JPH1022154A - 希土類磁石の製造方法 - Google Patents

希土類磁石の製造方法

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JPH1022154A JP8169377A JP16937796A JPH1022154A JP H1022154 A JPH1022154 A JP H1022154A JP 8169377 A JP8169377 A JP 8169377A JP 16937796 A JP16937796 A JP 16937796A JP H1022154 A JPH1022154 A JP H1022154A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 低希土類量・高Fe量組成でも、微粉の酸化
を抑えて焼結体の低酸素量化を実現でき、良好な磁気特
性を得られる希土類磁石の製造方法を提供する。 【解決手段】 原子百分比でR(Yを含む希土類元素の
1種以上)12%〜14%、B 5%〜7%、Co 0.3 %
〜8%、残部M(Feを主体とする遷移金属の1種以上)
からなる焼結希土類磁石の製造方法において、粉砕から
焼結熱処理が完了するまでの間、希土類磁石の粉末を絶
対湿度が露点−5℃以下の雰囲気下で扱うことを特徴と
する希土類磁石の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンピューター周
辺機器のモーター、アクチュエーター等に用いて、小型
薄型化、高特性化に寄与する希土類磁石の製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】Nd−Fe−B系焼結希土類磁石は、高磁気
特性、原料の相対的豊富さ(原料不足問題が起きにくい
こと・原料費の相対的な低さ)の点から、生産される希
土類磁石の大半を占めるようになっているが、達成可能
な最大エネルギー積の理論値が64MGOeであるため、現
在の磁気特性は更に向上させる余地がある。しかし、19
83年にNd2 Fe14B化合物が発見されてから組成・製造方
法ともに種々の改良が行われた結果、実験室レベルで54
MGOeを超える磁気特性が得られている。このため、磁
気特性の向上は徐々に難しくなり、単なる組成の工夫程
度では磁気特性のあまり大きな改善は期待できない。
【0003】Nd−Fe−B系焼結希土類磁石の磁気特性向
上の要点は、組成を化学量論比に近づけ、低酸素量の焼
結体で、保磁力を保ちつつ粒子の配向度を向上させるこ
とである。これを実現するため、具体的には下記のよう
な点を改良しなければならない。 1) 高飽和磁化のための、高Fe量・低Nd量組成 2) 保磁力増大のための、添加物とその量・組み合わ
せ 3) 焼結体の低酸素含有量のための、添加物と量 4) 微粉粒度分布の制御 5) 焼結体の低酸素含有量のための、微粉取り扱い工
程 6) 磁場中成形での微粉配向度の向上 7) 焼結での微細焼結組織の実現 これらの各項目は互いに関連し合っているため、各項目
・工程を独立に実行すればよいというものではない。例
えば、高Fe量・低Nd量組成を実現するには、磁石微粉の
酸化を制御しなければならない。また微粉酸化の抑制に
はCoなどの元素が有効であることがわかっているが、Co
は保磁力を低下させる。このため、大量にCoを添加する
ことができない。このように、いくつかの要因を同時に
両立するように解決しなければならない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】NdFeB系焼結磁石の高
特性化のために、組成面で必須なものは、1)の高Fe量
組成であり、これを実現するために工程面では5)の焼
結体の低酸素含有量を実現しなければならない。例え
ば、Nd14Fe806 より更に高Fe量・低Nd量組成を磁石化
しようとすると、焼結体酸素量は 0.4wt%以下、好まし
くは 0.3wt%以下にしなければ、安定した特性は得られ
ない。従来、これを実現するために試行されていたの
は、不活性ガス雰囲気下で微粉を取り扱い、微粉を酸化
させないようにすることであった。合金の粉砕・微粉の
プレス成形の過程の粉末酸化により、焼結体の酸素量が
ほぼ決まるので、これらの工程の酸化抑制が必須であ
る。特にプレス成形時の酸化抑制が難しく、プレス機を
囲い、機内を不活性ガスで充填する必要があった。しか
し窒素ガス使用では空気より比重が軽いため、微粉の不
活性ガスシールが十分ではない。Arガスを使用すれば、
微粉のシール性能は向上するが、ガスが高価であるた
め、量産規模で使用するのは難しい。これらのことか
ら、微粉の酸化を効果的に抑制し、量産規模で焼結体の
低酸素量化を実現する手法が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記問題点
に鑑み、微粉の酸化メカニズムを鋭意研究し、本発明に
至った。すなわち本発明は、希土類磁石の製造方法にお
いて、原子百分比でR(Yを含む希土類元素の1種以
上)12%〜14%、B 5%〜7%、Co 0.3 %〜8%、
残部M(Feを主体とする遷移金属の1種以上)からなる
焼結希土類磁石の製造方法において、粉砕から焼結熱処
理が完了するまでの間、希土類磁石の粉末を絶対湿度が
露点−5℃以下の雰囲気下で扱うことを要旨とするもの
である。以下に、これをさらに詳述する。
【0006】
【発明の実施の形態】NdFeB系焼結磁石は焼結体のまま
では錆が発生し、放置しておけば錆が内部に進行してい
くことはよく知られている。特に焼結体組織の中でもNd
リッチ相と呼ばれる希土類含有量の多い相の耐食性が低
く、Nd2 Fe14B磁性相との間で局部電池を形成するので
はないかと考えられている。特に錆の発生・進行は高温
多湿環境で加速され、錆の進行は表面に止まらず、内部
に進行する。一方、高温下では、Nd系磁石のごく表面は
酸化されるが、錆はあまり内部には進行しない。このよ
うな高温加速条件では湿度が概ね低いためであり、これ
によっても、水分が錆の発生に本質的に重要であること
がわかった。
【0007】Nd系焼結体の酸化・錆の発生とNd系磁性微
粉の酸化は基本的に同一の現象であり、本発明者は、Nd
FeB系磁石微粉の酸化に及ぼす湿度の影響を更に詳細に
調べた。温度を室温(22±2℃)に固定し、磁石微粉を
空気中各湿度の環境に放置して、微粉の酸化の程度を調
べた。実験の結果、酸化の程度は焼結体とは異なるが、
微粉の酸化においても湿度(水分量)の影響が大きいこ
とが判明した。本発明者はこの原因を次のように考えて
いる。Nd系微粉の酸化の進んでいない新鮮な表面は非常
に活性であり、表面は急速に酸化されるが、必ずしも酸
化は内部に進行しない。しかし、水分の存在により表面
酸化膜は水酸化物などの形態に変化し、表面被覆性が崩
れて、内部が酸化される。このような繰り返しにより、
存在する水分が微粉の酸化を促進するものと考えられ
る。したがって、雰囲気中の水分量を抑制できれば、微
粉は、たとえ表面が酸化したとしても、その量は僅かに
止まるはずである。逆に、不活性ガス中といえども湿度
に配慮せずに微粉を取り扱うと、Nd系の酸化の進んでい
ない活性な微粉が、水分を分解して酸化するおそれがあ
ることがわかる。
【0008】微粉の酸化を抑制するために、低湿度のAr
のような不活性ガス中で微粉を取り扱うことが最善では
ある。しかし工程コストの問題から、不活性ガスを大量
に使用することが困難なことは既に述べた通りである。
本発明者は前記実験の結果を踏まえて、Nd系微粉の取り
扱いにおいて、湿度・水分の制御を厳密に行うならば、
必ずしも不活性ガス中で微粉を取り扱う必要のないこと
を見出した。
【0009】本発明の実施の形態について、以下に説明
する。本発明における磁石組成は、原子百分比でR(Y
を含む希土類元素の1種以上)12%〜14%、B 5%〜
7%、Co 0.3 %〜8%、残部M(Feを主体とする遷移
金属の1種以上)である。Rは、Yを含むLa、Ce、Pr、
Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから
選択される希土類元素である。Rが14%を超える組成で
は、微粉取り扱い雰囲気に通常大気程度の水分量が含ま
れていても、普通の磁気特性は得られる。したがって、
酸化の影響が顕著となるR量14%以下、かつ化学量論比
組成より上の12%以上を範囲とする必要がある。またB
量は7%を超えると通常工程でも磁気特性を得られやす
く、また5%未満では保磁力を低下させるため、5%〜
7%の範囲とすることが必要である。Coは微粉や焼結体
の酸化を抑制する働きがあるため、添加する必要があ
る。しかし0.3 %未満では酸化抑制効果が低く、8%を
超えると保磁力を低下させる度合いが大きいので、0.3
%〜8%の範囲とすることが必要で、好ましくは0.5 %
〜5%の範囲がよい。残部Mは、Feを主体とするAl、S
i、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、S
n、Hf、Ta、Wから選択される遷移金属である。残部M
中のFeをこれらの遷移金属で一部置換することにより、
保磁力を増大させることができる。
【0010】本発明における磁石粗粉砕から焼結熱処理
完了までの間の雰囲気の絶対湿度は、露点−5℃を超え
ると微粉の酸化が増加するため、露点−5℃以下に保つ
必要がある。また、下限は実用的に達成可能な露点でよ
い。雰囲気は、大気または不活性ガス(希ガス、窒素ガ
ス)のいずれでもよい。また、焼結炉等の装置において
は希ガス減圧、真空化してもよい。
【0011】粉末冶金法の工程では、粉末または成形体
を扱う、粉砕から、プレス成形、焼結・熱処理が完了す
るまでの間で、希土類磁石の粉末または成形体を絶対湿
度が露点−5℃以下の雰囲気下で扱うことが、本発明の
主眼である。RFeB系インゴットを粗粉砕・微粉砕する
各々の装置内(ブラウンミルやジェットミル)はもとも
と窒素ガス等の不活性ガスで満たされているので、イン
ゴットや粉末を酸化する恐れはあまりないが、装置内の
水分量は露点−5℃以下に保つ必要がある。既に述べた
ように使用するガス中の水分量には留意する必要がある
が、液体窒素などからの蒸発により不活性ガスを得てい
る場合には、ガス中の水分量はほとんど0に近いので問
題はない。しかし、ジェットミルなどで、系内に酸素を
少し導入して、ジェットミル中で得られる微粉をある程
度まで強制的に酸化させるようなことは避けるべきであ
る。
【0012】有機溶媒等で湿式粉砕を行う場合は溶媒中
の水分量を削減することが必要である。水分量は500
ppmを超えると酸化抑制効果が減少し、10ppm未
満は乾燥剤などで実現しにくいので、10ppm〜50
0ppmが好ましい。有機溶媒としてはトルエン、n−
ヘキサン、エタノール等が例示される。
【0013】粉末冶金法の工程で最も酸化が問題となる
のは、プレス成形である。プレス成形工程では、粉末の
取り扱いや金型交換・機械の保全等の問題から、完全無
人化は難しい。したがって、部屋全体を不活性ガスで充
填するようなことは困難である。従来はプレス成形機の
成形金型回りを密封し、不活性ガスを注入することによ
り微粉酸化を防いでいたが、完全に密閉シールすること
は容易ではない。本発明では、除湿器等によりプレス成
形機の置かれた部屋全体の大気中の水分除去を行い、好
ましくは、プレス成形機の金型回りを密封して、プレス
成形機の微粉の存在する場所を含有水分量の非常に少な
い雰囲気(好ましくは不活性ガス充填)として、絶対湿
度を露点−5℃以下に保てばよい。もちろん建家内全体
の水分量を露点−5℃以下にできるのであれば、プレス
成形機への対策はしなくてもよい。
【0014】プレスの終了した成形体は、焼結炉に挿入
されるまで露点−5℃以下の水分量雰囲気中で保存され
る必要がある。焼結炉内は一般的にArなどの不活性ガス
で満たされており、かつ水分量はほとんどないと考えら
れる。焼結して高密度化してしまえば、空孔はあっても
孤立化して大気と接する恐れはないので、表面以外の酸
化は問題にならない。
【0015】以上のように、粉砕、成形、焼結の各工程
において、水分量低減制御を行い、場合によっては不活
性ガスシールと併用することにより、高Fe量・低R量組
成でも、微粉の酸化を抑えて焼結体の低酸素量化を実現
でき、良好な磁気特性を得ることができる。本発明は、
微粉の完全密閉化による酸化抑制法と比較して、格段に
簡単でかつ費用のかからない方法である。
【0016】
【実施例】次に、本発明を実施例、比較例を挙げて説明
する。 実施例1 原子百分比で12%のNd、15%のDy、4%のCo、6%の
B、残部Feからなるメタルを秤量し、高周波真空溶解炉
にてArガス減圧雰囲気下で溶解し、インゴットを作製し
た。該インゴットを大気中で、ブラウンミルを使用して
20メッシュ以下に粗粉砕した。その後、窒素ガスを使用
したジェットミルで、平均粒径3μmに微粉砕した。該
微粉を大気中で、磁場配向プレス装置の金型に充填し、
12kOeの水平磁場中で配向させ、磁場をかけたまま磁場
と直角方向のプレス圧1t/cm2 にてプレス成形を行っ
た。この間、該微粉は空気中に曝されていた。該成形体
を成形後直ちに、焼結炉で真空中1120℃の温度で1時間
30分焼結した後、引き続き550 ℃の温度で1時間熱処理
を行い、焼結体磁石を製造した。ただし、インゴットの
粗粉砕から熱処理の終了まで、露点温度は除湿器により
−10℃に保った。この焼結体磁石の特性をBHトレーサー
で測定し、酸素含有量を湿式分析で測定した結果を表1
に示す。
【0017】
【表1】
【0018】比較例1 インゴットの粗粉砕から熱処理終了までの工程において
湿度を制御しなかった以外は実施例1と同様の組成と工
程で、焼結体磁石を製造した。このとき平均露点は5℃
であった。特性の測定結果を表1に併記する。
【0019】実施例2 インゴットの粉砕工程において、実施例1に用いた粗粉
を、水分量50ppmのn−ヘキサン中でボールミルで
平均粒径4μmに微粉砕した以外は、実施例1と同様の
組成と工程で焼結体磁石を製造した。特性の測定結果を
表1に併記する。
【0020】比較例2 インゴットの粉砕工程において、n−ヘキサンの水分量
を1000ppmとした以外は実施例2と同様の組成と工程
で、焼結体磁石を製造した。特性の測定結果を表1に併
記する。表1から、大気中または溶媒中水分量の多い比
較例では、本組成のような低R量組成は高密度化でき
ず、十分な保磁力や角形比も得られないことがわかる。
【0021】
【発明の効果】本発明によれば、微粉の酸化を抑えるこ
とができるので、高Fe量・低R量のRFeB系焼結磁石で
良好な磁気特性を得ることが可能となった。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原子百分比でR(Yを含む希土類元素の
    1種以上)12%〜14%、B 5%〜7%、Co 0.3 %
    〜8%、残部M(Feを主体とする遷移金属の1種以上)
    からなる焼結希土類磁石の製造方法において、粉砕から
    焼結熱処理が完了するまでの間、希土類磁石の粉末を絶
    対湿度が露点−5℃以下の雰囲気下で扱うことを特徴と
    する希土類磁石の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記粉砕が、有機溶媒中の湿式粉砕であ
    る場合、有機溶媒中の水分を500ppm以下とする請
    求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
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