JP2000286115A - 磁石の製造方法 - Google Patents
磁石の製造方法Info
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Abstract
を安定して提供する。 【解決手段】 R(希土類元素)、T(Fe、またはF
eおよびCo)、NおよびM(Mは、Zrまたはその一
部をTi、V、Cr、Nb、Hf、Ta、Mo、W、A
l、CおよびPの1種以上で置換したもの)を含有し、
TbCu7 型結晶相を含む硬質磁性相と、bcc構造の
T相からなる軟質磁性相とを含む磁石を製造する方法で
あり、急冷合金を得る急冷工程と、この急冷合金に結晶
化のための熱処理を施す熱処理工程と、熱処理後の急冷
合金に窒化処理を施す窒化工程とを有し、熱処理工程に
おいて、熱処理終了後に急冷合金を冷却する際に、40
0℃以下の温度までの冷却速度を10℃/分以上とする
磁石の製造方法。
Description
ディッド磁石としてモータ等に適用される希土類窒化磁
石を製造する方法に関する。
系磁石やNd−Fe−B系磁石が実用化されているが、
近年、新規な希土類磁石の開発が盛んに行なわれてい
る。
固溶したSm−Fe−N系の希土類窒化磁石が提案され
ており、Sm2 Fe17N2.3 付近の組成で、4πIs =
15.4kG、Tc =470℃、HA =14Tの基本物性
が得られること、Znをバインダとするメタルボンディ
ッド磁石として10.5MGOeの(BH)max が得られるこ
と、また、Sm2 Fe17金属間化合物へのNの導入によ
り、キュリー温度が大幅に向上して熱安定性が改良され
たことが報告されている(Paper No.S1.3 at theSixth
International Symposium on Magnetic Anisotropy and
Coercivity inRare Earth-Transition Metal Alloys,P
ittsburgh,PA,October 25,1990.(Proceedings Book:Car
negie Mellon University,Mellon Institute,Pittsburg
h,PA 15213,USA) )。
磁石)は、理論的にはNd−Fe−B系磁石を超える特
性が期待されるため、様々な提案がなされている。Sm
−Fe−N系磁石の高性能化、特に高い磁化を得るため
には、磁石中のα−Fe相の比率を高くすることが有効
である。α−Fe相を増加させるためには、磁石全体の
希土類元素量を減らせばよく、希土類元素の使用量を減
らせばコスト的にも有利である。しかし、希土類元素量
を減らしてα−Fe相を単に増加させただけでは、保磁
力の低下を招き、磁石特性はかえって低くなってしま
う。このため、例えば以下に示すような提案がなされて
いる。
報において、R(Smを主体とする希土類元素)を4〜
8原子%、Nを10〜20原子%、M(Zrを必須とす
る添加元素)を2〜10原子%含有し、残部が実質的に
T(Fe等の遷移元素)であって、TbCu7 型硬質磁
性相と、α−Fe相等のbcc構造T相からなる軟質磁
性相とを有し、軟質磁性相の平均結晶粒径が5〜60nm
であり、軟質磁性相の割合が10〜60体積%であるS
m−Fe−N系磁石を提案している。この磁石は、Zr
を必須とし、かつ軟質磁性相の平均結晶粒径および磁石
中における軟質磁性相の割合を限定したことを特徴とす
るものである。これらの限定により、希土類元素の比率
を8原子%以下と少なくして高磁化を達成したにもかか
わらず、比較的高い保磁力が得られている。
56号公報において、上記特開平8−316018号公
報に記載されている磁石を製造するに際し、合金急冷工
程における条件を最適化することにより、角形比(Hk
/HcJ)の向上をはかっている。なお、HcJは保磁力で
あり、Hkは、磁気ヒステリシスループの第2象限にお
いて磁束密度が残留磁束密度の90%になるときの外部
磁界強度である。Hkが低いと高い最大エネルギー積が
得られない。Hk/HcJは、磁石性能の指標となるもの
であり、磁気ヒステリシスループの第2象限における角
張りの度合いを表わす。HcJが同等であってもHk/H
cJが大きいほど磁石中のミクロ的な保磁力の分布がシャ
ープとなるため、着磁が容易となり、かつ着磁ばらつき
も少なくなり、また、最大エネルギー積が高くなる。そ
して、磁石使用時の外部からの減磁界や自己減磁界の変
化に対する磁化の安定性が良好となり、磁石を含む磁気
回路の性能が安定したものとなる。
は、希土類−鉄系合金を溶解急冷凝固法により非晶質ま
たはこれを含む相状態とし、さらに熱処理と窒化処理と
を順次施すことにより製造される。この方法では、熱処
理工程において、希土類−鉄の1−7相とα−Fe相と
の2相からなる結晶相を析出させ、さらに、窒化処理工
程において、希土類−鉄−窒素の1−7−N硬質磁性相
とα−Fe軟質磁性相との2相からなる磁石粉を得る。
ば、磁石粉末の磁気特性のうち、保磁力は各粒子におい
て安定した値が得られるものの、角形比Hk/HcJが粒
子ごとにばらつきやすいことがわかった。
で、しかも、磁気特性の揃った磁石粉末を安定して提供
することである。
(1)および(2)の本発明により達成される。 (1) R(Rは希土類元素の1種以上であり、R中の
Sm比率は50原子%以上である)、T(TはFe、ま
たはFeおよびCoである)、NおよびM(Mは、Zr
であるか、Zrの一部をTi、V、Cr、Nb、Hf、
Ta、Mo、W、Al、CおよびPから選択される少な
くとも1種の元素で置換したものである)を含有し、R
を4〜8原子%、Nを10〜20原子%、Mを2〜10
原子%含有し、残部が実質的にTであり、硬質磁性相と
軟質磁性相とを有し、硬質磁性相が、R、TおよびNを
主体とし、TbCu7 型結晶相を含み、軟質磁性相が、
bcc構造のT相からなり、軟質磁性相の平均結晶粒径
が5〜60nmであり、軟質磁性相の割合が10〜60体
積%である磁石を製造する方法であって、ノズルから合
金溶湯を吐出して冷却ロール周面に衝突させることによ
り急冷する単ロール法を用いて、TbCu7 型結晶相と
アモルファス相とを含む薄帯状の急冷合金を得る急冷工
程と、真空中または不活性ガス雰囲気中において前記急
冷合金に結晶化のための熱処理を施す熱処理工程と、熱
処理後の急冷合金に窒化処理を施す窒化工程とを有し、
前記熱処理工程において、熱処理終了後に前記急冷合金
を冷却する際に、400℃以下の温度までの冷却速度を
10℃/分以上とする磁石の製造方法。 (2) 前記熱処理工程において、熱処理終了後に前記
急冷合金を冷却する際に、前記窒化処理工程における処
理温度よりも50℃以上低い温度まで冷却する上記
(1)の磁石の製造方法。
cJがばらつきやすい原因を追究し、それが、窒化処理後
の1−7−N硬質磁性相とα−Fe軟磁性相との存在比
に大きく影響を受けることを見いだした。また、この存
在比は、窒化前における希土類−鉄の1−7相とα−F
e相との存在比に依存することがわかった。したがっ
て、合金中における希土類−鉄の1−7相とα−Fe相
との存在比が安定するように熱処理を施せば、Hk/H
cJの揃った磁石粒子からなる磁石粉末を、安定して得る
ことができる。
の検討を行い、熱処理工程における降温速度を適切に制
御することにより、合金中における希土類−鉄の1−7
相とα−Fe相との存在比を安定させ得ることを見いだ
した。
含み、主相である硬質磁性相と微細な軟質磁性相とを含
む複合組織を有する。
六方晶系のTbCu7 型結晶構造をもち、この結晶構造
に窒素が侵入した構造である。Rは主としてTbサイト
に、Tは主としてCuサイトに存在する。Mは、元素に
よっても異なるが、主としてTbサイトに存在し、Cu
サイトに存在する場合もある。また、Mは、軟質磁性相
であるbcc構造T相に固溶することもあるが、MとT
とで別の化合物を形成することもある。
/(R+T+M)は、好ましくは12.5%超であり、
より好ましくは13.5%以上である。(R+M)/
(R+T+M)が小さすぎると保磁力が低くなり、角形
比Hk/HcJも低くなってしまう。(R+M)/(R+
T+M)の上限は、好ましくは25%、より好ましくは
20%である。(R+M)/(R+T+M)が大きすぎ
るとTbCu7 型結晶構造が生成しにくくなってTh2
Zn17型結晶構造が出現するようになり、高保磁力およ
び高角形比は実現しない。
質的にα−Fe相であるか、α−Fe相のFeの一部が
Co、M、R等で置換されたものであると考えられる。
結晶粒径は5〜60nmとする。磁石中には結晶磁気異方
性が高い硬質磁性相と飽和磁化が高い軟質磁性相とが存
在し、軟質磁性相が微細であるため両相の界面が多くな
って交換相互作用の効果が大きくなり、高保磁力が得ら
れると考えられる。軟質磁性相の平均結晶粒径が小さす
ぎると飽和磁化が低くなってしまい、大きすぎると保磁
力および角形性が低くなってしまう。なお、軟質磁性相
の平均結晶粒径は、好ましくは5〜40nmである。
とは透過型電子顕微鏡により確認することができる。軟
質磁性相の平均結晶粒径は、磁石断面の画像解析により
算出する。まず、磁石断面の測定対象領域中に含まれて
いる軟質磁性相について、結晶粒の数nおよび各結晶粒
の断面積の合計Sを、画像解析により算出する。そし
て、軟質磁性相の結晶粒1個あたりの平均断面積S/n
を算出し、面積がS/nである円の直径Dを平均結晶粒
径とする。すなわち、平均結晶粒径Dは、 式 π(D/2)2 =S/n から求める。なお、測定対象領域は、nが50以上とな
るように設定することが好ましい。
5〜500nm、より好ましくは5〜100nmである。硬
質磁性相の平均結晶粒径が小さすぎる場合には結晶性が
不十分であり、高保磁力が得られにくい。一方、硬質磁
性相の平均結晶粒径が大きすぎると、窒化処理に要する
時間が長くなる傾向がある。硬質磁性相の平均結晶粒径
は、軟質磁性相の平均結晶粒径と同様にして算出する。
〜60体積%、好ましくは10〜36体積%である。軟
質磁性相の割合が低すぎても高すぎても良好な磁石特性
が得られなくなり、特に最大エネルギー積が低くなる。
軟質磁性相の割合は、磁石断面の透過型電子顕微鏡写真
を用いて、いわゆる面積分析法により求める。この場
合、断面積比が体積比となる。
よび軟質磁性相以外の相が含まれていてもよい。Zr
は、硬質磁性相であるTbCu7 型相のTbサイトに存
在するが、Fe3 Zr等の別の化合物を生成することも
可能である。しかし、Fe3 Zr相等の異相は永久磁石
として好ましくないので、Zrを含む異相は磁石中の5
体積%以下であることが好ましい。
〜7原子%である。Nの含有量は10〜20原子%、好
ましくは12〜18原子%、より好ましくは15原子%
超18原子%以下、さらに好ましくは15.5〜18原
子%である。Mの含有量は2〜10原子%、好ましくは
2.5〜5原子%である。そして、残部が実質的にTで
ある。
なる。一方、Rの含有量が多すぎるとbcc構造T相の
量が少なくなって磁石特性が低くなり、また、高価なR
を多量に使用することになるため、安価な磁石が得られ
なくなる。Sm以外のRとしては、Y、La、Ce、P
r、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、T
m、Yb、Lu等の1種以上を用いることができる。本
発明により製造される磁石の硬質磁性相はTbCu7 型
の結晶構造に窒素が侵入した構成であり、このような硬
質磁性相ではRがSmであるときに最も高い結晶磁気異
方性を示す。Smの比率が低いと結晶磁気異方性が低下
し保磁力も低下するため、R中のSm比率は50原子%
以上、好ましくは70原子%以上とする。
上昇、保磁力の向上、角形比の向上、飽和磁化の向上お
よび最大エネルギー積の向上が不十分となり、N含有量
が多すぎると、残留磁束密度が低下する傾向を示すと共
に角形比が低くなって最大エネルギー積も低くなる。N
含有量はガス分析法などにより測定することができる。
するために添加される。元素Mが含まれないと、合金製
造時に軟質磁性相の粗大な結晶粒が析出するため、最終
的に軟質磁性相の平均結晶粒径が比較的小さくなったと
しても、高保磁力が得られなくなる。Mの含有量が少な
すぎると、軟質磁性相の平均結晶粒径が小さい磁石が得
られにくくなる。一方、Mの含有量が多すぎると、飽和
磁化が低くなってしまう。Mは、Zrであるか、Zrの
一部をTi、V、Cr、Nb、Hf、Ta、Mo、W、
Al、CおよびPから選択される少なくとも1種の元素
で置換したものである。Zrを置換する元素としては、
Al、CおよびPの少なくとも1種が好ましく、特にA
lが好ましい。本発明においてZrを必須とするのは、
組織構造制御に特に有効であり、また、角形比向上に有
効だからである。また、Alは、急冷合金の窒化を容易
にする効果も示すため、Al添加により、窒化処理に要
する時間を短縮することができる。なお、磁石中のZr
含有量は、好ましくは2〜4.5原子%、より好ましく
は3〜4.5原子%である。これは、MとしてZrだけ
を用いる場合でも他の元素と併用する場合でも同様であ
る。Zr含有量が少ないと高保磁力と高角形比とが共に
は得られず、また、Zr含有量が多すぎると飽和磁化お
よび残留磁束密度が低くなってしまう。
る。Tは、Feであるか、あるいはFeおよびCoであ
る。Coの添加は特性を向上させるが、T中のCoの比
率は50原子%以下であることが好ましい。Coの比率
が50原子%を超えると残留磁束密度が低くなってしま
う。
酸素が含まれていてもよい。磁石は希土類−遷移金属間
化合物を基本とすることから、取り扱いの際や各工程に
おける処理の際に不可避的に酸化が生じ得る。例えば、
急冷や粉砕、後述する組織構造制御のための熱処理など
をAr雰囲気中で行った場合、雰囲気Ar中の1ppm程
度の酸素は不可避であり、その結果、磁石中には酸素が
2000ppm 程度以下含まれる。また、不可避的不純物
として、有機物由来の炭素が500ppm 程度以下含まれ
る。また、空気中の水分と磁石との反応により生成する
水酸化物に由来するHが100ppm 程度以下含まれる。
また、坩堝材質からのAl、Si、Mgなどが5000
ppm 程度以下含まれる。
あるTbCu7 型結晶相の最大ピークの強度をIH 、軟
質磁性相の最大ピークの強度をIS としたとき、IS /
IH は、好ましくは0.4〜2.0、より好ましくは
0.7〜1.8である。IS /IH が0.4〜2.0で
あれば高い角形比を示し、IS /IH が0.7〜1.8
であればさらに高い角形比が得られる。IS /IH が小
さすぎても大きすぎても、最大エネルギー積が低くなる
傾向となる。
合金を単ロール法により製造し、この急冷合金に組織構
造制御のための熱処理を施した後、窒化処理を施して磁
石化する。
ール周面に衝突させることにより、合金溶湯を急速に冷
却し、薄帯状の急冷合金を得る。単ロール法は、他の液
体急冷法に比べ、量産性が高く、急冷条件の再現性が良
好である。冷却ロールの材質は特に限定されないが、通
常、CuまたはCu合金を用いることが好ましい。
s 以上、より好ましくは60m/s 以上である。ロール周
速をこのように高くすることにより、(R+M)/(R
+T+M)を上記のように大きくすることができる。ま
た、急冷合金がアモルファス相を含む微結晶状態となる
ため、その後の熱処理により任意の結晶粒径が実現可能
となり、窒化も容易となる。また、薄帯状急冷合金が薄
くなるため、より均質な急冷合金が得られる。したがっ
て、高保磁力、高残留磁束密度、高角形比、高最大エネ
ルギー積の磁石が得られる。なお、ロール周速は、通
常、120m/s 以下とすることが好ましい。ロール周速
が速すぎると、合金溶湯とロール周面との密着性が悪く
なって熱移動が効果的に行なわれなくなる。このため、
実効冷却速度が遅くなってしまう。
薄帯状急冷合金の厚さをt(μm )としたとき、t×V
sは、好ましくは800〜1300、より好ましくは8
50〜1200である。t×Vsが小さすぎる場合、急
冷合金を安定して製造することが困難であり、特性のば
らつきが生じてしまう。一方、t×Vsが大きすぎる薄
帯状急冷合金では、冷却ロールの周速度に見合った十分
な冷却速度を得ることが困難であるため、保磁力および
角形比の良好な磁石を製造することが困難となる。
細結晶およびアモルファス相を含む複合組織であり、b
cc構造T相を含んでいてもよい。bcc構造T相は、
X線回折による同相のピークの存在や、熱分析において
α−Fe相のキュリー点に相当する温度で生じる磁化の
消滅により、その存在を確認できる。
急冷合金のTbCu7 型結晶相の最大ピークの半値幅
は、好ましくは0.95°以上、より好ましくは1.0
5°以上である。この半値幅が狭すぎると、硬質磁性相
中におけるR+Mの比率が低くなりすぎ、本発明の効果
が実現しない。この半値幅が広いことは結晶性の低さを
意味するため、本発明にとっては好ましい。しかし、熱
処理による結晶化の際には種結晶が必要であるため、半
値幅があまりに広いと、すなわち、結晶性があまりに低
いと好ましくない。このような理由から、上記半値幅
は、好ましくは1.50°以下である。
の熱処理は、所定の平均結晶粒径を有するbcc構造T
相を析出させるためのものである。この熱処理における
処理温度は、好ましくは600〜800℃、より好まし
くは650〜775℃であり、処理時間は処理温度にも
よるが、通常、10分間〜4時間程度とする。この熱処
理は、Ar、He等の不活性雰囲気中や真空中で行なう
ことが好ましい。この熱処理により、微細なbcc構造
T相が析出し、また、TbCu7型結晶相がさらに析出
することもある。熱処理温度が低すぎるとbcc構造T
相の析出量が不十分となり、熱処理温度が高すぎると、
MとTとが例えばFe3 Zrのような化合物を生成し、
特性低下の原因となる。
4以下、より好ましくは0.25以下、さらに好ましく
は、0.15以下である。上記したように、IH はTb
Cu 7 型結晶相の最大ピークの強度であり、IS は軟質
磁性相の最大ピークの強度である。このように、急冷直
後のIS /IH を小さくし、熱処理によりIS /IHを
増大させる、すなわち熱処理によりbcc構造T相の析
出を促す構成とすることにより、微細なbcc構造T相
を組織中に分散させることが容易となり、高い磁石特性
が容易に実現する。
15号公報に記載されている歪み取りのための独立した
熱処理工程を設ける必要はない。逆に、同公報に記載さ
れているように400℃程度の歪み取り熱処理を施した
場合には、上記したTbCu 7 型結晶相の最大ピークの
半値幅が小さくなって好ましくない。具体的には、この
ような歪み取り熱処理を施すことにより、硬質磁性相で
あるTbCu7 型結晶の(R+M)/(R+T+M)が
12.5%以下となってしまう。このため、高保磁力お
よび高角形比が得られなくなる。
に、急冷合金をいったん冷却する。熱処理終了後の冷却
過程では、降温速度を10℃/分以上、好ましくは20
℃/分以上、さらに好ましくは30℃/分以上、最も好
ましくは50℃/分以上として、急速に冷却する。この
冷却は、合金の温度がその結晶化温度以下まで下がるま
で行えばよいが、好ましくは合金温度が400℃以下と
なるまで上記速度で冷却する。このような速度で冷却す
ることにより、合金中における希土類−鉄の1−7相と
α−Fe相との存在比を安定させることができ、その結
果、Hk/HcJの揃った磁石粒子からなる磁石粉末を得
ることができる。
く、室温より高い温度までしか冷却せずに、続いて窒化
処理を施してもよい。いずれの場合でも、合金の結晶化
温度以下、好ましくは400℃以下までの冷却速度を、
上記範囲内の値とすればよい。室温より高い温度までし
か冷却しない場合に、冷却温度(冷却終了時の到達温
度)を400℃超とすると、窒化が発熱反応であるため
に窒化処理温度が高くなりすぎてしまい、生成した窒化
物が分解してしまうことがある。この点から、冷却温度
は、窒化処理における処理温度(安定温度)よりも50
℃以上低い温度とすることが好ましい。
で一様に冷却することが重要である。そのための方法は
特に限定されないが、例えば以下に説明する方法を利用
することが好ましい。
一般的なロータリーキルンは、金属製の筒状体である炉
芯管(レトルト)の周囲にヒータを配置した構造であ
る。炉芯管の内部に合金粉末を入れ、炉芯管を回転させ
ながらヒータで加熱すれば、均一に熱処理を施すことが
できる。そして、熱処理後、炉芯管を回転させながら、
その内部に冷却ガスを吹き込めば、均一な冷却が可能で
ある。この場合の冷却ガスとしては、非酸化性のガス、
例えばArガスが好ましい。また、このほか、熱処理終
了後にヒータを移動させて炉芯管表面を露出させ、炉芯
管を回転させながらその表面に冷却ガスを吹き付けるこ
とによっても、均一な冷却が可能である。この場合の冷
却ガスには、空気を利用することができる。また、この
方法の変形例として、炉芯管に冷却用筒状体を連結して
おき、熱処理終了後、両者を傾けるなどして合金粉末を
冷却用筒状体の内部に移動させ、この冷却用筒状体を回
転させながらその表面に冷却ガスを吹き付ける方法を利
用してもよい。この方法では、ヒータを移動させる必要
がない。
施す。窒化処理では、窒素ガス雰囲気中で急冷合金に熱
処理を施す。この処理により、TbCu7 型結晶中に窒
素原子が侵入して侵入型の固溶体が形成され、硬質磁性
相となる。窒化処理の際の処理温度は、好ましくは35
0〜700℃、より好ましくは350〜600℃であ
り、処理時間は、好ましくは0.1〜300時間であ
る。窒素ガスの圧力は、0.1気圧程度以上とすること
が好ましい。なお、窒化処理に高圧窒素ガスを用いた
り、窒素ガス+水素ガスを用いたり、アンモニアガスを
用いたりすることもできる。
ッド磁石等の磁石製品に適用する場合には、所定の粒径
にまで粉砕して磁石粒子とする。粉砕工程は、急冷後、
組織構造制御のための熱処理後、窒化処理後のいずれに
設けてもよく、粉砕工程を複数段に分けて設けてもよ
い。
子の平均粒子径は、通常、10μm以上とすることが好
ましいが、十分な耐酸化性を得るためには、平均粒子径
を好ましくは30μm 以上、より好ましくは50μm 以
上、さらに好ましくは70μm 以上とすることがよい。
また、この程度の粒子径とすることにより、高密度のボ
ンディッド磁石とすることができる。平均粒子径の上限
は特にないが、通常、1000μm 程度以下であり、好
ましくは250μm 以下である。なお、この場合の平均
粒子径とは、篩別により求められた重量平均粒子径D50
を意味する。重量平均粒子径D50は、径の小さな粒子か
ら重量を加算していって、その合計重量が全粒子の合計
重量の50%となったときの粒子径である。
製される。本発明により製造される磁石は、プレス成形
を用いるコンプレッションボンディッド磁石、射出成形
を用いるインジェクションボンディッド磁石、押し出し
成形により製造するボンディッド磁石、加圧ローラを利
用して製造するボンディッド磁石など、各種ボンディッ
ド磁石のいずれにも適用することができる。また、いわ
ゆるゴム磁石にも適用できる。バインダとしては、各種
樹脂を用いることが好ましいが、金属バインダを用いて
メタルボンディッド磁石とすることもできる。樹脂バイ
ンダの種類は特に限定されず、エポキシ樹脂やナイロン
等の各種熱硬化性樹脂や各種熱可塑性樹脂から目的に応
じて適宜選択すればよい。金属バインダの種類も特に限
定されない。また、磁石粒子に対するバインダの含有比
率や成形時の圧力等の各種条件にも特に制限はなく、通
常の範囲から適当に選択すればよい。ただし、結晶粒の
粗大化を防ぐために、高温の熱処理が必要な方法は避け
ることが好ましい。
し、各インゴットを小片に砕いた。合金の組成は、S
m:7.6原子%、Co:4.0原子%、Zr:3.5
原子%、Fe:残部とした。得られた小片を石英ノズル
に入れて高周波誘導加熱により溶解して合金溶湯とし、
単ロール法により急冷して、薄帯状の急冷合金とした。
冷却ロールにはBe−Cuロールを用い、合金溶湯の吐
出圧力を0.6kgf/cm2 とし、冷却ロールの周速度を7
5m/sとした。X線回折および透過型電子顕微鏡による
観察の結果、急冷合金は、TbCu7 型結晶相とbcc
構造α−Fe相とを含む多結晶複合組織であり、さらに
アモルファス相も含むものであることが確認された。各
急冷合金におけるTbCu7 型結晶の最大ピークの半値
幅は、0.95〜1.20°であった。
織構造制御のための熱処理を施した。熱処理は、Ar雰
囲気中において725℃で1時間行ない、その後、30
0℃まで表1に示す速度で冷却した。熱処理後にX線
(Cu−Kα線)回折および透過型電子顕微鏡による観
察を行なったところ、TbCu7 型結晶相とbcc構造
α−Fe相とを含む多結晶複合組織となっており、アモ
ルファス相は実質的に消失していた。
m径以下の粒子を選別し、1気圧の窒素ガス気流中で4
20℃にて20時間窒化処理を施し、磁石粉末とした。
よる部分組成分析(TEM−EDX)によりα−Fe相
の平均結晶粒径および磁石粉末中のα−Fe相の比率を
求めたところ、いずれの粉末においても平均結晶粒径は
20〜35nmの範囲にあり、α−Fe相の比率は12〜
20体積%の範囲にあった。また、各磁石粉末におい
て、主相であるTbCu7 型結晶相の平均結晶粒径は、
約10〜100nmであった。また、各磁石粉末の組成
は、Sm:6.5原子%、Co:3.4原子%、Zr:
3.0原子%、N :14原子%、Fe:残部であっ
た。また、各磁石粉末の残留磁束密度(Br)は8.0
〜8.3kG、、保磁力(HcJ)は8.0〜8.5kOe、
角形比(Hk/HcJ)は20.0〜24.5%の範囲内
にあった。
47号公報に記載された磁気選別装置を用いて磁気分級
し、各磁石粉末における磁石粒子の磁気特性ばらつきを
調べた。
された磁気選別装置を、図1に示す。この磁気選別装置
は、円筒状のスリーブ21を有し、スリーブ21内周面
の内側に、磁界印加手段として円錐台状磁石31を有す
る。この円錐台状磁石31は円錐台状部分を有する基体
の側面に2枚のゴム磁石311,312が巻回されたも
のである。これらのゴム磁石は細長い帯状であり、一方
の主面がN極、他方の主面がS極となるように着磁され
ている。そして、ゴム磁石311ではN極が、ゴム磁石
312ではS極がそれぞれ表側となるように基体側面に
螺旋状に巻回されており、異極が隣接する構成となって
いる。円錐台状磁石31は、円錐台状部分がスリーブ2
1とほぼ同軸となるように設けられている。スリーブ2
1および円錐台状磁石31はそれぞれ図示しない駆動装
置に連結されており、互いに逆方向に回転する構成とな
っている。
下記のようにして行う。スリーブ21および円錐台状磁
石31をそれぞれ回転させておき、スリーブ21表面の
頂部付近に磁性粉末を適当量連続的に供給する。スリー
ブ表面に磁性粉末が供給される位置は、スリーブ表面に
おいて最も磁界強度の高い側の端部(図中左側の端部)
付近とするのが一般的である。スリーブ21表面では、
ゴム磁石311とゴム磁石312との境界に対応すると
ころで磁界の極性が反転している。このため、円錐台状
磁石31がスリーブ21に対し相対的に回転することに
より、スリーブ表面に存在する磁性粒子に対し極性反転
部が移動することになる。このときの移動方向は、ゴム
磁石311とゴム磁石312との境界にほぼ垂直な方向
である。極性反転部が移動するため、粉末中の磁性粒子
は回転移動し、磁性粉末は薄層化される。スリーブ21
表面の磁界強度は極性反転部の進行方向(図中左側)に
向かって漸増しているため、磁性粒子の回転移動に伴な
って磁性粒子に印加される磁界の強度は漸減する。
いた方向に移動し、また、スリーブ21は回転している
ため、スリーブ21表面に磁着している磁性粒子はスリ
ーブの下側表面を通過することになるが、磁性粒子の磁
化率が高く磁着力が重力を上回っていれば磁性粒子は落
下せず、非磁性粒子や磁化率の低い磁性粒子は落下す
る。磁性粒子が図中右側方向に移動するにしたがって磁
界が減少するため磁着力が減少し、当初は落下しなかっ
た磁性粒子も落下するようになる。すなわち、磁性粒子
個々の初期磁化曲線に対応して落下する位置が決定され
る。したがって、図示のトレイ1〜6のように、スリー
ブ21の軸方向に粒子回収用のトレイなどを並べおけ
ば、磁気特性の揃った粒子を選別して回収することがで
きる。
左端から8cmの位置(磁界強度80G)までで回収され
た磁石粉末、すなわち、低特性粉末の、全体に対する重
量比を求めた。結果を表1に示す。
すなわち、熱処理終了後の冷却速度を本発明範囲内に設
定して製造した磁石粉末では、低特性粉末の存在比率が
低く、したがって、磁気特性のばらつきが少ないことが
わかる。
Claims (2)
- 【請求項1】 R(Rは希土類元素の1種以上であり、
R中のSm比率は50原子%以上である)、T(TはF
e、またはFeおよびCoである)、NおよびM(M
は、Zrであるか、Zrの一部をTi、V、Cr、N
b、Hf、Ta、Mo、W、Al、CおよびPから選択
される少なくとも1種の元素で置換したものである)を
含有し、Rを4〜8原子%、Nを10〜20原子%、M
を2〜10原子%含有し、残部が実質的にTであり、硬
質磁性相と軟質磁性相とを有し、硬質磁性相が、R、T
およびNを主体とし、TbCu7 型結晶相を含み、軟質
磁性相が、bcc構造のT相からなり、軟質磁性相の平
均結晶粒径が5〜60nmであり、軟質磁性相の割合が1
0〜60体積%である磁石を製造する方法であって、 ノズルから合金溶湯を吐出して冷却ロール周面に衝突さ
せることにより急冷する単ロール法を用いて、TbCu
7 型結晶相とアモルファス相とを含む薄帯状の急冷合金
を得る急冷工程と、真空中または不活性ガス雰囲気中に
おいて前記急冷合金に結晶化のための熱処理を施す熱処
理工程と、熱処理後の急冷合金に窒化処理を施す窒化工
程とを有し、 前記熱処理工程において、熱処理終了後に前記急冷合金
を冷却する際に、400℃以下の温度までの冷却速度を
10℃/分以上とする磁石の製造方法。 - 【請求項2】 前記熱処理工程において、熱処理終了後
に前記急冷合金を冷却する際に、前記窒化処理工程にお
ける処理温度よりも50℃以上低い温度まで冷却する請
求項1の磁石の製造方法。
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-
1999
- 1999-03-31 JP JP09320199A patent/JP4274448B2/ja not_active Expired - Fee Related
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