JP2011180424A - クリーニングブレード、画像形成装置、及び、プロセスカートリッジ - Google Patents

クリーニングブレード、画像形成装置、及び、プロセスカートリッジ Download PDF

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Abstract

【課題】先端稜線部のめくれを抑制しつつ、クリーニング性を良好にでき、かつ、ビビリ異音の発生を抑制することのできるクリーニングブレード、画像形成装置、及び、プロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】ブレード下面と先端面とに弾性ブレードよりも硬い表面層を設けることにより先端稜線部のめくれを抑制することができる。また、ブレード下面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数を先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数よりも低くすることで、クリーニング性を良好にでき、かつ、ビビリ異音の発生を抑制できる。
【選択図】図3

Description

従来、電子写真式の画像形成装置では、被清掃部材たる感光体などの像担持体について、転写紙や中間転写体へトナー像を転写した後の表面に付着した不必要な転写残トナーはクリーニング手段たるクリーニング装置によって除去している。
このクリーニング装置のクリーニング部材として、一般的に構成を簡単にでき、クリーニング性能も優れていることから、短冊形状のクリーニングブレードを用いたものがよく知られている。このクリーニングブレードは、ポリウレタンゴムなどの短冊形状の弾性体で構成されている。そして、クリーニングブレードの基端を支持部材で支持して先端稜線部を像担持体の周面に押し当て、像担持体上に残留するトナーをせき止めて掻き落とし除去する。
また、近年の高画質化の要求に応えるべく、重合法等により形成された小粒径で球形に近いトナー(以下、重合トナー)を用いた画像形成装置が知られている。この重合トナーは、従来の粉砕トナーに比べて転写効率が高いなどの特徴があり、上記要求に応えることが可能である。しかし、重合トナーは、クリーニングブレードを用いて像担持体表面から除去しようとしても十分に除去することが困難であり、クリーニング不良が発生してしまうという問題を有している。これは、小粒径で且つ球形度に優れた重合トナーが、ブレードと像担持体との間に形成される僅かな隙間をすり抜けるからである。
かかるすり抜けを抑えるには、像担持体とクリーニングブレードとの当接圧力を高めてクリーニング能力を高める必要がある。しかし、クリーニングブレードの当接圧を高めると、図8(a)に示すように、像担持体3とクリーニングブレード62との摩擦力が高まり、クリーニングブレード62が像担持体3の移動方向に引っ張られて、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれてしまう。このめくれたクリーニングブレード62が、そのめくれに抗して原形状態に復元する際に異音が発生することがある。さらに、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれた状態でクリーニングをし続けると、図8(b)に示すように、クリーニングブレード62の先端面62bの先端稜線部62cから数[μm]離れた場所に局所的な摩耗が生じてしまう。このような状態で、さらにクリーニングを続けると、この局所的な摩耗が大きくなり、最終的には、図8(c)に示すように、先端稜線部62cが欠落してしまう。先端稜線部62cが欠落してしまうと、トナーを正常にクリーニングできなくなり、クリーニング不良を生じてしまう。
特許文献1には、ポリウレタンエラストマーからなるクリーニングブレードの少なくとも当接部に、鉛筆硬度B〜6Hの皮膜硬度を有する樹脂からなる表面層を設けたものが記載されている。ゴム部材よりも硬い鉛筆硬度B〜6Hの皮膜硬度を有する表面層を設けることで、クリーニングブレード当接部の摩擦係数を下げることができ、クリーニングブレードの耐摩耗性を高めることができる。また、像担持体とクリーニングブレードとの摩擦力を低減させることができ、クリーニングブレードの先端稜線部のめくれを良好に抑制することができる。さらに、鉛筆硬度B〜6Hの鉛筆硬度の表面層は、硬くて変形しにくいので、クリーニングブレードの先端稜線部のめくれをより一層抑制することができる。
また、特許文献2には、シリコン含有紫外線硬化材料を弾性ブレードに含浸させて膨潤させた後、紫外線照射処理して表面に硬化層を形成したクリーニングブレードが記載されている。このように、紫外線硬化材料からなる弾性ブレードよりも高硬度の硬化層を設けることでも、耐摩耗性を向上でき、クリーニングブレードの先端稜線部のめくれを抑制することができる。
しかしながら、表面層や硬化層を設けたクリーニングブレードにおいて、クリーニング性が低下する場合があった。このことについて、本発明者らが鋭意研究した結果、次のことがわかった。すなわち、先端稜線部がスティックスリップ運動をすることがトナーのクリーニング性を良好にするうえで必要な要件であることがわかった。スティックスリップ運動とは、先端稜線部が、感光体との摩擦力により感光体とともに感光体移動方向へ弾性変形していき、ある程度弾性変形すると、ブレードの復元力が摩擦力よりも大きくなり、先端稜線部が感光体表面を滑って元の形状に戻る。そして、元の形状に戻ると、再び先端稜線部が感光体との摩擦力により感光体移動方向へ感光体とともに移動する。このような、往復運動が、スティックスリップ運動である。そして、表面層や硬化層の感光体との間の摩擦係数が低すぎると、感光体との摩擦力が小さくなるため、先端稜線部がスティックスリップ運動をしなくなり、トナーのすり抜けが多くなることがわかったのである。そこで、表面層や硬化層の感光体との間の摩擦係数を高くすると、先端稜線部が十分なスティックスリップ運動をし、クリーニング性は良好になった。しかし、表面層や硬化層の感光体との間の摩擦係数を高くすると、ビビリ異音が発生するという不具合が発生した。
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、先端稜線部のめくれを抑制しつつ、クリーニング性を良好にでき、かつ、ビビリ異音の発生を抑制することのできるクリーニングブレード、画像形成装置、及び、プロセスカートリッジを提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、短冊形状の弾性ブレードで構成され、該弾性ブレードの先端稜線部を表面移動する被清掃部材の表面に当接して、該被清掃部材表面から粉体を除去するクリーニングブレードにおいて、上記先端稜線部を1辺に有し、上記被清掃体と対向するブレード下面と、上記先端稜線部を1辺に有しブレードの厚み方向に平行な面であるブレード先端面とに、それぞれ弾性ブレードよりも硬い表面層を設け、ブレード下面の表面層と上記被清掃部材との間の摩擦係数を、ブレード先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数よりも低くしたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のクリーニングブレードにおいて、上記ブレード先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数が0.3以上0.6以下、上記ブレード下面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数が0.25以下であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のクリーニングブレードにおいて、イソシアネート化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物から選ばれる少なくとも1種による含浸改質処理が上記弾性ブレードの先端稜線部に対して施されていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3のクリーニングブレードにおいて、弾性ブレードの先端稜線部と被清掃部材との間の摩擦係数を、上記ブレード先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数よりも低く、上記ブレード下面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数よりも高くしたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかのクリーニングブレードにおいて、上記ブレード下面の表面層および上記ブレード先端面の表面層として、紫外線硬化樹脂を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかのクリーニングブレードにおいて、上記弾性体ブレードとして、ウレタン基を含むゴムを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、像担持体と、該像担持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、該像担持体表面に形成された静電潜像を現像してトナー像化する現像手段と、該像担持体表面のトナー像を転写体に転写する転写手段と、該像担持体表面に当接して該像担持体表面に付着した残トナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、該像担持体表面に滑剤を塗布する滑剤塗布手段とを備えた画像形成装置において、上記クリーニングブレードとして請求項1乃至6いずれかのクリーニングブレードを用い、且つ、上記滑剤塗布手段により非画像形成時に上記像担持体表面の摩擦係数を0.2以下とすることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、像担持体と、少なくとも該像担持体の表面に付着した残トナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、該像担持体表面に滑剤を塗布する滑剤塗布手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、上記クリーニングブレードとして、請求項1乃至6いずれかのクリーニングブレードを用い、且つ、上記滑剤塗布手段により非画像形成時に上記像担持体表面の摩擦係数を0.2以下とすることを特徴とするものである。
後述する検証実験に示すように、ブレード下面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数をブレード先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数よりも低くすることで、クリーニング性を良好にでき、かつ、ビビリ異音の発生を抑制できた。かかる構成とすることで、クリーニング性を良好にでき、かつ、ビビリ異音の発生を抑制できる理由の詳細は、不明であるが、本発明者らは、次のように考えている。すなわち、先端稜線部が被清掃部材との摩擦力により被清掃部材の表面移動方向に弾性変形すると、先端面の表面層が、被清掃部材と摺擦する。このとき、先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数が低いと、被清掃部材と先端面の表面層とが接触した時点で、被清掃部材との摩擦力よりも弾性ブレードの復元力が大きくなり、元の形状に戻るため、先端稜線部がほとんどスティックスリップ運動しなくなる。よって、先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数を高くすることことで、先端面の表面層と被清掃部材との摩擦力により、先端稜線部がある程度、被清掃部材表面移動方向へ移動してから元の形状に戻るようになり、先端稜線部が十分なスティックスリップ運動をする。その結果、クリーニング性が良好になったと考えられる。
また、ビビリ異音に関しては、経時使用などにより、ブレード下面の表面層が被清掃部材と当接する。このとき、ブレード下面の表面層は、先端稜線部のように、被清掃部材表面移動方向へほとんど弾性変形しない。そのため、ブレード下面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数を先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数と同じ値にした場合、ブレード下面の表面層と被清掃部材との摩擦力により、ブレード下面の表面層が微小振動する。この微小振動の周波数が、人に聞こえる周波数となり、ビビリ異音となって聞こえたと考えられる。よって、ブレード下面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数を先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数よりも低くすることで、ブレード下面の表面層と被清掃部材との摩擦力を下げて、摩擦力をブレード下面の表面層を変形させる力よりも小さくすることで、ブレード下面の表面層が微小振動するのを防止することができる。これにより、ビビリ異音が発生しなかったと考えられる。
本発明によれば、ブレード下面と先端面とに弾性ブレードよりも硬い表面層を設けることにより先端稜線部のめくれを抑制することができる。また、ブレード下面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数を先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数よりも低くすることで、クリーニング性を良好にでき、かつ、ビビリ異音の発生を抑制できる。
本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図。 (a)及び(b)は、トナーの円形度の測定方法を説明するための説明図。 本実施形態に係るクリーニングブレードの斜視図。 本実施形態に係るクリーニングブレードの拡大断面図。 ブレード下面の表面層を先端稜線部から20〜50μm離した構成のクリーニングブレードの斜視図。 ブレード下面の表面層を先端稜線部から20〜50μm離した構成のクリーニングブレードにおける先端稜線部の当接状態を説明する図。 本実施形態における弾性体ブレードの摩耗幅の測定箇所を示した模式図。 (a)クリーニングブレード先端稜線部がめくれた状態を示す図。(b)クリーニングブレードの先端面の局所的な摩耗について説明する図。(c)クリーニングブレードの先端稜線部が欠落した状態を示す図。
以下、本発明を画像形成装置である電子写真プリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図である。プリンタは、単一色の複写を行うものであり、図示しない画像読み取り部で読み取った画像データに基づいてモノクロ画像形成を行う。
図1に示すように、プリンタは、像担持体としてのドラム状の感光体3を備えている。感光体3はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
感光体3の周囲には帯電手段としての帯電装置4、潜像をトナー像化する現像手段である現像装置5、トナー像を記録媒体としての転写紙に転写する転写手段としての転写装置7、転写後の感光体3上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニング装置6、感光体3上に滑剤を塗布する滑剤塗布手段としての潤滑剤塗布装置10、感光体3を除電する除電ランプ(不図示)等が配置されている。
帯電装置4は、感光体3に所定の距離を持って非接触で配置され、感光体3を所定の極性、所定の電位に帯電するものである。帯電装置4によって一様帯電された感光体3は、図示しない潜像形成手段たる露光装置から画像データに基づいて光Lが照射され静電潜像が形成される。
現像装置5は、現像剤担持体としての現像ローラ51を有している。この現像ローラ51には、図示しない電源から現像バイアスが印加されるようになっている。現像装置5のケーシング内には、ケーシング内に収容された現像剤を互いに逆方向に搬送しながら攪拌する供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53が設けられている。また、現像ローラ51に担持された現像剤を規制するためのドクタ54も設けられている。供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53の2本スクリュによって撹拌・搬送された現像剤中のトナーは、所定の極性に帯電される。そして、現像剤は、現像ローラ51に汲み上げられ、汲み上げられた現像剤は、ドクタ54により規制され、感光体3と対向する現像領域でトナーが感光体3上の潜像に付着する。
クリーニング装置6は、ファーブラシ101、クリーニングブレード62などを有している。クリーニングブレード62は、感光体3の表面移動方向に対してカウンタ方向で感光体3に当接している。なお、クリーニングブレード62の詳細については後述する。
潤滑剤塗布装置10は、固形潤滑剤103、潤滑剤加圧スプリング(不図示)等を備え、固形潤滑剤103を感光体3上に塗布する塗布ブラシとしてファーブラシ101を用いている。固形潤滑剤103は、図示しないブラケットに保持され、潤滑剤加圧スプリング(不図示)によりファーブラシ101側に加圧されている。そして、感光体3の回転方向に対して連れまわり方向に回転するファーブラシ101により固形潤滑剤103が削られて感光体3上に潤滑剤が塗布される。感光体への潤滑剤塗布により感光体表面の摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。
帯電装置4には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)を始めとする公知の手段が用いられる。
これらの帯電方式のうち、特に接触帯電方式、あるいは非接触の近接配置方式がより望ましく、帯電効率が高くオゾン発生量が少ない、装置の小型化が可能である等のメリットを有する。
また、図示しない露光装置、除電ランプ等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、また600〜800[nm]の長波長光を有するため、良好に使用される。
次に、プリンタにおける画像形成動作を説明する。
図示しない操作部などからプリント実行の信号を受信したら、帯電装置4、現像ローラ51にそれぞれ所定の電圧または電流が順次所定のタイミングで印加される。同様に、露光装置及び除電ランプなどにもそれぞれ所定の電圧又は電流が順次所定のタイミングで印加される。また、これと同期して、駆動手段としての感光体駆動モータ(不図示)により感光体3が図中矢印方向に回転駆動される。
感光体3が図中矢印方向に回転すると、まず感光体表面が、帯電装置4によって所定の電位に帯電される。そして、図示しない露光装置から画像信号に対応した光Lが感光体3上に照射され、光Lが照射された部分の感光体3上が除電され静電潜像が形成される。
静電潜像の形成された感光体3は、現像装置5との対向部で現像ローラ51上に形成された現像剤の磁気ブラシで感光体3表面を摺擦される。このとき、現像ローラ51上の負帯電トナーは、現像ローラ51に印加された所定の現像バイアスによって、静電潜像側に移動し、トナー像化(現像)される。このように、本実施形態では、感光体3上に形成された静電潜像は、現像装置5によって、負極性に帯電されたトナーにより反転現像される。本実施形態では、N/P(ネガポジ:電位が低い所にトナーが付着する)の非接触帯電ローラ方式を用いた例について説明したが、これに限るものではない。
感光体3上に形成されたトナー像は、図示しない給紙部から上レジストローラと下レジストローラとの対向部を経て、感光体3と転写装置7との間に形成される転写領域に給紙される転写紙に転写される。このとき、転写紙は上レジストローラと下レジストローラとの対向部で画像先端と同期を取り供給される。また、転写紙への転写時には、所定の転写バイアスが印加される。トナー像が転写された転写紙は感光体3から分離され、図示しない定着手段としての定着装置へ搬送される。そして、定着装置を通過する事により、熱と圧力の作用でトナー像が転写紙上に定着されて、転写紙は機外に排出される。
一方、転写後の感光体3の表面は、クリーニング装置6で転写後の残留トナーが除去され、潤滑剤塗布装置10によって潤滑剤が塗布された後、除電ランプで除電される。
また、本プリンタにおいては、感光体3と、プロセス手段として帯電装置4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10などが枠体2に収められており、プロセスカートリッジ1として装置本体から一体的に着脱可能となっている。なお、本実施形態では、プロセスカートリッジ1としての感光体3とプロセス手段とを一体的に交換するようになっているが、感光体3、帯電装置4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10のような単位で新しいものと交換するような構成でもよい。
次に、本プリンタに好適なトナーについて説明する。
本プリンタに用いるトナーとしては、画質向上のために、高円形化、小粒径化がし易い懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法により製造された重合トナーを用いるのが好ましい。特に、円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5[μm]以下の重合トナーを用いるのが好ましい。平均円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5[μm]のものを用いることにより、より高解像度の画像を形成することができる。
ここでいう「円形度」は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製、商品名)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150[ml]中に、分散剤として界面活性剤好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5[ml]加え、更に測定試料(トナー)を0.1〜0.5[g]程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、分散液濃度が3000〜1[万個/μl]となるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。そして、この測定結果に基づき、図2(a)に示す実際のトナー投影形状の外周長をC1、その投影面積をSとし、この投影面積Sと同じ図2(b)に示す真円の外周長をC2としたときのC2/C1を求め、その平均値を円形度とした。
体積平均粒径については、コールターカウンター法によって求めることが可能である。具体的には、コールターマルチサイザー2e型(コールター社製)によって測定したトナーの個数分布や体積分布のデータを、インターフェイス(日科機社製)を介してパーソナルコンピューターに送って解析するのである。より詳しくは、1級塩化ナトリウムを用いた1%NaCl水溶液を電解液として用意する。そして、この電解水溶液100〜150[ml]中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5[ml]加える。更に、これに被検試料としてのトナーを2〜20[mg]加え、超音波分散器で約1〜3分間分散処理する。そして、別のビーカーに電解水溶液100〜200[ml]を入れ、その中に分散処理後の溶液を所定濃度になるように加えて、上記コールターマルチサイザー2e型にかける。アパーチャーとしては、100[μm]のものを用い、50,000個のトナー粒子の粒径を測定する。チャンネルとしては、2.00〜2.52[μm]未満;2.52〜3.17[μm]未満;3.17〜4.00[μm]未満;4.00〜5.04[μm]未満;5.04〜6.35[μm]未満;6.35〜8.00[μm]未満;8.00〜10.08[μm]未満;10.08〜12.70[μm]未満;12.70〜16.00[μm]未満;16.00〜20.20[μm]未満;20.20〜25.40[μm]未満;25.40〜32.00[μm]未満;32.00〜40.30[μm]未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00[μm]以上32.0[μm]以下のトナー粒子を対象とする。そして、「体積平均粒径=ΣXfV/ΣfV」という関係式に基づいて、体積平均粒径を算出する。但し、Xは各チャンネルにおける代表径、Vは各チャンネルの代表径における相当体積、fは各チャンネルにおける粒子個数である。
このような重合トナーにおいては、上述したように、粉砕トナーを感光体3表面から除去するときと同じようにしてクリーニングブレード62で除去しようとしても、その重合トナーを感光体3表面から十分に除去しきれず、クリーニング不良が発生する。そこで、クリーニングブレード62の感光体3への当接圧を高めて、クリーニング性をアップしようとすると、クリーニングブレード62が早期に摩耗してしまうという問題があった。また、クリーニングブレード62と感光体3との摩擦力が高まって、クリーニングブレード62の感光体3と当接している先端稜線部が感光体3の移動方向に引っ張られて、先端稜線部がめくれてしまう。クリーニングブレード62の先端稜線部がめくれると、異音や振動、先端稜線部の欠落などの様々な問題が生じてしまう。
そこで、本実施形態においては、クリーニングブレード62の先端稜線部に、イソシアネート化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物から選ばれる少なくとも1種を含浸させて低摩擦化と先端内部の硬度上昇とを図る改質処理を行い、また、クリーニングブレード62よりも硬度の高い表面層をブレード下面とブレード先端面とに設けている。
図3は、クリーニングブレード62の斜視図であり、図4は、クリーニングブレード62の拡大断面図である。
クリーニングブレード62は、金属や硬質プラスチックなどの剛性材料からなる短冊形状のホルダー621と、短冊形状の弾性体ブレード622とで構成されている。弾性体ブレード622は先端稜線部62cに含浸処理がなされている。
弾性体ブレード622は、ホルダー621の一端側に接着剤などにより固定されており、ホルダー621の他端側は、クリーニング装置6のケースに片持ち支持されている。
弾性体ブレード622としては、感光体3の偏心や感光体表面の微小なうねりなどに追随できるように、高い反発弾性体率を有するものが好ましく、ウレタン基を含むゴムであるウレタンゴムなどが好適である。
また、弾性体ブレードと622の硬度としては、25℃における硬度が70〜75度(JIS A)のウレタンゴムが好ましい。ウレタンゴムの硬度が75度を超えると、柔軟性に乏しくなり、例えば、ホルダー621が微小に傾いて取り付けるなどしたときに、クリーニングブレード62の軸方向一端側と他端側とで当接圧が異なる所謂偏当りしやすくなり、軸方向で均一な当接圧が得にくくなる。その結果、クリーニング性が低下するおそれがある。一方、硬度が70度未満の場合は、重合トナーでもクリーニングできるよう当接圧を高く設定したときに、クリーニングブレード62が反ってしまって、クリーニングブレード62の先端稜線部62cが浮きあがって、クリーニングブレード62のブレード下面62bが感光体3と当接する所謂腹当たり現象が生じてしまう。腹当たり現象が生じると、クリーニングブレード62と感光体表面との当接面積が急激に増大するため、クリーニングブレード62を大きな力で押しつけても逆に当接圧は小さくなり、クリーニング性が低下してしまう。
なお、弾性ブレード622の硬さは含浸処理によるウレタンゴムそのものの改質で変化し、さらに表面層623a,623bの形成によっても影響を受けるので、各々の効果を調整することが必要である。
弾性体ブレード622の先端稜線部62cへの含浸処理は、スプレー塗工、ディップ塗工などによって、イソシアネート化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物から選ばれる少なくとも1種を含浸させることで可能である。これは結果として先端稜線部62cの低摩擦化と先端内部の硬度上昇とを図る改質効果を生じさせることができる。先端稜線部62cの摩擦係数が0.5以下となるように低摩擦化処理を行うのが良い。さらに、経時表面層摩耗によって弾性ブレード622の先端稜線部が露出したとき、当接する弾性体ブレード622の先端稜線部と感光体3との摩擦力を弱めることができ、当接した部分が、感光体表面移動方向に変形するのを抑制することができる。
表面層623a,623bは、スプレー塗工、ディップ塗工、あるいはスクリーン印刷等によって弾性ブレード622のブレード下面およびブレード先端面に形成する。表面層623a,623bとしては、弾性体ブレード622よりも硬度の高い部材を被覆するのが好ましい。また、表面層623a,623bは、弾性体ブレード622よりも硬度が高い部材とすることで、剛直なため、変形し難く、クリーニングブレード62の先端稜線部62cのめくれを抑制することができる。
また、表面層623a,623bの材質としては、樹脂が好ましく、紫外線硬化樹脂がより好ましい。紫外線硬化樹脂を用いることで、弾性ブレード622のブレード先端面62bおよびブレード下面62aに付着した樹脂に紫外線を照射させるだけで、所望の表面層623a,623bを得ることができ、クリーニングブレード62を安価に製造することができる。
上記紫外線硬化樹脂としては、一つの三次元架橋点あたり分子量300〜1500を有するモノマーを用いることが好ましい。上記分子量が1500を越えると、表面層623a,623bは脆弱になり過ぎ、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれて図8(b)のような先端面摩耗を生じてしまい、長期に渡るクリーニング性を保持できなくなる。逆に分子量300を下回ると、表面層623a,623bが剛直となり過ぎてしまう。表面層623a,623bが剛直となりすぎると、表面層623a,623bの耐摩耗性能の低下や、ビビリ音が発生しやすくなってしまう。
また、表面層623a,623bの層厚は、1〜10[μm]が好ましい。層厚が、1[μm]未満だと、表面層623a,623bの剛性が弱くなり、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれやすくなってしまう。また、層厚が10[μm]を超えると、先端稜線部62cの運動抑制効果が強すぎ先端稜線部62cの弾性変形が、表面層623a,623bにより阻害され均一な当接状態が得られずトナーのすり抜けが増大してクリーニング不良が発生しやすくなかったり、異音の発生を生じやすくなったりする。
さらに、ブレード先端面の表面層623aに関しては、層厚が10[μm]を超えると、トナーのすり抜けが増大してクリーニング不良が発生しやすくなる。これは、スプレー塗工やディップ塗工のように、液体の材料を付着させてブレード先端面の表面層623aを形成しているため、先端稜線部62cは表面張力の関係で、被膜が形成されにくい。このため、先端稜線部62cから離れるにつれてブレード先端面の表面層623aの層厚は、増加する。層厚が10[μm]を超えると、先端稜線部62cの層厚と先端稜線部62cから離れた位置における層厚との差が大きくなり、クリーニングブレード62の先端稜線部62cの角度が鈍角化する。先端稜線部62cの角度が鈍角となると、先端稜線部62cを直角とした場合に比べて、先端面62aと感光体3とがなす当接部の上流側の空隙X(図3参照)が狭くなる。そのため、長期に渡るクリーニング動作によって空隙にトナーが堆積したとき、せき止められた空隙X内のトナーに逃げ場がないので、空隙X内のトナーが徐々に感光体3の下流側に押し出され、クリーニング不良が発生する。
また、先端面の表面層623aの感光体との間の摩擦係数は、0.3以上0.6以下が好ましい。先端稜線部62cは、感光体3との摩擦力により感光体移動方向へ弾性変形する。このように、先端稜線部62cが、感光体移動方向へ弾性変形すると、先端面の表面層623aが感光体3と接触する。このとき、先端面の表面層623aの感光体との間の摩擦係数を0.3以上0.6以下としているので、先端面の表面層623aと感光体3との摩擦力が、先端稜線部62cの復元力よりも大きいため、さらに、先端稜線部62cが感光体移動方向へさらに弾性変形する。そして、めくれない程度に先端稜線部62cが弾性変形すると、先端面の表面層623aと感光体3との摩擦力よりも先端稜線部62cの復元力が勝り、先端稜線部62cが元の形状に戻る。このように、先端稜線部62cが、感光体3とともに、感光体移動方向にある程度移動した後、元の形状に戻るような往復運動(スティックスリップ運動)が、十分に行われる。その結果、トナーのクリーニング性が良好にすることができる。また、十分なスティックスリップ運動が行われるので、先端稜線部62cの磨耗の進行を抑制することができる。
一方、先端面の表面層623aの感光体との間の摩擦係数が、0.3未満だと、先端稜線部62cのスティックスリップ運動が十分に行われず、トナーのすり抜けが生じ、クリーニング不良が生じるおそれがある。また、感光体3との摺擦頻度が高くなり、先端稜線部62cの磨耗の進行が早まってしまう。また、先端面の表面層623aの感光体との間の摩擦係数が、0.6を超えると、表面層623aと感光体3との摩擦力が高くなり、先端稜線部62cがめくれてしまうおそれがある。
また、ブレード下面の表面層623bの感光体との間の摩擦係数は、先端面の表面層623aの感光体との間の摩擦係数よりも低い0.25以下にするのが好ましい。ブレード下面の表面層623bの感光体との間の摩擦係数が、0.25を超えると、ブレード下面の表面層623bが微小振動し、ビビリ異音が発生する。ブレード下面の表面層623bの感光体との間の摩擦係数を、0.25以下とすることにより、ブレード下面の表面層623bと感光体3との摩擦力が、ブレード下面の表面層623bを変形させる力よりも小さくなり、ブレード下面の表面層623bが、微小振動するのを抑制することができる。これにより、ビビリ異音が生じるのを抑制することができる。
また、先端面の表面層623aの摩耗によって弾性ブレード622の先端稜線部が露出した後も、先端稜線部62cが適度にスティックスリップ運動できるよう、弾性ブレード622の先端稜線部の摩擦係数は、ブレード下面の表面層623bの摩擦係数よりも高い、0.25以上にするのが好ましい。これにより、先端面の表面層623aの摩耗によって弾性ブレード622の先端稜線部が露出した後も、先端稜線部が適度にスティックスリップ運動し、良好なクリーニング性を維持することができる。
また、ブレード下面の表面層623bを、先端稜線部62cから所定の間隔を開けて形成し、図5に示すように、ブレード下面62b所定幅に非形成領域624を設けてもよい。弾性ブレード622の先端稜線部62cを含浸処理により硬度上昇させると、弾性ブレード622の先端稜線部62cが変形し難くなるおそれがある。このため、弾性ブレード622のブレード下面62bの全面に弾性ブレード622よりも硬度が高い表面層623bを形成すると、ブレード下面の表面層623bが、弾性ブレード622の先端稜線部62cの感光体表面への弾性変形を阻害してしまい、先端稜線部62cにおいて感光体表面への当接圧を高める向きに働く弾性変形に対する復元力がほとんど得られなくなってしまう。その結果、先端稜線部62cが感光体3の偏心や微小なうねりに対して追随できなくなってしまう。従って、感光体3に対する当接圧が変動してしまい、連続的なベタ画像形成時等、先端稜線部62cに堰きとめたトナーから大きな押圧力を受けるなどの厳しい条件において、当接圧が低下したときに、トナーがクリーニングブレード62からすり抜けてクリーニング不良を生じるおそれがある。このため、弾性ブレード622のブレード下面62bに表面層623bを形成しないことも考えられる。ブレード下面62bに表面層623bを形成しなかった場合は、弾性ブレード622の先端稜線部62cが感光体表面移動方向へ大きく弾性変形して、先端稜線部62cがめくれてしまい、めくれ摩耗が生じるおそれがある。
ブレード下面62bに先端稜線部62cから所定幅の表面層非形成領域624を設けることで、ブレード下面全体に表面層623を形成したものに比べて、弾性ブレード622の先端稜線部における弾性変形を阻害するのを抑制し、図6に示すように、先端稜線部62cがめくれない程度に、弾性ブレード622の先端稜線部62cを感光体表面移動方向へ弾性変形させることができる。これにより、感光体3に偏心などがあった場合でも、弾性ブレード622の先端稜線部62cの弾性変形に対する復元力により、先端稜線部62cを感光体3の表面に対して追随させることができ、良好なクリーニング性を維持することができる。また、弾性ブレード622のブレード下面62bに先端稜線部からブレード長手方向に表面層非形成領域624をはさんで形成した表面層構成により、弾性ブレード622の先端稜線部62cが感光体表面移動方向へ大きく弾性変形するのを抑制し、先端稜線部62cがめくれるのを抑制することができる。
ブレード下面の表面層非形成領域324の幅は、20[μm]〜50[μm]が好ましい。20[μm]未満だと、表面層非形成領域624を設けることの効果を十分に得ることができず、50[μm]を超えると、ブレード下面の表面層623bの効果を十分に得ることができず、めくれが生じるおそれがある。
次に、本出願人らが行った検証実験について説明する。
弾性体ブレード622の材質、含浸処理方法、各面の表面層623a,623bの材質をそれぞれ変化させて、耐久試験を行った。
[弾性体ブレード]
弾性体ブレード622としては、25[℃]における物性が以下の物性となっている5つのウレタンゴムを用意した。
ウレタンゴム1:硬度72度、反発弾性率31[%](東洋ゴム工業製)
ウレタンゴム2:硬度69度、反発弾性率50[%](東洋ゴム工業製)
ウレタンゴム3:硬度74度、反発弾性率49[%](東洋ゴム工業製)
ウレタンゴムの硬度は、島津製作所製デュロメーターを用い、JIS K6253に準じて測定した。試料は厚さ6[mm]以上となるように約2[mm]のシートを重ね合わせたものとした。
ウレタンゴムの反発弾性は、東洋精機製作所製No.221レジリエンステスタを用い、JIS K6255に準じて測定した。試料は厚さ4[mm]以上となるように約2[mm]のシートを重ね合わせたものとした。
[含浸剤]
含浸剤としては、以下のものを用いた。
(含浸剤1)
イソシアネート化合物:関東化学 MDI 10部
2−ブタノン 90部
(含浸剤2)
イソシアネート化合物:日本ポリウレタン MR−100 10部
シリコーン樹脂:日油 モディパーF−600 5部
2−ブタノン 85部
[表面層]
各面の表面層623a,623bとしては、以下のものを用いた。
(表面層1)
ウレタンアクリレートオリゴマー:根上工業 UN−904 10部
低摩擦係数化アクリレートオリゴマー:大阪化学工業 V−3F 1部
重合開始剤:チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 1部
溶媒:2−ブタノン 88部
摩擦係数:0.25
(表面層2)
アクリレートオリゴマー:ダイセルサイテック PETIA 10部
重合開始剤:チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 1部
溶媒:2−ブタノン 78部
摩擦係数:0.30
(表面層3)
ウレタンアクリレートオリゴマー:根上工業 UN−2700 10部
重合開始剤:チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 1部
溶媒:2−ブタノン 89部
摩擦係数:0.6
表面層の感光体との間の摩擦係数は、新東科学製トライボギアミューズ94iを用い、最大静止摩擦係数を測定した。試料は、50[mm]×50[mm]のガラス板上にコーティング材料を約10[μm]スプレー塗工したものとした。また、接触子(スライダー)は、感光体表面と同材料のフィルムを用いた。
ウレタンアクリレート(根上工業 UN−904)のマルテンス硬度は、単品(100%)で約300[N/mm]で、これに対し、硬度70度のウレタンゴムのマルテンス硬度は、1[N/mm]以下であるので、ウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする表面層1〜3は、弾性ブレード1〜3よりも、十分に硬度が高いものである。
次に、検証実験を行った画像形成装置の構成について説明する。
上記ウレタンゴム1〜3のいずれかを用いて厚さ1.8[mm]の短冊形状の弾性体ブレードを作成し、この弾性体ブレードを含浸剤1〜4のいずれかに所定時間浸漬したのち、3分間風乾し、さらにスプレー塗工法とスクリーン印刷法により上記表面層1〜表面層3いずれかの表面層を先端面およびブレード下面に形成した。具体的には、適宜含浸処理を行った各々のウレタンゴムからなる弾性体ブレードに対し、まずスプレー塗工によりブレード先端面から10[mm/s]のスプレーガン移動速度にて所定の層厚になるように先端面全面に重ね塗りを行った。3分間指触乾燥後、ブレード下面にスクリーン印刷によりブレード稜線部から所定の非形成領域をはさんで先端約3[mm]幅に表面層が形成されるように塗工した。ブレード下面へのパターン塗工は、太陽精機製シルクスクリーン230メッシュを用い、UV露光により非形成領域を規制する所定のパターンを形成したのち、上記表面層材料を溶媒量により粘度調節して塗工した。その後さらに3分間指触乾燥を行い、紫外線露光(140[W/cm]×5[m/min]×5パス)を行った。
先端面およびブレード下面に表面層が形成された弾性体ブレードをリコー製カラー複合機 imagio MP C4500に搭載できる板金ホルダーに接着剤により固定し、試作のクリーニングブレードとした。これを同じくリコー製カラー複合機 imagio MP C4500(図1と同様の構成)に取り付け、実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例3の画像形成装置を作製した。なお、クリーニングブレードは、線圧:20[g/cm]、クリーニング角:79[°]となるように取り付けた。また、本装置は感光体表面への潤滑剤塗布装置10を備えており、潤滑剤塗布により感光体表面の静止摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。なお、感光体表面の静止摩擦係数の測定方法については、オイラーベルトの方法で、例えば、特開平9−166919号公報の段落番号0046に記載されている。
検証実験には、重合法により作製したトナーを用いた。なお、トナーの物性は、以下のとおりである。
トナー母体:円形度0.98、平均粒径4.9[μm]
外添剤 :小粒径シリカ1.5部(クラリアント製H2000)
小粒径酸化チタン0.5部(テイカ製MT−150AI)
大粒径シリカ1.0部(電気化学工業製UFP−30H)
検証実験は、実験室環境:21[℃]・65[%RH]、通紙条件:画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、50,000枚(A4横)で行った。そして、以下の項目を評価した。
[評価項目]
クリーニング不良発生:有無(目視観察)
評価時画像:縦帯パターン(紙進行方向に対して)43[mm]幅、3本チャート
出力20枚(A4横)
ブレードエッジ摩耗幅:図7に示すようにブレード下面側からみた摩耗幅
以下に実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例3のクリーニングブレードの検証実験の結果を示す。なお、表面層の層厚は、キーエンス製マイクロスコープVHX−100を用い、別途同様に塗工した弾性体ブレードの断面により測定した。試料は日進EM製SEM試料作製用トリミングカミソリを用い断面を切断したものとした。
また、クリーニングブレードの先端稜線部の摩擦係数は、新東科学株式会社製・摩擦摩耗試験機(ブレードホルダー装着)を使い測定した。具体的には、ガラス板上に感光体表面層と同成分の被膜が形成された「擬似感光体」に、クリーニングブレードを上述と同じ接触条件(角度:79°、線圧:20[g/cm])になるよう取り付け、ガラス板を動かしてその時の動摩擦係数を測定した。
(実施例1)
ベースウレタンゴム:ウレタンゴム1
含浸剤:含浸剤1
含浸時間:30秒
先端表面層:表面層2
下面表面層:表面層1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:ブレード下面1[μm]
:先端面1[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:5[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
(実施例2)
ベースウレタンゴム:ウレタンゴム2
含浸剤:含浸剤2
含浸時間:30秒
先端表面層:表面層3
下面表面層:表面層1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:ブレード下面1[μm]
:先端面1[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:5[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
(実施例3)
ベースウレタンゴム:ウレタンゴム3
含浸剤:含浸剤1
含浸時間:30秒
先端表面層:表面層2
下面表面層:表面層1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:ブレード下面5[μm]
:先端面2[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:5[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
(実施例4)
ベースウレタンゴム:ウレタンゴム2
含浸剤:含浸剤1
含浸時間:30秒
先端表面層:表面層3
下面表面層:表面層1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:ブレード下面3[μm]
:先端面2[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:5[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
(比較例1)
ベースウレタンゴム:ウレタンゴム1
含浸:なし
表面層:なし
ブレードエッジ摩耗幅:30[μm]
クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良3箇所
異音発生:なし
先端面えぐれ摩耗発生
(比較例2)
ベースウレタンゴム:ウレタンゴム1
含浸:なし
含浸時間:30秒
先端表面層:表面層2
下面表面層:表面層1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:ブレード下面3[μm]
:先端面2[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:20[μm]
クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良3箇所
異音発生:ビビリ
(比較例3)
ベースウレタンゴム:ウレタンゴム1
含浸剤:含浸剤1
先端表面層:表面層1
下面表面層:表面層3
エッジ部より50[μm]での表面層厚:ブレード下面5[μm]
:先端面1[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:70[μm]
クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良4箇所
異音発生:ビビリ
先端面えぐれ摩耗発生
Figure 2011180424
上記表1は、実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例3の検証実験の結果をまとめたものである。
実施例1〜実施例4においては、いずれも、経時にわたり良好なクリーニング性を維持することができ、異音の発生も抑えることができた。
実施例1〜実施例4においては、含浸処理による低摩擦化、硬度上昇を図る先端稜線部62cの改質処理がなされている。さらに、潤滑剤塗布装置10による潤滑剤塗布により感光体表面の摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持されている。また、ブレード下面の表面層の感光体との間の摩擦係数が0.25以下に抑えられている。このため、経時的な異音発生を回避することができたと考えられる。さらに、感光体3と先端稜線部62cとの間で生じる摩擦力を低減することができ、先端稜線部62cのめくれを抑制することができるとともに、弾性体ブレード622の摩耗も抑制することができたと考えられる。また、ブレード下面の表面層623b、ブレード先端面の表面層623aにより、弾性ブレード622の先端稜線部近傍を補強する効果が得られ、それにより先端稜線部の運動を適度に制御することができ、めくれを抑制できたと考えられる。また、5万枚通紙後の磨耗幅を5[μm]以下に抑えることができた。これは、先端面の表面層623aの感光体との間の摩擦係数を0.3〜0.6と高いため、先端稜線部62cが、適度にスティックスリップ運動し、磨耗を抑制できたと考えられる。また、経時使用により、先端面の表面層623aが磨耗し、弾性ブレード622の先端面の先端端稜線部近傍が露出するが、弾性ブレード622の先端稜線部は、改質処理され、摩擦係数が0.27〜0.4になっている。このため、弾性ブレード622の先端面の先端稜線部近傍が露出した後も、先端稜線部62cが、適度にスティックスリップ運動し、磨耗を抑制できたと考えられる。また、弾性ブレード622の先端稜線部62cが露出した後も、先端稜線部62cが適度にスティックスリップ運動したので、良好なクリーニング性を維持することができたと考えられる。
一方、比較例1においては、クリーニング評価において、帯状クリーニング不良が発生した。これは、含浸処理および表面層を設けていないことから、先端摩擦係数が高く、先端稜線部の運動性を適度に制御できていないため、先端稜線部がめくれ、先端面えぐれ摩耗が発生し、局所的なトナーすり抜けによりクリーニング不良が発生したと考えられる。
また、比較例2においては、ビビリ異音が確認された。これは、弾性ブレードは含浸改質処理を行っていないため、摩擦係数が高い。そのため、摩耗進行とともに露出した基材ゴムのみが、感光体との摩擦力により微小振動し、その振動の周波数が、人に聞こえる周波数となり、不快なビビリ音となったと考えられる。また、比較例2においては、クリーニング不良が確認された。これは、露出した基材ゴムの微小振動による振動エネルギーにより、先端面の表面層の露出した基材ゴム側端部やブレード下面の表面層の露出した基材ゴム側端部に部分的な破壊が起き、トナーすり抜けによるクリーニング不良が発生したと考えられる。
比較例3においては、使用初期時にクリーニング不良が確認された。これは、先端面の表面層の感光体との間の摩擦係数が0.25と低いため、先端稜線部のスティックスリップ運動が十分でなく、使用初期時にクリーニング不良が発生したと考えられる。また、比較例3においては、ビビリ異音も確認された。これは、ブレード下面の表面層623bの感光体との間の摩擦係数が0.6と高いため、ブレード下面の表面層623bが、微小振動し、ビビリ異音が発生したと考えられる。さらに、比較例3は、磨耗幅が70[μm]と耐磨耗性が著しく劣っていた。これは、先端面の表面層623aが、早期に磨耗してしまったからと考えられる。先端面の表面層623aには、低摩擦係数化するための添加剤が加えられており、これが、おそらく、表面層623aの分子構造を不安定化する方向に働き、表面層623aの耐磨耗性を低下させてしまったため、先端面の表面層623aが、早期に磨耗してしまったと考えられる。これに加え、先端稜線部62cのスティックスリップ運動が十分でないことも、先端面の表面層623aが、早期に磨耗してしまった一要因であると考えられる。
また、比較例3においては、先端面えぐれ磨耗が発生した。これも、先端面の表面層623aには、低摩擦係数化するための添加剤が加えられており、これが、おそらく、表面層623aの剛性を下げてしまい、めくれを抑制できず、えぐれ磨耗が生じたと考えられる。
以上、本実施形態によれば、弾性ブレード622で構成され、表面移動する被清掃部材たる感光体3の表面に先端稜線部62cを当接させて、感光体表面から粉体たるトナーを除去するクリーニングブレードにおいて、端稜線部62cを1辺に有し、感光体3と対向するブレード下面62bと、先端稜線部62cを1辺に有し、ブレードの厚み方向に平行な面であるブレード先端面62aとに、それぞれ弾性ブレード622よりも硬い表面層623a,623bを設け、ブレード下面の表面層623bの感光体との間の摩擦係数を、ブレード先端面の表面層623aの感光体との間の摩擦係数よりも低くした。具体的には、ブレード先端面の表面層623aの感光体との間の摩擦係数を0.3以上0.6以下、ブレード下面の表面層623bの感光体との間の摩擦係数を0.25以下した。これにより、上述した検証実験で明らかなように、先端稜線部62cがめくれを抑制しつつ、良好なクリーニング性を維持することができ、かつ、ビビリ異音の発生を抑制することができた。
また、本実施形態によれば、弾性体ブレード622は先端稜線部62cに、イソシアネート化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物から選ばれる少なくとも1種を含浸させる低摩擦処理がなされる。これにより、感光体3の表面と先端稜線部62cとの間で生じる摩擦力を低減することができ、先端稜線部のめくれを抑制することができる。
また、弾性ブレード622の先端稜線部の感光体との間の摩擦係数を、ブレード先端面の表面層623aの感光体との間の摩擦係数よりも低く、ブレード下面の表面層623bの感光体との間の摩擦係数よりも高くすることによって、上述した検証実験で明らかなように、弾性ブレード622が露出した後も、先端稜線部62cが適度なスティックスリップ運動をし、良好なクリーニング性を維持することができる。また、先端面の表面層623aよりも感光体との間の摩擦係数が低いので、弾性ブレード622が露出した後も、感光体3の表面と先端稜線部62cとの間で生じる摩擦力により先端稜線部62cのめくれを抑制することができる。
また、表面層623が紫外線硬化樹脂からなることで、クリーニングブレード62の先端稜線部62cに付着した樹脂に紫外線を照射させるだけで、所望の表面層623を得ることができ、クリーニングブレード62を安価に製造することができる。
また、本実施形態によれば、弾性体ブレード622として、ウレタン基を含むゴムを用いたことで、感光体3に偏心などあっても、柔軟に弾性体ブレード622が変形して、所定の当接圧を維持することができ、良好なクリーニング性を維持することができる。
また、感光体3表面に潤滑剤を塗布することにより非画像形成時に感光体表面の摩擦係数を0.2以下とする。これにより、経時的な異音発生を回避することができ、先端稜線部62cのめくれを抑制することができるとともに、弾性体ブレード622の摩耗も抑制することができたと考えられる。
また、本実施形態によれば、プロセスカートリッジ1として上述のクリーニングブレード62を一体に構成することで、クリーニング性が良好なプロセスカートリッジを提供することができる。
1 プロセスカートリッジ
2 枠体
3 感光体
4 帯電装置
5 現像装置
6 クリーニング装置
7 転写装置
10 潤滑剤塗布装置
14 転写ベルト
51 現像ローラ
52 供給スクリュ
53 攪拌スクリュ
54 ドクタ
62 クリーニングブレード
62a 先端面
62b ブレード下面
62c 先端稜線部
101 ファーブラシ
103 固形潤滑剤
262 クリーニングブレード
262a 先端面
262b ブレード下面
262c 先端稜線部
621 ホルダー
622 弾性体ブレード
623 表面層
624 ブレード下面表面層非形成領域
特許第3602898号公報 特開2004−233818号公報

Claims (8)

  1. 短冊形状の弾性ブレードで構成され、該弾性ブレードの先端稜線部を表面移動する被清掃部材の表面に当接して、該被清掃部材表面から粉体を除去するクリーニングブレードにおいて、
    上記先端稜線部を1辺に有し、上記被清掃体と対向するブレード下面と、上記先端稜線部を1辺に有しブレードの厚み方向に平行な面であるブレード先端面とに、それぞれ弾性ブレードよりも硬い表面層を設け、
    ブレード下面の表面層と上記被清掃部材との間の摩擦係数を、ブレード先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数よりも低くしたことを特徴とするクリーニングブレード。
  2. 請求項1のクリーニングブレードにおいて、
    上記ブレード先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数が0.3以上0.6以下、上記ブレード下面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数が0.25以下であることを特徴とするクリーニングブレード。
  3. 請求項1または2のクリーニングブレードにおいて、
    イソシアネート化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物から選ばれる少なくとも1種による含浸改質処理が上記弾性ブレードの先端稜線部に対して施されていることを特徴とするクリーニングブレード。
  4. 請求項3のクリーニングブレードにおいて、
    弾性ブレードの先端稜線部と被清掃部材との間の摩擦係数を、上記ブレード先端面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数よりも低く、上記ブレード下面の表面層と被清掃部材との間の摩擦係数よりも高くしたことを特徴とするクリーニングブレード。
  5. 請求項1乃至4いずれかのクリーニングブレードにおいて、
    上記ブレード下面の表面層および上記ブレード先端面の表面層として、紫外線硬化樹脂を用いたことを特徴とするクリーニングブレード。
  6. 請求項1乃至5いずれかのクリーニングブレードにおいて、
    上記弾性体ブレードとして、ウレタン基を含むゴムを用いたことを特徴とするクリーニングブレード。
  7. 像担持体と、該像担持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、該像担持体表面に形成された静電潜像を現像してトナー像化する現像手段と、該像担持体表面のトナー像を転写体に転写する転写手段と、該像担持体表面に当接して該像担持体表面に付着した残トナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、該像担持体表面に滑剤を塗布する滑剤塗布手段とを備えた画像形成装置において、
    上記クリーニングブレードとして請求項1乃至6いずれかのクリーニングブレードを用い、且つ、上記滑剤塗布手段により非画像形成時に上記像担持体表面の摩擦係数を0.2以下とすることを特徴とする画像形成装置。
  8. 像担持体と、少なくとも該像担持体の表面に付着した残トナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、該像担持体表面に滑剤を塗布する滑剤塗布手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、
    上記クリーニングブレードとして、請求項1乃至6いずれかのクリーニングブレードを用い、且つ、上記滑剤塗布手段により非画像形成時に上記像担持体表面の摩擦係数を0.2以下とすることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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