JP2011184311A - 新規二次胆汁酸低減剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 新規の二次胆汁酸低減剤、より詳細には、二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物を低減する新規の剤を提供する。
【解決手段】 二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物を低減する剤であって、電子受容体を有効成分として含有する。本発明によれば、腸内細菌の胆汁酸代謝に直接介入することができ、従来の間接的な作用によるものと比較して、腸内の発がん性を有する二次胆汁酸の生成をより効果的に抑制し、発がん性を有する二次胆汁酸を低減することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物を低減する剤であって、電子受容体を有効成分として含有する。本発明によれば、腸内細菌の胆汁酸代謝に直接介入することができ、従来の間接的な作用によるものと比較して、腸内の発がん性を有する二次胆汁酸の生成をより効果的に抑制し、発がん性を有する二次胆汁酸を低減することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、新規の二次胆汁酸低減剤、より詳細には、二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物を低減する新規の剤に関する。
胆汁酸は胆汁に含まれるステロイド化合物であり、コレステロールの異化代謝物である。肝臓でコレステロールから生成されたコール酸、ケノデオキシコール酸などの一次胆汁酸は、胆汁に含有された状態で小腸上部に分泌され、食事に含まれる脂肪の乳化、分解、吸収を補助する。一次胆汁酸は小腸下部から吸収されて再利用されるが、一部は大腸に流れ込み、そこで腸内細菌により種々の二次胆汁酸に変換される。ヒトの大腸における胆汁酸の60%は、一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物である、デオキシコール酸およびリトコール酸で占められており、これらは発がん性を有する二次胆汁酸として知られている(非特許文献1)。
これら発がん性を有する二次胆汁酸は、大腸内のClostridium属細菌による7α−脱水酸化反応により生成される。例えばコール酸の7α−脱水酸化によりデオキシコール酸が、ケノデオキシコール酸の7α−脱水酸化によりリトコール酸が生成される。
ヒト以外の動物の腸においても、一次胆汁酸の還元的代謝により7位水酸基が脱離され、二次胆汁酸が生成されることが知られている。例えばブタでは、ヒオコール酸の7α−脱水酸化によりヒオデオキシコール酸が生成される(非特許文献2)。また、ラットでは、腸内細菌の働きにより、一次胆汁酸であるβ−ミュリコール酸の7位の水酸基が脱離、6位の水酸基が異性化され、二次胆汁酸であるヒオデオキシコール酸が生成されることが報告されている(非特許文献3)。
デオキシコール酸およびリトコール酸といった発がん性を有する二次胆汁酸は、発がん物質そのものであり、かつ大腸がんのプロモーターであることが知られている(非特許文献1)。また、発がん性を有する二次胆汁酸は、腸管細胞への細胞毒性を示すことから、炎症性腸疾患の他、酸化ストレスやNFκB依存性の炎症性分子応答の増大への関与が報告されている(例えば、非特許文献4〜6など)。従って、これら発がん性を有する二次胆汁酸を低減することにより、大腸がんの予防効果のみならず、炎症性腸疾患の予防ないし治療、酸化ストレスやNFκB依存性の炎症分子応答の抑制などを期待することができることから、発がん性を有する二次胆汁酸低減のための様々な試みがなされている。
例えば、コレスチラミンなどのイオン交換樹脂に発がん性(毒性)を有する二次胆汁酸を吸着させ、大腸内の発がん性(毒性)を有する二次胆汁酸を低減させる方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、これらの吸着剤は、腸管内で二次胆汁酸以外の栄養成分を非特異的に吸着してしまうため、当該栄養成分の欠乏症を引き起こすなどの副作用がある。
発がん性を有する二次胆汁酸を低減する別のアプローチとして、ビフィズス菌などのプロバイオティクスやオリゴ糖などのプレバイオティクスを摂取することによる、一次胆汁酸からの発がん性を有する二次胆汁酸の生成を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献2および3など)。これらの方法は特許文献1に開示されている吸着剤の欠点を解消するものであり、プロバイオティクスやプレバイオティクスの摂取により、ビフィズス菌の大腸内増殖を促し、その結果として7α−脱水酸化反応に関与するClostridium属細菌の活動を相対的に抑制することで、発がん性を有する二次胆汁酸の生成を抑制するものである。
H.Bernsteinら、Mutat.Res.、第589巻、第47〜65頁、2005年
穂下剛彦、生化学、42巻、第703〜717頁、1970年
H.J.Eyssenら、Appl.Environ.Microbiol.、第65巻、第7号、第3158〜3163頁、1999年
Y.Arakiら、Oncol.Rep.、第10巻、第6号、第1931〜1936頁、2003年
S.Lechnerら、Carcinogenesis、第23巻、第1281〜1288頁、2002年
C.M.Payneら、Carcinogenesis、第28巻、第215〜222頁、2007年
特許文献2および3に開示された、発がん性を有する二次胆汁酸の生成を抑制する方法は、腸管内の発がん性を有する二次胆汁酸を低減することができる有効な技術であるが、発がん性を有する二次胆汁酸を生成する腸内細菌に対し、作用は間接的であることから、発がん性を有する二次胆汁酸の生成を直接的かつ根本的に抑制することができるとは言い難く、発がん性を有する二次胆汁酸を直接的かつ根本的に低減する剤が求められていた。したがって本発明は、新規の二次胆汁酸低減剤、より詳細には、二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物を低減する新規の剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、腸内細菌による胆汁酸代謝の特性に着目して、二次胆汁酸生成反応を制御する技術について鋭意研究した結果、驚くべきことに、腸内細菌の嫌気呼吸の促進、すなわちエネルギー代謝制御により、発がん性を有する二次胆汁酸の生成が抑制されることを見出した。具体的には、電子受容体が一次胆汁酸の酸化的代謝を促進することにより、発がん性を有する二次胆汁酸を生成する腸内細菌によって行われる一次胆汁酸の還元的代謝を抑制でき、その結果、腸内の発がん性を有する二次胆汁酸が低減することを見出し、下記の各発明を完成した。
(1)二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物を低減する剤であって、電子受容体を有効成分として含有する前記剤。
(2)7位水酸基の脱水酸化物がデオキシコール酸、リトコール酸およびヒオデオキシコール酸からなる群より選ばれる1または2以上である、(1)に記載の剤。
(3)電子受容体がフマル酸またはその塩である、(1)または(2)に記載の剤。
本発明に係る新規二次胆汁酸低減剤は、腸内細菌の胆汁酸代謝に直接介入することができ、従来の間接的な作用によるものと比較して、腸内の発がん性を有する二次胆汁酸の生成をより効果的に抑制し、発がん性を有する二次胆汁酸を低減することができる。
「一次胆汁酸」とは、生体の肝臓においてコレステロールを原料として生合成される胆汁酸である。一次胆汁酸の例としては、ヒトにおいてはコール酸(CA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)などを、げっ歯類においては上記のヒトの一次胆汁酸に加えてαミュリコール酸(αMCA)やβミュリコール酸(βMCA)などを、ブタでは上記のヒトの一次胆汁酸に加えてヒオコール酸(HCA)などを挙げることができる。
一方、「二次胆汁酸」とは、一次胆汁酸が腸内細菌の代謝を受けた結果として生成する胆汁酸である。二次胆汁酸の例としては、ヒトにおいてはデオキシコール酸(DCA)、リトコール酸(LCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、7−ケトデオキシコール酸(7−KDCA)、7−ケトリトコール酸(7−KLCA)などを、げっ歯類においては上記のヒトの二次胆汁酸に加えてヒオデオキシコール酸(HDCA)およびωミュリコール酸(ωMCA)などを、ブタでは上記のヒトの二次胆汁酸に加えてHDCAなどを挙げることができる。
本明細書でいう「二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物」としては、例えば、DCA、LCA、HDCAなどを挙げることができ、DCAおよびLCAは、対応する一次胆汁酸であるCAおよびCDCAの7位の水酸基が脱離した構造を有し、HDCAは対応する一次胆汁酸であるβMCAの7位の水酸基が脱離、6位の水酸基が異性化された構造を有している。本明細書において、「二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物」は、「発がん性を有する二次胆汁酸」と交換可能に用いられる場合がある。例えば、前記DCA、LCA、HDCAなどは、変異原性または発がんプロモーター活性を有し、発がん性を有する二次胆汁酸である。
表1に各種胆汁酸における水酸基の位置を示す。表1中、例えばCAは3α、7α、12αの水酸基を有することを表し、また7−KDCAは3αの水酸基および7位のオキソ基を有することを表す。
一次胆汁酸は、腸内細菌により代謝を受け、様々な二次胆汁酸となる。例えば、Clostridium属菌などの腸内細菌(発がん性を有する二次胆汁酸生成菌)は、一次胆汁酸を基質とした還元的代謝(例えば、7α−脱水酸化反応)により、DCA、LCA、HDCAなどの発がん性を有する二次胆汁酸を生成する。
また、Bacteroides属菌などの腸内細菌(発がん性を有さない二次胆汁酸生成菌)は一次胆汁酸を基質とした酸化的代謝(例えば、7α−脱水素反応)により、7−KDCA、7−KLCAなどの発がん性の弱い、もしくは発がん性を有さない二次胆汁酸を生成する。
図1にヒトの主要な二次胆汁酸代謝を示す。図1に示すとおり、発がん性を有する二次胆汁酸生成菌の還元的代謝により、一次胆汁酸であるCAはDCAとなり、CDCAはLCAとなる。一方、発がん性を有さない二次胆汁酸生成菌の酸化的代謝により、CAは7−KDCAとなり、CDCAは7−KLCAとなる。発がん性を有する二次胆汁酸生成菌の還元的代謝と、発がん性を有さない二次胆汁酸生成菌の酸化的代謝とは、一次胆汁酸を基質とする点で競合する。
本発明においては、腸内への電子受容体の導入により、発がん性を有さない二次胆汁酸生成菌の嫌気呼吸が促進される結果、一次胆汁酸の酸化的代謝が促進され、競合する一次胆汁酸の還元的代謝が抑制される。このように、本発明によると、一次胆汁酸の還元的代謝産物である発がん性を有する二次胆汁酸の生成を抑制することができる。
本発明に係る電子受容体としては、二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物を低減する電子受容体であれば特に限定されず、例えば、フマル酸、硝酸塩、硫酸塩(タウリンなどを含む)、トリメチルアミン−N−オキサイド、ジメチルスルホキシド、3価の鉄イオンなど、また例えば植物由来のポリフェノール性化合物に代表されるような二重結合を多く含む食品素材(例えばカフェイン酸、カテキン、ルチン、ケルセチンなど)やリグニンなどを用いることができる。
特に好適な電子受容体としては、電子受容体自身および電子受容により生成される還元化合物のいずれもが安全性に問題がない物質、例えばフマル酸およびその塩を挙げることができる。フマル酸、および嫌気呼吸によりフマル酸から生成されるコハク酸は大部分の生物の基本的代謝経路であるクエン酸回路を構成する有機酸であり、共に食品添加物として安全性が確認されている化合物である。
フマル酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、フマル酸第一鉄などの金属塩などを用いることができる。
発がん性を有する二次胆汁酸生成菌としては、例えば、Clostridium属菌などを挙げることができ、特にClostridium scindens、Clostridium hiranonisなどを挙げることができる。また、発がん性を有さない二次胆汁酸生成菌としては、例えば、Bacteroides属菌、Escherichia属菌などを挙げることができる。
本発明において、「二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物を低減する」とは、腸管内または糞便における、二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位の水酸基の脱水酸化物の量、濃度、総胆汁酸量に占める二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位の水酸基の脱水酸化物の割合のいずれかを、健常な生物個体が通常有するレベルと比較して、または本発明に係る剤を摂取する前の状態と比較して、低下もしくは減少させること、または増加させないことを意味する。
発がん性を有する二次胆汁酸は、いくつかの疾患との関連が指摘されている。例えば大腸がんとの関連性について、ラットにリトコール酸などの二次胆汁酸を投与した場合に発がん剤による大腸発がん頻度を増悪すること(Narisawa T.ら、J.Natl.Cancer Inst.、第17巻、第1093〜1097頁、1974年)、大腸がん自然発症ラットでは発症していない同系統のラットに比べてその糞便中のデオキシコール酸が増加すること(Hayashi E.ら、Int.J.Cancer、第37巻、第629〜632頁、1986年)が報告されている。
また、発がん性を有する二次胆汁酸は、上皮細胞の細胞死を引き起こす(Jekins G.ら、Bile Acids;Toxicology and Bioactivity、Issues in Toxocology,Published by The Royal Society of Chemistry,2008)ことから、大腸での炎症の惹起に関わる可能性が示されている。
したがって、本発明に係る剤によると、摂取した動物の腸管内または糞便内の発がん性を有する二次胆汁酸を効果的に低減させることから、上述のような発がん性を有する二次胆汁酸の関与が指摘されている疾患である大腸がんおよび炎症性腸疾患の予防や治療の効果を期待することができる。
本発明に係る剤は、電子受容体をそのまま用いてもよいし、一般的な賦形剤と組み合わせることで組成物とし、さらに皮膚外用剤、内服剤、注射剤その他の一般的な剤型に製剤化して利用することもできる。製剤化において使用される賦形剤は、例えば、錠剤やカプセルなどの経口固形剤、水性液剤や懸濁液剤などの内服液剤、座剤その他の、剤型毎に当業者に広く知られ、また用いられている成分を適宜組み合わせて使用することができる。
上記組成物あるいは各種の剤型は、電子受容体に加えて、他の発がん性を有する二次胆汁酸低減剤その他の成分を必要に応じて配合し、医薬品、医薬部外品、農薬の形態としても差し支えなく、安全な食品添加物として飲食品に添加してもよい。
上記組成物あるいは剤型における電子受容体の配合量は特に規定されるものではなく、剤形の種類、品質、期待される効果の程度によって若干異なるが、組成物或いは製剤全量中、乾燥固形分として1%〜99重量%、好ましくは10〜99重量%、更に好ましくは50〜99重量%配合させるのがよい。
本発明に係る剤は、そのまま、あるいは適当な飲食品成分と組み合わせることで、乳飲料やジュースなどの飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、スープ、ゼリー、ジャム、菓子、パン類などの食品の形態としてもよく、さらに健康食品またはサプリメントの形態としてもよい。
さらに本発明に係る剤は、そのまま、あるいは適当な飼料成分と組み合わせることで、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヤギ、ニワトリなどの家畜用飼料、魚類などの養殖用飼料、イヌ、ネコなどのペット用飼料の形態としてもよい。
本発明に係る剤を上記の飲食品や飼料などの形態で摂取する場合の量に特段の制限はないが、人間に対しては、一般に食品として使用される範囲の量を摂取することが望ましく、具体的には1回につき0.5〜1000g、好ましくは1〜500gであり、1日当たりの総摂取量は0.5〜2000g、好ましくは1〜1000gである。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は係る実施例に限定的に解釈されるものではない。
<実施例1>フマル酸摂取がラット腸内の胆汁酸組成に与える影響の評価
フマル酸摂取がラット腸内の胆汁酸組成に与える影響を評価した。5週齢のWKAH/Hkm slc雄ラットに基本飼料(AIN−93G準拠、20%カゼイン食)を摂取させ、3−6日間の予備飼育を行った。予備飼育後、ラットを3群に分け、コントロール群(n=6)は引き続き同様の基本飼料を、5%フマル酸群(n=6)は基本飼料にフマル酸2ナトリウム(東京化成工業株式会社)を5%量添加した飼料を、10%フマル酸群(n=3)は基本飼料にフマル酸2ナトリウムを10%量添加した飼料を摂取させ、14日間の試験飼育を行った。試験期間最終日に解剖を行い、盲腸内容物を採取した。試験に用いた飼料の組成を表2に示す。
フマル酸摂取がラット腸内の胆汁酸組成に与える影響を評価した。5週齢のWKAH/Hkm slc雄ラットに基本飼料(AIN−93G準拠、20%カゼイン食)を摂取させ、3−6日間の予備飼育を行った。予備飼育後、ラットを3群に分け、コントロール群(n=6)は引き続き同様の基本飼料を、5%フマル酸群(n=6)は基本飼料にフマル酸2ナトリウム(東京化成工業株式会社)を5%量添加した飼料を、10%フマル酸群(n=3)は基本飼料にフマル酸2ナトリウムを10%量添加した飼料を摂取させ、14日間の試験飼育を行った。試験期間最終日に解剖を行い、盲腸内容物を採取した。試験に用いた飼料の組成を表2に示す。
盲腸内容物重量に対して、4倍量の水を加えてホモジナイズして遠心後、上清のpHを簡易型pH測定器(KS701;新電元工業)で測定した。また盲腸内容物の有機酸は以下の方法により測定した。上記盲腸内容物ホモジネート1mLに、内部標準物質として25mMのクロトン酸を含む50mM水酸化ナトリウム溶液200μLを加え撹拌して遠心後、0.75mLの上清に0.7mLのクロロホルムを添加して混合した。クロロホルム層が分離した後、上清に含まれる有機酸濃度をイオン交換カラム(Shim−pack SCR−102H、8x30mm;島津製作所)を用いた有機酸分析用HPLCシステム(SCL−10AVP;島津製作所)で定量した(Hoshi S.ら、J.Nutr.、第24巻、第52〜60頁、1994年)。
糞便中の胆汁酸分析については以下の方法を用いた。凍結乾燥後に粉砕した糞便100mgに、1mLのメタノールを加え混合した。これに内部標準として500μMのノルデオキシコール酸を含むメタノールを50μL加えた後に、超音波破砕機/超音波式ホモジナイザー(Ultra S.Homogenizer VP−15S;タイテック社)を用いて混合した。ウォーターバスを用いて60℃で30分間サンプルを加熱後、さらに100℃で3分間加熱した。室温になるまで放置後、撹拌し遠心分離して上清を回収した。残査に1mLのエタノールを加えて撹拌遠心後、再度上清を回収した。エタノールを用いた抽出操作を再度行いすべての抽出液を混合した。回収した抽出液からエタノールを除いた後、メタノールに溶解したものの胆汁酸組成をAcquity UPLCシステムを用いたLC/ESI−MSにより定量した(Hagio M.ら、J.Lipid Res.、第50巻、第173〜180頁、2009年)。統計処理は一元配置分散分析により行った。
盲腸内容物のpHを表3に示す。表3より、フマル酸摂取によるpHの変動は認められなかった。
盲腸内容物に含まれる有機酸を分析した結果を図2に示す。図2より、フマル酸摂取により盲腸内のコハク酸濃度の増大が認められた。コハク酸は、フマル酸を電子受容体とした嫌気呼吸により生成する有機酸であることから、フマル酸摂取によりラット腸内細菌の嫌気呼吸が促進されることが示された。
糞便に含まれる胆汁酸を分析した結果を図3に示す。図3より、発がん性を有する二次胆汁酸であるデオキシコール酸およびリトコール酸の濃度は、フマル酸摂取量に依存して統計的に有意に減少することが示された。また、ヒオデオキシコール酸は減少傾向となることが示された。
以上の結果から、飼料から摂取したフマル酸がラットの腸内で電子受容体として機能し、発がん性を有する二次胆汁酸生成菌が一次胆汁酸の還元的代謝を抑制することにより、糞便中の発がん性を有する二次胆汁酸の濃度を低下させることが示された。
Claims (3)
- 二次胆汁酸のうち一次胆汁酸の還元的代謝により生成する7位水酸基の脱水酸化物を低減する剤であって、電子受容体を有効成分として含有する前記剤。
- 7位水酸基の脱水酸化物がデオキシコール酸、リトコール酸およびヒオデオキシコール酸からなる群より選ばれる1または2以上である、請求項1に記載の剤。
- 電子受容体がフマル酸またはその塩である、請求項1または請求項2に記載の剤。
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