JP2005183487A - 希土類磁石粉末および異方性交換スプリング磁石 - Google Patents

希土類磁石粉末および異方性交換スプリング磁石 Download PDF

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宜郎 川下
Tetsuro Tayu
哲朗 田湯
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秀昭 小野
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早人 橋野
Hiroyuki Takabayashi
宏之 高林
Yasuhiko Iriyama
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Abstract

【課題】 NdFeB系異方性交換スプリング磁石の磁気特性を向上させる手段を提供する。
【解決手段】 ハード相およびソフト相を含有するNdFeB系希土類磁石合金を湿式ボールミルを用いて粉砕して得られる、炭素含有量が、磁石粉末の質量を基準として4質量%以下である、希土類磁石粉末である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、異方性を有する希土類永久磁石およびその製造方法に関する。
モータ等に用いられる磁石としては、Nd−Fe−B系永久磁石が広く用いられている。これらの磁石の製造には、焼結法や急冷法が用いられている。また、HDDR処理が開発され、磁石粉末に異方性を付与することも可能になっている。これらの技術開発によって、優れた磁気特性を有するNd−Fe−B系永久磁石が実用化されている。
しかしながら、Nd−Fe−B系永久磁石は、磁気特性に関して理論上の限界値に近づきつつある。このため、さらに高性能な次世代磁石の開発が所望されている。次世代磁石としては、近年、ナノコンポジット磁石とも称される、交換スプリング磁石が注目を集めている。交換スプリング磁石は、ハード相とソフト相とが数十nmオーダーで微細分散した組繊からなる。交換スプリング磁石は、両相の磁化が交換相互作用で結び付くことによってソフト相の磁化が容易に反転せず、全体として単一ハード相のように振る舞う。ナノコンポジット磁石は、非常に高性能な磁石となりうることが指摘されている。例えば、SmFe17/Fe−Co系において、異方性化できれば、理論上は、(BH)max=137MGOeの値を得られることが報告されている。
交換スプリング磁石の製造においては、メルトスパン法やメカニカルアロイング(MA)法を適用して磁石合金を作製することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの方法を用いた場合、ハード相の結晶方位を揃えることができない。このため等方性交換スプリング磁石しか得られず、交換スプリング磁石の特性を十分に活かしきれない。
ハード相の結晶方位を揃える手法としては、Nd−Fe−Bアモルファス合金を強磁場中で加熱結晶化する方法、ハード相とソフト相とが微細分散析出するような急冷薄帯合金を熱間加工する方法、温間一軸変形により、液相の存在下で直接、異方化する方法などが開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、より簡便な異方性交換スプリング磁石の製造方法として湿式ボールミル法の開発がなされている(特許文献3参照)。
特開平7−173501号公報 特開平11−8109号公報 特開2002−343659号公報
異方性交換スプリング磁石に関しては、様々な技術が提案されているが、さらに優れた異方性交換スプリング磁石の開発が所望されている。そこで、本発明は、NdFeB系異方性交換スプリング磁石の磁気特性を向上させる手段を提供することを目的とする。
本発明は、ハード相およびソフト相を含有するNdFeB系希土類磁石合金を湿式ボールミルを用いて粉砕して得られる、炭素含有量が、磁石粉末の質量を基準として4質量%以下である、希土類磁石粉末である。
磁石粉末中に含まれる炭素含有量を制御することによって、磁気特性が向上する。
ソフト相およびハード相が数十nmオーダーで微細分散した組繊からなる交換スプリング磁石は、一般的には以下の製造工程によって製造される。まず、所定の組成の磁石合金を作製する。磁石合金は、各種粉砕手段を用いて粉砕され、磁石粉末となる。磁石粉末を磁場中成型し、さらに焼結することにより、バルク状の交換スプリング磁石となる。
磁石合金を粉砕するための粉砕手段としては、湿式ボールミル法が好ましい。湿式ボールミル法を用いて磁石合金を粉砕すると、ハード相の結晶方向を揃えることが容易であり、優れた磁気特性を有する異方性交換スプリング磁石が製造されうる。しかしながら、湿式ボールミルを用いると、磁気特性が低下する場合がある。
本発明者らは、この磁気特性の低下は炭素原子の磁石粉末中への混入によって生じていることを見出した。磁石粉末中に混入した炭素原子によって、磁気特性の低いNd−C化合物が生成されうる。つまり、磁石粉末中に炭素が多量に含まれると、多量のNd−C化合物が形成され、磁石粉末、ひいてはバルク磁石の磁気特性が低下する。特に、湿式ボールミルを用いて磁石合金を粉砕する際には、炭素が磁石粉末中に混入しやすい。かような知見に基づき、本発明においては、磁石粉末中の炭素含有量が規定される。
即ち、本発明の第1は、ハード相およびソフト相を含有するNdFeB系希土類磁石合金を湿式ボールミルを用いて粉砕して得られる、炭素含有量が、磁石粉末の質量を基準として4質量%以下である、希土類磁石粉末である。
以下、本発明の希土類磁石粉末について、詳細に説明する。
前述のように、本発明の磁石粉末中の炭素含有量は、磁石粉末の質量を基準として4質量%以下である。炭素濃度がかような範囲であると、磁気特性を低下させるNd−C化合物の形成が抑制される。
また、本発明においては、炭素濃度に加えて、酸素濃度も制御されていることが好ましい。磁石粉末中に含まれる過剰の酸素は、磁石のハード相を構成するNdFe14B化合物を酸化させ、磁気特性の劣化を引き起こす。この磁気特性の劣化を防止するためには、磁石粉末中の酸素濃度が制御されることが好ましい。具体的には、酸素含有量が、磁石粉末の質量を基準として0.8質量%以下であることが好ましい。なお、湿式ボールミルを用いて磁石合金が粉砕される場合には、酸素が混入しやすいため、注意すべきである。
本発明のNdFeB系希土類磁石粉末は、好ましくは異方性交換スプリング磁石の製造に用いられる。この観点からは、希土類磁石粉末が含有するハード相およびソフト相の大きさは、数十nm程度であることが好ましい。ハード相およびソフト相が大きすぎると、交換相互作用が低下する。ハード相およびソフト相の大きさの下限に関しては、特に限定されず、小さいほど強い交換相互作用が発現する。ただし、小さすぎると、製造の困難性に伴い、生産性が低下する虞がある。より具体的には、ハード相およびソフト相の大きさは、好ましくは80nm以下であり、より好ましくは60nm以下である。また、下限は特に限定されないが、実際的には、5nm以上である。
なお、ハード相およびソフト相の大きさおよび混在状態はSEMを用いて確認されうる。なお、上述の「大きさ」とは、SEMで観察した際のハード相およびソフト相の最大径を意味する。
希土類磁石粉末の平均粒径は、好ましくは、1μm以下である。磁石粉末の平均粒径が1μm以下であると、得られる磁石の磁気特性が向上する。この効果を考慮して、磁石粉末の粉砕度合いが決定されればよい。なお、平均粒径の測定方法は特に限定されない。例えば、SEM観察などが平均粒径の測定に用いられる。
希土類磁石粉末の組成は、NdFeB系希土類磁石であれば、特に限定されない。NdFeB系希土類磁石とは、磁石の主相の基本組成がNdFe14Bである永久磁石を意味する。基本組成の元素の一部が他の元素で置換されていてもよい。
好ましくは、希土類磁石粉末は、下記化学式1で表される組成を有する。通常は、この組成でのハード相はNdFe14Bであり、ソフト相はα−Feである。
ネオジム(Nd)の量が少なすぎると、交換スプリング磁石を製造した際の保磁力が低下する虞がある。また、ある程度の希土類元素を含有していないと、磁石合金の結晶粒径が大きくなり、結晶粒が微細化せず、作製される磁石の磁気特性が低下する虞がある。一方、ネオジムの量が多すぎると、ソフト相の占める割合が少なくなり、交換スプリング磁石を製造した場合の磁気特性が低下する虞がある。これらを考慮すると、xは、好ましくは8.5〜11.5である。
ネオジムの一部が、プラセオジム(Pr)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)などで置換されてもよい。これらの元素を混入させることによって、保磁力の向上、温度特性の向上などが図られる。
鉄(Fe)の量は、ネオジム、ホウ素、バナジウムなどの存在量から決定される。鉄の一部がコバルト(Co)で置換されてもよい。これらの元素を混入させることによって、温度特性の向上、磁束密度の向上などが図られる。なお、Feの一部をCoで置換した場合におけるハード相はNd(Fe−Co)14Bとなり、ソフト相はFe−Coとなる。
鉄またはコバルト(Fe−Coとして存在するCo)は、少量のAl、Mo、Zr、Ti、Sn、Cu、GaまたはNbの1種以上で置換されてもよい。これらの元素を含有させることによって組織の微細化が図られ、保磁力が増大しうる。
ホウ素(B)の量が少なすぎると、本発明に係る磁石合金の製造が困難となる虞がある。一方、ホウ素の量が多すぎると、磁気特性を低下させる、好ましくない相が形成される虞がある。これらの理由から、yは、好ましくは5〜8である。
バナジウム(V)は、結晶質の微細化、保磁力増大を図る観点から添加してもよいが、添加は必須ではなく、加えなくてもよい(z=0)。ただし、加えすぎると磁気特性が逆に低下する原因となる。これらの理由から、zは、好ましくは0〜2である。
なお、本発明に係る磁石は合金材料であるため微量の不純物の混入は止むを得ないが、不純物量は少量であるほど好ましく、1質量%以下であることが好適である。
本発明の第2は、本発明の第1の磁石粉末の製造方法に関する。即ち、本発明の第2は、ハード相およびソフト相を含有するNdFeB系希土類磁石合金を湿式ボールミルを用いて粉砕する、炭素含有量が磁石粉末の質量を基準として4質量%以下である希土類磁石粉末の製造方法である。
磁石粉末の製造にあたっては、所定の組成のNdFeB系希土類磁石合金が準備される。磁石合金の組成は、最終的に製造するバルク磁石に求める組成に応じて、決定されればよい。希土類磁石合金の製造方法については、特に限定されず、ストリップキャスト法、磁石の異方性や粉砕容易性を高めるための水素処理など、既に得られている知見が適宜参照されうる。例えば、特開2002−343659号公報などの公知技術が参照されうる。また、ストリップキャスト法や水素処理は公知の装置を用いて行われうる。
なお、磁石粉末を用いて作製される異方性交換スプリング磁石の磁気特性は、出発原料である磁石合金の結晶粒径に大きく影響を受ける。つまり、磁石合金の結晶粒径が大きすぎると、湿式ボールミルによる結晶粒の微細化が促進されず、作製されるバルク磁石の磁気特性が低下する虞がある。従って、磁石合金は、結晶粒が小さくなるように製造されることが好ましい。なお、結晶粒を小さくするには、一般的に、ストリップキャスト法が好適である。ただし、磁気特性にさほどの影響が及ばないのであれば、ストリップキャスト法以外の方法が採用されてもよい。
磁石合金を湿式ボールミルを用いて粉砕することによって、磁石粉末が作製される。一般的な磁石合金の粉砕手段としては、ボールミル、サンドミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミルなど各種粉砕手段が挙げられるが、本発明においては、湿式ボールミルが使用される。前述のように、湿式ボールミル法を用いて磁石合金を粉砕すると、ハード相の結晶方向を揃えることが容易であり、優れた磁気特性を有する異方性交換スプリング磁石が製造されうる。
ボールミルとは、回転する円筒に、原料をセラミック球や珪石球と共に装入し、球の落下転落による衝撃作用および摩擦作用を利用して粉砕する粉砕機である。そのうち、湿式ボールミルは、ウェット条件下で粉砕処理が施されるボールミルである。
湿式ボールミルを用いて磁石合金が粉砕される際には、作製される磁石粉末の炭素含有量が4質量%以下になるように条件が制御される。
炭素含有量を抑制するには、粉砕後の熱処理プロセスおよび/または加圧焼結プロセスによって、十分に分解、蒸発または昇華する溶媒が選定されるとよい。具体的には、シクロヘキサンなどの有機溶媒が用いられるとよい。
湿式ボールミルにおいては、必要に応じて、粉砕によって生成する粉末の凝集を防止する分散剤を用いられるが、分散剤に関しても、炭素含有量が増加しないように注意が払われるべきである。つまり、粉砕後の熱処理プロセスおよび/または加圧焼結プロセスによって、十分に分解、蒸発または昇華する分散剤が選定されるとよい。具体的には、アルケニル琥珀酸イミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシプロピレングリコールモノエーテル、およびポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルからなる群より選択される分散剤が選定されるとよい。
また、湿式ボールミルを用いて磁石合金が粉砕される際には、作製される磁石粉末の酸素含有量が0.8質量%以下になるように条件が制御されることが好ましい。例えば、粉砕される磁石合金の酸化による磁気特性の低下を防止するためには、湿式ボールミルによる磁石合金の粉砕は、非酸化性雰囲気下で行われる。これにより、磁気特性の劣化が防止される。非酸化性雰囲気としては、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気などが挙げられる。湿式ボールミルに用いられる溶媒の酸素濃度を低減するために、溶媒が脱水されてもよい。脱水は、例えば、分散剤を含有した溶媒を硫酸ナトリウムなどで処理することによって、達成されうる。
ボールミルによる磁石合金の粉砕は、磁石粉末に求める平均粒径に応じて調整されればよい。磁石粉末の平均粒径を小さくしたいのであれば、ボールミルによって磁石合金を細かく粉砕すればよい。平均粒径は、ボールミルの種類や用いるセラミック球や珪球を変化させて制御されてもよいし、処理時間を増減させることによって制御されてもよい。前述のように、磁石粉末の平均粒径が1μm以下であると、得られる磁石の磁気特性が向上する。したがって、好ましくは、磁石粉末の平均粒径が1μm以下となるように、磁石粉末の粉砕度合いが決定される。
湿式ボールミルによって磁石合金が粉砕された後、湿式ボールミルからは、粉砕された磁石粉末を含むスラリーが取り出される。湿式ボールミルによって作製された磁石粉末は、アモルファスを一部含有する微小な結晶粒径を有する微粉末である。この微粉末は、磁気特性を十分に高めるために、熱処理または加圧焼結されるべきである。熱処理または加圧焼結によって、ソフト相およびハード相の結晶性が高まるとともに、交換結合力が高まる。場合によっては、熱処理および加圧焼結の双方が施されてもよい。
熱処理または加圧焼結のいずれが用いられるかは、その後の工程によって選択される。乾燥した磁石粉末をまず作製するのであれば、必要に応じて湿式ボールミルから取り出された磁石粉末を乾燥させた後、磁石粉末を熱処理する。加圧焼結によりバルク磁石を作製するのであれば、磁石粉末を含むスラリーを加圧焼結してもよい。異方性交換スプリング磁石を作製するのであれば、磁場配向させた後、加圧焼結すればよい。加圧焼結には、放電プラズマ焼結装置などの焼結装置が用いられうる。放電プラズマ加圧焼結を用いた場合、酸素濃度の低いバルク磁石を製造することができ、磁気特性の向上を図りやすい。温度条件、圧力条件を適切に設定することによって、ホットプレス法が加圧焼結法として適用されてもよい。
熱処理または加圧焼結の際の処理温度は、好ましくは500〜800℃である。処理温度が低すぎると、十分にソフト相およびハード相の結晶性が高まらない虞がある。また、処理温度が高すぎると、ソフト相とハード相との結晶粒成長が顕著となり、交換結合が阻害され、磁気特性が低下する虞がある。
保持時間は、好ましくは0〜20分である。保持時間がこの程度であると、優れた磁気特性が得られる。理由は定かではないが、この程度の保持時間であると、優れた交換結合が実現されていると推測される。なお、保持時間が0分の場合とは、所定の昇温速度で焼結温度にまで雰囲気ガスを加熱し、焼結温度に到達後、保持することなく、直ちに降温を開始する条件を意味する。
本発明の第3は、本発明の第1の磁石粉末を加圧焼結することによって得られるバルク状の交換スプリング磁石に関する。即ち、本発明の第3は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の希土類磁石粉末を、磁場中成型して、さらに、加圧焼結することによって得られる、異方性交換スプリング磁石である。また、本発明の第4は、本発明の第3の異方性交換スプリング磁石の製造方法に関する。即ち、本発明の第4は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の希土類磁石粉末を磁場中成型し、その後、成型された前記希土類磁石粉末を加圧焼結する、異方性交換スプリング磁石の製造方法である。
まず、得た磁石粉末を磁場配向することによって圧粉体を得る。磁石粉末は、湿式ボールミルから取り出されたスラリー中の磁石粉末が用いられてもよいし、乾燥および/または熱処理された磁石粉末が用いられてもよい。磁場配向およびプレスに用いる装置は特に限定されるものではなく、各種公知の手段を用いることができる。例えば、磁場印加によって磁化容易軸方向を揃えた状態で加圧成形することができる。加圧力は1〜5ton/cm、印加する磁場は15〜25kOe程度が適当である。圧粉体は以下に説明する放電プラズマ焼結装置の型を用いて作製し、型に収まったままの状態で、型ごと装置に運ばれ、圧力をかけながら放電プラズマ焼結することが作業の容易性の点からは好適である。ただし、放電プラズマ焼結に限定するわけではなく、前述のように、ホットプレス法などの他の加圧焼結法が用いられてもよい。
得られた圧粉体を放電プラズマ中で加圧焼結することによって、バルク化した異方性交換スプリング磁石を得る。放電プラズマ加圧焼結を用いて、比較的低温で焼結することによって結晶質サイズの粗大化を抑制でき、得られる磁石の特性を優れたものとすることができる。放電プラズマ加圧焼結はイズミテック社製Model SPS−2040などの市販の装置を用いて行うことができ、製造する磁石や生産ラインに応じて適宜改良を施してもよい。
放電プラズマ加圧焼結の処理温度、処理時間は、熱処理と同様である。処理温度が低すぎると、十分にソフト相およびハード相の結晶性が高まらない虞がある。また、処理温度が高すぎると、ソフト相とハード相との結晶粒成長が顕著となり、交換結合が阻害され、磁気特性が低下する虞がある。これらを考慮すると、加圧焼結の処理温度は、好ましくは500〜800℃である。加圧焼結はロータリーポンプ等を用いて減圧下で行うことが好ましく、処理温度までの昇温速度は15〜25K/min程度が適切である。処理保持時間は、使用する装置、温度、圧粉体の大きさなどに応じて適宜変更する必要があり一義的には定義できないが、0〜20min程度が一般的である。処理温度にて焼結後、炉冷する。降温速度は10〜30K/min程度が適切である。加圧力は5〜15ton/cm程度が適切である。加圧力は最適な温度範囲と保持時間範囲において、可能な限り緻密化することが磁気特性に対しては重要である。加圧力が5〜15ton/cm程度であれば、相対密度90%以上の高い密度を有する交換スプリング磁石が製造されうる。なお、加圧焼結は、結晶質サイズが粗大化せず、また、異方性交換スプリング磁石の特性が劣化しない程度においては上記条件から外れてもよい。
本発明のNdFeB系異方性交換スプリング磁石は優れた磁気特性を有するため、例えばモータに本発明の交換スプリング磁石を組み込むことによって、優れた特性を有するモータが得られる。
次に、本発明について具体的に説明する。
1.磁石粉末の炭素含有量と保磁力との関係
ストリップキャスト法を用いて、組成がNd11Fe72Co7.51.5である磁石合金(合金インゴット)を作製した。得られた磁石合金を、湿式ボールミルを用いて粉砕した。湿式ボールミル内の雰囲気はアルゴン雰囲気とし、溶媒としてシクロヘキサン、分散剤としてポリブテニルアルケニル琥珀酸イミドを用いた。湿式ボールミルを用いた粉砕の結果、磁石粉末の粒径は1μm以下となった。磁石粉末を含むスラリーを脱気乾燥し、さらに、650℃での熱処理を行い、磁石粉末を得た。熱処理の保持時間は0分とした。
上述の手順により磁石粉末を製造する際に、分散剤の使用量を調整して、磁石粉末の炭素含有量を変化させた。図1は、熱処理後の磁石粉末の炭素含有量と磁石粉末の保磁力Hcとの関係を示すグラフである。図1から明らかなように、炭素含有量が4質量%以下であると、高い保磁力Hcが発現する。
2.加圧焼結磁石の酸素含有量および炭素含有量と保磁力との関係
ストリップキャスト法を用いて、組成がNdFe76Coである原料合金を作製した。得られた原料合金を、湿式ボールミルを用いて粉砕した。湿式ボールミル内の雰囲気はアルゴン雰囲気とし、溶媒としてシクロヘキサン、分散剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを用いた。湿式ボールミルを用いた粉砕の結果、磁石粉末の粒径は1μm以下となった。磁石粉末を含むスラリーを磁場中プレスして、その後、放電プラズマ焼結装置で10ton/cm、650℃、5分の加圧焼結を行い、異方性交換スプリング磁石を得た。
上述の手順により交換スプリング磁石を製造する際に、分散剤の使用量を調整して、交換スプリング磁石の炭素含有量を変化させた。また、溶媒が含有する水分濃度を調整して、交換スプリング磁石の酸素含有量を変化させた。作製された交換スプリング磁石の密度は、全て相対密度で90%以上であった。図2は、交換スプリング磁石の炭素含有量および酸素含有量と交換スプリング磁石の保磁力Hcとの関係を示すグラフである。図2から明らかなように、酸素含有量が0.8質量%以下であると、高い保磁力Hcが発現する。また、炭素含有量が4質量%以下であると、高い保磁力Hcが発現する。
3.ネオジム含有量と保磁力との関係
ストリップキャスト法を用いて、組成がNdFe84−xCoである原料合金を作製した。得られた原料合金を、湿式ボールミルを用いて粉砕した。湿式ボールミル内の雰囲気はアルゴン雰囲気とし、溶媒としてシクロヘキサン、分散剤としてポリブテニルアルケニル琥珀酸イミドを用いた。湿式ボールミルを用いた粉砕の結果、磁石粉末の粒径は1μm以下となった。磁石粉末を含むスラリーを脱気乾燥し、さらに、750℃での熱処理を行い、磁石粉末を得た。熱処理の保持時間は0分とした。
上述の手順により磁石粉末を製造する際に、原料合金の組成(x)を調整して、磁石粉末のネオジム含有量を変化させた。また、比較のために、等方性ではあるが、交換スプリング磁石の製造方法において最も交換結合を発揮しやすいと考えられる液体急冷法を用いて作製された急冷薄帯を、真空中で熱処理して得られた薄帯磁石を作製し、Hcを評価した。急冷薄帯を作製する際のロール周速度は24m/s、熱処理条件は750℃でとした。熱処理の保持時間は0分とした。
図3は、湿式ボールミル法を用いて作製された磁石粉末および液体急冷法を用いて作製された磁石粉末のネオジム含有量と、保磁力Hcとの関係を示すグラフである。図3から明らかなように、ネオジム含有量が8.5〜11at%であると、最も交換結合を発揮しやすいと考えられる、液体急冷法を用いて作製された磁石粉末の保磁力と同等の高い保磁力が発現する。
ネオジム含有量が8.5at%未満では、湿式ボールミル法で得られた粉末の保磁力Hcは、同じネオジム含有量を持つ液体急冷法から得られた薄帯に比べて、低下している。ネオジム含有量が8.5at%以上であると、ストリップキャスト法によって得られた原料合金の結晶粒径が比較的小さく、湿式ボールミルによって効率的に結晶粒径が微細化され、磁気特性が向上すると推測される。
4.磁石粉末の平均粒径と保磁力との関係
ストリップキャスト法を用いて、組成がNd10Fe73Coである原料合金を作製した。得られた原料合金を、湿式ボールミルを用いて粉砕した。湿式ボールミル内の雰囲気はアルゴン雰囲気とし、溶媒としてシクロヘキサン、分散剤としてポリオキシプロピレングリコールモノエーテルを用いた。磁石粉末を含むスラリーを脱気乾燥し、さらに、550℃で10分の熱処理を行い、磁石粉末を得た。
上述の手順により磁石粉末を製造する際に、湿式ボールミルによる粉砕時間を調整して、得られる磁石粉末の平均粒径を変化させた。図4は、磁石粉末の平均粒径と磁石粉末の保磁力Hcとの関係を示すグラフである。図4から明らかなように、磁石粉末の平均粒径が1.0μm以下であると、高い保磁力Hcが発現する。
5.加圧焼結温度と保磁力との関係
ストリップキャスト法を用いて、組成がNd8.5Fe856.5である原料合金を作製した。得られた原料合金を、湿式ボールミルを用いて粉砕した。湿式ボールミル内の雰囲気はアルゴン雰囲気とし、溶媒としてシクロヘキサン、分散剤としてポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを用いた。磁石粉末を含むスラリーを磁場中プレスして、その後、放電プラズマ焼結装置で加圧焼結を行い、交換スプリング磁石を得た。加圧焼結の条件は、作製される交換スプリング磁石の密度が相対密度で90%以上となるように、加圧力を5〜15ton/cm、保持時間を0〜20分の範囲で調整した。
上述の手順により交換スプリング磁石を製造する際に、加圧焼結温度を変化させた。図5は、交換スプリング磁石を作製する際の加圧焼結温度と交換スプリング磁石の保磁力Hcとの関係を示すグラフである。図5から明らかなように、加圧焼結温度が500〜800℃であると、高い保磁力Hcを有する磁石が得られる。
熱処理後の磁石粉末の炭素含有量と磁石粉末の保磁力Hcとの関係を示すグラフである。 交換スプリング磁石の炭素含有量および酸素含有量と交換スプリング磁石の保磁力Hcとの関係を示すグラフである。 湿式ボールミル法を用いて作製された磁石粉末および液体急冷法を用いて作製された磁石粉末のネオジム含有量と、保磁力Hcとの関係を示すグラフである。 磁石粉末の平均粒径と磁石粉末の保磁力Hcとの関係を示すグラフである。 交換スプリング磁石を作製する際の加圧焼結温度と交換スプリング磁石の保磁力Hcとの関係を示すグラフである。

Claims (11)

  1. ハード相およびソフト相を含有するNdFeB系希土類磁石合金を湿式ボールミルを用いて粉砕して得られる、炭素含有量が、磁石粉末の質量を基準として4質量%以下である、希土類磁石粉末。
  2. 酸素含有量が、磁石粉末の質量を基準として0.8質量%以下である、請求項1に記載の希土類磁石粉末。
  3. 平均粒径が1μm以下である、請求項1または2に記載の希土類磁石粉末。
  4. 下記化学式1で表される組成を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の希土類磁石粉末。
    (式中、x=8.5〜11.5、y=5〜8、z=0〜2である。)
  5. ハード相およびソフト相を含有するNdFeB系希土類磁石合金を湿式ボールミルを用いて粉砕する、炭素含有量が磁石粉末の質量を基準として4質量%以下である希土類磁石粉末の製造方法。
  6. 前記湿式ボールミルにおいては、有機溶媒、並びにアルケニル琥珀酸イミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシプロピレングリコールモノエーテル、およびポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルからなる群より選択される分散剤が用いられる、請求項5に記載の希土類磁石粉末の製造方法。
  7. 前記湿式ボールミルにおける前記希土類磁石合金の粉砕は、非酸化性雰囲気下で行われる、請求項5または6に記載の希土類磁石粉末の製造方法。
  8. 湿式ボールミルを用いて粉砕した後、得られた粉末を500〜800℃で熱処理する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の希土類磁石粉末の製造方法。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の希土類磁石粉末を、磁場中成型して、さらに、加圧焼結することによって得られる、異方性交換スプリング磁石。
  10. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の希土類磁石粉末を磁場中成型し、その後、成型された前記希土類磁石粉末を加圧焼結する、異方性交換スプリング磁石の製造方法。
  11. 成型された前記希土類磁石粉末は、500℃〜800℃で加圧焼結される、請求項10に記載の異方性交換スプリング磁石の製造方法。
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