以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係るマスク検証方法、半導体装置の製造方法およびマスク検証プログラムを詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係るマスクパターン検証方法の全体処理を説明するための図である。本実施の形態のマスクパターン検証方法は、マスク(フォトマスク)に形成されたマスクパターンの仕上がり寸法を検証する方法であり、マスクパターンの仕上がり誤差と、SEMなどによるマスクパターンの実測定寸法(以下、マスク実寸法という)と、マスクパターンのパターンデータ(ターゲット寸法)と、に基づいて、マスクパターンの寸法検証が行なわれる。マスクパターンの仕上がり誤差は、マスクパターンの周辺環境がマスクの仕上がり寸法に与える影響を考慮したモデル関数を用いて算出される。
マスク実寸法とマスク描画用データ(マスクパターンデータ)D3上での寸法との間の差分は、マスクパターンの周辺環境に応じて所定の誤差量を有しているものである。したがって、本実施の形態では、マスク実寸法とマスク描画用データD3上での寸法との間の差分(ばらつき量)を、マスクパターンのパターン周辺環境(以下、マスク周辺環境という)を考慮したモデル関数によって算出しておく。このため、本実施の形態のモデル関数は、マスク周辺環境としてライン&スペースパターンのスペースパターン幅やラインパターン幅などを変動させた場合の、マスク実寸法とマスク描画用データD3上での寸法との間の差分(後述のΔ)を算出するための関数式である。モデル関数へは、マスク周辺環境に関する情報(スペースパターン幅やラインパターン幅)が入力され、その結果としてΔが導出される。
マスクパターンの仕上がり寸法を検証する際には、実際に測定したマスク実寸法とマスク描画用データD3上での寸法との間の差分と、この差分のばらつき量であるΔと、を合計した値(理想値からのばらつき量)が、許容範囲内であるか否かが判定される。具体的には、Δにマスク描画用データD3上での寸法を加算し、加算した値から実際に測定したマスク実寸法を引いた値が算出される。これによって算出された値が許容範囲内であれば、マスクパターンは合格判定され、算出された値が許容範囲外であれば、マスクパターンは不合格判定される。
まず、ウエハなどの基板に形成するウエハ上パターン(エッチング後パターン)の設計データD1を作成する。そして、設計データD1に基づいて、ウエハ上に形成するレジストパターンデータ(リソグラフィターゲット)D2を作成する。さらに、レジストパターンデータD2に基づいて、マスク描画用データD3を作成する。マスク描画用データD3は、マスク上に形成するマスクパターンのデータである。
この後、マスク描画用データD3を用いたマスクプロセスS1によってマスクが作製される。具体的には、マスク描画用データD3に対応するマスクパターンP1がマスク上に形成される。
作製されたマスクを用いてウエハへのリソグラフィプロセス(露光や現像などのウエハリソグラフィプロセスS2)が行われ、ウエハ上にレジストパターンP2が形成される。具体的には、ウエハ上にレジストが塗布され、マスクを介してレジストに露光光が照射される。これにより、ウエハ上にマスクパターンP1が転写され、その結果、レジストパターンP2が形成される。
レジストパターンP2が形成された後、ウエハへのエッチングプロセス(ウエハエッチングプロセスS3)が行なわれ、ウエハ上パターンとしてSi(シリコン)パターンP3などがウエハ上に形成される。具体的には、レジストパターンP2をマスクとしてウエハの下層膜がウエハエッチングされ、これにより、SiパターンP3がウエハ上に形成される。
マスクプロセスS1によってマスクを作製する際には、マスク作製起因のパターン寸法ずれが生じる。これは、マスク作製の際の描画工程などが原因で生じるマスク描画用データD3とマスクパターンP1の寸法ずれである。また、ウエハリソグラフィプロセスS2によってウエハ上にパターン形成を行う際には、リソグラフィ起因のパターン寸法ずれが生じる。これは、リソグラフィの際の露光工程や現像工程などが原因で生じる寸法ずれであり、レジストパターンデータD2とレジストパターンP2の寸法ずれである。
このため、リソグラフィ起因のパターン寸法ずれとマスク作製起因のパターン寸法ずれを補正する補正ルールモデルM1(図示せず)を作成しておく。そして、リソグラフィ起因のパターン寸法ずれやマスク作製起因のパターン寸法ずれが、所定の許容範囲内に入っていなければ、補正ルールモデルM1を用いてマスク描画用データD3を補正する。具体的には、補正ルールモデルM1に、リソグラフィ起因のパターン寸法ずれ量とマスク作製起因のパターン寸法ずれ量に応じた補正ルールモデルパラメータC1を設定する。そして、レジストパターンデータD2に、補正ルールパラメータC1が設定された補正ルールモデルM1を適用して、補正S4(ウエハリソグラフィプロセス補正とマスク補正)を行ない、これによりマスク描画用データD3を作成(修正)する。
また、ウエハエッチングプロセスS3によってSiパターンP3を形成する際には、ウエハエッチングなどの加工起因のパターン寸法ずれが生じる。これは、SiパターンP3を形成する際のエッチング工程などが原因で生じる設計データD1とSiパターンP3の寸法ずれである。
このため、加工起因のパターン寸法ずれを補正する補正ルールモデルM2(図示せず)を作成しておく。加工起因のパターン寸法ずれが、所定の許容範囲内に入っていなければ、補正ルールモデルM2を用いてレジストパターンデータD2を補正する。具体的には、補正ルールモデルM2に、加工起因のパターン寸法ずれ量に応じた補正ルールパラメータC2を設定する。そして、設計データD1に、補正ルールパラメータC2が設定された補正ルールモデルM2を適用して、ウエハエッチング補正S5を行ない、これによりレジストパターンデータD2を作成(修正)する。レジストパターンデータD2が補正された場合には、補正後のレジストパターンデータD2を用いて、マスク描画用データD3が修正される。
マスク描画用データD3を修正した後、マスク描画用データD3にモデル関数を適用してマスクプロセスシミュレーションS6が行なわれる。また、マスク描画用データD3を用いてマスクを作製した場合の実際のマスクパターンP1のマスク実寸法を測定しておく。そして、マスクパターンP1のマスク実寸法と、マスク描画用データD3との間の寸法差分(実測定に基づく差分)が算出される。この後、実測定に基づく差分に、マスクプロセスシミュレーションS6によって算出したマスクパターン計算結果R1が加算され、加算結果に基づいて、マスクパターンの仕上がり寸法検証(マスクの合否判定)(マスクパターン検証S7)が実行される。
マスク周辺環境は、例えばライン&スペースパターンのスペースパターン幅、ラインパターン幅、ピッチ、パターン被覆率(所定領域内におけるラインパターンの面積占有率)などである。前記モデル関数は、種々のマスク周辺環境での差分(シミュレーション寸法とマスク実寸法との差分)を用いて設定しておく。種々のマスク周辺環境でのマスク実寸法は、例えば、実際にテスト用マスクをSEM(Scanning Electron Microscope)などによって測定したパターン寸法である。また、種々のマスク周辺環境でのシミュレーション寸法は、テスト用マスクに所定のマスクプロセスシミュレーションを適用することによって算出されるパターン寸法の値である。同一のマスク周辺環境でのマスク実寸法とシミュレーション寸法とを対応付けておき、対応付けされたマスク実寸法とシミュレーション寸法との差分に基づいてモデル関数が設定される。
マスクパターンの寸法を検証する際には、モデル関数を用いてΔが算出され、このΔにマスク保証用パターンの寸法を加算することによってマスクパターン評価値が算出される。マスクパターン評価値は、実際に測定したマスク実寸法と比較される値であり、種々のマスク周辺環境を考慮した場合の寸法誤差量を加味した計算上のマスク仕上がり寸法である。
マスクパターン評価値が算出された後、モデル関数を用いて算出したマスクパターン評価値と、実際に測定したマスク実寸法との差分が、所定の許容範囲内であるか否かが判定される。例えば、マスクパターン評価値とマスク実寸法との差分のばらつき(例えば3σ)および平均値が所定の範囲内であるか否かに基づいてマスクパターンの検証が行なわれる。算出した差分が、所定の許容範囲内であれば、マスクパターンの寸法は合格となる。そして、マスクパターンが形成されたマスクを用いてウエハプロセス(ウエハリソグラフィプロセスS2やウエハエッチングプロセスS3)が行なわれる。これにより、ウエハ上に半導体装置が形成される。
一方、算出した差分が、所定の許容範囲内でなければ、マスクパターンの寸法は不合格となる。この場合、マスクパターン評価値とマスク実寸法との差分が所定の許容範囲内となるようマスク描画用データD3が補正される。そして、マスクパターン評価値とマスク実寸法との差分が所定の許容範囲内となったマスクを用いてウエハプロセスが行なわれ、これにより、ウエハ上に半導体装置が形成される。
なお、マスク描画用データD3を補正しても、マスクパターンが合格とならない場合は、設計データD1、レジストパターンデータD2を修正してもよいし、マスクプロセスS1、ウエハリソグラフィプロセスS2、ウエハエッチングプロセスS3などを変更してもよい。設計データD1を修正する場合には、設計データD1の修正に応じてレジストパターンデータD2が修正され、さらにレジストパターンデータD2の修正に応じてマスク描画用データD3が修正される。また、レジストパターンデータD2を修正する場合には、レジストパターンデータD2の修正に応じてマスク描画用データD3が修正される。
このように、マスクパターン評価値とマスク実寸法との差分が所定の許容範囲内であるか否かを判定し、合格判定となったマスクをウエハプロセスに用いることによって、マスク上に形成されたマスクパターンの寸法保証が行なわれる。
従来、マスクパターンの仕上がり寸法を保証するためには、限定されたパターン(孤立パターン、1種類のライン&スペースパターンなど)の測定結果を用いていた。一方、本実施の形態では、マスク周辺環境を考慮したモデル関数を用いて、マスク描画用データD3からマスクパターンの仕上がり寸法に対応するマスクパターン評価値を予測している。これにより、マスクパターン形状で限定されることなく、種々のマスクパターン形状に対して寸法保証することが可能となる。
つぎに、マスクパターンの寸法検証を行なうマスクパターン検証装置の構成について説明する。図2は、マスクパターン検証装置の構成を示すブロック図である。マスクパターン検証装置1は、入力部11、マスク描画用データ記憶部12、モデル関数記憶部13、実寸法記憶部14、検証パターン抽出部15、マスクパターン評価値算出部16、差分算出部17、判定部18、出力部19を有している。
入力部11は、マスク描画用データD3、モデル関数、実際に測定されたマスク実寸法などをマスクパターン検証装置1内に入力する。モデル関数は、マスク実寸法とマスクパターンのシミュレーション寸法(シミュレーション値)との間の差分の計算上での予測値をマスクプロセスシミュレーションによって算出する関数式である。また、入力部11に入力されるマスク実寸法は、例えば、実際にSEMなどによって測定されたマスク保証用パターンの寸法である。入力部11は、マスク描画用データD3をマスク描画用データ記憶部12に送り、モデル関数をモデル関数記憶部13に送り、マスク実寸法を実寸法記憶部14に送る。
マスク描画用データ記憶部12は、マスク描画用データD3を記憶するメモリなどであり、モデル関数記憶部13は、モデル関数を記憶するメモリなどであり、実寸法記憶部14は、マスク実寸法を記憶するメモリなどである。
検証パターン抽出部15は、マスク描画用データ記憶部12内のマスク描画用データD3から、マスク保証(マスクパターンの検証)に用いるモニターパターンとして、マスク保証用パターンを抽出する。マスク保証用パターンは、マスクパターンの仕上がり寸法保証用のマスクパターンであり、仕上がり寸法の検証対象パターン(検証対象マスクパターン)である。検証パターン抽出部15は、抽出したマスク保証用パターンをマスクパターン評価値算出部16に送る。
マスクパターン評価値算出部16は、マスク保証用パターンにモデル関数記憶部13内のモデル関数を適用して、マスク保証用パターンのマスクパターン評価値(マスク上での仕上がり寸法の計算上での予測値)(シミュレーション寸法)を算出する。
具体的には、マスクパターン評価値算出部16は、モデル関数にマスク保証用パターンの寸法(ラインパターンの寸法やスペースパターンの寸法)などを入力することによって、モデル関数を用いて計算上の差分(マスク実寸法とマスクパターンのシミュレーション寸法との間の差分の誤差予測値である第1の差分)を算出する。マスクパターン評価値算出部16に入力されるマスク保証用パターンの寸法は、モデル関数の設定に用いた周辺環境とは異なる周辺環境であってもよい。モデル関数の設定には、種々の周辺環境が用いられるが、マスクパターン評価値算出部16に入力されるマスク保証用パターンの寸法は、少なくとも1つの周辺環境(任意のパターン寸法)でよい。マスクパターン評価値算出部16は、モデル関数を用いた計算上の差分に、マスク保証用パターンのパターンデータ上の寸法を加算することによって、マスクパターン評価値を算出する。マスクパターン評価値算出部16は、算出したマスクパターン評価値を差分算出部17に送る。
差分算出部17は、実寸法記憶部14内のマスク実寸法と、マスクパターン評価値算出部16が算出したマスクパターン評価値との差分(第2の差分)を算出する。差分算出部17が算出した差分が、マスクパターン評価値と、実際にマスクに形成されているマスクパターンとの差分(ずれ量)である。差分算出部17は、算出した差分を判定部18に送る。
判定部18は、差分算出部17が算出した、マスク実寸法とマスクパターン評価値との差分が、許容範囲内であるか否かを判定する。判定部18は、差分が許容範囲内である場合に、マスク上のマスクパターンが合格であると判断し、差分が許容範囲内でない場合に、マスク上のマスクパターンが不合格であると判断する。出力部19は、判定部18による判定結果を外部装置などに出力する。
つぎに、マスクパターンの寸法検証処理手順について説明する。図3は、マスクパターンの寸法検証処理手順を説明するための図である。所望のウエハ上パターンに対応する設計データD1を、設計データの作成装置などによって作成する(ステップS10)。設計データの作成装置は、設計データを作成するコンピュータなどの装置である。
この後、設計データD1に基づいて、ウエハ上に形成するレジストパターンデータD2をレジストパターンデータの作成装置などによって作成する(ステップS20)。レジストパターンデータの作成装置は、設計データD1に応じたレジストパターンデータD2を作成するコンピュータなどの装置である。
さらに、レジストパターンデータD2に基づいて、マスク描画用データ(マスクパターンデータ)D3をマスク描画用データの作成装置などによって作成する(ステップS30)。マスク描画用データの作成装置は、レジストパターンデータD2に応じたマスク描画用データD3を作成するコンピュータなどの装置である。
入力部11は、マスク描画用データD3を入力してマスク描画用データ記憶部12に送る。マスク描画用データ記憶部12は、マスク描画用データD3を記憶しておく。検証パターン抽出部15は、マスク描画用データ記憶部12内のマスク描画用データD3からマスク保証用パターンを抽出する(ステップS40)。検証パターン抽出部15は、抽出したマスク保証用パターンをマスクパターン評価値算出部16に送る。
また、マスク保証用パターンとは別に、テスト用マスクを用いてモデル関数の導出を行なっておく。テスト用マスクは、種々のスペースパターン幅、種々のラインパターン幅、種々のピッチ、種々のパターン被覆率などを有した種々のマスクパターン(モデル関数設定用マスクパターン)が形成されたモデル関数設定用のマスクである。換言すると、テスト用マスクは、種々のマスク周辺環境内で形成されているマスクパターンを有したマスクである。
モデル関数の作成者は、テスト用マスクのマスクパターン内から複数の着目パターンを抽出しておく。そして、各着目パターンの寸法をSEMなどによって測定する。着目パターンの寸法と、周辺環境との対応関係(着目パターンの周辺環境依存性)を導出する(ステップS50)。
図4は、着目パターンと周辺環境との対応関係を説明するための図である。テスト用マスクの種々の着目パターンに対し、着目パターンを実際に測定した場合の寸法(マスク実寸法)とマスク描画用データD3上での寸法との寸法差mdを求めておく。また、寸法差mdを求めた着目パターンに対し、着目パターンにマスクシミュレーションを行った場合に得られるシミュレーション寸法とマスク描画用データD3上での寸法との寸法差sdを求めておく。ここでの着目パターンは、マスクパターン幅を一定値としスペースパターン幅を種々変更させることによって作製されている。
図4では、横軸をマスクパターンのスペースパターン幅(マスクスペース)とし、縦軸をマスク描画用データD3との寸法差としている。横軸に示すスペースパターン幅は、マスクパターンのパターン残し部(遮光部)の寸法である。また、縦軸に示すマスク描画用データD3との寸法差は、マスクデータ上のスペースパターン幅とマスク実寸法との寸法差md、マスクデータ上のスペースパターン幅とシミュレーション寸法との寸法差sdである。なお、図4に示す寸法は、テスト用マスク上での寸法であり、テスト用マスクを用いてウエハ上にパターン形成した場合には、テスト用マスク上での寸法の4倍の寸法となる。
図4に示すように、マスクスペースの寸法が1000nmを下回るような場合には、マスク描画用データD3との差分が最大で0.8nm程度大きくなる。一方、マスクスペースの寸法が6000nmと大きい場合は、マスク描画用データD3との差分が小さいことが分かる。したがって、マスク保証用パターンの周辺環境(残し部)の寸法に応じて、最大0.8nmの誤差を加えることで、マスクパターンの真の狙い目寸法を求めることが可能となる。
本実施の形態では、マスク周辺環境を変動させた場合の、マスクパターンのシミュレーション寸法と、マスク実寸法との差分を測定しておき、この差分を表現するためのシミュレーションモデル(関数)を求めておく。換言すると、図4に示すような、周辺環境毎(スペースパターン幅毎)の寸法差mdと寸法差sdとの対応関係に基づいて、マスクパターンの判定に用いるモデル関数(マスクパターン評価値の算出に用いるモデル関数)が求められる。このように、モデル関数は、複数種類のマスク周辺環境下における、テスト用マスクに形成されたマスクパターンの実寸法とテスト用マスクのシミュレーション寸法との各対応関係に基づいて作成された関数式である(ステップS60)。入力部11は、モデル関数を入力してモデル関数記憶部13に送る。モデル関数記憶部13は、モデル関数を記憶しておく。
なお、図4では、周辺環境としてスペースパターン幅を種々変更させた場合について説明したが、スペースパターン幅を種々変更させる場合に限らず、ラインパターン幅、ピッチ、パターン被覆率などを種々変化させた周辺環境を用いてもよい。また、スペースパターン幅、ラインパターン幅、ピッチ、パターン被覆率などを組み合わせて種々変化させた周辺環境を用いてもよい。
モデル関数としては、例えば以下の式(1)に示す関数を用いる。式(1)のΔは、マスク保証用パターンにおける、マスク実寸法とマスクのシミュレーション寸法との差分(最大ばらつき量)の予測値(計算値)である。ここでのマスク実寸法は、マスク保証用パターンを実際に測定した場合の実測予測値であり、シミュレーション寸法は、マスク保証用パターンにマスクシミュレーションを適用した場合のシミュレーション値である。したがって、モデル関数によって、マスク描画用データD3上のパターン寸法(理想値)とマスク実寸法との差分の予測値が算出される。また、Lineは、ラインパターン幅であり、Spaceはスペースパターン幅である。
テスト用マスクを用いて導出された寸法差mdと寸法差sdとの周辺環境毎の対応関係(差分)を用いて、式(1)のc0、a1、a2、a3、a4、A、b1、b2、b3、b4などの係数が導出される。具体的には、寸法差mdと寸法差sdとの差分が小さくなるよう、式(1)のc0、a1、a2、a3、a4、A、b1、b2、b3、b4などの係数が設定される。こうして係数が設定されたモデル関数を用いてマスクパターンの寸法検証が行なわれる。
具体的には、マスク保証用パターンにモデル関数を適用してマスク保証用パターンのマスクパターン評価値を算出する(ステップS70)。このとき、マスクパターン評価値算出部16は、モデル関数記憶部13内のモデル関数を用いて、モデル関数を用いた計算上の差分(マスクパターンのシミュレーション寸法とマスク実寸法との差分)の予測値を算出する。
さらに、マスクパターン評価値算出部16は、モデル関数を用いた計算上の差分に、マスク保証用パターンの寸法(パターンデータ上の寸法)を加算することによって、マスクパターン評価値を算出する。マスクパターン評価値算出部16は、算出したマスクパターン評価値を差分算出部17に送る。
マスク保証用パターンの実寸法であるマスク実寸法は、予めSEMなどによって測定しておく(ステップS80)。入力部11は、マスク実寸法を入力して実寸法記憶部14に送る。実寸法記憶部14は、マスク実寸法を記憶しておく。
差分算出部17は、実寸法記憶部14内のマスク実寸法と、マスクパターン評価値算出部16が算出したマスクパターン評価値との差分を算出する(ステップS90)。差分算出部17は、算出した差分を判定部18に送る。マスクパターン検証装置1は、マスク保証用パターン(測定ポイント)の数だけステップS40〜S90の処理を繰り返す。
ここで、ステップS70〜S90で算出される寸法の一例について説明する。例えば、マスク保証用パターンのシミュレーション寸法をA’と仮定し、マスク保証用パターンのマスク実寸法をB’と仮定する。また、マスク保証用パターンのパターンデータ上の寸法がCであったとする。さらに、SEMなどによって測定されたマスク保証用パターンのマスク実寸法がBであったとする。
この場合、マスクパターン評価値算出部16は、モデル関数を用いることによって、マスク保証用パターンのシミュレーション寸法とマスク保証用パターンのマスク実寸法との差分として、Δ=(A’−B’)を算出する。なお、モデル関数は、Δを算出する式であるので、具体的なA’の値やB’の値は算出されない。
また、マスクパターン評価値算出部16は、モデル関数を用いて算出したΔに、マスク保証用パターンのパターンデータ上の寸法であるCを加算することによって、計算上のマスクパターン評価値((A’−B’)+C)を算出する。さらに、差分算出部17は、算出した計算上のマスクパターン評価値((A’−B’)+C)と、実際に測定したマスク実寸法(B)との差分を算出する。具体的には、マスク実寸法と、マスクパターン評価値との差分として、(A’−B’+C−B)が算出される。実際には(A’−B’)は算出されることなく、Δが算出されるので、マスク実寸法と、マスクパターン評価値との差分としては、(Δ+C−B)が算出されることとなる。
ここでの(C−B)は、マスク保証用パターンのパターンデータ上の寸法Cと、マスク実寸法Bとの差分である。したがって、ステップS90で算出したマスク実寸法とマスクパターン評価値との差分は、マスク保証用パターンのパターンデータ上の寸法Cと、マスク実寸法Bとの間の差分(C−B)と、周辺環境を考慮した場合のずれ量(Δ)と、を足した値となっている。
このため、Δをマスクパターン評価値算出部16が算出し、差分(C−B)をマスクパターン評価値算出部16または差分算出部17が算出してもよい。この場合、差分算出部17によって、差分(C−B)と、Δと、が加算され、加算された値が、マスク実寸法とマスクパターン評価値との差分となる。
判定部18は、差分算出部17が算出した値(マスク実寸法とマスクパターン評価値との差分)が、許容範囲内であるか否かを判定する。具体的には、判定部18は、差分算出部17が算出した各マスク保証用パターンでの差分に対して、差分のばらつき(例えば3σ)や平均値を算出し、この差分やばらつきが許容範囲内であるか否かを判定する。これにより、判定部18は、マスクパターンが合格であるか否かを判定する(ステップS100)。判定部18は、差分が許容範囲内である場合に、マスク保証用パターンのマスクパターンが合格であると判断し、差分が許容範囲内でない場合に、マスク保証用パターンのマスクパターンが不合格であると判断する。出力部19は、判定部18による判定結果を外部装置などに出力する。
マスクパターンが不合格である場合(ステップS100、No)、マスクパターンが合格となるよう、マスク描画用データD3が補正される(ステップS110)。そして、ステップS40〜S100の処理が行われる。
マスクパターンが合格である場合(ステップS100、Yes)、マスク保証用パターンの形成されているマスクを用いてウエハリソグラフィプロセスS2やウエハエッチングプロセスS3などが行われる。
なお、ステップS50の処理、ステップS60の処理、入力部11へのモデル関数の入力処理は、ステップS70の処理の前であればよい。また、ステップS80の処理や入力部11へのマスク実寸法の入力処理は、ステップS90の前であればよい。
つぎに、マスク保証用パターンの配置位置について説明する。マスク保証用パターンは、例えばマスクパターン内のうち本体回路の形成されていないモニタ部などに配置される。モニタ部は、本体回路部でなく本体回路部間や周辺にあるエリアであり、例えばスクライブラインなどである。
図5は、マスク保証用パターンがモニタ部内に配置された場合のマスクパターンを示す図である。図5では、マスクパターンを上面から見た場合の図を示している。マスクパターン20は、1ショット分のマスクパターンであり、1〜複数の製品チップパターンが配置されている。図5では、マスクパターン20内に8つの製品チップパターン21a〜21hが配置されている場合を示している。
各製品チップパターン21a〜21h内には、概略矩形状の本体回路部Xが配置されており、本体回路部Xの周辺部がリング状のモニタ部Wとなっている。また、各製品チップパターン21a〜21h内には、モニタ部W内の配置位置Y1〜Y4に、マスク保証用パターンが配置されている。図5では、モニタ部Wのうち本体回路部Xの各頂点近傍(本体回路部Xの外側)が、マスク保証用パターンの配置位置Y1〜Y4である場合を示している。
また、マスク保証用パターンは、本体回路部X内にのみ配置してもよい。さらに、マスク保証用パターンは、モニタ部W内と本体回路部X内の両方に配置してもよい。図6は、マスク保証用パターンがモニタ部内と本体回路部内の両方に配置された場合のマスクパターンを示す図である。図6では、マスクパターンを上面から見た場合の図を示している。マスクパターン20内の各製品チップパターン21a〜21h内には、モニタ部W内の配置位置Y1〜Y4にマスク保証用パターンが配置されるとともに、本体回路部X内の配置位置Z1〜Z4にマスク保証用パターンが配置されている。
各製品チップパターン21a〜21h内には、モニタ部W内の配置位置Y1〜Y4と配置位置Z1〜Z4に、マスク保証用パターンが配置されている。図6では、モニタ部Wのうち本体回路部Xの外側がマスク保証用パターンの配置位置Y1〜Y4であり、モニタ部Wのうち本体回路部Xの内側がマスク保証用パターンの配置位置Z1〜Z4である場合を示している。本体回路部X内の配置位置Z1〜Z4に配置されるマスク保証用パターンは、実際の製品パターンであってもよいし、マスク保証用のダミーパターンであってもよい。
モニタ部W内および本体回路部X内にマスク保証用パターンを配置しておくことにより、モニタ部W内および本体回路部X内でのマスクパターン寸法を把握することが可能となる。これにより、マスク保証用パターンを用いてマスク仕上がり寸法を正確に検証することが可能となる。
また、従来、マスク保証用パターンとしては、マスクを構成する回路の最小デザインの同一パターンが用いられてきていた。一方、本実施の形態では、複数個所に複数種類のマスク保証用パターンを配置している。また、マスク周辺環境がマスクパターン評価値(マスク仕上がり寸法)に与える影響を考慮したモデル関数を用いて、マスクパターンの寸法検証を行なっている。このため、種々の周辺環境に対してマスクパターンの寸法検証を行なうことが可能となる。
つぎに、従来方法によるマスクパターンの寸法検証結果と、マスクパターン検証装置1によるマスクパターンの寸法検証結果と、の違いについて説明する。従来方法によるマスクパターンの寸法検証は、マスク描画用データとマスク実寸法との差分を用いたマスクパターンの寸法検証である。一方、マスクパターン検証装置1によるマスクパターンの寸法検証は、マスク実寸法とモデル関数を用いて算出したマスクパターン評価値との差分を用いたマスクパターンの寸法検証である。
図7は、マスクパターンの寸法検証結果の一例を示す図である。図7では、最小回路寸法60nmのパターンに対し、従来の寸法検証方法で算出した寸法検証結果と、実施の形態に係る寸法検証方法(モデル関数を用いた寸法検証)で算出した寸法検証結果と、を示している。
図7の(a)は、モニタ部Wおよび本体回路部Xにおける、マスク実寸法とマスク描画用データとの差分のばらつき(3σ)と、マスク実寸法とモデル関数を用いて算出したマスクパターン評価値との差分のばらつき(3σ)と、を示している。
また、図7の(b)は、モニタ部Wおよび本体回路部Xにおける、マスク実寸法とマスク描画用データとの差分の平均値と、マスク実寸法とモデル関数を用いて算出したマスクパターン評価値との差分の平均値と、を示している。
例えば、図7の(b)に示すように、マスク描画用データとマスク実寸法との差分の平均値は、モニタ部Wと本体回路部Xとで、2.6nmの差があり、問題があるように見える。一方、本実施の形態のモデル関数を用いて算出したマスクパターン評価値と、マスク実寸法との差分の平均値は、モニタ部Wと本体回路部Xとで、0.4nm程度しか差がなく問題がないことが分かる。
このように、本実施の形態のモデル関数を用いてマスクパターンの寸法検証を行なうことにより、種々のマスク周辺環境で形成されている任意パターンに対して寸法保証を行なうことが可能となる。
マスクパターン検証装置1によるマスクパターンの寸法保証(寸法検証)は、例えばウエハプロセスのレイヤ毎に行われる。そして、必要に応じてマスク描画用データD3が補正され、マスク描画用データD3に対応するマスクパターンが形成されたマスクを用いて半導体デバイス(半導体集積回路などの半導体装置)が製造される。具体的には、レジストの塗布されたウエハに合格判定されたマスクを用いて露光を行ない、その後ウエハを現像してウエハ上にレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンをマスクとしてレジストパターンの下層側をエッチングする。これにより、実パターンをウエハ上に形成する。半導体デバイスを製造する際には、上述したマスクパターンの寸法検証(マスク判定)、マスク描画用データD3の補正、露光処理、現像処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
つぎに、マスクパターン検証装置1のハードウェア構成について説明する。図8は、マスクパターン検証装置のハードウェア構成を示す図である。マスクパターン検証装置1は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、表示部94、入力部95を有している。マスクパターン検証装置1では、これらのCPU91、ROM92、RAM93、表示部94、入力部95がバスラインを介して接続されている。
CPU91は、コンピュータプログラムであるマスク検証プログラム97を用いてマスクパターンの寸法検証を行う。表示部94は、液晶モニタなどの表示装置であり、CPU91からの指示に基づいて、マスク描画用データD3、マスク保証用パターン、マスクパターン評価値、マスク実寸法、モデル関数、マスクの判定結果などを表示する。入力部95は、マウスやキーボードを備えて構成され、使用者から外部入力される指示情報(マスクパターンの寸法検証に必要なパラメータ等)を入力する。入力部95へ入力された指示情報は、CPU91へ送られる。
マスク検証プログラム97は、ROM92内に格納されており、バスラインを介してRAM93へロードされる。図8では、マスク検証プログラム97がRAM93へロードされた状態を示している。
CPU91はRAM93内にロードされたマスク検証プログラム97を実行する。具体的には、マスクパターン検証装置1では、使用者による入力部95からの指示入力に従って、CPU91がROM92内からマスク検証プログラム97を読み出してRAM93内のプログラム格納領域に展開して各種処理を実行する。CPU91は、この各種処理に際して生じる各種データをRAM93内に形成されるデータ格納領域に一時的に記憶させておく。
マスクパターン検証装置1で実行されるマスク検証プログラム97は、検証パターン抽出部15、マスクパターン評価値算出部16、差分算出部17、判定部18を含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
なお、モデル関数は、マスク描画用データD3(マスク保証用パターン)を作成する際に適用したプロセス補正で考慮したマスク周辺環境と同じマスク周辺環境を考慮した関数式としてもよい。ここでのプロセス補正は、例えば、マスク作製起因で生じるマスク描画用データD3とマスクパターンP1の寸法ずれ、リソグラフィ起因で生じるレジストパターンデータD2とレジストパターンP2の寸法ずれ、ウエハ加工起因で生じる設計データD1とSiパターンP3の寸法ずれなどを補正する処理である。プロセス補正の際には、マスク周辺環境として、スペースパターン幅、ラインパターン幅、ピッチ、パターン被覆率などが考慮される。したがって、プロセス補正で考慮したマスク周辺環境のうち、少なくとも1つのマスク周辺環境を考慮してモデル関数を作成しておく。
これにより、モデル関数によって算出されるマスクパターンのシミュレーション寸法とマスク実寸法との差分が正確な値となる。したがって、実際に測定されたマスク実寸法と、マスクパターン評価値との差分が正確な値となる。これにより、マスクパターンの寸法検証を正確に行なうことが可能となる。
また、本実施の形態では、マスク描画用データD3がライン&スペースである場合のマスクパターン保証について説明したが、マスクパターン検証装置は、マスク描画用データD3がコンタクトパターンである場合にマスクパターンの寸法保証処理を行ってもよい。
また、本実施の形態では、実際に測定したマスク実寸法とマスク描画用データD3上での寸法との間の差分と、この差分のばらつき量であるΔと、の合計値が、許容範囲内であるか否かを判定したが、合計値以外の評価値が許容範囲内であるか否かを判定してもよい。この場合、実際に測定したマスク実寸法とマスク描画用データD3上での寸法との間の差分と、この差分のばらつき量であるΔと、を用いて求められた評価値(差分評価値)が、許容範囲内であるか否かに基づいて、マスクに形成されたマスクパターンのパターン寸法が合格であるか否かが検証される。
このように実施の形態によれば、マスク周辺環境を考慮して作製したモデル関数を用いて、マスクパターンの寸法保証を行なうので、マスクパターンの仕上がり寸法保証を正確に行なうことが可能になる。