以下、本発明についてその実施形態を詳細に説明する。本発明の網状構造体は、熱可塑性エラストマー連続線状体からなる三次元ランダムループ接合構造を持つ網状構造体であって、網状構造体の厚さ方向に、主に繊維径が0.1mm以上1.5mm以下の細い繊維からなる細繊維主領域と、主に繊維径が0.4mm以上3.0mm以下の太い繊維からなる太繊維主領域と、細繊維主領域と太繊維主領域との間に位置する細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域と、が存在し、細い繊維に比べて太い繊維の繊維径が0.07mm以上太く、網状構造体の細繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが15%以下である。本発明の網状構造体は、細い繊維の繊維径が0.1mm以上1.5mm以下であることから使用時にソフトな触感を持ち、太い繊維の繊維径が細い繊維の繊維径より0.07mm以上太いことから底付き感が少なく、細繊維主領域と太繊維主領域との間に混在領域が存在し細繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが15%以下であることから圧縮耐久性に優れる。
本発明の網状構造体は、熱可塑性エラストマーからなる連続線状体を曲がりくねらせてランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて接合させた三次元ランダムループ接合構造を持つ構造体である。
本発明の熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、熱可塑性エチレン酢酸ビニル共重合体エラストマー等が挙げれられる。なかでも、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、圧縮耐久性や耐熱性に優れるため、好ましい。
本発明におけるポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレンジオールをソフトセグメントとするポリエステルエーテルブロック共重合体、または、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体が例示できる。
ポリエステルエーテルブロック共重合体としては、ジカルボン酸、ジオール成分、およびポリアルキレンジオールから構成された三元ブロック共重合体が例示できる。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、または、これらのエステル形成性誘導体等から選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種が挙げられる。ジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、または、これらのエステル形成性誘導体等から選ばれたジオール成分の少なくとも1種が挙げられる。ポリアルキレンジオールとしては、数平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコール等のポリアルキレンジオールのうち少なくとも1種が挙げられる。
ポリエステルエステルブロック共重合体としては、ジカルボン酸、ジオール成分、およびポリエステルジオールから構成された三元ブロック共重合体が例示できる。ジカルボン酸およびジオール成分は上記のジカルボン酸およびジオール成分が例示できる。ポリエステルジオールとしては、数平均分子量が約300〜5000のポリラクトン等のポリエステルジオールのうち少なくとも各1種が挙げられる。
熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、ポリエステルエーテルブロック共重合体では、ジカルボン酸はテレフタル酸および/またはナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジオール成分は1,4−ブタンジオール、ならびにポリアルキレンジオールはポリテトラメチレングリコールから構成される三元ブロック共重合体が特に好ましい。また、ポリエステルエステル共重合体では、ジカルボン酸はテレフタル酸および/またはナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジオール成分は1,4−ブタンジオール、ならびにポリエステルジオールはポリラクトンから構成される三元ブロック共重合体が特に好ましい。特殊な例では、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものも使うことができる。
本発明のポリエステル系熱可塑性エラストマーのソフトセグメント含有量は、圧縮耐久性に優れる観点から、好ましくは15重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、さらに好ましくは30重量%以上であり、特に好ましくは40重量%以上であり、硬度確保と耐熱耐へたり性に優れる観点から、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
本発明におけるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレンとα−オレフィンとが共重合してなるエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましく、オレフィンブロック共重合体であるエチレンおよびα−オレフィンからなるマルチブロック共重合体であることがより好ましい。エチレンおよびα−オレフィンからなるマルチブロック共重合体であることがより好ましいのは、一般的なランダム共重合体では、主鎖の連結鎖長が短くなり、結晶構造形成されにくく、耐久性が低下するためである。かかる観点から、エチレンと共重合するα−オレフィンは、炭素数3以上のα−オレフィンであることが好ましい。
ここで、炭素数3以上のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンである。また、これら2種類以上を用いることもできる。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体であるランダム共重合体は、特定のメタロセン化合物と有機金属化合物とを基本構成とする触媒系を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって得ることができ、マルチブロック共重合体は、チェーンシャトリング反応触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって得ることができる。必要に応じて、上記方法によって重合された二種類以上のポリマーや、水素添加ポリブタジエンや水素添加ポリイソプレン等のポリマーをブレンドすることができる。
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体のエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとの比率は、エチレンが70mol%以上95mol%以下、炭素数が3以上のα−オレフィンが5mol%以上30mol%以下が好ましい。一般的に、高分子化合物がエラストマー性を得るのは、高分子鎖内に、ハードセグメントおよびソフトセグメントが存在するためであることが知られている。本発明のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーにおいては、エチレンはハードセグメント、炭素数3以上のα−オレフィンはソフトセグメントの役割を担っていると考えられる。そのため、エチレンの比率が70mol%未満では、ハードセグメントが少ないため、ゴム弾性の回復性能が低下する。エチレンの比率は、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80mol%以上である。一方、エチレンの比率が95mol%を超える場合は、ソフトセグメントが少ないため、エラストマー性が発揮されにくく、クッション性能が劣る。エチレンの比率は、より好ましくは93mol%以下、さらに好ましくは90mol%以下である。
本発明におけるポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、通常の溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)の存在または非存在下に、数平均分子量1000〜6000の末端に水酸基を有するポリエ−テルおよび/またはポリエステルと有機ジイソシアネ−トを主成分とするポリイソシアネ−トとを反応させた両末端がイソシアネ−ト基であるプレポリマ−に、ジアミンを主成分とするポリアミンにより鎖延長したポリウレタンエラストマ−を代表例として例示できる。ポリエステルおよび/またはポリエ−テルとしては、数平均分子量が約1000〜6000、好ましくは1300〜5000のポリブチレンアジペ−ト共重合ポリエステル、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコ−ル等のポリアルキレンジオ−ルが好ましい。ポリイソシアネ−トとしては、従来公知のポリイソシアネ−トを用いることができ、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネ−トを主体としたイソシアネ−トを用い、必要に応じ従来公知のトリイソシアネ−ト等を微量添加使用してもよい。ポリアミンとしては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン等公知のジアミンを主体とし、必要に応じて微量のトリアミン、テトラアミンを併用してもよい。これらのポリウレタン系熱可塑性エラストマーは単独または2種類以上混合して用いてもよい。
本発明におけるポリウレタン系熱可塑性エラストマーのソフトセグメント含有量は、圧縮耐久性に優れる観点から、好ましくは15重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、さらに好ましくは30重量%以上であり、最も好ましくは40重量%以上であり、硬度確保と耐熱耐へたり性に優れる観点から、好ましくは80重量%以下である、より好ましくは70重量%以下である。
本発明におけるポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミドをハードセグメントとし、ポリオールをソフトセグメントとし、両者を共重合したもの等が挙げられる。ハードセグメントであるポリアミドは、ラクタム化合物とジカルボン酸、または、ジアミンとジカルボン酸等の反応物から得られたポリアミドオリゴマーのうち少なくとも1種以上が挙げられる。ソフトセグメントであるポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のうち少なくとも1種以上が挙げられる。
ラクタム化合物として、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ω−ヘプタラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ラウリルラクタム等の炭素数5〜20の脂肪族ラクタムのうち少なくとも1種以上が挙げられる。
ジカルボン酸として、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸化合物のうち少なくとも1種以上が挙げられる。
ジアミンとして、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカンメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、またはメタキシレンジアミン等の芳香族ジアミンのうち少なくとも1種以上が挙げられる。
ポリオールについては、ポリエーテルポリオールとして、数平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコ−ル等のポリアルキレンジオ−ルのうち少なくとも1種以上が挙げられる。また、ポリカーボネートジオールとして、低分子ジオールとカーボネート化合物の反応物であり、数平均分子量が約300〜5000のものが挙げられる。低分子ジオールとして、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオールのうち少なくとも1種以上が挙げられる。カーボネート化合物として、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のうち少なくとも1種以上が挙げられる。また、ポリエステルポリオールとして、数平均分子量が約300〜5000のポリラクトン等のポリエステルジオールのうち少なくとも1種以上が挙げられる。
本発明のポリアミド系熱可塑性エラストマーのソフトセグメント含有量は、圧縮耐久性に優れる観点から、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは15重量%以上であり、最も好ましくは20重量%以上であり、硬度確保と耐熱耐へたり性に優れる観点から、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
本発明の熱可塑性エチレン酢酸ビニル共重合体エラストマーとして、網状構造体を構成するポリマーは、酢酸ビニルの含有率が1〜35%が好ましい。酢酸ビニル含有率が小さいとゴム弾性に乏しくなる恐れがある観点から酢酸ビニル含有率は1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上がさらに好ましい。酢酸ビニル含有率が大きくなるとゴム弾性には優れるが、融点が低下し耐熱性に乏しくなる恐れがある観点から、酢酸ビニル含有率は35%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、26%以下がさらに好ましい。
熱可塑性エチレン酢酸ビニル共重合体エラストマーは、炭素数3以上のα−オレフィンを共重合することもできる。ここで、炭素数3以上のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンである。また、これら2種類以上を用いることもできる。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体は、目的に応じて異なる2種以上の熱可塑性エラストマーの混合体で構成することができる。異なる2種以上の熱可塑性エラストマーの混合体で構成する場合は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、およびポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群より少なくとも1つ選ばれる熱可塑性エラストマーを50重量%以上含むことが好ましく、60重量%以上含むことがより好ましく、70重量%以上含むことがさらに好ましい。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体の熱可塑性エラストマーには、目的に応じて種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、脂肪酸系、エポキシ系、アジピン酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤、公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、アミン系等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系等の光安定剤、帯電防止剤、過酸化物等の分子量調整剤、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物等の反応基を有する化合物、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機及び無機系の顔料等を添加することができる。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体は、示差走査型熱量計(DSC)にて測定した融解曲線において、連続線状体を構成する熱可塑性エラストマーの融点以下に吸熱ピークを有するのが好ましい。融点以下に吸熱ピークを有する連続線状体からなる網状構造体は、耐熱耐へたり性が吸熱ピ−クを有しないものより著しく向上する。網状構造体の耐熱耐へたり性をより向上させるため、連続線状体を溶融熱接着後さらに連続線状体を構成する熱可塑性エラストマーの融点より少なくとも10℃以上低い温度でアニ−リング処理することも好ましい。網状構造体に圧縮歪みを付与してからアニ−リングするとさらに耐熱抗へたり性が向上する。このような処理をした網状構造体の連続線状体は、示差走査型熱量計(DSC)で測定した融解曲線に20℃以上融点以下の温度で吸熱ピークをより明確に発現する。なおアニ−リングしない場合は融解曲線に20℃以上融点以下に吸熱ピ−クを発現しない。このことから類推するに、アニ−リングにより、ハ−ドセグメントが再配列され、疑似結晶化様の架橋点が形成され、耐熱抗へたり性が向上しているのではないかとも考えられる。以下、このアニーリング処理を「疑似結晶化処理」ということがある。この疑似結晶化処理効果は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーにも有効である。
本発明の網状構造体は、使用時にソフトな触感を持つ、底付き感が少ない、圧縮耐久性に優れる、という3つの効果を併せ持った網状構造体である。上記3つの効果を併せ持つ網状構造体を得る方法は、少なくとも網状構造体の厚さ方向に、主に繊維径が0.1mm以上1.5mm以下の細い繊維からなる細繊維主領域と、主に繊維径が0.4mm以上3.0mm以下の太い繊維からなる太繊維主領域と、細繊維主領域と太繊維主領域との間に位置する細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域と、が存在し、細い繊維に比べて太い繊維の繊維径が0.07mm以上太く、かつ、網状構造体の細繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが15%以下であることが必要である。
細繊維主領域において「主に」とは、その領域に含まれる総繊維本数に対して、細い繊維の繊維本数が占める割合が90%以上であることを意味する。太繊維主領域において「主に」とは、その領域に含まれる総繊維本数に対して、太い繊維径の繊維本数が占める割合が90%以上であることを意味する。また、細繊維主領域と太繊維主領域との間に位置する細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域においては、その領域に含まれる総繊維本数に対する細い繊維の繊維本数の占める割合が細繊維主領域に比べて低く、かつ、その領域に含まれる総繊維本数に対する太い繊維の繊維本数の占める割合が太繊維主領域に比べて低い。すなわち、混合領域は、その領域に含まれる総繊維本数に対して、細い繊維の繊維本数および太い繊維の繊維本数の両方がそれぞれ90%未満である領域を意味する。
ここで、所定の領域における各繊維の繊維本数の占める割合は、以下の方法で測定する。まず、試料を、幅方向3cm×長さ方向3cm×試料厚さの大きさに10サンプル切り出し、各サンプルの重さを電子天秤により測定する。次いで、各サンプルの同じ表面側から試料を構成している繊維を1本ずつサンプル厚さが出来るだけ均一に減少するように抜き出す。サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの90%以下の重さに初めてなるまで、繊維を1本ずつ抜き出す作業を続ける。抜き出した繊維の繊維径の大小を目視、光学顕微鏡等により確認し、細い繊維と太い繊維とに分け、細い繊維および太い繊維の繊維本数を数える。なお、後述のように、細い繊維が中実断面を有する中実断面繊維であり、太い繊維が中空断面を有する中空断面繊維である場合は、抜き出した繊維の断面を目視または光学顕微鏡等により確認することにより、細い繊維と太い繊維とに分けることができる。10サンプルの細い繊維および太い繊維の繊維本数を足してその領域に含まれる総繊維本数とする。その領域に含まれる総繊維本数に対する細い繊維の繊維本数および太い繊維の繊維本数から、細い繊維の繊維本数および太い繊維の繊維本数の占める割合をそれぞれ計算し、その領域が細繊維主領域、太繊維主領域、または混在領域かを判断する。
続いて、各サンプルからの繊維の抜き出し作業を再開し、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの80%以下の重さに初めてなるまで、繊維を1本ずつ抜き出す作業を続け、上記と同様にして、その領域に含まれる総繊維本数に対する細い繊維の繊維本数および太い繊維の繊維本数から、細い繊維の繊維本数および太い繊維の繊維本数の占める割合をそれぞれ計算し、その領域が細繊維主領域、太繊維主領域、または混在領域かを判断する。
その後、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの70%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの60%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの50%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの40%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの30%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの20%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの10%以下の重さに初めてなるまで、さらにサンプルの重さが0%の重さになるまで、サンプル重さのほぼ10%毎に、各サンプルからの繊維の抜き出し作業を繰り返し、上記と同様にして、表面側から厚さ方向に10個に区分した各領域に含まれる総繊維本数に対する細い繊維の繊維本数および太い繊維の繊維本数から、細い繊維の繊維本数および太い繊維の繊維本数の占める割合をそれぞれ計算し、各領域が細繊維主領域、太繊維主領域、または混在領域かを判断する。
本発明の網状構造体は、網状構造体の細繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮(以下、細繊維主領域側からの750N定荷重繰り返し圧縮ともいう)後の残留歪みが、15%以下であり、好ましくは13%以下であり、より好ましくは11%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。連続線状体が主に細い繊維からなる層および連続線状体が主に太い繊維からなる層を積層した構造を持つ複層構造の網状構造体においては、主に細い繊維からなる層(すなわち細繊維主領域)側からの750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが、主に太い繊維からなる層(すなわち太繊維主領域)側からの750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みより、残留歪みが大きい。そのため、細繊維主領域側からの750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが低い値になることは、網状構造体全体としての圧縮耐久性が良いことを意味する。
上記の細繊維主領域側からの750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みを小さくするためは、細繊維主領域と太繊維主領域との間の位置に細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域を存在させ、これらの領域が分離することなく一体化することにより網状構造体全体の厚さが形成されていることが重要である。
細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域が存在せず、主に細い繊維からなる網状構造体と、主に太い繊維からなる網状構造体とを重ね合わせただけで、容易に分離でき一体化していない2枚重ね合わせ積層網状構造体でも、使用時にソフトな触感を持つ、底付き感が少ない網状構造体を得ることは可能である。しかし、上記重ね合わせ積層網状構造体では、連続線状体が細い繊維からなる圧縮硬度の低い網状構造体の面から加圧圧縮していくと、まず連続線状体が細い繊維からなる圧縮硬度の低い網状構造体のみが圧縮変形し、連続線状体が細い繊維からなる圧縮硬度の低い網状構造体のみが、連続線状体が太い繊維からなる圧縮硬度の高い網状構造体から独立してたわむ。そして、連続線状体が細い繊維からなる圧縮硬度の低い網状構造体のみで圧縮負荷に耐えきれなくなった段階でようやく連続線状体が太い繊維からなる圧縮硬度の高い網状構造体に圧縮応力が伝播し、連続線状体が太い繊維からなる圧縮硬度の高い網状構造体の変形やたわみが始まる。このため加圧圧縮が繰り返されると連続線状体が細い繊維からなる圧縮硬度の低い網状構造体の方が先に疲労が蓄積し、連続線状体が太い繊維からなる圧縮硬度の高い網状構造体よりも厚さ低下や圧縮硬度低下が進んでいく。つまり、網状構造体全体として圧縮耐久性が低い網状構造体となってしまう。
また、細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域は存在しないが、主に細い繊維からなる網状構造体と、主に太い繊維からなる網状構造体とを接着により貼り合わせ一体化した2枚貼り合わせ積層網状構造体でも、使用時にソフトな触感を持つ、底付き感が少ない網状構造体を得ることは可能である。しかし、上記貼り合わせ積層網状構造体では、繰り返し圧縮の初期段階は、加圧圧縮負荷に対して両方の網状構造体が一体となって変形したわむが、圧縮が繰り返されるにつれ接着面に応力が集中し、接着力の低下やはがれが生じるため、2枚貼り合わせ積層網状構造体も網状構造体全体として圧縮耐久性が低い網状構造体となってしまう。
また、細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域は存在しないが、主に細い繊維からなる細繊維主領域と、主に太い繊維からなる太繊維主領域とが融着一体化した網状構造体でも、使用時にソフトな触感を持つ、底付き感が少ない網状構造体を得ることは可能である。このような網状構造体は、主に太い繊維からなる網状構造体の上に細い繊維を吐出して主に細い繊維からなる網状構造体を融着積層する方法によって得ることができる。しかし、この方法で得られた上記網状構造体は、一旦太い繊維が固化した後、細い繊維を融着させるため、太い繊維層と細い繊維層の境界面の融着力が低く、繰り返し圧縮負荷を受けると境界面に応力が集中し界面剥離が発生し、結果的に圧縮耐久性が悪くなる。
本発明の網状構造体は、細繊維主領域と太繊維主領域との間に位置する細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域が存在し、これらの領域を分離することなく一体化したことで網状構造体全体の厚さを形成した網状構造体の場合、連続線状体が主に細い繊維からなる圧縮硬度の低い細繊維主領域側から加圧圧縮しても、混在領域を通じて、圧縮初期の段階から、連続線状体が主に太い繊維からなる圧縮硬度の高い太繊維主領域側へ応力が伝播し、厚さ方向へ応力が効率よく分散され、加圧圧縮負荷に対し網状構造体全体が変形したわむ。これにより、連続線状体が主に細い繊維からなる圧縮硬度が低い細繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが小さくなり、網状構造体全体としての圧縮耐久性も高くなるものである。
本発明の網状構造体は、特開2014−194099号公報等に記載された公知の方法に新たな技術を付加することにより得られる。例えば、後述する複数のオリフィスでかつ異なるオリフィス孔径を複数有する多列ノズルより熱可塑性エラストマーをノズルオリフィスに分配し、上記熱可塑性エラストマーの融点より20℃以上120℃未満高い紡糸温度で、上記ノズルより下方に向け吐出させ、溶融状態で互いに連続線状体を接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引き取りコンベアネットで挟み込み、冷却槽中の冷却水で冷却せしめた後、引出し、水切り後または乾燥して、両面または片面が平滑化した網状構造体を得る。片面のみを平滑化させる場合は、傾斜を持つ引取ネット上に吐出させて、溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ引取ネット面のみ形態を緩和させつつ冷却すると良い。得られた網状構造体をアニーリング処理することもできる。なお、網状構造体の乾燥処理をアニーリング処理としても良い。
本発明の網状構造体を得る手段としては、ノズル形状やディメンジョン、ノズル孔配列を最適にすることが好ましい。ノズル形状は、細い繊維を形成するオリフィス径は1.5mm以下が好ましく、太い繊維を形成するオリフィス径は2mm以上が好ましい。また、太い繊維を形成するノズルオリフィス形状は中空形成性を有することが好ましく、C型ノズルや3点ブリッジ形状ノズル等が挙げられるが、耐圧の観点から3点ブリッジ形状ノズルであることが好ましい。孔間ピッチは、細い繊維を形成するオリフィスと太い繊維を形成するオリフィスいずれも、4mm以上12mm以下が好ましく、5mm以上11mm以下がさらに好ましい。ノズル孔配列は、格子配列、円周配列、千鳥配列等が例示されるが、網状構造体の品位の観点から格子配列または千鳥配列が好ましい。ここで、孔間ピッチとは、ノズル孔の中心間の距離であり、網状構造体の幅方向の孔間ピッチ(以下、「幅方向孔間ピッチ」ともいう)および網状構造体の厚さ方向の孔間ピッチ(以下、「厚さ方向孔間ピッチ」ともいう)が存在する。上記に記載の好適な孔間ピッチについては、幅方向孔間ピッチおよび厚さ方向孔間ピッチの両者に好適な孔間ピッチを記載したものである。
本発明の網状構造体を得るためのノズルとしては、
a群:細い繊維用オリフィス孔が厚さ方向に複数列配置されて構成されるオリフィス孔群、
ab混在群:細い繊維用オリフィス孔と太い繊維用オリフィス孔が混在して厚さ方向に複数列配置されて構成されるオリフィス孔群、
b群:太い繊維用オリフィス孔が厚さ方向に複数列配置されて構成されるオリフィス孔群、
の3つの群(a群、ab混在群、およびb群)からなるノズルが挙げられる。
また、別のノズルとしては、
α群:細い繊維用オリフィス孔が厚さ方向に複数列配置されて構成されるオリフィス孔群、
β群:太い繊維用オリフィス孔が厚さ方向に複数列配置されて構成されるオリフィス孔群、
の2つの群(α群およびβ群)からなり、細い繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチと太い繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチの差が小さいノズルも挙げられる。ノズルの構造を簡素化できる観点から、上記α群およびβ群からなるノズルがより好ましい。
ノズルのオリフィス孔群としては2つだが、α群とβ群との境界面付近から紡糸された繊維は、細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域を形成するため、本発明の厚さ方向に3つの領域を含む網状構造体を得ることができる。
本発明の圧縮耐久性に優れた網状構造体を得るためには、細い繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチと太い繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチの差を小さくする必要がある。幅方向孔間ピッチの差が小さいと耐久性の差が小さくなる理由の全容は明らかになっている訳では無いが、以下のように推測される。
細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域において、オリフィスの幅方向孔間ピッチの差が小さいということは、混在領域において細い繊維と太い繊維の構成本数が近いことを意味する。細い繊維と太い繊維の構成本数が近いと、細い繊維と太い繊維とがほぼ1本対1本で複数の接点を構成しているといえる。そのため、連続線状体が主に細い繊維からなる側(細繊維主領域側)から加圧された場合にも、応力が伝播しやすいため、圧縮耐久性が良くなると考えられる。
それに対し、オリフィスの幅方向孔間ピッチの差が大きいノズルで網状構造体を形成した場合、細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域において、たとえば細い繊維の構成本数が太い繊維の構成本数に比べて多い時は、混在領域において、細い繊維の一部は太い繊維と接点をほとんど有しないものが存在することになる。そのため、連続線状体が主に太い繊維からなる側(太繊維主領域側)から加圧した時は、太い繊維から応力が殆ど伝播しない細い繊維が存在し、それらは太い繊維から応力が伝播された細い繊維を経由して応力が伝播されると考えられる。一方、連続線状体が主に細い繊維からなる側(細繊維主領域側)から加圧した時は、太い繊維に応力を伝播できない細い繊維が存在し、それらは太い繊維に応力を伝播できる細い繊維を経由して応力を太い繊維に伝播すると考えられる。
すなわち、オリフィスの幅方向孔間ピッチの差が大きいノズルで網状構造体を形成した場合は、細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域において、応力の伝播の方向が、厚さ方向と厚さ方向に直交する方向に分散してしまうため、応力の伝播効率が低下するため、連続線状体が主に細い繊維からなる側(細繊維主領域側)から加圧された場合と連続線状体が主に太い繊維からなる側(太繊維主領域側)から加圧された場合とで、圧縮耐久性の差が大きく、細繊維主領域側から加圧された場合の圧縮耐久性に劣る網状構造体となるものと考えられる。
細い繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチと太い繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチの差としては、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0mm、すなわち幅方向孔間ピッチが同じであることがさらに好ましい。
本発明の網状構造体の主に細繊維主領域を構成する細い繊維の繊維径は0.1mm以上1.5mm以下であり、0.2mm以上1.4mm以下が好ましく、0.3mm以上1.3mm以下がより好ましい。繊維径が0.1mm未満だと細すぎてしまい、緻密性やソフトな触感は良好となるが網状構造体として必要な硬度を確保することが困難となり、繊維径が1.5mmを超えるとソフトな触感を得ることが困難になる場合がある。
本発明の網状構造体の主に太繊維主領域を構成する太い繊維の繊維径は0.4mm以上3.0mm以下であり、0.5mm以上2.5mm以下が好ましく、0.6mm以上2.0mm以下がより好ましい。繊維径が0.4mm未満だと細すぎてしまい、網状構造体として必要な硬度を確保することが困難となり、繊維径が3.0mmを超えると網状構造体の硬度は確保できるが、網状構造が粗くなり、圧縮耐久性が劣る場合がある。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体の細い繊維と太い繊維の繊維径は、太い繊維の方が、0.07mm以上太く、0.10mm以上太いのが好ましく、0.12mm以上太いのがより好ましく、0.15mm以上太いのがさらに好ましく、0.20mm以上太いのが特に好ましく、0.25mm以上太いのが最も好ましい。太い繊維と細い繊維の繊維径の差の上限は、本発明においては、2.5mm以下が好ましい。太い繊維が細い繊維の繊維径よりも0.07mm未満太い場合は、網状構造体に底付き感がある場合がある。逆に繊維径の差が大きすぎると異物感が出過ぎるため、適正な範囲に設定する必要がある。
本発明の網状構造体を構成する細い繊維の総重量比率は、網状構造体を構成する全繊維に対し10%以上90%以下が好ましい。本発明の網状構造体にソフトな触感を付与するためには、20%以上80%以下がより好ましく、30%以上70%以下がさらに好ましい。10%未満および90%を超えると、網状構造体にソフトな触感を付与できなくなる場合がある。
本発明の網状構造体において、細い繊維が中実断面を有する中実断面繊維であり、太い繊維が中空断面を有する中空断面繊維であることが好ましい。細い繊維は中実断面繊維であればより細い繊維が製造可能となるからであり、太い繊維は中空断面繊維であれば重量が軽くなるからである。中実断面繊維および中空断面繊維は、それらの繊維の断面を目視または光学顕微鏡等による観察により識別する。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂と組み合わせた複合線状としても良い。複合形態としては、線状体自身を複合化した場合として、シース・コア型、サイドバイサイド型、偏芯シース・コア型等の複合線状体が挙げられる。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体の断面形状は略円形状であることが好ましいが、異型断面とすることで抗圧縮性やタッチを付与することができる場合もある。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体には、性能を低下させない範囲で、防臭抗菌、消臭、防黴、着色、芳香、難燃、吸放湿等の機能を持った薬剤を、連続線状体を構成する熱可塑性エラストマーに含有させ、および/または連続線状体表面に添加等の処理により付着させることもできる。
本発明の網状構造体は、あらゆる形状に成型したものを含む。例えば、板状、三角柱、多角体、円柱、球状やこれらを多数含む網状構造体も含まれる。これらの成型方法は、カット、熱プレス、不織布加工等の公知な方法で行うことができる。
本発明の網状構造体は、網状構造体の少なくとも一部分に、上記の細繊維主領域と、上記の太繊維主領域と、細繊維主領域と太繊維主領域との間に位置する上記の混在領域が存在する網状構造体をも含むものである。すなわち、本発明の網状構造体は、細繊維主領域、混合領域、および太繊維主領域をそれぞれ1つ含む場合だけでなく、それらの少なくともいずれかを複数含む場合もある。たとえば、本発明の網状構造体は、その厚さ方向に、細繊維主領域、混在領域、太繊維主領域、混在領域、および細繊維主領域を含む網状構造体、あるいは、細繊維主領域、混在領域、太繊維主領域、混在領域、細繊維主領域、混在領域、および太繊維主領域を含む網状構造体等も、好適に含まれる。このように、細繊維主領域および太繊維主領域の少なくともいずれかが複数存在する網状構造体においても、使用時にソフトな触感を持ちつつ、底付き感が少なく、圧縮耐久性にも優れる観点から、各細繊維主領域と各太繊維主領域との間には、混合領域が存在することが好ましい。さらに、本発明の網状構造体は、ソフトな触感を付与する観点から、少なくとも一方の表面側が細繊維主領域側であることが必要であり、両方の表面側が細繊維主領域側であってもよい。
本発明の網状構造体の見かけ密度は、0.005g/cm3以上0.20g/cm3以下が好ましく、0.01g/cm3以上0.18g/cm3以下がより好ましく、0.02g/cm3以上0.15g/cm3以下がさらに好ましい。見かけ密度が0.005g/cm3未満であるとクッション材として使用する際に必要な硬度が保てなくなり、逆に0.20g/cm3を越えると硬くなり過ぎてしまいクッション材に不適なものとなる場合がある。
本発明の網状構造体の厚さは、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。厚さが5mm未満ではクッション材に使用すると薄すぎてしまい底付き感が出てしまう場合がある。厚さの上限は製造装置の関係から、300mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましく、120mm以下がさらに好ましい。
本発明の網状構造体の細繊維主領域側(両方の表面側が細繊維主領域側である場合はより細い繊維からなる細繊維主領域表面側)から加圧した時の25%圧縮時硬度は、10N/φ100mm以上が好ましく、20N/φ100mm以上がより好ましい。25%圧縮時硬度が10N/φ100mm未満ではクッション材としての硬度が不足してしまい底付き感が出てしまう場合がある。25%圧縮時硬度の上限は特に規定しないが、1.5kN/φ100mm以下が好ましい。
本発明の網状構造体の細繊維主領域側(両方の表面側が細繊維主領域側である場合はより細い繊維からなる細繊維主領域表面側)から加圧した時の40%圧縮時硬度は、20N/φ100mm以上が好ましく、30N/φ100mm以上がより好ましく、40N/φ100mm以上がさらに好ましい。40%圧縮時硬度が20N/φ100mm未満ではクッション材としての硬度が不足してしまい底付き感が出てしまう場合がある。40%圧縮時硬度の上限は特に規定しないが、5kN/φ100mm以下が好ましい。
本発明の網状構造体の細繊維主領域側(両方の表面側が細繊維主領域側である場合はより細い繊維からなる細繊維主領域表面側)から加圧した時のヒステリシスロスは、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましく、30%以下であることが特に好ましく、25%以下であることが最も好ましい。上記のヒステリシスロスが60%を超えると、本発明の網状構造体の反発性が低下し過ぎて寝心地や座り心地が悪くなる。ヒステリシスロスの下限は、特に限定はないが、本発明においては1%以上が好ましい。
なお、本発明において、細繊維主領域側(両方の表面側が細繊維主領域側である場合はより細い繊維からなる細繊維主領域表面側)から加圧した時の、750定荷重繰り返し圧縮後の残留歪み、25%および40%圧縮時硬度、ならびにヒステリシスロスは、インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン万能試験機、株式会社島津製作所製精密万能試験機オートグラフ AG−X plus、株式会社オリエンテック製テンシロン万能材料試験機等の万能試験機を用いて測定することができる。
本発明のクッション材は、クッション内部に上記の網状構造体を含む。本発明のクッション材は、クッション内部に上記の網状構造体を含むため、使用時にソフトな触感を持ちつつ、底付き感が少なく、圧縮耐久性にも優れる。
以下に、実施例を例示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例中における特性値の測定および評価は下記のように行った。なお、試料の大きさは以下に記載の大きさを標準とするが、試料が不足する場合は可能な大きさの試料サイズを用いて測定を行った。
(1)繊維径(mm)
試料を幅方向10cm×長さ方向10cm×試料厚さの大きさに切断し、切断断面から厚さ方向に細繊維主領域および太繊維主領域のそれぞれからランダムに10本の繊維の線状体を約5mmの長さで採集した(混在領域からは線状体の採集はしないものとする。細繊維主領域および/または太繊維主領域が複数存在する場合は、それぞれの領域から10本ずつ線状体を採集した)。採集した線状体を輪切り方向で切断し、繊維軸方向に立てた状態でカバーガラスに載せ、適切な倍率に設定した光学顕微鏡で輪切り方向の繊維断面写真を得た。得られた繊維断面写真から各領域を構成する繊維の直径を求め、それぞれの繊維径とした。各領域のそれぞれの繊維径の平均を算出して繊維径の平均値とした:単位mm(各n=10の平均値)。細繊維主領域および/または太繊維主領域が複数存在し、細い繊維の繊維経の平均値および/または太い繊維の繊維径の平均値が複数存在する場合は、それぞれの主領域の繊維経の平均値を求めるものとした。また、比較例2における、繊維径の測定は、切断断面から厚さ方向にランダムに10本の繊維の線状体を約5mmの長さで採集し、採集した線状体の断面写真を、光学顕微鏡を適切な倍率で撮影し、得られた繊維断面写真から上記と同様にして繊維径を求めた。網状構造体の表面は平滑性を得るためにフラット化されているため繊維断面が変形している場合があるため、網状構造体表面から2mm以内の領域から試料は採取しないこととした。なお、線状体の断面形状が中空断面形状や異形断面形状の場合、得られた繊維断面写真から線状体の断面形状の外周長さを求め、その外周長さと等しい外周長さを持つ円の直径を計算により求め、その長さを繊維径とした。
(2)繊維径の差(mm)
上記(1)で測定された細い繊維および太い繊維のそれぞれの繊維径の平均値の差を取り、
(繊維径の差)=(太い繊維の繊維径の平均値)−(細い繊維の繊維径の平均値):単位mm
の式により繊維径の差を算出した。なお、細繊維主領域および/または太繊維主領域が複数存在し、太い繊維の繊維径の平均値および/または細い繊維の繊維経の平均値が複数存在する場合は、上記式における(太い繊維の繊維径の平均値)としては最も値の大きい(太い繊維の繊維経の平均値)を、(細い繊維の繊維径の平均値)としては最も値の小さい(細い繊維の繊維経の平均値)を、採用した。
(3)細い繊維の総重量比率(%)
試料を幅方向5cm×長さ方向5cm×試料厚さの大きさに切断した。その試料を構成している繊維を、目視または光学顕微鏡等により確認し、細い繊維と太い繊維に分ける。その後、細い繊維のみの総重量と、太い繊維のみの総重量を計測する。細い繊維の総重量比率は、
(細い繊維の総重量比率)=(細い繊維の総重量)/(細い繊維の総重量+太い繊維の総重量)×100:単位%
の式により算出した。
(4)中空率(%)
試料を幅方向5cm×長さ方向5cm×試料厚さの大きさに切断し、試料表面両側から厚さ方向10%以内の範囲以外の切断断面から厚さ方向にランダムに中空断面繊維の線状体10本を採集した。採集した線状体を輪切り方向で切断し、繊維軸方向に立てた状態でカバーガラスに載せ、光学顕微鏡で輪切り方向の繊維断面写真を得た。断面写真より中空部面積(a)および中空部を含む繊維の全面積(b)を求め、
(中空率)=(a)/(b)(単位%、n=10の平均値)
の式により中空率を算出した。
(5)厚さおよび見かけ密度(mmおよびg/cm3)
試料を幅方向10cm×長さ方向10cm×試料厚さの大きさに4サンプル切り出し、無荷重で24時間放置した。その後、細い繊維面側を上にして高分子計器製FD−80N型測厚器にて面積15cm2の円形測定子を使用し、各サンプル1か所の高さを測定して4サンプルの平均値を求め、厚さとした。また、上記試料を電子天秤に載せて計測した4サンプルの重さの平均値を求め、重さとした。また、見かけ密度は、重さおよび厚さから
(見かけ密度)=(重さ)/(厚さ×10×10):単位g/cm3
の式により算出した。
(6)融点(Tm)(℃)
TAインスツルメント社製示差走査熱量計Q200を使用し、昇温速度20℃/分で測定した吸発熱曲線から吸熱ピーク(融解ピーク)温度を求めた。
(7)750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪み(%)
試料を幅方向40cm×長さ方向40cm×試料厚さの大きさに切断し、23℃±2℃の環境下に無荷重で24時間放置した後、23℃±2℃の環境下にある万能試験機(インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン万能試験機)を用いて計測した。直径200mm、厚さ3mmの加圧板をサンプル中心になるように細繊維主領域(細繊維主領域が複数の場合は主に最も細い繊維からなる細繊維主領域、以下同じ)側を加圧板側にしてサンプルを配置させ、万能試験機で荷重が5Nと検出された時の厚さを計測し、初期硬度計厚さ(c)とした。その後、厚さを測定したサンプルを、ASKER STM−536を用いて、JIS K6400−4(2004)A法(定荷重法)に準拠して750N定荷重繰り返し圧縮を行なった。加圧板は、底面のエッジ部に曲率半径25±1mmをもつ、直径250±1mm、厚さ3mmの円形で下面が平らなものを用い、荷重750±20N、圧縮頻度は毎分70±5回、繰り返し圧縮回数は8万回、最大の750±20Nに加圧している時間は、繰り返し圧縮に要する時間の25%以下とした。繰り返し圧縮終了後、試験片を力のかからない状態で10±0.5分間放置し、万能試験機(インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン万能試験機)を用いて、直径200mm、厚さ3mmの加圧板をサンプル中心になるようにサンプルを配置させ、万能試験機で荷重が5Nと検出された時の厚さを計測し、繰り返し圧縮後硬度計厚さ(d)とした。細繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みは、初期硬度計厚さ(c)と繰り返し圧縮後硬度計厚さ(d)を用いて、
(750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪み)
={(c)−(d)}/(c)×100:単位%(n=3の平均値)
の式により算出した。
(8)25%、40%圧縮時硬度(N/φ100mm)
試料を幅方向20cm×長さ方向20cm×試料厚さの大きさに切断し、23℃±2℃の環境下に無荷重で24時間放置した後、23±2℃の環境下にある万能試験機(インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン万能試験機)にて加圧板をサンプル中心になるように細繊維主領域(細繊維主領域が複数の場合は主に最も細い繊維からなる細繊維主領域、以下同じ)側を加圧板側にしてサンプルを配置させ、直径φ100mm、厚さ25±1mm、底面のエッジ部に曲率半径10±1mmをもち下面が平らな加圧板を用い1mm/minの速度で圧縮を開始し、万能試験機で荷重が0.4Nと検出された時の厚さを計測し、硬度計厚さとした。この時の加圧板の位置をゼロ点として、速度10mm/minで硬度計厚さの75%まで圧縮した後、直ちに速度10mm/minにて加圧板をゼロ点まで戻し、引き続き速度10mm/minで硬度計厚さの25%および40%まで圧縮し、その際の荷重を測定し、各々を細繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度および40%圧縮時硬度とした:単位N/φ100mm(n=3の平均値)。
(9)ヒステリシスロス(%)
試料を幅方向20cm×長さ方向20cm×試料厚さの大きさに切断し、23±2℃の環境下に無荷重で24時間放置した後、23℃±2℃の環境下にある万能試験機(インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン万能試験機)にて加圧板をサンプル中心になるように細繊維主領域(細繊維主領域が複数の場合は主に最も細い繊維からなる細繊維主領域、以下同じ)側を加圧板側にしてサンプルを配置させ、直径φ100mm、厚さ25±1mm、底面のエッジ部に曲率半径10±1mmをもち下面が平らな加圧板を用い1mm/minの速度で圧縮を開始し、万能試験機で荷重が0.4Nと検出された時の厚さを計測し、硬度計厚さとした。この時の加圧板の位置をゼロ点として、速度10mm/minで硬度計厚さの75%まで圧縮した後、直ちに速度10mm/minにて加圧板をゼロ点まで戻した(一回目の応力歪み曲線)。ゼロ点に戻ると再度、速度10mm/minで硬度計厚さの75%まで圧縮し、直ちに同一速度にてゼロ点まで戻した(2回目の応力歪み曲線)。
図1(a)の2回目の応力歪み曲線において、図1(b)の2回目の圧縮時応力曲線の示す圧縮エネルギー(WC)、図1(c)の2回目の除圧時応力曲線の示す圧縮エネルギー(WC’)とし、下記式
(ヒステリシスロス)=(WC−WC’)/WC×100:単位%
WC=∫PdT(0%から75%まで圧縮したときの仕事量)
WC’=∫PdT(75%から0%まで除圧したときの仕事量)
に従って、細繊維主領域(細繊維主領域が複数の場合は主に最も細い繊維からなる細繊維主領域、以下同じ)側から加圧した時のヒステリシスロスを求めた。
上記のヒステリシスロスは、簡易的には、例えば図1のような応力歪み曲線が得られたら、パソコンによるデータ解析によって算出することができる。また、斜線部分の面積をWCとし、網掛け部分の面積をWC’として、それらの面積の差を切り抜いた部分の重さから求めることもできる(n=3の平均値)。
(10)底付き感
試料を幅方向40cm×長さ方向40cm×試料厚さの大きさに切断し、その試料に体重40kg〜100kgの範囲にあるパネラー30名(20歳〜39歳の男性;5名、20歳〜39歳の女性:5名、40歳〜59歳の男性:5名、40歳〜59歳の女性:5名、60歳〜80歳の男性:5名、60歳〜80歳の女性:5名)を椅子に座らせ、細繊維主領域(細繊維主領域が複数の場合は主に最も細い繊維からなる細繊維主領域、以下同じ)側から座ったときの「どすん」と椅子の座面に当たった感じの程度を感覚的に定性評価した。評価基準は、感じない;◎、弱く感じる;○、中程度に感じる;△、強く感じる;×、とした。
[実施例1]
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、ジメチルテレフタレ−ト(DMT)と1,4−ブタンジオ−ル(1,4−BD)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコ−ル(PTMG)を添加して昇温減圧しつつ重縮合せしめポリエ−テルエステルブロック共重合エラストマーを生成させ、次いで酸化防止剤1%を添加混合練込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥してポリエステル系熱可塑性エラストマーA−1を得た。ポリエステル系熱可塑性エラストマーA−1は、ソフトセグメント含有率40重量%、融点198℃であった。
幅方向の長さ50cm、厚さ方向の長さ67.6mmのノズル有効面にオリフィスの形状は、厚さ方向1列から7列目を外径3mm、内径2.6mmでトリプルブリッジの太い繊維用の中空形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列とし、厚さ方向8列から14列目を外径1mmの細い繊維用の中実形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向の孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列としたノズルを用い、得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を紡糸温度(溶融温度)240℃にて、中空形成オリフィス孔の単孔吐出量1.4g/min、中実形成オリフィス孔の単孔吐出量0.8g/minでノズル下方に吐出させ、ノズル面26cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅52mm間隔で一対の引き取りコンベアネットを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引き取りコンベアネットで挟み込みつつ1.14m/minの引き取り速度で冷却水中へ引込み、固化させることで厚さ方向の両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して110℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、網状構造体を得た。
得られた網状構造体は、主に繊維径が0.48mmの中実断面繊維からなる細繊維主領域と、主に繊維径が0.73mmの断面形状が三角おむすび型で中空率が20%の中空断面繊維からなる太繊維主領域と、細繊維主領域と太繊維主領域との間に位置する細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域と、が存在し、これらの領域が分離することなく一体化した網状構造体であり、繊維径の差が0.25mm、細い繊維の総重量比率が35%、見かけ密度が0.050g/cm3、表面が平坦化された厚さが50mmであった。
得られた網状構造体について、細繊維主領域側から加圧した時の、750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが7.0%、25%圧縮時硬度が28.9N/φ100mm、40%圧縮時硬度が55.7N/φ100mm、ヒステリシスロスが26.7%、パネラーによる底付き感は感じられず評価が◎であった。結果を表1にまとめた。
表1に示すように、本実施例で得られた網状構造体は、細い繊維の繊維径が0.1mm以上1.5mm以下であり、また、細い繊維の総重量比率が10%以上90%以下であったことから、ソフトな触感を有していた。また、本実施例で得られた網状構造体は、太い繊維の繊維径が細い繊維の繊維径に比べて0.07mm以上太く、また、細繊維主領域側から加圧した時の、25%圧縮時硬度が10N/φ100mm以上、40%圧縮時硬度が20N/φ100mm以上であったことから、底付き感のパネラーによる定性評価において底付き感がなかった。また、本実施例で得られた網状構造体は、細繊維主領域と太繊維主領域との間に混在領域が存在し、細繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが15%以下であったことから、圧縮耐久性に優れていた。
[実施例2]
幅方向の長さ50cm、厚さ方向の長さ67.6mmのノズル有効面にオリフィスの形状は、厚さ方向1列から7列目を外径3mm、内径2.6mmでトリプルブリッジの太い繊維用の中空形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列とし、厚さ方向8列から13列目を外径1.2mmの細い繊維用の中実形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ7mm、厚さ方向孔間ピッチ6.1mmの千鳥配列としたノズルを用い、上記で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を、紡糸温度(溶融温度)を240℃、中空形成オリフィス孔の単孔吐出量1.2g/min、中実形成オリフィス孔の単孔吐出量1.0g/minでノズル下方に吐出させ、ノズル面28cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅52mm間隔で一対の引き取りコンベアネットを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引き取りコンベアネットで挟み込みつつ1.14m/minの引き取り速度で冷却水中へ引込み、固化させることで厚さ方向の両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して110℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、網状構造体を得た。
得られた網状構造体は、主に繊維径が0.63mmの中実断面繊維からなる細繊維主領域と、主に繊維径が0.70mmの断面形状が三角おむすび型で中空率が18%の中空断面繊維からなる太繊維主領域と、細繊維主領域と太繊維主領域との間に位置する細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域と、が存在し、これらの領域が分離することなく一体化した網状構造体であり、繊維径の差が0.07mm、細い繊維の総重量比率が45%、見かけ密度が0.046g/cm3、表面が平坦化された厚さが50mmであった。
得られた網状構造体について、細繊維主領域側から加圧した時の、750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが7.2%、25%圧縮時硬度が39.4N/φ100mm、40%圧縮時硬度が68.4N/φ100mm、ヒステリシスロスが23.1%、パネラーによる底付き感は感じられず評価が◎であった。結果を表1にまとめた。
表1に示すように、本実施例で得られた網状構造体は、細い繊維の繊維径が0.1mm以上1.5mm以下であり、また、細い繊維の総重量比率が10%以上90%以下であったことから、ソフトな触感を有していた。また、本実施例で得られた網状構造体は、太い繊維の繊維径が細い繊維の繊維径に比べて0.07mm以上太く、また、細繊維主領域側から加圧した時の、25%圧縮時硬度が10N/φ100mm以上、40%圧縮時硬度が20N/φ100mm以上であったことから、底付き感のパネラーによる定性評価において底付き感がなかった。また、本実施例で得られた網状構造体は、細繊維主領域と太繊維主領域との間に混在領域が存在し、細繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが15%以下であったことから、圧縮耐久性に優れていた。
[実施例3]
幅方向の長さ50cm、厚さ方向の長さ72.7mmのノズル有効面にオリフィスの形状は、厚さ方向1列から4列目を外径1mmの細い繊維用の中実形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向の孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列とし、厚さ方向5列から11列目を外径3mm、内径2.6mmでトリプルブリッジの太い繊維用の中空形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列とし、厚さ方向12列から15列目を外径1mmの細い繊維用の中実形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向の孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列としたノズルを用い、上記で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を、紡糸温度(溶融温度)240℃にて、中空形成オリフィス孔の単孔吐出量1.5g/min、中実形成オリフィス孔の単孔吐出量0.9g/minの速度でノズル下方に吐出させ、ノズル面28cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅52mm間隔で一対の引き取りコンベアネットを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引き取りコンベアネットで挟み込みつつ1.54m/minの引き取り速度で冷却水中へ引込み、固化させることで厚さ方向の両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して110℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、網状構造体を得た。
得られた網状構造体は、厚さ方向に、主に細い繊維からなる細繊維主領域と、細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域と、主に太い繊維からなる太繊維主領域と、細い繊維と太い繊維とが混在してなる混在領域と、主に細い繊維からなる細繊維主領域と、がこの順に存在し、これらの領域が分離することなく一体化した網状構造体であり、太い繊維は、断面形状が三角おむすび型の中空断面で中空率が20%、繊維径が0.70mmの中空線状体で形成されており、細い繊維は、繊維径0.50mmの中実線状体で形成されており、繊維径の差が0.20mm、細い繊維の総重量比率が40%、見かけ密度が0.040g/cm3、表面が平坦化された厚さが51mmであった。ここで、本実施例において得られた網状構造体は、両方の表層面が主に細い繊維からなる細繊維主領域であることから、主に最も細い繊維からなる細繊維主領域を選択しその領域側から加圧することで測定を行った。
得られた網状構造体について、細繊維主領域側から加圧した時の、750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが7.1%、25%圧縮時硬度が18.0N/φ100mm、40%圧縮時硬度が35.7N/φ100mm、ヒステリシスロスが26.0%、パネラーによる底付き感は感じられず評価が◎であった。結果を表1にまとめた。
表1に示すように、本実施例で得られた網状構造体は、細い繊維の繊維径が0.1mm以上1.5mm以下であり、また、細い繊維の総重量比率が10%以上90%以下であったことから、ソフトな触感を有していた。また、本実施例で得られた網状構造体は、太い繊維の繊維径が細い繊維の繊維径に比べて0.07mm以上太く、また、細繊維主領域側から加圧した時の、25%圧縮時硬度が10N/φ100mm以上、40%圧縮時硬度が20N/φ100mm以上であったことから、底付き感のパネラーによる定性評価において底付き感がなかった。また、本実施例で得られた網状構造体は、細繊維主領域と太繊維主領域との間に混在領域が存在し、細繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが15%以下であったことから、圧縮耐久性に優れていた。
[比較例1]
得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を用い、紡糸温度(溶融温度)を240℃、幅方向の長さ50cm、厚さ方向の長さ67.6mmのノズル有効面に、1列から8列までを、オリフィス形状が外径3mm、内径2.6mmでトリプルブリッジの太い繊維用の中空形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ10mm、厚さ方向孔間ピッチを7.5mmの千鳥配置とし、9列から11列目までを、外径0.7mmの細い繊維用の中実形成オリフィスを、幅方向孔間ピッチを2.5mm、厚さ方向孔間ピッチ3.7mmとしたノズルを用い、中空形成オリフィス孔の単孔吐出量2.0g/min、中実形成オリフィス孔の単孔吐出量0.5g/min、全吐出量1100g/minの速度でノズル下方に吐出させ、ノズル面18cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅50mm間隔で一対の引き取りコンベアネットを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引き取りコンベアネットで挟み込みつつ1.00m/minの引き取り速度で冷却水中へ引込み、固化させた後、所定の大きさに切断して110℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、網状構造体を得た。
得られた網状構造体は、主に細い繊維からなる細繊維主領域と、主に太い繊維からなる太繊維主領域と、が分離することなく一体化した網状構造体であった。得られた網状構造体は、太い繊維形成オリフィスの幅方向孔間ピッチと細い繊維形成オリフィスの幅方向孔間ピッチが非常に異なるため、細い繊維のループとループの間に太い繊維のループが入り込むことができず、細い繊維と太い繊維を混在させて厚さを形成した領域が存在しない網状構造体であった。
太い繊維は、断面形状が三角おむすび型の中空断面で中空率が28%、繊維径が0.80mmの中空線状体で形成されており、細い繊維は、繊維径0.32mmの中実線状体で形成されており、繊維径の差が0.48mm、細い繊維の総重量比率が27%、見かけ密度が0.046g/cm3、表面が平坦化された厚さが50mmであった。
得られた網状構造体について、細繊維主領域側から加圧した時の、750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが15.6%、25%圧縮時硬度が21.9N/φ100mm、40%圧縮時硬度が40.3N/φ100mm、ヒステリシスロスが23.8%、パネラーによる底付き感は感じられず評価が◎であった。結果を表1にまとめた。
表1に示すように、本比較例で得られた網状構造体は、細繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが15%より大きかったことから、圧縮耐久性が悪かった。
[比較例2]
幅方向の長さ100cm、厚さ方向の長さ31.2mmのノズル有効面にオリフィスの形状は、厚さ方向7列を外径3mm、内径2.6mmでトリプルブリッジの中空形成性断面としたオリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列としたノズルを用い、得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を紡糸温度(溶融温度)240℃にて、単孔吐出量1.5g/minの速度でノズル下方に吐出させ、ノズル面28cm下に冷却水を配し、幅200cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅27mm間隔で一対の引き取りコンベアを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引き取りコンベアで挟み込みつつ1.14m/minの引き取り速度で冷却水中へ引込み、固化させることで厚さ方向の両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して110℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、断面形状が三角おむすび型を有する主に中空断面繊維からなる網状構造体を得た。得られた網状構造体は、見かけ密度が0.063g/cm3、表面が平坦化された厚さが25mmであり、中空断面繊維は中空率が20%、繊維径が0.76mmであった。
また、幅方向100cm、厚さ方向の幅31.2mmのノズル有効面にオリフィスの形状は、厚さ方向7列を外形1mmの中実形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列としたノズルを用い、得られた熱可塑性弾性樹脂(A−1)を溶融温度240℃にて、単孔吐出量0.9g/minの速度でノズル下方に吐出させ、ノズル面28cm下に冷却水を配し、幅200cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅27mm間隔で一対の引き取りコンベアを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引き取りコンベアで挟み込みつつ1.14m/minの引き取り速度で冷却水中へ引込み、固化させることで厚さ方向の両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して110℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、主に中実断面繊維からなる網状構造体を得た。得られた網状構造体は、見かけ密度が0.038g/cm3、表面が平坦化された厚さが25mmであり、中実断面繊維は、繊維径0.50mmであった。
得られた主に細い繊維である中実断面繊維からなる網状構造体と、主に太い繊維である中空断面繊維からなる網状構造体とを重ね合わせ網状構造体を作成した。重ね合わせた網状構造体全体の見かけ密度が0.051g/cm3、厚さが50mmであった。なお太い繊維である中空断面繊維の繊維径と細い繊維である中実断面繊維の繊維径の差は0.26mmであった。
この重ね合わせ網状構造体について、細い繊維である中実断面繊維からなる網状構造体側から圧縮した時の、750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが17.3%、25%圧縮時硬度が32.1N/φ100mm、40%圧縮時硬度が61.3N/φ100mm、ヒステリシスロスが26.2%、パネラーによる底付き感は感じられず評価が◎であった。結果を表1にまとめた。
表1に示すように、本比較例で得られた重ね合せ網状構造体は、細い繊維からなる網状構造体側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが15%より大きかったことから、圧縮耐久性が悪かった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。