JP5966471B2 - 静粛性と硬さに優れた弾性網状構造体 - Google Patents

静粛性と硬さに優れた弾性網状構造体 Download PDF

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Description

本発明は、連続線状体の三次元ランダムループ接合構造体からなる弾性網状構造体に関する。
ポリエステル系共重合熱可塑性弾性樹脂からなる連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体が提案されている(特許文献1)。しかしながら、圧縮時および回復時にランダムループ同士がこすれたような音やランダムループ同士がはじけたような音がするため、寝具に用いた場合、うるさくて寝づらいという問題がある。
これに対し、ポリエステル共重合体からなる繊度が300デシテックス以上の連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体のランダムループ表面に、ポリエステル系樹脂を付着させたクッション材が提案されている(特許文献2)。圧縮時および回復時にランダムループ同士がこすれたような音は低減されているものの、ランダムループ同士がはじけたような音は依然として鳴っており、静粛性の観点で改善の余地はあった。また、ランダムループ表面にポリエステル系樹脂を付着させる工程は三次元ランダムループ接合構造体とは別工程であり、なおかつバッチ処方であるので、製造の点で問題があった。
特開平7−68061号公報 特開2010−43376号公報
本発明は、クッション性に優れ、且つ圧縮時および回復時の音を低減した弾性網状構造体を提供することを目的とする。
本発明者らは、振動減衰性の高い連続線状体からなる三次元ランダムループ接合構造体であれば、はじける音やこすれる音のような圧縮時および回復時の音が低減された網状構造体となることを見出した。しかしながら、振動減衰性を高めることは弾性の減少と比例し、いわゆる柔らかい網状構造体となって、クッション性が損なわれる結果となった。
そこで、本発明者らが更に鋭意検討した結果、三次元ランダムループ接合構造体を構成する連続線状体を2種以上の熱可塑性エラストマーで複合構造化することにより、驚くべきことに、弾性を確保しつつ、圧縮時および回復時に発生する音が低減された網状構造体を見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(項1)
100〜100000デシテックスの連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体からなる網状構造体であって、
(1)連続線状体が少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化されており、
(2)連続線状体の動的粘弾性測定装置を用いて測定した23℃でのTanδが0.10以上であり、
(3)かつ、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さが10kg/Φ200mm以上、
である、網状構造体。
(項2)
連続線状体の複合構造がシース・コア構造又はサイド・バイ・サイド構造である、項1に記載の網状構造体。
(項3)
連続線状体の複合構造がシース・コア構造である、項2に記載の網状構造体。
(項4)
少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーのうち少なくとも1種がポリエステル系熱可塑性エラストマーである、項1〜3のいずれかに記載の網状構造体。
(項5)
ポリエステル系熱可塑性エラストマーがポリエステルエーテルブロック共重合体又はポリエステルエステルブロック共重合体である、項4に記載の網状構造体。
(項6)
少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーのうち少なくとも1種がポリエステル系熱可塑性エラストマーであり、かつ少なくとも1種がポリスチレン系熱可塑性エラストマーである、項1〜5のいずれかに記載の網状構造体。
(項7)
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、及びこれらの水素添加共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である、項6に記載の網状構造体。
(項8)
連続線状体が中空断面である項1〜7のいずれかに記載の網状構造体。
(項9)
連続線状体が異形断面である項1〜7のいずれかに記載の網状構造体。
従前の網状構造体はランダムループ同士がこすれたような音やランダムループ同士がはじけるような音が圧縮時や圧縮回復時に発生していたが、本発明の網状構造体は、それらの音を大幅に低減しつつ、圧縮時の弾性を従前の網状構造体と同レベルに保つ点で優れた効果を有する。
本発明の網状構造体は、繊度が100〜100000デシテックスの連続した線条(本明細書では、「連続線状体」ということがある。)を曲がりくねらせ、該線条同士を接触させ、接触部を融着して3次元網状構造を形成している。このことで、非常に大きい応力で、大変形を与えても、融着一体化した三次元ランダムループからなる網状構造全体が変形して応力を吸収し、応力が解除されると熱可塑性エラストマーのゴム弾性が発現して、構造体は元の形態に回復することができる。なお、本発明の網状構造体を形成する線状の繊度は100〜100000デシテックスであることが好ましい。100デシテックス以下では抗圧縮強力が低くなり反発力が低下するので好ましくない。100000デシテックス以上では線状体の個々の抗圧縮性は大きいが、構成本数が少なくなるため力の分散が悪くなる。そのため、100kg/cm2 以上の著しく大きい圧縮力を受けた場合に、応力集中によるへたり(圧縮永久歪み)が発生し、使用部分が制限される場合がある。より好ましくは300〜50000デシテックスであり、更に好ましくは500〜30000デシテックスである。なお、本発明において、単一繊度の線条からなる連続線状体だけでなく、繊度の異なる線条を使用し、見掛け密度との組合せで最適な構成とすることもできる。
本発明の網状構造体を形成する連続線状体は、動的粘弾性測定装置を用いて測定した23℃でのTanδが0.10以上であることが好ましい。Tanδ(タンジェント・デルタ)とは、動的粘弾性測定装置を用いて測定した損失弾性率E”と貯蔵弾性率E’との比E”/E’であり、数値が高い程、振動減衰性が高くなり、振動音の低減効果が高くなる。23℃でのTanδが0.10未満では、網状構造体を圧縮もしくは回復した時のランダムループのはじけによる振動音が充分に低減できず、好ましくない。より好ましくは0.12以上、更に好ましくは0.15以上である。また、特に好ましくは、動的粘弾性測定装置を用いて測定したTanδが、0℃〜23℃の範囲全てにおいて0.10以上を満たしていることである。これにより、広範の温度域で静粛性を保つことができる。一方、上限は特に規定されないが、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.5以下である。1.0以上であると、クッション性の観点から好ましくない。
本発明の網状構造体の25%圧縮時硬さは、10kg/Φ200mm以上であることが好ましい。25%圧縮時硬さとは、網状構造体をΦ200mm径の円形状の圧縮板にて75%まで圧縮して得た応力−歪み曲線の25%圧縮時の応力である。25%圧縮時硬さが10kg/Φ200mmより小さいと、充分な弾発力を得ることができず、快適なクッション性が損なわれてしまう。より好ましくは、15kg/Φ200mm以上、特に好ましくは20kg/Φ200mm以上である。上限は特に規定されないが、好ましくは50kg/Φ200mm以下、より好ましくは45kg/Φ200mm以下、特に好ましくは40kg/Φ200mm以下である。50kg/Φ200mm以上であると硬くなりすぎ、クッション性の観点から好ましくない。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体は、少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化されていることが好ましい。連続線状体のTanδを大きくすることと網状構造体の25%圧縮時硬さを大きくすることは、一般的にはトレードオフ(二律背反)の関係にある。すなわち、連続線状体のTanδを大きくすれば25%圧縮時硬さが小さくなり、連続線状体の25%圧縮時硬さが大きくすればTanδが小さくなる。本発明は、異なる2種以上の熱可塑性エラストマーで相補的に複合構造化することにより、Tanδの大きさと25%圧縮時硬さの大きさを両立した、すなわちクッション性に優れ、かつ静粛性の高い網状構造体が得られたものである。本発明の実施態様において、少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーは、曲げ弾性率が0.1GPa以上の高弾性率熱可塑性エラストマーを1種以上と、動的粘弾性測定装置を用いて測定した23℃でのTanδが0.20以上の高Tanδ熱可塑性エラストマーの1種以上を相補的に用いることが好ましい。曲げ弾性率とは、矩形断面をもつ棒状試験片を一定の支点間隔(スパン)をもって支え、その中央に加圧くさびをあてて曲げ荷重を加えた時の荷重−たわみ曲線から算出される弾性率である。複合構造中の熱可塑性エラストマーの構成比は特に規定されるものではないが、好ましくは、上記高弾性率熱可塑性エラストマーと上記高Tanδ熱可塑性エラストマーの体積比で95/5〜5/95、より好ましくは90/10〜10/90、特に好ましくは85/15〜15/85である。100/0〜95/5もしくは5/95〜0/100となると、クッション性と静粛性の両立という観点から好ましくない。
本発明における熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレンジオールをソフトセグメントとするポリエステルエーテルブロック共重合体、または脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体が例示できる。ポリエステルエーテルブロック共重合体のより具体的な構成としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1・4シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸または、これらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1・4ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1・1シクロヘキサンジメタノール、1・4シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、またはエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などから選ばれたポリアルキレンジオールのうち少なくとも1種から構成される三元ブロック共重合体である。ポリエステルエステルブロック共重合体としては、上記ジカルボン酸とジオール及び平均分子量が約300〜5000のポリラクトン等のポリエステルジオールのうち少なくとも1種から構成される三元ブロック共重合体が例示される。熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、好ましくは、(1)ジカルボン酸としてテレフタル酸または/およびイソフタル酸、ジオ−ル成分として1・4ブタンジオール、ポリアルキレンジオールとしてポリテトラメチレングリコールからなる3元ブロック共重合体、および(2)ジカルボン酸としてテレフタル酸または/およびナフタレン−2・6−ジカルボン酸、ジオ−ル成分として1・4ブタンジオール、ポリエステルジオールとしてポリラクトンからなる3元ブロック共重合体である。特に好ましくは、(1)ジカルボン酸としてテレフタル酸または/およびイソフタル酸、ジオ−ル成分として1・4ブタンジオール、ポリアルキレンジオールとしてポリテトラメチレングリコールからなる3元ブロック共重合体である。特殊な例では、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものも使うことができる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンランダム共重合体やスチレン−イソプレンランダム共重合体、あるいはそれらを水素添加したスチレン系熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン−プロピレンランダム共重合体やエチレン−イソプレンランダム共重合体などが例示できる。
ポリアミド系エラストマーとしては、ハードセグメントにナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等およびそれらの共重合ナイロンを骨格とし、ソフトセグメントには、平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体等のポリアルキレンジオールのうち少なくとも1種から構成されるブロック共重合体を単独または2種類以上混合して用いたものが例示される。更には、非エラストマー成分をブレンドされたもの、共重合したもの等も本発明に使用できる。
ポリウレタン系エラストマーとしては、通常の溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)の存在または不存在下に、(A)数平均分子量1000〜6000の末端に水酸基を有するポリエーテル及び又はポリエステルと(B)有機ジイソシアネートを主成分とするポリイソシアネートを反応させた両末端がイソシアネート基であるプレポリマーに、(C)ジアミンを主成分とするポリアミンにより鎖延長したポリウレタンエラストマーを代表例として例示できる。(A)のポリエステル、ポリエーテル類としては、平均分子量が約1000〜6000、好ましくは1300〜5000のポリブチレンアジペート共重合ポリエステルやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体等のポリアルキレンジオールが好ましい。(B)のポリイソシアネートとしては、従来公知のポリイソシアネートを用いることができるが、ジフェニルメタン4・4’ジイソシアネートを主体としたイソシアネ−トを用い、必要に応じ従来公知のトリイソシアネート等を微量添加使用してもよい。(C)のポリアミンとしては、エチレンジアミン、1・2プロピレンジアミン等公知のジアミンを主体とし、必要に応じて微量のトリアミン、テトラアミンを併用してもよい。これらのポリウレタン系エラストマーは単独又は2種類以上混合して用いてもよい。また、上記エラストマーに非エラストマー成分をブレンドされたもの、共重合したもの等も本発明の熱可塑性エラストマーに包含される。
本発明の構造体を構成する線条の樹脂部分は、示差走査型熱量計にて測定した融解曲線において、融点以下に吸熱ピークを有するのが好ましい。融点以下に吸熱ピークを有するものは、耐熱耐へたり性が吸熱ピ−クを有しないものより著しく向上する。例えば、本発明の好ましいポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、ハードセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸などを90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モル%含有するものとグリコ−ル成分をエステル交換後、必要な重合度まで重合し、次いで、ポリアルキレンジオールとして、好ましくは平均分子量が500以上5000以下、より好ましくは1000以上3000以下のポリテトラメチレングリコールを10重量%以上70重量%以下、より好ましくは20重量%以上60重量%以下で共重合させた場合、ハードセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸の含有量が多いとハ−ドセグメントの結晶性が向上し、塑性変形しにくく、かつ、耐熱抗へたり性が向上する。加えて、溶融熱接着後更に融点より少なくとも10℃以上低い温度でアニ−リング処理すると、より耐熱抗へたり性が向上する。圧縮歪みを付与してからアニ−リングすると更に耐熱抗へたり性が向上する。このような処理をした網状構造体の線条は、示差走査型熱量計(DSC)で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度で吸熱ピークをより明確に発現する。なおアニ−リングしない場合は融解曲線に室温以上融点以下に吸熱ピ−クを発現しない。このことから類推するに、アニ−リングにより、ハ−ドセグメントが再配列され、疑似結晶化様の架橋点が形成され、耐熱抗へたり性が向上しているのではないかとも考えられる。(以下、このアニーリング処理を「疑似結晶化処理」ということがある。)この疑似結晶化処理効果は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーやポリウレタン系熱可塑性エラストマーにも有効である。
本発明は、網状構造体を構成する連続線状体を少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化することを特徴とするが、好ましい複合構造としては、シース・コア構造またはサイド・バイ・サイド構造及びそれらの組合せ構造などが挙げられる。シース・コア構造は芯鞘型とも呼ばれ、シース(鞘)とコア(芯)の位置関係から同心型と偏心型に、また断面形状として円形断面と異型断面に分類できるが、本発明ではいずれの組合せも使用することができる。サイド・バイ・サイド構造は並列型とも呼ばれ、多成分が貼り合わされた断面構造をしている。シース・コア構造、サイド・バイ・サイド構造のいずれにおいても、断面形状が中空もしくは中実のいずれの構造もとることができる。
本発明の好ましい実施態様は、熱接着部分が大変形しても回復できる網状3次元構造となるために線条の表面の50%以上を高弾性率熱可塑性エラストマーが占めるシース・コア構造またはサイド・バイ・サイド構造及びそれらの組合せ構造である。すなわち、シース・コア構造のシース成分が高弾性率熱可塑性エラストマーであることが好ましい。コア成分は高Tanδ熱可塑性エラストマーであることが好ましい。具体的には、シース成分の高弾性率熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及び/またはポリアミド系熱可塑性エラストマーが好ましく、ポリエステル系熱可塑性エラストマーがより好ましく、ポリエステルエーテルブロック共重合体が更に好ましい。コア成分の高Tanδ熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマー及び/またはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましく、スチレン系熱可塑性エラストマーがより好ましく、水素添加された部位を含むスチレン系熱可塑性エラストマーが更に好ましい。シース成分とコア成分の比率は体積比で95/5〜5/95が好ましく、より好ましくは90/10〜10/90であり、更に好ましくは85/15〜15/85である。
サイド・バイ・サイド構造では、高弾性率熱可塑性エラストマーと高Tanδ熱可塑性エラストマーの複合線条とすることが好ましい。具体的には、高弾性率熱可塑性エラストマーの溶融粘度を高Tanδ熱可塑性エラストマーの溶融粘度より低くして、高弾性率熱可塑性弾性樹脂が線条の表面の割合を多くした構造(言い換えれば、偏芯シース・コア構造のシースに高弾性熱可塑性エラストマーを配した様な構造)とすることができる。
本発明では、複合構造化された連続線状体であって、線条の表面の50%以上を高弾性率熱可塑性エラストマーが占める連続線状体が好ましく、線条の表面の80%以上を高弾性率熱可塑性エラストマーが占める連続線状体がより好ましく、線条の表面の100%を高弾性率熱可塑性エラストマーが占める連続線状体、すなわちシース・コア構造である連続線状体が特に好ましい。
断面形状は特には限定されないが、中空断面や異形断面にすることで、抗圧縮性や嵩だか性を付与でき、低繊度化したい場合には特に好ましい。抗圧縮性は用いる素材のモジュラスにより調整して、柔らかい素材では中空率や異形度を高くし初期圧縮応力の勾配を調整できるし、ややモジュラスの高い素材では中空率や異形度を低くして座り心地が良好な抗圧縮性を付与する。中空断面や異形断面の他の効果として中空率や異形度を高くすることで、同一の抗圧縮性を付与した場合、より軽量化が可能となる。
本発明の網状構造体の具体的な態様は、平均の見掛け密度の好ましい範囲が、クッション材としての機能が発現できる0.005g/cm3以上0.20g/cm3 以下である。0.005g/cm3 未満では反発力が失われるのでクッション材には不適当であり、0.20g/cm3 を越えると反発力が高すぎて座り心地が悪くなり好ましくない。本発明のより好ましい見掛け密度は0.01g/cm3〜0.10g/cm3 であり、更に好ましい範囲は0.03g/cm3 〜0.06g/cm3 である。本発明の網状構造体は、繊度の異なる線条からなる複数層を積層し、各層の見掛け密度を変えることにより好ましい特性を付与することができる。例えば、繊度の細い表面層と繊度の太い基本層からなる場合は、表面層の密度はやや高くして構成本数を多くし、線条の一本が受ける応力を少なくして応力の分散を良くし、且つ臀部を支えるクッション性も向上させることで座り心地を向上させることができる。基本層は繊度を太くして少し硬くし、振動吸収と体型保持を受け持つ層としてより緻密な層とするため、やや繊度の細い線条で、且つ高密度とすることができる。これにより座席フレーム面から受ける振動や反発応力を基本層に均一に伝達し、全体が変形してエンルギー変換できるようにし、座り心地を良くすると共にクッションの耐久性も向上させることもできる。さらに、座席のサイドの厚みと張りを付与させるために部分的に繊度をやや細くして高密度化することもできる。このように各層はその目的に応じ好ましい密度と繊度を任意に選択できる。なお、網状構造体の各層の厚みは、特に限定されないが、クッション体としての機能が発現されやすい3mm以上とするのが好ましく5mm以上とするのが特に好ましい。
網状構造体の構造体外表面は、曲がりくねらせた線条が途中で30°以上、好ましくは45°以上曲げられ実質的に面がフラット化されており、接触部の大部分が融着している表層部を有することが好ましい。このことで、網状構造体面の該線条の接触点が大幅に増加して接着点を形成するため、座った時の臀部の局部的な外力も臀部に異物感を与えずに構造面で受け止められ、面構造が全体で変形して内部の構造体全体も変形して応力を吸収し、応力が解除されると弾性樹脂のゴム弾性が発現して、構造体は元の形態に回復することができる。実質的にフラット化されてない場合、臀部に異物感を与え、表面に局部的な外力が掛かかり、表面の線条及び接着点部分までに選択的に応力集中が発生する場合があり、応力集中による疲労が発生して耐へたり性が低下する場合がある。構造体外表面がフラット化された場合、ワディング層を使用しないで、又は非常に薄いワディング層を積層し、側地で表面を覆い自動車用、鉄道用等の座席や椅子又はベッド用、ソファー用、布団用等のクッションマットにすることができる。構造体外表面フラット化されていない場合は、網状構造体の表面に比較的厚め(好ましくは10mm以上)のワディング層を積層して側地で表面を覆って座席やクッションマットを形成する必要がある。必要に応じてワディング層との接着または側地との接着は表面がフラットな場合は容易であるが、フラット化されていない場合は凸凹なため接着が不完全になる。
次に本発明の三次元ランダムループ接合構造からなる網状構造体の製造方法について述べる。以下の方法は一例であって、これに限定するものではない。
本発明の網状構造体は、溶融紡糸により製造される。まず、(1)溶融状態の吐出線条を曲がりくねらせて互いに接触させ、大部分の接触部を融着させることにより3次元構造を形成しつつ、(2)引取り装置で挟み込む。次いで(3)冷却槽で冷却せしめて網状構造体を形成する。本発明では、吐出線条を少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化できるように、各ノズルオリフィス前で各熱可塑性エラストマーを分配し、該熱可塑性エラストマーの高融点成分の融点より10℃以上、低融点成分の融点より120℃以下の溶融温度で該ノズルより下方に向けて吐出させ、溶融状態の複合化した吐出線条から上記方法により複合構造化させた連続線状体からなる網状構造体を製造する。
少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーは一般的な溶融押出機を用いて別々に溶融し、一般的な複合紡糸の方法と同様にオリフィス直前で複合化するように分配合流させ吐出する。シ−ス・コア構造の連続線状体を紡糸する場合、コア成分を中心から供給し、その回りからシ−ス成分を合流させ吐出する。サイド・バイ・サイド構造の連続線状体を紡糸する場合、左右または前後から各成分を合流させて吐出する。このときの溶融温度は、低融点の成分の融点より120℃以下の温度で溶融させないと熱分解が著しくなり熱可塑性樹脂の特性が悪くなるので好ましくない。他方、高融点成分の融点より10℃以上にしないとメルトフラクチャ−が発生し正常な線状形成ができなくなる。また、サイド・バイ・サイド構造の場合は線状の接着が不良になる場合がある。好ましい溶融温度は低融点成分の融点より20℃以上100℃以下、より好ましくは30℃以上80℃以下であり、高融点成分の融点より15℃以上40℃以下、より好ましくは20℃以上30℃以下の範囲となる同一溶融温度で合流させ吐出させる。合流直前の溶融温度差は10℃以下にしないと、異常流動を発生し複合化形態の形成が損なわれる場合がある。
オリフィスの形状は特に限定されないが、異形断面(例えば三角形、Y型、星型等の断面二次モ−メントが高くなる形状)や中空断面(例えば三角中空、丸型中空、突起つきの中空等となるよう形状)とすることで溶融状態の吐出線条が形成する3次元構造が流動緩和し難くし、逆に接触点での流動時間を長く保持して接着点を強固にできるので特に好ましい。特開平1−2075号公報に記載の接着のための加熱をする場合、3次元構造が緩和し易くなり平面的構造化し、3次元立体構造化が困難となるので好ましくない。構造体の特性向上効果としては、見掛けの嵩を高くでき軽量化になり、また抗圧縮性が向上し、弾発性も改良できて、へたり難くなる。中空断面では中空率が80%を越えると断面が潰れ易くなるので、中空断面を採用する場合の中空率は、好ましくは軽量化の効果が発現できる10%以上70%以下、より好ましくは20%以上60%以下である。
オリフィスの孔間ピッチは、線状が形成するル−プが充分接触できるピッチとする必要がある。緻密な構造にするには孔間ピッチを短くし、粗密な構造にするには孔間ピッチを長くする。本発明の孔間ピッチは好ましくは3mm〜20mm、より好ましくは5mm〜10mmである。本発明では所望に応じ異密度化や異繊度化もできる。列間のピッチ又は孔間のピッチも変えた構成、及び列間と孔間の両方のピッチも変える方法などで異密度層を形成できる。また、オリフィスの断面積を変えて吐出時の圧力損失差を付与すると、溶融した熱可塑性エラストマーが同一ノズルから一定の圧力で押し出される吐出量が圧力損失の大きいオリフィスほど少なくなる原理を用いて、異繊度化できる。
次いで、引取りネットで溶融状態の三次元立体構造体両外表面を挟み込み、両面の溶融状態の曲がりくねった吐出線条を30°以上折り曲げて変形させ、表面をフラット化すると同時に、曲げられていない吐出線条との接触点を接着して構造を形成する。その後、連続して冷却媒体(通常は室温の水を用いるのが冷却速度を早くでき、コスト面でも安くなるので好ましい。)で急冷して本発明の三次元ランダムループ接合構造体からなる網状構造体を得る。次いで水切り乾燥するが、冷却媒体中に界面活性剤等を添加すると、水切りや乾燥がしにくくなったり、熱可塑性エラストマーが膨潤したりすることもあり好ましくない。本発明の好ましい方法としては、一旦冷却後、疑似結晶化処理を行う。疑似結晶化処理温度は、少なくとも融点(Tm)より10℃以上低く、Tanδのα分散立ち上がり温度(Tαcr)以上で行う。この処理で、融点以下に吸熱ピ−クを持ち、疑似結晶化処理しないもの(吸熱ピ−クを有しないもの)より耐熱耐へたり性が著しく向上する。本発明の好ましい疑似結晶化処理温度は(Tαcr+10℃)から(Tm−20℃)である。単なる熱処理により疑似結晶化させると耐熱耐へたり性が向上する。更には一旦冷却後、10%以上の圧縮変形を付与してアニ−リングすることで耐熱耐へたり性が著しく向上するのでより好ましい。また、一旦冷却後、乾燥工程を経する場合、乾燥温度をアニ−リング温度とすることで同時に疑似結晶化処理を行うができる。また、別途疑似結晶化処理を行うができる。
次いで所望の長さまたは形状に切断してクッション材に用いる。本発明の網状構造体をクッション材に用いる場合、その使用目的、使用部位により使用する樹脂、繊度、ル−プ径、嵩密度を選択する必要がある。例えば、表層のワディングに用いる場合は、ソフトなタッチと適度の沈み込みと張りのある膨らみを付与するために、低密度で細い繊度、細かいル−プ径にするのが好ましく、中層のクッション体としては、共振振動数を低くし、適度の硬さと圧縮時のヒステリシスを直線的に変化させて体型保持性を良くし、耐久性を保持させるために、中密度で太い繊度、やや大きいル−プ径が好ましい。勿論、用途との関係で要求性能に合うべく他の素材、例えば短繊維集合体からなる硬綿クッション材、不織布等と組合せて用いることも可能である。また、樹脂製造過程以外でも性能を低下させない範囲で製造過程から成形体に加工し、製品化する任意の段階で難燃化、防虫抗菌化、耐熱化、撥水撥油化、着色、芳香等の機能付与を薬剤添加等の処理加工ができる。
以下に実施例で本発明を詳述する。
なお、実施例中の評価は以下の方法で行った。
<樹脂特性>
(1) 融点(Tm)
島津製作所TA50、DSC50型示差熱分析計を使用し、10gの試料を昇温速度20℃/分で20℃から250℃まで測定した吸発熱曲線から吸熱ピーク(融解ピーク)温度を求めた。
(2) 曲げ弾性率
射出成形機によって長さ125mm×幅12mm×厚み6mmの試験片を作成し、ASTM D790規格により測定した。
(3) 原料樹脂のTanδ
測定に用いたサンプルは、設定温度230℃のヒートプレスによって厚さ300umのシートサンプルに成形し、長さ23mm×幅5mmに切り出して作成した。動的粘弾性測定装置(UBM社製Rheogel−E−4000)を用い、サンプルの長辺の両端各4mm部分を引張治具で固定し、11Hz、昇温速度2℃/分で測定した23℃のTanδ(損失弾性率E”と貯蔵弾性率E’との比E”/E’)値を用いた。
<網状構造体特性>
(1)連続線条体のTanδ
測定に用いたサンプルは、網状構造体を設定温度230℃のヒートプレスによって厚さ300umのシートサンプルに成形し、長さ23mm×幅5mmに切り出して作成した。動的粘弾性測定装置(UBM社製Rheogel−E−4000)を用い、サンプルの長辺の両端各4mm部分を引張治具で固定し、11Hz、昇温速度2℃/分で測定した23℃のTanδ(損失弾性率E”と貯蔵弾性率E’との比E”/E’)値を用いた。
(2)25%圧縮硬さ
試料を30cm×30cmの大きさに切断し、オリエンテック社製テンシロンにてφ200mm圧縮板にて75%まで圧縮して得た応力−歪み曲線の25%圧縮時の応力で示した。(n=3の平均値)
(3)見掛け密度
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、4か所の高さを測定し、体積を求め、試料の重さを体積で徐した値(g/cm)で示す。(n=4の平均値)
(4)線条の繊度
網状構造体を20cm×20cmの大きさに切断し、10か所から長さ1cmの線条体を採取する。10か所で採取した線条体の40℃での比重を密度勾配管を用いて測定する。更に、上記10か所で採取した線条体の断面積を顕微鏡で拡大した写真より求め、それより、線条体の長さ10000m分の体積を求める。得られた比重と体積を乗じた値を繊度(線条体10000m分のグラム重量:デシテックスdtex)とする。(n=10の平均値)。
(5)床つき感:50cm四方、厚み5cm、見掛け密度0.040〜0.050g/cmの網状構造体に体重40kg〜100kgの範囲にあるパネラー30名(20歳〜39歳の男性;5名、20歳〜39歳の女性:5名、40歳〜59歳の男性:5名、40歳〜59歳の女性:5名、60歳〜80歳の男性:5名、60歳〜80歳の女性:5名)を座らせ、座ったときの「どすん」と床に当たった感じの程度を感覚的に定性評価した。感じない;◎、殆ど感じない;○、やや感じる;△、感じる;×
(6)消音性
50cm四方、厚み5cm、見掛け密度0.040〜0.050g/cmの網状構造体に体重40kg〜100kgの範囲にあるパネラー30名(20歳〜39歳の男性;5名、20歳〜39歳の女性:5名、40歳〜59歳の男性:5名、40歳〜59歳の女性:5名、60歳〜80歳の男性:5名、60歳〜80歳の女性:5名)を座らせ、網状構造体から発生する音を感覚的に定性評価した。感じない;◎、殆ど感じない;○、やや感じる;△、感じる;×
(6)中空率
網状構造体から線条を採取し、液体窒素で冷却した後に割断し、その断面を電子顕微鏡で倍率50倍にて観察し、得られた画像をCADシステムにて解析して樹脂部分の断面積(A)と中空部分の断面積(B)を測定し、{B/(A+B)}×100の式により中空率を算出した。
<合成例1>
ジメチルテレフタレート(DMT)と1,4−ブタンジオール(1,4−BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG:平均分子量1000)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、昇温減圧しつつ重縮合せしめ、DMT/1,4−BD/PTMG=100/93/7mol%のポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーを生成させ、次いで抗酸化剤1%を添加混合練込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥してポリエステル系熱可塑性エラストマー原料(A−1)を得た。その特性を表1に示す。
<合成例2>
ジメチルテレフタレート(DMT)と1,4−ブタンジオール(1,4−BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG:平均分子量1000)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、昇温減圧しつつ重縮合せしめ、DMT/1,4−BD/PTMG=100/84/16mol%のポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーを生成させ、次いで抗酸化剤1%を添加混合練込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥してポリエステル系熱可塑性エラストマー原料(A−2)を得た。その特性を表1に示す。
<合成例3>
ジメチルテレフタレート(DMT)と1,4−ブタンジオール(1,4−BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG:平均分子量1000)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、昇温減圧しつつ重縮合せしめ、DMT/1,4−BD/PTMG=100/72/28mol%のポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーを生成させ、次いで抗酸化剤1%を添加混合練込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥してポリエステル系熱可塑性エラストマー原料(A−3)を得た。その特性を表1に示す。
<実施例1>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)と共に重量比50%/50%となるようにオリフィス前で合流させ、240℃にて、ノズルは幅50cm、長さ5cmのノズル有効面に長さ方向に列間ピッチを5mm、幅方向に孔間ピッチを10mmのオリフィス形状が丸型中実形成ノズルより、全吐出量を1000g/分にて吐出させ、ノズル面25cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配した上に引取り、接触部分を融着させつつ、両面を挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ、次いで100℃の熱風乾燥機中で20分疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断して複合構造の連続線状体からなる網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
<実施例2>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)と共に重量比50%/50%となるようにオリフィス前で合流させ、240℃にて、ノズルは幅50cm、長さ5cmのノズル有効面に長さ方向に列間ピッチを5mm、幅方向に孔間ピッチを10mmのオリフィス形状が丸型中空形成ノズルより、全吐出量を1400g/分にて吐出させ、ノズル面25cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配した上に引取り、接触部分を融着させつつ、両面を挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ、次いで100℃の熱風乾燥機中で20分疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断して複合構造の連続線状体からなる網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
<実施例3>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)と共に重量比50%/50%となるようにオリフィス前で合流させ、240℃にて、ノズルは幅50cm、長さ5cmのノズル有効面に長さ方向に列間ピッチを5mm、幅方向に孔間ピッチを10mmのオリフィス形状がY型中実形成ノズルより、全吐出量を1100g/分にて吐出させ、ノズル面25cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配した上に引取り、接触部分を融着させつつ、両面を挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ、次いで100℃の熱風乾燥機中で20分疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断して複合構造の連続線状体からなる網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
<比較例1>
使用樹脂として合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)のみを用いて、実施例1と同様の方法にて網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
<比較例2>
使用樹脂として合成例2で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−2)のみを用いて、実施例1と同様の方法にて網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
<比較例3>
使用樹脂として合成例3で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−3)のみを用いて、実施例1と同様の方法にて網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
<比較例4>
使用樹脂として水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)のみを用いて、実施例1と同様の方法にて網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
本発明は、クッション性を保ちつつ、優れた静粛性を示す網状構造体に関するものであり、その特性を生かして車両用座席やマットレスなどに使用可能である。

Claims (8)

  1. 100〜100000デシテックスの連続線状体からなる三次元ランダムループ接合構造を持つ網状構造体であって、
    (1)連続線状体が少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化されており、
    (2)連続線状体の動的粘弾性測定装置を用いて測定した23℃でのTanδが0.10以上であり、
    (3)かつ、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さが10kg/Φ200mm以上、
    (4)連続線状体の複合構造がシース・コア構造又はサイド・バイ・サイド構造
    である、網状構造体。
  2. 連続線状体の複合構造がシース・コア構造である、請求項に記載の網状構造体。
  3. 少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーのうち少なくとも1種がポリエステル系熱可塑性エラストマーである、請求項1又は2に記載の網状構造体。
  4. ポリエステル系熱可塑性エラストマーがポリエステルエーテルブロック共重合体又はポリエステルエステルブロック共重合体である、請求項に記載の網状構造体。
  5. 少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーのうち少なくとも1種がポリエステル系熱可塑性エラストマーであり、かつ少なくとも1種がポリスチレン系熱可塑性エラストマーである、請求項1〜4のいずれかに記載の網状構造体。
  6. ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、及びこれらの水素添加共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項に記載の網状構造体。
  7. 連続線状体が中空断面である請求項1〜6のいずれかに記載の網状構造体。
  8. 連続線状体が異形断面である請求項1〜6のいずれかに記載の網状構造体。
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