましく、1.5mm以下であることが一層好ましく、1.2mm以下であることがより一層好ましい。前記範囲とすることにより、成形がより容易になる傾向にある。
本実施形態の多層体において、熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚みに対する、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層の厚み(A:B)が、1:10~20であることが好ましい。
本実施形態の多層体の総厚みは、0.04mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましく、0.5mm以上であることが一層好ましく、0.8mm以上であることがより一層好ましい。前記多層体の総厚みは、3.0mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましく、2.0mm以下であることがさらに好ましく、1.5mm以下であることが一層好ましく、1.2mm以下であることがより一層好ましい。
本実施形態の多層体は、その片面または両面に耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理および防汚処理のいずれか1つ以上を施すことができる。反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理の方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、反射低減塗料を塗布する方法、誘電体薄膜を蒸着する方法、帯電防止塗料を塗布する方法などが挙げられる。
また、本実施形態の多層体は、さらに、ハードコート層、接着層、粘着層、防汚層等の他の層を有していてもよい。ハードコート層としては、特開2013-020130号公報の段落0045~0055の記載、特開2018-103518号公報の段落0073~0076の記載、特開2017-213771号公報の段落0062~0082の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の多層体の一例は、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層の表面に、熱可塑性樹脂(B)を含む層を有する多層体である。好ましくは、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層および熱可塑性樹脂(B)を含む層以外の樹脂層を含まない多層体である。
<多層体の製造方法>
本実施形態の多層体は、公知の方法によって製造することができる。例えば、個別に形成した熱可塑性樹脂(B)を含む層と、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層とを積層して両者を加熱圧着する方法、個別に形成した熱可塑性樹脂(B)を含む層とポリカーボネート樹脂(A)を含む層とを積層して、両者を接着剤によって接着する方法、熱可塑性樹脂(B)を含む層とポリカーボネート樹脂(A)を含む層とを共押出成形する方法、予め形成しておいた熱可塑性樹脂(B)を含む層を用いて、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層をインモールド成形して一体化する方法、などの各種方法がある。本実施形態においては、製造コストや生産性の観点からは、共押出成形する方法が好ましい。
共押出成形する方法としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層および熱可塑性樹脂(B)を含む層を各々別々の押出機で加熱溶融し、Tダイのスリット状の吐出口からそれぞれを押出して積層し、次いで冷却ロールに密着固化させるようにする製造方法を挙げることができる。
以下、図1に従って、本実施形態の多層体の製造方法の一例について説明する。本実施形態の多層体の製造方法が以下の方法に限定されるものでは無いことは言うまでもない。
図1は、実施形態に係る多層体の製造装置の一例を示す概略図である。図1では、ダイ1から共押出した溶融状態のポリカーボネート樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)とを、第1冷却ロール2と第2冷却ロール3との間に挟み込み、前記第2冷却ロール3に巻き掛けた後、少なくとも1本の後段冷却ロール4に巻きかける。その後、ピンチロール5に送り込むことにより多層体が得られる。
図1に示す形態では、まず、ポリカーボネート樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)とをそれぞれ別の押出機(図示せず)で加熱溶融し、共押出成形用のダイ1から共押出して積層する。
押出機で加熱溶融する温度は、ポリカーボネート樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)のそれぞれのガラス転移温度(Tg)よりも80℃以上150℃以下高い温度が好ましい。一般的には、ポリカーボネート樹脂(A)を押出するメイン押出機の温度条件は通常200℃以上、好ましくは220℃以上とすることであり、また、通常320℃以下、好ましくは310℃以下とすることである。また、一般的には、熱可塑性樹脂(B)を押出するサブ押出機の温度条件は通常180℃以上であり、好ましくは190℃以上であり、また、通常280℃以下であり、好ましくは270℃以下とすることである。
2種の溶融樹脂を共押出する方法としては、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式などの公知の方法を採用することができる。
例えば、フィードブロック方式の場合であれば、フィードブロックで積層した溶融樹脂をTダイなどのシート成形ダイに導き、シート状に成形した後、表面が鏡面処理された成形ロール(ポリッシングロール)に流入されてバンクを形成し、該成形ロール通過中に鏡面仕上げと冷却を行うようにすればよい。
マルチマニホールド方式の場合には、マルチマニホールドダイ内で積層した溶融樹脂を、ダイ内部でシート状に成形した後、成形ロールにて表面仕上げおよび冷却を行うようにすればよい。
いずれにしても、ダイ1の温度は通常230℃以上、好ましくは250℃以上、また、通常290℃以下、好ましくは280℃以下に設定する。
次いで、ダイ1から共押出されたシート状ないしフィルム状の多層体を、少なくとも3本の冷却ロールに巻きかけることによって冷却固化する。具体的には、溶融状態の多層体を第1冷却ロール2と第2冷却ロール3との間に挟み込み、第2冷却ロールに巻き掛けた後、少なくとも1本の後段冷却ロール4に巻き掛ける。その後、上下に配置された一対のピンチロール5に送り込むことにより多層体を得る。
成形(冷却)ロールとしては剛体ロールや弾性ロールがあり、いずれを用いても構わない。一実施形態において、冷却ロール(2、3、4)は剛体ロールである。多層体の表面を鏡面処理するため、剛体ロールは鏡面仕上げされていることが好ましい。
表面を鏡面処理するためには、第1冷却ロール2と第2冷却ロール3との間に挟み込み、前記第2冷却ロール3に巻き掛けた後、少なくとも1本の後段冷却ロール4でポリカーボネート樹脂(A)面を巻き掛けることが好ましい。第1冷却ロール2および第2冷却ロール3の温度は通常70℃以上であり、80℃以上に設定することが好ましく、また、通常、160℃℃以下であり、150℃以下に設定することが好ましい。
ロール周速度は、例えば、0.5m/分以上、好ましくは0.8m/分以上、また、例えば、30.0m/分以下、好ましくは6.0m/分以下に設定する。
後段冷却ロール4とピンチロール5の速度比は、例えば後段冷却ロール速度(m/分)/ピンチロール速度(m/分)=0.5~2.0、中でも好ましくは0.7~1.5に設定する。
<用途>
実施形態の多層体は、高温高湿下に曝されても耐反り変形性に優れるので、このような性能が求められる用途に広く用いられる。例えば、本実施形態の多層体は、透明基板の材料や透明保護フィルムの材料などとして好適に用いられる。すなわち、本実施形態においては、本実施形態の多層体を含む透明基板や本実施形態の多層体を含む透明保護フィルムなどが好適に挙げられる。
本実施形態の多層体の利用分野は、表示装置、電気電子機器、OA機器、携帯情報末端、機械部品、家電製品、車輌部品、各種容器、照明機器等の部品等が挙げられる。より具体的には、携帯電話端末、携帯型電子遊具、携帯情報端末、モバイルPCといった携帯型のディスプレイデバイスや、ノート型PC、デスクトップ型PC液晶モニター、カーナビ液晶モニター、液晶テレビといった設置型のディスプレイデバイスなどの、透明基板、透明保護フィルム(例えば、前面板)として好適に用いられる。特に、タッチパネル前面保護フィルムとして好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。特に、ポリカーボネート樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)が、ポリカーボネート樹脂(A-1)、三元共重合体(1)~(4)、重合体(5)~(8)に限定されるわけではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
<熱可塑性樹脂の単量体単位の組成比>
日本電子(株)製 JNM-AL400を用いて、H-NMRおよび13C-NMR(400MHz:溶媒はCDCl)の測定値から計算した。
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度(単位:℃)は、示差走査熱量測定(DSC)に従って測定した。
具体的には、窒素30mL/分の流通下、10℃/分で30℃から200℃まで昇温し、次に50℃/分で200℃から30℃まで降温し、再度10℃/分で30℃から200℃まで昇温した。2回目の昇温におけるベースラインと変曲点での接線の交点をガラス転移温度として用いた。
示差走査熱量測定装置は、セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200を用いた。
<熱可塑性樹脂(B)を含む層側の鉛筆硬度>
JIS K 5600-5-4に準拠し、多層体の中央付近の熱可塑性樹脂(B)を含む層の表面に対して角度45度、荷重750gで表面に次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。
<高温高湿環境下の反り試験>
多層体の中央付近から縦100mm、横60mmの試験片を切り出した。試験片を2点支持型のホルダーにセットして温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機に24時間以上投入して状態調整した後、反りを測定した。このときの値を処理前反り量の値とした。次に試験片をホルダーにセットして温度85℃、相対湿度85%に設定した環境試験機の中に投入し、その状態で120時間保持した。さらに温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機の中にホルダーごと移動し、その状態で4時間保持後に再度反りを測定した。このときの値を処理後反り量の値とした。反りの測定には、電動ステージ具備の3次元形状測定機を使用し、取り出した試験片を上に凸の状態で水平に静置し、1mm間隔でスキャンし、中央部の盛り上がりを反りとして計測した。処理前後の反り量の差、すなわち、(処理後反り量)-(処理前反り量)を反り変化量として評価した。その際、熱可塑性樹脂(B)を含む層側が凸の場合は「-」符号、ポリカーボネート樹脂(A)を含む層側が凸の場合は「+」符号で評価した。
<虹ムラ>
樹脂積層体のポリカーボネート系樹脂(A)を含む層側に黒テープ(3Mジャパン(株)製 黒色ビニールテープ型番117BLA)を貼り付け、熱可塑性樹脂(B)を含む層の表面から三波長型蛍光ランプ((有)テクニカ インバータライト60 AL-60231)で照らし、虹ムラを評価した。下記の基準で干渉縞の合否判定を行い、Aを合格とした。5人の専門家が合否判定を行い、多数決とした。
A:合格(虹ムラが見えないか、虹ムラが弱く見える)
B:不合格(虹ムラが強く見える)
<ポリカーボネート樹脂(A-1)、三元共重合体(1)~(3)、重合体(4)~(8)>
ポリカーボネート樹脂(A-1):三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロンE-2000、重量平均分子量:53,000、ガラス転移温度:151℃、メルトインデクサーを用いて、温度300℃、1.2kg荷重下の条件で測定したメルトフローレート(MFR):5.3g/10分、末端基は、p-tert-ブチルフェノールによって封止した。
三元共重合体(1):旭化成株式会社製、デルペット980N、((b1)/(b2)/(b3)=メタクリル酸メチル/スチレン/無水マレイン酸=76質量%/16質量%/8質量%(得られた重合体の分析値である、以下、重合体について同じ)、重量平均分子量:133,000、ガラス転移温度:118℃)
三元共重合体(2):デンカ株式会社製、レジスファイR-200((b1)/(b2)/(b3)=メタクリル酸メチル/スチレン/無水マレイン酸=26質量%/55質量%/19質量%、重量平均分子量:190,000、ガラス転移温度:126℃)
三元共重合体(3):デンカ株式会社製、レジスファイKX406((b1)/(b2)/(b3)=メタクリル酸メチル/スチレン/無水マレイン酸=9質量%/70質量%/21質量%、重量平均分子量:155,000、ガラス転移温度:137℃)
重合体(4):三菱ケミカル株式会社製、アクリペットVH-001((b1)/(b1)=メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=99質量%/1質量%、重量平均分子量:114,000、ガラス転移温度:110℃)
重合体(5):Polyscope社製、XIRANSO23110((b2)/(b3)=スチレン/無水マレイン酸=78質量%/22質量%、重量平均分子量:74,300、ガラス転移温度:145℃)
製造例1〔熱可塑性樹脂(B-1)のペレット製造〕
三元共重合体(1)を100質量部に対して、リン系添加剤PEP-36(株式会社ADEKA製)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H-100、理研ビタミン株式会社製)0.2質量%を加え、ブレンダーで20分混合後、目開き10μmのポリマーフィルターを取り付けたスクリュー径26mmの2軸押出機(芝浦機械株式会社製、TEM-26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。熱可塑性樹脂(B-1)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(B-1)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)/ビニル芳香族単量体単位(b2)/環状酸無水物単量体単位(b3)=76.0質量%/16.0質量%/8.0質量%、ガラス転移温度:118℃であった。
また、式(1)の値=0.9であり、式(1)の条件を満たしていた。
製造例2〔熱可塑性樹脂(B-2)のペレット製造〕
三元共重合体(1)を70質量部と、三元共重合体(2)を30質量部の合計100質量部に対して、リン系添加剤(PEP-36)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。熱可塑性樹脂(B-2)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(B-2)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)/ビニル芳香族単量体単位(b2)/環状酸無水物単量体単位(b3)=61.0質量%/27.7質量%/11.3質量%、ガラス転移温度:121℃であった。
また、式(1)の値の絶対値=0.7であり、式(1)の条件を満たしていた。
製造例3〔熱可塑性樹脂(B-3)のペレット製造〕
三元共重合体(3)を50質量部と、重合体(4)を50質量部の合計100質量部に対して、リン系添加剤(PEP-36)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。熱可塑性樹脂(B-3)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(B-3)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)/ビニル芳香族単量体単位(b2)/環状酸無水物単量体単位(b3)=54.5質量%/35.0質量%/10.5質量%、ガラス転移温度:124℃であった。
また、式(1)の値の絶対値=0.4であり、式(1)の条件を満たしていた。
製造例4〔熱可塑性樹脂(B-4)のペレット製造〕
共重合体(4)を50質量部と、共重合体(5)を50質量部の合計100質量部に対して、リン系添加剤(PEP-36)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。熱可塑性樹脂(B-4)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(B-4)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)/ビニル芳香族単量体単位(b2)/環状酸無水物単量体単位(b3)/その他=50.0質量%/38.5質量%/8.8質量%/11.5質量%、ガラス転移温度:127℃であった。
また、式(1)の値の絶対値=0.9であり、式(1)の条件を満たしていた。
製造比較例1〔熱可塑性樹脂(C-1)のペレット製造〕
三元共重合体(1)を60質量部と、三元共重合体(2)を40質量部の合計100質量部に対して、リン系添加剤(PEP-36)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。熱可塑性樹脂(C-1)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(C-1)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)/ビニル芳香族単量体単位(b2)/環状酸無水物単量体単位(b3)=56.0質量%/31.6質量%/12.4質量%、ガラス転移温度:121℃であった。
また、式(1)の値の絶対値=1.2であり、式(1)の条件を満たしていなかった。
製造比較例2〔熱可塑性樹脂(C-2)のペレット製造〕
重合体(4)を100質量部に対して、リン系添加剤(PEP-36)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。熱可塑性樹脂(C-2)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(C-2)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)=100.0質量%、ガラス転移温度:110℃であった。
また、式(1)の値の絶対値=4.7であり、式(1)の条件を満たしていなかった。
製造比較例3〔熱可塑性樹脂(C-3)のペレット製造〕
三元共重合体(3)を100質量部に対して、リン系添加剤(PEP-36)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。熱可塑性樹脂(C-3)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(C-3)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)/ビニル芳香族単量体単位(b2)/環状酸無水物単量体単位(b3)=9.0質量%/70.0質量%/21.0質量%、ガラス転移温度:137℃であった。
また、式(1)の値の絶対値=5.5であり、式(1)の条件を満たしていなかった。
製造比較例4〔熱可塑性樹脂(C-4)のペレット製造〕
三元共重合体(3)を25質量部と、重合体(4)を75質量部の合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP-36(500ppm)、およびステアリン酸モノグリセリド0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。熱可塑性樹脂(C-4)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(C-4)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)/ビニル芳香族単量体単位(b2)/環状酸無水物単量体単位(b3)=77.3質量%/17.5質量%/5.3質量%、ガラス転移温度:117℃であった。
また、式(1)の値の絶対値=2.1であり、式(1)の条件を満たしていなかった。
製造比較例5〔熱可塑性樹脂(C-5)のペレット製造〕
三元共重合体(3)を75質量部と、重合体(4)を25質量部の合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP-36(500ppm)、およびステアリン酸モノグリセリド0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。熱可塑性樹脂(C-5)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(C-5)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)/ビニル芳香族単量体単位(b2)/環状酸無水物単量体単位(b3)=31.8質量%/52.5質量%/15.8質量%、ガラス転移温度:130℃であった。
また、式(1)の値の絶対値=3.0であり、式(1)の条件を満たしていなかった。
製造比較例6〔熱可塑性樹脂(C-6)のペレット製造〕
重合体(4)を25質量部と、重合体(5)を75質量部の合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP-36(500ppm)、およびステアリン酸モノグリセリド0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。熱可塑性樹脂(C-6)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(C-6)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)/ビニル芳香族単量体単位(b2)/環状酸無水物単量体単位(b3)=25.0質量%/57.7質量%/17.3質量%、ガラス転移温度:133℃であった。
また、式(1)の値の絶対値=3.7であり、式(1)の条件を満たしていなかった。
製造比較例7〔熱可塑性樹脂(C-7)のペレット製造〕
重合体(4)を75質量部と、重合体(5)を25質量部の合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP-36(500ppm)、およびステアリン酸モノグリセリド0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。熱可塑性樹脂(C-11)のペレットは安定して製造できた。
熱可塑性樹脂(C-7)のペレットは透明で、メタクリル酸エステル単量単位(b1)/ビニル芳香族単量体単位(b2)/環状酸無水物単量体単位(b3)=75.0質量%/19.2質量%/5.8質量%、ガラス転移温度:117℃であった。
また、式(1)の値の絶対値=1.9であり、式(1)の条件を満たしていなかった。
Figure 2023137992000012
実施例1〔多層体(D-1)の製造〕
軸径32mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、全押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結された650mm幅のTダイとを有する多層押出装置を用いて、多層体を成形した。軸径32mmの単軸押出機に製造例1で得た熱可塑性樹脂(B-1)を連続的に導入し、シリンダー温度240℃、吐出量を4.0kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(A-1)を連続的に導入し、シリンダー温度290℃、吐出量を66.6kg/hで押し出した。全押出機に連結されたフィードブロックは2種2層の分配ピンを備え、温度280℃にして熱可塑性樹脂(B-1)とポリカーボネート樹脂(A-1)を導入し積層した。
その先に連結された温度270℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度115℃、120℃、185℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、熱可塑性樹脂(B-1)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体を得た。得られた多層体(D-1)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(B)を含む層)の厚みは60μmであった。得られた多層体(D-1)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(B)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(D-1)は高温高湿環境下の反り変化量:+178μm、鉛筆硬度:2Hであった。
実施例2〔多層体(D-2)の製造〕
熱可塑性樹脂(B-1)の代わりに熱可塑性樹脂(B-2)を使用した以外は、実施例1の多層体(D-1)と同様にして熱可塑性樹脂(B-2)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体(D-2)を得た。得られた多層体(D-2)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(B)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(D-2)は高温高湿環境下の反り変化量:-167μm、鉛筆硬度:Hであった。
実施例3〔多層体(D-3)の製造〕
熱可塑性樹脂(B-1)の代わりに熱可塑性樹脂(B-3)を使用した以外は、実施例1の多層体(D-1)と同様にして熱可塑性樹脂(B-3)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体(D-3)を得た。得られた多層体(D-3)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(B)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(D-3)は高温高湿環境下の反り変化量:-164μm、鉛筆硬度:Hであった。
実施例4〔多層体(D-4)の製造〕
熱可塑性樹脂(B-1)の代わりに熱可塑性樹脂(B-4)を使用した以外は、実施例1の多層体(D-1)と同様にして熱可塑性樹脂(B-4)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体(D-4)を得た。得られた多層体(D-4)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(B)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(D-4)は高温高湿環境下の反り変化量:-127μm、鉛筆硬度:2Hであった。
比較例1〔多層体(E-1)の製造〕
熱可塑性樹脂(B-1)の代わりに熱可塑性樹脂(C-1)を使用した以外は、実施例1の多層体(D-1)と同様にして熱可塑性樹脂(C-1)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体(E-1)を得た。得られた多層体(E-1)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(C)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(E-1)は高温高湿環境下の反り変化量:-272μm、鉛筆硬度:Hであった。
比較例2〔多層体(E-2)の製造〕
熱可塑性樹脂(B-1)の代わりに熱可塑性樹脂(C-2)を使用した以外は、実施例1の多層体(D-1)と同様にして熱可塑性樹脂(C-2)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体(E-2)を得た。得られた多層体(E-2)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(C)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(E-2)は高温高湿環境下の反り変化量:+977μm、鉛筆硬度:3Hであった。
比較例3〔多層体(E-3)の製造〕
熱可塑性樹脂(B-1)の代わりに熱可塑性樹脂(C-3)を使用した以外は、実施例1の多層体(D-1)と同様にして熱可塑性樹脂(C-3)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体(E-3)を得た。得られた多層体(E-3)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(C)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(E-3)は高温高湿環境下の反り変化量:-445μm、鉛筆硬度:Fであった。
比較例4〔多層体(E-4)の製造〕
熱可塑性樹脂(B-1)の代わりに熱可塑性樹脂(C-4)を使用した以外は、実施例1の多層体(D-1)と同様にして熱可塑性樹脂(C-4)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体(E-4)を得た。得られた多層体(E-4)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(C)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(E-4)は高温高湿環境下の反り変化量:+472μm、鉛筆硬度:2Hであった。
比較例5〔多層体(E-5)の製造〕
熱可塑性樹脂(B-1)の代わりに熱可塑性樹脂(C-5)を使用した以外は、実施例1の多層体(D-1)と同様にして熱可塑性樹脂(C-5)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体(E-5)を得た。得られた多層体(E-5)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(C)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(E-5)は高温高湿環境下の反り変化量:-307μm、鉛筆硬度:Hであった。
比較例6〔多層体(E-6)の製造〕
熱可塑性樹脂(B-1)の代わりに熱可塑性樹脂(C-6)を使用した以外は、実施例1の多層体(D-1)と同様にして熱可塑性樹脂(C-6)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体(E-6)を得た。得られた多層体(E-6)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(C)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(E-6)は高温高湿環境下の反り変化量:-663μm、鉛筆硬度:2Hであった。
比較例7〔多層体(E-7)の製造〕
熱可塑性樹脂(B-1)の代わりに熱可塑性樹脂(C-7)を使用した以外は、実施例1の多層体(D-1)と同様にして熱可塑性樹脂(C-7)とポリカーボネート樹脂(A-1)の多層体(E-7)を得た。得られた多層体(E-7)の中央部の全体厚みは1000μm、表層(熱可塑性樹脂(C)を含む層)の厚みは60μmであった。この多層体(E-7)は高温高湿環境下の反り変化量:+615μm、鉛筆硬度:2Hであった。
Figure 2023137992000013
以上のように、本発明の条件を満たすことで、高温高湿下に曝されても耐反り変形性に優れた多層体を得ることができた。
具体的には、表2および表3に示すように、式(1)を満たす熱可塑性樹脂(B)とポリカーボネート樹脂(A)とを積層した実施例1~4と、式(1)を満たさない熱可塑性樹脂(C)とポリカーボネート樹脂(A)とを積層した比較例1~7を比較すると、実施例1~4の多層体の方が、高温高湿下に曝されても耐反り変形性に優れていた。
1 ダイ
2 第1冷却ロール
3 第2冷却ロール
4 後段冷却ロール
5 ピンチロール

Claims (10)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)を含む層の少なくとも一方の面上に、熱可塑性樹脂(B)を含む層を有し、
    前記熱可塑性樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)を含み、熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、ビニル芳香族単量体単位(b2)の割合が12質量%以上であり、
    式(1)を満たし、
    ポリカーボネート樹脂(A)が式(2)で表される1価フェノールから誘導される末端構造を有する、
    多層体。
    0.15≦|0.0465×B1+0.0323×B2-0.3903×B3|≦1.0・・(1)
    (式(1)中、B1は熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合(質量%)を示す。B2は熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、ビニル芳香族単量体単位の割合(質量%)を示す。B3は、熱可塑性樹脂(B)の総量に対する、環状酸無水物単量体単位の割合(質量%)を示す。)
    Figure 2023137992000014
    (式(2)中、Rは、炭素数7以下の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~7のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、置換基は、ハロゲン原子、炭素数1~7のアルキル基、またはフェニル基であり、Lは単結合または-C(=O)O-を表す。)
  2. 前記熱可塑性樹脂(B)が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)を含む共重合体、ならびに/または、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)、ビニル芳香族単量体単位(b2)、および、環状酸無水物単量体単位(b3)の少なくとも1種の単量体単位を含む重合体を含む、請求項1に記載の多層体。
  3. 前記熱可塑性樹脂(B)に含まれる環状酸無水物単量体単位(b3)が、無水マレイン酸単位を含む、請求項1または2に記載の多層体。
  4. 前記熱可塑性樹脂(B)に含まれるビニル芳香族単量体単位(b2)が、スチレン単位を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層体。
  5. 前記ポリカーボネート樹脂(A)を含む層、および/または、前記熱可塑性樹脂(B)を含む層が、紫外線吸収剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の多層体。
  6. 前記多層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理および防汚処理の少なくとも1つが施されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の多層体。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の多層体を含む、透明基板。
  8. 請求項1~6のいずれか1項に記載の多層体を含む、透明保護フィルム。
  9. 請求項1~6のいずれか1項に記載の多層体を含む、タッチパネル前面保護フィルム。
  10. 請求項1~6のいずれか1項に記載の多層体を含む、ディスプレイデバイス用の前面板。
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