以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、繊維径が0.1mm以上3.0mm以下のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー連続線状体からなる三次元ランダムループ接合構造を持つ網状構造体であって、網状構造体の厚さ方向に、主に中実断面を有する繊維(以下、「中実断面繊維」という)からなる中実断面繊維主領域と、主に中空断面を有する繊維(以下、「中空断面繊維」という)からなる中空断面繊維主領域と、中実断面繊維主領域と中空断面繊維主領域との間に位置する中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混合領域と、が存在し、網状構造体の中実断面繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の中実断面繊維主領域側残留歪みおよび中空断面繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の中空断面繊維主領域側残留歪みのいずれもが20%以下であり、中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側残留歪みとの差が10ポイント以下である網状構造体である。
本発明の網状構造体は、繊維径が0.1mm以上3.0mm以下のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる連続線状体を曲がりくねらせてランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて接合させた三次元ランダムループ接合構造を持つ構造体である。
本発明におけるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレンとα−オレフィンとが共重合してなるエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましく、オレフィンブロック共重合体であるエチレン・α−オレフィンからなるマルチブロック共重合体であることがより好ましい。エチレン・α−オレフィンからなるマルチブロック共重合体であることがより好ましいのは、一般的なランダム共重合体では、主鎖の連結鎖長が短くなり、結晶構造形成されにくく、耐久性が低下するためである。エチレンと共重合するα−オレフィンは、炭素数3以上のα−オレフィンであることが好ましい。
ここで、炭素数3以上のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンである。また、これら2種類以上を用いることもできる。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体であるランダム共重合体は、特定のメタロセン化合物と有機金属化合物を基本構成とする触媒系を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって得ることができ、マルチブロック共重合体は、チェーンシャトリング反応触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって得ることができる。必要に応じて、上記方法によって重合された二種類以上のポリマーや、水素添加ポリブタジエンや水素添加ポリイソプレンなどのポリマーをブレンドすることができる。
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体のエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとの比率は、エチレンが70mol%以上95mol%以下、炭素数が3以上のα−オレフィンが5mol%以上30mol%以下が好ましい。一般的に、高分子化合物がエラストマー性を得るのは、高分子鎖内に、ハードセグメントおよびソフトセグメントが存在するためであることが知られている。本発明のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーにおいては、エチレンはハードセグメント、炭素数3以上のα−オレフィンはソフトセグメントの役割を担っていると考えられる。そのため、エチレンの比率が70mol%未満では、ハードセグメントが少ないため、ゴム弾性の回復性能が低下する。エチレンの比率はより好ましくは75%以上、さらに好ましくは80mol%以上である。一方、エチレンの比率が95mol%を超える場合は、ソフトセグメントが少ないため、エラストマー性が発揮されにくく、クッション性能が劣る。エチレンの比率はより好ましくは93mol%以下、さらに好ましくは90mol%以下である。
本発明の網状構造体を構成するポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの密度は、0.84g/cm3以上0.94g/cm3以下であることが好ましく、0.85g/cm3以上0.92g/cm3以下がより好ましく、0.86g/cm3以上0.90g/cm3以下がさらに好ましい。密度が0.94g/cm3を超える場合は、樹脂中のハードセグメント部分が多すぎることを示しており、クッション性能が劣ること、および密度が高く、網状構造体自体が重くなる。密度が0.84g/cm3未満であるとポリエチレン系熱可塑性エラストマーのエラストマー性を発揮するためのハードセグメントが不足していることを示しており、ゴム弾性による回復性能が低下する。
本発明の網状構造体においては、必要に応じ、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー以外に、副材として、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、またはスチレン系熱の可塑性エラストマーとしてスチレン・イソプレン共重合体やスチレン・ブタジエン共重合体やそれらの水添共重合体などのポリマー改質剤をブレンドすることができる。さらに、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、脂肪酸系、エポキシ系、アジピン酸エステル系、またはポリエステル系の可塑剤、公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、またはアミン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、またはサリチル系などの光安定剤、帯電防止剤、過酸化物などの分子量調整剤、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物などの反応基を有する化合物、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機及び無機系の顔料を添加することができる。また、耐熱耐久性や耐へたり性を向上させるために、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの分子量を上げることも効果的である。
本発明の1つの特徴は、両面で異なるクッション性能を付与できることである。両面で異なるクッション性能が付与された網状構造体を得る方法は、両面それぞれから圧縮した時に、クッション性を変化させるために、少なくとも網状構造体の厚さ方向に、主に中実断面繊維からなりそれによって厚さを形成した中実断面繊維主領域と、主に中空断面繊維からなりそれによって厚さを形成した中空断面繊維主領域と、中実断面繊維主領域と中空断面繊維主領域との間に位置するそれ以外の領域である混在領域と、が存在することである。
中実断面繊維主領域および中空断面繊維主領域において、「主に」とは、その領域に含まれる総繊維本数に対して、その断面を有する繊維本数が占める割合が90%以上であることを意味する。また、中実断面繊維主領域と中空断面繊維主領域との間に位置する中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域においては、その領域に含まれる総繊維本数に対する中実断面繊維の繊維本数の占める割合が中実断面繊維主領域に比べて低く、かつ、その領域に含まれる総繊維本数に対する中空断面繊維の繊維本数の占める割合が中空断面繊維主領域に比べて低い。すなわち、混合領域は、その領域に含まれる総繊維本数に対して、中実断面繊維の繊維本数および中空断面繊維の繊維本数の両方が90%未満である領域を意味する。
ここで、所定の領域における各繊維の繊維本数の占める割合は、以下の方法で測定する。まず、試料を、幅方向3cm×長さ方向3cm×試料厚さの大きさに10サンプル切り出し、各サンプルの重さを電子天秤により測定する。次いで、各サンプルの同じ表面側から試料を構成している繊維を1本ずつサンプル厚さが出来るだけ均一に減少するように抜き出す。サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの90%以下の重さに初めてなるまで、繊維を1本ずつ抜き出す作業を続ける。抜き出した繊維の繊維断面を目視または光学顕微鏡等により確認し、中実断面繊維と中空断面繊維に分け、中実断面繊維および中空断面繊維の繊維本数を数える。10サンプルの中実断面繊維および中空断面繊維の繊維本数を足してその領域に含まれる総繊維本数とする。その領域に含まれる総繊維本数に対する中実断面繊維の繊維本数および中空断面繊維の繊維本数から、中実断面繊維の繊維本数および中空断面繊維の繊維本数の占める割合をそれぞれ計算し、その領域が中実断面繊維主領域、中空断面繊維主領域、または混在領域かを判断する。
続いて、各サンプルからの繊維の抜き出し作業を再開し、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの80%以下の重さに初めてなるまで、繊維を1本ずつ抜き出す作業を続け、上記と同様にして、その領域に含まれる総繊維本数に対する中実断面繊維の繊維本数および中空断面繊維の繊維本数から、中実断面繊維の繊維本数および中空断面繊維の繊維本数の占める割合をそれぞれ計算し、その領域が中実断面繊維主領域、中空断面繊維主領域、または混在領域かを判断する。
その後、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの70%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの60%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの50%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの40%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの30%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの20%以下の重さに初めてなるまで、サンプル重さが最初に準備したサンプルの重さの10%以下の重さに初めてなるまで、さらにサンプルの重さが0%の重さになるまで、サンプル重さのほぼ10%毎に、各サンプルからの繊維の抜き出し作業を繰り返し、上記と同様にして、表面側から厚さ方向に10個に区分した各領域に含まれる総繊維本数に対する中実断面繊維の繊維本数および中空断面繊維の繊維本数から、中実断面繊維の繊維本数および中空断面繊維の繊維本数の占める割合をそれぞれ計算し、各領域が中実断面繊維主領域、中空断面繊維主領域、または混在領域かを判断する。
本発明の別の1つの特徴は、網状構造体の中実断面繊維主領域側から加圧した場合と中空断面繊維主領域側から加圧した場合の圧縮耐久性の差が小さいことである。具体的には、中実断面繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側から加圧した時の750N定荷重繰り返し中空断面繊維主領域側残留歪みとの差が、10ポイント以下であり、好ましくは9ポイント以下であり、より好ましくは8ポイント以下であり、さらに好ましくは6ポイント以下である。750N定荷重繰り返し圧縮後の中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側残留歪みとの差が10ポイントを超えると、中実断面繊維主領域側と中空断面繊維主領域側とで圧縮耐久性の差が大きくなりすぎ、本発明の網状構造体をリバーシブルで使用する場合、使う方向により網状構造体のへたり具合が異なるため好ましくない。750N定荷重繰り返し圧縮後の中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側残留歪みとの差の下限は、中実断面繊維主領域側と中空断面繊維主領域側とで圧縮耐久性の差が全くない場合の0ポイントである。ここで、本願において、「差」とは、2つの値において、大きい値から小さい値を引いたものをいう。また、「ポイント」とは、単位が「%」である2つの値の差、例えば、中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側残留歪みとの差、を表わす単位である。
本発明の網状構造体の中実断面繊維主領域側残留歪みおよび中空断面繊維主領域側残留歪みは、いずれもが、20%以下であり、好ましくは15%以下であり、より好ましくは13%以下であり、さらに好ましくは11%以下である。実断面繊維主領域側残留歪みおよび中空断面繊維主領域側残留歪みの少なくともいずれかが高い値になると圧縮耐久性が悪いことを意味する。
上述の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みにおいて、中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側残留歪みとの差を小さくするためは、中実断面繊維主領域と中空断面繊維主領域との間の位置に中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域を存在させ、これらの領域が分離することなく一体化することにより網状構造体全体の厚さが形成されていることが重要である。
中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域が存在せず、主に中実断面繊維からなる網状構造体と、主に中空断面繊維からなる網状構造体とを重ね合わせただけで、容易に分離でき一体化していない2枚重ね合わせ積層網状構造体でも、両面で異なるクッション性能を付与することは可能である。しかし、上記重ね合わせ積層網状構造体では、圧縮硬度の低い網状構造体の面から加圧圧縮していくと、まず圧縮硬度の低い網状構造体のみが圧縮変形し、圧縮硬度の低い網状構造体のみが圧縮硬度の高い網状構造体から独立してたわむ。そして、圧縮硬度の低い網状構造体のみで圧縮負荷に耐えきれなくなった段階でようやく圧縮硬度の高い網状構造体に圧縮応力が伝播し、圧縮硬度の高い網状構造体の変形やたわみが始まる。このため加圧圧縮が繰り返されると圧縮硬度の低い網状構造体の方が先に疲労が蓄積し、圧縮硬度の高い網状構造体よりも厚さ低下や圧縮硬度低下が進んでいく。つまり、両面で異なるクッション性能を付与することはできるが、両面からそれぞれ加圧した時の圧縮耐久性の差が大きく異なる網状構造体となってしまう。
また、中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域は存在しないが、主に中実断面繊維からなる網状構造体と、主に中空断面繊維からなる網状構造体とを接着により貼り合わせ一体化した2枚貼り合わせ積層網状構造体でも、両面で異なるクッション性能を付与することは可能である。しかし、上記貼り合わせ積層網状構造体では、繰り返し圧縮の初期段階は、加圧圧縮負荷に対して両方の網状構造体が一体となって変形したわむが、圧縮が繰り返されるにつれ接着面に応力が集中し、接着力の低下やはがれが生じるため、2枚貼り合わせ積層網状構造体も両面からそれぞれ加圧した時の圧縮耐久性の差が大きく異なる網状構造体となってしまう。
また、中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域は存在しないが、主に中実断面繊維からなる中実断面繊維主領域と、主に中空断面繊維からなる中空断面繊維主領域とが融着一体化した網状構造体でも、両面で異なるクッション性能を付与することとは可能である。このような網状構造体は、主に中空断面繊維からなる網状構造体の上に中実断面繊維を吐出して主に中実断面繊維からなる網状構造体を融着積層する方法によって得ることができる。しかし、この方法で得られた上記網状構造体は、一旦中空断面繊維が固化した後、中実断面繊維を融着させるため、中空断面繊維層と中実断面繊維層の境界面の融着力が低く、繰り返し圧縮負荷を受けると境界面に応力が集中し界面剥離が発生し、結果的に耐久性が悪くなる。
本発明の網状構造体は、中実断面繊維主領域と中空断面繊維主領域との間に位置する中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域が存在し、これらの領域を分離することなく一体化したことで網状構造体全体の厚さを形成した網状構造体の場合、圧縮硬度の低い側から加圧圧縮しても、混在領域を通じて、圧縮初期の段階から圧縮硬度の高い側へ応力が伝播し、厚さ方向へ応力が効率よく分散され、加圧圧縮負荷に対し網状構造体全体が変形したわむ。これにより、圧縮硬度が低い側から加圧した時の繰り返し圧縮耐久性と、圧縮硬度が高い側から加圧した時の繰り返し圧縮耐久性の差を小さくすることが可能となったものである。
本発明の網状構造体は、特開2014−194099号公報等に記載された公知の方法に新たな技術を付加することにより得られる。例えば、後述する複数のオリフィスでかつ異なるオリフィス孔径を複数有する多列ノズルよりポリオレフィン系熱可塑性エラストマーをノズルオリフィスに分配し、上記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの融点より20℃以上120℃未満高い紡糸温度で、上記ノズルより下方に向け吐出させ、溶融状態で互いに連続線状体を接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引取りコンベアネットで挟み込み、冷却槽中の冷却水で冷却せしめた後、引出し、水切り後または乾燥して、両面または片面が平滑化した網状構造体を得る。片面のみを平滑化させる場合は、傾斜を持つ引取ネット上に吐出させて、溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ引取ネット面のみ形態を緩和させつつ冷却すると良い。得られた網状構造体をアニーリング処理することもできる。なお、網状構造体の乾燥処理をアニーリング処理としても良い。
得られた網状構造体に熱処理(アニーリング処理)を行うこともできる。熱処理温度は70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。熱処理はポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの融点以下で行われることが好ましく、融点より5℃以上低い温度、より好ましくは融点より10℃以上低い温度で処理することが好ましい。熱処理時間は1分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、20分以上がさらに好ましく、30分以上が特に好ましい。熱処理時間は長い方が好ましいが、一定時間以上にしても熱処理の効果が増加せず、逆に樹脂の劣化を引き起こすため、熱処理時間は1時間以内で行うことが好ましい。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体を、示差走査型熱量計にて測定すると、融解曲線において、室温(20℃)から融点以下に吸熱ピークを有することが好ましい。融点以下の吸熱ピークは2つ以上有する場合もあり、融点との近さやベースライン形状によってはショルダーになって現れる場合もある。この吸熱ピークを有するものは、吸熱ピークを有しないものに比べて耐熱耐湿熱性が向上する。本発明のおける耐熱耐へたり性向上効果の活用方法としては、ヒーターが用いられる車両用のクッションや床暖房された床の敷きマット等、比較的高温になり得る環境での比較的繰り返し圧縮される用途において、耐久性が良好となるため有用である。
本発明の網状構造体を得る手段としては、ノズル形状やディメンジョン、ノズル孔配列を最適にすることが好ましい。ノズル形状は、細い繊維を形成するオリフィス径は1.5mm以下が好ましく、太い繊維を形成するオリフィス径は2mm以上が好ましい。また、太い繊維を形成するノズルオリフィス形状は中空形成性を有することが好ましく、C型ノズルや3点ブリッジ形状ノズルなどが挙げられるが、耐圧の観点から3点ブリッジ形状ノズルであることが好ましい。孔間ピッチは、細い繊維を形成するオリフィスと太い繊維を形成するオリフィスいずれも、4mm以上12mm以下が好ましく、5mm以上11mm以下がさらに好ましい。ノズル孔配列は、格子配列、円周配列、千鳥配列などが例示されるが、網状構造体の品位の観点から格子配列または千鳥配列が好ましい。ここで、孔間ピッチとは、ノズル孔の中心間の距離であり、網状構造体の幅方向の孔間ピッチ(以下、「幅方向孔間ピッチ」という)および網状構造体の厚さ方向の孔間ピッチ(以下、「厚さ方向孔間ピッチ」という)が存在する。上記に記載の好適な孔間ピッチについては、幅方向孔間ピッチおよび厚さ方向孔間ピッチの両者に好適な孔間ピッチを記載したものである。
本発明の網状構造体を得るためのノズルとしては、
a群:中実断面繊維用オリフィス孔が厚さ方向に複数列配置されて構成されるオリフィス孔群、
ab混在群:中実断面繊維用オリフィス孔と中空断面繊維用オリフィス孔が混在して厚さ方向に複数列配置されて構成されるオリフィス孔群、
b群:中空断面繊維用オリフィス孔が厚さ方向に複数列配置されて構成されるオリフィス孔群、
の3つの群(a群、ab混在群、およびb群)からなるノズルが挙げられる。
また、別のノズルとしては、
α群:中実断面繊維用オリフィス孔が厚さ方向に複数列配置されて構成されるオリフィス孔群、
β群:中空断面繊維用オリフィス孔が厚さ方向に複数列配置されて構成されるオリフィス孔群、
の2つの群(α群およびβ群)からなり、中実断面繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチと中空断面繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチの差が小さいノズルも挙げられる。ノズルの構造を簡素化できる観点から、上記α群およびβ群からなるノズルがより好ましい。
ノズルのオリフィス孔群としては2つだが、α群とβ群との境界面付近から紡糸された繊維は、中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域を形成するため、本発明の厚さ方向に3つの領域からなる網状構造体を得ることができる。
本発明の両面のどちらから加圧しても圧縮耐久性の差が小さい網状構造体を得るためには、中実断面繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチと中空断面繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチの差を小さくする必要がある。幅方向孔間ピッチの差が小さいと耐久性の差が小さくなる理由の全容は明らかになっている訳では無いが、以下のように推測される。
中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域において、オリフィスの幅方向孔間ピッチの差が小さいということは、混在領域において中実断面繊維と中空断面繊維の構成本数が近いことを意味する。中実断面繊維と中空断面繊維の構成本数が近いと、中実断面繊維と中空断面繊維とがほぼ1本対1本で複数の接点を構成しているといえる。そのため、両面のどちらから加圧された場合にも、応力が伝播しやすいため、どちらから加圧した場合も圧縮耐久性の差が小さくなると考えられる。
それに対し、オリフィスの幅方向孔間ピッチの差が大きいノズルで網状構造体を形成した場合、中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域において、例えば中実断面繊維の構成本数が中空断面繊維の構成本数に比べて多い時は、混在領域において、中実断面繊維の一部は中空断面繊維と接点をほとんど有しないものが存在することになる。そのため、中空断面繊維側から加圧した時は、中空断面繊維から応力が殆ど伝播しない中実断面繊維が存在し、それらは中空断面繊維から応力が伝播された中実断面繊維を経由して応力が伝播されると考えられる。一方、中実断面繊維側から加圧した時は、中空断面繊維に応力を伝播できない中実断面繊維が存在し、それらは中空断面繊維に応力を伝播できる中実断面繊維を経由して応力を中空断面繊維に伝播すると考えられる。
すなわち、オリフィスの幅方向孔間ピッチの差が大きいノズルで網状構造体を形成した場合は、中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域において、応力の伝播の方向が、厚さ方向と厚さ方向に直交する方向に分散してしまうため、応力の伝播効率が低下するため、中実断面繊維側から加圧された場合と中空断面繊維側から加圧された場合とで、圧縮耐久性の差が大きくなるものと考えられる。
中実断面繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチと中空断面繊維用オリフィスの幅方向孔間ピッチの差としては、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0mm、すなわち幅方向孔間ピッチが同じであることがさらに好ましい。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体の繊維径は、0.1mm以上3.0mm以下であり、0.2mm以上2.5mm以下が好ましく、0.3mm以上2.0mm以下がより好ましい。繊維径が0.1mm未満だと細すぎてしまい、緻密性やソフトな触感は良好となるが網状構造体として必要な硬度を確保することが困難となり、繊維径が3.0mmを超えると網状構造体の硬度は十分に確保できるが、網状構造が粗くなり、他のクッション性能が劣る場合がある。そうした観点から、複数の繊維径は、適正な範囲に設定する必要がある。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体は、繊度が同じであれば、中空断面繊維は中実断面繊維より断面二次モーメントが高いことから、中空断面繊維を使用した方が、圧縮抗力が高くなる。そのため、より顕著に両面で異なるクッション性能を得るために、中空断面繊維の繊維径が、中実断面繊維の繊維径と比較して太い繊維径であることが好ましい。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体の中空断面繊維と中実断面繊維の繊維径の差は、0.07mm以上が好ましく、0.10mm以上がより好ましく、0.12mm以上がさらに好ましく、0.15mm以上が特に好ましく、0.20mm以上が最も好ましく、0.25mm以上がさらに最も好ましい。繊維径の差の上限は、本発明においては2.5mm以下が好ましい。繊維径の差が0.07mm未満であると、両面でのクッション性能の差が小さくなる。逆に繊維径の差が大きすぎると異物感が出過ぎるため、適正な範囲に設定する必要がある。
本発明の網状構造体を構成する中実断面繊維の総重量比率は、網状構造体を構成する全繊維に対し10%以上90%以下が好ましい。本発明の網状構造体に良好なリバーシブル性を付与するためには、20%以上80%以下がより好ましく、30%以上70%以下がさらに好ましい。10%未満および90%を超えると、両面でのクッション性能の差が小さくなる。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂と組み合わせた複合線状としても良い。複合形態としては、線状体自身を複合化した場合として、シース・コア型、サイドバイサイド型、偏芯シース・コア型等の複合線状体が挙げられる。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体の断面形状は中実断面繊維、中空断面繊維とも略円形状であることが好ましいが、異型断面とすることで抗圧縮性やタッチを付与することができる場合もある。
本発明の網状構造体は、性能を低下させない範囲で樹脂製造過程から成形体に加工し、製品化する任意の段階で防臭抗菌、消臭、防黴、着色、芳香、難燃、吸放湿等の機能付与を薬剤添加等の処理加工ができる。
本発明の網状構造体は、あらゆる形状に成型したものを含む。例えば、板状、三角柱、多角体、円柱、球状やこれらを多数含む網状構造体も含まれる。これらの成型方法は、カット、熱プレス、不織布加工などの公知な方法で行うことができる。
本発明の網状構造体は、網状構造体の一部分に本発明の網状構造を持つ網状構造体も含むものである。
本発明の網状構造体の見かけ密度は、0.005g/cm3以上0.20g/cm3以下が好ましく、0.01g/cm3以上0.18g/cm3以下がより好ましく、0.02g/cm3以上0.15g/cm3以下がさらに好ましい。見かけ密度が0.005g/cm3未満であるとクッション材として使用する際に必要な硬度が保てなくなり、逆に0.20g/cm3を越えると硬くなり過ぎてしまいクッション材に不適なものとなる場合がある。
本発明の網状構造体の厚さは、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。厚さが5mm未満ではクッション材に使用すると薄すぎてしまい底付き感が出てしまう場合がある。厚さの上限は製造装置の関係から、300mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましく、120mm以下がさらに好ましい。
本発明の網状構造体の中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度および中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度は、いずれもが、2N/φ100mm以上が好ましく、5N/φ100mm以上がより好ましい。25%圧縮時硬度が2N/φ100mm未満ではクッション材としての硬度が不足してしまい底付き感が出てしまう場合がある。25%圧縮時硬度の上限は特に規定しないが、1.5kN/φ100mm以下が好ましい。
本発明の網状構造体は中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度との比が、1.03以上であることが好ましく、1.05以上であることがより好ましく、1.07以上であることがさらに好ましく、1.10以上であることが特に好ましく、1.20以上であることが最も好ましい。25%圧縮時硬度の比が1.03未満では、両面でのクッション性能の差が小さくなる。ここで、本願において、「比」とは、2つの値において、小さい値に対する大きな値の比をいい、大きな値を小さな値で除した値に等しい。
本発明の網状構造体の中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度および中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度は、いずれもが、5N/φ100mm以上が好ましく、10N/φ100mm以上がより好ましく、15N/φ100mm以上がさらに好ましい。40%圧縮時硬度が5N/φ100mm未満ではクッション材としての硬度が不足してしまい底付き感が出てしまう場合がある。40%圧縮時硬度の上限は特に規定しないが、5kN/φ100mm以下が好ましい。
本発明の網状構造体は中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度との比が、1.05以上であることが好ましく、1.07以上であることがより好ましく、1.10以上であることがさらに好ましく、1.15以上であることが特に好ましく、1.20以上であることが最も好ましい。40%圧縮時硬度の比が1.05未満では、両面でのクッション性能の差が小さくなる。
本発明の網状構造体の中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数および中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数は、いずれもが、2.5以上10.0以下が好ましく、2.6以上9.0以下がより好ましく、2.7以上8.0以下がさらに好ましい。圧縮たわみ係数が2.5未満だと圧縮率の変化に対するクッション性能の差が小さく寝心地や座り心地が悪くなる場合がある。逆に10.0を超えると、圧縮率の変化でクッション性能の差が大きくなりすぎ、底付き感や違和感となる場合がある。
本発明の網状構造体について、中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数と中空断面繊維側から加圧した時の圧縮たわみ係数との差は、5以下であることが好ましい。圧縮たわみ係数の差が5を越えると、圧縮たわみ係数が高い方の面の使用時において、底付き感や違和感となる場合がある。圧縮たわみ係数の差の下限は特に規定しないが、本発明においては差が全くない0以上が好ましい。
本発明の網状構造体の中実断面繊維主領域側から加圧した時および中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスは、いずれもが、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましく、45%以下であることが特に好ましい。上記のヒステリシスロスが60%を超えると、本発明の網状構造体の高反発な寝心地や座り心地が保てなくなる。ヒステリシスロスの下限は特に規定しないが、本発明においては1%以上が好ましい。
本発明の網状構造体において、中実断面繊維側から加圧した時のヒステリシスロスと中空断面繊維側から加圧した時のヒステリシスロスを比較すると、圧縮時硬度が低い側のヒステリシスロスの方が、圧縮時硬度が高い側のヒステリシスロスよりも高くなる傾向にある。
なお、本発明において、750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪み、25%、40%、および65%圧縮硬度、ならびに中実断面繊維主領域側から加圧した時および中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスは、インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン万能試験機、株式会社島津製作所製精密万能試験機オートグラフ AG−X plus、株式会社オリエンテック製テンシロン万能材料試験機等の万能試験機を用いて測定することができる。
本発明の網状構造体について、中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスと中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスとの差は、5ポイント以下であることが好ましい。上記のヒステリシスロスの差が5ポイントを越えると、網状構造体の高反発な寝心地や座り心地が保てなくなる。上記のヒステリシスロスの差の下限は、特に規定しないが、本発明においては差が全くない0ポイント以上が好ましい。
かくして得られた本発明の網状構造体は、両面で異なるクッション性能が付与されたものである。従来の両面で異なるクッション性能が付与されたマットを製造する際には、側地内に網状構造体と設計の異なる網状構造体、または硬綿やウレタンなどを積層していた。これらは、クッション性能に優れているものの、どちらか一方の面から使用した場合ともう一方の面から使用した場合とで圧縮耐久性が異なることや、製造コストがかさみ比較的高額な商品になることや、分別回収が必要となりリサイクルが煩雑となる問題があった。網状構造体単体において両面での圧縮耐久性の差が小さく、両面で異なるクッション性能が付与された本発明の網状構造体は、これらの問題を解決することが可能となる。
本発明のクッション材は、クッション内部に上記の網状構造体を含み、リバーシブルで使用することができる。本発明において、リバーシブルで使用することができるということは、クッション材に含まれる網状構造体の中実断面繊維主領域側または中空断面繊維主領域側のいずれの面からも使用が可能であるということを意味する。したがって、使用態様において中実断面繊維主領域側または中空断面繊維主領域側の片側のみからの使用であっても、本発明の使用に該当するものである。
以下に、実施例を例示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例中における特性値の測定および評価は下記のように行った。なお、試料の大きさは以下に記載の大きさを標準とするが、試料が不足する場合は可能な大きさの試料サイズを用いて測定を行った。
(1)繊維径(mm)
試料を幅方向10cm×長さ方向10cm×試料厚さの大きさに切断し、切断断面から厚さ方向にランダムに中実断面繊維10本と中空断面繊維10本の線状体を約5mmの長さで採集した。採集した線状体を、光学顕微鏡を適切な倍率で繊維径測定箇所にピントを合わせて繊維側面から見た繊維の太さを測定した。ただし、繊維径の平均は、繊維径の異なる領域それぞれの平均を算出した:単位mm(各n=10の平均値)。また、比較例1における、繊維径の測定は、切断断面から厚さ方向にランダムに10本の繊維を約5mmの長さで採集し、光学顕微鏡を適切な倍率で繊維径測定箇所にピントを合わせて繊維側面から見た繊維の太さを測定した。なお、網状構造体の表面は平滑性を得るためにフラット化されているため繊維断面が変形している場合があるため、網状構造体表面から2mm以内の領域から試料は採取しないこととした。
(2)繊維径の差(mm)
上記(1)で測定された中実断面繊維および中空断面繊維のそれぞれの繊維径の平均値の差を取り、
(繊維径の差)=(中空断面繊維の繊維径の平均値)−(中実断面繊維の繊維径の平均値):単位mm
の式により繊維径の差を算出した。また、比較例1においては、
(繊維径の差)=(太い繊維の繊維径の平均値)−(細い繊維の繊維径の平均値):単位mm
の式により繊維径を算出した。
(3)中実断面繊維の総重量比率(%)
試料を幅方向5cm×長さ方向5cm×試料厚さの大きさに切断した。その試料を構成している繊維を、目視または光学顕微鏡等により確認し、中実断面繊維と中空断面繊維に分ける。その後、中実断面繊維のみの総重量と、中空断面繊維のみの総重量を計測する。中実断面繊維の総重量比率は、
(中実断面繊維の総重量比率)=(中実断面繊維の総重量)/(中実断面繊維の総重量+中空断面繊維の総重量)×100:単位%
の式により算出した。
(4)中空率(%)
試料を幅方向5cm×長さ方向5cm×試料厚さの大きさに切断し、試料表面両側から厚さ方向10%以内の範囲以外の切断断面から厚さ方向にランダムに中空断面繊維の線状体10本を採集した。採集した線状体を輪切り方向で切断し、繊維軸方向に立てた状態でカバーガラスに載せ、光学顕微鏡で輪切り方向の繊維断面写真を得た。断面写真より中空部面積(a)および中空部を含む繊維の全面積(b)を求め、
(中空率)=(a)/(b)×100(単位%、n=10の平均値)
の式により中空率を算出した。
(5)厚さおよび見掛け密度(mmおよびg/cm3)
試料を幅方向10cm×長さ方向10cm×試料厚さの大きさに4サンプル切り出し、無荷重で24時間放置した。その後、中実断面繊維面側を上にして高分子計器製FD−80N型測厚器にて面積15cm2の円形測定子を使用し、各サンプル1か所の高さを測定して4サンプルの平均値を求め厚さとした。また、上記試料を電子天秤に載せて計測した4サンプルの重さの平均値を求め重さとした。また、見掛け密度は、平均試料重さおよび平均試料厚さから
(見掛け密度)=(重さ)/(厚さ×10×10):単位g/cm3
の式により算出した。
(6)融点(Tm)(℃)
TAインスツルメント社製示差走査熱量計Q200を使用し、昇温速度20℃/分で測定した吸発熱曲線から吸熱ピーク(融解ピーク)温度を求めた。
(7)750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪み(%)
試料を幅方向40cm×長さ方向40cm×試料厚さの大きさに切断し、23℃±2℃の環境下に無荷重で24時間放置した後、23℃±2℃の環境下にある万能試験機(インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン万能試験機)を用いて計測した。直径200mm、厚さ3mmの加圧板をサンプル中心になるようにサンプルを配置させ、万能試験機で荷重が5Nと検出された時の厚さを計測し、初期硬度計厚さ(c)とした。その後直ちに、厚さを測定したサンプルを、ASKER STM−536を用いて、JIS K6400−4(2004)A法(定荷重法)に準拠して750N定荷重繰り返し圧縮を行なった。加圧子は、底面のエッジ部に曲率半径25±1mmをもつ、直径250±1mm、厚さ3mmの円形で下面が平らなものを用い、荷重750N±20N、圧縮頻度は毎分70±5回、繰り返し圧縮回数は8万回、最大の750±20Nに加圧している時間は、繰り返し圧縮に要する時間の25%以下とした。繰り返し圧縮終了後、試験片を力のかからない状態で10±0.5分間放置し、万能試験機(インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン万能試験機)を用いて、直径200mm、厚さ3mmの加圧板をサンプル中心になるようにサンプルを配置させ、万能試験機で荷重が5Nと検出された時の厚さを計測し、繰り返し圧縮後硬度計厚さ(d)とした。750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みは、初期硬度計厚さ(c)と繰り返し圧縮後硬度計厚さ(d)を用いて、
(750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪み)
={(c)−(d)}/(c)×100:単位%(n=3の平均値)
の式により算出した。
上記測定は、中実断面繊維主領域側から加圧した場合、中空断面繊維主領域側から加圧した場合、それぞれにおいて測定した。ここで、中実断面繊維主領域側から加圧した場合を中実断面繊維側残留歪みとし、中空断面繊維主領域側から加圧した場合を中空断面繊維主領域側残留歪みとし、それぞれの残留歪みの測定用に、別々の試料を準備して測定を行った。
(8)中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側残留歪みの差(ポイント)
上記(7)にて算出した中実断面繊維主領域側残留歪みおよび中空断面繊維主領域側残留歪みを用いて、
(中実断面繊維側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みと中空断面繊維側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みの差)
=|(中実断面繊維側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪み)−(中空断面繊維側から加圧した時の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪み)|
:単位ポイント
の式により算出した。
(9)25%、40%、65%圧縮時硬度(N/φ100mm)
試料を幅方向20cm×長さ方向20cm×試料厚さの大きさに切断し、23℃±2℃の環境下に無荷重で24時間放置した後、23℃±2℃の環境下にある万能試験機(インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン万能試験機)にて直径φ100mm、厚さ25±1mm、底面のエッジ部に曲率半径10±1mmをもち下面が平らな加圧板を用いて、試料の中心部を1mm/minの速度で圧縮を開始し、万能試験機で荷重が0.4Nと検出された時の厚さを計測し、硬度計厚さとした。この時の加圧板の位置をゼロ点として、硬度計厚さ測定後直ちに、速度10mm/minで硬度計厚さの75%まで圧縮した後、即座に速度10mm/minにて加圧板をゼロ点まで戻し、引き続き直ちに、速度10mm/minで硬度計厚さの25%、40%、65%まで圧縮し、その際の荷重を測定し、各々25%圧縮時硬度、40%圧縮時硬度、65%圧縮時硬度とした:単位N/φ100mm(n=3の平均値)。上記測定は、中実断面繊維主領域側から加圧した時、中空断面繊維主領域側から加圧した時、それぞれにおいて測定した。ここで、中実断面繊維主領域側の圧縮時硬度測定用および中空断面繊維主領域側の圧縮時硬度測定用に、別々の試料を準備して測定を行った。
(10)中実断面繊維側から加圧した時の25%圧縮時硬度と中空断面繊維側から加圧した時の25%圧縮時硬度の比(−)
上記(9)にて測定した中実断面繊維主領域側および中空断面繊維主領域側の各々から加圧した時の25%圧縮時硬度を用いて、下記の場合に応じて下記式、
・(中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度)≧(中空断面繊維側から加圧した時の25%圧縮時硬度)の場合
(中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度との比)
=(中実断面繊主領域維側から加圧した時の25%圧縮時硬度)/(中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度)
・(中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度)<(中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度)の場合
(中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度との比)
=(中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度)/(中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度)
により算出した。
(11)中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度の比(−)
上記(9)にて測定した中実断面繊主領域維側および中空断面繊維主領域側の各々から加圧した時の40%圧縮時硬度を用いて、下記の場合に応じて下記式、
・(中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度)≧(中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度)の場合
(中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度との比)
=(中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度)/(中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度)
・(中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度)<(中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度)の場合
(中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度との比)
=(中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度)/(中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度)
により算出した。
(12)圧縮たわみ係数(−)
圧縮たわみ係数は、(9)に記載の中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度を(e)とし、中実断面繊維主領域側から加圧した時の65%圧縮時硬度を(f)とし、中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度を(g)とし、中空断面繊維主領域側から加圧した時の65%圧縮時硬度を(h)とし、下記の式
(中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数)=(f)/(e):(n=3の平均値)
(中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数)=(h)/(g):(n=3の平均値)
により算出した。
(13)中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数と中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数の差(−)
上記(12)にて算出した圧縮たわみ係数を用いて下記の式
(中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数と中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数の差)
=|(中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数)−(中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数)|
により算出した。
(14)ヒステリシスロス(%)
試料を幅方向20cm×長さ方向20cm×試料厚さの大きさに切断し、23℃±2℃の環境下に無荷重で24時間放置した後、23℃±2℃の環境下にある万能試験機(インストロンジャパンカンパニーリミテッド製インストロン万能試験機)にて直径φ100mm、厚さ25±1mm、底面のエッジ部に曲率半径10±1mmをもち下面が平らな加圧板を用いて、試料の中心部を1mm/minの速度で圧縮を開始し、万能試験機で荷重が0.4Nと検出された時の厚さを計測し、硬度計厚さとした。この時の加圧板の位置をゼロ点として、硬度計厚さ測定後直ちに、速度10mm/minで硬度計厚さの75%まで圧縮した後、即座に速度10mm/minにて加圧板をゼロ点まで戻した(一回目の応力歪み曲線)。ゼロ点に戻ると再度、直ちに、速度10mm/minで硬度計厚さの75%まで圧縮し、即座に同一速度にてゼロ点まで戻した(2回目の応力歪み曲線)。
図1(a)の2回目の応力歪み曲線において、図1(b)の2回目の圧縮時応力曲線の示す圧縮エネルギー(WC)、図1(c)の2回目の除圧時応力曲線の示す圧縮エネルギー(WC’)とし、下記式
(ヒステリシスロス)=(WC−WC’)/WC×100:単位%
WC=∫PdT(0%から75%まで圧縮したときの仕事量)
WC’=∫PdT(75%から0%まで除圧したときの仕事量)
に従ってヒステリシスロスを求めた。
上記のヒステリシスロスは、簡易的には、例えば図1のような応力歪み曲線が得られたら、パソコンによるデータ解析によって算出することができる。また、斜線部分の面積をWCとし、網掛け部分の面積をWC’として、それらの面積の差を切り抜いた部分の重さから求めることもできる(n=3の平均値)。
上記のヒステリシスロスの測定は、中実断面繊維主領域側から加圧した時、中空断面繊維主領域側から加圧した時、それぞれにおいて測定した。ここで、中実断面繊維主領域側の測定用および中空断面繊維主領域側の測定用に、別々の試料を準備して測定を行った。
(15)中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスと中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスの差(ポイント)
上記(14)にて算出したヒステリシスロスを用いて下記の式
(中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスと中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスとの差)
=|(中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロス)−(中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロス)|:単位ポイント
により算出した。
[実施例1]
幅方向の長さ50cm、厚さ方向の長さ67.6mmのノズル有効面にオリフィスの形状は、厚さ方向1列から7列目を外径3mm、内径2.6mmでトリプルブリッジの中空形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列とし、厚さ方向8列から14列目を外径1mmの中実形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向の孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列としたノズルを用い、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしてエチレン・α−オレフィンからなるマルチブロック共重合体であるINFUSE D9530.05(ダウ・ケミカルズ社製)を100重量%使用し、紡糸温度(溶融温度)240℃にて、中空孔の単孔吐出量1.8g/min、中実孔の単孔吐出量1.1g/minの速度でノズル下方に吐出させ、ノズル面30cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅50mm間隔で一対の引取りコンベアネットを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引取りコンベアネットで挟み込みつつ1.43m/minの引き取り速度で冷却水中へ引込み、固化させることで厚さ方向の両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して70℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、網状構造体を得た。
得られた網状構造体は、主に中実断面繊維からなる中実断面繊維主領域と、主に中空断面繊維からなる中空断面繊維主領域と、中実断面繊維主領域と中空断面繊維主領域との間に位置する中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域と、が存在し、これらの領域が分離することなく一体化した網状構造体であり、中空断面繊維は、断面形状が三角おむすび型の中空断面で中空率が30%、繊維径が1.13mmの中空線状体で形成されており、中実断面繊維は、繊維径0.52mmの中実線状体で形成されており、繊維径の差が0.61mm、中実断面繊維の総重量比率が37%、見かけ密度が0.043g/cm3、表面が平坦化された厚さが45mmであった。
中空断面繊維主領域側残留歪みが11.4%、中実断面繊維主領域側残留歪みが13.5%、中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側残留歪みとの差は2.1ポイントであった。中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度が11.0N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度が6.2N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度との比が1.77、中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度が22.2N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度が19.1N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度との比が1.16、中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数が4.63、中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数が7.59、中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数と中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数との差が2.96、中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスが42.6%、中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスが44.8%、中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスと中空断面繊維側から加圧した時のヒステリシスロスとの差が2.2ポイントであった。得られた網状構造体の特性を表1に示した。
表1に示すように、本実施例で得られた網状構造体は、中空断面繊維主領域側および中実断面繊維主領域側の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが20%以下およびそれらの差が10ポイント以下、中空断面繊維主領域側および中実断面繊維主領域側の圧縮たわみ係数の差が5以下、ならびに中空断面繊維主領域側および中実断面繊維主領域側のヒステリシスロスが60%以下およびそれらの差が5ポイント以下と小さいことから、両面で圧縮耐久性の差が小さかった。また、本実施例で得られた網状構造体は、中空断面繊維主領域側と中実断面繊維主領域側との25%圧縮時硬度の比が1.03以上、ならびに中空断面繊維主領域側と中実断面繊維主領域側との40%圧縮時硬度の比が1.05以上と大きいことから、両面で異なるクッション性能が付与された。すなわち、本実施例で得られた網状構造体は、本発明の要件を満たし、両面で圧縮耐久性の差が小さく、両面で異なるクッション性能が付与された優れた網状構造体であった。
[実施例2]
ノズル面38cm下に冷却水を配した以外、実施例1と同様にして得た網状構造体は、主に中実断面繊維からなる中実断面繊維主領域と、主に中空断面繊維からなる中空断面繊維主領域と、中実断面繊維主領域と中空断面繊維主領域との間に位置する中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域と、が存在し、これらの領域が分離することなく一体化した網状構造体であり、中空断面繊維は、断面形状が三角おむすび型の中空断面で中空率が28%、繊維径が1.00mmの中空線状体で形成されており、中実断面繊維は、繊維径0.47mmの中実線状体で形成されており、繊維径の差が0.53mm、中実断面繊維の総重量比率が37%、見かけ密度が0.045g/cm3、表面が平坦化された厚さが43mmであった。
中空断面繊維主領域側残留歪みが11.6%、中実断面繊維主領域側残留歪みが13.0%、中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側残留歪みとの差は1.4ポイントであった。中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度が15.3N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度が9.7N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度との比が1.58、中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度が28.5N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度が23.7N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度との比が1.20、中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数が4.29、中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数が6.30、中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数と中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数との差が2.01、中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスが42.5%、中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスが46.2%、中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスと中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスとの差が3.7ポイントであった。得られた網状構造体の特性を表1に示した。
表1に示すように、本実施例で得られた網状構造体は、中空断面繊維主領域側および中実断面繊維主領域側の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが20%以下およびそれらの差が10ポイント以下、中空断面繊維主領域側および中実断面繊維主領域側の圧縮たわみ係数の差が5以下、ならびに中空断面繊維主領域側および中実断面繊維主領域側のヒステリシスロスが60%以下およびそれらの差が5ポイント以下と小さいことから、両面で圧縮耐久性の差が小さかった。また、本実施例で得られた網状構造体は、中空断面繊維主領域側と中実断面繊維主領域側との25%圧縮時硬度の比が1.03以上、ならびに中空断面繊維主領域側と中実断面繊維主領域側との40%圧縮時硬度の比が1.05以上と大きいことから、両面で異なるクッション性能が付与された。すなわち、本実施例で得られた網状構造体は、本発明の要件を満たし、両面で圧縮耐久性の差が小さく、両面で異なるクッション性能が付与された優れた網状構造体であった。
[実施例3]
幅方向の長さ50cm、厚さ方向の長さ67.6mmのノズル有効面にオリフィスの形状は、厚さ方向1列から7列目を外径3mm、内径2.6mmでトリプルブリッジの中空形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列とし、厚さ方向8列から14列目を外形1mmの中実形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列としたノズルを用い、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしてエチレン・α−オレフィンからなるマルチブロック共重合体であるINFUSE D9530.05(ダウ・ケミカルズ社製)を100重量%使用し、紡糸温度(溶融温度)240℃にて、中空孔の単孔吐出量1.8g/min、中実孔の単孔吐出量1.1g/minの速度でノズル下方に吐出させ、ノズル面30cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅40mm間隔で一対の引取りコンベアネットを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引取りコンベアネットで挟み込みつつ1.84m/minの引き取り速度で冷却水中へ引込み、固化させることで厚さ方向の両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して70℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、網状構造体を得た。
得られた網状構造体は、主に中実断面繊維からなる中実断面繊維主領域と、主に中空断面繊維からなる中空断面繊維主領域と、中実断面繊維主領域と中空断面繊維主領域との間に位置する中実断面繊維と中空断面繊維とが混在してなる混在領域と、が存在し、これらの領域が分離することなく一体化した網状構造体であり、中空断面繊維は、断面形状が三角おむすび型の中空断面で中空率が29%、繊維径が1.14mmの中空線状体で形成されており、細い繊維は、繊維径0.57mmの中実線状体で形成されており、繊維径の差が0.57mm、中実断面繊維の総重量比率が37%、見かけ密度が0.052g/cm3、表面が平坦化された厚さが32mmであった。
中空断面繊維主領域側残留歪みが12.2%、中実断面繊維主領域側残留歪みが13.9%、中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側残留歪みとの差は1.7ポイントであった。中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度が7.7N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度が6.5N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度との比が1.18、中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度が19.3N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度が16.8N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度との比が1.15、中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数が9.44、中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数が9.61、中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数と中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数との差が0.17ポイント、中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスが43.4%、中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスが47.2%、中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスと中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスとの差が3.8ポイントであった。得られた網状構造体の特性を表1に示した。
表1に示すように、本実施例で得られた網状構造体は、中空断面繊維主領域側および中実断面繊維主領域側の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みが20%以下およびそれらの差が10ポイント以下、中空断面繊維主領域側および中実断面繊維主領域側の圧縮たわみ係数の差が5以下、ならびに中空断面繊維主領域側および中実断面繊維主領域側のヒステリシスロスが60%以下およびそれらの差が5ポイント以下と小さいことから、両面で圧縮耐久性の差が小さかった。また、本実施例で得られた網状構造体は、中空断面繊維主領域側と中実断面繊維主領域側との25%圧縮時硬度の比が1.03以上、ならびに中空断面繊維主領域側と中実断面繊維主領域側との40%圧縮時硬度の比が1.05以上と大きいことから、両面で異なるクッション性能が付与された。すなわち、本実施例で得られた網状構造体は、本発明の要件を満たし、両面で圧縮耐久性の差が小さく、両面で異なるクッション性能が付与された優れた網状構造体であった。
[比較例1]
幅方向の長さ50cm、厚さ方向の長さ31.2mmのノズル有効面にオリフィスの形状は、厚さ方向7列を外径3mm、内径2.6mmでトリプルブリッジの中空形成性断面としたオリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列としたノズルを用い、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしてエチレン・α−オレフィンからなるマルチブロック共重合体であるINFUSE D9530.05(ダウ・ケミカルズ社製)を100重量%使用し、紡糸温度(溶融温度)240℃にて、単孔吐出量1.8g/minの速度でノズル下方に吐出させ、ノズル面38cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅30mm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引取りコンベアで挟み込みつつ1.43m/minの引き取り速度で冷却水中へ引込み、固化させることで厚さ方向の両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して70℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、断面形状が三角おむすび型を有する主に中空断面繊維からなる網状構造体を得た。得られた網状構造体は、見かけ密度が0.048g/cm3、表面が平坦化された厚さが25mmであり、中空断面繊維は中空率が30%、繊維径が1.00mmであった。
また、幅方向50cm、厚さ方向の幅31.2mmのノズル有効面にオリフィスの形状は、厚さ方向7列を外形1mmの中実形成オリフィスを幅方向孔間ピッチ6mm、厚さ方向孔間ピッチ5.2mmの千鳥配列としたノズルを用い、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしてエチレン・α−オレフィンからなるマルチブロック共重合体であるINFUSE D9530.05(ダウ・ケミカルズ社製)を100重量%使用し、紡糸温度(溶融温度)240℃にて、単孔吐出量1.1g/minの速度でノズル下方に吐出させ、ノズル面38cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅25mm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引取りコンベアで挟み込みつつ1.43m/minの引き取り速度で冷却水中へ引込み、固化させることで厚さ方向の両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して70℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、主に中実断面繊維からなる網状構造体を得た。得られた網状構造体は、見かけ密度が0.037g/cm3、表面が平坦化された厚さが20mmであり、中実断面繊維は、繊維径0.45mmであった。
得られた主に中実断面繊維からなる網状構造体と、主に中空断面繊維からなる網状構造体とを重ね合わせ網状構造体を作成した。重ね合わせた網状構造体全体の見かけ密度が0.043g/cm3、厚さが45mmであった。なお中空断面繊維の繊維径と中実断面繊維の繊維径の差は0.55mmであった。
この重ね合わせ網状構造体の中空断面繊維主領域側残留歪みが11.2%、中実断面繊維主領域側残留歪みが28.5%、中実断面繊維主領域側残留歪みと中空断面繊維主領域側残留歪みとの差は17.3ポイントであった。中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度が8.8N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度が4.4N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の25%圧縮時硬度との比が2.00、中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度が20.8N/φ100mm、中実断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度が13.4N/φ100mm、中実断面繊維側から主領域加圧した時の40%圧縮時硬度と中空断面繊維主領域側から加圧した時の40%圧縮時硬度との比が1.55、中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数が7.87、中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数が11.8、中実断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数と中空断面繊維主領域側から加圧した時の圧縮たわみ係数との差が3.93ポイント、中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスが47.4%、中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスが48.1%、中実断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスと中空断面繊維主領域側から加圧した時のヒステリシスロスとの差が0.7ポイントであった。得られた網状構造体の特性を表1に示した。
表1に示すように、本比較例で得られた網状構造体は、中空断面繊維主領域側および中実断面繊維主領域側の750N定荷重繰り返し圧縮後の残留歪みのうち中実断面繊維主領域側が20%より大きく、およびそれらの差が10ポイントより大きいことから、両面で圧縮耐久性の差が大きかった。すなわち、本比較例で得られた網状構造体は、本発明の要件を満たさず、両面で圧縮耐久性の差が大きい網状構造体であった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。