JP3596623B2 - 座席及び製法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、特に、座席の形態保持性を向上させて体型保持性を高め、快適な座り心地と耐熱耐久性及び振動吸収性とを有し、リサイクルが可能な車両用座席とその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、車両用座席は、発泡ウレタンや捲縮繊維を接着した樹脂綿や硬綿などをクッション層に使用されている。
【0003】
しかしながら、発泡ウレタンをクッション層とした座席は、耐久性は極めて良好だが、透湿透水性に劣り蓄熱性があるため蒸れやすく、かつ、熱可塑性では無いためリサイクルが困難となり焼却される場合、焼却炉の損傷が大きく、かつ、有毒ガス除去に経費が掛かる。このため埋め立てされることが多くなったが、地盤の安定化が困難なため埋め立て場所が限定され経費も高くなっていく問題がある。また、成形加工性は優れるが製造中に使用される薬品の公害問題などもある。蒸れの改良法として特開昭63−77482号公報等が提案されているが不充分なものである。
【0004】
蒸れを改良した座席として、クッション層にポリエステル繊維をゴム系又はウレタン系接着剤で接着した樹脂綿、例えば接着剤にゴム系を用いたものとして特開昭60−11352号公報、特開昭61−141388号公報、特開昭61−141391号公報等がある。又、架橋性ウレタンを用いたものとして特開昭61−137732号公報等がある。これらのクッション層を用いた座席は耐久性に劣る。サイド部の密度等を変えて形態保持を改良しようとしたものが実開昭57−90663号公報や実開昭57−90664号公報に提案されているが、耐久性が未だ不充分であり、且つ、熱可塑性でなく、単一組成でもないためリサイクルも出来ない等の問題、及び加工時の煩雑さなどの問題がある。また、製造中に使用される薬品の公害問題などもある。
【0005】
リサイクルが可能で、火災時、有毒な燃焼ガス発生が少ない座席になる熱接着繊維を接着剤にしたポリエステル硬綿を用いたものが、例えば特開平5−208470号公報、特開平5−220278号公報、特開平5−247815号公報、特開平5−269264号公報、特開平5−329937号公報等が提案されているが、用いている熱接着繊維の接着成分が脆い非晶性のポリマ−を用いるため接着部分が脆く、使用中に接着部分が簡単に破壊されて形態や弾力性が低下するなどの耐久性に劣る問題がある。特開平5−329937号公報等で部分的に密度を変える提案もあるが、用いている熱接着繊維の接着成分が脆い非晶性のポリマ−を用いるため接着部分が脆く、使用中に接着部分が簡単に破壊されて形態保持性が劣るものしか得られていない。改良法として、交絡処理する方法が特開平4−245965号公報等で提案されているが、接着部分の脆さは解決されず弾力性の低下が大きい問題がある。また、接着部分が変形しにくくソフトなクッション性を付与しにくい問題もある。なお、これらの方法では深絞り成形が困難である。耐久性を改良する方法として、接着部分を柔らかい、且つある程度変形しても回復するポリエステルエラストマ−を用い、芯成分に非弾性ポリエステルを用いた熱接着繊維を用いたポリエステル硬綿で成形したクッション材がWO−91/19032号公報、特開平5−163654号公報、特開平5−337258号公報等で提案されている。WO−91/19032号公報のポリエステル硬綿はエラストマ−に非晶性成分を含有しており、熱接着部分の形成を良くしてアメーバー状の接着部を形成しているが塑性変形しやいため、及び芯成分が非弾性ポリエステルのため、特に加熱下での塑性変形が著しくなり、耐熱抗圧縮性が低下する問題点がある。これらの改良法として、特開平5−163654号公報にシ−ス成分にイソフタル酸を含有するポリエステルエラストマ−、コア成分に非弾性ポリエステルを用いた熱接着複合繊維のみからなる構造体が提案されているが上述の理由で加熱下での塑性変形が著しくなり、耐熱抗圧縮性が低下するので車両用座席のクッション材に使用するには問題がある。他方、特開平5−337258号公報では、エラストマ−に非晶性成分を含有しないため、耐熱耐久性は改善され、アニ−リングで更に耐熱耐久性を向上させているが、非エラストマ−成分を含有するので、発泡ポリウレタンに比較して未だ耐久性は不充分である。また、繊維を熱成形するので、成形時の煩雑さが解決されていない問題がある
【0006】
土木工事用に使用する熱可塑性のオレフィン網状体が特開昭47−44839号公報に開示されている。が、素材がオレフィンのため耐熱耐久性が著しく劣り車両用座席のクッション材には使用ができないものである。また、特開平1−207462号公報では、塩化ビニ−ル製のフロアマットの開示があるが、室温での圧縮回復性が悪く、耐熱性は著しく悪いので、車両用座席のクッション材としては好ましくないものである。なお、網状構造体を用いた座席に関する知見は何ら開示されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点を解決し、熱可塑性弾性樹脂網状体をクッション材に用いて、ウレタンに近い振動遮断性と耐熱耐久性を付与すると共に、形態保持性を向上させて体型保持を改善し、蒸れ難く座り心地が良く、難燃性を有する安全性の高い座席とその製法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段、即ち本発明は、測地、クッション層の補強体、クッション層よりなり、主要部が座部と背部からなる座席であり、座席のクッション層が、繊度100000デニ−ル以下の連続した線条を曲がりくねらせ互いに接触させて接触部の大部分を融着せしめた3次元立体構造体を形成した熱可塑性弾性樹脂からなる見掛け密度が0.01〜0.2g/cm3 の網状体からなり、座部及び/又は背部のサイド部及び/又は中央部にマトリックスを構成する網状体層より25%圧縮硬さが1.5倍以上硬い網状体からなる芯部網状体を有しており、マトリックスを構成する網状体と芯部網状体は接着剤または自己接着により一体接合され、難燃性を有していることを特徴とする座部、マトリックスを構成する網状体層と芯部の網状体との25%圧縮硬さ比が1.5〜10倍である上記座席、マトリックスを構成する網状体層と芯部の網状体との密度差が0.01〜0.15g/cm3 である上記座席、網状体と側地の間にファイバ−フィルからなるワディング層を配してなる上記座席、クッション層の補強体が熱可塑性樹脂からなる不織布又は、成形体であり、クッション層と一体接合されてなる上記座席、連続した線条の断面形状が中空断面又は及び異形断面である上記座席、熱可塑性弾性樹脂からなる成分を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度に吸熱ピークを持つ上記座席、雌型に、クッション層となる所定形状に切断されたマトリックスとなる網状体を配し、その上に芯部となる所定の形状に切断又は成形された網状体を配し、又はマトリックスの網状体と深部の網状体間に該網状体の融点より少なくとも10℃以上低い融点を持つ接着層を配して、又はその上に更にマトリックスとなる網状体を配し、更に補強体をその上に積層して、雄型で上からクッション層を圧縮すると共に、網状体の融点より5℃高い温度〜融点より50℃低い温度の加熱媒体で加熱して熱成形により一体化した後、一旦冷却するか、又は連続して、網状体のガラス転移温度より10℃高い温度以上、融点より20℃以上低い温度でアニ−リングして得たクッション成形体に側地を取付けて、座席フレ−ムに固定することを特徴とする座席の製法、雌型に、クッション層となる所定形状に切断されたマトリックスとなる網状体を配し、その上に芯部となる所定の形状に切断又は成形された網状体を配し、又はマトリックスの網状体と深部の網状体間に該網状体の融点より少なくとも10℃以上低い融点を持つ接着層を配して、又はその上に更にマトリックスとなる網状体を配し、更に補強体をその上に積層して、網状体の融点より5℃高い温度〜融点より50℃低い温度の加熱媒体で加熱して網状体が変形できる温度に達して後、雄型で上からクッション層を圧縮して熱成形により一体化した後、一旦冷却するか、又は連続して、網状体のガラス転移温度より10℃高い温度以上、融点より20℃以上低い温度でアニ−リングして得たクッション成形体に側地を取付けて、座席フレ−ムに固定することを特徴とする座席の製法、クッション成形体と側地間にワディング層を配する上記座席の製法である。
【0009】
本発明における熱可塑性弾性樹脂とは、ソフトセグメントとして分子量300〜5000のポリエ−テル系グリコ−ル、ポリエステル系グリコ−ル、ポリカ−ボネ−ト系グリコ−ルまたは長鎖の炭化水素末端をカルボン酸または水酸基にしたオレフィン系化合物等をブロック共重合したポリエステル系エラストマ−、ポリアミド系エラストマ−、ポリウレタン系エラストマ−、ポリオレフィン系エラストマ−などが挙げられる。熱可塑性弾性樹脂とすることで、再溶融により再生が可能となるため、リサイクルが容易となる。例えば、ポリエステル系エラストマ−としては、熱可塑性ポリエステルをハ−ドセグメントとし、ポリアルキレンジオ−ルをソフトセグメントとするポリエステルエ−テルブロック共重合体、または、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体が例示できる。ポリエステルエ−テルブロック共重合体のより具体的な事例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2・6ジカルボン酸、ナフタレン2・7ジカルボン酸、ジフェニル4・4’ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1・4シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、琥珀酸、アジピン酸、セバチン酸ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸または、これらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1・4ブタンジオ−ル、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトレメチレングリコ−ル、ペンタメチレングリコ−ル、ヘキサメチレングリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル、1・1シクロヘキサンジメタノ−ル、1・4シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族ジオ−ル、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオ−ル成分の少なくとも1種、および平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体等のポリアルキレンジオ−ルのうち少なくとも1種から構成される三元ブロック共重合体である。ポリエステルエステルブロック共重合体としては、上記ジカルボン酸とジオ−ル及び平均分子量が約300〜5000のポリラクトン等のポリエステルジオ−ルのうち少なくとも各1種から構成される三元ブロック共重合体である。熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、ジカルボン酸としてはテレフタル酸、または、及びナフタレン2・6ジカルボン酸、ジオ−ル成分としては1・4ブタンジオ−ル、ポリアルキレンジオ−ルとしてはポリテトラメチレングリコ−ルの3元ブロック共重合体または、ポリエステルジオ−ルとしてポリラクトンの3元ブロック共重合体が特に好ましい。特殊な例では、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものも使うこたができる。また、上記エラストマ−に非エラストマ−成分をブレンドされたもの、共重合したもの、ポリオレフィン系成分をソフトセグメントにしたもの等も本発明の熱可塑性弾性樹脂に包含される。ポリアミド系エラストマ−としては、ハ−ドセグメントにナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等及びそれらの共重合ナイロンを骨格とし、ソフトセグメントには、平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体等のポリアルキレンジオ−ルのうち少なくとも1種から構成されるブロック共重合体を単独または2種類以上混合して用いてもよい。更には、非エラストマ−成分をブレンドされたもの、共重合したもの等も本発明に使用できる。ポリウレタン系エラストマ−としては、通常の溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)の存在または不存在下に、(A)数平均分子量1000〜6000の末端に水酸基を有するポリエ−テル及び又はポリエステルと(B)有機ジイソシアネ−トを主成分とするポリイソシアネ−トを反応させた両末端がイソシアネ−ト基であるプレポリマ−に、(C)ジアミンを主成分とするポリアミンにより鎖延長したポリウレタンエラストマ−を代表例として例示できる。(A)のポリエステル、ポリエ−テル類としては、平均分子量が約1000〜6000、好ましくは1300〜5000のポリブチレンアジペ−ト共重合ポリエステルやポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコ−ル等のポリアルキレンジオ−ルが好ましく、(B)のポリイソシアネ−トとしては、従来公知のポリイソシアネ−トを用いることができるが、ジフェニルメタン4・4’ジイソシアネ−トを主体としたイソシアネ−トを用い、必要に応じ従来公知のトリイソシアネ−ト等を微量添加使用してもよい。(C)のポリアミンとしては、エチレンジアミン、1・2プロピレンジアミン等公知のジアミンを主体とし、必要に応じて微量のトリアミン、テトラアミンを併用してもよい。これらのポリウレタン系エラストマ−は単独又は2種類以上混合して用いてもよい。なお、本発明の熱可塑性弾性樹脂の融点は耐熱耐久性が保持できる140℃以上が好ましく、160℃以上のものを用いると耐熱耐久性が向上するのでより好ましい。なお、本発明の網状体は難燃性を付与するため燐系化合物を含有させるため、熱安定性が難燃剤を含有しないものよりやや劣るので必要に応じ、抗酸化剤等を添加して耐熱性や耐久性を向上させるのが特に好ましい。抗酸化剤は、好ましくはヒンダ−ド系抗酸化剤としては、ヒンダ−ドフェノ−ル系とヒンダ−ドアミン系があり、窒素を含有しないヒンダ−ドフェノ−ル系抗酸化剤を1%〜5%添加して熱分解を抑制すると燃焼時の致死量が少ない有毒ガスの発生を抑えられるので特に好ましい。本発明の目的である振動や応力の吸収機能をもたせる成分を構成する熱可塑性弾性樹脂のソフトセグメント含有量は好ましくは15重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、耐熱耐へたり性からは80重量%以下が好ましく、より好ましくは70重量%以下である。即ち、本発明の弾性網状体の振動や応力の吸収機能をもたせる成分のソフトセグメント含有量は好ましくは15重量%以上80重量%以下であり、より好ましくは30重量%以上70重量%以下である。
【0010】
本発明の座席に用いる網状体及び他の部位に用いる熱可塑性弾性樹脂は難燃性を有するのが好ましく、特に燐含有組成物がハロゲン系組成物よりより好ましい。難燃性を有する網状体は熱可塑性弾性樹脂中に燐含有量(Bppm)がソフトセグメント含有量(A重量%)に対し、60A+200以上を満足しない場合は難燃性が劣り、100000ppmを越えると可塑化効果による塑性変形が大きくなり熱可塑性弾性樹脂の耐熱性が劣るので、60A+200≦B≦100000の関係を満足するのが好ましい。より好ましい燐含有量(Bppm)はソフトセグメント含有量(A重量%)に対し、30A+1800≦B≦100000であり、更に好ましい燐含有量(Bppm)はソフトセグメント含有量(A重量%)に対し、16A+2600≦B≦50000である。難燃性は多量のハロゲン化物と無機物を添加して高度の難燃性を付与する方法があるが、燃焼時に致死量の少ない有毒なハロゲンガスを多量に発生し、火災時の中毒の問題があり、焼却時には、焼却炉の損傷が大きくなる問題がある。本発明では、ハロゲン化物の含有量は少なくとも1重量%以下が好ましく、より好ましくは、ハロゲン化物の含有量は0.5重量%以下、最も好ましくはハロゲン化物を含有しないものである。本発明の好ましい燐系難燃剤としては、例えば、ポリエステル系熱可塑性弾性樹脂の場合、樹脂重合時に、ハ−ドセグメント部分に難燃剤として、例えば特開昭51−82392号公報等に記載された10〔2・3・ジ(2・ヒドロキシエトキシ)−カルボニルプロピル〕9・10・ジヒドロ・9・オキサ・10ホスファフェナレンス・10オキシロ等のカルボン酸をハ−ドセグメントの酸成分の一部として共重合したポリエステル系熱可塑性弾性樹脂とする方法や、熱可塑性弾性樹脂に後工程で、例えば、トリス(2・4−ジ−t−ブチルフェニル)フスファイト等の燐系化合物を添加して難燃性を付与することができる。その他、難燃性を付与できる難燃剤としては、各種燐酸エステル、亜燐酸エステル、ホスホン酸エステル(必要に応じハロゲン元素を含有する上記燐酸エステル類)、もしくはこれら燐化合物から誘導される重合物が例示できる。本発明は、熱可塑性弾性樹脂中に各種改質剤、添加剤、着色剤等を必要に応じて添加できる。本発明の網状体は、好ましくは難燃性を付与するために燐を含有させており、この理由は、上記している如く、安全性の観点から、火災時に発生するシアンガス、ハロゲンガス等の致死量の少ない有毒ガスをできるだけ少なくすることにある。このため、本発明での好ましい難燃性網状体の燃焼ガスの毒性指数は好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下である。また、補強体、側地、ワディング層にポリエステル繊維を使用される場合、好ましくはポリエステル系熱可塑性弾性樹脂とすることで分別せずに再生リサイクルができる。
【0011】
本発明での網状体を構成する熱可塑性弾性樹脂からなる線条は、示差走査型熱量計にて測定した融解曲線において、融点以下に吸熱ピ−クを有するのが好ましい。融点以下に吸熱ピ−クを有するものは、耐熱耐へたり性が吸熱ピ−クを有しないものより著しく向上する。例えば、本発明の好ましいポリエステル系熱可塑性樹脂として、ハ−ドセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸などを90モル%以上含有するもの、より好ましくはテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸の含有量は95モル%以上、特に好ましくは100モル%とグリコ−ル成分をエステル交換後、必要な重合度まで重合し、次いで、ポリアルキレンジオ−ルとして、好ましくは平均分子量が500以上5000以下、特に好ましくは1000以上3000以下のポリテトラメチレングリコ−ルを15重量%以上70重量%以下、より好ましくは30重量%以上60重量%以下共重合量させた場合、ハ−ドセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸の含有量が多いとハ−ドセグメントの結晶性が向上し、塑性変形しにくく、かつ、耐熱抗へたり性が向上するが、溶融熱接着後更に融点より少なくとも10℃以上低い温度でアニ−リング処理するとより耐熱抗へたり性が向上する。圧縮歪みを付与してからアニ−リングすると更に耐熱抗へたり性が向上する。このような処理をした網状構造体の線条を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度で吸熱ピークをより明確に発現する。なおアニ−リングしない場合は融解曲線に室温以上融点以下に吸熱ピ−クを発現しない。このことから類推するに、アニ−リングにより、ハ−ドセグメントが再配列され、疑似結晶化様の架橋点が形成され、耐熱抗へたり性が向上しているのではないかとも考えられる。(この処理を疑似結晶化処理と定義する)この疑似結晶化処理効果は、ポリアミド系弾性樹脂やポリウレタン系弾性樹脂にも有効である。
【0012】
本発明座席に使用する補強体、側地、ワディング層を構成する熱可塑性非弾性樹脂とは、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が例示できる。なお、本発明ではガラス転移点温度が少なくとも40℃以上のものを使用するのが好ましい。例えば、ポリエステルでは、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレ−ト(PCHDT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンナフタレ−ト(PCHDN)、ポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)、ポリブチレンナフタレ−ト(PBN)、ポリアリレ−ト等、及びそれらの共重合ポリエステル等が例示できる。ポリアミドでは、ポリカプロラクタム(NY6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(NY66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(NY6−10)等が例示できる。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン・1(PB・1)等が例示できる。本発明に用いる熱可塑性非弾性樹脂としては、クッション材の側地にポリエステルを用いる場合が多いので、廃棄する場合に分離せずにリサイクルが可能なクッション素材として、耐熱性も良好なPET、PEN、PBN、PCHDT等のポリエステルが特に好ましい。なお、樹脂成形体に用いる場合は、必要強度を保持した範囲で耐衝撃性を向上させる成分、例えば熱可塑性弾性樹脂やガラス転移点温度の低いPBT,ポリプロピレンテレフタレ−ト(PPT)、ポリヘキシレンテレフタレ−ト等を5%未満添加するのが好ましい。本発明の好ましい実施形態である難燃性を有する熱可塑性非弾性樹脂は樹脂中に燐含有量は、1000ppm未満では、難燃性が不充分であり、200000ppmを越えると可塑化効果による塑性変形が大きくなり熱可塑性非弾性樹脂の耐熱性が劣るので、1000ppm以上20000ppm以下含有するのが良い。より好ましい燐含有量は2000ppm以上10000ppm以下、最も好ましくは3000ppm以上8000ppmである。難燃性は多量のハロゲン化物と無機物を添加して高度の難燃性を付与する方法があるが、燃焼時に致死量の少ない有毒なハロゲンガスを多量に発生し、火災時の中毒の問題があり、焼却時には、焼却炉の損傷が大きくなるので好ましくは含有しないものが良い。特に塩化ビニ−ルは自己消火性を有するが燃焼すると有毒ガスを多く発生するので本発明に用いるのは好ましくない。本発明では、ハロゲン化物の含有量は少なくとも1重量%以下、好ましくは、ハロゲン化物の含有量は0.5重量%以下、より好ましくはハロゲン化物を含有しないものである。本発明の燐系難燃剤としては、例えば、ポリエステル系熱可塑性非弾性樹脂の場合、樹脂重合時に、難燃剤として、例えば特開昭51−82392号公報等に記載された10〔2・3・ジ(2・ヒドロキシエトキシ)−カルボニルプロピル〕9・10・ジヒドロ・9・オキサ・10ホスファフェナレンス・10オキシロ等のカルボン酸を酸成分の一部として共重合したポリエステル系熱可塑性非弾性樹脂とする方法や、熱可塑性非弾性樹脂を射出成形時の後工程で、例えば、トリス(2・4−ジ−t−ブチルフェニル)フスファイト等の燐系化合物を添加して難燃性を付与することができる。その他、難燃性を付与できる難燃剤としては、各種燐酸エステル、亜燐酸エステル、ホスホン酸エステル(必要に応じハロゲン元素を含有する上記燐酸エステル類)、もしくはこれら燐化合物から誘導される重合物が例示できる。本発明は、熱可塑性非弾性樹脂中に各種改質剤、添加剤、着色剤等を必要に応じて添加できる。本発明の座席を構成するクッション体は、難燃性を付与するために燐を含有させており、この理由は、上記している如く、安全性の観点から、火災時に発生するシアンガス、ハロゲンガス等の致死量の少ない有毒ガスをできるだけ少なくすることにある。このため、本発明の座席を構成するクッション体の燃焼ガスの毒性指数は好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下である。また、側地やワディング層に好ましくはポリエステル系熱可塑性非弾性樹脂とすることで分別せずに再生リサイクルができる。
【0013】
本発明は、繊度が100000デニ−ル以下の連続した線条を曲がりくねらせ互いに接触させて該接触部の大部分が融着した3次元立体構造体を形成した熱可塑性弾性樹脂からなる見掛け密度が0.01g/cm3 から0.2g/cm3 の網状体で構成されたクッション層において、座部又は、及び背部のサイド部(例えば、図1の1、1’、5、5’)及び、又は中央部(例えば、図1の2、3、4、6、7、8)に、マトリックスを構成する網状体層(例えば、図2の10)より25%圧縮硬さが1.5倍以上硬い網状体からなる芯部(例えば、図2の9)で構成され、該網状体が接着剤(例えば、図2の14)または自己接着により一体接合された難燃性を有するクッション層とクッション層の補強体(例えば、図2の13)、及び側地(図2の12)から構成された座席(例えば、図1)である。本発明の座席は、クッション層が、繊度が100000デニ−ル以下の連続した線条を曲がりくねらせ互いに接触させて該接触部の大部分が融着した3次元立体構造体を形成した熱可塑性弾性樹脂からなる見掛け密度が0.01g/cm3 から0.2g/cm3 の網状体で構成されているので、外部から与えられた振動を熱可塑性弾性樹脂の振動吸収機能で大部分の振動を吸収減衰し、局部的に大きい変形応力を与えられた場合でも網状体の表面が熱成形により実質的にフラット化され接触部の大部分が融着しており、クッション層の面で変形応力を受け止め変形応力を分散させ、熱可塑性弾性樹脂からなる線条が3次元立体構造体を形成し融着一体化されて芯部が座席形態を保持しつつ、網状体は容易に構造体全体が変形してエネルギ−変換により変形応力を吸収し、変形応力が解除されると熱可塑性弾性樹脂のゴム弾性で容易に元の形態に回復する機能があるので耐へたり性が良好である。公知の非弾性樹脂のみからなる線条で構成した網状体では、ゴム弾性を持たないので圧縮変形により塑性変形を生じて回復しなくなり耐久性が劣る。なお、網状体の線条が連続していない場合は、接着点が応力の伝達点となるため接着点に著しい応力集中が起こり構造破壊を生じ前記従来技術にも例示した特開昭60−11352号公報、特開昭61−137732号公報、WO91−19032号公報等に開示された構造体の如く耐熱耐久性が劣り好ましくない。また、非弾性樹脂よりなる繊維をマトリックスとした硬綿では、塑性変形を生じて耐へたり性が劣るのでクッション層に用いるには好ましくない。融着していない場合は、形態保持が出来ず、構造体が一体で変形しないため、応力集中による疲労現象が起こり耐久性が劣ると同時に、形態が変形して体型保持ができなくなるので好ましくない。本発明のより好ましい融着の程度は、線条が接触している部分の大半が融着した状態であり、もっとも好ましくは接触部分が全て融着した状態である。本発明の網状体を形成する振動吸収性と弾性回復性の良い熱可塑性弾性樹脂からなる線条の繊度は100000デニ−ル以下である。座席のクッション層の見掛け密度を0.2g/cm3 以下にした場合、100000デニ−ルを越えると構成本数が少なくなり、密度斑を生じて部分的に耐久性の悪い構造ができ、応力集中による疲労が大きくなり耐久性が低下するので好ましくない。本発明の熱可塑性弾性樹脂からなる線条の繊度は、繊度が細すぎると抗圧縮性が低くなり過ぎて変形による応力吸収性が低下するので100デニ−ル以上であり、構成本数の低下による構造面の緻密性を損なわない50000デニ−ル以下である。より好ましくは500デニ−ル以上、10000デニ−ル以下である。本発明のクッション層を形成する網状体の平均の見掛け密度は、0.005g/cm3 では反発力が失われ、振動吸収能力や変形応力吸収能力が不充分となりクッション機能を発現させにくくなる場合があり、0.25g/cm3 以上では反発力が高すぎて座り心地が悪くなる場合があるので、振動吸収能力や変形応力吸収機能が生かせてクッション体としての機能が発現されやすい0.01g/cm3 以上0.20g/cm3 以下であり、好ましくは0.03g/cm3 以上0.08g/cm3 以下である。本発明の網状体の厚みは特に限定されないが、厚みが5mm未満では応力吸収機能と応力分散機能が低下するので、好ましい厚みは力の分散をする面機能と振動や変形応力吸収機能が発現できる厚みとして10mm以上であり、より好ましくは20mm以上である。本発明のクッション層は、網状体で構成されるので通気性が発泡ウレタンや硬綿クッションより著しく良好なため、蒸れにくく快適な座り心地が与えられる。本発明においては、座部又は、及び背部のサイド部(例えば、図1の1、1’、5、5’)及び、又は中央部(例えば、図1の2、3、4、6、7、8)に、マトリックスを構成する網状体層(例えば、図2の10)より25%圧縮硬さが1.5倍以上硬い網状体からなる芯部(例えば、図2の9)で構成され、該網状体が接着剤(例えば、図2の14)または自己接着により一体接合された難燃性を有するクッション層から形成されている。マトリックスより25%圧縮硬さが1.5倍以上硬い網状体からなる芯部がサイド部の座席凸部の形態保持性を著しく向上させる。また、座部の主着座部となる中央部の大腿部が当たる部分(図1の6)や背部の中央部(図1の4や2)のような、常に圧縮応力が強く掛かる部分に耐久性及び回復性の良好な熱可塑性弾性樹脂からなる線条で形成された芯部(図2−2の9や図3−2の9)をマトリックスとなる網状体(例えば、ソフトセグメントの含有量が20から50重量%の素材からなる線条を用いたもの)で覆うことにより一体化された場合、耐久性が著しく向上し、且つ、マトリックスとなる網状体が、やや繊度を細くし、構成本数を多くした少し柔らかな層(好ましくは、ソフトセグメントの含有量が30から50重量%の素材からなる線条を用いたもの)として適度の沈み込みにより臀部や背中に快適なタッチを与えると共に圧力分布の均一化をはかりつつ、更に大きき応力が掛かった時、芯部が変形応力を支えて好ましい体型保持性を与えることができる。大きい応力が掛かる部分に芯部がない場合、大きい応力により沈み込みが大きくなるため、床つき感がわるくなると共に、応力に対する体型保持性も低下するので好ましくない。更には、耐熱耐久性の低下も生じやすくなるので好ましくない。芯部の硬さは、マトリックスを構成する網状体と芯部の網状体との25%圧縮硬さ比が1.5から10倍未満が好ましい。1.5倍未満では沈み込みが大きくなり、10倍以上では圧縮された時に異物感をあたえるので望ましくない。より好ましい硬さ比は2倍以上5倍未満である。芯部の素材が柔らかい回復性の良い素材を使用する場合(たとえば、ソフトセグメント含有量が40から70重量%のもの)、線条のモジュラスが低下するので、密度を高くする方法が採用できる。好ましい密度差は、マトリックスを構成する網状体層と芯部の網状体との密度差が0.03から0.15g/cm3 であり、より好ましくは0.05から0.10g/cm3 である。また、同一素材や、やや硬い素材を芯部に採用する場合(例えば、ソフトセグメント含有量が10から40重量%以下のもの)、密度差は少なくできる。これらの場合の好ましい密度差は0.01から0.10g/cm3 であり、より好ましくは0.03から0.05g/cm3 である。マトリックスを構成する網状体と芯部の網状体とは接着剤または自己接着により一体化された構成する。一体化していないと圧縮応力が芯部に伝達するとき、マトリックス層と芯部との界面で層間にずれを生じ、マトリックス層の耐久性を低下させる問題を生じるので好ましくない。マトリックス層や芯部は必要に応じ繊度の異なる線状を見掛け密度との組合せで最適な構成とする異繊度積層構造とする方法も好ましい実施形態として選択できる。本発明の座席は、クッション層の形態保持性と座席フレ−ムの接続部の補強体(図中の13)として熱可塑性樹脂からなる不織布(例えば連続繊維からなるスパンボンド不織布)又は、成形体(形状は、例えばネット状の構造を有するものや、ネットが中空構造化したものが好ましい)がクッション層と接合された構成が好ましい。補強体がない場合は、フレ−ムと人体の圧縮による応力がフレ−ム接続部分に集中してクッション層の形態保持性と耐久性が低下するので好ましくない。なお、本発明座席のクッション層のマトリックス層と芯部の網状体やクッション層と補強層を接合一体化する方法に、接着剤を用いる場合は、接着剤としては、網状体と樹脂成形体の両方に良好な接着性を有する樹脂が好ましく、特には熱接着性を有するものが良い。特に好ましい実施形態としては、例えば、網状体がポリエステル系熱可塑性弾性樹脂で、樹脂成形体がポリエステル系熱可塑性弾性樹脂又は、ポリエステル系熱可塑性非弾性樹脂の場合、少なくとも網状体の熱可塑性弾性樹脂の融点より10℃以上低い融点のポリエステル系樹脂が良い。好ましくは、網状体の融点より20℃から50℃低い融点のものが良い。クッション層の変形に耐えるためには、熱可塑性弾性樹脂が特に好ましい。接着剤の形態は特には限定されないが、フィルム、不織布、粉末又は溶液状のものを塗布する等の方法があるが、取り扱い上からと熱風を貫通させて熱接着させるので不織布が特に好ましい。不織布としては、熱可塑性弾性樹脂からなるスパンボンド不織布、メルトブロ−不織布、又は、短繊維不織布などが使える。自己接着の場合は、網状体の線条に熱接着機能を付与するため、高融点成分と低融点成分のシ−ス・コア構造又はサイドバイサイド構造とした線条で網状体を形成する。網状体の線条を複合構造とした場合、好ましい熱接着機能も付与できる。例えば、シ−スコア構造ではシ−ス成分の振動や変形応力をエネルギ−変換が容易なソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂を熱接着成分とし、コア成分の抗圧縮性を示すソフトセグメント含有量が少ない熱可塑性弾性樹脂を網状形態の保持機能をもたせるための高融点成分とする構成で、熱接着成分の融点を高融点樹脂の融点より10℃以上低くしたものを用いることにより熱接着機能も付与できる。また、本発明の難燃性補強網状体の表面層を振動や変形応力をエネルギ−変換が容易なソフトセグメント含有量が多い低融点の熱可塑性弾性樹脂を熱接着成分とし積層することでも好ましい熱接着機能を付与できる。熱接着機能を発現させるに好ましい網状体中の線条を形成する熱接着成分の融点は高融点成分の融点より15℃から50℃低い融点であり、より好ましくは20℃から40℃低い融点である。かかるクッション層を有する本発明の座席は振動を遮断し、耐熱耐久性、形態保持性、クッション性の優れた蒸れにくい車両用座席である。なお、本発明座席のクッション層、補強体及び側地は安全性の観点からは難燃性のものを用いるのが特に好ましい。
【0014】
本発明座席の網状体と側地の間にファイバ−フィルからなるワディング層を配することで、座席のタッチを柔らかくする効果があるので好ましい。ワディング層は、熱接着繊維が熱可塑性弾性樹脂からなる繊維を用いた場合、耐熱耐久性とクッション性が良好となるので特に好ましい。熱接着繊維に熱可塑性非弾性樹脂からなる繊維を用いた場合、耐熱耐久性が劣るので好ましくない。ワディング層を側地とクッション層との熱接着成分として使用する場合は網状体の熱可塑性弾性樹脂の融点より少なくとも10℃以上低い融点の熱可塑性弾性樹脂を熱接着成分とした繊維を用いることで網状構造を保持して網状体および側地との熱接着が可能となるので好ましい実施形態である。
【0015】
本発明では網状体の線条の断面形状は特には限定されないが、中空断面や異形断面にすることで好ましい抗圧縮性(反発力)やタッチを付与することができるので特に好ましい。抗圧縮性は繊度や用いる素材のモジュラスにより調整して、繊度を細くしたり、柔らかい素材では中空率や異形度を高くし初期圧縮応力の勾配を調整できるし、繊度をやや太くしたり、ややモジュラスの高い素材では中空率や異形度を低くして座り心地が良好な抗圧縮性を付与する。中空断面や異形断面の他の効果として中空率や異形度を高くすることで、同一の抗圧縮性を付与した場合、より軽量化が可能となり、自動車等の座席に用いると省エネルギ−化ができる。好ましい抗圧縮性(反発力)やタッチを付与することができる他の好ましい方法として、本発明の網状体の線条を複合構造とする方法がある。複合構造としては、シ−スコア構造またはサイドバイサイド構造及びそれらの組合せ構造などが挙げられる。が、特にはクッション層が大変形してもエネルギ−変換できない振動や変形応力をエネルギ−変換して回復できる立体3次元構造とするために線状の表面の50%以上を柔らかい熱可塑性弾性樹脂が占めるシ−スコア構造またはサイドバイサイド構造及びそれらの組合せ構造などが挙げられる。すなわち、シ−スコア構造ではシ−ス成分は振動や変形応力をエネルギ−変換が容易なソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂とし、コア成分は抗圧縮性を示すソフトセグメント含有量が少ない熱可塑性弾性樹脂で構成し適度の沈み込みによる臀部への快適なタッチを与えることができる。サイドバイサイド構造では振動や変形応力をエネルギ−変換が容易なソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の溶融粘度をソフトセグメント含有量が少ない抗圧縮性を示す熱可塑性弾性樹脂の溶融粘度より低くして線状の表面を占めるソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の割合を多くした構造(比喩的には偏芯シ−ス・コア構造のシ−スに熱可塑性弾性樹脂を配した様な構造)として線状の表面を占めるソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の割合を80%以上としたものが特に好ましく、最も好ましくは線状の表面を占めるソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の割合を100%としたシ−スコアである。ソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の線状の表面を占める割合が多くなると、溶融して融着するときの流動性が高いので接着が強固になる効果があり、構造が一体で変形する場合、接着点の応力集中に対する耐疲労性が向上し、耐熱性や耐久性がより向上する。
【0016】
次に本発明の製法を述べる。本発明での網状体は、本発明がなされた時点では公知ではないので特に詳細にその製法を述べる。複数のオリフィスを持つ多列ノズルより熱可塑性弾性樹脂を各ノズルオリフィスに分配し、該熱可塑性樹脂の融点より20℃以上、80℃未満高い溶融温度で、該ノズルより下方に向けて吐出させ、溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引取り装置で挟み込み冷却槽で冷却せしめて連続した網状体を得る。本発明では、前記の如く、難燃性を必要条件とはしないが必要に応じ難燃性を付与するために、燐化合物を重合時に添加して共重合する方法と重合後に添加して混合練り込みする方法ができる。混合練り込みは二軸混練押出機又はダルメ−ジ、ピン等の混練機能をもつ単軸押出機を用い、溶融押し出し前に行う場合と、溶融押し出し時に定量供給等の方法で行う場合を選択できる。難燃剤の定量供給が出来れば溶融押し出し時に混練するのが最も安価な方法となる。このような方法で好ましくはソフトセグメント量(A重量%)と燐含有量(Bppm)が60A+200≦B≦100000の関係を満足する燐含有量を熱可塑弾性樹脂に添加して、次いで溶融押出しして網状体を形成する。溶融した燐含有熱可塑弾性樹脂は複数のオリフィスを持つ多列ノズルに供給し、オリフィスより下方へ吐出する。線条を複合化する場合は、多数の押出機より別々に溶融混練りした熱可塑性弾性樹脂を、多列ノズルのオリフィス直前で複合化するように分配合流させて下方に吐出する。ス−スコアではコア成分を中央から供給し、その回りからシ−ス成分を合流させて吐出する。サイドバイサイドでは左右または前後から各成分を合流させて吐出する。この時の溶融温度は、熱可塑性弾性樹脂の融点より10℃〜80℃高い温度である。(複合化される場合は高融点成分の融点より10℃以上高く、低融点成分の融点より80℃以下の同一の溶融温度が好ましい)熱可塑性弾性樹脂の融点より80℃を越える高い溶融温度にすると熱分解が著しくなり熱可塑性弾性樹脂のゴム弾性特性が低下するので好ましくない。他方、熱可塑性弾性樹脂の融点より10℃以上高くしないとメルトフラクチャ−を発生し正常な線条形成が出来なくなり、また、吐出後ル−プ形成しつつ接触させ融着させる際、線条の温度が低下して線条同士が融着しなくなり接着が不充分な網状体となる場合があり好ましくない。好ましい溶融温度は融点より25℃から60℃高い温度、より好ましくは融点より30℃から40℃高い温度である。オリフィスの形状は特に限定されないが、中空断面(例えば三角中空、丸型中空、突起つきの中空等となるよう形状)及び、又は異形断面(例えば三角形、Y型、星型等の断面二次モ−メントが高くなる形状)とすることで前記効果以外に溶融状態の吐出線条が形成する3次元構造が流動緩和し難くし、逆に接触点での流動時間を長く保持して接着点を強固にできるので特に好ましい。特開平1−2075号公報に記載の接着のための加熱をする場合、3次元構造が緩和し易くなり平面的構造化し、3次元立体構造化が困難となるので好ましくない。網状体の特性向上効果としては、見掛けの嵩を高くでき軽量化になり、また抗圧縮性が向上し、弾発性も改良できへたり難くなる。中空断面では中空率が80%を越えると断面が潰れ易くなるので、好ましくは軽量化の効果が発現できる10%以上70%以下、より好ましくは20%以上60%以下である。オリフィスの孔間ピッチは線状が形成するル−プが充分接触できるピッチとする必要がある。緻密な構造にするには孔間ピッチを短くし、粗密な構造にするには孔間ピッチを長くする。本発明の孔間ピッチは好ましくは3mm〜20mm、より好ましくは5mm〜10mmである。本発明では所望に応じ異密度化や異繊度化もできる。列間のピッチ又は孔間のピッチも変えた構成、及び列間と孔間の両方のピッチも変える方法などで異密度層を形成できる。また、オリフィスの断面積を変えて吐出時の圧力損失差を付与すると、溶融した熱可塑性弾性樹脂を同一ノズルから一定の圧力で押し出される吐出量が圧力損失の大きいオリフィスほど少なくなる原理を使って長手方向の区間でオリフィスの断面積が異なる列を少なくとも複数有するノズルを用い異繊度線条からなる網状構造体を製造することができる。次いで、該ノズルより下方に向けて吐出させ、ル−プを形成させつつ溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、接合した網状構造体両面を引取りネットで挟み込み、網状体の表面の溶融状態の曲がりくねった吐出線条を45°以上折り曲げて変形させて表面をフラット化すると同時に曲げられていない吐出線条との接触点を接着して構造を形成後、連続して冷却媒体(通常は室温の水を用いるのが冷却速度を早くでき、コスト面でも安くなるので好ましい)で急冷して本発明の3次元立体網状構造体化した網状体を得る。ノズル面と引取り点の距離は少なくとも40cm以下にすることで吐出線条が冷却され接触部が融着しなくなることを防ぐのが好ましい。吐出線条の吐出量5g/分孔以上と多い場合は10cm〜40cmが好ましく、吐出線条の吐出量5g/分孔未満と少ない場合は5cm〜20cmが好ましい。網状体の厚みは溶融状態の3次元立体構造体両面を挟み込む引取りネットの開口幅(引取りネット間の間隔)で決まる。本発明では上述の理由から引取りネットの開口幅は5mm以上とする。次いで水切り乾燥するが冷却媒体中に界面活性剤等を添加すると、水切りや乾燥がしにくくなったり、熱可塑性弾性樹脂が膨潤することもあり好ましくない。尚、ノズル面と樹脂を固化させる冷却媒体上に設置した引取りコンベアとの距離、樹脂の溶融粘度、オリフィスの孔径と吐出量などにより所望のループ径や線径をきめられる。冷却媒体上に設置した間隔が調整可能な一対の引取りコンベアで溶融状態の吐出線条を挟み込み停留させることで互いに接触した部分を融着させつつ連続的に冷却媒体中に引込み固化させ網状構造体を形成する時、上記コンベアの間隔を調整することで、融着した網状体が溶融状態でいる間で厚み調節が可能となり、所望の厚みのものが得られる。コンベア速度も速すぎると、接触点の形成が不充分になったり、融着点が充分に形成されるまでに冷却され、接触部の融着が不充分になる場合がある。また、速度が遅過ぎると溶融物が滞留し過ぎ、密度が高くなるので、所望の見掛け密度に適したコンベア速度を設定する必要がある。かくして得られた網状体は、次いで、座席のクッション形態にあわせた形に打ち抜き、所定形状の切断された網状体を得る。網状体をクッション層に用いる場合、その使用目的、使用部位により使用する樹脂、繊度、ル−プ径、嵩密度を選択する必要がある。例えば、ソフトなタッチと適度の沈み込みと張りのある膨らみを付与するためには、低密度で細い繊度、細かいル−プ径にするのが好ましく、中層のクッション機能も発現させるには、共振振動数を低くし、適度の硬さと圧縮時のヒステリシスを直線的に変化させて体型保持性を良くし、耐久性を保持させるために、中密度で太い繊度、やや大きいル−プ径の層と低密度で細い繊度、細かいル−プ径の層を積層一体化した構造にするのが好ましい。また、芯部は高密度で25%圧縮硬さをマトリックス層より固くしたものを形成して、必要に応じて凸部に必要な形状に成形したものを作成するのが好ましい。 さらには、樹脂製造過程以外でも性能を低下させない範囲で製造過程から成形体に加工し、座席化する任意の段階で難燃化、防虫抗菌化、耐熱化、撥水撥油化、着色、芳香等の機能付与を薬剤添加等の処理加工ができる。
【0017】
ついで、本発明の座席は、一例として、図4の(G)に示すように、通気穴16を有する雌型15にワディング層となる熱可塑性弾性樹脂からなる熱接着繊維(熱接着成分の融点は網状体の融点より10℃以上低いもの、より好ましくは好ましくは30℃〜50℃低い融点)とファイバ−フィル母材を混合開繊したウエッブ11と所定形状に切断されたクッションのマトリックス層となる網状体10と網状体の融点より少なくとも10℃以上低い融点(好ましくは30℃〜50℃低い融点)を持つ接着剤層14を配し、図4の(H)に示すように、その上に芯部となる網状体9を積層して、ついで、図4の(G)で積層した部分を芯部の網状体の上に折り返し、その上に接着剤層14とスパンボンドからなる補強体13を積層して、裏面又は背面となる側から、図4のIのごとく通気穴16を有する雄型17で上からクッション層を圧縮すると共に、網状体の融点より5℃高い温度〜融点より50℃低い温度の加熱媒体を(a)の方向から(b)の方向に貫通させて加熱して熱成形により一体化した後、一旦冷却するか、又は連続して、網状体のガラス転移温度より10℃高い温度以上、融点より20℃以上低い温度でアニ−リングして得たクッション成形体を得る。熱成形は、雄型17で圧縮する前に加熱媒体を漏れないようにして加熱後に雄型で圧縮する方法も選択できる。この方法では、形状の仕上がりがよりシャ−プにできるので好ましい。ついで、得られたクッション成形体に側地を取付けて、座席フレ−ムに固定して本発明の座席が得られる。網状体がシ−スコア構造の線条からなる場合、シ−ス成分の融点より5℃以上高い温度から網状体のコア成分の融点より5℃以上低い温度で熱成形することで、網状体構造を保持して、所望の座席形状に形成出来、且つ、成形体の熱接着が強固にできる好ましい事例である。熱接着剤層が接着剤を各網状体や補強体面に塗布するか、熱接着不織布14を積層して熱成形することもできる。熱成形時の昇温時間は15分以内にしないと低融点成分の熱分解が促進され接着機能が低下したり、生産性が低下するので好ましくない。好ましくは、10分以内、より好ましくは5分以内に加熱温度まで昇温し、1分から5分程度加熱温度を保持し成形して、ついで冷却する。本発明の好ましい方法としては、連続して、又は一旦冷却後、一体成形して製品化に至る任意の工程で熱可塑性弾性樹脂のガラス転移点温度より10℃高い温度以上、融点より少なくとも10℃以下の温度でアニ−リングよる疑似結晶化処理を行うのがより好ましい製法である。疑似結晶化処理温度は、少なくとも融点(Tm)より10℃以上低く、ハ−ドセグメントのガラス転移点温度であるTanδのα分散立ち上がり温度(Tαcr)以上で行う。この処理で、融点以下に吸熱ピ−クを持ち、疑似結晶化処理しないもの(吸熱ピ−クを有しないもの)より耐熱耐へたり性が著しく向上する。本発明の好ましい疑似結晶化処理温度は(Tαcr+10℃)から(Tm−20℃)である。連続してアニ−リングする場合、例えば、ガラス転移点温度+10℃以上、融点より20℃以上低い温度まで冷却して、5分以上その温度を保持後、50℃未満まで冷却して金型からクッション体を取り出す。接着剤層の融点が低く、アニ−リング温度と熱成形温度が同一温度でできる場合は、特別にアニ−ルをする必要がない。一旦冷却後、非連続してアニ−ルすることで同様の効果が発現する。かくして、単なる熱処理により疑似結晶化させても耐熱耐へたり性がより向上したクッション体を得る。が更には、別途、10%以上の圧縮変形を付与してアニ−リングすることで耐熱耐へたり性が著しく向上するのでより好ましい。かくして得られたクッション体は、側地12を被せて、好ましくは難燃性の側地、例えば東洋紡績(株)製の難燃性ポリエステル繊維ハイムを用いたポリエステルモケットを被せてクッション体に添わせてクッション体の裏側で側地を止めると共に、クッション表面に側地12を添わして、クッション体の凹部より、例えば、実開昭56−101071号公報、実開昭60−109499号公報等に開示された引込みボタン等でクッション成形体を貫通させて側地を吊り込み、又は、公知の吊り込み方法も採用できる。次いで座席のセットフレ−ムに固定して本発明の座席が得られる。
【0018】
本発明の座席は、回復性と振動吸収性の良い熱可塑性弾性樹脂からなる網状体をクッション層に用い、通気性を良くし、芯部の形態保持効果向上によるクッション体の体型保持性を向上させているので、自動車や鉄道車両用の座席に最適な、振動遮断性、耐熱耐久性、形態保持性、クッション性の優れた、蒸れにくく、難燃性を有し、燃焼ガスの毒性指数が低い、安全性の高い座席を提供できる。自動車以外に、鉄道用、船舶用、事務用、家具用等の椅子にも勿論有用である。
【0019】
【実施例】
以下に実施例で本発明を詳述する。
【0020】
なお、実施例中の評価は以下の方法で行った。
1.融点(Tm)および融点以下の吸熱ピ−ク
島津製作所製TA50,DSC50型示差熱分析計を使用し、昇温速度20℃/分で測定した吸発熱曲線から吸熱ピ−ク(融解ピ−ク)温度を求めた。
2.Tαcr
ポリマ−を融点+10℃に加熱して、厚み約300μm のフイルムを作成して、オリエンテック社製バイブロンDDVII型を用い、110Hz、昇温速度1℃/分で測定したTanδ(虚数弾性率M”と弾性率の実数部分M’との比M”/M’)のゴム弾性領域から融解領域への転移点温度に相当するα分散の立ち上がり温度。
3.見掛け密度
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、4か所の高さを測定し、体積を求め試料の重さを体積で徐した値で示す。(n=4の平均値)
4.25%圧縮硬さ比
試料を30cm×30cmの大きさに切断し、4か所の高さを測定して厚みを求め、オリエンテック社製テンシロンII型にてφ15cm円盤にて厚みの50%まで圧縮した時の歪み−応力曲線より、25%圧縮時の応力を求め、芯部の25%圧縮時の応力をマトリックス部の25%圧縮時の応力で除した値で示す。(n=4の平均値)
5.線条の繊度
試料を10箇所から各線条部分を切り出し、アクリル樹脂で包埋して断面を削り出し切片を作成して断面写真を得る。各部分の断面写真より各部の断面積(Si)を求める。また、同様にして得た切片をアセトンでアクリル樹脂を溶解し、真空脱泡して密度勾配管を用いて40℃にて測定した比重(SGi)を求める。ついで次式より線状の9000mの重さを求める。(単位cgs)
繊度=〔(1/n)ΣSi×SGi〕×900000
6.融着
試料を目視判断で融着しているか否かを接着している繊維同士を手で引っ張って外れないか否かで外れないものを融着していると判断する。
7.耐熱耐久性(70℃残留歪)
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、50%圧縮して70℃乾熱中22時間放置後冷却して圧縮歪みを除き1日放置後の厚みと(b)を求め、処理前の厚み(a)から次式、即ち(a−b)/a×100より算出する。単位%(n=3の平均値)
8.繰返し圧縮歪
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、島津製作所製サ−ボパルサ−にて、25℃65%RH室内にて50%の厚みまで1Hzのサイクルで圧縮回復を繰り返し2万回後の試料を1日放置後の厚み(b)を求め、処理前の厚み(a)から次式、即ち(a−b)/a×100より算出する。単位%(n=3の平均値)
9.燃焼ガスの毒性指数
JIS−K−7217の方法で測定した各燃焼ガス量(mg)を10分間吸入した時の致死量(mg/10リットル)で除した値の積算値で示す。
10.座り心地
30℃RH75%室内で、本発明の方法により作成した座席、又は比較の方法で作成した座席にパネラ−を座らせ以下の評価をおこなった。(n=5)
(1) 床つき感:座ったときの「どすん」と床に当たった感じの程度を感覚的に定性評価した。感じない;◎、殆ど感じない;○、やや感じる;△、感じる;×
(2) 蒸れ感:2時間座っていて、臀部やふと股の内側の座席と接する部分が蒸れた感じを感覚的に定性評価した。殆ど感じない:◎、僅かに蒸れを感じる;○、やや蒸れを感じる;△、蒸れを著しく感じる;×
(3) 8時間以内でどの程度我慢して座席に座っていられるか:1時間以内;×、2時間以内;△、4時間以内;○、4時間以上;◎
(4) 4時間座席に座らせたときの腰の疲れ程度を感覚的に定性評価した。無し;◎、殆ど疲れない;○、やや疲れる;△、非常に疲れる;×
(5) 総合評価: (1)から(4) までの評価の◎を4点、○を3点、△を2点、×を1点として12点以上で△を含まないもの;非常に良い(◎)、12点以上で△を含むもの;良い(○)、10点以上で×を含まないもの;やや悪い(△)、×を含むもの;悪い(×)として評価した。
11.耐久性
作成した座席(座部及び背部)の中央、及びサイドに直径10cmの平板で60kgの圧縮力で繰り返し圧縮できる装置にて、0.5Hzのサイクルで100回繰り返し圧縮させて、座席のへたり程度を以下の基準で判定した。◎:へたりなし。○:へたり軽度。△:少しへこみがあり、側地のたるみが出てへたりが判る。×:へこみが大きく目立ちへたりが著しい。(n=3の平均値)
【0021】
実施例1
ポリエステル系エラストマ−として、ジメチルテレフタレ−ト(DMT)及び又は、ジメチルイソフタレ−ト(DMI)又は、ジメチルナフタレ−ト(DMN)と1・4ブタンジオ−ル(1・4BD)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、ポリテトラメチレングリコ−ル(PTMG)を添加して昇温減圧しつつ重縮合せしめポリエ−テルエステルブロック共重合エラストマ−を生成させ、次いで抗酸化剤2%を添加混合練込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥して得られた熱可塑性弾性樹脂原料の処方を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
幅50cm、長さ5cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ10mm、長さ方向の孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径2mm、内径1.6mmでトリプルブリッジの中空形成性断面としたノズルに、得られたA−1を、混練り機能をもつ押出機にて、定量供給しつつ、難燃剤として既存化学物質番号(3)−3735を燐含有量10000ppmとなるように添加して溶融混練りし、225℃にて単孔当たりの吐出量2.0g/分にてノズル下方に吐出させ、ノズル面10cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、両面を挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ、次いで水切り処理した後、所定の大きさに切断して得られたマトリックス層の網状体の特性を表2に示す。ついでA−2を245℃にて、単孔吐出量3.0g/分にて吐出した以外同様にして得た芯部の網状体の特性を表2に示す。マトリックス層の網状体は断面形状が三角おむすび型中空断面で中空率が40%、繊度が9000デニ−ル、燐含有量10000ppm(60A+200=2780ppm)の線条で形成しており、平均の見掛け密度が0.045g/cm3 、25%圧縮硬さは14kgであった。この網状体は柔らかい弾性樹脂の特性が生かせた網状構造のため耐熱性、常温での耐久性に優れたクッション機能を有し、難燃性で燃焼ガスの毒性指数も低い安全性の高いマトリックス層に適した網状体層であった。芯部の網状体は断面形状が三角おむすび型中空断面で中空率が41%、繊度が13500デニ−ル、燐含有量10000ppm(60A+200=2780ppm)の線条で形成しており、平均の見掛け密度が0.068g/cm3 、25%圧縮硬さが36kgであった。この網状体は少し硬い弾性樹脂の特性が生かせた網状構造のため耐熱性、常温での耐久性に優れたクッション機能を有し、難燃性で燃焼ガスの毒性指数も低い安全性の高い芯部に適した網状体であった。
【0024】
【表2】
【0025】
ポリエチレンテレフタレ−ト95部とA−1を5部とを混合乾燥して、押出機に供給し285℃で溶融混練りし、全面にφ0.4mmのノズル穴より単孔0.6g/分で吐出させ、エジェクタ−にて引取り振り落としてシ−ト状に形成後、弍−ドルパンチを施したのち、195℃のエンボス処理をして、補強体用の目付け150g/m2 のスパンボンド不織布を得た。
【0026】
相対粘度1.2のPBTと極限粘度0.58のPETとを中空C型オリフィス直前に285℃にて、サイドバイサイドに分配して吐出させ、常法にて未延伸糸を紡糸し、次いで、延伸した繊維に、機械巻縮を付与後、乾熱165℃にて立体巻縮を発現させて51mmに切断し、繊度が13デニ−ル、巻縮度が35%、巻縮数が23山/インチ、中空率28%の丸断面で立体巻縮を有するファイバ−フィルウエッブの母材を得た。A−3をシ−ス成分、A−2をコア成分にして、260℃にて吐出し、紡糸速度3500m/分にて作成した繊維を2万デニ−ルに合糸してクリンパ−にて機械巻縮を付与後51mmに切断して、繊度が5デニ−ル、乾熱160℃の収縮率が8%、断面形状がシ−ス・コアの中実丸断面の熱接着繊維を得た。得られた母材60部と熱接着繊維40部を常法により混繊してカ−ドウエッブを作成し、積層してニ−ドルパンチして所定の大きさに切断した厚み10mmのワディング層用のファイバ−フィルウエッブを作成した。
【0027】
A−3を240℃にて溶融し、280℃の加熱空気にて常法により目付け30g/m2 、繊度0.05デニ−ルの繊維同士が融着した接着剤層用のメルトブロ−不織布を得た。
【0028】
図4の(G)に示すように、雌金型15にファイバ−フィルウエッブ11とマトリックス用の網状体10及び、層間にメルトブロ−不織布14を積層した上に、図4−2に示すように、芯部用の網状体9を積層し、マトリックスの網状体10、ファイバ−フィルウエッブ11、メルトブロ−不織布14を芯部の網状体の上側まで包み込み引っ掛けて止め、その上にメルトブロ−不織布14とスパンボンド不織布13を積層して、次いで、図4の(I)に示すように、雄金型17で押さえて圧縮し、185℃の加熱空気にて強制貫通させ、5分間で加熱昇温させ、2分間その温度を保持後、加熱空気を100℃に下げて冷却アニ−リングを10分間行い、冷却して熱成形された、座部のクッション層の平均見掛け密度が0.065g/cm3 であった。同様にして作成した背部のクッション層の平均見掛け密度が0.054g/cm3 のクッション体を得た。次いで、ジメチルテレフタル酸と10〔2・3・ジ(2・ヒドロキシエトキシ)−カルボニルプロピル〕9・10・ジヒドロ・9・オキサ・10ホスファフェナレンス・10オキシロを燐含有量で5000ppmとなる量と、グリコ−ル成分にDEGを少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、昇温減圧しつつ重縮合せしめて得た共重合PETを常法により繊維化した2デニ−ルのステ−プルを用い、常法により得たポリエステル繊維からなる目付け450g/m2 、通気度90cc/cm2 ・秒のモケットの側地1でクッション体の表面を被い、裏側に引っ張って側地を張りながら樹脂成形体に止めると共に、サイドと中央の間の凹部を返しの付いた引込みボタンで樹脂成形体3を貫通させて側地を吊り込み、車両に固定するフレ−ムに固定して図1に示す様な座席を作成した。表2に示す如く、得られた座席は芯部を有するので適度の反発力とフィット性をもち、好ましい体型保持性を有して蒸れにくい良好な座り心地で、耐久性も芯部が形態保持性を発揮して実用使用に耐えるものであった。座席の端を火炎に曝すと側地やワディング層と共に網状体も燃え始めるとドリップになり火炎の広がりは抑制されすぐに消炎した。難燃性の良好な素材を用いた場合は、火災時も安全性が確保できる例である。
【0029】
実施例2
A−3をオリフィスの孔形状を孔径φ1mmの丸断面としたノズルを用いた以外実施例1と同様にして得たマトリックス層用の網状体の特性を表2に示す。なお、中実丸断面の繊度が9000デニ−ル、の線条から形成されており、網状体の平均の見掛け密度が0.043g/cm3 、25%硬さが10kgであった。次いで、実施例1と同様にして作成した、座部のクッション層の平均見掛け密度が0.064g/cm3 、背部のクッション層の平均見掛け密度が0.053g/cm3 のクッション体を用いて得た座席の評価結果を表2に併記する。表2で明らかなごとく、網状体の耐熱性と常温での耐久性は実用上使用可能で、燃焼ガスの毒性指数も低い安全性の高いクッション材であり、作成した座席は、座り心地の優れたクッション機能を有し、形態保持が良く耐久性も実用使用が可能なものであることが判る。
【0030】
比較例1
相対粘度1.20のポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)を溶融温度270℃とした以外、実施例2と同様にして得た線条の繊度が8800デニ−ル、見掛け密度が0.044g/cm3 、25%圧縮硬さは42kgのマトリックス用網状体の特性を表2に示す。次いで、熱成形温度を250℃とし、疑似結晶化の為のアニ−リングをしなかった以外、実施例2と同様にして作成した座部のクッション層の平均見掛け密度が0.065g/cm3 、背部のクッション層の平均見掛け密度が0.056g/cm3 のクッション体を用いて得た。比較例1の座席は、芯部に熱可塑性弾性樹脂からなるA−2を用いた網状体であるにも係わらず、芯部より硬く、元々耐熱耐久性が悪い熱可塑性非弾性ポリエステルからなる網状体をマトリックスのクッション層に使用しているため、硬くて座り心地が悪く、耐久性も悪い座席となった例である。
【0031】
比較例2
芯部網状体及びファイバ−フィルウエッブを用いないで、実施例2で作成したマトリックス用の網状体のみを用いて座部のクッション体の平均見掛け密度が0.062g/cm3 、背部のクッション体の平均見掛け密度が0.056g/cm3 となるように積層圧縮して熱成形し、アニ−リングしないで急速に冷却した以外、実施例2と同様にして作成したクッション体は、芯部網状体を使用しないためサイド部の凸状形状の表面仕上がりが不良となり、表2に示す得られた座席の特性も、座り心地は良好だが、耐久性が劣り座席としては好ましくない例である。
【0032】
比較例3
網状体を用いずに、実施例1で作成したファイバ−フィルウエッブのみをクッション層に用いて、芯部をファイバ−フィルウエッブを密度0.08g/cm3 に成形したものを用い、クッション層の平均見掛け密度が0.062g/cm3 、背部のクッション体の平均見掛け密度が0.056g/cm3 となるように積層圧縮して熱成形し、アニ−リングしないで急速に冷却した以外、実施例2と同様にして作成したクッション体を用いて作成した、表2に示す座席の特性は、座り心地は良好だが、耐熱耐久性の優れた熱可塑性弾性樹脂からなる網状体を使用しないため、耐久性がやや劣る座席の例である。
【0033】
比較例4
180g/分の吐出量で、ノズル面下5cmに引取りコンベアネットを配して引取り速度1.2m/分にて引取った以外、実施例2と同様にして得た繊度が1800デニ−ル、燐含有量が9000ppm(60A+200=3320ppm)、平均の見掛け密度が0.006g/cm3 、25%圧縮硬さ3kgのマトリックス層用網状体を用いて、芯部は実施例2で作成したマトリックス層用網状体を用い、座部及び背部のクッション層の見掛け密度が0.009g/cm3 となるように積層圧縮し、疑似結晶化処理をしなかった以外実施例2と同様にして得たクッション体を用いた座席は、マトリックス層の密度が低すぎて座り心地が著しく劣り、耐久性も劣る座席の例である。
【0034】
比較例5
単孔当たりの吐出量3g/分にて吐出させ、引取りコンベアネットの速度を0.3m/分とした以外実施例2と同様して得た線条繊度が13000デニ−ルで、平均見掛け密度が0.21g/cm3 、25%圧縮硬さ62kgのマトリックス用網状体を用い、芯部には該マトリックス用網状体を175℃で熱圧縮して密度が0.28g/cm3 、25%圧縮硬さ84kgの網状体としたものを用い、座部及び背部のクッション層の密度が0.28g/cm3 となるように積層圧縮して熱成形し、アニ−リングしないで急速に冷却した以外、実施例2と同様にして作成したクッション体を用いて得た座席は、クッション層が硬いため座り心地がやや劣り、耐久性も不充分な例である。
【0035】
比較例6
幅50cm、長さ5cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ10mm、長さ方向の孔間ピッチ20mmの千鳥配列としたオリフィス径φ2mmとしたノズルを用いて単孔当たりの吐出量25g/分にて吐出させて、ノズル面30cm下に引取りコンベアネットを配して1m/分にて引き取った以外、比較例2と同様にして得た線条の繊度は113000デニ−ルで平均見掛け密度が0.15g/cm3 、25%圧縮硬さ43kgのマトリックス用網状体を用い、芯部は比較例5のものを用いて、座部及び背部のクッション層の見掛け密度が0.18g/cm3 となるように積層圧縮し、疑似結晶化処理をしなかった以外実施例2と同様にして得たクッション体を用いた座席は、網状体の線条繊度が著しく太く密度斑があるため、耐久性が悪くなり、座り心地もやや悪くなる座席の例である。
【0036】
比較例7
ノズル面60cm下に引取りコンベアネットを配して引き取ったあと疑似結晶化処理をしなかった以外、実施例2と同様の方法で得たマトリックス層用網状体の特性の一部を表2に示す。なお、接着状態が不良で形態保持が悪いため、50%圧縮時反発力、見掛け密度、補強効果、70℃残留歪、繰返圧縮歪みの評価はしていない。次いで、この線条がばらばらのマトリックス層用網状体を雌金型に詰め込み、芯部その他は実施例2と同様のものを用いてクッション層の見掛け密度が0.055g/cm3 となるように積層圧縮し、疑似結晶化処理をしなかった以外実施例2と同様にして得たクッション体を用いた座席は、マトリックス層用網状体の線条が融着していないので座り心地が悪く、網状形態が固定されていないのでマトリックス層の損傷が大きくなり耐久性も劣る例である。
【0037】
比較例8
実施例2で得た網状体を用いて熱圧縮して25%圧縮硬さ13kgの芯部を作成し、マトリックス層は実施例2で得た網状体を用い、見掛け密度が0.055g/cm3 となるように積層圧縮し、疑似結晶化処理をしなかった以外実施例2と同様にして得たクッション体を用いて作成した座席は、座り心地は悪くないが、耐久性が劣る座席であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明の座席は、回復性と振動吸収性の良い熱可塑性弾性樹脂からなる網状体をクッション層に用い、通気性を良くし、芯部の形態保持効果向上によるクッション体の体型保持性を向上させているので、自動車や鉄道車両用の座席に最適な、振動遮断性、耐熱耐久性、形態保持性、クッション性の優れた、蒸れにくく、難燃性を有し、燃焼ガスの毒性指数が低い、安全性の高い座席を提供できる。自動車以外に、鉄道用、船舶用、事務用、家具用等の椅子にも勿論有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明座席例の概略を示す図である。
【図2】本発明座席例の背部断面の概略を示す図であり、(A)は図1のA−A’断面、(B)は図1のB−B’断面、(C)は図1のC−C’断面を示す。
【図3】本発明座席例の座部断面の概略を示す図であり、(D)は図1のD−D’断面、(E)は図1のE−E’断面、(F)は図1のF−F’断面を示す。
【図4】本発明座席の成形加工工程例の概念を示す図であり、(G)→(H)→(I)の順に工程は進行する。
【符号の説明】
1:背部のサイド部 2,3,4:背部の中央部
5,5’:座部のサイド部 6,7,8:座部の中央部
9:芯部網状体 10:マトリックス層の網状体
11:ワヂィング層 12:側地
13:補強体層 14:接着剤層
15:雌金型 16:通気孔
17:雄金型
Claims (10)
- 測地、クッション層の補強体、クッション層よりなり、主要部が座部と背部からなる座席であり、座席のクッション層が、繊度100000デニ−ル以下の連続した線条を曲がりくねらせ互いに接触させて接触部の大部分を融着せしめた3次元立体構造体を形成した熱可塑性弾性樹脂からなる見掛け密度が0.01〜0.2g/cm3 の網状体からなり、座部及び/又は背部のサイド部及び/又は中央部にマトリックスを構成する網状体層より25%圧縮硬さが1.5倍以上硬い網状体からなる芯部網状体を有しており、マトリックスを構成する網状体と芯部網状体は接着剤または自己接着により一体接合され、難燃性を有していることを特徴とする座部。
- マトリックスを構成する網状体層と芯部の網状体との25%圧縮硬さ比が1.5〜10倍である請求項1記載の座席。
- マトリックスを構成する網状体層と芯部の網状体との密度差が0.01〜0.15g/cm3 である請求項1記載の座席。
- 網状体と側地の間にファイバ−フィルからなるワディング層を配してなる請求項1記載の座席。
- クッション層の補強体が熱可塑性樹脂からなる不織布又は、成形体であり、クッション層と一体接合されてなる請求項1記載の座席。
- 連続した線条の断面形状が中空断面又は及び異形断面である請求項1記載の座席。
- 熱可塑性弾性樹脂からなる成分を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度に吸熱ピークを持つ請求項1記載の座席。
- 雌型に、クッション層となる所定形状に切断されたマトリックスとなる網状体を配し、その上に芯部となる所定の形状に切断又は成形された網状体を配し、又はマトリックスの網状体と深部の網状体間に該網状体の融点より少なくとも10℃以上低い融点を持つ接着層を配して、又はその上に更にマトリックスとなる網状体を配し、更に補強体をその上に積層して、雄型で上からクッション層を圧縮すると共に、網状体の融点より5℃高い温度〜融点より50℃低い温度の加熱媒体で加熱して熱成形により一体化した後、一旦冷却するか、又は連続して、網状体のガラス転移温度より10℃高い温度以上、融点より20℃以上低い温度でアニ−リングして得たクッション成形体に側地を取付けて、座席フレ−ムに固定することを特徴とする座席の製法。
- 雌型に、クッション層となる所定形状に切断されたマトリックスとなる網状体を配し、その上に芯部となる所定の形状に切断又は成形された網状体を配し、又はマトリックスの網状体と深部の網状体間に該網状体の融点より少なくとも10℃以上低い融点を持つ接着層を配して、又はその上に更にマトリックスとなる網状体を配し、更に補強体をその上に積層して、網状体の融点より5℃高い温度〜融点より50℃低い温度の加熱媒体で加熱して網状体が変形できる温度に達して後、雄型で上からクッション層を圧縮して熱成形により一体化した後、一旦冷却するか、又は連続して、網状体のガラス転移温度より10℃高い温度以上、融点より20℃以上低い温度でアニ−リングして得たクッション成形体に側地を取付けて、座席フレ−ムに固定することを特徴とする座席の製法。
- クッション成形体と側地間にワディング層を配することを特徴とする請求項8〜9のいずれかに記載の座席の製法。
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