JP2011176272A - R−Fe−B系永久磁石の防錆方法 - Google Patents

R−Fe−B系永久磁石の防錆方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 部品に埋め込んで使用するR−Fe−B系永久磁石などにおいて、金属被膜形成や樹脂被膜形成などの最終的には過剰となる防錆処理を施すことなく、温度や湿度が大きく変動したり、塩素イオンに晒され易い過酷な保管・輸送環境においても十分な耐食性を確保することのできるR−Fe−B系永久磁石の防錆方法を提供すること。
【解決手段】 本発明のR−Fe−B系永久磁石の防錆方法は、請求項1記載の通り、R−Fe−B系永久磁石をアルミニウム箔の表裏両面に樹脂フィルムを積層したラミネートフィルムを用いて密封することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、R−Fe−B系永久磁石の防錆方法に関する。より詳細には、R−Fe−B系永久磁石に耐食性被膜形成などの特別な防錆処理を施すことなく、梅雨時期の倉庫保管や船舶による海上輸送など、温度や湿度が変動したり塩素イオンに晒され易い過酷な環境においてもR−Fe−B系永久磁石の十分な耐食性を確保する、R−Fe−B系永久磁石の防錆方法に関する。
R−Fe−B系永久磁石は、資源的に豊富で安価な材料が用いられ、かつ、高い磁気特性を有していることから今日様々な分野で使用されているが、反応性の高い希土類元素:Rを含むため、大気中で酸化腐食されやすいという特質を有する。従って、R−Fe−B系永久磁石は、通常、その表面に金属被膜や樹脂被膜などの耐食性被膜を形成して実用に供される。耐食性被膜が形成されたR−Fe−B系永久磁石を保管・輸送する際には、トレーなどに並べられた上、もしくはそのまま、樹脂フィルムなどの包装材で包装される。例えば、特許文献1には、樹脂層とアルミニウム層を積層した複合フィルムが、高耐食性被膜として知られているNiめっき被膜を有するR−Fe−B系永久磁石を梱包するために使用されている例が記載されている。特許文献1において、当該複合フィルムは、Niめっき被膜の表面状態の経時的変化を抑制し、被膜表面の接着性維持のために好ましいことが開示されている。
R−Fe−B系永久磁石をIPM(Interior Permanent Magnet)モータなどのように部品に埋め込んで使用する場合には、磁石は最終的に樹脂モールドされた状態となるため、必ずしもこのような耐食性被膜を磁石の表面に形成することは必要とされない。しかしながら、磁石が製造されてから部品に埋め込まれるまでの期間における磁石の耐食性の確保は当然に必要となる。
R−Fe−B系永久磁石が製造されてから部品に埋め込まれるまでの期間における磁石の腐食は、保管や輸送の際に磁石が置かれる環境の良し悪しに左右される。例えば日本の梅雨時期の倉庫保管のように、磁石が保管される環境の温度や湿度の大きな変動は、磁石の表面に微細な結露を繰り返し生じさせ、磁石の腐食を早めてしまう。さらには、大気中の塩素イオン量も磁石の腐食に大きく影響する。例えば赤道を越える船舶による海上輸送における磁石の置かれる環境は、温度や湿度の変動に加えて塩素イオンに晒され易く、非常に過酷な環境である。また、このような保管・輸送環境に置かれる期間は比較的長期間となることがしばしばである。このため、磁石が製造されてから部品に埋め込まれるまでの磁石の耐食性の確保を完全にするために、部品に組み込まれて以後は必要でない、すなわち最終的には過剰となる防錆処理、例えば、金属被膜や樹脂被膜など耐食性被膜形成が必要となることがある。
特開2007−197070号公報
そこで本発明は、部品に埋め込んで使用するR−Fe−B系永久磁石などにおいて、金属被膜形成や樹脂被膜形成などの最終的には過剰となる防錆処理を施すことなく、温度や湿度が大きく変動したり、塩素イオンに晒され易い過酷な保管・輸送環境においても十分な耐食性を確保することのできるR−Fe−B系永久磁石の防錆方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、R−Fe−B系永久磁石の保管や輸送の際の過酷環境における耐食性の確保に関して、その包装方法に注目した。優れた包装方法によって包装することで、磁石が製造されてから部品に埋め込まれるまでの期間、耐食性被膜形成などの防錆処理を施さずとも磁石の耐食性を完全に確保することが可能ではないかと考えた。
耐食性被膜が形成されたR−Fe−B系永久磁石の包装材としては、従来より、樹脂ラミネートフィルムや、樹脂フィルムと樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着したアルミニウム蒸着フィルムを積層したアルミニウムラミネートフィルム(以下、アルミニウム蒸着ラミネートフィルムと言う)などが使用されている。特にPET(ポリエチレンテレフタレート)にアルミニウムを蒸着したアルミニウム蒸着フィルムを使用したアルミニウム蒸着ラミネートフィルムはその高いバリア性から防錆効果が高く、好適に使用されている。しかしながら、本発明者らが、何の防錆処理も施されていないR−Fe−B系永久磁石をアルミニウム蒸着ラミネートフィルムによって密封し、保管・輸送を想定した耐食性試験を行ったところ、このような過酷な保管・輸送環境では耐食性が確保できないことがわかった。
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム箔の表裏両面に樹脂フィルムを積層したラミネートフィルムを用いてR−Fe−B系永久磁石を密封することにより、温度や湿度が大きく変動したり、塩素イオンに晒され易い過酷な環境においても、R−Fe−B系永久磁石の耐食性を確保できることを見出した。
上記の知見に基づいて完成された本発明のR−Fe−B系永久磁石の防錆方法は、請求項1記載の通り、R−Fe−B系永久磁石をアルミニウム箔の表裏両面に樹脂フィルムを積層したラミネートフィルムを用いて密封することを特徴とする。
また、請求項2記載の防錆方法は、請求項1記載の防錆方法において、前記密封は包装体内部の絶対湿度が3g/m以下となるように行われることを特徴とする。
また、請求項3記載の防錆方法は、請求項1または2記載の防錆方法において、R−Fe−B系永久磁石の表面に防錆処理が施されていないことを特徴とする。
また、請求項4記載の防錆方法は、請求項1または2記載の防錆方法において、R−Fe−B系永久磁石の表面に簡易防錆処理が施されていることを特徴とする。
本発明によれば、温度や湿度が大きく変動したり、塩素イオンに晒され易い過酷な保管・輸送環境においても、R−Fe−B系永久磁石に特別な防錆処理を施すことなく十分な耐食性を確保する、R−Fe−B系永久磁石の防錆方法を提供することができる。
実験例1において、R−Fe−B系永久磁石を密封した包装体を示す断面図である。 実験例1の実施例において、包装体を恒温恒湿試験に供した後のR−Fe−B系永久磁石の外観写真である。 実験例1の比較例において、包装体を恒温恒湿試験に供した後のR−Fe−B系永久磁石の外観写真である。
本発明のR−Fe−B系永久磁石の防錆方法は、請求項1記載の通り、R−Fe−B系永久磁石をアルミニウム箔の表裏両面に樹脂フィルムを積層したラミネートフィルムを用いて密封することを特徴とする。
本発明においては、アルミニウム箔の表裏両面に樹脂フィルムを積層したラミネートフィルムを用いる。本発明者らは、何の防錆処理も行わないR−Fe−B系永久磁石を、アルミニウム蒸着ラミネートフィルムによって密封し、保管・輸送を想定して、恒温恒湿試験や塩水噴霧試験などの耐食性試験を行ったところ、後の実施例において比較例として示すようにR−Fe−B系永久磁石は発錆した。したがって、過酷な保管・輸送環境では耐食性が確保できない可能性が高く、アルミニウム蒸着ラミネートフィルムによる密封では、磁石の防錆処理を代替することは不可能であることがわかった。そこで発明者らは、包装材について種々検討したところ、アルミニウム蒸着ラミネートフィルムではなく、アルミニウム箔の表裏両面に樹脂フィルムを積層したラミネートフィルム(以下、アルミニウム箔ラミネートフィルムと言う)を用いることにより、R−Fe−B系永久磁石は、特別な防錆処理を行わなくとも、過酷環境で耐食性が確保されることがわかった。
アルミニウム蒸着ラミネートフィルムは、ガスバリア性、防湿性、光遮断性などに優れていることが知られ、食品の包装用途に広く使用されている。また、一部は高い防湿性が求められる電子部品の防湿、帯電防止のための保護包装用途にも採用されている。特許文献1などに記載のように、R−Fe−B系永久磁石の包装にも採用される場合もある。しかしながら、それはあらかじめ耐食性被膜形成などの防錆処理が施されたR−Fe−B系永久磁石の包装であることが前提であり、例えば密封包装のみによって非常に酸化腐食されやすいR−Fe−B系永久磁石の防錆処理の代替を行うことは想定されていなかった。また、発明者らの検証で、ガスバリア性、防湿性、光遮断性などに優れていると言われるアルミニウム蒸着ラミネートフィルムによる密封包装でも磁石の防錆処理の代替を行うことができなかったように、密封包装による防錆処理の代替は非常に困難であった。しかしながら、発明者らは、何の防錆処理も施されていない磁石に対しても、アルミニウム箔ラミネートフィルムによる密封包装であれば、防錆処理の代替を行うことが可能であり、過酷な恒温恒湿試験や塩水噴霧試験などの耐食性試験を施しても磁石は発錆することがなく、過酷な保管・輸送環境にも耐え、耐食性が確保できることを見出した。
アルミニウムは、塩化物生成の標準自由エネルギーがFeより大きく、大気中の塩素イオンをR−Fe−B系永久磁石よりも優先的にトラップしやすいことから、塩素イオンに対するバリア性に優れていると考えられる。しかしながら、アルミニウム箔は、物理的に脆弱で破れやすく、また、ピンホールが発生しやすい。このため、両面に樹脂フィルムを積層することにより、物理的強度が増し、ピンホールを埋め、また、熱融着などによる密封が可能となる。
アルミニウム箔としては、圧延アルミニウム箔や電解アルミニウム箔が挙げられるが、製造コストの面から圧延アルミニウム箔が好適に用いられる。アルミニウム箔の厚みは特に問わないが、現在の工業規模では4μmより厚みの薄いものを得ることが難しい。製造コストから6μm以上がより好ましい。また、製造コストとガスバリア性のバランスを考慮すると、25μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。なお、アルミニウム蒸着フィルムにおけるアルミニウム蒸着膜厚は、通常、40〜50nm程度であり、上記アルミニウム箔に比べて非常に薄いが、アルミニウム蒸着フィルムに関しては、これ以上蒸着厚みを厚くしてもガスバリア性などは変わらないことが知られており、密封包装による防錆処理の代替は不可能であることが推測される。なお、上記を超える蒸着厚みを持つアルミニウム蒸着ラミネートフィルムは発明者らの知りうる限り工業的に生産されていない。
アルミニウム箔の表裏両面に積層される樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、セロハン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、などや、これらのフィルムが積層された複合フィルムが挙げられる。さらに、複合フィルムには積層する際に各層の表面にアンカーコーティング層を設けたり、種々の化学処理などの前処理を行っているものも挙げられる。具体的には、アルミニウム箔の両面にポリエチレン、さらにそれぞれの面にバリア性に優れたPETや柔軟性に優れ、軟化点の低いLLDPEを積層したものが好適に使用される。これらの厚みは、それぞれ10〜70μmが好ましい。
これらの積層方法としては、熱融着や接着剤による積層など、公知の種々の積層方法が適用される。積層にあたって各層の表面にアンカーコーティング層を設けたり、種々の化学処理などの前処理を行っても良い。
アルミニウム箔ラミネートフィルムは、シート状のものを用いて、包装時に全体をシーリングするようにして包装体を形成しても良いが、あらかじめ袋状に形成されているものを用いる方法が取り扱いの面で好ましい。磁石は、そのまま密封しても良いし、樹脂製などのトレーに並べたり、磁石を並べたトレーを積層した状態で密封しても良い。
本発明の防錆方法によれば、いわゆる真空パックと呼ばれる方法のように包装体内部(アルミニウム箔ラミネートフィルムの内部)を減圧して密封したり、密封前に包装体内部の雰囲気を不活性ガスで置換したりすることなく、磁石の耐食性を確保することができる。もちろん、本発明はこれらの方法を否定するものではなく、例えば、包装体内部の減圧は、磁石をラミネートフィルムによって密封した包装体の体積を最小化したり、内容物を安定に保持するなどの効果があり、また、空輸など気圧の変化を伴う輸送が行われる可能性がある場合には袋の破損を防止できるので、これらの目的がある場合には包装体内部の減圧が効果的である。
以上のように、アルミニウム箔ラミネートフィルムによる包装によって、包装体外部の高温高湿環境や塩素イオンに対して磁石の耐食性を確保することが可能となるが、さらに、冬場の寒冷地など、気温が氷点下となる環境での輸送、保管を行なう場合には、包装体内部に磁石と共に封入される大気中の水分を極力少なくすることが好ましい。包装体内部に磁石と共に封入される大気中の水分(包装体内部の絶対湿度)は3g/m(露点−5℃に相当)以下であることが好ましく、2g/m(露点−10℃に相当)以下であることがより好ましく、0.9g/m(露点−20℃に相当)以下であることがさらに好ましい。アルミニウム箔ラミネートフィルムは、ガスバリア性等に非常に優れているため、包装体内部に磁石と共に封入される大気中の水分は開封時まで包装体外部に排出されることがなく、包装体内部の温度が氷点下における輸送、保管などによって包装体内部の露点を下回ると、密封時に磁石と共に封入される微量の水分が磁石表面に結露し、錆発生の原因となる恐れがある。包装体内部の水分量を3g/m以下とすることにより、−5℃以上の環境での輸送、保管では密封時に封入された微量水分が磁石の発錆に影響を与える恐れがない。
包装体内部に磁石と共に封入される大気中の水分(包装体内部の絶対湿度)を3g/m(露点−5℃に相当)以下とするには、(1)密封時のアルミニウム箔ラミネートフィルム周辺の環境(作業室内や包装機内の雰囲気)の絶対湿度を3g/m以下としたり、包装体内部を絶対湿度3g/m以下の雰囲気ガスで置換する方法(2)包装体内部の水分量が3g/m以下となるまで水分を除去できる量の乾燥剤を入れて密封する方法、などが考えられる。また、磁石をトレーに並べて包装する場合など、包装体内部の最低容積がある程度見込まれる場合には、(3)密封時の包装体内部の水分量が3g/m以下となるまで包装体内部を減圧する方法、を採用することも可能である。
密封時のアルミニウム箔ラミネートフィルム周辺の環境の絶対湿度を3g/m以下とするには、作業室内の雰囲気の絶対湿度を3g/m以下とするほか、包装機のチャンバー内の雰囲気の絶対湿度を3g/m以下とすればよい。
包装体内部の水分量が3g/m以下となるまで水分を除去できる量の乾燥剤は、例えば乾燥剤にJIS Z 0701に適合する包装用シリカゲル(A形2種)を使用する場合、密封時のアルミニウム箔ラミネートフィルム周辺の環境の絶対湿度と包装体内部の容積から包装体内部の水分量(Wg)を計算し、20Wg以上のシリカゲルを入れて密封すればよい。なお、このシリカゲルの使用量は、JIS Z 0301規定の乾燥剤使用量において、簡易的に、アルミニウム箔ラミネートフィルムの透湿率をゼロとし、包装体内部に吸湿性材料がないものとして算出したものである。
包装時に磁石と共に鉄粉などの脱酸素材を入れることも防錆の効果がある。
アルミニウム箔ラミネートフィルムの開封は、開封時の磁石表面への結露を避けるため、包装体内部の露点以上の温度環境で行なわれることが好ましい。その後は速やかに部品埋め込みなどの製造工程に供されることが好ましいのは言うまでもない。
本発明の防錆方法は、通常の製造工程で製造されたR−Fe−B系永久磁石に別途形成される耐食性被膜、すなわち、湿式めっきおよび気相めっきによる金属被膜や、樹脂塗装被膜、電着塗装被膜、金属分散樹脂被膜などの樹脂被膜が形成されていない、例えば、時効処理上がり、または、機械加工後、洗浄、乾燥上がりのR−Fe−B系永久磁石に対して、密封包装されている期間の耐食性を確保できる。具体的には、所望する組成のR−Fe−B系永久磁石原料合金粉末を磁界中で加圧成形して成形体とし、これを焼結して得た焼結体に対し時効処理を行った時効処理体や、時効処理体に機械加工を施し、洗浄、乾燥した加工体に対して適用される。時効処理体は、焼結後時効処理の前に切削加工、研削加工などの機械加工を施して洗浄、乾燥したものでも良い。これらの各々の工程は、広く行われている公知の方法に従って行えばよく、例えば、米国特許4770723号公報や、米国特許4792368号公報、米国特許5383978号公報などに記載されている。また、それぞれにおいて、時効処理の前に、WO2007/102391国際公開パンフレットなどに記載の重希土類拡散処理を施してもよい。本発明において、焼結体に時効処理を施すとは、焼結工程後、上記機械加工や重希土類拡散工程などの各種工程を経たものに時効処理を施すことを含むものとする。密封状態が開封された以後の部品の製造環境などによっては、磁石に簡易防錆処理を施すことはもちろん有効である。具体的な簡易防錆処理としては、WO2009/041639国際公開パンフレットや特願2010−149602号などに記載の酸素分圧と水蒸気分圧を制御した酸化性雰囲気下での熱処理による酸化熱処理、特許第3572040号記載のアルカリケイ酸塩被膜形成処理、WO2010/001878国際公開パンフレット記載のZrおよびフッ素を含有する水溶液を用いた化成処理、公知のリン酸またはリン酸塩処理、クロム酸またはクロム酸塩処理などの化成処理が挙げられる。
本発明の防錆方法において用いられるR−Fe−B系永久磁石における希土類元素Rは、Nd、Pr、Dy、Ho、Tb、Smのうち少なくとも1種を含み、さらに、La、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb、Lu、Yのうち少なくとも1種を含んでいてもよい。また、通常はRのうち1種をもって足りるが、実用上は2種以上の混合物(ミッシュメタルやジジムなど)を入手上の便宜などの理由によって用いることもできる。R−Fe−B系永久磁石におけるRの含量は、10原子%未満であるとα−Fe相が析出するため、高磁気特性、特に高い保磁力(HcJ)が得られず、一方、30原子%を越えるとRリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(B)が低下して優れた特性の永久磁石が得られないので、Rの含量は組成の10原子%〜30原子%であることが望ましい。
Feの含量は、65原子%未満であるとBが低下し、80原子%を越えると高いHcJが得られないので、65原子%〜80原子%の含有が望ましい。また、Feの一部をCoで置換することによって、得られる磁石の磁気特性を損なうことなしに温度特性を改善することができるが、Co置換量がFeの20原子%を越えると、磁気特性が劣化するので望ましくない。Co置換量が1原子%〜15原子%の場合、Bは置換しない場合に比較して増加するため、高磁束密度を得るのに望ましい。
Bの含量は、2原子%未満であると菱面体構造が主相となり、高いHcJは得られず、28原子%を越えるとBリッチな非磁性相が多くなり、Bが低下して優れた特性の永久磁石が得られないので、2原子%〜28原子%の含有が望ましい。また、磁石の製造性の改善や低価格化のために、2.0質量%以下のP、2.0質量%以下のSのうち、少なくとも1種、合計量で2.0質量%以下を含有していてもよい。さらに、Bの一部を30質量%以下のCで置換することによって、磁石の耐食性を改善することができる。
さらに、Al、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、Ni、Si、Zn、Hf、Gaのうち少なくとも1種の添加は、保磁力や減磁曲線の角型性の改善、製造性の改善、低価格化に効果がある。なお、R−Fe−B系永久磁石には、R、Fe、B以外に工業的生産上不可避な不純物を含有するものでも差し支えない。R−Fe−B系永久磁石としては、R−Fe−B系焼結磁石の他、R−Fe−B系焼結磁石用原料粉末やR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末などのR−Fe−B系磁石粉末、R−Fe−B系ボンド磁石に対しても採用できる。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例と比較例で用いた磁石体試験片は、下記の製造方法によって製造したNd−Fe−B系焼結磁石である。
Nd:18.6、Pr:5.5、Dy:7.1、B:1.0、Co:0.9、Al:0.2、Cu:0.1、残部:Fe(単位は質量%)の組成を有する厚さ0.2〜0.3mmの合金薄片をストリップキャスト法により作製した。
次に、この合金薄片を容器に充填し、水素処理装置内に収容した。そして、水素処理装置内を圧力500kPaの水素ガスで満たすことにより、室温で合金薄片に水素吸蔵させた後、放出させた。このような水素処理を行うことにより、合金薄片を脆化し、大きさ約0.15〜0.2mmの不定形粉末を作製した。
上記の水素処理により作製した粗粉砕粉末に対し粉砕助剤として0.04質量%のステアリン酸亜鉛を添加し混合した後、ジェットミル装置による粉砕工程を行うことにより、粉末粒径が約3μmの微粉末を作製した。
こうして作製した微粉末をプレス装置により成形し、粉末成形体を作製した。具体的には、印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、成形体をプレス装置から抜き出し、真空炉により1050℃で4時間の焼結工程、490℃で3時間の時効処理工程を行った後、厚さ2mm×縦18mm×横25mmに機械的に寸法加工し、洗浄乾燥を行って磁石体試験片を得た。
[実験例1](包装体外部環境の影響を示す実施例および比較例、シリカゲル有)
図1に示すように、磁石体試験片11をポリプロピレン製のトレー12に載せたものを2段に積層して最上部に同じトレーを乗せて蓋をしたものと2gの包装用シリカゲル13(A形2種、ドライヤーン:山仁薬品社製)1個を、包装材14(表1に示す積層構成のラミネートフィルムを130×130mmの3方袋状に形成したもの)を用いて、絶対湿度9.5g/mの大気中(温度:19℃、相対湿度:58%RH)にてポリシーラー(210E:富士インパルス社製)で密封した。密封後の包装体内部の容積は3.4×10−4であり、密封直後の包装体内部の水分量は計算上3.2×10−3gであった。得られた包装体15を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。300時間後、包装体15を開封し、磁石の外観を観察したところ、表1に示す包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個〜数100個の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに1500時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。包装材No.2について300時間+1500時間の恒温恒湿試験を行ったあとの磁石の外観写真を図2に、包装材No.7について300時間の恒温恒湿試験を行ったあとの磁石の外観写真を図3に示す。
包装材の構成は袋状の外側から順に記載
それぞれ材質および膜厚(例:PET12=ポリエチレンテレフタレート12μm)
材質の略称はそれぞれ以下の通り
PET:ポリエチレンテレフタレート
PE:ポリエチレン
AL:アルミニウム箔
LLDPE:直鎖低密度ポリエチレン
VM−PET:アルミニウム蒸着PET(蒸着厚み40〜50nm)
OP:2軸延伸ポリプロピレン
CP:無延伸ポリプロピレン
アルミナVM−PET:アルミナ蒸着PET(蒸着厚み10〜20nm)
TAF502C:東セロ社製共押出多層フィルム
シリカVM−PET:シリカ蒸着PET(蒸着厚み10〜20nm)
NY:ナイロン
DL:ウレタン系接着剤
[実験例2](包装体外部環境の影響を示す実施例および比較例、シリカゲル無)
シリカゲルを同封しない以外は実験例1と同様に表1に示す積層構成の包装材で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。150時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個〜無数の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに500時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
[実験例3](包装体外部環境の影響を示す実施例および比較例、減圧包装+シリカゲル有)
チャンバー式の真空包装機(FCB−270:富士インパルス社製)を使用し減圧密封(真空度はおよそ1300Pa(0.013atm))する以外は実験例1と同様に表1に示す積層構成の包装材で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。300時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個〜無数の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに1500時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
[実験例4](包装体外部環境の影響を示す実施例および比較例、減圧包装+シリカゲル無)
シリカゲルを同封しない以外は実験例3と同様に表1に示す積層構成の包装材で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。300時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個〜無数の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに1500時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
[実験例5](包装体外部環境の影響を示す実施例および比較例、シリカゲル有:ボンド磁粉)
磁石体試験片とポリプロピレン製のトレーの代わりにMagnequench International社から市販されているR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末MQP−B20gを汎用ポリ袋に入れたものを使用すること以外は実験例1と同じ方法で、表1に示す積層構成の包装材に密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。300時間後、包装体を開封し、磁石粉末の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では発錆が多数認められた。包装材No.1〜5についてはさらに1500時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
[実験例6](包装体外部環境の影響を示す実施例および比較例、シリカゲル無:ボンド磁粉)
磁石体試験片とポリプロピレン製のトレーの代わりにMagnequench International社から市販されているR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末MQP−B20gを汎用ポリ袋に入れたものを使用すること以外は実験例2と同じ方法で、表1に示す積層構成の包装材に密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。150時間後、包装体を開封し、磁石粉末の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では発錆が多数認められた。包装材No.1〜5についてはさらに500時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
[実験例7](包装体外部環境の影響を示す実施例および比較例、減圧包装:ボンド磁粉)
チャンバー式の真空包装機を使用し、減圧密封(真空度はおよそ1300Pa(0.013atm))する以外は実験例6と同様に表1に示す積層構成の包装材で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。300時間後、包装体を開封し、磁石粉末の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では発錆が多数認められた。包装材No.1〜5についてはさらに1500時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
実験例1〜7より、アルミニウム箔ラミネートフィルム(包装材No.1〜5)を用いて磁石体試験片、およびR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末を密封した場合には、磁石体試験片、およびR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末は、包装体を恒温恒湿試験に供した後も発錆することがなく、アルミニウム箔ラミネートフィルムによる密封は、高温高湿の保管・輸送環境に耐え、耐食性が確保できる、R−Fe−B系永久磁石の防錆方法となりえることがわかった。
[実験例8](包装体内部水分の影響を示す実施例および比較例)
実験例1と同様に表1に示す積層構成の包装材で密封した包装体を、−20℃64%RHで60分間その後60℃90%RHで300分間保持するサイクルを30回繰り返すサイクル試験を行なった。試験後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個〜無数の発錆が認められた。
[実験例9](包装体内部水分の影響を示す実施例および比較例、シリカゲル無)
露点:−27℃(絶対湿度0.5g/m)の空気を10L/分で流気しているチャンバー内で密封(包装体内部の水分量は1.7×10−4g)し、シリカゲルを同封しない以外は実験例1と同様に表1に示す積層構成の包装材で密封した包装体を実験例8と同様のサイクル試験に供した。試験後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個〜無数の発錆が認められた。
[実験例10](包装体内部水分の影響を示す実施例および比較例、ボンド磁粉)
磁石体試験片とポリプロピレン製のトレーの代わりにMagnequench International社から市販されているR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末MQP−B20gを汎用ポリ袋に入れたものを使用すること以外は実験例1と同じ方法で表1に示す積層構成の包装材に密封した包装体を、実験例8と同様のサイクル試験に供した。試験後、包装体を開封し、磁石粉末の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では発錆が多数認められた。
実験例8〜10より、アルミニウム箔ラミネートフィルム(包装材No.1〜5)を用いて磁石体試験片、およびR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末を密封した場合には、磁石体試験片、およびR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末は、包装体を低温−高温のサイクル試験に供した後も発錆することがなく、アルミニウム箔ラミネートフィルムによる密封は、寒冷地での保管・輸送に耐え、耐食性が確保できる、R−Fe−B系永久磁石の防錆方法となりえることがわかった。
[実験例11](実施例および比較例:塩水噴霧試験、シリカゲル有)
実験例1と同じ方法で表1に示す積層構成の包装材に密封した包装体に対し、塩水噴霧試験を行った。塩水噴霧試験はJIS Z 2371に準拠して行ったが、試験時間短縮のため温度だけを変更し、60℃−5%NaCl−pH7.0の条件で行った(JISでは35℃)。300時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では数個〜数100個の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに1000時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
[実験例12](実施例および比較例:塩水噴霧試験、減圧包装)
実験例3と同じ方法で表1に示す積層構成の包装材に密封した包装体に対し、塩水噴霧試験を行った。塩水噴霧試験はJIS Z 2371に準拠して行ったが、試験時間短縮のため温度だけを変更し、60℃−5%NaCl−pH7.0の条件で行った(JISでは35℃)。300時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では数個〜数100個の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに1000時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
[実験例13](実施例および比較例:塩水噴霧試験、ボンド磁粉)
実験例5と同じ方法で表1に示す積層構成の包装材に密封した包装体に対し、塩水噴霧試験を行った。塩水噴霧試験はJIS Z 2371に準拠して行ったが、試験時間短縮のため温度だけを変更し、60℃−5%NaCl−pH7.0の条件で行った(JISでは35℃)。300時間後、包装体を開封し、磁石粉末の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では発錆が多数認められた。包装材No.1〜5についてはさらに1000時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
実験例11〜13より、アルミニウム箔ラミネートフィルム(包装材No.1〜5)を用いて磁石体試験片、およびR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末を密封した場合には、磁石体試験片、およびR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末は、包装体を塩水噴霧試験に供した後も発錆することがなく、アルミニウム箔ラミネートフィルムによる密封は、海上など塩素イオンに晒されやすい環境での保管・輸送に耐え、耐食性が確保できる、R−Fe−B系永久磁石の防錆方法となりえることがわかった。
[実験例14](雰囲気熱処理による簡易防錆磁石の実施例および比較例)
磁石体試験片に対し、露点0℃の大気雰囲気下、400℃で30分間の熱処理を行うことで表面改質された磁石体試験片を得た。なお、磁石体試験片の室温から熱処理温度までの昇温は、露点―40℃の大気雰囲気下、約900℃/時間の昇温速度で行った。また、熱処理後の降温も、同様の雰囲気下で行った。こうして得られた磁石体試験片を使用する以外は実験例1と同じ方法で表1に示す積層構成の包装材に密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。450時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに2000時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。上記と同じ条件で別途作製した、表面改質された磁石体試験片の断面を電界放出型走査電子顕微鏡(S−800:日立ハイテクノロジー社製)およびエネルギー分散型X線分析装置(Genesis2000:EDAX社製)を用いて観察した結果、2.1μmの厚みの改質層が生成されていることを確認した。また、改質層の最表面部には少なくともFeおよび酸素を含む組成の75nmの最表層が生成されていることを確認した。
[実験例15](雰囲気熱処理による簡易防錆磁石の実施例および比較例:減圧包装)
チャンバー式の真空包装機を使用し、減圧密封する以外は実験例14と同様に表1に示す積層構成の包装材で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。450時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに2000時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
[実験例16](アルカリケイ酸塩処理による簡易防錆磁石の実施例および比較例)
アルカリ珪酸塩として珪酸リチウムと珪酸ナトリウムを合計10質量%含むアルカリ珪酸塩水溶液に熱硬化性樹脂としてアクリル変性エポキシ樹脂とメラミン樹脂とからなるソープフリー水溶性エマルジョン樹脂を添加し、スターラーで混合攪拌することで得られた処理液に磁石体試験片を浸漬し、その後、磁石体試験片を処理液中から引き上げて200℃で20分間加熱乾燥して表面にアルカリ珪酸塩被膜を有する磁石体試験片を得た。こうして得られた磁石体試験片を使用する以外は実験例1と同じ方法で表1に示す積層構成の包装材に密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。450時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに2000時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。上記と同じ条件で別途作製した、表面にアルカリ珪酸塩被膜を有する磁石体試験片の断面を電界放出型走査電子顕微鏡で観察した結果、0.9μmの被膜が形成されていることを確認した。
[実験例17](アルカリケイ酸塩処理による簡易防錆磁石の実施例および比較例、減圧包装)
チャンバー式の真空包装機を使用し、減圧密封する以外は実験例16と同様に表1に示す積層構成の包装材で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。450時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに2000時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
[実験例18](化成処理による簡易防錆磁石の実施例および比較例)
50gのパルシード1000MAと17.5gのAD4990をイオン交換水1リットルに溶解し、アンモニア塩でpHを3.6に調整した処理液(日本パーカライジング社の商品名:パルシード1000)に浴温55℃で5分間浸漬して化成処理を行い、磁石を処理液から引き上げた後、水洗し、160℃で35分間乾燥処理を行うことで化成処理被膜を有する磁石体試験片を得た。こうして得られた磁石体試験片を使用する以外は実験例1と同じ方法で表1に示す積層構成の包装材に密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。450時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに2000時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
[実験例19](化成処理による簡易防錆磁石の実施例および比較例:減圧包装)
チャンバー式の真空包装機を使用し、減圧密封する以外は実験例18と同様に表1に示す積層構成の包装材で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。450時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.1〜5では発錆は認められず、包装材No.6〜11では磁石表面に数個の発錆が認められた。包装材No.1〜5についてはさらに2000時間の追試を行ったが発錆は認められなかった。
実験例14〜19より、簡易防錆処理を施した磁石体試験片に対しても、アルミニウム箔ラミネートフィルムによる密封はR−Fe−B系永久磁石の防錆方法となりえることがわかった。
[実験例20](比較例:シリカゲル増量)
包装体内の吸着水分や残存大気に含まれる水分のさらなる低減を目的とし、同封するシリカゲルを3個にする以外は実験例1と同様に表1に示す積層構成の包装材No.6〜11で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。450時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.6〜11の全てで磁石表面に数個〜数100個の発錆が認められた。
[実験例21](比較例:シリカゲル増量+減圧)
チャンバー式の真空包装機を使用し、減圧密封する以外は実験例20と同様に表1に示す積層構成の包装材No.6〜11で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。450時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.6〜11の全てで磁石表面に数個〜数100個の発錆が認められた。
[実験例22](比較例:窒素ガス置換)
包装体内の吸着水分や残存大気に含まれる水分や酸素の低減を目的とし、露点―40℃(絶対湿度0.1g/m)の窒素ガスを10L/分で流気しているチャンバー内に磁石体試験片およびシリカゲル、包装材を24h保管し、そのチャンバー内で密封する以外は実験例1と同様に表1に示す積層構成の包装材No.6〜11で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。450時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.6〜11の全てで磁石表面に数個〜数100個の発錆が認められた。
[実験例23](比較例:窒素ガス置換+減圧)
チャンバー式の真空包装機を使用し、減圧密封する以外は実験例22と同様に表1に示す積層構成の包装材No.6〜11で密封した包装体を60℃90%RHの恒温恒湿試験に供した。450時間後、包装体を開封し、磁石の外観を観察したところ、包装材No.6〜11の全てで磁石表面に数個〜数100個の発錆が認められた。
以上の実施例および比較例からわかるように、アルミニウム箔ラミネートフィルム(包装材No.1〜5)を用いて磁石体試験片、およびR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末を密封した場合には、磁石体試験片、およびR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末は、包装体を恒温恒湿試験や低温−高温サイクル試験や塩水噴霧試験に供した後も発錆することがなく、アルミニウム箔ラミネートフィルムによる密封は、過酷な保管・輸送環境にも耐え、耐食性が確保できる、R−Fe−B系永久磁石の防錆方法となりえることがわかった。また、アルミニウム蒸着ラミネートフィルムなど、アルミニウム箔ラミネートフィルム以外のラミネートフィルムを用いて磁石体試験片、およびR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末を密封した場合には、磁石体試験片、およびR−Fe−B系ボンド磁石用磁石粉末は、包装体を恒温恒湿試験や低温−高温サイクル試験や塩水噴霧試験に供した後に発錆し、これらのラミネートフィルムによる密封は、R−Fe−B系永久磁石の防錆方法となりえないことがわかった。さらに、これらのラミネートフィルムを用いて、包装体内部のシリカゲルを増量したり包装体内部を窒素ガスで置換するなどの包装体内部の水分除去対策を行っても、その目的を達することはできなかった。
本発明は、温度や湿度が大きく変動したり、塩素イオンに晒され易い過酷な保管・輸送環境においてもR−Fe−B系永久磁石の十分な耐食性を確保できるR−Fe−B系永久磁石の防錆方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
11 磁石体試験片
12 トレー
13 シリカゲル
14 包装材

Claims (4)

  1. R−Fe−B系永久磁石をアルミニウム箔の表裏両面に樹脂フィルムを積層したラミネートフィルムを用いて密封することを特徴とする、R−Fe−B系永久磁石の防錆方法。
  2. 前記密封は包装体内部の絶対湿度が3g/m以下となるように行われることを特徴とする、請求項1記載のR−Fe−B系永久磁石の防錆方法。
  3. 前記R−Fe−B系永久磁石の表面に防錆処理が施されていないことを特徴とする、請求項1または2に記載のR−Fe−B系永久磁石の防錆方法。
  4. 前記R−Fe−B系永久磁石の表面に簡易防錆処理が施されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のR−Fe−B系永久磁石の防錆方法。
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