JP2011168003A - パターン製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基板密着性とモールド剥離性に優れたパターン製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、(A)基板またはモールド上に同時または逐次に組成の異なる少なくとも2種の硬化性組成物であって、重合性単量体と重合開始剤を含む硬化性組成物を適用し、硬化性組成物層を形成する工程、(B)モールドまたは基板を硬化性組成物層に接触させ、基板とモールドの間に硬化性組成物層をサンドイッチする工程、(C)硬化性組成物層を硬化する工程、(D)モールドを硬化後の硬化性組成物層から剥離する工程を該順に有する微細パターン製造方法において、基板に隣接する層を構成する硬化性組成物の平均硬化性官能基当量(Meq1)がモールドに隣接する層を構成する硬化性組成物の平均硬化性官能基当量(Meq2)よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、微細パターン製造方法に関する。好ましくは、表面に微細な凹凸を有する、光学レンズシート、レンズアレイ、プリズムシート、散乱シート、反射防止シート、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材等の製造方法に関するものである。
さらに、本発明は、該微細パターン製造方法によって製造された微細パターン付き基板、該微細パターン付き基板を含む光源装置および画像表示装置に関する。
ナノインプリント法は、光ディスク製作ではよく知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、樹脂にプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造等の微細構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
インプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱インプリント法と、光硬化性組成物を用いる光インプリント法の2通りの技術が提案されている。熱インプリント法の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。この方法は多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。
一方、透明モールドや透明基板を通して光を照射し、光インプリント用硬化性組成物を光硬化させる光インプリント法では、モールドのプレス時に転写される材料を加熱する必要がなく室温でのインプリントが可能になる。光インプリント法では、熱インプリント法に比べ、使用できる材料の範囲が広く、製造装置の負荷も小さいとともに、微細なパターンへの追従性も高い。
インプリント法、特に、ナノインプリント法により良好なパターンを形成するためには、モールドパターンを高精度に形成することが必要である。また、それに加えて、モールドとインプリント用硬化性組成物との離型性(剥離性)が重要である。ここで、マスクと感光性組成物とが接触しないフォトリソグラフィ法に対し、インプリント法においてはモールドとインプリント用硬化性組成物とが接触する。モールド剥離時にモールドにインプリント用組成物の残渣が付着すると以降のプリント時にパターン欠陥となってしまう。
従来ナノインプリント用硬化性組成物に求められるこれら性能を満たすために、硬化性モノマーの構造や混合組成調節の検討が行われてきたが、必ずしも十分な自由度を持って硬化性組成物の設計ができるものではなかった。例えば、ハードコート層と基材の密着性を改良するために、分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量の高いビニル重合体高分子を用いることが提案されている。
特開2007−261253号公報
上記特許文献1に記載のハードコート層形成用の硬化性組成物は、本発明者の検討によれば、該硬化性組成物は基板との密着性改良効果を有するが、インプリント用組成物へ用いるには高粘度すぎ、パターン形成性が不十分だったり、モールドへの密着性が高くなりすぎて離型性に問題を生ずることが分かった。
さらに、近年、特に、モールドのパターンが細かく(例えば、1nm〜10μmの領域)なっており、モールドを大面積にしたりするなどの検討が進むと、剥離性の悪化が顕著になる傾向がある。
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、パターン精度に優れ、かつ、基板密着性とモールド剥離性に優れたパターン製造方法を提供することを目的とする。更には力学特性などの永久膜特性に優れた微細パターン製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、基板との密着性を向上させるには、組成物中の硬化性官能基当量が高い方が好ましいことが分かった。しかしながら、このような組成物は、モールドからの離型性に劣る。そこで、本発明者が鋭意検討を行った結果、2層以上の硬化性組成物を用い、基板に隣接する側とモールドに隣接する側で、硬化性組成物中の硬化性官能基当量の含量を変えることにより、基板との密着性およびモールドとの離型性という相反する課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下の手段により上記課題を解決した。
(1)少なくとも、
(A)基板またはモールド上に同時または逐次に組成の異なる少なくとも2種の硬化性組成物であって、重合性単量体と重合開始剤を含む硬化性組成物を適用し、硬化性組成物層を形成する工程、
(B)モールドまたは基板を硬化性組成物層に接触させ、基板とモールドの間に硬化性組成物層をサンドイッチする工程、
(C)硬化性組成物層を硬化する工程、
(D)モールドを硬化後の硬化性組成物層から剥離する工程
を該順に有する微細パターン製造方法において、
基板に隣接する層を構成する硬化性組成物の平均硬化性官能基当量(Meq1)がモールドに隣接する層を構成する硬化性組成物の平均硬化性官能基当量(Meq2)よりも大きいことを特徴とするパターン製造方法。
(2)前記(A)において、基板またはモールド上に3種以上の硬化性組成物を適用することを特徴とする、(1)に記載のパターン製造方法。
(3)前記パターンが、1nm〜10mmの凹凸間のピッチ、凹部の幅、または、凸部の高さを有する(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)前記(A)において、少なくとも2種の硬化性組成物を、基板またはモールド上に、同時に塗布することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のパターン製造方法において、基板に隣接する層を構成する硬化性組成物中のカチオン重合性単量体含有率(K1)がモールドに隣接する層を構成するカチオン重合性単量体含有率(K2)よりも大きいことを特徴とする、パターン製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のパターン製造方法において、基板に隣接する層を構成する硬化性組成物が基板を膨潤または溶解する有機溶剤を含有し、かつ、基板に隣接する層の硬化性組成物中の有機溶剤含有率(Y1)がモールドに隣接する層を構成する硬化性組成物の有機溶剤含有率(Y2)よりも大きいことを特徴とするパターン製造方法。
(7)前記基板に隣接する層を構成する硬化性組成物中の有機溶剤の含有量が硬化性組成物の溶剤を除く成分の1〜200質量%である、(6)に記載のパターン製造方法。
(8)硬化性組成物の少なくとも1種が離型剤を含有し、該離型剤が含シリコーン系化合物、含フッ素系化合物、含シリコーンかつ含フッ素系化合物、または直鎖脂肪族系アルキル系離型剤から選ばれる少なくとも1種である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
(9)モールドが無機材料であり、基板が樹脂材料である(1)〜(8)のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
(10)前記(C)において、硬化性組成物が光照射により硬化開始される、(1)〜(9)のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
(11)前記(D)の後に更に、硬化性組成物層の硬化をさらに進める工程を有する、(1)〜(10)のいずれか1項に記載のパターン製造方法
(12)前記硬化性組成物の主成分が(メタ)アクリレートである、(1)〜(11)のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
(13)前記硬化性組成物における溶剤の含有量が5質量%以下である、(1)〜(5)、(8)〜(12)のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
(14)少なくとも、
(A)基板またはモールド上に同時または逐次に組成の異なる少なくとも2種の硬化性組成物であって、重合性単量体と重合開始剤を含む硬化性組成物を適用し、硬化性組成物層を形成する工程、
(B)モールドまたは基板を硬化性組成物層に接触させ、基板とモールドの間に硬化性組成物層をサンドイッチする工程、
(C)硬化性組成物層を硬化する工程、
(D)モールドを硬化後の硬化性組成物層から剥離する工程、
を該順に有する微細パターン製造方法において、
基板に隣接する層を構成するの硬化性組成物中の可塑剤含有率(P1)がモールドに隣接する層を構成する硬化性組成物の可塑剤含有率(P2)よりも大きいことを特徴とする、パターン製造方法。
(15)(1)〜(14)のいずれか1項に記載のパターン製造方法を用いて形成された微細パターン付き基板。
(16)基板上にモールドのパターンが写し取られて形成された硬化性組成物からなる層を硬化してなる微細パターン付き基板において、硬化後の硬化性組成物からなる層中で基板に垂直方向に可塑剤の含有率に分布を有する微細パターン付き基板。
(17)前記微細パターン付き基板が複製されたモールドパターンである(15)または(16)の微細パターン付き基板。
(18)(15)または(16)に記載の微細パターン付き基板を有する光学部材。
(19)(15)または(16)に記載の微細パターン付き基板または(18)に記載の光学部材を含む光源装置または画像表示装置。
パターン精度、基板密着およびモールド剥離性に優れ、力学特性などの永久膜特性に優れる微細パターンが製造できる。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、本明細書において、“(メタ)アクリレート”は“アクリレート”および“メタクリレート”を表す。本発明における重合性単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“重合性基”は重合に関与する基をいう。
なお、本発明でいう“インプリント”は、好ましくは、1nm〜10mmのサイズの微細パターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm〜100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。
[パターン形成方法]
以下に、本発明のパターン製造方法について説明する。本発明のパターン転写はそのサイズは特に定めるものではないが、例えば、1nm〜10mmの凹凸間のピッチ、凹部の幅、または、凸部の高さを有するパターン転写に適用でき、さらには、10nm〜100μmの凹凸間のピッチ、凹部の幅、または、凸部の高さを有するパターン転写に適用でき、特には、50nm〜10μmの凹凸間のピッチ、凹部の幅、または、凸部の高さを有するパターン転写に適用できる。
本発明のパターン製造方法は、少なくとも、
(A)基板またはモールド上に同時または逐次に組成の異なる少なくとも2種の硬化性組成物であって、重合性単量体と重合開始剤を含む硬化性組成物を適用し、硬化性組成物層を形成する工程、
(B)モールドまたは基板を硬化性組成物層に接触させ、基板とモールドの間に硬化性組成物層をサンドイッチする工程、
(C)硬化性組成物層を硬化する工程、
(D)モールドを硬化後の硬化性組成物層から剥離する工程
を該順に有する微細パターン製造方法において、
基板に隣接する層を構成する硬化性組成物の平均硬化性官能基当量(Meq1)がモールドに隣接する層を構成する硬化性組成物の平均硬化性官能基当量(Meq2)よりも大きいことを特徴とする。
本発明のパターン形成方法においては、基板またはモールド上に同時または逐次に組成の異なる少なくとも2種の硬化性組成物を適用し、硬化性組成物層を形成する工程を含む。本発明において、層数は2層以上であれば特に制限はないが、好ましくは3層以上であり、上限値としては、15層以下が好ましく、10層以下がより好ましい。この範囲内であれば、インプリントやナノインプリントに必要な密着性と剥離性を両立でき、装置の設計も容易である。
本発明における硬化性組成物は、基板またはモールド上に同時に適用しても良いし、逐次に適用してもよいが、好ましくは同時に適用する場合である。また、硬化性組成物を適用する方法は公知の方法を採用できるが、塗布が好ましい。これらの詳細については後述する。
本発明の(A)工程において、最も単純な製造方法は、2種の組成の異なる硬化性組成物を積層する方法である。2種の組成物を積層する場合には、モールドからの離型性と基板との密着性の両立の観点から、基板との密着性に優れる硬化性組成物の基板側への局在化が好ましい。更には、基板との密着性に優れる硬化性組成物はモールドと接する界面には存在しないことが好ましい。
3種以上の硬化性組成物を積層する場合には、前記2種の硬化性組成物の間の中間層に、目的に応じて任意の硬化性組成物を用いることができる。これら層には、永久膜特性(力学特性等)に優れる組成物、紫外線吸収剤、屈折率調節剤、光散乱剤、着色剤、可塑剤、導電性化合物、酸化防止剤、光学異方性材料などの成分を含有させることができる。
本発明において、同時または逐次に積層される少なくとも2種の硬化性組成物の厚みは、2層積層の場合は、モールド側層/基板側層の比率として、1/300〜300/1が好ましく、1/100〜100/1がより好ましく、1/50〜50/1がさらに好ましく、1/20〜20/1が特に好ましい。比率をこの範囲にすることで、塗布面状に優れ、剥離性と密着性を両立できる。
また、硬化性組成物からなる層の合計厚みは、必要なパターンに応じて任意に設定できるが、好ましくは100nm〜200μmであり、更に好ましくは200nm〜100μmであり、特に好ましくは1μm〜30μmである。また、モールドパターンの凹凸差の最大値に対して、硬化性組成物からなる層の合計厚みは、50%〜1000%が好ましく、100%〜500%がさらに好ましい。この範囲にすることで、パターンの転写精度に優れ、剥離性と密着性を両立できる。
本発明において膜厚とは、基板またはモールドの主平面上に凹凸がないと仮定した場合の面積をSとし、面積Sの領域に塗設された硬化性組成物の塗設量をLとした場合に、L/Sによって算出される値いう。
次に、本発明に用いることのできる硬化性組成物について説明する。
本発明に用いることのできる硬化性組成物(以下「本発明の組成物」ということがある)は、(a)重合性単量体および(b)重合開始剤、必要に応じて(c)可塑剤等を有する硬化性組成物であって、該組成物の粘度は、3〜1000mPa・sのものを用いることができ、3〜300mPa・sのものが好ましい。パターン形成の精度向上、モールド剥離性の向上、の点からは低粘度の組成物が好ましい。また、インプリント時の硬化性組成物層が3μmを超えるような厚い場合には、高い粘度が好ましい。本発明においては、モールドパターンの表面の形状や凹凸の頻度、硬化後の微細パターンに求められる物理的性質(弾性率等)などを考慮して、必要な粘度になるように、粘度や官能基数の異なる重合性単量体を混合して用いることが好ましい。
本発明に用いることができる硬化性組成物は、各種重合性単量体や可塑剤を混合して用いることができ、以下に述べる積層形態をとることが好ましい。
本発明では、平均硬化性官能基当量(Meq)の異なる少なくとも2種の組成物を適用する。ここで、硬化性官能基当量とは、(重合性単量体の1分子中における官能基の数)/(重合性単量体の分子量)で表されるものをいう。平均硬化性官能基当量は、複数の重合性単量体を含む場合には、それぞれの重合性単量体の硬化性官能基当量を質量で加重平均した値をいう。例えば、AとBの2種類の重合性単量体をa:b(重量比)で含む場合、(Aの硬化性官能基当量)×(a/a+b)+(Bの硬化性官能基当量)×(b/a+b)となる。本発明では、基板に隣接する層を構成する硬化性組成物のMeq1がモールドに隣接する層を構成する硬化性組成物のMeq2よりも大きい。このような構成とすることにより、基板との密着性及びモールドからの離型性という相反する技術を同時に達成できる。
材料選択に制限は無いが、硬化性官能基当量(Meq)を調節する好ましい方法としては、相溶性の点からは以下が好ましい。
例えば、トリオール誘導体から合成されるトリ(メタ)アクリレート類を例に説明すると、トリオールの分子量を変えることで、硬化性官能基当量(Meq)を変えることができる。別の方法としては、連結基として変性基を導入することにより、硬化性官能基当量(Meq)を変えることができる。変性基としてはEO変性、PO変性、カプロラクトン変性などが好ましい。
これら、硬化性モノマーが共通の構成成分から誘導されて合成された構造のもの同士は相溶性が高く、同一硬化性組成物中でもよく混和し、隣接層に用いた場合でも層界面でのはじき等の故障が少なく好ましい。また、同様に共通の構成成分から、不飽和二重結合を導入する際の連結基の構造をエステルからウレタン等のように変更しても、硬化性官能基当量(Meq)を変えることができ、同様の効果が得られる。また、硬化性官能基当量(Meq)の異なるモノマーを2種以上混合することにより、硬化性官能基当量(Meq)を細かく調節することができ好ましい。好ましい混合形態としては、硬化性組成物中で硬化性官能基当量(Meq)の小さいモノマーを基準として、該モノマーに対して硬化性官能基当量(Meq)の大きいモノマーを150質量%以下の割合で混合するものであり、更に好ましくは100質量%以下、最も好ましくは3質量%〜60質量%の割合で混合する形態である。
本発明において、基材に隣接する層を構成する硬化性組成物のMeq1とモールドに隣接する層のMeq2との関係は、[Meq1/Meq2]の比率として、1.01〜4.0が好ましく、1.03〜2.5がより好ましく、1.05〜1.5がさらに好ましい。また、モールド側のMeq2の絶対値としては、85〜200が好ましく、更に好ましくは90〜180である。この範囲にすることで基板に対する密着性、硬化膜全体の弾性率向上、モールドとの離型性が満足できる。
本発明では、さらに、基板に隣接する層を構成する硬化性組成物中のカチオン重合性単量体含有率(K1)がモールドに隣接する層を構成するカチオン重合性単量体含有率(K2)よりも大きいことが好ましい。
基板に隣接する層を構成する硬化性組成物に少なくとも1種のカチオン重合性単量体を含有することで、基板との密着性が改良でき、(K1)>(K2)であることでモールドからの離型性に優れるので好ましい。(K1)は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、20〜90質量%がさらに好ましい。(K2)は、0〜90質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましく、0〜10質量%がさらに好ましい。この範囲にすることで、基板近傍の硬化膜の柔軟性及び密着性が良好であり、かつ積層する隣接層との密着性が良好となる傾向にある。
基板との密着性に加えて、硬化層全体の弾性率を高めるという点からは、基板に隣接する層の、硬化性組成物からなる層の合計厚みに対する厚みは、1〜50%が好ましく、2〜40%がより好ましく、5〜35%がさらに好ましい。
また、本発明では、基板に隣接する層を構成する硬化性組成物に有機溶剤を含有させることも好ましい。この場合の有機溶剤は、基板を膨潤または溶解するものである。この有機溶剤の作用により、基板と硬化性組成物との密着力が強くなり、基板密着の改良と同時にモールド離型性を改良することができる。この態様においては、基板に有機溶剤を含有する硬化性組成物層を塗設後、溶剤を蒸発させたのち、その上に別の硬化性組成物層を積層することもできるし、同時塗布により基板に隣接する層に有機溶剤を含む層を積層し、溶剤蒸発前に硬化させることもできる。また、この態様において、基板に隣接する層に単官能のモノマーを用いると、有機溶剤の作用を借りてモノマーが基板に浸透しやすくなり、界面結合を強化することが容易である。
基板に隣接する層を構成する硬化性組成物に含ませる有機溶剤の量は、該層の有機溶剤を除く硬化性組成物の質量に対して、1〜200質量%が好ましく、更に好ましくは2〜100%、最も好ましくは3〜50%である。この範囲にすることで、基板と硬化性組成物との密着力が強くなり、基板密着の改良と同時にモールド離型性を改良することができる。
本発明では、基板に隣接する層を構成する硬化性組成物中の可塑剤含有率(P1)がモールド側の層を構成する硬化性組成物の可塑剤含有率(P2)より大きい態様も好ましい。基板側に可塑剤を添加することで、硬化膜に柔軟性を付与することが可能となり、モールド剥離時の基板界面でのクラックの発生が回避できる。(P1)は、0.5〜40質量%が好ましく、1〜35質量%がより好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。(P2)は、0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%が更に好ましく、0〜5質量%が特に好ましい。
本発明における組成物は、さらに、基板に隣接する層を構成する硬化性組成物中の単官能モノマー含有率(M1)が基板に隣接する層を構成するモールド側の層の硬化性組成物の単官能モノマー含有率(M2)より大きいことが好ましい。(M1)は3〜30質量%が好ましく、更に好ましくは5〜25%である。単官能モノマーの使用により硬化収縮の抑制が可能となり、基材と硬化性組成物の界面に生ずるひずみが減少し、モールド剥離時の基板界面でのクラックの発生が回避できる。
上記いずれの態様においても、積層する硬化性組成物層の界面の安定性の点からは、基板に隣接する層とその隣接層の硬化性組成物は、共通の硬化性成分を10質量%以上含有することが好ましく、更に好ましくは30質量%以上、最も好ましくは40質量%以上95質量%未満である。
(a)重合性単量体
第1の態様は、硬化性組成物の粘度が20mPa・s以下の低粘度でパターン形成性を特に重視したブレンド形態であり、単官能重合性単量体と2官能重合性単量体を主として用いる。全重合性単量体中で、単官能重合性単量体と2官能重合性単量体の合計は80質量%以上が好ましい。単官能重合性単量体は10〜100質量%で使用することができ、10〜80質量%が好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。また、弾性率を重視するには2官能重合性単量体は好ましくは50質量%以上であり、70〜90質量%がさらに好ましい。
第2の態様は、硬化性組成物の粘度が6〜300mPa・s程度でパターン形成性と厚膜適性を重視したブレンド形態で、2官能〜6官能の重合性単量体を主として用いる。全重合性単量体中で、2官能〜6官能の重合性単量体の合計は80質量%が好ましい。中でも2官能〜4官能の重合性単量体の合計は30〜100質量%が好ましく、さらに好ましくは60〜90質量%である。さらに、本発明では、硬化性組成物中に含まれる重合性単量体のうち、2官能〜4官能の重合性単量体が60〜90質量%を占める態様において、更に単官能または5官能から6官能の重合性単量体を併用することが特に好ましい。この態様によれば、硬化性組成物の粘度や硬度の調節がしやすく、パターン形成性、厚膜適性、基板密着性などを付与することが容易である。
第3の態様は、硬化性組成物の粘度が90〜1000mPa・sの高粘度で弾性率と厚膜適性を重視したブレンド形態で、3官能以上の高粘度の重合性単量体を主成分として用いる。全重合性単量体中で、粘度が100mPa・s以上で3官能以上の重合性単量体の合計は50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは70〜95質量%である。また、3官能以上の重合性単量体と併用して、単官能重合性単量体を用いることが硬化収縮の低減の点で好ましく、全重合性単量体中3〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜20質量%である。
以下に、本発明で好ましく用いられる重合性単量体について具体的に説明する。
本発明で用いる重合性単量体は、重合性基を有するものが広く採用できる。重合性基の種類は、特に限定されないが、好ましくは、(メタ)アクリレート基、ビニル基またはエポキシ基であり、より好ましくは、(メタ)アクリレート基であり、さらに好ましくは、アクリレート基である。また、2つ以上の重合性基を有する重合性単量体は、それぞれの重合性基が同一であってもよいし、異なっていても良い。
本発明で用いる重合性単量体の分子量は、低粘度の組成物を構成するには、分子量1000以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明における硬化性組成物の粘度をより低く抑えることが可能になる。本発明で用いる重合性単量体の分子量の下限値は、特に定めるものではないが、通常は、100以上である。
以下に、本発明で用いられる重合性単量体の好ましい例を述べるが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでも無い。
重合性基を1つ有する重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を1つ有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)を挙げることができる。1官能の重合性不飽和単量体は組成物を低粘度にするのに適している。低粘度化の観点から、ビニル系化合物、(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。特に、N−ビニルピロリドン、ベンジルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメトキシプロピルアクリレート、エチルオキセタニルメチルアクリレートがより好ましい。透明性の観点からはベンジルアクリレートが好ましい。また、本発明で用いる重合性単量体として、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、p−メトキシスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
重合性基を2つ有する重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体を挙げることができる。2官能の重合性不飽和単量体は組成物を低粘度にするのに適している。本発明では、反応性に優れ、残存触媒などの問題の無い(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、アクリレートがより好ましい。
特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
重合性基を3つ以上有する重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体を挙げることができる。これら多官能の重合性不飽和単量体は機械的強度付与の点で優れる。本発明では、反応性に優れ、残存触媒などの問題の無い(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
具体的には、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が好適である。
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
また、モールドとの離型性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッソ原子を有する化合物も併用することができる。
本発明で用いる重合性単量体として、エポキシ基を有する化合物やオキシラン環を有する化合物も採用できる。エポキシ基やオキシラン環を有する化合物を、(メタ)アクリレート系化合物と組み合わせて使用することにより、弾性回復率が顕著に向上する傾向にある。
オキシラン環を有する化合物としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
好ましく使用することのできるエポキシ化合物としては、例えば、脂肪族環状エポキシ化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
これらの成分の中、脂肪族環状エポキシ化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
本発明で用いる重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を用いてもよい。
ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、特開2009−73078号公報の段落番号0057に記載のものを好ましく採用することができる。
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の硬化性組成物には、低粘度化、パターン精度向上、高硬度化の観点から特開2009−73078号公報に記載の反応性基を有するシルセスキオキサン化合物を用いることも可能である。また、モールド離型性と硬化膜強度に優れる材料として、国際公開特許WO2009/110496号公報に記載の同一分子内に(メタ)アクリレート基と不飽和2重結合を有するエステル基を有する化合物も用いることができる。
[可塑剤]
本発明で用いられる可塑剤は、光透過性基材に柔軟性を与え、寸法安定性を向上させ、耐湿性を向上させるために添加される成分である。
本発明においては、オクタノール/水分配係数(logP値)が0〜10である可塑剤が特に好ましく用いられる。化合物のlogP値が10以下であれば、硬化性組成物との相溶性が良好で、硬化膜の白濁や粉吹きなどの不具合を生じることがなく、またlogP値が0よりも大きければ、親水性が高くなりすぎることがないので形成された基板の耐水性を悪化させるなどの弊害が生じにくいので、上記範囲内のものを用いることが好ましい。logP値として、さらに好ましい範囲は1〜8であり、特に好ましい範囲は2〜7である。
オクタノール/水分配係数(logP値)の測定は、日本工業規格(JIS)Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール/水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen's fragmentation法[J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27巻21頁(1987)]、Viswanadhan's fragmentation法[J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29巻163頁(1989)]、Broto's fragmentation法[Eur.J.Med.Chem.-Chim.Theor.,19巻71頁(1984)]などが好ましく用いられるが、中でもCrippen's fragmentation法がより好ましい。ある化合物のlogPの値が、測定方法または計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen's fragmentation法により判断することが好ましい。
好ましく添加される可塑剤としては、上記の物性の範囲内にある分子量190〜5000程度の低分子〜オリゴマー化合物が挙げられ、例えばリン酸エステル、カルボン酸エステル、ポリオールエステル等が用いられる。好ましくはリン酸エステルである。
リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が含まれる。
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート等が挙げられる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
これらの好ましい可塑剤は、25℃においてTPP(融点約50℃)以外は液体であり、沸点も250℃以上である。
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。グリコール酸エステルの例としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなどがある。
また、特開平5−194788号公報、特開昭60−250053号公報、特開平4−227941号公報、特開平6−16869号公報、特開平5−271471号公報、特開平7−286068号公報、特開平5−5047号公報、特開平11−80381号公報、特開平7−20317号公報、特開平8−57879号公報、特開平10−152568号公報、特開平10−120824号公報の各公報などに記載されている可塑剤も好ましく用いられる。これらの公報によると可塑剤の例示だけでなくその利用方法あるいはその特性についての好ましい記載が多数あり、本発明においても好ましく用いられるものである。
その他の可塑剤としては、特開平11−124445号公報記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号公報記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号公報記載の置換フェニルリン酸エステル類、特開2003−165868号公報等記載の芳香環とシクロヘキサン環を含有するエステル化合物などが好ましく用いられる。
また、分子量1000〜10万の樹脂成分を有する高分子可塑剤も好ましく用いられる。例えば、特開2002−22956号公報に記載のポリエステルおよびまたはポリエーテル、特開平5−197073号公報に記載のポリエステルエーテル、ポリエステルウレタンまたはポリエステル、特開平2−292342号公報に記載のコポリエステルエーテル、特開2002−146044号公報等記載のエポキシ樹脂またはノボラック樹脂等が挙げられる。
これらの可塑剤は単独もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明における硬化性組成物は、調整時における水分量が好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調整時における水分量を5.0質量%以下とすることにより、本発明における硬化性組成物の保存性をより安定にすることができる。
また、本発明における硬化性組成物は、工程簡略化の観点からは、有機溶剤の含有量を少なくすることができる。有機溶剤を含まなければ、溶剤の揮発を目的としたベーキング工程が不要となるため、プロセス簡略化に有効となるなどのメリットが大きい。この観点では有機溶剤の含有量は、モールドと基板にサンドイッチされる全硬化性組成物中の有機溶剤を除く成分の質量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、実質的に含有しないことが特に好ましい。
一方、薄膜化の観点から、基板を膨潤又は溶解する観点から、また、塗布性を付与する観点から、有機溶剤を添加することもできる。有機溶剤で希釈することで粘度の調整が可能となり、薄膜塗布が容易になるという利点がある。
前記有機溶剤としては、例えば、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンなどが好ましい。また、基板を膨潤または溶解する観点からは、酢酸エチルやメチルエチルケトンが好ましい。
(b)重合開始剤
本発明における硬化性組成物は、光および/または熱の作用によりラジカル、酸または塩基を発生させる重合開始剤を含有する。これがトリガーとなり硬化反応を進行させる。なかでも、硬化材料の選択の自由度が高いこと、硬化反応に必要な時間が短いこと、製造装置が小型化できること、等の点から、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤を含有することが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号等)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
これらの重合開始剤は単独でも混合して用いても良い。
「最新UV硬化技術」、(株)技術情報協会、1991年、p.159、および、「紫外線硬化システム」 加藤清視著、平成元年、総合技術センター発行、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。また、本発明で使用される光重合開始剤の具体的化合物の例としては、特開2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,127,184,500,819,907,369,379,1173,1870,2959,4265,4263など)、BASF社製の重合開始剤(Lucirin TPO、TPO−1、LR8893、LR8970、UCB社製重合開始剤(ユベクリルP36)およびそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
また、本発明においては、光酸発生剤、光増感剤や熱開始剤を用いることもできる。これら重合開始剤、増感剤の具体例については、特開2007−298974号公報の段落0190〜0219に記載されている。本発明で用いる光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。このようにすることで感度が向上し、露光時間を短縮できる。
本発明における硬化性組成物中の重合開始剤は、全組成物中、例えば0.1〜15質量%含有し、好ましくは0.2〜12質量%であり、さらに好ましくは0.3〜10質量%である。2種類以上の重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。重合開始剤の割合を0.1質量%以上とすることにより、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
(c)離型剤
本発明における硬化性組成物のうち、少なくとも、モールドに隣接する層に用いられる組成物は、離型剤を含むことが好ましい。離型剤を使用することで、硬化性組成物の塗膜面状が改良され、パターン精度が向上する傾向にある。本発明に用いられる離型剤を、モールドに隣接する層に用いられる組成物は、例えば、0.01〜10質量%含有し、好ましくは0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは、1〜8質量%である。2種類以上の離型剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。一方、基板に隣接する層に用いられる組成物は、離型剤を、好ましくは4質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは、0.1質量%以下の割合で含み、全く含まないことが最も好ましい。中間層に用いられる組成物については離型剤を、好ましくは4質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは、0.1質量%以下の割合で含み、全く含まないことも好ましい。 尚、上記含量は、組成物中の溶剤を除く成分に対する含量である。
離型剤は、含シリコーン系離型剤、含フッ素系離型剤、含シリコーンかつ含フッ素系離型剤および直鎖脂肪族系アルキル系離型剤から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、含シリコーン系離型剤、含フッ素系離型剤および含シリコーンかつ含フッ素系離型剤から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、含シリコーン系離型剤および含シリコーンかつ含フッ素系離型剤から選ばれる少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
このような界面活性剤を用いることにより、塗布均一性を大幅に改良でき、ダイコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
含シリコーン系化合物としては、HLBが6〜11のものを用いることが好ましい。ここで、HLBとは、オイルの親水性・疎水性バランスを数値的に示したもので、value of hydrophile and liophile balanceの略称である。相溶性の観点から、上記範囲が定められる。具体的には、メーカーカタログ等に記載がある。
HLBの値により好ましい使用量が異なり、HLB値が6〜8.5の場合には、硬化性組成物中0.5〜3.0重量%、好ましくは、0.7〜2.0重量%含み、HLBが8.5を超え〜11である場合には2.0〜5.0質量%、好ましくは、2.5〜4.0重量%含む。
前記含シリコーン化合物としては未変性または変性のものが用いられる。好ましくはポリシロキサンの側鎖および/または末端を変性した変性シリコーンオイルが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、(メタ)アクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。重合性単量体との相溶性の観点からは、(メタ)アクリル変性シリコーンオイルやポリエーテル変性シリコーンオイルが特に好ましい。
一つのポリシロキサン分子に前記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。特に、組成物中に配合される他の塗膜形成成分に対して反応性がある反応性シリコーンオイルを用いる場合には、本発明における硬化性組成物を硬化した硬化膜中に化学結合よって固定されるので、当該硬化膜の密着性阻害、汚染、劣化等の問題が起き難い。特に、蒸着工程での蒸着層との密着性向上には有効である。また、(メタ)アクリロイル変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等の、光硬化性を有する官能基で変性されたシリコーンの場合は、本発明における硬化性組成物と架橋するため、硬化後の特性に優れる。
本発明の離型剤として用いることのできる含フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば−CF2CF3、−CH2(CF24H、−CH2(CF28CF3、−CH2CH2(CF24H等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF32、CH2CF(CF32、CH(CH3)CF2CF3、CH(CH3)(CF25CF2H等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCH2OCH2CF2CF3、CH2CH2OCH248H、CH2CH2OCH2CH 2817、CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
前記含フッ素化合物としては、硬化型の官能基を含有することが好ましい。組成物中に配合される他の塗膜形成成分に対して反応性がある反応性含フッ素系化合物を用いる場合には、本発明における硬化性組成物を硬化した硬化膜中に化学結合よって固定されるので、当該硬化膜の密着性阻害、汚染、劣化等の問題が起き難い。硬化型の官能基に特に制限はないが、水酸基、シラノール基、グリシジル基、オキセタニル基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基などが挙げられる。なかでも水酸基、シラノール基、エポキシ基、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基など好ましく、特に好ましくは、メタアクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基である。
含フッ素系化合物は、さらに硬化性組成物との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。含フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素原子含有化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素原子含有化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300 (以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、これら化合物の具体例は、特開2007−108726号公報の段落番号0136〜0141、特開2007−114772号公報の段落番号0129〜0152、特開2007−272197号公報の段落番号0039〜0058に記載されている。
本発明で用いるフッ素系離型剤例としては、商品名フロラードFC−430、FC−431(住友スリーエム社製)、商品名サーフロン「S−382」(旭硝子社製)、EFTOP「EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100」(トーケムプロダクツ社製)、商品名PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA社)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18(いずれも(株)ネオス社製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451(いずれもダイキン工業(株)社製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、780F(いずれもDIC社製)が挙げられる。また、好ましい硬化性基含有含フッ素系化合物の例としては商品名R−2020、M−2020、R−3833、M−3833(ダイキン化学工業(株)製)、商品名メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300 (大日本インキ(株)製)などが挙げられる。
シリコーン系離型剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂社製)、メガファックペインタッド31(DIC社製)、KP−341(信越化学工業社製)、などが挙げられる。
また、ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、SF8427、SH3749、FZ−77、L−7002、SH8400、SH3773M、FZ−2208(以上、東レダウコーニング社製)、KF−352A、KF−353、KF−615A、KF−6012(以上、信越シリコーン社製)、などが挙げられる。
また、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物の例としては、信越化学(株)製、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−164B、X22−164C、X−22−1821や、チッソ(株)製、FM−0725、FM−7725、FM6621、FM−1121、サイラプレーンFM0275、サイラプレーンFM0721やGelest製DMS−U22、RMS−033、RMS−083、UMS−182、DMS−H21、DMS−H31、HMS−301、FMS121、FMS123、FMS131、FMS141、FMS221などが挙げられる。
本発明で用いる、フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも信越化学工業社製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
(d)密着改良剤
本発明で用いる組成物には、凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性、強度、或いは、基材との密着性を高めるために、密着改良剤として有機金属カップリング剤を配合してもよい。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。前記有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。なかでもシランカップリング剤が密着改良性及び経時安定性の点で好ましい。
密着改良剤は、本発明で用いる硬化性組成物の固形分全量中に0.001〜10質量%の割合で任意に配合できる。密着改良剤の割合を0.001質量%以上とすることにより、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与の向上についてより効果的な傾向にある。一方、密着改良剤の割合を10質量%以下とすることにより、組成物の安定性、成膜性の欠損を抑止できる傾向にあり好ましい。
また、密着改良剤として、ベンズイミダゾール類やポリベンズイミダゾール類、低級ヒドロキシアルキル置換ピリジン誘導体、含窒素複素環化合物、ウレアまたはチオウレア、有機リン化合物、8−オキシキノリン、4−ヒドロキシプテリジン、1,10−フェナントロリン、2,2‘−ビピリジン誘導体、ベンゾトリアゾール類、有機リン化合物とフェニレンジアミン化合物、2−アミノ−1−フェニルエタノール、N−フェニルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンおよび誘導体、ベンゾチアゾール誘導体などを使用することができる。
(e)酸化防止剤
さらに、本発明における硬化性組成物には、公知の酸化防止剤を含めることができる。酸化防止剤を含むことにより、透明性を向上させることができる。本発明に用いられる酸化防止剤は、溶剤を除く全組成物中、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜5質量%がより好ましく、1.0〜5質量%がもっとも好ましい。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
酸化防止剤は、熱や光照射による変退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる酸化を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止できる、または分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中では、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少防止の観点で好ましい。
なお、本発明における透過率は以下のような方法で評価することができる。本発明における硬化性組成物をガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せずに露光し、その後オーブンで230℃、40分間加熱して硬化させた膜の波長400〜410nmにおける透過率を測定し、算術平均する。別途膜厚も測定し、1μmあたりの透過率を計算する。
透過率は、90%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましく、99%以上が特に好ましい。
[その他の成分]
本発明における硬化性組成物には前記成分の他に必要に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、着色剤、エラストマー粒子、屈折率調節剤、無機酸化物ナノ微粒子、光散乱性粒子、熱可塑性樹脂、光酸発生剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
これらは、特開2009−73078号公報等の記載を参酌することができる。
本発明における硬化性組成物は、一般によく知られた適用方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、同時または逐次に硬化性組成物層を積層することにより形成することができる。本発明では、同時重層による積層が好ましい。同時重層塗布することにより、隣接する層に対してレベリング作用を有し面状が良化する傾向にある。また、逐次塗布に比べて、一度に塗布する塗布量を多くすることができ、面状故障を減少させることができる。さらに、隣接する層間の密着性が向上する傾向にある。これら方法のなかでも塗布膜厚の均一性、同時重層塗布のしやすさからダイコートコート法またはスリットスキャン法が好ましく、ダイコート法が特に好ましい。
同時に2層以上の層を積層できる塗布の装置については、特開2004−50535号公報、特開2007−121426号公報、特開2003−164788号公報等に記載のものを用いることが好ましい。
本発明における硬化性組成物を塗布又はモールド上に塗布された本発明における硬化性組成物をモールドとともにサンドイッチするための基板の材料は、無機材料、樹脂、または樹脂中に無機材料を含むものから選択することが好ましい。無機材料としては、金属(Ni、Cu、Cr、Fe、Au、Agなど)、金属酸化物(ITO、SnO2、SiO2、ZnO2、Al23、及びこれらの複合酸化物、石英、ガラスなど)、金属窒化物(窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ガリウムなど)等が挙げられる。また、樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂及びこれらの共重合体や変性体など)等が挙げられる。硬化性組成物中に基板を膨潤または溶解する有機溶剤を含む場合には、基板の材料は樹脂であることが好ましい。
また基板の性能や用途としては、光学フィルム、位相差膜、蒸着膜、磁性膜、反射膜、反射防止膜、TFTアレイ基板、PDPの電極板、導電性基板、絶縁性基板であってもよい。また、これら例示の材料の上に有機及び又は無機の材料からなる層が形成されたものを基板として用いることもできる。基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
本発明における硬化性組成物を硬化させるための光としては特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外線、遠紫外線、可視線、赤外線等の光または放射線が挙げられる。光源の汎用性やエネルギー量などの観点から紫外線が特に好ましい。
次に、本発明の製造方法の(B)工程(モールドまたは基板を硬化性組成物層に接触させ、基板とモールドの間に硬化性組成物層をサンドイッチする工程)及び(C)工程について説明する。本発明における硬化性組成物を用いて光インプリントにより微細パターンを製造する際には、モールド材および/または基板の少なくとも一方は、光透過性の材料を選択する必要がある。本発明に適用される光インプリントの第1の方法においては、基板と光透過性モールドの間に硬化性組成物層をサンドイッチした後に光透過性モールドの裏面から光を照射し、インプリント用硬化性組成物を硬化させる。また、第2の方法においては、光透過性基板とモールドの間に硬化性組成物層をサンドイッチした後に光透過性基板の裏面から光を照射し、インプリント用硬化性組成物を硬化させる。第1と第2の方法を逐次または同時に行うこともできる。光照射は、モールドを付着させた状態で行うのが好ましく、モールド剥離後に更に光照射を行ってもよい。
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。モールドは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。また、基本となるモールドを転写して複製したモールドを用いることも可能である。
モールドは、無機材料、樹脂、または樹脂中に無機材料を含むものから選択することができる。特に硬化性組成物中に有機溶剤を含ませて、基板への密着性を改良する場合には、モールドには有機溶剤が浸透しないことが好ましく、モールドの材料は無機材料であることが好ましい。
反射防止性能を示す所謂モスアイを形成するためのモールドには、アルミニウムを陽極酸化することで得られる陽極酸化ポーラスアルミナを用いることが好ましい。陽極酸化ポーラスアルミナのモールドの製造法については、特開2003−43203号公報や特開2008−209867号公報に記載されている。モールドに用いることのできる材料としては、上記基板に用いることのできる材料として挙げたものを用いることができる。
本発明においてモールド側から光照射する際に用いられる光透過性モールド材は、光透過性の無機材料(ガラス、石英、石英ガラスなどの金属酸化物)、光透過性の有機樹脂(PMMA、ポリカーボネート樹脂など)、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの光透過性柔軟膜、光透過性光硬化膜等が例示される。
特に、繰り返し用いた場合の耐久性、形成精度、モールドの加工の容易性の観点から、モールドを形成する材料は、無機材料が好ましく、特に金属酸化物(ガラス、石英、アルミナ等)が好ましい。
本発明に使用できるモールドの形状は板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。本願の製造方法では、繰り返し使用時のモールド汚れが改善されるため、ロール状モールドを用いた連続製造に有効である。
また、一般にモールドの凹凸パターンが小さくなると、モールドと硬化性組成物の界面積が大きくなり、剥離しにくくなる。特に凹凸間のピッチが10μm以下、さらには5μm以下の場合、または凹凸のアスペクト比(凹の深さ/凹の幅または凸の高さ/凸の幅)が1以上の場合には、本願により密着性に優れる硬化性組成物の膜内分布を制御することで精度良く微細パターンを形成することができる。
本発明における硬化性組成物を用いてインプリントを行う場合、通常、モールドの圧力が10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。モールドの圧力は、モールド凹部にナノインプリント用硬化性組成物が充分行き渡るように調整する。
また、モールドを加圧する前に減圧状態にして、モールド加圧と露光を行うと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制に効果がある。この観点からは減圧状態にしてからモールドを加圧することが好ましい。本発明において、好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲で行われる。硬化に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害をさらに減少させるには、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を10%以下にすることもでき、5%以下が好ましく、1%以下にすることもできる。生産性の観点からは大気圧のまま加圧することが好ましい。プロセスの設計上都合の良い方を適宜選択できる。
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2以上であると、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生するのを防止できる。また。露光量が1000mJ/cm2以下であると組成物の分解による永久膜の劣化を抑制することができる。光照射は複数回に分けて行うこともできる。
また、本発明に適用される光インプリントにおいては、光照射の際の温度は、通常、室温で行われるが、反応性を制御するために温度を制御しながら光照射してもよい。温度は5〜120℃が好ましく、さらに好ましくは15℃〜80℃である。温度の制御は、基板および/またはモールドの温度を制御することにより行うことができる。
本発明における硬化性組成物が熱重合開始剤を含有する場合には、基板および/またはモールドの温度を上げることにより硬化を開始することができ、その温度は150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分が好ましく、15〜45分がより好ましい。
本発明においては、(D)工程において、ナノインプリント用硬化性組成物からモールドを剥離する。この際、モールド圧を除去しモールドを基板から離すだけで剥離できることが理想である。モールドを基板から離すだけで剥離できない場合には超音波による振動などで剥離を促進することができる。
本発明において、(D)工程の後に、さらに硬化性組成物の硬化を進める工程を加えることも好ましい。具体的には、微細パターン付き基板にさらに光照射を行ったり、加熱したりすることができる。ラジカル重合の場合には、上記のように低酸素雰囲気にすることで重合阻害を減少することができる。加熱によりさらに硬化させる工程(ポストベーク工程)を行うことが好ましい。光照射後に本発明における硬化性組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
密着性改良剤として用いられる有機金属化合物とモールドとの反応を抑制しつつ基板との反応を進めるという点では、ポストベーク工程を用いることが好ましい。
本発明の微細パターン付き基板は、光学レンズシート、レンズアレイ、プリズムシート、散乱シート、反射防止シート、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材などに用いることができる。また、これら部材を形成するためのモールドまたはモールドを作成するための中間的な鋳型として用いることができる。
本発明の微細パターン付き基板は、硬化後の硬化性組成物層中で、基板に垂直方向に組成の分布を有していることが好ましい。本発明の微細パターン付き基板の好ましい態様は、硬化後の硬化性組成物層中で基板に垂直方向に可塑剤の含有率に分布を有していることである。更には、硬化性組成物層を、基板に垂直方向に5分割したときの可塑剤の含有率を、基板側からモールド側にそれぞれD1〜D5としたときに、以下の関係を満たすことが好ましい。
(1)D1≧D2≧D3≧D4>D5
(2)[(D5+D4)/(D2+D1)] ≦0.80
(3)0≦[D5/D1)]≦0.5
更に好ましくは、
(1)D1≧D2≧D3≧D4>D5
(2)[(D5+D4)/(D2+D1)] ≦0.50
(3)0≦[D5/D1)]≦0.25
最も好ましくは、
(1)D1≧D2≧D3>D4>D5
(2)[(D5+D4)/(D2+D1)] ≦0.10
(3)0≦[D5/D1)]≦0.10
である。
上述の硬化性組成物層中の可塑剤の分布は、モールド剥離後の微細パターン付き基材の積層膜を分析することにより求めることができる。分析部分はパターン形状の特定部分に限定されるものではないが、基材と硬化性組成物層の表面が略平行な領域が0.1μm角以上ある領域を用いると容易に分析できる。これら化合物の分布の測定法は限定されるものではないが、硬化後の層の切片を作成し、TOF―SIMSで観察することが容易である。例えば以下のような条件で測定することができる。
・装置:Physical E1ectronics(PHI)社製 TRIFTII
・一次イオン:Ga+(15kV)
・アパーチャー:No.3(Ga+電流量:600pA相当)
・マッピング点数:256×256点
・検出する二次イオン質量:0〜1000amu[amu;atom massunit]
・積算時間:60分
本発明の微細パターン付き基板は、光学レンズシート、レンズアレイ、プリズムシート、散乱シート、反射防止シート、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材などに用いることができる。また、これら部材を形成するためのモールドまたはモールドを作成するための中間的な鋳型として用いることができる。
[表示装置]
本発明の表示装置としては既述の本発明における硬化性組成物を硬化してなる微細パターンを有するものであれば、特に限定するものではなく、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置などを言う。表示装置の定義や各表示装置の説明は例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。
本発明の表示装置のうち液晶表示装置が好ましい。液晶表示装置については例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。本発明はこれらのなかで特にカラーTFT方式の液晶表示装置に対して有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。さらに本発明はもちろんIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置にも適用できる。これらの方式については、例えば、「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページに記載されている。
液晶表示装置はカラーフィルタ、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角補償フィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムなどさまざまな部材から構成される。これらの部材については例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行 )」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉 (株)富士キメラ総研 2003年発行)」に記載されている。
本発明の液晶表示装置は、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、TN
(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、GH(Guest Host)のような様々な表示モードが採用できる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
[実施例1]
表1に示す各素材を混合し、十分に攪拌してインプリント用塗布組成物CS01〜CS11を調製した。
Figure 2011168003
表中で使用した化合物を以下に示す。
・DPGA:ジプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製)2官能、Meq=121
・TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(アロニックスM-309、東亜合成社製)3官能、Meq=98.7
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックスM-405、東亜合成社製)6官能、Meq=96.3
・EO変性TMPTA:EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(アロニックスM-360、東亜合成社製)3官能、Meq=186.7
・ビニル重合体1:重量平均分子量約19,000、Meq=483、特開2007−261253号公報合成例2のビニル重合体(不揮発分60%メチルエチルケトン溶液)
・エポキシ樹脂:3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロへキサンカルボキシレート(UVR-6110、ダウ・ケミカル社製)2官能、Meq=126
・オキセタン樹脂:ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT-221、東亜合成社製)2官能、Meq=107
・TPO−L:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(BASF社製)
・IRG−250:カチオン重合開始剤イルガキュアー250(チバスペシャルティーケミカルズ社製)
・ATBC:アセチルトリブチルシトレート(旭化成ファインケム製、ATBC)
・TOTM:トリメリット酸トリオクチル(ハイケム製、TOTM)
・X−22−160AS:シリコーン系離型剤(信越化学製)
表1の組成で調製した組成物を用いて以下の工程で塗膜を形成しインプリントを行った。
製造例1
インプリント用塗布組成物CS01とCS02を2層からなるダイコーターを用いてCS02がガラス基板側になるように同時にガラス基板上に塗布し、塗布基膜を作成した。この際CS02組成物の膜厚が3μm、CS01組成物の膜厚が7μmになるように突出量を調節した。塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯を光源とするナノインプリント装置にセットし、真空度10Torrに減圧した。次いでモールド加圧力0.8kNで、10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmの石英ガラスを材質とするフッ素系のシランカップリング剤で疎水化処理されたモールドを押し付けた。モールド表面から250mJ/cm2の条件で露光し基膜を硬化させた、硬化後、モールドを剥離し、試料No.101を作成した。
試料No.101の作成工程において、用いるインプリント用塗布組成物の組成及び構成を表2の様に変更した以外は試料No.101と同様にして、試料No.102〜113を作成した。尚、試料No.113は、下層を塗布した後にその上に上層1を塗布(逐次塗布)した。これらの試料を用いて、以下の評価を行った。
<パターン形成性>
硬化後の試料を用い、微細パターンの形状を干渉型表面解析装置(NewView 7300、Zygo社製)にて観察し、パターン形状を以下の基準により評価した。なお、原版との比較は、ライン部全幅の平均高さを50μmの長さに渡って測定し、隣接するスペース部の平均高さを50μmの長さに渡って測定し、それぞれの平均高さの差を原版の高さ(4.0μm)と比較することで行った。
A:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンと実質同一である(原版のパターンと3%未満の範囲)。
B:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状とほぼ同一である(原版のパターンと3%以上8%未満の範囲)。
C:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と若干異なる(原版のパターンと8%以上15%未満の範囲)。
D:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンと異なる(原版のパターンと15%以上25%未満の範囲)。
E:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンと大きく異なる(原版のパターンと25%以上異なる)。
<モールド離型性>
上記微細パターンの製造において、塗布基膜にモールドを密着させ露光した後モールドを剥離する際に、硬化した組成物とモールドの剥離挙動を観察し、以下のように評価した。
A:硬化した組成物とモールドが、抵抗なく剥離した。
B:硬化した組成物とモールドを剥離する際、抵抗があり、剥離音が聞こえた。
C:硬化した組成物とモールドを剥離する際、抵抗があり、超音波をかけると剥離できた。
D:硬化した組成物の一部がモールド側に付着する、あるいは、塗布基板からはがれてしまう。
E:硬化した組成物が半分以上モールド側に付着し、正常な剥離ができない。
<モールド汚れ>
上記微細パターンの製造において、全てのパターン形成工程を繰り返し行い、モールド表面を目視、および光学顕微鏡で観察し、モールド汚れを以下のように評価した。
A:20回繰り返し後にも、モールド表面に汚れは観察されない。
B:10回繰り返し後に、モールド表面にオイル状もしくは硬化物破片が観察された。
C:5回繰り返し後に、モールド表面にオイル状もしくは硬化物破片が観察された。
D:1回パターン形成後、硬化した組成物が部分的にモールドに付着した。
E:1回パターン形成後、硬化した組成物がモールドに付着してしまい、モールドのほぼ全面が汚れた。
<露光後基板密着>
上記微細パターンの製造において、塗布基膜にモールドを密着させ露光硬化後モールドから剥離した試料を用い、パターン表面に18mm幅の積水化学製の粘着テープ(品番252)を貼り付け、5回指で擦ったあと粘着テープを剥離し、硬化膜の様子を観察し、以下のように評価した。
A:硬化した組成物は全く剥がれなかった。
B:硬化した組成物の極一部(5%未満)が剥がれた。
C:硬化した組成物の一部(半分未満)が剥がれた。
D:硬化した組成物の半分以上が剥がれた。
E:硬化した組成物が全てテープに付着し、基板から剥がれた。
評価結果を表2に合わせて示す。
Figure 2011168003
上記表中、試料No.112は、モールド離型性が悪く原版のパターンが正常に転写されなかったため基板密着の評価を行わなかった。
表2の結果より、本発明に従えば、パターン精度、モールド剥離性と基板密着性に優れ、モールド汚れの少ない微細パターンの製造方法が提供できることが分かった。また、得られた微細パターン付き基板は、パターン精度に優れ、基板との密着性に優れることが分かった。
また、パターン形成後の試料No.110を更に80℃60%相対湿度下で60分硬化を進行させた試料を用いで基板密着を評価した結果、評価レベルがAまで改良された。
また、本発明の試料No.109を用い溝部の切片を本文に記載のTOF−SIMSで分析し、可塑剤の分布を測定した。その結果以下の分布を満たし、可塑剤が基板側に偏在していることが分かった。
(1)D1≧D2≧D3≧D4>D5
(2)[(D5+D4)/(D2+D1)] ≦0.50
(3)0≦[D5/D1)]≦0.25
上記表2の中でも、層の数を3層としたもの(試料No.102、113)は、2層のものに比べて、モールド汚れ及び露光後基板密着性に優れていた。他の組成でも同様の傾向が認められた。また、3層構成としなくても、カチオン重合性単量体含有率がモールド側の方が多い場合(試料No.111)、各種性能に優れたパターンが得られることが分かった。さらに、可塑剤の含有量を基板側の方を多くすることによっても(試料No.109、110)、各種性能に優れたパターンが得られることが分かった。
[実施例2]
市販の液晶表示装置を分解し、バックライトユニットからプリズムシートを取り出したところ、プリズムシートのピッチは15μmであった。プリズムシートの表面にフッ素系の表面処理を行い、プリズムシートの原版のモールド(P0)とした。
原版のモールド(P0)の上に、インプリント用塗布組成物CS05をダイコーターを用いて膜厚が10μmになるように塗布した。その後、更にこの上層にインプリント用塗布組成物CS06を、ダイコーターを用いて膜厚が3μmになるように塗布し塗布基膜を作成した。この塗布基膜にガラス板を接触させ、硬化性組成物をモールドとガラス基板でサンドイッチした。モールド表面から200mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて露光し基膜を硬化させ、その後更にガラス基板側から80mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて露光硬化させた後、モールドを剥離した。得られた微細パターンをオーブン中で230℃で30分間加熱することにより更に硬化を進行させ、プリズムシートの反転パターン(P1)を作成した。
このようにして得られた反転パターン(P1)をモールドとして以下の工程でプリズムシート(P2)をインプリント法で複製した。インプリント用塗布組成物CS02/CS05/CS11を3層からなるダイコーターを用いてCS02がPET基板(188μm厚フィルム)側になるように同時にPET基板上に塗布し、塗布基膜を作成した。この際に各々の膜厚がそれぞれ3μm/7μm/3μmになるように突出量を調節した。塗布基膜を真空度10Torrに減圧し、次いで上記のモールド(P1)を加圧力0.8kNで押し付けた。モールド表面から300mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて露光し基膜を硬化させ、その後更にPET基板側から100mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて露光硬化させた後、モールドを剥離し、プリズムシート(P2)を得た。
このようにして得られたプリズムシート(P2)は、原版のプリズムシート(P0)のパターンをよく再現していた。
得られたプリズムシート(P2)を、液晶表示装置のバックライトユニットに戻し、液晶表示装置を組み立てた。液晶表示装置は輝度とコントラストの点で初期性能をよく再現していた。
[実施例3]
表3に示す各素材を混合し、十分に攪拌してインプリント用塗布組成物CS31〜CS39を調製した。
Figure 2011168003
表中で使用した化合物を以下に示す。
・AEH:アクリル酸2エチルへキシル(日本触媒株式会社製)1官能、Meq=184
・PO変性TMPTA:PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(アロニックスM-310、東亜合成社製)3官能、Meq=156.7
・MEK:メチルエチルケトン
表3の組成で調製した組成物を用いて以下の工程で塗膜を形成しインプリントを行った。
溝深さが2μmでラインスペースパターン幅5μmのフッ素系のシランカップリング剤で疎水化処理された石英ガラスモールドの上に、インプリント用塗布組成物CS31とCS32を2層からなるダイコーターを用いてCS31がモールド側になるように同時に石英ガラスモールド上に塗布し、塗布基膜を作成した。この際CS32組成物の膜厚が2μm、CS31組成物の膜厚が6μmになるように突出量を調節した。この塗布基膜に80μm厚のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTAC-TD80U、富士フイルム(株)製)を接触させ、硬化性組成物をモールドとフィルム基板でサンドイッチした。モールド表面から300mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて露光し基膜を硬化させ、その後更にフィルム基板側から500mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて露光硬化させた後、モールドを剥離し、微細パターン301を作成した。硬化性組成物の種類と膜厚を表3のように変更する以外は微細パターン301と同様にして、微細パターン302〜309を作成した。これらの試料は実施例1に準じて評価を行った。評価結果を表4に示す。尚、表中の膜厚は、有機溶剤を含む塗布組成物を用いた場合には、有機溶剤を除いた成分のみの膜厚を表す。
Figure 2011168003
表4の結果より、本発明に従えば、パターン精度、モールド剥離性と基板密着性に優れ、モールド汚れの少ない微細パターンの製造方法が提供できることが分かる。
特に、モールドに有機溶剤の浸透しない無機系の材料(ガラス)を用い、かつ基板に有機溶剤で膨潤または溶解する樹脂基材を用いた場合に、基板側に有機溶剤を含有する塗布液を用いると基板密着に加え、パターン形成性やモールド離型性の改良効果を有していることが分かった。
[実施例4]
外径126mmのガラスロール原盤表面にレジスト膜を塗布し、露光現像ののちプラズマエッチングしその後フォトレジストを除去することにより、楕円錘の凹部を有する六方格子パターンの深さ約300nm、ピッチ約300nmのモスアイガラスロールマスタを形成した。該ガラスロールマスタはフッ素系のシランカップリング剤で疎水化処理を行った。
厚み100μm幅254mmのロール状に巻き取られたアクリルフィルムを光透過性基板とし、この基板上にインプリント用塗布組成物CS35/CS31/CS39を3層からなるダイコーターを用いてCS35が基板側になるように同時に塗布し、塗布基膜を作成した。この際に各々の膜厚がそれぞれ2μm/3μm/2μmになるように突出量を調節した。尚、有機溶剤を含む塗布組成物を用いた場合には、有機溶剤を除いた成分のみの膜厚を表す。
該塗布基膜は巻き取ることなく上記モスアイガラスロールマスタと圧着させながら密着させ、アクリル基板の裏面から500mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて露光し基膜を硬化させた。連続して基板を搬送しモールドから硬化後の基板を剥離することで、微細パターン付き基板を得た。このようにして得られた基板は、ガラスロールマスタのパターンが再現性よく転写され、優れた基板密着性を有している反射防止膜が形成されていることが確認された。また、剥離を20回繰り返した部分のガラスロール原盤にはモールド汚れは観察されなかった。
本発明の製造方法によれば、パターン精度に優れ、かつ基板密着性とモールド剥離性に優れた微細パターンをモールド汚れが少なく提供することが可能になる。
また、本発明の製造法により、パターン精度に優れ、かつ基板密着性に優れた微細パターン付き基板が提供できるため、複製されたモールド、光学部材、光源装置、又は画像表示装置を高精度及び高効率で提供できる。

Claims (19)

  1. 少なくとも、
    (A)基板またはモールド上に同時または逐次に組成の異なる少なくとも2種の硬化性組成物であって、重合性単量体と重合開始剤を含む硬化性組成物を適用し、硬化性組成物層を形成する工程、
    (B)モールドまたは基板を硬化性組成物層に接触させ、基板とモールドの間に硬化性組成物層をサンドイッチする工程、
    (C)硬化性組成物層を硬化する工程、
    (D)モールドを硬化後の硬化性組成物層から剥離する工程
    を該順に有する微細パターン製造方法において、
    基板に隣接する層を構成する硬化性組成物の平均硬化性官能基当量(Meq1)がモールドに隣接する層を構成する硬化性組成物の平均硬化性官能基当量(Meq2)よりも大きいことを特徴とするパターン製造方法。
  2. 前記(A)において、基板またはモールド上に3種以上の硬化性組成物を適用することを特徴とする、請求項1に記載のパターン製造方法。
  3. 前記パターンが、1nm〜10mmの凹凸間のピッチ、凹部の幅、または、凸部の高さを有する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記(A)において、少なくとも2種の硬化性組成物を、基板またはモールド上に、同時に塗布することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン製造方法において、基板に隣接する層を構成する硬化性組成物中のカチオン重合性単量体含有率(K1)がモールドに隣接する層を構成するカチオン重合性単量体含有率(K2)よりも大きいことを特徴とする、パターン製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン製造方法において、基板に隣接する層を構成する硬化性組成物が基板を膨潤または溶解する有機溶剤を含有し、かつ、基板に隣接する層の硬化性組成物中の有機溶剤含有率(Y1)がモールドに隣接する層を構成する硬化性組成物の有機溶剤含有率(Y2)よりも大きいことを特徴とするパターン製造方法。
  7. 前記基板に隣接する層を構成する硬化性組成物中の有機溶剤の含有量が硬化性組成物の溶剤を除く成分の1〜200質量%である、請求項6に記載のパターン製造方法。
  8. 硬化性組成物の少なくとも1種が離型剤を含有し、該離型剤が含シリコーン系化合物、含フッ素系化合物、含シリコーンかつ含フッ素系化合物、または直鎖脂肪族系アルキル系離型剤から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
  9. モールドが無機材料であり、基板が樹脂材料である請求項1〜8のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
  10. 前記(C)において、硬化性組成物が光照射により硬化開始される、請求項1〜9のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
  11. 前記(D)の後に更に、硬化性組成物層の硬化をさらに進める工程を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のパターン製造方法
  12. 前記硬化性組成物の主成分が(メタ)アクリレートである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
  13. 前記硬化性組成物における溶剤の含有量が5質量%以下である、請求項1〜5、8〜12のいずれか1項に記載のパターン製造方法。
  14. 少なくとも、
    (A)基板またはモールド上に同時または逐次に組成の異なる少なくとも2種の硬化性組成物であって、重合性単量体と重合開始剤を含む硬化性組成物を適用し、硬化性組成物層を形成する工程、
    (B)モールドまたは基板を硬化性組成物層に接触させ、基板とモールドの間に硬化性組成物層をサンドイッチする工程、
    (C)硬化性組成物層を硬化する工程、
    (D)モールドを硬化後の硬化性組成物層から剥離する工程、
    を該順に有する微細パターン製造方法において、
    基板に隣接する層を構成するの硬化性組成物中の可塑剤含有率(P1)がモールドに隣接する層を構成する硬化性組成物の可塑剤含有率(P2)よりも大きいことを特徴とする、パターン製造方法。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載のパターン製造方法を用いて形成された微細パターン付き基板。
  16. 基板上にモールドのパターンが写し取られて形成された硬化性組成物からなる層を硬化してなる微細パターン付き基板において、硬化後の硬化性組成物からなる層中で基板に垂直方向に可塑剤の含有率に分布を有する微細パターン付き基板。
  17. 前記微細パターン付き基板が複製されたモールドパターンである請求項15または16の微細パターン付き基板。
  18. 請求項15または16に記載の微細パターン付き基板を有する光学部材。
  19. 請求項15または16に記載の微細パターン付き基板または請求項18に記載の光学部材を含む光源装置または画像表示装置。
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