JP2011156083A - 消化器系ステント - Google Patents

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秀英 豊川
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Abstract

【課題】 消化器系に対して好適に用いられる消化器系ステントを提供する。
【解決手段】 筒状の外形状を有するステント本体部(12)と、前記ステント本体部の外周を被覆する第1の樹脂フィルム(30)と、前記第1の樹脂フィルムに対して、前記ステント本体部の径方向外側に配置されており、前記第1の樹脂フィルムに被覆された前記ステント本体部を被覆する第2の樹脂フィルム(14)と、を含み、前記第2の樹脂フィルムは、前記ステント本体部の径方向内側を向く内周表面(18a)を含む内周層(18)と、前記ステント本体部の径方向外側を向く外周表面(20a)を含み当該外周表面に開口する複数の空孔(22)が当該外周表面に沿って規則的に配列されている外周層(20)とを含み、前記第2の樹脂フィルムの厚さは4〜20μmであり、前記内周層の厚さは0.5〜3μmである消化器系ステント。
【選択図】 図3

Description

本発明は、消化器系に対して好適に用いられる消化器系ステントに関する。
胆管、食道、十二指腸、大腸などの消化器系体内管腔が、がん細胞などにより狭窄または閉塞した場合に、体内管腔を確保する目的で、種々のステントが使用されている。しかし、体内に留置されるステントでは、ステントの周壁を越えてがん細胞等が成長(浸潤)することによって、ステントによって確保された管腔が再度狭窄または閉塞してしまうという問題が発生する場合がある。
そこで、これを防止する従来技術として、ステント基材を筒状の樹脂フィルムで被覆してなるカバードステントが提案されている(例えば特許文献1等参照)。カバードステントでは、ステント基材を被覆する樹脂フィルムが、がん細胞の成長などによる体内管腔の狭窄を抑制することができる。また、ステント基材を、多数の空孔が形成された樹脂フィルムで被覆したカバードステントも提案されている(例えば特許文献2又は3等参照)。多数の空孔が形成された樹脂フィルムは、がん細胞の増殖を抑制する効果を奏する旨の報告がなされており、このようなカバードステントは、体内管腔の開存期間を延長する効果を期待できる。
特開2001−327609 特開2005−152526 特開2005−152527
しかし、発明者らは、体内に留置されたカバードステントが、周辺に存在する消化器等の動きに伴って変形を繰り返すため、従来技術に係るカバードステントでは、ステント基材を被覆する樹脂フィルムが破損するという問題が発生することを見いだした。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、消化器系に対して好適に用いられる消化器系ステントを提供することである。
前記課題を解決するために、本発明に係る消化器系ステントは、
筒状の外形状を有するステント本体部と、
前記ステント本体部の外周を被覆する第1の樹脂フィルムと、
前記第1の樹脂フィルムに対して、前記ステント本体部の径方向外側に配置されており、前記第1の樹脂フィルムに被覆された前記ステント本体部を被覆する第2の樹脂フィルムと、を含み、
前記第2の樹脂フィルムは、前記ステント本体部の径方向内側を向く内周表面を含む内周層と、前記ステント本体部の径方向外側を向く外周表面を含み当該外周表面に開口する複数の空孔が当該外周表面に沿って規則的に配列されている外周層とを含み、
前記第2の樹脂フィルムの厚さは4〜20μmであり、
前記内周層の厚さは0.5〜3μmであることを特徴とする。
本発明に係る消化器系ステントは、ステント本体部を被覆する第1の樹脂フィルムと、第1の樹脂フィルムの外側から、前記ステント本体部を被覆する第2の樹脂フィルムとを有する。本発明に係る消化器系ステントは、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムによって2重に被覆されているので、消化器系ステントが変形を繰り返した場合に、第2の樹脂フィルムが破損することを防止できる。また、第2の樹脂フィルムは内周層と、複数の空孔が形成された外周層を含む。空孔が形成されていない内周層は、空孔が形成されている外周層に比べて破れにくいため、第2の樹脂フィルムは、消化器系ステントが変形を繰り返した場合にでも、第2の樹脂フィルムの破損を防止できる。また、第2の樹脂フィルムの厚さと、当該第2の樹脂フィルムに含まれる内周層の厚さは、消化器系ステントが設置された胆管等の消化器の変形に追従して、消化器系ステントが柔軟に変形できるように、適切な範囲に設定されている。
したがって、本発明に係る消化器系ステントは、ステント本体部の外周を被覆する第2の樹脂フィルムが破れにくく、ステントによって確保された管腔が再度狭窄または閉塞してしまう現象を防止できる。また、本発明に係る消化器系ステントは、胆管等の消化器の変形に追従して柔軟に変形することが可能であるため、消化器系ステントを留置した後に、消化器系ステントの設置位置が移動してしまうことを防止できる。また、ステント本体部を被覆する第2の樹脂フィルムの外周層には、第2の樹脂フィルムの外周側に開口する複数の空孔が形成されているため、本発明に係る消化器系ステントは、当該消化器系ステントが設置された胆管等におけるがん細胞の成長を抑制する効果を期待できる。
また、例えば、前記ステント本体部は、ストラットにより形成される筒状のステント基材と、前記ストラットの表面および前記ステント基材の周面を被覆する樹脂コーティング膜とを含んでいてもよい。
ステント本体部を、ストラットにより形成される筒状のステント基材と、これを被覆する樹脂コーティング膜によって構成することによって、消化器ステントは、適切な強度および柔軟性を有すると同時に、ステント基材を形成するストラット表面に、スラッジ等が堆積することを防止できる。
また、例えば、前記第1の樹脂フィルムはポリウレタンによって構成されていてもよく、
前記第2の樹脂フィルムはポリブタジエンによって構成されていてもよい。
このような消化器系ステントは、第1の樹脂フィルムの強度が、第2の樹脂フィルムの強度より高くなる。したがって、第1の樹脂フィルムが、第2の樹脂フィルムを、ステント本体部の突起等から保護し、ステント本体部の突起等によって第2の樹脂フィルムが穿孔され、第2の樹脂フィルムが破れることを防止できる。また、第2の樹脂フィルムは、第1の樹脂フィルムによってステント本体部の突起等から保護されるため、柔軟性の高い材質で構成することが可能となり、消化器系ステントは、適切な柔軟性を持つことができる。
また、例えば、前記外周層と前記内周層は、互いに連続する単一の膜を構成していてもよい。外周層と内周層が単一の膜を構成している第2の樹脂フィルムは、薄くても破れにくい性質を有するため、このような第2の樹脂フィルムを用いることによって、より第2の樹脂フィルムが破れにくく、かつ柔軟である消化器系ステントを実現できる。
また、例えば、前記複数の空孔は、互いに略等しい形状を有していてもよく、
前記外周層は、前記複数の空孔が配列されたハニカム様構造を有していてもよい。
ハニカム様構造を有する外周層を含む第2の樹脂フィルムによって被覆された消化器系ステントは、当該消化器系ステントが設置された胆管等におけるがん細胞の成長を抑制する効果を期待できる。
また、例えば、前記内周層の厚さの変動係数は30%以下であってもよい。内周層の厚さの変動係数が所定値以下である第2の樹脂フィルムを用いることによって、ステント本体部を被覆する第2の樹脂フィルムが破れにくく、柔軟性の高い消化器系ステントを実現することができる。
また、例えば、前記第2の樹脂フィルムの17%モジュラスは5MPa以下であり、前記第2の樹脂フィルムの400%モジュラスは10MPa以下であってもよい。第2の樹脂フィルムの17%モジュラスおよび400%モジュラスが、それぞれ所定の値以下である第2の樹脂フィルムを用いることによって、柔軟性が高く、設置後のマイグレーションが発生しにくい消化器系ステントを実現することができる。
また、例えば、前記複数の空孔の平均孔径は0.1〜10μmであり、前記複数の空孔の孔径の変動係数は30%以下であってもよい。平均孔径および孔径の変動係数が所定の範囲である第2の樹脂フィルムを用いる消化器系ステントは、当該消化器系ステントが設置された胆管等におけるがん細胞の成長を抑制する効果を期待できる。
本発明に係る消化器系ステントは、胆管、十二指腸、大腸などを含む消化器に対して好適に用いられるが、胆管に用いられる胆管ステントとして特に好適に用いられる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る消化器系ステントの概略図である。 図2は、図1に示す消化器系ステントの断面図である。 図3は、図2に示す消化器系ステントの断面の一部を拡大した拡大断面図である。 図4は、図1に示す消化器系ステントに含まれる第2の樹脂フィルムのレーザー顕微鏡写真のスケッチ図である。 図5は、第2の樹脂フィルムの断面図である。 図6は、第1実施形態に係る消化器系ステントの製造工程を表す概念図である。 図7は、実施例で作製した第2の樹脂フィルムの厚さの測定方法を表した概念図である。 図8は、実施例で作製した第2の樹脂フィルムに形成された空孔の大きさの測定方法を表した概念図である。 図9は、耐屈曲破れ性試験を説明した概念図である。
図1は、本発明の一実施形態に係る消化器系ステント10の概略図である。図1に示すように、本実施形態に係る消化器系ステント10は、ステント本体部12と、ステント本体部12の外周を被覆する第1の樹脂フィルム30と、第1の樹脂フィルム30の外側からステント本体部12を被覆する第2の樹脂フィルム14を含む。消化器系ステント10は、管状の外形状を有しており、消化器系体内管腔に留置され、主として管腔を確保する目的で使用される。
(ステント本体部)
ステント本体部12は、筒状の外形状を有する。なお、本実施形態における説明においては、ステント本体部12の中心を長手方向に挿通する軸Zに沿う方向を、ステント本体部12の軸方向とする。また、ステント本体部12の軸Zに直交する方向であって、軸Zからストラット16aへ向かう方向をステント本体部12の径方向外側とし、ストラット16aから軸Zへ向かう方向を径方向内側として説明を行う。
図2は、図1に示す消化器系ステント10の断面図である。本実施形態に係るステント本体部12は、ストラット16aにより形成される筒状のステント基材16と、ストラット16aの表面およびステント基材16の周面を被覆する樹脂コーティング膜26とを含む。
(ステント基材)
ステント基材16は、樹脂コーティング膜26、第1の樹脂フィルム30および第2の樹脂フィルム14によって被覆されたカバードステントとしてだけでなく、フィルム等で被覆されないベアステントとしても使用可能なものであってもよい。ステント基材16は、図1に示すように管状の外形状を有している。また、図2に示すように、本実施形態に係るステント基材16は、ストラット16aによって構成されており、ステント基材16の周壁は、ストラット16aが網目状に連なることによって形成されている。
ステント基材16を構成するストラット16aの線径は、0.05〜1mmであることが好ましい。また、ストラット16aが帯状体である場合には、ストラット16aの断面における長辺方向の長さが0.1〜10mmであって、短辺方向の長さが0.05〜5mmであることが好ましい。
ステント基材16の外形寸法は、消化器系ステント10が留置される体内管腔の大きさによって異なるが、例えば、外径が2〜30mm、内径が1〜29mm、長さが5〜200mmである。また、胆管ステントとして用いられる消化器系ステント10の場合、ステント基材16の外形寸法は、外径が5〜20mm、内径が4〜19mm、長さが10〜100mmとすることが好ましい。また、ステント基材16の外径は、ステント基材16を含む消化器系ステント10が留置位置まで搬送される際などには、上述の値の数分の1程度に縮径されていてもよい。
ステント基材16の材料としては、合成樹脂または金属が使用される。ステント基材16に使用される合成樹脂としては、適切な硬度と弾性を有するものを使用することが可能であり、生体適合性樹脂であることが好ましい。ステント基材16の材料として使用される合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、フッ素樹脂などが挙げられる。また、ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられる。また、フッ素樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などが挙げられる。
ステント基材16に使用される金属としては、ニッケルチタン(Ni−Ti)合金、ステンレス鋼、タンタル、チタン、コバルトクロム合金、マグネシウム合金等が挙げられるが、Ni−Ti合金のような超弾性合金が好ましい。ステント基材16に使用される超弾性合金の具体例としては、49〜53原子%NiのTi−Ni合金が挙げられる。また、Ti−Ni合金中の原子のうち0.01%〜10.0%を他の原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Co、Fe、Mn、Cr、V、Al、Nb、W、Bなど)や、Ti−Ni合金中の原子のうち0.01〜30.0%を他の原子で置換したTi−Ni―X合金(X=Cu、Pb、Zr)等も、ステント基材16の材料として好適である。これらの超弾性合金の機械的特性は、冷却加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより調整される。
ステント基材16の成形は、例えば、YAGレーザー等を用いたレーザー加工、放電加工、化学エッチング、切削加工等によって、チューブ状もしくはパイプ状の母材を加工することによって行うことができる。
ステント基材16には、単数または複数のX線マーカーが設置されていることが好ましい。X線マーカーは、例えば、X線造影性材料(X線不透過材料)によって構成される。消化器系ステント10を体内管腔に留置した場合、X線造影下でX線マーカーの位置を確認することによって、消化器系ステント10の留置位置を把握することができる。
X線マーカーに使用されるX線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナイリジウム合金、白金、銀、ステンレス等が挙げられる。また、X線マーカーは、X線造影性材料の粉末を含有する樹脂成型物によって構成されていてもよい。X線マーカーに用いられるX線造影性材料の粉末としては、硫酸バリウム粉末、次炭酸ビスマス粉末、タングステン粉末および上述した金属の粉末等を使用できる。
(樹脂コーティング膜)
図2に示すように、ストラット16aの表面は樹脂コーティング膜26で覆われており、また、樹脂コーティング膜26は、隣接するストラット16aの間を埋めるように広がっており、ステント基材16の周面を被覆している。
図3は、図2に示す消化器系ステント10の断面の一部を拡大した拡大断面図である。樹脂コーティング膜26のうち、隣接するストラット16aの間を埋めるように広がっているつなぎ部分26aの厚さ(図3に示すf)は、1μm〜40μmであることが好ましく、1μm〜20μmであることがより好ましい。つなぎ部分26aが薄すぎると、その部分の樹脂コーティング膜26の強度が不足したり、樹脂コーティング膜26に薬剤を含有させる場合にその薬剤の効果が充分に発揮できなかったりするおそれがある。また、つなぎ部分26aが厚すぎると、ステント本体部12および消化器系ステント10の柔軟性が不足するために、湾曲した体内管腔に追従することができず、ステントが意図した留置位置からずれてしまったり、ステントが体内管腔に負荷を与えてしまうために再狭窄を引き起こしたりするという問題が生じるおそれがある。
樹脂コーティング膜26は、ストラット16aの表面を覆うものであるが、必ずしも、ストラット16aの表面の全てを覆うものである必要はない。すなわち、図3に示すように、ストラット16aの表面の全てが樹脂コーティング膜26に覆われていてもよいが、ストラット16aの一部が露出していても問題ない。
樹脂コーティング膜26のうち、ストラット16aの表面を覆うストラット被覆部分の厚さ(図2に示すe)は、1μm〜20μmであることが好ましく、1μm〜10μmであることが特に好ましい。ストラット16aを被覆しつつ、ステント本体部12が太くなりすぎないようにするためである。
ステント本体部12の径方向内側の表面であるステント内周面12aは、樹脂コーティング膜26単独で、もしくは樹脂コーティング膜26とストラット16aによって構成される。いずれの場合であっても、図2に示すように、ステント内周面12aは、実質的に平滑に形成されていることが好ましい。ステント内周面12aを実質的に平滑に形成することで、消化器管に留置した場合は、ステント内周面12aに老廃物が堆積し難くなり、感染症が防止されるとともに、管腔が再度狭窄または閉塞してしまうことを防止できる。
樹脂コーティング膜26の材料としては、樹脂が用いられるが、その中でも、有機溶媒に溶解し毒性の少ないものが好ましい。樹脂コーティング膜26に用いることができる樹脂は、後述の第2の樹脂フィルム14に用いることができる樹脂として列挙したものと同様である。
樹脂コーティング膜26に用いることができる樹脂としては、非生体分解性樹脂と生体分解性樹脂のいずれも使用できるが、生体内で容易に分解されない非生体分解性樹脂を用いることが好ましく、非生体分解性樹脂の中でも、ポリウレタンを用いることが特に好ましい。また、ポリウレタンは、1,2−ポリブタジエンに比べて強度が高く、ストラット16aの突起等によって穿孔されにくい。なお、樹脂コーティング膜26を構成する樹脂には、必要に応じて、抗がん剤や抗血栓剤などの薬剤や、老化防止剤などの添加剤を配合しても良い。
(第1の樹脂フィルム)
図2に示すように、消化器系ステント10は、ステント本体部12の外周を被覆する第1の樹脂フィルム30を有する。図2に示す消化器系ステント10は、管腔内に留置される際の状態である拡径状態に比べて、直径が約1/2になるように縮小された状態である縮径状態にある。したがって、図2に示す縮径状態において、第1の樹脂フィルム30は、ステント本体部12の外周を、弛んだ状態で被覆している。ただし、消化器系ステント10が拡径状態になると、第1の樹脂フィルム30の弛みは減少もしくは解消される。
第1の樹脂フィルム30は、ステント本体部12と第2の樹脂フィルム14の間に配置される。本実施形態に係る第1の樹脂フィルム30は、ステント本体部12側の表面も、第2の樹脂フィルム14側の表面も平坦な平膜である。第1の樹脂フィルム30を平膜とすることにより、第1の樹脂フィルム30は、第2の樹脂フィルム14に比べて丈夫になり、ステント本体部12の突起等によって穿孔されにくくなる。これにより、第1の樹脂フィルム30は、それ自身がステント本体部12の突起により穿孔されにくく、それと同時に、外周側に位置する第2の樹脂フィルム14を、ステント本体部12による穿孔等から効果的に保護できる。
第1の樹脂フィルム30の厚さは、第1の樹脂フィルム30全体の平均値で考えて、4〜20μmとすることが好ましい。第1の樹脂フィルム30が厚すぎると、消化器系ステント10の柔軟性が不足するおそれがある。また、第1の樹脂フィルム30が薄すぎると、第2の樹脂フィルム14を、ステント本体部12による穿孔等から保護できなくなるおそれがある。
第1の樹脂フィルム30は、ステント本体部12の外周を、1周以上1周半未満周回するように、ステント本体部12に巻きつけられている。第1の樹脂フィルム30は、ステント本体部12の外周を、1周以上2周未満周回するように、ステント本体部12に巻きつけられていることが好ましい。ステント本体部12の外周を1周以上周回していることにより、第1の樹脂フィルム30は、第2の樹脂フィルム14を、ステント本体部12による穿孔等から保護できる。また、第1の樹脂フィルム30の周回数を2周未満とすることによって、消化器系ステント10の柔軟性が不足することを防止できる。
第1の樹脂フィルム30の材料としては、樹脂が用いられるが、その中でも、有機溶媒に溶解し毒性の少ないものが好ましい。第1の樹脂フィルム30に用いることができる樹脂は、後述の第2の樹脂フィルム14に用いることができる樹脂として列挙したものと同様である。また、第2の樹脂フィルム14をステント本体部12による穿孔等から保護するために、第1の樹脂フィルム30の材料としては、第2の樹脂フィルム14に用いた樹脂に比べて、高い強度を有する樹脂を用いることが好ましい。たとえば、第1の樹脂フィルム30をポリウレタンによって構成し、第2の樹脂フィルム14をポリブタジエンによって構成することが好ましい。
第1の樹脂フィルム30の製造方法は特に限定されないが、例えば、スリット状のダイから、溶融樹脂を吐出してPETフィルムの上に塗り広げたり、第1の樹脂フィルム30の材料の有機溶媒溶液をキャストして作製することができる。
(第2の樹脂フィルム)
図2に示すように、第2の樹脂フィルム14は、第1の樹脂フィルム30に対して、ステント本体部12の径方向外側に配置されている。第2の樹脂フィルム14は、第1の樹脂フィルム30に被覆されたステント本体部12を、第1の樹脂フィルム30の上から被覆している。
第2の樹脂フィルム14は、ステント本体部12の外周を、5周以上5周半未満周回するように、ステント本体部12に巻きつけられている。第2の樹脂フィルム14は、ステント本体部12の外周を、2周以上20周未満周回するように、ステント本体部12に巻きつけられていることが好ましい。ステント本体部12の外周を2周以上周回していることにより、第2の樹脂フィルム14のうち、消化器系ステント10の最外周面に位置する部分を、ステント本体部12の突起等による穿孔から保護できる。また、第2の樹脂フィルム14の周回数を20周未満とすることによって、消化器系ステント10の柔軟性が不足することを防止できる。
図3に示すように、第2の樹脂フィルム14は、ステント本体部12の径方向内側を向く内周表面18aを含む内周層18と、ステント本体部12の径方向外側を向く外周表面20aを含む外周層20を有する。外周層20には、複数の空孔22が形成されている。本実施形態に係る第2の樹脂フィルム14は、第2の樹脂フィルム14の厚さ方向に沿って内周層18と外周層20とが積層された多層構造を有している。第2の樹脂フィルム14は、管状の外形状を有する消化器系ステント10の外周表面を構成しており、第2の樹脂フィルム14の厚さ方向は、消化器系ステント10の径方向と略一致する。
図5は、第2の樹脂フィルム14の断面図である。内周層18と外周層20とを合わせた第2の樹脂フィルム14の全体の厚さAは、第2の樹脂フィルム14の全体における平均値で考えて、4〜20μmとすることが好ましい。
外周層20に形成されている複数の空孔22は、第2の樹脂フィルム14の外周表面20aに開口する。図3に示すように、空孔22に対して径方向内側には、空孔22が形成されていない内周層18が存在するため、空孔22は、内周表面18a側には開口していない。
また、複数の空孔22は、第2の樹脂フィルム14の外周表面20aに沿って規則的に配列されている。図4は、図1に示す消化器系ステント10に含まれる第2の樹脂フィルム14を、外周表面20aの側(消化器系ステント10の外周側)から観察したレーザー顕微鏡写真のスケッチ図である。図4に示すように、外周層20に形成されている複数の空孔22は、互いに略等しい形状を有している。このように、外周層20は、互いに略等しい形状を有する複数の空孔22が配列されたハニカム様構造を有している。なお、互いに隣りあう空孔22同士が部分的に連通した構造を形成していてもよい。空孔22の孔径D(図3参照)の平均値である平均孔径DAVGは、0.1〜10μmとすることが好ましい。また、空孔22の孔径Dの変動係数〔=標準偏差÷平均値×100(%)〕は、30%以下であることが好ましい。
ここで、空孔22の孔径Dとは、空孔22の開口形状に対する最大内接円の直径を指す。したがって、空孔22の孔径Dとは、空孔22の開口形状が実質的に円形状である場合はその円の直径を指し、実質的に楕円形状である場合はその楕円の短径を指し、実質的に正方形状である場合はその正方形の辺の長さを指し、実質的に長方形状である場合はその長方形の短辺の長さを指すものである。空孔22の孔径Dの測定は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や、レーザー顕微鏡等を用いて行うことができる。
図5に示すように、外周層20の厚さBは、第2の樹脂フィルム14全体における平均値で考えて、1.0〜19.5μmとすることが好ましい。これに対して、内周層18の厚さCは、第2の樹脂フィルム14全体における平均値で考えて、0.5〜3.0μmとすることが好ましい。
本実施形態に係る消化器系ステント10において、第2の樹脂フィルム14における外周層20と内周層18は、互いに連続する単一の膜を構成している。すなわち、外周層20と内周層18は略同一の組成を有しており、外周層20と内周層18の間に組成的な変化はなく、接合部分等も存在しない。
内周層18は、第2の樹脂フィルム14において、空孔22が存在しない層状の領域を構成する。外周層20と内周層18が互いに連続する単一の膜を構成している場合において、内周層18の厚さCは、第2の樹脂フィルム14における径方向内側の表面である内周表面18aから、各空孔22の底22aまでの距離c1の平均値で表される。その場合、外周層20の厚さBは、第2の樹脂フィルム14における径方向外側の表面である外周表面20aから、各空孔22の底22aまでの距離b1の平均値で表される。
第2の樹脂フィルム14は、引張試験物性の17%モジュラスが5MPa以下でかつ、400%モジュラスが10MPa以下であることが好ましい。17%モジュラスおよび400%モジュラスが、それぞれ所定の値以下である第2の樹脂フィルム14を用いることによって、柔軟性が高く、設置後のマイグレーションが発生しにくい消化器系ステント10を実現することができる。
第2の樹脂フィルム14を構成する樹脂としては、特に限定されず、非生体分解性樹脂と生体分解性樹脂のいずれも使用できる。生体内において細胞増殖抑制作用を長期間持続させる観点からは、生体内で容易に分解されない非生体分解性樹脂から形成されてなるものが好ましい。
第2の樹脂フィルム14を構成する樹脂の具体例としては、ポリブタジエン(1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン)、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などの共役ジエン系高分子;ポリε−カプロラクトン;ポリウレタン;酢酸セルロース、セルロイド、硝酸セルロース、アセチルセルロース、セロファンなどのセルロース系高分子;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド12、ポリアミド46などのポリアミド系高分子;ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、パーフルオロエチレン−プロピレン共重合体などのフッ素高分子;ポリスチレン、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、塩素化ポリエチレン−アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリルースチレン共重合体などのスチレン系高分子;ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテンなどのオレフィン系高分子;フェノール樹脂、アミノ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのホルムアルデヒド系高分子;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系高分子;エポキシ樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体などの(メタ)アクリル系高分子;ノルボルネン系樹脂;シリコン樹脂;ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリグリコール酸などのヒドロキシカルボン酸の重合体;などが挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、細胞増殖抑制作用を有するフィルムを得るためには、共役ジエン系高分子、スチレン系高分子またはポリウレタンの使用がより好ましく、1,2−ポリブタジエンの使用が特に好ましい。また、第2の樹脂フィルム14は、第1の樹脂フィルム30より加水分解されにくい樹脂によって構成されることが、消化器系ステント10を体内管腔に長期間留置させる観点から好ましい。第2の樹脂フィルム14は、第1の樹脂フィルム30を被覆しているため、第1の樹脂フィルム30より体液に曝され易いからである。たとえば、第1の樹脂フィルム30をポリウレタンによって構成し、第2の樹脂フィルム14をポリブタジエンによって構成することが好ましい。
また、第2の樹脂フィルム14を構成する樹脂には、両親媒性物質を添加してもよい。添加する両親媒性物質としては、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体;アクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基またはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性樹脂;ヘパリンやデキストラン硫酸、核酸(DNAやRNA)などのアニオン性高分子と長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオンコンプレックス;ゼラチン、コラーゲン、アルブミンなどの水溶性タンパク質を親水性基とした両親媒性樹脂;ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体、ポリε−カプロラクトン−ポリエチレングリコールブロック共重合体、ポリリンゴ酸−ポリリンゴ酸アルキルエステルブロック共重合体などの両親媒性樹脂;などが挙げられる。
第2の樹脂フィルム14を作製する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂の有機溶媒溶液を基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させるとともに前記キャストした有機溶媒液表面で水滴を結露させ、該結露により生じた微少水滴を蒸発させる方法が挙げられる。
より具体的には、例えば、以下の第1の作製方法および第2の作製方法を用いることができる。第1の作製方法では、まず、樹脂の有機溶媒溶液を基板上にキャストし、キャストされた有機溶媒溶液に対して、相対湿度20%以上の加湿空気を吹き付ける。加湿空気を吹き付けることによって、該有機溶媒を徐々に蒸散させるとともに前記キャストした有機溶媒溶液(キャスト液)表面で結露を生じさせ、有機溶媒溶液中に結露による微少水滴を発生させる。この後、結露により生じた微少水滴を蒸発させる。
第2の作製方法では、樹脂の有機溶媒溶液を、相対湿度50〜95%の大気下で基板上にキャストし、該有機溶媒を蒸散させるとともに前記キャスト液表面で結露を生じさせ、有機溶媒液中に結露による微少水滴を発生させる。この後、結露により生じた微少水滴を蒸発させる。
上述した第2の樹脂フィルム14の作製方法は、結露により生じた微少水滴を、鋳型として利用している。このような作製方法によれば、一方の表面にのみ開口する空孔22が表面方向に沿って規則的に配列されている第2の樹脂フィルム14を作製することができる。また、このような方法によれば、孔径Dの均一性が高いハニカム様構造を有する第2の樹脂フィルム14を作製することができる。
上述した方法では、樹脂の有機溶媒溶液を用いる。樹脂の有機溶媒溶液に用いる有機溶媒は、キャスト液表面上に微少水滴を形成させるために、非水溶性であることが好ましい。樹脂の有機溶媒溶液に用いる有機溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの飽和炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;二硫化炭素;などが挙げられる。これらの有機溶媒は1種単独で、あるいはこれらの2種以上からなる混合溶媒として使用することができる。
有機溶媒溶液において、有機溶媒に溶解する樹脂の濃度は、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%である。樹脂濃度が0.01重量%より低いと得られるフィルムの力学的強度が不足し望ましくない。また、樹脂濃度が10重量%以上では、所望の多孔構造(ハニカム様構造)が得られなくなるおそれがある。
上述した第1の方法または第2の方法により第2の樹脂フィルム14を作製する場合には、先述の両親媒性物質を、樹脂に添加することが好ましい。両親媒性物質を樹脂に添加することによって、結露により生じた微少水滴の融合が抑制され、微少水滴の形状が安定するため、第2の樹脂フィルム14に形成される空孔22の孔径Dが均一化される。
両親媒性物質のなかでも、下記の化学式1で示される両親媒性樹脂(以下「Cap樹脂」という。)を添加することが特に好ましい。
Figure 2011156083
(上記化学式におけるmおよびnは、それぞれ任意の自然数を表す。)
Cap樹脂は、水に対して不溶性が高く有機溶媒に可溶であるため、微少水滴の形状を安定化させる効果が高い。なお、Cap樹脂等の両親媒性物質を添加する量は、樹脂:両親媒性物質の重量比で99:1〜50:50であることが好ましい。
樹脂の有機溶媒溶液をキャストする基板としては、ガラス基板、金属基板、シリコン基板等の無機基板や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン等の高分子基板や、水、流動パラフィン、液状ポリエーテル等の液状基板等が挙げられる。
第2の樹脂フィルム14における空孔22の孔径D、第2の樹脂フィルム14の厚さA、外周層20の厚さBおよび内周層18の厚さC等は(図5参照)、第2の樹脂フィルム14の作製条件を調整することによって制御される。このような第2の樹脂フィルム14の作製条件には、キャストする有機溶媒溶液の液量、有機溶媒溶液における樹脂濃度、キャストされた溶液周辺の雰囲気、加湿空気の温度および湿度、加湿空気の流量、有機溶媒溶液における溶媒の蒸発スピード、結露スピード等が挙げられる。
第1の作製方法において、キャストされた有機溶媒溶液(キャスト液)に吹き付ける加湿空気は、キャスト液表面において加湿空気中の水分が結露するように、その湿度を調整される。加湿空気の湿度は、相対湿度で20〜100%とすることが好ましく、30〜80%とすることがさらに好ましい。また、キャスト液に吹き付ける加湿空気の代わりに、水蒸気を含む窒素、アルゴンなどの不活性ガスを用いてもよい。
キャスト液に吹き付ける加湿空気の流量は、キャスト液の液面において結露が発生することができ、かつ、キャスト液に含まれる溶媒を蒸発させることができるように調整される。加湿空気の流量は、有機溶媒溶液がキャストされる基板の大きさ等に応じて調整される。例えば、直径10cmのガラスシャーレに有機溶媒溶液をキャストして第2の樹脂フィルム14を作製する場合には、加湿空気の流量は、1〜5L/minであることが好ましい。
第1の作成方法では、キャスト液に含まれる溶媒の蒸発が終了するまで、加湿空気をキャスト液に吹き付ける。加湿空気をキャスト液に吹き付ける時間は、例えば1〜60分程度である。加湿空気を吹き付ける際、キャスト液周辺の環境温度は、キャスト液中に含まれる溶媒が蒸発できる温度に保たれる。キャスト液周辺の環境温度は、例えば5〜80℃程度とすることができる。
第2の樹脂フィルム14としては、上述の第1および第2の方法によって作製されたフィルムをそのまま使用してもよいが、第1および第2の方法によって作製されたフィルムを延伸した延伸フィルムを使用することもできる。この場合、フィルムを延伸する方法は特に限定されず、一軸延伸、二軸延伸または3軸延伸等のいずれの延伸方法であってもかまわない。また、フィルムを延伸する場合、延伸方法における伸長率は、特に限定されないが、好ましくは1.1〜10倍の範囲である。なお、フィルムの延伸は、ステント本体部12に第2の樹脂フィルム14を取り付けたのち、ステント本体部12を拡張させることによって行われても良い。
(消化器系ステント)
図1および図2に示すように、消化器系ステント10は、ステント基材16と、樹脂コーティング膜26と、第1の樹脂フィルム30と、第2の樹脂フィルム14とを含む。第1の樹脂フィルム30または第2の樹脂フィルム14は、ステント本体部12の周面全体を被覆していてもよいし、ステント本体部12の外周面のうち、一部のみを被覆していてもよい。また、ステント本体部12の内周面についても、外周面と同様に、第1または第2の樹脂フィルム30,14等によって被覆されていてもよい。
消化器系ステント10は、ステント基材16に樹脂コーティングを施してステント本体部12の作製した後、当該ステント本体部12の外周面を、第1の樹脂フィルム30と第2の樹脂フィルム14で被覆することによって作製することができる。図6は、本実施形態に係る消化器系ステント10を製造するための製造工程の一例を表す概念図である。
製造工程の第1の段階では、図6(A)に示すように、ステント基材16を用意する。ステント基材16は、その外径が、体内管腔に留置された状態における外径と同じになるように、拡径されている。
製造工程の第2の段階では、図6(B)に示すように、拡径されているステント基材16の周面と、ステント基材16を形成するストラット16aの表面を、樹脂コーティング膜26によって被覆し、ステント本体部12を作製する。樹脂コーティング膜26を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、拡径されているステント基材16を、回転可能な軸部材に外嵌して軸回転させ、軸回転するステント基材16に、樹脂溶液を付着させることによって作製することができる。
ステント基材16を軸回転させる際の回転速度は、特に限定されないが、例えば10〜300回転/分に設定する。軸回転するステント基材16に樹脂溶液を付着させる方法は特に限定されないが、例えばスポイト等などを用いて、軸回転するステント基材16に向かって樹脂溶液を滴下する方法を用いることができる。滴下する樹脂溶液は、樹脂コーティング膜26を形成するための樹脂を溶媒に溶解させたものである。樹脂溶液に用いる溶媒は、通常、目的の樹脂を溶解させることができる有機溶媒であり、揮発性が高いものであることが好ましい。例えば、樹脂コーティング膜26をポリウレタンで構成する場合には、溶媒として、テトロヒドロフランまたはテトロヒドロフランと1,4−ジオキサンとの混合溶媒を用いることが好ましい。
ステント基材16の周面全体に対して樹脂溶液の付着が完了したら、付着した樹脂溶液の溶媒を気化させる。溶媒として、揮発性が高いものを用いた場合は、樹脂溶液の滴下を止めた後も、室温下でステント基材16の軸回転を継続することによって、溶媒を気化させることができる。これによって、ステント基材16に対して樹脂コーティング膜26が形成され、ステント本体部12が得られる。なお、軸部材からステント本体部12を抜き取る際に発生する樹脂コーティング膜26の破損を防止するために、軸部材からステント本体部12を抜き取る前に、樹脂コーティング膜26をエタノールなどの溶媒に浸漬させて、樹脂コーティング膜26を膨潤させてもよい。
製造工程の第3の段階では、図6(C)に示すように、ステント本体部12に第1の樹脂フィルム30を巻きつける。第1の樹脂フィルム30は、ステント本体部12の外周を、1周以上1周半未満周回するように、ステント本体部12に巻きつけられる。これにより、第1の樹脂フィルム30によって被覆されたステント本体部12を得る。第1の樹脂フィルム30をステント本体部12に取り付ける取り付け方法としては、第1の樹脂フィルム30を巻きつけるだけの方法には限定されず、接着剤による固定、溶媒を用いた融着、加熱による融着などの方法を用いることができる。
製造工程の第4の段階では、図5(D)に示すように、第1の樹脂フィルム30によって被覆されたステント本体部12を、その外径が2分の1になるように縮径する。次に、製造工程の第5の段階では、図5(E)に示すように、第1の樹脂フィルム30によって被覆されたステント本体部12の外側に、第2の樹脂フィルム14を巻きつける。第2の樹脂フィルム14は、ステント本体部12の外周を、5周以上5周半未満周回するように、ステント本体部12に巻きつけられる。第2の樹脂フィルム14をステント本体部12に取り付ける取り付け方法としては、第2の樹脂フィルム14を巻きつけるだけの方法には限定されず、接着剤による固定、溶媒を用いた融着、加熱による融着などの方法を用いることができる。
上述のような第1〜第5の段階により、図1および図2に示すような消化器系ステント10が得られる。なお、第2の樹脂フィルム14を、ステント本体部12を縮径させた状態で巻きつけることにより、消化器系ステント10を体内管腔で拡径させた際に第2の樹脂フィルム14を延伸させることができる。消化器系ステント10の拡径時に第2の樹脂フィルムを延伸させることによって、第2の樹脂フィルム14の強度を向上させるとともに、ステント本体部12に対して第2の樹脂フィルム14をきつく巻き付かせることができる。
なお、第2の樹脂フィルム14には複数の空孔22が形成されているため伸縮性に富む。そのため、消化器系ステント10は、第2の樹脂フィルム14を延伸させながら拡径することができる。また、第2の樹脂フィルム14を、ポリブタジエンのような伸縮性に富む樹脂で構成することによって、消化器系ステント10は、第2の樹脂フィルム14が多重に巻きつけられていても、第2の樹脂フィルム14を延伸させながら拡径することができる。
第1の樹脂フィルム30は、上述の第3工程(図6(C))に示すように、ステント本体部12を拡径させた状態で巻きつけられる。したがって、消化器系ステント10を拡径させる際に、第1の樹脂フィルム30自体は、第2の樹脂フィルム14ほど伸張しなくてよい。したがって、消化器系ステント10は、第1の樹脂フィルム30を、第2の樹脂フィルム14に比べて強度が高い樹脂によって構成することが可能となる。第1の樹脂フィルム30を、第2の樹脂フィルム14に比べて強度が高い樹脂によって構成することによって、消化器系ステント10は、第2の樹脂フィルム14を、ステント本体部12の突起による穿孔等から、効果的に保護できる。
消化器系ステント10の外形寸法は、ステント基材16の外径寸法とほぼ同様であり、例えば、外径が2〜30mm、内径が1〜29mm、長さが5〜200mmである。また、胆管ステントとして用いられる消化器系ステント10の外径寸法は、外径が5〜20mm、内径が4〜19mm、長さが10〜100mmとすることが好ましい。
消化器系ステント10は、体内管腔に留置された状態において、適切な柔軟性と強度を有することが好ましい。例えば、消化器系ステント10は、37℃雰囲気下におけるステント長手方向に対する曲げ応力(AF)が0.33N以下であることが好ましい。また、ステント径φ2.5mmの消化器系ステント10では、ステント単位長さあたりの拡張力が、0.5〜2.5N/cmであることが好ましい。
本発明の消化器系ステント10は、従来のステントと同様の方法を用いて、消化器系体内管腔に留置することができる。例えば、ステント基材16が超弾性合金などの弾性に富む材料で構成されている場合には、まず、消化器系ステント10は、縮径された状態(外径が縮小された状態)でデリバリーカテーテルに挿入され、デリバリーカテーテルに挿入された状態で留置位置まで運ばれる。消化器系ステント10は、留置位置においてデリバリーカテーテルから抜き出された後、体内管腔に留置される。なお、ステント基材16は、デリバリーカテーテルから抜き出された際もしくは抜き出された後に拡張されるため、消化器系ステント10は、拡径された状態(外径が拡大された状態)で体内管腔に留置される。
また、ステント基材16がステンレス鋼など、超弾性合金ほどの弾性を有しない材料で構成されている場合には、消化器系ステント10は、バルーンカテーテルのバルーンに外嵌され、バルーンに外嵌された状態で留置位置まで運ばれる。消化器系ステント10は、留置位置において、バルーンカテーテルのバルーンを拡張させることによって拡張され、その後にバルーンが消化器系ステント10から抜き取られることによって、留置される。
消化器系ステント10は、例えば、胆管、食道、十二指腸、大腸など、消化器系体内管腔のいずれにも留置することができるが、特に胆管に留置する胆管ステントとして好適に用いることができる。
消化器系ステント10は、第1の樹脂フィルム30と第2の樹脂フィルム14によって2重に被覆されているので、消化器系ステントが変形を繰り返した場合に、第2の樹脂フィルム14が、ステント本体部12の突起等によって穿孔され、破損することを防止できる。
消化器系ステント10は、第2の樹脂フィルム14の内側に、第2の樹脂フィルム14の破損を防止する第1の樹脂フィルム30を配置している。このため、消化器系ステント10は、外周層20に空孔22が形成されており、平膜に比べて柔軟性に富む第2の樹脂フィルム14を、被覆フィルムとして採用できる。したがって、本実施形態に係る消化器系ステント10は、体内管腔に留置された後、消化器系ステント10の留置位置周辺における体内管腔の屈曲に柔軟に対応することができる。これにより、消化器系ステント10は、留置後の位置ズレや、当該位置ズレに伴って発生する周辺部位の炎症や、穿孔などの合併症を抑制する効果を奏する。
また、消化器系ステント10に含まれる第2の樹脂フィルム14は、空孔22が形成されていない内周層18を有するため、空孔がフィルムを貫通している樹脂フィルムよりも、消化器系ステント10の屈曲に対して、破れにくい構造を有している。したがって、十二指腸の蠕動運動や呼吸に伴って消化器系ステント10が屈曲した場合でも、第2の樹脂フィルム14が破損し、ステントの周壁を越えてがん細胞等が成長(浸潤)する現象を防止できる。
また、消化器系ステント10は、ステント基材16を被覆する樹脂コーティング膜26を有するため、ストラット16aの表面にスラッジ等が堆積することを防止できる。また、ストラット16aの表面を樹脂コーティング膜26によって被覆することによって、第1の樹脂フィルム30および第2の樹脂フィルム14が、ステント基材16の加工時に発生した突起等により穿孔され、破損することを防止できる。
消化器系ステント10によれば、第2の樹脂フィルム14の厚さおよび内周層18の厚さを適切な範囲とすることによって、消化器系ステント10が屈曲した場合にも破れにくく、かつ、体内管腔の屈曲に応じて柔軟に屈曲し、留置位置ずれの発生を防止した消化器系ステント10を実現できる。特に、第2の樹脂フィルム14の破れにくさや、消化器系ステントの柔軟性に大きな影響を与える内周層18の厚さは、第2の樹脂フィルム14全体で均一であることが好ましく、内周層18の厚さの変動係数は、30%以下であることが好ましい。これによって、ステント本体部12を被覆する第2の樹脂フィルム14が破れにくく、柔軟性の高い消化器系ステント10を実現することができる。さらに、複数の空孔22が表面方向に沿って規則的に配列されている第2の樹脂フィルム14によって被覆されている消化器系ステント10は、当該消化器系ステント10の留置位置におけるがん細胞の増殖を抑制する効果を期待できる。
また、外周層20と内周層18とが互いに連続する単一の膜を構成する第2の樹脂フィルム14は、薄くても破れにくい性質を有するため、このような第2の樹脂フィルム14によって被覆された消化器系ステント10は、柔軟であって留置後の位置ズレが発生しにくい。さらに、ハニカム様構造を有する外周層20を含む第2の樹脂フィルム14によって被覆された消化器系ステント10は、当該消化器系ステント10が設置された胆管等におけるがん細胞の成長をより効果的に抑制する効果を期待できる。また、外周層20に形成される空孔22の平均孔径DAVGおよび孔径Dの変動係数が所定の範囲である第2の樹脂フィルム14を用いる消化器系ステント10は、当該消化器系ステント10が設置された胆管等におけるがん細胞の成長を、より効果的に抑制する効果を期待できる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
サンプル1
(第2の樹脂フィルム14の作製)
1,2−ポリブタジエン(JSR社製、商品名「RB820」)と化学式1で示される両親媒性樹脂からなる界面活性剤Aを、重量比で考えて、下記数式1で示される割合で混合した樹脂混合物を用意する。
1,2−ポリブタジエン:界面活性剤A=20:1 ・・・数式1
次に、樹脂混合物とクロロホルムを、重量比で考えて、下記数式2で示される割合で混合した有機溶媒溶液を作製する。
樹脂混合物:クロロホルム=1:380 ・・・数式2
次に、作製した有機溶媒溶液を、液膜の厚みが0.1mmになるように、静止されたガラス基板上にキャストした。さらに、キャストされた有機溶媒溶液に対して、加湿空気を吹き付けた。吹き付ける加湿空気は、温度25℃、相対湿度45%とした。また、加湿空気は、風速1m/secで有機溶媒溶液に吹き付けた。
キャスト溶液に対して加湿空気を吹き付けることによって、有機溶媒を徐々に蒸散させるとともに、キャスト溶液表面全体で結露を生じさせ、キャスト液全体に結露による微少水滴を発生させた。また、さらに加湿空気を吹き付けることによって、有機溶媒および微少水滴を蒸発させ、サンプル1に係る第2の樹脂フィルム14を得た。なお、3Dレーザー顕微鏡による第2の樹脂フィルム14の観察により、サンプル1に係る第2の樹脂フィルム14には、図5に示すような内周層18と外周層20が形成されていたことを確認した。
(消化器系ステント10の作製)
拡径されているステント基材16を、ポリウレタンによって構成される樹脂コーティング膜26によって被覆してステント本体部12を作製した(製造工程の第1および第2の段階)。ステント基材16としては、Ni−Ti合金製の自己拡張型ステント(商品名:ゼオンステントプラス(ゼオンメディカル社製))を用いた。樹脂コーティング膜26のコーティングは、ステント基材16を回転させながら、ポリウレタン樹脂のテトラヒドロフラン溶液をステント基材16に滴下することによって行った。ステント基材16の回転速度は、20回転/分とした。
次に、ステント本体部12に第1の樹脂フィルム30を巻きつけた(製造工程の第3の段階)。第1の樹脂フィルム30としては、ポリウレタンによって構成されるフィルムを用いた。第1の樹脂フィルム30の厚さは、フィルム全体の平均値で考えて5μmであった。第1の樹脂フィルム30の巻きつけは、ステント本体部12を拡径させた状態で行った。第1の樹脂フィルム30は、ステント本体部12の外周を1周周回するように、ステント本体部12に対して巻きつけられた。
次に、第1の樹脂フィルム30によって被覆されたステント本体部12を、その外径が2分の1になるように縮径した(製造工程の第4の段階)。次に、第1の樹脂フィルム30によって被覆されたステント本体部12の外側に、第2の樹脂フィルム14を巻きつけた(製造方法の第5の段階)。これによって、サンプル1に係る消化器系ステント10を得た。第2の樹脂フィルム14は、サンプル1に係る第2の樹脂フィルム14(樹脂混合物:クロロホルム=1:380の有機溶媒溶液を用いて作製されたもの)を用いた。第2の樹脂フィルム14は、ステント本体部12の外周を5周周回するように、ステント本体部12に対して巻きつけられた。
(評価)
サンプル1に係る第2の樹脂フィルム14を、3Dレーザー顕微鏡34(商品名:VK−8700(KEYENCE社製)を用いて、倍率1000倍で観察し、第2の樹脂フィルム14の厚さA(平均フィルム厚)、外周層の厚さB(平均外周層厚)、内周層18の厚さC(平均内周層厚)、外周層20の厚さの変動係数(平均外周層厚変動係数)および内周層18の厚さの変動係数(平均内周層厚変動係数)を測定した(図5参照)。
図7は、第2の樹脂フィルム14に関する各厚さの測定方法を表した概念図である。第2の樹脂フィルム14に関する各厚さの測定は、図7に示すように、ガラス板32の上に、120mm×120mmにカットした第2の樹脂フィルム14aを配置し、これを計測測定機能付きレーザー顕微鏡34で観察することにより実施した。第2の樹脂フィルム14の厚さA(平均フィルム厚)は、外周表面20aとガラス板表面32aとの距離a1を、外周表面20a上であって互いに30mm程度離れた6点について測定し、その平均値を求めることによって算出した。
外周層の厚さB(平均外周層厚)は、外周表面20aと空孔22の底22a(空孔22の最も凹んでいる部分)との距離b1を、30mm程度離れた6つの空孔22について測定し、その平均値を求めることによって算出した。内周層の厚さC(平均内周層厚)は、空孔22の底22aとガラス板表面32aとの距離c1を、30mm程度離れた6つの空孔22について測定し、その平均値を求めることによって算出した。外周層20の厚さの変動係数(平均外周層厚変動係数)および内周層18の厚さの変動係数(平均内周層厚変動係数)は、測定した6箇所の距離b1,c1を用いて算出したものである。サンプル1に係る第2の樹脂フィルム14に関する厚さの測定結果を表1に示す。なお、フィルム中における内周層の割合(表1)は、内周層の厚さCの算出値と、第2の樹脂フィルム14の厚さA(平均フィルム厚)の算出値から算出したものである。
表1
Figure 2011156083
図8は、第2の樹脂フィルム14に関する空孔22の孔径D(図4参照)の測定方法を表した概念図である。空孔22の孔径Dの測定も、厚さの測定と同様に、ガラス板32の上に、120mm×120mmにカットした第2の樹脂フィルム14aを配置し、これを計測測定機能付きレーザー顕微鏡34で観察することにより実施した。第2の樹脂フィルム14の孔径D(平均孔径)は、空孔22の開口形状に対する最大内接円の直径d1を、30mm程度離れた6つの空孔22について測定し、その平均値を求めることによって算出した。孔径Dの変動係数(孔径変動係数)は、測定した6箇所の直径d1を用いて算出したものである。サンプル1に係る第2の樹脂フィルム14の孔径D(平均孔径)の測定結果を表1に示す。
サンプル1に係る消化器系ステント10について、耐屈曲破れ性試験を行った。耐屈曲破れ性試験では、図9に示すように、サンプル1に係る消化器系ステント10を、φ15mmの円柱24に押し当て5回往復屈曲させた後、消化器系ステント10を被覆している第2の樹脂フィルム14に破れが発生しているか否かを、光学顕微鏡下で確認した。結果を表1に示す。
実施例1に係る消化器系ステント10について、曲げ応力の測定を行った。消化器系ステント10の曲げ応力の測定は、消化器系ステント10が留置される環境を考慮して、37℃雰囲気下で測定された。結果を表1に示す。
サンプル1に係る消化器系ステント10について、マイグレーション(逸脱)評価を行った。マイグレーション評価では、サンプル1に係る消化器系ステント10を、ヒアルロン酸乳液を塗布した模擬胆管内壁に設置したのち、消化器系ステント10を設置した模擬胆管内壁を、振幅10mm、周波数2.5Hzで1時間往復運動させた。表1に示すマイグレーション量は、模擬胆管の往復運動の結果生じた消化器系ステント10の移動量を測定したものである。なお、マイグレーション評価において、模擬胆管内壁を往復運動させている間は、ロータリーポンプによって、模擬胆管内壁内部に、模擬胆汁を循環させた。
サンプル2〜8
サンプル2〜8は、第2の樹脂フィルム14を作製する際における樹脂混合物とクロロホルムの混合割合を変化させた以外は、サンプル1と同様にして、第2の樹脂フィルム14および消化器系ステント10を作製した。
サンプル2に係る第2の樹脂フィルム14の作製においては、樹脂混合物とクロロホルムを、重量比で考えて、下記数式3で示される割合で混合した。
樹脂混合物:クロロホルム=1:420 ・・・数式3
サンプル3に係る第2の樹脂フィルム14の作製においては、樹脂混合物とクロロホルムを、重量比で考えて、下記数式4で示される割合で混合した。
樹脂混合物:クロロホルム=1:600 ・・・数式4
サンプル4に係る第2の樹脂フィルム14の作製においては、樹脂混合物とクロロホルムを、重量比で考えて、下記数式5で示される割合で混合した。
樹脂混合物:クロロホルム=1:650 ・・・数式5
サンプル5に係る第2の樹脂フィルム14の作製においては、樹脂混合物とクロロホルムを、重量比で考えて、下記数式6で示される割合で混合した。
樹脂混合物:クロロホルム=1:740 ・・・数式6
サンプル6に係る第2の樹脂フィルム14の作製においては、樹脂混合物とクロロホルムを、重量比で考えて、下記数式7で示される割合で混合した。
樹脂混合物:クロロホルム=1:970 ・・・数式7
サンプル7に係る第2の樹脂フィルム14の作製においては、樹脂混合物とクロロホルムを、重量比で考えて、下記数式8で示される割合で混合した。
樹脂混合物:クロロホルム=1:1100 ・・・数式8
サンプル8に係る第2の樹脂フィルム14の作製においては、樹脂混合物とクロロホルムを、重量比で考えて、下記数式9で示される割合で混合した。
樹脂混合物:クロロホルム=1:1520 ・・・数式9
また、サンプル2〜8に係る第2の樹脂フィルム14について、サンプル1と同様に、第2の樹脂フィルム14の厚さA(平均フィルム厚)、外周層の厚さB(平均外周層厚)、内周層18の厚さC(平均内周層厚)、外周層20の厚さの変動係数(平均外周層厚変動係数)、内周層18の厚さの変動係数(平均内周層厚変動係数)、孔径D(平均孔径)および孔径Dの変動係数(孔径変動係数)を測定した。さらに、サンプル2〜8に係る消化器系ステント10についても、サンプル1に係る消化器系ステント10と同様に、耐屈曲破れ性試験と、曲げ応力の測定およびマイグレーション評価を行った。結果を表1に示す。
総合評価
表1に示すように、サンプル2〜サンプル6に係る第2の樹脂フィルム14は、内周層18の厚さ(平均内周層厚)が、0.6〜2.8μmであり、0.5〜3μmの範囲内であった。また、第2の樹脂フィルム14の厚さ(平均フィルム厚)も、4.2〜7.3μmであり、4〜20μmの範囲内であった。屈曲破れ性試験評価では、サンプル2〜サンプル5に係る第2の樹脂フィルム14には、破れが発生していなかった。サンプル6については、屈曲破れ性試験後に、第2の樹脂フィルム14に僅かな破れが見つかったが、破れの大きさは0.15mm四方未満であり、許容範囲内であった。サンプル2〜サンプル6に係る消化器系ステント10の曲げ応力は、0.27〜0.5Nであり、0.5N以下であった。サンプル2〜サンプル6に係る消化器系ステント10のマイグレーション量は10mm以下であり、許容範囲内であった。
サンプル1に係る第2の樹脂フィルム14は、内周層18の厚さ(平均内周層厚)が3.2μmであり、3μmを超えていた。サンプル1に係る第2の消化器系ステント10のマイグレーション量は、80mmであり、サンプル2〜サンプル6に係る消化器系ステント10に比べて大きな値であった。サンプル1に係る第2の消化器系ステント10の曲げ応力は、0.8Nであり、サンプル2〜サンプル6に係る消化器系ステント10の曲げ応力より大きな値であった。サンプル2〜サンプル6の評価結果と、サンプル1の評価結果を比較すると、第2の樹脂フィルム14の厚さが4〜20μmである場合において、内周層18の厚さを3μm以下にすることによって、消化器系ステント10の曲げ応力の値が抑制され、マイグレーション量が低減されることが解る。
サンプル7に係る第2の樹脂フィルム14は、内周層18の厚さ(平均内周層厚)が0.4μmであり、0.5μm未満であった。また、サンプル8に係る第2の樹脂フィルム14は、内周層18の厚さが0μmであり、第2の樹脂フィルム14に形成された空孔22が、第2の樹脂フィルム14を貫通していた。サンプル7およびサンプル8に係る第2の樹脂フィルム14は、屈曲破れ性試験評価において、0.15mm四方以上の大きさの破れが発生しており、許容できない大きさの破れが発生していた。サンプル2〜サンプル6の評価結果と、サンプル7およびサンプル8の評価結果を比較すると、第2の樹脂フィルム14の厚さが4〜20μmである場合において、内周層18の厚さを0.5μm以上にすることによって、第2の樹脂フィルム14が適切な強度および耐久性を持つことが解る。
このように、第2の樹脂フィルム14の厚さが4〜20μmである場合において、内周層18の厚さを0.5〜3.0μmとすることによって、第2の樹脂フィルム14は、消化器系ステント10に用いられる被覆フィルムとして適切な強度および耐久性を有するとともに、消化器系ステント10が適切な柔軟性を有し、消化器系ステント10のマイグレーションが発生しにくくなることが実証された。
10…消化器系ステント
12…ステント本体部
14…第2の樹脂フィルム
16…ステント基材
16a…ストラット
18…内周層
18…内周表面
20…外周層
20a…外周表面
22…空孔
26…樹脂コーティング膜
30…第1の樹脂フィルム

Claims (9)

  1. 筒状の外形状を有するステント本体部と、
    前記ステント本体部の外周を被覆する第1の樹脂フィルムと、
    前記第1の樹脂フィルムに対して、前記ステント本体部の径方向外側に配置されており、前記第1の樹脂フィルムに被覆された前記ステント本体部を被覆する第2の樹脂フィルムと、を含み、
    前記第2の樹脂フィルムは、前記ステント本体部の径方向内側を向く内周表面を含む内周層と、前記ステント本体部の径方向外側を向く外周表面を含み当該外周表面に開口する複数の空孔が当該外周表面に沿って規則的に配列されている外周層とを含み、
    前記第2の樹脂フィルムの厚さは4〜20μmであり、
    前記内周層の厚さは0.5〜3μmであることを特徴とする消化器系ステント。
  2. 前記ステント本体部は、ストラットにより形成される筒状のステント基材と、前記ストラットの表面および前記ステント基材の周面を被覆する樹脂コーティング膜とを含むことを特徴とする請求項1に記載の消化器系ステント。
  3. 前記第1の樹脂フィルムはポリウレタンによって構成されており、
    前記第2の樹脂フィルムはポリブタジエンによって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の消化器系ステント。
  4. 前記外周層と前記内周層は、互いに連続する単一の膜を構成していることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の消化器系ステント。
  5. 前記複数の空孔は、互いに略等しい形状を有し、
    前記外周層はハニカム様構造を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の消化器系ステント。
  6. 前記内周層の厚さの変動係数は30%以下であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の消化器系ステント。
  7. 前記第2の樹脂フィルムの17%モジュラスは5MPa以下であり、
    前記第2の樹脂フィルムの400%モジュラスは10MPa以下であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の消化器系ステント。
  8. 前記複数の空孔の平均孔径は0.1〜10μmであり、前記複数の空孔の孔径の変動係数は30%以下であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の消化器系ステント。
  9. 胆管ステントである請求項1から請求項8までのいずれかに記載の消化器系ステント。
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