JP2011198506A - 超音波溶接方法及び溶接部 - Google Patents

超音波溶接方法及び溶接部 Download PDF

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Abstract

【課題】複数本の電線の端末を超音波溶接する際に発生するバラけや、溶接強度不足の発生を抑制することができる、導体の超音波溶接方法を提供する。
【解決手段】電線配置工程においては、複数の電線を所定の配置に従って配置する。導体移動工程においては、導体2をグライディングジョー12によって所定方向に押圧することにより、導体2同士の相対位置を変化させる。第1超音波溶接工程においては、グライディングジョー12によって押圧された状態の導体2に対して超音波溶接を行う。第2超音波溶接工程においては、グライディングジョー12による押圧を解除して、導体2に対して超音波溶接を行う。
【選択図】図10

Description

本発明は、主として、複数の電線の導体同士を超音波溶接によって溶接する方法に関する。
複数の電線の導体同士を電気的に接続する場合、絶縁被覆を除去して導体を露出させ、当該露出した導体同士をハンダ付けしたり、手作業などで導体を捻って撚り合わせる方法等が採用されている。特に近年は、作業が簡単かつ確実であるため、導体同士を超音波溶接により溶接する方法が広く採用されている(例えば特許文献1)。
一方、特許文献2は、前記特許文献1に開示されている方法で超音波溶接を行うと、接続強度に問題があり、導体がバラけてしまうことを指摘している。特許文献2は、この問題を解決する接続方法として、露出した導体同士を同一方向に一緒に捻り、この捻った部分を超音波溶接により溶接する接続方法を開示している。
特開2000−188018号公報 特開2005−322544号公報
しかしながら、特許文献2の接続方法は、導体を捻るという工程が必要となるため、以下のような問題点があった。即ち、複数の導体同士を同一方向に捻る作業が手作業である場合、捻り工程を忘れたまま溶接工程に進み、そのまま溶接してしまう可能性がある。また、捻り工程を手作業とした場合、手間とコストが掛かってしまう。一方、捻り工程を装置によって行う構成も考えられるが、このような装置は複雑であるため、コストが増大する。
また、捻り工程が手作業であれば、手の皮脂やハンドクリーム等の異物が、導体に付着する可能性がある。一方、捻り工程が装置による処理であれば、保持部のゴム部品や金属粉等の異物が、導体に付着する可能性がある。超音波溶接は、接合される部分に高周波振動を与えることにより金属原子を拡散して接合するものであるため、接合面の間に異物が介在すると、原子拡散を大きく阻害して溶接不良になる可能性が生じる。このように、特許文献2の接続方法で超音波溶接を行った場合、捻り工程において導体に異物が付着してしまうことにより、溶接箇所に溶接不良が発生する可能性があった。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、複数本の電線の端末を超音波溶接する際に発生するバラけや、溶接強度不足の発生を抑制することができる、導体の超音波溶接方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第1の観点によれば、以下のような超音波溶接方法が提供される。即ち、この超音波溶接方法は、絶縁被覆を一部除去して導体を露出させた複数の電線の前記導体同士を接続する超音波溶接方法であって、電線配置工程と、導体移動工程と、第1超音波溶接工程と、第2超音波溶接工程と、を含む。前記電線配置工程においては、前記複数の電線を所定の配置に従って配置する。前記導体移動工程においては、前記導体を所定方向に押圧することにより、導体同士の相対位置を変化させる。前記第1超音波溶接工程においては、前記所定方向に押圧された状態の前記導体に対して超音波溶接を行う。前記第2超音波溶接工程においては、前記所定方向の押圧を解除して、前記導体に対して超音波溶接を行う。
このように、導体を押圧して相対位置を変化させると、押圧力を解除したときに、復元力によって導体が元の位置に戻ろうとする。即ち、導体を押圧している時と、前記押圧を解除した時とでは、導体同士の相対位置が異なる。従って、導体を押圧した時に行う第1超音波溶接工程と、前記押圧を解除した時に行う第2超音波溶接工程と、では、異なる位置関係にある導体に対して超音波溶接を行うことができる。これにより、第1超音波溶接工程と第2超音波溶接工程で異なる方向に接続を形成することができるので、導体同士がバラけてしまうことを防止できる。また、導体を押圧するだけで導体の相対位置を変更することができるので、例えば手作業や特殊な装置によって導体を捻ったりする構成に比べて簡単かつ安価に行うことができるとともに、捻り忘れを防止できる。更に、作業者が手で導体を触れたり、特殊な装置で導体を把持したりする必要が無いので、導体に異物が付着してしまうことを防止できる。
上記の超音波溶接方法は、以下のように行うことが好ましい。即ち、前記導体移動工程においては、前記導体を押圧することにより、その押圧方向とは直交する方向に当該導体を並べる。前記第1超音波溶接工程においては、前記導体が並んだ方向に前記超音波溶接を行う。
このように、導体を所定方向に押圧することにより、前記所定方向とは直交する方向に導体を並べることができる。また、導体が並んだ方向に超音波溶接を行うことにより、第1超音波溶接工程における溶接部を、細長く形成できる。このように細長い溶接部は、前記所定方向の押圧力を解除したときに変形し易いため、特に好適である。
上記の超音波溶接方法では、前記電線配置工程において、前記電線は、前記押圧する方向に複数並んでいることが好ましい。
このように、所定方向に電線が複数並んでいる場合、当該所定方向に導体を押圧することで容易に導体同士の相対位置を変更することができる。
上記の超音波溶接方法は、以下のように行うことが好ましい。即ち、この超音波溶接方法は、前記導体に対する前記所定方向の押圧を解除した後、前記導体を別の方向に押圧することにより導体同士の相対位置を変化させる第2導体移動工程を含む。そして、前記第2超音波溶接工程では、前記別の方向に押圧された状態の前記導体に対して超音波溶接を行う。
このように、所定方向の押圧を解除した後、別の方向に導体を押圧することで、導体同士を大きく変形させることができる。これにより、第1超音波溶接工程と、第2超音波溶接工程と、では導体同士の位置関係が大きく異なる結果、よりバラけにくい溶接部を形成することができる。
また、本発明の第2の観点によれば、絶縁被覆を一部除去して導体を露出させた複数の電線の前記導体同士を超音波溶接により接続した溶接部であって、以下のように形成された溶接部が提供される。即ち、前記導体は複数の素線からなり、前記素線は、隣接する複数の方向の素線と接続されている。
このように、素線同士を複数の方向で接続することにより、バラけにくい溶接部を超音波溶接により形成することができる。
本発明の超音波溶接方法の処理対象となる電線の構成を示す図。 従来の超音波溶接方法の問題点を説明する図。 超音波溶接機の正面図。 電線配置工程を説明する図。 グライディングジョーを移動させた様子を説明する図。 従来の超音波溶接方法における超音波溶接工程を説明する図。 導体移動工程を説明する図。 第1超音波溶接工程を説明する図。 仮溶接部が変形する様子を説明する図。 第2超音波溶接工程を説明する図。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、図1を参照して、本発明の超音波溶接方法による溶接の対象となる電線について説明する。図1(a)は電線1を長手方向から見た図、図1(b)は電線1の側面図である。この電線1は、導体2を絶縁被覆3で覆ったものである。なお、図1は、電線1の端部の絶縁被覆3が除去された状態を示している。このように、電線1の絶縁被覆3を剥ぎ取ることにより、内部の導体2を露出させることができる。
図1において図示は省略しているが、導体2は、複数の細い金属製の素線が束ねられたものである。絶縁被覆3内において、各素線は、絶縁被覆3によって形状的拘束を受けている。ただし、絶縁被覆3内において、各素線は互いにある程度相対移動可能である。また、絶縁被覆3を除去した部分(図1(b)の左側端部)においては、絶縁被覆3による形状的拘束を受けなくなるため、前記素線同士がよりいっそう相対移動し易くなる。このため、絶縁被覆3を除去した部分の導体2に外力を加えることにより、当該導体2を電線1の長手方向から見たときの形状(図1(a)に示す形状)を、ある程度変形させることができる。
また、上記のように絶縁被覆3を除去すると素線同士が相対移動し易くなるため、この絶縁被覆3を除去した部分に対して通常の超音波溶接を行っただけでは、素線同士がバラけ易いという問題がある。この点について、図2を参照して簡単に説明する。
図2は、一般的な超音波溶接の原理を説明する模式図である。一般的な超音波溶接では、まず、ソノトロード100とアンビル101によって素線9を挟み込み、図中の矢印で示す方向に素線9を押圧する。そして、図略の超音波発振器によって、ソノトロード100を図2の紙面に垂直な方向に振動させる。一方、アンビル101は振動させない。これにより、押圧方向で隣接する素線9同士が相対移動させられる結果、前記押圧方向で素線9同士が接触している部分(図2中に太い実線の円で囲った部分)に摩擦が発生して、金属表面の酸化皮膜等が除去されるとともに接触面が平滑化される。そして、酸化皮膜等が除去された接触面同士が相対的に往復運動を繰り返す結果、前記接触面同士の間で原子拡散が起こり、金属が再結晶して機械的及び電気的な接合が完了する。
一方、押圧方向に直交する方向で素線9同士が接触している部分(図2中に太い点線の円で囲った部分)では、素線9同士が殆ど相対移動しない。従って、図2中の点線の円で囲った部分では酸化皮膜等の除去や原子拡散が発生しにくく、このため押圧方向と直交する方向で隣接する素線9同士の接続強度が弱いという傾向がある。このため、図1(a)のように一方向のみで超音波溶接を行った場合、図2(b)のように、素線同士がバラけ易いという問題があったのである。
次に、本発明の超音波溶接方法で用いる超音波溶接機について、図3を参照して説明する。図3に示すように、この超音波溶接機10は、ソノトロード11と、グライディングジョー12と、アンビルプレート13と、アンビル14と、を備えている。
ソノトロード11は、図略の超音波発振器によって超音波発振することが可能に構成されている。具体的には、ソノトロード11は、図3の紙面に垂直な方向に振動する。また、ソノトロード11の上面は平面状となっており、当該上面には、複数本の電線1を並べて載せることができるようになっている。このソノトロード11の上面のことを、以下では「載置面」と呼ぶ。なお、図3は、載置面に載せた電線1の長手方向で超音波溶接機10を見た図である。
アンビルプレート13は、載置面に載せられる電線1の側方に配置されている。また、アンビルプレート13は、載置面と直交する方向(図3の上下方向)に移動することが可能に構成されている。このようにアンビルプレート13を上下に移動させることで、同じく上下移動するアンビル14(後述)との干渉を避けることができる。
グライディングジョー12は、載置面に載せられる電線1を挟んで、アンビルプレート13の反対側に配置されている。また、グライディングジョー12は、載置面に平行で、かつ電線1の長手方向に直交する方向(図3の左右方向)に移動することが可能に構成されている。即ち、グライディングジョー12は、アンビルプレート13に対して近づく又は遠ざかる方向に移動させることが可能である。以上の構成で、グライディングジョー12をアンビルプレート13に向かって移動させることにより、載置面に載せられた複数本の電線1の導体2を、グライディングジョー12及びアンビルプレート13の間で挟み込むことができる。
アンビル14は、ソノトロード11及びアンビルプレート13の上方に配置される。アンビル14は、載置面に載せられる電線1の長手方向と直交する平面内で移動可能(即ち、図3の上下左右方向で移動可能)である。アンビル14の下側の面(載置面に対向する面)は、前記載置面と略平行、かつ略平面状となっている。アンビル14を下方(ソノトロード11に近づく方向)に移動させることにより、載置面に載せられた複数本の電線1の導体を、アンビル14及びソノトロード11の間で押圧することができる。また、アンビル14を図3の左右方向に移動させることにより、同じく左右方向に移動するグライディングジョー12との干渉を避けることができる。
次に、上記のように構成された超音波溶接機10を用いた従来の超音波溶接方法について、以下に説明する。
まず、電線端末処理工程を行う。即ち、図1(b)に示すように、接続を行う複数の電線1の端部について、絶縁被覆3を所定の長さだけ剥ぎ取り、内部の導体2を露出させる。
次に、複数の電線1を、ソノトロード11の上面(載置面)上にセットする電線配置工程を行う。図4(a)は、載置面にセットした電線1を、当該電線1の長手方向で見た模式図である。また、図4(b)は、図4(a)の電線1の側面図である。図4に示すように、この例では、4本の電線1を、左右2本、上下2段となるように配置している。より具体的には、導体2cを有する電線1と導体2dを有する電線1とを左右に並べてセットし、前記導体2cを有する電線1の上には導体2aを有する電線1を、前記導体2dを有する電線1の上には導体2bを有する電線1を、それぞれセットしている。なお、グライディングジョー12とアンビルプレート13との間は、導体2が少なくとも左右2本並ぶことができるように、十分な幅を持って開くことができるように構成されている。また、ソノトロード11とアンビル14との間は、導体2を少なくとも上下2段に重ねることができるように、十分な幅を持って開くことができるように構成されている。
続いて、導体2a,2b,2c,2dを左右から挟持する導体挟持工程を行う。即ち、グライディングジョー12をアンビルプレート13に近づける方向に移動させ、当該グライディングジョー12とアンビルプレート13との間の間隔が、導体2の2本分程度となるまで接近させる。このようにして、グライディングジョー12及びアンビルプレート13によって、導体2a,2b,2c,2dを挟持させる。このときの様子を、図5に示す。なお、図5(a)においては、導体2の様子をより良く示すため、電線1に関しては、図5(b)のA−A断面矢視図として図示している。なお、他の同種の図面(図6(a)、図7(a)、図8(a)、図9(a)及び図10)においても、同様に、電線1に関しては断面矢視図となっている。上記のようにグライディングジョー12及びアンビルプレート13によって導体2a,2b,2c,2dを挟持することにより、当該導体2a,2b,2c,2dの水平方向(図5(a)の左右方向)への移動を規制することができる。
次に、導体2a,2b,2c,2dを上下方向に押圧する導体押圧工程を行う。即ち、まず、アンビル14を移動させて、当該アンビル14の一部によって導体2a,2b,2c,2dの上を覆う。図5(a)では、アンビル14を左方向(グライディングジョー12に近づく方向)に移動させる。続いて、アンビル14及びアンビルプレート13を移動させ、ソノトロード11とアンビル14との間に、電線1の導体2a,2b,2c,2dを挟み込む。この時の様子を、図6に示す。図6(a)では、アンビル14及びアンビルプレート13を、図面下向き(アンビル14がソノトロード11に近づく向き)に移動させている。このとき、導体2a,2b,2c,2dに対して、後述の超音波溶接を行うための適切な圧力を負荷するように、アンビル14の移動量を適宜調節する。
最後に、導体2a,2b,2c,2dに超音波振動を付与して溶接する超音波溶接工程を行う。即ち、ソノトロード11及びアンビル14により導体2を押圧しながら、ソノトロード11を超音波振動させる。これにより、導体2a,2b,2c,2dを溶接することができる。
ただし、このような従来の超音波溶接方法は、1方向にのみ超音波溶接を行うものである。従って、前述のように、素線同士がバラけ易いという欠点があったのである。この点、特許文献2は、上記の欠点を解消するために導体2を捻ってから超音波溶接を行う方法を開示しているが、前述のように、手間やコストの増大、異物混入による接続不良等の問題が発生し得る。
次に、上記のような従来の方法の問題を解決した、本実施形態の超音波溶接方法について説明する。この超音波溶接方法は、電線端末処理工程と、電線配置工程と、導体移動工程と、第1導体押圧工程と、第1超音波溶接工程と、第2導体押圧工程と、第2超音波溶接工程と、を含んでいる。
この超音波溶接方法においても、電線端末処理工程、及び電線配置工程は、上記従来の超音波溶接方法と同様に行う。従って、これらの工程の内容については説明を省略する。
続いて、導体移動工程を行う。まず、上記従来の方法における導体挟持工程と同様に、グライディングジョー12をアンビルプレート13に近づける方向に移動させ、導体2a,2b,2c,2dを挟持させる。ただし、上記の従来の方法における導体挟持工程では、グライディングジョー12とアンビルプレート13との間の間隔は導体2の2本分程度(図5(a)の状態)としていたが、本実施形態の導体移動工程においては、図5(a)の状態から更にグライディングジョー12を移動させる。
このように、グライディングジョー12を、図5(a)の状態から更にアンビルプレート13に近づける方向(図5(a)の右方向)に移動させることにより、当該グライディングジョー12によって導体2a,2cを図5(a)の右側に移動させる方向に押圧することができる。ここで、図5(a)に示すように、載置面上に載せられた導体2aと導体2bは、グライディングジョー12によって押圧される方向に並んでいる。同じく、導体2cと導体2dも、グライディングジョー12によって押圧される方向に並んでいる。このように、グライディングジョー12によって押圧される方向に導体2が並んでいるので、当該グライディングジョー12によって導体2を押圧することにより、導体2同士を相対移動させることができる。例えば、図5(a)の状態からグライディングジョー12によって導体2を押圧すると、導体2aが導体2bの上に押し出され、導体2cが導体2bと導体2dとの間に押し込まれる。この場合、図7に示すように、導体2a,2b,2c,2dが、この順で上から並んで配置される。なお、このとき相対移動するのは導体2の先端部分のみであり、絶縁被覆3は、殆ど或いは全く相対移動しない。即ち、導体移動工程の後であっても、電線1のうち絶縁被覆3の部分は、電線配置工程でセットされたときの配置(縦2段、横2列)を保った状態となっている。
続いて、第1導体押圧工程が行われる。この第1導体押圧工程は、上記従来の方法の導体押圧工程と同等である。即ち、まず、アンビル14を移動させて、当該アンビル14の一部によって導体2a,2b,2c,2dの上を覆う。続いて、アンビル14及びアンビルプレート13を移動させ、ソノトロード11とアンビル14との間に、電線1の導体2a,2b,2c,2dを挟み込む。このとき、導体2a,2b,2c,2dに対して、後述の第1の超音波溶接を行うための適切な圧力を負荷するように、アンビル14の移動量を適宜調節する。
この状態で、第1超音波溶接工程が行われる。即ち、ソノトロード11を超音波発振し、導体2に含まれる素線同士を超音波溶接する。これにより、アンビル14の押圧方向で隣接する素線同士が接続される。この第1の超音波溶接によって形成された溶接部を、仮溶接部20と呼ぶこととする。図8(a)には、仮溶接部20において溶接が行われた方向を、細線の実線で示す。即ち、この細線の実線上に並ぶ素線同士は強力に接続されているが、当該細線の実線と直交する方向に並んでいる素線同士の接続は弱いということになる。
続いて、グライディングジョー12による導体2(仮溶接部20)の押圧を解除する。このときの様子を、図9に示す。即ち、グライディングジョー12をアンビルプレート13から遠ざける方向(図9(a)の左方向)に移動させることにより、グライディングジョー12とアンビルプレート13による導体2(仮溶接部20)の挟持を解除する。これにより、導体2a,2b,2c,2dが図9(a)の左右方向で移動しないように規制していた力が解除される。
ここで前述のように、各電線1の絶縁被覆3は、電線配置工程でセットされたときの配置(縦2段、横2列)を保っている。従って、グライディングジョー12の押圧によって強制的に移動させられた導体2は、当該導体2を覆っている絶縁被覆3によって引っ張られるような力を受けている。この状態で、グライディングジョー12による導体2(仮溶接部20)の挟持を解除すると、導体2a,2b,2c,2dが絶縁被覆3からの応力を受け、絶縁被覆3と同じ配置(縦2段、横2列)に戻ろうとする。この導体2a,2b,2c,2dが元の位置に戻ろうとする力によって、仮溶接部20が変形する。具体的には、図9(a)に示すように、A−A断面における仮溶接部20の形状が、略S字状となるように変形する。
なお、図8(a)に示すように、仮溶接部20は、縦に細長く形成されている。言い換えると、第1超音波溶接工程を行う時点において、ソノトロード11、グライディングジョー12、アンビルプレート13及びアンビル14によって形成される空間の形状が、電線1の長手方向で見たときに、縦に細長い長方形状となっている。ここで仮に、仮溶接部20が、図8のA−A断面における形状が寸胴となるように形成されていると、当該仮溶接部20は変形しにくいと考えられる。従って、この場合、グライディングジョー12による押圧を解除したとしても、仮溶接部20は殆ど変形しないと考えられる。この点、本実施形態では、導体2a,2b,2c,2dを縦に一列に並べ、当該並んだ方向で超音波溶接を行うことにより、細長い仮溶接部20を形成しているので、グライディングジョー12による押圧を解除したときに仮溶接部20が変形し易くなっている。
次に、第2導体押圧工程が行われる。即ち、図9の状態から、仮溶接部20(導体2)の上方を覆うようにアンビルプレート13を移動させる。続いて、アンビル14及びアンビルプレート13を移動させ、ソノトロード11とアンビル14との間に、仮溶接部20(導体2)を挟み込む。このとき、仮溶接部20(導体2)に対して、後述の第2の超音波溶接を行うための適切な圧力を負荷するように、アンビル14の移動量を適宜調節する。
このときの様子を、図10に示す。図10に示すように、図9の状態からアンビル14によって導体2を押圧することにより、ソノトロード11、グライディングジョー12、アンビルプレート13及びアンビル14によって形成される空間の内部に、仮溶接部20(導体2)をS字状に変形させつつ押し込むことができる。
なお、この第2導体押圧工程は、仮溶接部20を変形させることにより、導体2a,2b,2c,2dの相対位置を変化させていると考えることができるので、第2導体移動工程であると言うこともできる。この第2導体押圧工程(第2導体移動工程)では、先の導体移動工程とは異なる方向に導体2を押圧しているので、前記導体移動工程とは異なる方向に導体2a,2b,2c,2dを相対移動させることができる。
最後に、第2超音波溶接工程を行う。即ち、ソノトロード11を超音波発振させることにより、仮溶接部20に対して更に超音波溶接を行い、最終的に溶接部21を形成する。この第2超音波溶接工程によって接続された素線が並ぶ方向を、図10の溶接部21の中に、細線の一点鎖線で示す。
前述のように、第2超音波溶接工程を行う時点では、第1超音波溶接工程が終了した時点から仮溶接部20が変形している。即ち、第1超音波溶接工程を行う時点と、第2超音波溶接工程を行う時点とでは、導体2a,2b,2c,2dの相対位置が変化している。従って、第2超音波溶接工程を行うと、第1超音波溶接工程とは異なる方向で素線同士を接続することができる。これにより、1方向にのみ超音波溶接を行う従来の構成と比べて、溶接部21の素線がバラけにくくすることができる。
そして、上記のように第2の超音波溶接工程を行うことにより、最終的に、素線が複数の方向で隣接する他の素線と超音波溶接された溶接部21を形成することができる。
また、本実施形態の超音波溶接方法によれば、第1超音波溶接工程と第2超音波溶接工程との間で導体2a,2b,2c,2dの相対位置を変化させるために、手作業で導体2(仮溶接部)を捻ったり、専用の装置を用いて導体2を捻ったりする必要が無い。これにより、導体2a,2b,2c,2dの相対位置を変化させる際に、当該導体2に異物が付着してしまうことを防止できる。
以上で説明したように、本実施形態の超音波溶接方法は、絶縁被覆3を一部除去して導体2を露出させた複数の電線1の前記導体2同士を接続する超音波溶接方法であって、電線配置工程と、導体移動工程と、第1超音波溶接工程と、第2超音波溶接工程と、を含んでいる。電線配置工程においては、複数の電線1を所定の配置に従って配置する。導体移動工程においては、導体2をグライディングジョー12によって所定方向に押圧することにより、導体2同士の相対位置を変化させる。第1超音波溶接工程においては、グライディングジョー12によって押圧された状態の導体2に対して超音波溶接を行う。第2超音波溶接工程においては、グライディングジョー12による押圧を解除して、導体2に対して超音波溶接を行う。
このように、導体2を押圧して相対位置を変化させると、押圧力を解除したときに、復元力によって導体2が元の位置に戻ろうとする。即ち、導体2を押圧している時と、前記押圧を解除した時とでは、導体2同士の相対位置が異なる。従って、導体2を押圧した時に行う第1超音波溶接工程と、前記押圧を解除した時に行う第2超音波溶接工程と、では、異なる位置関係にある導体2に対して超音波溶接を行うことができる。これにより、第1超音波溶接工程と第2超音波溶接工程で異なる方向に接続を形成することができるので、導体2の素線がバラけてしまうことを防止できる。また、導体2を押圧するだけで導体2の相対位置を変更することができるので、例えば手作業や特殊な装置によって導体2を捻ったりする構成に比べて簡単かつ安価に行うことができるとともに、捻り忘れを防止できる。更に、作業者が手で導体2を触れたり、特殊な装置で導体を把持したりする必要が無いので、導体2に異物が付着してしまうことを防止できる。
また、本実施形態の超音波溶接方法は、以下のように行っている。即ち、導体移動工程においては、グライディングジョー12によって導体2を押圧することにより、その押圧方向とは直交する方向に導体2を並べる。第1超音波溶接工程においては、導体2が並んだ方向に超音波溶接を行う。
このように、導体2を所定方向に押圧することにより、前記押圧する方向とは直交する方向に導体2を並べることができる。また、導体2が並んだ方向に超音波溶接を行うことにより、第1超音波溶接工程における溶接部を、細長く形成できる。このように細長い溶接部は、前記押圧する力を解除したときに変形し易いため、特に好適である。
また、本実施形態の超音波溶接方法では、電線配置工程において、電線1は、グライディングジョー12によって押圧する方向に複数並んでいる。
このように、グライディングジョー12によって押圧する方向に電線1が複数並んでいる場合、当該押圧する方向に導体2を押圧することで容易に導体2同士の相対位置を変更することができる。
また、本実施形態の超音波溶接方法は、以下のように行われる。即ち、この超音波溶接方法は、導体2に対するグライディングジョー12による押圧を解除した後、アンビル14によって導体2を別の方向に押圧することにより導体2同士の相対位置を変化させる第2導体押圧工程を含む。そして、第2超音波溶接工程では、別の方向に押圧された状態の導体2に対して超音波溶接を行う。
このように、グライディングジョー12による押圧を解除した後、アンビル14によって別の方向に導体2を押圧することで、導体2を大きく変形させることができる。これにより、第1超音波溶接工程と、第2超音波溶接工程と、では導体2同士の位置関係が大きく異なる結果、よりバラけにくい溶接部21を形成することができる。
また、本発明の超音波溶接方法によって形成される溶接部21は、絶縁被覆3を一部除去して導体2を露出させた複数の電線1の導体2同士を超音波溶接により接続した溶接部であって、以下のように形成されている。即ち、導体2は複数の素線からなり、前記素線は、隣接する複数の方向の素線と接続されている。
このように、素線同士を複数の方向で接続することにより、バラけにくい溶接部を超音波溶接により形成することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態では、電線配置工程において、電線1を、横に2本、縦に2本で配置するものとしたが、これに限らない。そもそも、電線1は4本に限らず、複数本であれば本発明の方法を適用することができる。
上記実施形態では、仮溶接部20が略S字状に変形するものとして説明したが、必ずしもこのようにS字状とならなくても良い。要は、第1超音波溶接工程の後で、仮溶接部20が変形することにより、第2超音波溶接工程で異なる方向に超音波溶接を行うことができれば良い。
上記実施形態では、グライディングジョー12によって押圧することにより、導体2a,導体2b,導体2c,導体2dの順で並ぶとして説明したが、必ずしもこの順で導体2が並ぶとは限らない。例えば、導体2b,導体2a,導体2c,導体2dの順で並ぶ可能性もある。この場合、グライディングジョー12による押圧を解除した時には、仮溶接部20は上記のようにS字状には変形せず、例えば略C字状に変形すると考えられる。このように、導体2が並ぶ順番が異なっていても、グライディングジョー12による押圧を解除することにより仮溶接部20が変形するので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記実施形態では、超音波溶接を2回に分けて行う例を示しているが、例えば3回でも同様の効果を得ることができる。要は、複数回の超音波溶接を、導体2の相対位置を変化させながら行うことができれば良い。
上記実施形態では、最初にグライディングジョー12で押圧することにより導体2を相対移動させ、次にアンビル14で押圧することにより仮溶接部20を変形する構成としたが、これに限らない。例えば、まずアンビル14で押圧することにより導体2を相対移動させ(導体移動工程、第1導体押圧工程)、第1超音波溶接工程を行ってもよい。この場合、横に細長い仮溶接部が形成される。また、導体移動工程をこのように行った場合は、その後、アンビル14の押圧を解除し、グライディングジョー12で押圧することにより仮溶接部をS字状に変形させ(第2導体移動工程)、更にアンビル14によって再び押圧して(第2導体押圧工程)、第2超音波溶接工程を行うことになる。このように、第2導体移動工程と第2導体押圧工程が別々の工程であっても良い。
仮溶接部20は、電線1の長手方向で見たときの形状が細長い方が、第2導体移動工程において変形させ易いため好適である。ただし、グライディングジョー12の押圧によって導体を相対移動させる距離は限界もある。以上の点を考慮すれば、仮溶接部20の形状としては、電線1の長手方向で見たときの縦横比が、2:1(又は1:2)程度であることが理想的である。ただしこれに限らず、前記縦横比が5:1〜1:1(又は1:1〜1:5)の範囲であれば良好である。もっとも、仮溶接部20の形状が上記縦横比の範囲外であっても、第2導体移動工程においてその形状を変形させることができれば良いのであるから、仮溶接部20の形状が上記縦横比の範囲内に限定される訳では無い。
また、上記実施形態では、仮溶接部20及び溶接部21は、電線1の長手方向で見たときの形状が略四角形となっている(より正確に言うと、ソノトロード11、グライディングジョー12、アンビルプレート13及びアンビル14によって形成される空間の形状が、電線1の長手方向で見たときに略四角形となっている)。しかし、仮溶接部20及び溶接部21の形状はこれに限らず、例えば、電線1の長手方向で見たときの形状が三角形や丸型、六角形であっても良い。このように、ソノトロード11、グライディングジョー12、アンビルプレート13及びアンビル14の形状、配置関係、個数等は一例であって、上記実施形態に限るものではない。ただし、導体2の相対位置を変化させる必要があるので、仮溶接部20と溶接部21とでは、電線1の長手方向で見たときの形状が異なっていることが普通である。
上記の超音波溶接方法の各工程は、必ずしも連続して行う必要はない。
上記実施形態の説明では、ソノトロード11の上面(載置面)及びアンビル14の下面は略平面状としたが、実際の装置においては、完全な平滑面として形成されることは少ない。具体的には、ソノトロード11の上面及びアンビル14の下面には、ソノトロード11の振動方向に対して直交する方向に溝を形成する等により、超音波振動させる際に導体2との間でスリップが発生しないような形状とすることが一般的である。
1 電線
2 導体
3 絶縁被覆
10 超音波溶接機
11 ソノトロード
12 グライディングジョー
13 アンビルプレート
14 アンビル
21 溶接部

Claims (5)

  1. 絶縁被覆を一部除去して導体を露出させた複数の電線の前記導体同士を接続する超音波溶接方法であって、
    前記複数の電線を所定の配置に従って配置する電線配置工程と、
    前記導体を所定方向に押圧することにより、導体同士の相対位置を変化させる導体移動工程と、
    前記所定方向に押圧された状態の前記導体に対して超音波溶接を行う第1超音波溶接工程と、
    前記所定方向の押圧を解除して、前記導体に対して超音波溶接を行う第2超音波溶接工程と、
    を含むことを特徴とする超音波溶接方法。
  2. 請求項1に記載の超音波溶接方法であって、
    前記導体移動工程においては、前記導体を押圧することにより、その押圧方向とは直交する方向に当該導体を並べ、
    前記第1超音波溶接工程においては、前記導体が並んだ方向に前記超音波溶接を行うことを特徴とする超音波溶接方法。
  3. 請求項2に記載の超音波溶接方法であって、
    前記電線配置工程において、前記電線は、前記押圧する方向に複数並んでいることを特徴とする超音波溶接方法。
  4. 請求項1に記載の超音波溶接方法であって、
    前記導体に対する前記所定方向の押圧を解除した後、前記導体を別の方向に押圧することにより導体同士の相対位置を変化させる第2導体移動工程を含み、
    前記第2超音波溶接工程では、前記別の方向に押圧された状態の前記導体に対して超音波溶接を行うことを特徴とする超音波溶接方法。
  5. 絶縁被覆を一部除去して導体を露出させた複数の電線の前記導体同士を超音波溶接により接続した溶接部であって、
    前記導体は複数の素線からなり、
    前記素線は、隣接する複数の方向の素線と接続されていることを特徴とする溶接部。
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