JP2011167319A - クッション材、及びクッション材の製造方法 - Google Patents

クッション材、及びクッション材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特に、車両用シートに使用されるクッション材において、弾力性、耐久性、通気性、防水性、難燃性、及び環境性等の要求を満たすクッション材を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を主成分とする弾性を有する三次元網状構造体10と、少なくともレギュラー繊維とメルト繊維とから構成され、三次元網状構造体10を包囲するように積層された綿状体20とを備えたクッション材であって、熱可塑性樹脂は、150℃以上の融点を有し、レギュラー繊維は熱可塑性樹脂の融点より高い融点を有するとともに、メルト繊維は熱可塑性樹脂の融点より低い融点を有し、三次元網状構造体10は、30〜100kg/mの密度を有するクッション材。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂を主成分とする弾性を有する三次元網状構造体と、少なくともレギュラー繊維とメルト繊維とから構成され、前記三次元網状構造体を包囲するように積層された綿状体とを備えたクッション材、及び当該クッション材の製造方法に関する。
椅子、ベッド、マット、床材等に使用されるクッション材には、用途に応じて種々の機能が求められる。特に、鉄道車両等の公共の乗物の椅子(シート)に使用されるクッション材は、毎日長時間使用されるという過酷な使用環境下であっても、弾力性、柔軟性、耐久性、通気性、防水性、難燃性等に優れていることが要求される。また、近年では環境や健康への配慮から、リサイクル容易性や人体への低刺激性等も重要な機能である。
鉄道用車両のシートに使用されるクッション材として、これまで、熱可塑性樹脂からなる三次元網状構造体と不織布とを積層して構成したものが開発されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
特許文献1に開示されるクッション材は車両の座席に使用されるものであり、熱可塑性弾性樹脂からなる線条がループを形成して互いの接触部の大部分が接合した三次元網状構造体と熱可塑性樹脂からなる繊維が接合した不織布との積層構造をなすクッション層を有している。このクッション材では、三次元網状構造体と不織布との積層面は接合されていない(同文献の請求項1を参照)。
特許文献2に開示されるクッション材も車両の座席に使用されるものであり、特許文献1と同様の三次元網状構造体と不織布との積層構造をなすクッション層を有している。このクッション材では、三次元構造体の少なくとも厚み方向に相対する二面の切断端が圧縮接合された構造を有する(同文献の請求項1を参照)。
一方、積層構造を有するクッション材を製造するに際しては、三次元網状構造体と不織布とを一体化するべく、通常、成形型に導入した三次元網状構造体及び不織布に対して熱処理が行われる(例えば、特許文献3を参照)。
特許文献3に開示される発泡体を含む繊維成形体(クッション材)の製造方法によれば、穴あき鋼板で制作した成形型の内部に接着剤を含有した繊維集積体と熱硬化性ウレタン接着剤を塗布した発泡体とを詰め込み、この成形型を加熱蒸気缶に入れることで成形型の内部に加熱蒸気を導入している。この場合、加熱蒸気はクッション材の内部にまで浸透し、これによりクッション材は全体に亘って熱硬化する(同文献の第0035段落〜第0040段落を参照)。
特開2001−61605号公報 特開2003−260278号公報 特開2008−23954号公報
背景技術の項目で述べたように、特に鉄道車両等のシートに用いられるクッション材には、高機能・高品質・高信頼性が望まれている。この点、特許文献1や特許文献2のクッション材は、熱可塑性樹脂からなる三次元網状構造体と不織布とを積層して構成したものであるから、綿を単純に固めただけの古典的なシートクッションよりも種々の特性に優れており、車両用シートとしての要求をある程度満たすものと考えられる。
ところが、ユーザー(乗客)のニーズは年々高度になっており、例えば、在来線の車両用シートであっても、より快適な乗り心地のシートが好まれる傾向がある。また、近年のエコロジー志向や健康志向から、環境負荷の大きい素材や人体への刺激が強い物質を含有する製品は避けられる傾向がある。このような観点から見ると、特許文献1や特許文献2のクッション材にあっては、改良や改善の余地はまだかなり残されている。
ところで、車両用シートのクッション材として、上記の特許文献1及び特許文献2を含め、近年、様々な素材を利用する試みがなされている。しかしながら、新素材の中には従来の製造方法をそのまま適用することが困難なものもある。例えば、ポリエステル系エラストマーを主成分とする三次元網状構造体をクッション材の一部に使用する場合、ポリエステル系エラストマーの融点として150〜200℃程度のものが多く使用されるが、この三次元網状構造体に対して、例えば、特許文献3のように加熱蒸気を直接内部に通過させる方式(いわゆるエアスルー方式)を適用すると、ポリエステル系エラストマーが比較的長時間高温に晒されるため熱収縮を起こし、その結果、クッション材のクッション性が損なわれるおそれがある。
このように、現状においては、近年のユーザー(乗客)の厳しいニーズに十分に応え得るクッション材は未だ開発されていない。そして、そのようなクッション材を試作品レベルではなく、工業的に製造する技術もまだ十分に確立されていない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、特に、車両用シートに使用されるクッション材において、弾力性、柔軟性、耐久性、通気性、防水性、難燃性、及び環境性等の要求を満たすクッション材を提供すること、並びにそのようなクッション材の工業的な製造技術を確立することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係るクッション材の特徴構成は、
熱可塑性樹脂を主成分とする弾性を有する三次元網状構造体と、
少なくともレギュラー繊維とメルト繊維とから構成され、前記三次元網状構造体を包囲するように積層された綿状体と、
を備えたクッション材であって、
前記熱可塑性樹脂は、150℃以上の融点を有し、
前記レギュラー繊維は前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点を有するとともに、前記メルト繊維は前記熱可塑性樹脂の融点より低い融点を有し、
前記三次元網状構造体は、30〜100kg/mの密度を有することにある。
熱可塑性樹脂を主成分とする弾性を有する三次元網状構造体をクッション材の材料として使用する場合、当該三次元網状構造体の構造を損なうことなくクッション材を構成することが必要となる。そのためには、三次元網状構造体の主成分である熱可塑性樹脂の融点と、当該三次元網状構造体を包囲するように積層する綿状体の構成成分(レギュラー繊維及びメルト繊維)の融点との関係が重要となる。
本構成のクッション材であれば、熱可塑性樹脂の融点を150℃以上としている。さらに、綿状体を構成するレギュラー繊維の融点を熱可塑性樹脂の融点より高く、且つメルト繊維の融点を熱可塑性樹脂の融点より低く設定している。各素材の融点をこのような温度関係とすることにより、三次元網状構造体は、良好な弾力性、柔軟性、耐久性、通気性等を示す30〜100kg/mの密度を維持したまま(すなわち、熱収縮することなく)、綿状体に包囲された状態でクッション材の中央部に確実に存在することができる。その結果、特に車両用シートにおいて好適なクッション材を実現することができる。
本発明に係るクッション材において、
前記三次元網状構造体は、リン系難燃剤を含まずに構成されていることが好ましい。
本構成のクッション材であれば、三次元網状構造体は、リン系難燃剤を含まずに構成されているため、従来のクッション材に特有の鼻につく臭いを低減することができる。また、三次元網状構造体は綿状体で包囲されているが、綿状体は元々ある程度の難燃性を有しているので、三次元網状構造体に敢えてリン系難燃剤を含めなくても、クッション材全体として十分な難燃性を実現することができる。
本発明に係るクッション材において、
前記三次元網状構造体は天地面及び側面を備え、前記側面に積層される綿状体は前記天地面に積層される綿状体よりも大きい硬度を有することが好ましい。
本構成のクッション材であれば、三次元網状構造体は天地面及び側面を備え、側面に積層される綿状体は天地面に積層される綿状体よりも大きい硬度を有しているので、車両用シートとして臀部を確実にサポートしつつ、良好な座り心地を実現することができる。
本発明に係るクッション材において、
前記綿状体の表面が布帛又は不織布で被覆されていることが好ましい。
本構成のクッション材であれば、綿状体の表面が布帛又は不織布で被覆されているので、綿状体が過剰に解れたり、擦れたりすることが防止され、結果として静音性が向上する。また、布帛又は不織布に面ファスナー等の留め具を引っ掛けることができるので、クッション材にカバー等を容易に且つ確実に装着することができる。
上記課題を解決するための本発明に係るクッション材の製造方法の特徴構成は、
熱可塑性樹脂を主成分とする弾性を有する三次元網状構造体と、
少なくともレギュラー繊維とメルト繊維とから構成され、前記三次元網状構造体を包囲するように積層された綿状体と、
を備えたクッション材の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂は、150℃以上の融点を有し、
前記レギュラー繊維は前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点を有するとともに、前記メルト繊維は前記熱可塑性樹脂の融点より低い融点を有し、
前記三次元網状構造体は、30〜100kg/mの密度を有し、
成形型に前記三次元網状構造体及び綿状体を導入する型入工程と、
前記成形型を密封状態で加熱する加熱工程と、
前記成形型から成形品を取り出す型出工程と、
を包含し、
前記加熱工程は、前記成形型を外部から加熱する熱伝導方式により実行されることにある。
本構成のクッション材の製造方法であれば、上述したクッション材と同様に、熱可塑性樹脂の融点を150℃以上とし、さらに、綿状体を構成するレギュラー繊維の融点を熱可塑性樹脂の融点より高く、且つメルト繊維の融点を熱可塑性樹脂の融点より低く設定しているので、三次元網状構造体は、良好な弾力性、柔軟性、耐久性、通気性等を示す30〜100kg/mの密度を維持したまま(すなわち、熱収縮することなく)、綿状体に包囲された状態でクッション材の中央部に確実に存在することができる。その結果、特に車両用シートにおいて好適なクッション材を提供することができる。
また、三次元網状構造体及び綿状体を導入した成形型を密封状態で加熱する加熱工程では、成形型を外部から加熱する熱伝導方式を採用しているので、三次元網状構造体が長時間高温に晒されることがない。また、三次元網状構造体の中心部にまで熱が伝わることもない。従って、三次元網状構造体は従来のエアスルー方式では発生し得る熱収縮を起こさずに、確実に三次元網状構造を維持することができる。
本発明に係るクッション材の製造方法において、
前記加熱工程は、110〜160℃の加熱温度で実行されることが好ましい。
本構成のクッション材の製造方法であれば、加熱工程を、110〜160℃の加熱温度で実行することにより、綿状体に包囲された状態で三次元網状構造が良好に維持されたクッション材を製造することができる。
本発明に係るクッション材の製造方法において、
前記加熱工程は、10〜30分の加熱時間で実行されることが好ましい。
本構成のクッション材の製造方法であれば、加熱工程を、10〜30分の加熱時間で実行することにより、綿状体に包囲された状態で三次元網状構造が良好に維持されたクッション材を製造することができる。
本発明に係るクッション材の製造方法において、
前記型入工程において、前記成形型に導入される前記三次元網状構造体及び前記綿状体は、それらの体積和が前記成形型の内部容積より大きくなるように構成されていることが好ましい。
本構成のクッション材の製造方法であれば、型入工程において、成形型に導入される三次元網状構造体及び綿状体は、それらの体積和が成形型の内部容積より大きくなるように構成されているので、加熱工程後に成形型から取り出されたクッション材中では三次元網状構造体が周囲の綿状体に対して突っ張った状態となっている。その結果、三次元網状構造体が多少の内部応力を有した状態のクッション材が得られ、これにより良好なクッション性を発揮することができる。
本発明のクッション材を使用した車両用シートの断面図 熱伝導方式により加熱した場合におけるクッション材中の各部の温度変化を示すグラフ 実施例1によるクッション材の断面写真 比較例1によるクッション材の断面写真 復元試験におけるヒステリシスカーブを示すグラフ
本発明のクッション材、及びクッション材の製造方法に関する実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図せず、それらと均等な構成も含む。また、本明細書では、クッション材を特に車両用シートに適用した例について説明するが、クッション材の用途はこれに限定されず、種々の場面において適用可能である。
〔クッション材〕
図1は、本発明のクッション材50を使用した車両用シート100の断面図である。この図では、車両用シート100の座部として本発明のクッション材50が使用されている。クッション材50は、主要な構成要素として、三次元網状構造体10、及び綿状体20を備えている。
三次元網状構造体10は、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂材料で構成され、ブレスエア(登録商標)として市販されている。三次元網状構造体10を構成する熱可塑性樹脂には、例えば、ソフトセグメントとして分子量300〜5000のポリエーテル系グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコールまたは長鎖の炭化水素末端をカルボン酸または水酸基にしたオレフィン系化合物等をブロック共重合したポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は、再溶融により再生が可能であるため、リサイクルが容易である。
ポリエステル系エラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレンジオールをソフトセグメントとするポリエステルエーテルブロック共重合体、または脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体が例示できる。
ポリエステルエーテルブロック共重合体のより具体的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2,6ジカルボン酸、ナフタレン2,7ジカルボン酸、ジフェニル4,4´ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、琥珀酸、アジピン酸、セバチン酸ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1シクロヘキサンジメタノール、1,4シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドープロピレンオキシド共重合体からなるグリコール等のポリアルキレンジオールのうち少なくとも1種から構成される三元ブロック共重合体である。
ポリエステルエステルブロック共重合体としては、上記ジカルボン酸とジオール及び平均分子量が約300〜5000のポリラクトン等のポリエステルジオールのうち少なくとも各1種から構成される三元ブロック共重合体である。熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、ジカルボン酸としてはテレフタル酸及び/又はナフタレン2,6ジカルボン酸、ジオール成分としては1,4ブタンジオール、ポリアルキレンジオールとしてはポリテトラメチレングリコールの3元ブロック共重合体、ポリエステルジオールとしてはポリラクトンの3元ブロック共重合体が特に好ましい。特殊な例では、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものも使うことができる。また、上記エラストマーに非エラストマー成分をブレンドしたもの、共重合したもの、ポリオレフィン系成分をソフトセグメントにしたもの等も熱可塑性樹脂に包含される。
ポリアミド系エラストマーとしては、ハードセグメントにナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等及びそれらの共重合ナイロンを骨格とし、ソフトセグメントには、平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドープロピレンオキシド共重合体からなるグリコール等のポリアルキレンジオールのうち少なくとも1種から構成されるブロック共重合体を単独または2種類以上混合して用いてもよい。更には、非エラストマー成分をブレンドしたもの、共重合したもの等も本発明に使用できる。
ポリウレタン系エラストマーとしては、通常の溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)の存在または不存在下に、(A)数平均分子量1000〜6000の末端に水酸基を有するポリエステル及び/又はポリエーテルと(B)有機ジイソシアネートを主成分とするポリイソシアネートを反応させた両末端がイソシアネート基であるプレポリマーに、(C)ジアミンを主成分とするポリアミンにより鎖延長したポリウレタンエラストマーを代表例として例示できる。(A)のポリエステル、ポリエーテルとしては、平均分子量が1000〜6000、好ましくは1300〜5000のポリブチレンアジペート共重合ポリエステルやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコール等のポリアルキレンジオールが好ましく、(B)のポリイソシアネートとしては、従来公知のポリイソシアネートを用いることができ、ジフェニルメタン4,4´ジイソシアネートを主体としたイソシアネートを用い、必要に応じ従来公知のトリイソシアネート等を微量添加使用してもよい。(C)のポリアミンとしては、エチレンジアミン、1,2プロピレンジアミン等公知のジアミンを主体とし、必要に応じて微量のトリアミン、テトラアミンを併用してもよい。これらのポリウレタン系エラストマーは単独又は2種類以上混合して用いてもよい。
なお、三次元網状構造体10に使用される熱可塑性樹脂の融点は耐熱性・耐久性を保持し得る150℃以上とすることが必要であるが、融点が160℃以上のものを用いるとさらに耐熱性・耐久性が向上するのでより好ましい。三次元網状構造体10の熱可塑性弾性樹脂のソフトセグメント含有量は少なくとも5重量%以上必要である。5重量%未満では、弾力性や耐久性が劣るので好ましくない。好ましいソフトセグメント含有量は15重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。一方、耐熱性・耐へたり性を考慮すると、ソフトセグメント含有量は80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは70重量%以下である。
三次元網状構造体10は、その構造に特徴があり、例えば、多数の分岐を有する樹脂繊維を張り巡らせた樹状構造体とすることができる。また、樹脂繊維で多数の螺旋構造を形成することにより、三次元網状構造体10を実現することもできる。本発明による三次元網状構造体10は、スプリングのような優れた弾性を発揮する。
綿状体20は、三次元網状構造体10を包囲するように積層されている。綿状体20は、レギュラー繊維であるレギュラーポリエステルと、メルト繊維である低融点ポリエステルとを含んでいる。レギュラーポリエステルの融点は180〜250℃である。低融点ポリエステルの融点は100〜150℃である。レギュラー繊維とメルト繊維との混合比率は9:1〜5:5の範囲で調製される。綿状体20は、レギュラー繊維とメルト繊維とが複雑に絡み合った構造を有している。このため、綿状体20自身もある程度の弾力性及び柔軟性を有している。ただし、綿状体20にさらに高い性能を発現させるため、第三の繊維(例えば、ウレタン樹脂等)を添加することも可能である。なお、三次元網状構造体10及び綿状体20を同系統の材料(例えば、ポリエステル系樹脂)で構成すれば、廃棄する際に両者を分別する必要がないため、リサイクルが容易となる。
ここで、本発明者らは、三次元網状構造体10を構成する熱可塑性樹脂、ならびに綿状体20を構成するレギュラー繊維及びメルト繊維を上記のような融点範囲に設定することが、クッション材を設計するにあたって非常に重要であることを見出した。具体的には、綿状体20を構成するレギュラー繊維の融点を熱可塑性樹脂の融点より高く、且つメルト繊維の融点を熱可塑性樹脂の融点より低く設定することが重要である。各素材の融点をこのような温度関係とすることにより、三次元網状構造体10は、後述する製造時の加熱工程において熱収縮を起こすことなく、クッション材として好適な30〜100kg/mの密度を維持することができるのである。ちなみに、三次元網状構造体10の密度が30kg/m未満になると、極端に弾力性が失われるためクッション材とはなり得ない。一方、三次元網状構造体10の密度が100kg/mを超えると、逆に硬くなり過ぎてクッション材として適さない。本発明では、三次元網状構造体10がクッション材50中において上記密度を維持しているため、三次元網状構造体10は綿状体20に包囲された状態でクッション材50の中央部に確実に存在することができる。このようなクッション材50は、良好な弾力性、柔軟性、耐久性、通気性等を示すため、特に車両用シートとして好適に利用することができる。
本発明のクッション材50に使用される三次元網状構造体10は、従来のクッション材において度々使用されていたリン系難燃剤を含まずに構成されていることも特徴である。リン系難燃剤は良好な難燃性を有しているため、合成繊維や合成樹脂等に難燃性を付与したい場合、従来好んで使用されてきた。ところが、リン系難燃剤には独特の鼻につく臭い(例えば、フェノール臭)があるため、最近の健康志向の影響も手伝って、消費者からは敬遠される傾向がある。特に、車両用シートなどの人体に直接触れる製品に対しては、できるだけリン系難燃剤を使用しないことが望まれている。また、リン系難燃剤を含む合成繊維や合成樹脂を廃棄する場合、それらを高温で処理すると有害な有機リン化合物が発生するおそれもある。
この点、本発明のクッション材50は、三次元網状構造体10が綿状体20で包囲された構造となっている。そして、この綿状体20は元々ある程度の難燃性を備えている。このため、三次元網状構造体10に敢えてリン系難燃剤を含めなくても、クッション材50全体として十分な難燃性を実現することができるのである。なお、本発明においては、三次元網状構造体10から難燃剤を完全に排除することを意図するものではなく、リン系難燃剤以外の難燃剤であれば、クッション材50の使用状況等に応じて別の種類の難燃剤を適宜含めることも可能である。
また、クッション材50に使用される三次元網状構造体10として、天地面及び側面を備えるものを採用することがあるが、この場合、三次元網状構造体10を包囲する綿状体20は、三次元網状構造体10の側面に積層する部位を天地面に積層する部位よりも硬度が大きくなるように設計することが好ましい。このような設計とすれば、車両用シートとして臀部を確実にサポートしつつ、良好な座り心地を実現することができる。
さらに、本発明のクッション材50に使用される綿状体20は、その表面を布帛又は不織布(以下、不織布等とする)で被覆しておくことが好ましい。ここで、綿状体20の表面には、座面等を構成する外側の部位(外側表面)だけでなく、内部の三次元網状構造体10と接する内側の部位(内側表面)も含まれる。綿状体20の外側表面を不織布等で被覆すると、例えば、当該不織布等に面ファスナー等の留め具を引っ掛けることができるので、クッション材50にカバー等を容易に且つ確実に装着することができる。また、綿状体20の内側表面を不織布等で被覆した場合には、綿状体20が三次元網状構造体10に対して過剰に解れたり、擦れたりすることが防止される。その結果、人が着座したときに発生する擦れ音等が低減され、クッション材10の使用時における静音性が向上する。
〔クッション材の製造方法〕
上述した本発明のクッション材50は、代表的には以下の工程(1)〜(3)を経て製造される。
(1)成形型に三次元網状構造体及び綿状体を導入する型入工程
(2)成形型を密封状態で加熱する加熱工程
(3)成形型から成形品を取り出す型出工程
(1)型入工程では、温度調整可能な熱成形型(図示せず)を使用する。熱成形型の内部に三次元網状構造体及び綿状体を積層順に導入する。例えば、最初にクッション材の下面となる薄手の綿状体20を導入し、次いで三次元網状構造体10を中央に導入するとともに当該三次元網状構造体10と熱成形型の内壁面との隙間を側面となる綿状体20で埋め尽くし、最後にクッション材の上面となる厚手の綿状体20を被せる。この型入工程においては、成形型に導入される三次元網状構造体10及び綿状体20は、それらの体積和が成形型の内部容積より大きくなるように構成されていることが好ましい。すなわち、三次元網状構造体10を熱成形型の内部で圧縮状態にしておくことが好ましい。このような圧縮状態にしてから熱成形型を密封する。
(2)加熱工程では、熱成形型を外部から加熱する。すなわち、クッション材の内部に直接熱を流入させない熱伝導方式によりクッション材を間接的に加熱するのである。熱伝導方式の具体例としては、例えば、熱成形型に電熱ヒーターを装着する方式、熱成形型を外部熱源に接触させる方式、熱成形型を油浴又は水浴で加熱する方式等が挙げられる。一例として、図2に熱伝導方式により加熱した場合におけるクッション材中の各部の温度変化のグラフを示す。この温度測定では、図2のグラフ欄外に示したように、(a)クッション材内部の三次元網状構造体10の中心温度、(b)上面側の綿状体の中心温度、及び(c)下面側の綿状体の中心温度を、夫々サーモカップルを使用してモニタリングした。図2のグラフより、熱伝導方式であれば、三次元網状構造体10の温度上昇は周囲の綿状体20の温度上昇と比較して緩やかであることが分かる。すなわち、三次元網状構造体10は長時間高温に晒され難い。また、三次元網状構造体10は短時間のうちに中心部にまで熱が伝わることがないため、熱による劣化も起こり難い。このように、熱伝導方式による加熱工程を実行すれば、三次元網状構造体10において、従来のエアスルー方式では発生し得る熱収縮が起こらず、確実に三次元網状構造を維持することができる。
加熱工程における加熱条件は、三次元網状構造体10及び綿状体20の特性に応じて異なるが、加熱温度は110〜160℃の範囲で実行することが好ましい。ここで、「加熱温度」とは、熱成形型の設定温度ではなく、熱成形型が接触している綿状体の温度のことである。加熱温度が110℃未満では、綿状体20中のメルト繊維が十分に溶融しないため成形性が悪化する。一方、加熱温度が160℃を超えると、綿状体20の表面が鏡面化し、クッション性に悪影響を及ぼす。
加熱時間は10〜30分の範囲で実行することが好ましい。加熱時間が10分未満ではメルト繊維が溶融不足となり成形性が悪化する。一方、加熱時間が30分を超えると、三次元網状構造体10の内部にまで熱が浸透し、熱収縮を起こすおそれがある。
(3)型出工程では、熱成形型が十分に冷却されてから成形物(クッション材50)を取り出す。取り出したクッション材50は、三次元網状構造体10が熱成形型の内部で圧縮状態にされていたため、三次元網状構造体10は周囲の綿状体20に対して突っ張った状態となっている。このため、クッション材50の内部の三次元網状構造体10は多少の内部応力を保有した状態で存在し、その結果、クッション材50は良好なクッション性を発揮することができる。
次に、本発明のクッション材、及びその製造方法に関して、具体的な実施例を挙げて説明する。
〔実施例1〕
三次元網状構造体が綿状体によって包囲されたクッション材を製造するにあたり、熱成形型に綿状体(メルト繊維20%含有)及び熱可塑性樹脂からなる三次元網状構造体を導入し、熱伝導方式による加熱工程を実施した。以下に実施条件を示す。
・熱可塑性樹脂 :ポリエステル系エラストマー
・熱可塑性樹脂の融点:160℃
・メルト繊維 :低融点ポリエステル
・メルト繊維の融点 :140℃
・熱成形型の設定温度:170℃
・加熱時間:20分
本実施例では、加熱工程の終了直前において、メルト繊維の中心部の温度は約150℃に達していた。型出工程後に得られた実施例1のクッション材の断面写真を図3に示す。着色部が三次元網状構造体であり、非着色部が綿状体である。三次元網状構造体の密度は、型入工程前には50kg/mであったが、型出工程後には55kg/mとなっていた。このように、本実施例では、三次元網状構造体が良好な弾力性、耐久性、通気性等を示す30〜100kg/mの密度を維持したまま(すなわち、熱収縮することなく)、綿状体に包囲された状態でクッション材の中央部に存在していることを確認した。
〔実施例2〕
実施例1と同様に、熱成形型に綿状体(メルト繊維20%含有)及び熱可塑性樹脂からなる三次元網状構造体を導入し、熱伝導方式による加熱工程を実施した。以下に実施条件を示す。
・熱可塑性樹脂 :ポリエステル系エラストマー
・熱可塑性樹脂の融点:160℃
・メルト繊維 :低融点ポリエステル
・メルト繊維の融点 :120℃
・熱成形型の設定温度:150℃
・加熱時間:30分
本実施例では、加熱工程の終了直前において、メルト繊維の中心部の温度は約130℃に達していた。図示しないが、型出工程後に得られたクッション材は、中央部の三次元網状構造体が良好な弾力性、耐久性、通気性等を示す30〜100kg/mの密度を維持したまま(すなわち、熱収縮することなく)、綿状体に包囲された状態でクッション材の中央部に存在していることを確認した。
〔実施例3〕
実施例1と同様に、熱成形型に綿状体(メルト繊維20%含有)及び熱可塑性樹脂からなる三次元網状構造体を導入し、熱伝導方式による加熱工程を実施した。以下に実施条件を示す。
・熱可塑性樹脂 :ポリエステル系エラストマー
・熱可塑性樹脂の融点:160℃
・メルト繊維 :低融点ポリエステル
・メルト繊維の融点 :150℃
・熱成形型の設定温度:190℃
・加熱時間:10分
本実施例では、加熱工程の終了直前において、メルト繊維の中心部の温度は約160℃に達していた。図示しないが、型出工程後に得られたクッション材は、中央部の三次元網状構造体が良好な弾力性、耐久性、通気性等を示す30〜100kg/mの密度を維持したまま(すなわち、熱収縮することなく)、綿状体に包囲された状態でクッション材の中央部に存在していることを確認した。
〔比較例1〕
比較のためのクッション材を製造するにあたり、熱成形型に綿状体(メルト繊維20%含有)及び熱可塑性樹脂からなる三次元網状構造体を導入し、熱伝導方式による加熱工程を実施した。以下に実施条件を示す。
・熱可塑性樹脂 :ポリエステル系エラストマー
・熱可塑性樹脂の融点:160℃
・メルト繊維 :低融点ポリエステル
・メルト繊維の融点 :140℃
・熱成形型の設定温度:200℃
・加熱時間:40分
本実施例では、加熱工程の終了直前において、メルト繊維の中心部の温度は約170℃に達していた。型出工程後に得られた比較例1のクッション材の断面写真を図4に示す。着色部が三次元網状構造体であり、非着色部が綿状体である。三次元網状構造体は熱収縮を起こし、略完全に弾力性を失っていた。
〔比較例2〕
比較のためのクッション材を製造するにあたり、熱成形型に綿状体(メルト繊維20%含有)及び熱可塑性樹脂からなる三次元網状構造体を導入し、熱伝導方式による加熱工程を実施した。以下に実施条件を示す。
・熱可塑性樹脂 :ポリエステル系エラストマー
・熱可塑性樹脂の融点:160℃
・メルト繊維 :低融点ポリエステル
・メルト繊維の融点 :100℃
・熱成形型の設定温度:120℃
・加熱時間:40分
本実施例では、加熱工程の終了直前において、メルト繊維の中心部の温度は約105℃にしか達していなかった。図示しないが、型出工程後に得られたクッション材は、熱成形されておらず、三次元網状構造体と綿状体との剥離が確認された。
〔クッション材の性能試験〕
次に、本発明のクッション材の性能を確認するため、以下に説明する(a)耐久試験、及び(b)復元試験を実施した。
(a)耐久試験
JIS K 6400−4 A法に従い、本発明のクッション材を縦横100mm角に切断したサンプルを作製し、当該サンプルの厚み方向に50%圧縮した状態で70℃に保持したオーブン中に22時間放置した。その後、サンプルをオーブンから取り出し、圧縮を開放して厚みの変化を測定した。本耐久試験ではクッション材の耐久性を、下記(1)式に従い、70℃圧縮残留歪として算出した。
70℃圧縮残留歪(%)=(l−l)/l×100 ・・・ (1)
:元の厚み
:耐久試験後の厚み
耐久試験の結果、本発明のクッション材の70℃圧縮残留歪は約12%であった。ちなみに、比較のため、従来の綿状体のみから構成されたクッション材について同様の耐久試験を実施したところ、70℃圧縮残留歪は約35%であった。本発明のクッション材は、従来のクッション材と比較して、70℃圧縮残留歪が3分の1程度であった。このように、本発明のクッション材は過酷な使用条件下でも原形を留め易く、優れた耐久性を有していることが確認された。
(b)復元試験
クッション材の復元性を確認するため、本発明のクッション材を縦横100mm角に切断したサンプルを作製し、当該サンプルに対して繰り返し圧縮操作を行った。具体的には、圧縮板として直径200mmの円板を使用し、圧縮速度50mm/分で荷重0kgから荷重100kgまでサンプルを圧縮した。その後、直ちに50mm/分で圧縮板を上昇させ、サンプルが元の厚みに復元するまで、圧縮量と荷重との関係をヒステリシスカーブとしてチャート紙に記録した。図5に復元試験におけるヒステリシスカーブを示す。なお、比較のため、従来の綿状体のみから構成されたクッション材についても同様の復元試験を実施し、ヒステリシスカーブとして記録した。
図5より、本発明のクッション材は、荷重負荷に対する圧縮量が、従来のクッション材と比較して2倍以上大きくなった。また、荷重が開放された後は、従来のクッション材と同様に、確実に元の状態に復元した。このように、本発明のクッション材は、十分な柔軟性及び弾力性を有していることが確認された。なお、上記復元試験のプロセスを1万回繰り返したが、ヒステリシスカーブに大きな変化は見られなかったことから、本発明のクッション材は、この復元試験からも十分な耐久性を有することが確認された。
本発明のクッション材は、椅子、ベッド、マット、床材等に使用されるクッション材として利用可能であるが、とりわけ耐久性に優れているため、特に、鉄道車両等の公共の乗物の椅子(シート)の座面や背面に使用されるクッション材として好適に利用することができる。
10 三次元網状構造体
20 綿状体
50 クッション材
100 車両用シート

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂を主成分とする弾性を有する三次元網状構造体と、
    少なくともレギュラー繊維とメルト繊維とから構成され、前記三次元網状構造体を包囲するように積層された綿状体と、
    を備えたクッション材であって、
    前記熱可塑性樹脂は、150℃以上の融点を有し、
    前記レギュラー繊維は前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点を有するとともに、前記メルト繊維は前記熱可塑性樹脂の融点より低い融点を有し、
    前記三次元網状構造体は、30〜100kg/mの密度を有するクッション材。
  2. 前記三次元網状構造体は、リン系難燃剤を含まずに構成されている請求項1に記載のクッション材。
  3. 前記三次元網状構造体は天地面及び側面を備え、前記側面に積層される綿状体は前記天地面に積層される綿状体よりも大きい硬度を有する請求項1又は2に記載のクッション材。
  4. 前記綿状体の表面が布帛又は不織布で被覆されている請求項1〜3の何れか一項に記載のクッション材。
  5. 熱可塑性樹脂を主成分とする弾性を有する三次元網状構造体と、
    少なくともレギュラー繊維とメルト繊維とから構成され、前記三次元網状構造体を包囲するように積層された綿状体と、
    を備えたクッション材の製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂は、150℃以上の融点を有し、
    前記レギュラー繊維は前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点を有するとともに、前記メルト繊維は前記熱可塑性樹脂の融点より低い融点を有し、
    前記三次元網状構造体は、30〜100kg/mの密度を有し、
    成形型に前記三次元網状構造体及び綿状体を導入する型入工程と、
    前記成形型を密封状態で加熱する加熱工程と、
    前記成形型から成形品を取り出す型出工程と、
    を包含し、
    前記加熱工程は、前記成形型を外部から加熱する熱伝導方式により実行されるクッション材の製造方法。
  6. 前記加熱工程は、110〜160℃の加熱温度で実行される請求項5に記載のクッション材の製造方法。
  7. 前記加熱工程は、10〜30分の加熱時間で実行される請求項5又は6に記載のクッション材の製造方法。
  8. 前記型入工程において、前記成形型に導入される前記三次元網状構造体及び前記綿状体は、それらの体積和が前記成形型の内部容積より大きくなるように構成されている請求項5〜7の何れか一項に記載のクッション材の製造方法。
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