JP5501828B2 - R−t−b系希土類永久磁石 - Google Patents

R−t−b系希土類永久磁石 Download PDF

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本発明は、本発明は、R−T−B(ただし、Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを必須とする1種又は2種以上の遷移金属元素)系希土類永久磁石に関し、特に着磁特性の高いR−T−B系希土類永久磁石に関する。
希土類磁石の中でもR−T−B系希土類永久磁石は、磁気特性に優れていること、主成分であるNdが資源的に豊富で比較的安価であることから、各種電気機器に採用されている。
これまで、R−T−B系希土類永久磁石の磁気特性、具体的には残留磁束密度、保磁力あるいは最大エネルギー積の向上のための研究、開発が主になされてきた。しかし、近時、着磁特性に着目した研究、開発が行なわれている。R−T−B系希土類永久磁石は、フェライト磁石に比べて高い着磁磁界を必要とする。例えば、リング状のR−T−B系希土類永久磁石をモータの回転子として用いる場合に、モータにR−T−B系希土類永久磁石を組み込んだ後にリング状のR−T−B系希土類永久磁石に捲き回したモータ用コイルを用いて着磁させることがある。モータが小型の場合には所定の捲き回し数を得るためにコイルの線径が細くなり、大電流を流すことができず、そのためにR−T−B系希土類永久磁石に対して十分な着磁磁界を印加することができない。したがって、以上のような用途に用いられるR−T−B系希土類永久磁石としては、低い着磁磁界で可能な限り高い着磁特性を有することが要求される。
例えば、特開2002−356701号公報(特許文献1)には、着磁特性の優れるR−T−B系希土類永久磁石として、主相の平均組成が、(LR1−xHR14A(Tは、Fe、又はFeとFe以外の遷移金属元素の少なくとも1種との混合物、Aはボロン又はボロンと炭素との混合物、LRは軽希土類元素の少なくとも1種、HRは重希土類元素の少なくとも1種、0<x<1)で表される希土類合金焼結体であって、(LR1−pHR14A(0≦p<x)で表される組成の第1の主相と、(LR1−qHR14A(x<q≦1)で表される組成の第2の主相との少なくとも一方を複数有する結晶粒を含んでいる希土類合金焼結体が開示されている。
また、特開2003−217918号公報(特許文献2)には、着磁特性の向上を目的として、重量%で、R(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種であり、Rに占めるNdが50原子%以上である):25〜35%、B:0.8〜1.5%、必要によりM(Ti、Cr、Ga、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Alから選ばれる少なくとも1種):8%以下、及び残部T(Fe又はFe及びCo)、ならびに不可避的不純物を含有し、80at%以上をFeCo1−AとするFe相が0.01〜300μmの大きさで焼結体中に残存している結晶組織を有する希土類焼結磁石において、残留磁束密度で評価される着磁率Br(0.2MA/m)/Br(2.0MA/m)が59%以上、フラックスで評価される着磁率Φ(0.3MA/m)/Φ(4.0MA/m)が4%以上であることが開示されている。
特開2002−356701号公報 特開2003−217918号公報
特許文献1に開示された技術によれば、磁気特性を低下させることなく着磁特性を改善することができる。しかし、50%程度の着磁率を得るために0.8MA/m(10kOe)程度の着磁磁界が必要であり、さらに低い着磁磁界で50%程度の着磁率を得ることが望まれる。また、特許文献2における残留磁束密度で評価される着磁率Br(0.2MA/m)/Br(2.0MA/m)が59%以上、フラックスで評価される着磁率Φ(0.3MA/m)/Φ(4.0MA/m)が4%以上という値は、着磁特性が良いとはいえない。
一方で、低い磁界でより高い着磁率が得られるR−T−B系希土類永久磁石は、着磁率の着磁磁界による変動を表す着磁特性曲線がなだらかな傾斜を示す傾向にある。つまり、着磁率特性曲線が緩やかなため100%近傍の着磁率に到達するまでに、より大きな着磁磁界が必要であった。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、低い着磁磁界でより高い着磁率を得るとともに、100%近傍、例えば90%程度の着磁率に到達するまで、より着磁率の立ち上がりが早いR−T−B系希土類永久磁石を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため本願の請求項1に係るR−T−B系希土類永久磁石は、R:25〜35wt%(ただし、Rは希土類元素の1種又は2種以上であり、1.0wt%〜6.0wt%のTbを必須とする)、B:0.5wt%〜4.5wt%、Al及びCuの1種又は2種:0.02wt%〜0.5wt%、Nb:0.2wt%〜1.5wt%及びZr:0.03wt%〜0.25wt%の1種又は2種、Co:2wt%以下(0を含まず)、残部実質的にFeからなる組成を有する焼結体からなり、前記焼結体中の酸素量が2000ppm以下、前記焼結体の平均結晶粒径が3.5μm〜5.0μmであって、磁石原料を磁石粉末に粉砕する工程と、前記粉砕された磁石粉末に以下の構造式M−(OR)(式中、MはTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)で表わされる有機金属化合物を添加することにより、前記磁石粉末の粒子表面に前記有機金属化合物を付着させる工程と、前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記磁石粉末を成形することにより成形体を形成する工程と、前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記磁石粉末を成形前又は成形後であって焼結前に水素雰囲気で仮焼する工程と、前記成形体を焼結する工程と、により製造されることを特徴とする。
また、請求項2に係るR−T−B系希土類永久磁石は、請求項1に記載のR−T−B系希土類永久磁石において、Rとして1.0wt%〜12.0wt%のDyを含むことを特徴とする。
また、請求項3に係るR−T−B系希土類永久磁石は、請求項1又は請求項2に記載のR−T−B系希土類永久磁石において、多極着磁される磁石であることを特徴とする。
また、請求項4に係るR−T−B系希土類永久磁石は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のR−T−B系希土類永久磁石において、前記焼結体中の窒素量が20ppm〜600ppm、炭素量が1500ppm以下であることを特徴とする。
更に、請求項5に係るR−T−B系希土類永久磁石は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のR−T−B系希土類永久磁石において、Ga:0.02〜1.5wt%を含有することを特徴とする。
前記構成を有する請求項1に記載のR−T−B系希土類永久磁石によれば、400kA/m(5kOe)程度の低い着磁磁界での着磁率が向上されるとともに、800kA/m(10kOe)以上の着磁磁界における着磁率も向上されたR−T−B系希土類永久磁石を提供することができる。このような着磁特性に優れたR−T−B系希土類永久磁石は、多極着磁磁石に用いた場合には、ニュートラルゾーンの幅を狭くすることができる。このようなリング磁石を用いたモータは、高い回転性能を保持することができる。また、着磁率の高い磁石は、材質的に高コストで高磁気特性であるが着磁率の低い磁石に比べて、実際に発生するトータルフラックスが多い場合がある。したがって、本発明は、所定のトータルフラックスを低コストの磁石で実現することができる。または磁石のサイズを小型化することができる。
また、添加されたTb、Nb、Co、Zr,Cu又はAlを磁石の粒界に効率よく偏在させることができる。その結果、Tb、Nb、Co、Zr,Cu又はAlの使用量を減少させ、残留磁束密度の低下を抑制できるとともに、各元素による効果(例えばTbでは保磁力の向上、NbやZrでは着磁特性向上及び粒成長抑制、Coではキュリー温度の向上及び粒界相の耐食性向上、AlやCuでは高保磁力化及び温度特性の改善)を十分に図ることが可能となる。また、他の有機金属化合物を添加する場合と比較して脱カーボンを容易に行うことが可能であり、焼結後の磁石内に含まれる炭素によって磁石特性が低下する虞が無く、また、磁石全体を緻密に焼結することが可能となる。
また、請求項2に記載のR−T−B系希土類永久磁石によれば、Rとして1.0wt%〜12.0wt%のDyを含むので、Dyによる保磁力の向上を図ることが可能となる。
また、請求項3に記載のR−T−B系希土類永久磁石によれば、多極着磁される磁石であることを特徴とするので、ニュートラルゾーンの幅を狭くすることができる。そのために、トータルフラックス量が増加し、例えばモータに用いるものであればモータの特性を向上させることができる。
また、請求項4に記載のR−T−B系希土類永久磁石によれば、焼結体中の窒素量が20ppm〜600ppm、炭素量が1500ppm以下であるので、磁気特性を向上させることが可能となる。
更に、請求項5に記載のR−T−B系希土類永久磁石によれば、Ga:0.02〜1.5wt%を含有するので、着磁特性を向上させることが可能となる。
本発明に係る永久磁石を示した全体図である。 本発明に係る永久磁石の粒界付近を拡大して示した模式図である。 本発明に係る永久磁石の第1の製造方法における製造工程を示した説明図である。 本発明に係る永久磁石の第2の製造方法における製造工程を示した説明図である。
以下、本発明に係る永久磁石及び永久磁石の製造方法について具体化した実施形態について以下に図面を参照しつつ詳細に説明する。
[永久磁石の構成]
先ず、本発明に係る永久磁石1の構成について説明する。図1は本発明に係る永久磁石1を示した全体図である。尚、図1に示す永久磁石1は円柱形状を備えるが、永久磁石1の形状は成形に用いるキャビティの形状によって変化する。
本発明に係る永久磁石1としてはR−T−B系磁石を用いる。尚、永久磁石1の組成はR:25〜35wt%(ただし、Rは希土類元素の1種又は2種以上であり、1.0wt%〜6.0wt%のTbを必須とする)、B:0.5wt%〜4.5wt%、Al及びCuの1種又は2種:0.02wt%〜0.5wt%、Nb:0.2wt%〜1.5wt%及びZr:0.03wt%〜0.25wt%の1種又は2種、Co:2wt%以下(0を含まず)、残部実質的がFeからなる。
次に、本発明によるR−T−B系希土類永久磁石の望ましい化学組成について説明する。ここでいう化学組成は焼結後における最終組成をいう。
本発明のR−T−B系希土類永久磁石は、上記したように希土類元素(R)を25〜35wt%含有する。
ここで、本発明におけるRはYを含む概念を有しており、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu及びYの1種又は2種以上である。Rの量が25wt%未満であると、R−T−B系希土類永久磁石の主相となるR14B結晶粒の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rの量が35wt%を超えると主相であるR14B結晶粒の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なR−リッチ相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜35wt%とする。望ましいRの量は28〜33wt%、さらに望ましいRの量は29〜32wt%である。
Ndは資源的に豊富で比較的安価であることから、希土類元素としての主成分をNdとすることが好ましい。また、Tbは保磁力を向上させる上で有効である。よって、希土類元素としてNd及びTbを選択し、NdとTbの合計を25wt%〜35wt%とすることが望ましい。Tbは、残留磁束密度及び保磁力のいずれを重視するかによって上記範囲内においてその量を定めることが望ましい。つまり、高い保磁力を得たい場合にTb量を1.0〜6.0wt%とすることが望ましい。
また本発明は、Tbに加えてDyを1.0〜12.0wt%含有することができる。なお、保磁力向上の効果はTbがDyよりも高く、Tbは同じ量を含む場合にDyの2倍程度の保磁力向上効果を発揮する。
本発明は、前述したように、保磁力が比較的高いタイプのR−T−B系希土類永久磁石においても優れた着磁特性を有している点に特徴がある。したがって、Tb、さらにはDyが上述した範囲にある場合に本発明の効果が十分発揮することができる。その場合の保磁力(HcJ)は1680kA/mを超え、また1750kA/m以上、さらには2000kA/m以上となる。
また、本発明のR−T−B系希土類永久磁石は、ホウ素(B)を0.5〜4.5wt%含有する。Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。ただし、Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、上限を4.5wt%とする。望ましいBの量は0.5〜1.5wt%、さらに望ましいBの量は0.8〜1.2wt%である。
本発明のR−T−B系希土類永久磁石は、Al及びCuの1種又は2種を0.02〜0.5wt%の範囲で含有することができる。この範囲でAl及びCuの1種又は2種を含有させることにより、得られるR−T−B系希土類永久磁石の高保磁力化、温度特性の改善が可能となる。Alを添加する場合において、望ましいAlの量は0.03〜0.3wt%、さらに望ましいAlの量は0.05〜0.25wt%である。また、Cuを添加する場合において、望ましいCuの量は0.15wt%以下(0を含まず)、さらに望ましいCuの量は0.03〜0.08wt%である。
本発明のR−T−B系希土類永久磁石は、0.2〜1.5wt%のNb及び0.03〜0.25wt%のZrの1種又は2種を含有することが望ましい。
Nb及びZrはR−T−B系希土類永久磁石の着磁特性向上を図るために有効である。また、R−T−B系希土類永久磁石の磁気特性を向上するために酸素含有量を低減する際に、焼結過程での結晶粒の異常成長を抑制する効果を発揮し、焼結体の組織を均一かつ微細にする。したがって、Nb及びZrは酸素量が低い場合にその効果が顕著になる。Nbの望ましい量は0.5〜1.3wt%、さらに望ましい量は0.5〜1.2wt%である。また、Zrの望ましい量は0.05〜0.25wt%、さらに望ましい量は0.1〜0.2wt%である。
また、本発明のR−T−B系希土類永久磁石は、その酸素量を2000ppm以下とする。酸素量が多いと非磁性成分である酸化物相が増大して、磁気特性を低下させる。そこで本発明では、焼結体中に含まれる酸素量を、2000ppm以下、望ましくは1500ppm以下、さらに望ましくは1000ppm以下とする。ただし、単純に酸素量を低下させたのでは、粒成長抑制効果を有していた酸化物相の量が不足し、焼結時に十分な密度上昇を得る過程で異常粒成長が容易に起こる。そこで、本発明では、着磁特性向上効果とともに異常粒成長抑制効果を有するNb及びZrの1種又は2種を所定量添加する。
また、高い磁気特性を有するためには、焼結体中の窒素量を20〜600ppm、炭素量を1500ppm以下に規制することが望ましい。
本発明のR−T−B系希土類永久磁石は、Coを2wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜1wt%、さらに望ましくは0.3〜0.7wt%含有する。Coはキュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上に効果がある。
また、本発明において、保磁力や温度特性の向上、生産性の向上、低コスト化などのためにTi、V、Cr、Mn、Bi、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Ni、Si、Hf、Ga等を1種以上添加してもよい。この中でGaは着磁特性向上にとって有効であり、0.02〜1.5wt%、さらには0.1〜1.0wt%の範囲で添加することが望ましい。
更に、本発明では、後述のように上記Tb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種については、粉砕対象とする磁石原料に予め含めるのではなく、M−(OR)(式中、MはTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)で表わされるTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む有機金属化合物(例えば、テルビウムエトキシド、ニオブイソポロポキシド、銅イソプロポキシド等)を有機溶媒に添加し、湿式状態で磁石粉末に混合することにより、磁石粉末に対して添加する。
また、本発明は、前述したように、多極着磁が施される磁石に適用することが望ましい。多極着磁される磁石としては、モータ用に用いられるラジアル異方性又は極異方性リング状磁石、CD、DVD等の機器のピックアップ駆動用に用いられる直方体状磁石、VCM(Voice Coil Motor)用の扇状磁石がある。これらの多極着磁磁石は、N・Sの極性を複数有している。
以上の多極着磁磁石に本発明のR−T−B系希土類永久磁石を適用すると、ニュートラルゾーンの幅を狭くすることができる。そのために、トータルフラックス量が増加し、例えばモータに用いるものであればモータの特性を向上させることができる。ここで、ニュートラルゾーンとは、磁石を着磁した際に、極性(N・S)が反転する境界においてN又はSのどちらにも着磁されない領域をいう。特に、サイズの小さな磁石や極数の多い磁石においては、ニュートラルゾーンの占める割合が増大する。したがって、本発明による着磁特性の優れるR−T−B系希土類永久磁石を多極着磁に供することにより、ニュートラルゾーンの幅を狭くすることができ、ひいては当該磁石が用いられるモータの特性を向上することができる。
また、本発明に係る永久磁石1は、図2に示すように、永久磁石1は磁化作用に寄与する磁性相である主相11と、粒界相12とが共存する合金である。図2は永久磁石1を構成する主相11及び粒界相12を拡大して示した図である。
ここで、主相11は化学量論組成であるRFe14B金属間化合物相(Feは部分的にCoで置換しても良い)が高い体積割合を占めた状態となる。一方、粒界相12には同じく化学量論組成であるRFe14B(Feは部分的にCoで置換しても良い)よりRの組成比率が多いRリッチ相(例えば、R2.0〜3.0Fe14B金属間化合物相)が形成されている。また、粒界相12にはTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む。
また、本発明ではTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種の添加は、後述のように粉砕された磁石粉末を成形する前にTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む有機金属化合物が添加されることにより行われる。具体的には、Tb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む有機金属化合物が添加されることによって、湿式分散により磁石粒子の粒子表面に該有機金属化合物中のTb、Nb、Co、Zr,Cu又はAlが均一付着される。その状態で磁石粉末を焼結することによって、磁石粒子の粒子表面に均一付着された該有機金属化合物中のTb、Nb、Co、Zr,Cu又はAlが、主相11の粒界、即ち粒界相12に偏在化される。
ここで、永久磁石の保磁力は、磁化された状態から逆方向への磁場を加えていった際に、磁気分極を0にする(即ち、磁化反転する)のに必要な磁場の強さである。従って、磁化反転を抑制することができれば、高い保磁力を得ることができる。尚、磁性体の磁化過程には、磁気モーメントの回転に基づく回転磁化と、磁区の境界である磁壁(90°磁壁と180°磁壁からなる)が移動する磁壁移動がある。また、本発明が対象とするR−T−B系のような焼結体磁石では、逆磁区は主相である結晶粒の表面近傍において最も発生しやすい。従って、本発明において粒界相12に特にTbを偏在させることとすれば、主相11の結晶粒の表面部分(外殻)において、Rの一部をTbで置換した相を生成し、逆磁区の生成を抑制する。尚、R14B金属間化合物の保磁力を高める(磁化反転を阻止する)という効果の点において、磁気異方性の高いTbは有効な元素である。
また、本発明では、特に後述のようにM−(OR)(式中、MはTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)で表わされるTbを含む有機金属化合物(例えば、テルビウムエトキシド、ニオブイソポロポキシド、銅イソプロポキシド等)を有機溶媒に添加し、湿式状態で磁石粉末に混合する。それにより、Tb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む有機金属化合物を有機溶媒中で分散させ、磁石粒子の粒子表面にTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む有機金属化合物を効率よく付着することが可能となる。
ここで、上記M−(OR)(式中、MはTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)の構造式を満たす有機金属化合物として金属アルコキシドがある。金属アルコキシドは、一般式M−(OR)(M:金属元素、R:有機基、n:金属又は半金属の価数)で表される。また、金属アルコキシドを形成する金属又は半金属としては、W、Mo、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、Ge、Sb、Y、lanthanideなどが挙げられる。但し、本発明では特に、Tb、Nb、Co、Zr,Cu又はAlを用いる。
また、アルコキシドの種類は特に限定されることなく、例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、炭素数4以上のアルコキシド等が挙げられる。但し、本発明では後述のように低温分解で残炭を抑制する目的から、低分子量のものを用いる。また、炭素数1のメトキシドについては分解し易く、取扱いが困難であるので、特に炭素数が2〜6のアルコキシドであるエトキシド、メトキシド、イソプロポキシド、プロポキシド、ブトキシドなどを用いることが好ましい。
また、圧粉成形により成形された成形体を適切な焼成条件で焼成すれば、Tb、Nb、Co、Zr,Cu又はAlが主相11内へと拡散浸透(固溶化)することを防止できる。それにより、結晶粒全体としては(すなわち、焼結磁石全体としては)、コアのR14B金属間化合物相が高い体積割合を占めた状態となる。それにより、その磁石の残留磁束密度(外部磁場の強さを0にしたときの磁束密度)の低下を抑制することができる。
また、本発明によって得られるR−T−B系希土類永久磁石は、Rを化学量論組成に基づく分率(26.7wt%)より多くした磁石原料を粉砕、焼結することによって、粒界相12にRを多く含むRリッチ相が形成される。
そして、Pc(パーミアンス係数)が2において、240kA/mの有効磁場(ただし、有効磁場=印加磁場−反磁場)を印加したときのトータルフラックスをf1、400kA/mの有効磁場を印加したときのトータルフラックスをf2、2000kA/mの有効磁場を印加したときのトータルフラックスをf3とすると、着磁率a(=f1/f3×100)が60%以上、かつ、着磁率b(=f2/f3×100)が85%以上である。さらに、本発明のR−T−B系希土類永久磁石は、800kA/mの有効磁場を印加したときのトータルフラックスをf4とすると、着磁率c(=f4/f3×100)が95%以上となり、極めて着磁率が高い。なお、本発明におけるPcは、「希土類永久磁石」俵好夫、大橋健共著(森北出版)第146頁の図5−4に基づいて定めている。また、着磁率は以下によって測定した。評価する磁石をポールピースに挟み込んで閉磁路を形成した後、電磁石に電流を流し着磁を行なった。この場合、印加磁場=有効磁場となる。着磁後、フラックスメータによりトータルフラックスを測定した。
ここで着磁特性についていえば、前述したように、低磁界でより大きな着磁率を有し、かつ着磁率の立ち上がり急峻であることが理想的である。ところが、従来、この両者を満足することは容易ではなかった。しかるに、本発明は、着磁率a(=f1/f3×100)が60%以上、かつ、着磁率b(=f2/f3×100)が85%以上、さらには着磁率c(=f4/f3×100)が95%以上という、従来にはない低磁界で高着磁率で、かつ着磁率の立ち上がりの早いR−T−B系希土類永久磁石を提供する。
以上の着磁特性を得るためには、焼結体の磁石結晶粒子が平均粒径で3.5〜5.0μmという限られた範囲にあることが重要である。磁石結晶粒子の平均粒径が3.5μm未満あるいは5.0μmを超えると、上述した着磁率a、着磁率bを得ることができない。
また、以上の着磁特性を得るための組成的な要因としては、上記したように焼結体中の酸素含有量を規制すること、さらにNb及びZrの1種又は2種を含むことが掲げられる。
[永久磁石の製造方法1]
次に、本発明に係る永久磁石1の第1の製造方法について図3を用いて説明する。図3は本発明に係る永久磁石1の第1の製造方法における製造工程を示した説明図である。
先ず、上述した組成割合を満たす分率のR−T−B(例えば、Nd:29.73wt%、B:1.01wt%、Fe:69.26wt%)からなる、インゴットを製造する。その後、インゴットをスタンプミルやクラッシャー等によって200μm程度の大きさに粗粉砕する。若しくは、インゴットを溶解し、ストリップキャスト法でフレークを作製し、水素解砕法で粗粉化する。
次いで、粗粉砕した磁石粉末を、(a)酸素含有量が実質的に0%の窒素ガス、Arガス、Heガスなど不活性ガスからなる雰囲気中、又は(b)酸素含有量が0.0001〜0.5%の窒素ガス、Arガス、Heガスなど不活性ガスからなる雰囲気中で、ジェットミル41により微粉砕し、所定サイズ(焼結体の磁石結晶粒子が平均粒径で3.5〜5.0μm、より好ましくは4.0〜5.0μmの範囲となるサイズ)の平均粒径を有する微粉末とする。尚、酸素濃度が実質的に0%とは、酸素濃度が完全に0%である場合に限定されず、微粉の表面にごく僅かに酸化被膜を形成する程度の量の酸素を含有しても良いことを意味する。
一方で、ジェットミル41で微粉砕された微粉末に添加する有機金属化合物溶液を作製する。ここで、有機金属化合物溶液には予めTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む有機金属化合物を添加し、溶解させる。尚、溶解させる有機金属化合物としては、M−(OR)(式中、MはTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)に該当する有機金属化合物(例えば、テルビウムエトキシド、ニオブイソポロポキシド、銅イソプロポキシド等)を用いる。また、溶解させるTbを含む有機金属化合物の量は特に制限されないが、焼結後の磁石に対するTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの含有量が上述した範囲内(例えば、Tb:1.0〜6.0wt%、Al及びCuの1種又は2種:0.02wt%〜0.5wt%、Nb:0.2wt%〜1.5wt%、Zr:0.03wt%〜0.25wt%、Co:2wt%以下(0を含まず)である。)となる量とする。
続いて、ジェットミル41にて分級された微粉末に対して上記有機金属化合物溶液を添加する。それによって、磁石原料の微粉末と有機金属化合物溶液とが混合されたスラリー42を生成する。尚、有機金属化合物溶液の添加は、窒素ガス、Arガス、Heガスなど不活性ガスからなる雰囲気で行う。
その後、生成したスラリー42を成形前に真空乾燥などで事前に乾燥させ、乾燥した磁石粉末43を取り出す。その後、乾燥した磁石粉末を成形装置50により所定形状に圧粉成形する。尚、圧粉成形には、上記の乾燥した微粉末をキャビティに充填する乾式法と、溶媒などでスラリー状にしてからキャビティに充填する湿式法があるが、本発明では乾式法を用いる場合を例示する。また、有機金属化合物溶液は成形後の焼成段階で揮発させることも可能である。
図3に示すように、成形装置50は、円筒状のモールド51と、モールド51に対して上下方向に摺動する下パンチ52と、同じくモールド51に対して上下方向に摺動する上パンチ53とを有し、これらに囲まれた空間がキャビティ54を構成する。
また、成形装置50には一対の磁界発生コイル55、56がキャビティ54の上下位置に配置されており、磁力線をキャビティ54に充填された磁石粉末43に印加する。印加させる磁場は例えば1MA/mとする。
そして、圧粉成形を行う際には、先ず乾燥した磁石粉末43をキャビティ54に充填する。その後、下パンチ52及び上パンチ53を駆動し、キャビティ54に充填された磁石粉末43に対して矢印61方向に圧力を加え、成形する。また、加圧と同時にキャビティ54に充填された磁石粉末43に対して、加圧方向と平行な矢印62方向に磁界発生コイル55、56によってパルス磁場を印加する。それによって、所望の方向に磁場を配向させる。尚、磁場を配向させる方向は、磁石粉末43から成形される永久磁石1に求められる磁場方向を考慮して決定する必要がある。
また、湿式法を用いる場合には、キャビティ54に磁場を印加しながらスラリーを注入し、注入途中又は注入終了後に、当初の磁場より強い磁場を印加して湿式成形しても良い。また、加圧方向に対して印加方向が垂直となるように磁界発生コイル55、56を配置しても良い。
次に、圧粉成形により成形された成形体71を水素雰囲気において200℃〜900℃、より好ましくは400℃〜900℃(例えば600℃)で数時間(例えば5時間)保持することにより水素中仮焼処理を行う。仮焼中の水素の供給量は5L/minとする。この水素中仮焼処理では、有機金属化合物を熱分解させて、仮焼体中の炭素量を低減させる所謂脱カーボンが行われる。また、水素中仮焼処理は、仮焼体中の炭素量が1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下とする条件で行うこととする。それによって、その後の焼結処理で永久磁石1全体を緻密に焼結させることが可能となり、残留磁束密度や保磁力を低下させることが無い。
ここで、上述した水素中仮焼処理によって仮焼された成形体71には、NdHが存在し、酸素と結び付きやすくなる問題があるが、第1の製造方法では、成形体71は水素仮焼後に外気と触れさせることなく、後述の真空焼成に移るため脱水素工程は不要となる。焼成中に成形体中の水素は抜けることとなる。
続いて、水素中仮焼処理によって仮焼された成形体71を焼結する焼結処理を行う。焼結処理では、所定の昇温速度で800℃〜1180℃程度まで昇温し、2時間程度保持する。この間は真空焼成となるが真空度としては10−4Torr以下とすることが好ましい。その後冷却し、再び600℃で2時間熱処理を行う。そして、焼結の結果、永久磁石1が製造される。
[永久磁石の製造方法2]
次に、本発明に係る永久磁石1の他の製造方法である第2の製造方法について図4を用いて説明する。図4は本発明に係る永久磁石1の第2の製造方法における製造工程を示した説明図である。
尚、スラリー42を生成するまでの工程は、図3を用いて既に説明した第1の製造方法における製造工程と同様であるので説明は省略する。
先ず、生成したスラリー42を成形前に真空乾燥などで事前に乾燥させ、乾燥した磁石粉末43を取り出す。その後、乾燥した磁石粉末43を水素雰囲気において200℃〜900℃、より好ましくは400℃〜900℃(例えば600℃)で数時間(例えば5時間)保持することにより水素中仮焼処理を行う。仮焼中の水素の供給量は5L/minとする。この水素中仮焼処理では、有機金属化合物を熱分解させて、仮焼体中の炭素量を低減させる所謂脱カーボンが行われる。また、水素中仮焼処理は、仮焼体中の炭素量が1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下とする条件で行うこととする。それによって、その後の焼結処理で永久磁石1全体を緻密に焼結させることが可能となり、残留磁束密度や保磁力を低下させることが無い。
次に、水素中仮焼処理によって仮焼された粉末状の仮焼体82を真空雰囲気で200℃〜600℃、より好ましくは400℃〜600℃で1〜3時間保持することにより脱水素処理を行う。尚、真空度としては0.1Torr以下とすることが好ましい。
ここで、上述した水素中仮焼処理によって仮焼された仮焼体82には、NdHが存在し、酸素と結び付きやすくなる問題がある。
そこで、上記脱水素処理では、水素中仮焼処理によって生成された仮焼体82中のNdH(活性度大)を、NdH(活性度大)→NdH(活性度小)へと段階的に変化させることによって、水素仮焼中処理により活性化された仮焼体82の活性度を低下させる。それによって、水素中仮焼処理によって仮焼された仮焼体82をその後に大気中へと移動させた場合であっても、Ndが酸素と結び付くことを防止し、残留磁束密度や保磁力を低下させることが無い。
その後、脱水素処理が行われた粉末状の仮焼体82を成形装置50により所定形状に圧粉成形する。成形装置50の詳細については図3を用いて既に説明した第1の製造方法における製造工程と同様であるので説明は省略する。
その後、成形された仮焼体82を焼結する焼結処理を行う。焼結処理では、所定の昇温速度で800℃〜1180℃程度まで昇温し、2時間程度保持する。この間は真空焼成となるが真空度としては10−4Torr以下とすることが好ましい。その後冷却し、再び600℃で2時間熱処理を行う。そして、焼結の結果、永久磁石1が製造される。
尚、上述した第2の製造方法では、粉末状の磁石粒子に対して水素中仮焼処理を行うので、成形後の磁石粒子に対して水素中仮焼処理を行う前記第1の製造方法と比較して、有機金属化合物の熱分解を磁石粒子全体に対してより容易に行うことができる利点がある。即ち、前記第1の製造方法と比較して仮焼体中の炭素量をより確実に低減させることが可能となる。
一方、第1の製造方法では、成形体71は水素仮焼後に外気と触れさせることなく、後述の真空焼成に移るため脱水素工程は不要となる。従って、前記第2の製造方法と比較して製造工程を簡略化することが可能となる。但し、前記第2の製造方法においても、水素仮焼後に外気と触れさせることがなく焼成を行う場合には、脱水素工程は不要となる。
以上説明したように、本実施形態に係るR−T−B系希土類永久磁石の製造方法では、粉砕されたR−T−B系磁石の微粉末に対して、M−(OR)(式中、MはTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)で示される有機金属化合物が添加された有機金属化合物溶液を加え、磁石粒子表面に対して均一に有機金属化合物を付着させる。その後、圧粉成形した成形体を水素雰囲気において200℃〜900℃で数時間保持することにより水素中仮焼処理を行う。その後、800℃〜1180℃で焼成を行うことによって永久磁石1を製造する。
上記製造方法により製造されたR−T−B系希土類の永久磁石1によれば、400kA/m(5kOe)程度の低い着磁磁界での着磁率が向上されるとともに、800kA/m(10kOe)以上の着磁磁界における着磁率も向上されたR−T−B系希土類永久磁石を提供することができる。このような着磁特性に優れたR−T−B系希土類の永久磁石1は、多極着磁磁石に用いた場合には、ニュートラルゾーンの幅を狭くすることができる。このようなリング磁石を用いたモータは、高い回転性能を保持することができる。また、着磁率の高い磁石は、材質的に高コストで高磁気特性であるが着磁率の低い磁石に比べて、実際に発生するトータルフラックスが多い場合がある。したがって、本発明は、所定のトータルフラックスを低コストの磁石で実現することができる。または磁石のサイズを小型化することができる。
また、M−(OR)(式中、MはTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)で示される有機金属化合物が添加された有機金属化合物溶液を磁石粉末に湿式状態で添加することによって、添加されたTb、Nb、Co、Zr,Cu又はAlを磁石の粒界に効率よく偏在させることができる。その結果、Tb、Nb、Co、Zr,Cu又はAlの使用量を減少させ、残留磁束密度の低下を抑制できるとともに、各元素による効果(例えばTbでは保磁力の向上、NbやZrでは着磁特性向上及び粒成長抑制、Coではキュリー温度の向上及び粒界相の耐食性向上、AlやCuでは高保磁力化及び温度特性の改善)を十分に図ることが可能となる。また、他の有機金属化合物を添加する場合と比較して脱カーボンを容易に行うことが可能であり、焼結後の磁石内に含まれる炭素によって磁石特性が低下する虞が無く、また、磁石全体を緻密に焼結することが可能となる。
また、有機金属化合物が添加された磁石を、焼結前に水素雰囲気で仮焼することにより、有機金属化合物を熱分解させて磁石粒子中に含有する炭素を予め焼失(炭素量を低減)させることができ、焼結工程でカーバイドがほとんど形成されることがない。その結果、焼結後の磁石の主相と粒界相との間に空隙を生じさせることなく、また、磁石全体を緻密に焼結することが可能となり、保磁力が低下することを防止できる。また、焼結後の磁石の主相内にαFeが析出することなく、磁石特性を大きく低下させることがない。
また、Rとして1.0wt%〜12.0wt%のDyを含むこととすれば、Dyによる保磁力の向上を図ることが可能となる。
また、永久磁石1は多極着磁される磁石であることを特徴とするので、ニュートラルゾーンの幅を狭くすることができる。そのために、トータルフラックス量が増加し、例えばモータに用いるものであればモータの特性を向上させることができる。
また、焼結体中の窒素量が20ppm〜600ppm、炭素量が1500ppm以下であるので、磁気特性を向上させることが可能となる。
また、永久磁石1はGa:0.02〜1.5wt%を含有するので、着磁特性を向上させることが可能となる。
尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
また、磁石粉末の粉砕条件、混練条件、仮焼条件、焼結条件などは上記実施例に記載した条件に限られるものではない。
また、水素中仮焼処理や脱水素工程については省略しても良い。
また、上述した製造方法では、Tb、Nb、Co、Zr,Cu、Alについては、磁石粉末にM−(OR)(式中、MはTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)で示される有機金属化合物を添加することによって、添加する構成としているが、一部については予めインゴットに含める構成としても良い。例えば、Tbは有機金属化合物により添加し、他の元素については予めインゴットに含める構成としても良い。また、Tb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの全ての元素について有機金属化合物により添加する構成としても良い。
1 永久磁石
11 主相
12 粒界相

Claims (5)

  1. R:25〜35wt%(ただし、Rは希土類元素の1種又は2種以上であり、1.0wt%〜6.0wt%のTbを必須とする)、B:0.5wt%〜4.5wt%、Al及びCuの1種又は2種:0.02wt%〜0.5wt%、Nb:0.2wt%〜1.5wt%及びZr:0.03wt%〜0.25wt%の1種又は2種、Co:2wt%以下(0を含まず)、残部実質的にFeからなる組成を有する焼結体からなり、
    前記焼結体中の酸素量が2000ppm以下、前記焼結体の平均結晶粒径が3.5μm〜5.0μmであって、
    磁石原料を磁石粉末に粉砕する工程と、
    前記粉砕された磁石粉末に以下の構造式
    M−(OR)
    (式中、MはTb、Nb、Co、Zr,Cu、Alの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)
    で表わされる有機金属化合物を添加することにより、前記磁石粉末の粒子表面に前記有機金属化合物を付着させる工程と、
    前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記磁石粉末を成形することにより成形体を形成する工程と、
    前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記磁石粉末を成形前又は成形後であって焼結前に水素雰囲気で仮焼する工程と、
    前記成形体を焼結する工程と、により製造されることを特徴とする永久磁石。
    ることを特徴とするR−T−B系希土類永久磁石。
  2. Rとして1.0wt%〜12.0wt%のDyを含むことを特徴とする請求項1に記載のR−T−B系希土類永久磁石。
  3. 多極着磁される磁石であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のR−T−B系希土類永久磁石。
  4. 前記焼結体中の窒素量が20ppm〜600ppm、炭素量が1500ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のR−T−B系希土類永久磁石。
  5. Ga:0.02wt%〜1.5wt%を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のR−T−B系希土類永久磁石。
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