JP2011140244A - インクジェットプリンタのヘッド駆動装置及びヘッド駆動方法 - Google Patents

インクジェットプリンタのヘッド駆動装置及びヘッド駆動方法 Download PDF

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Abstract

【課題】インク滴を吐出しないノズルに対しても圧電式アクチュエータ駆動後の残留振動を検出して、その残留振動からノズルの状態をリアルタイムに検出可能とする。
【解決手段】インク滴を吐出するための駆動信号COMの前に、インク滴を吐出しないで圧電式アクチュエータ22を駆動する検査用駆動信号COMtestを配置して出力し、印字データSIH及び検査ノズル選択データSILに応じて駆動信号COM及び検査用駆動信号COMtestの何れか又は双方を選択して圧電式アクチュエータ22に供給する。検査用駆動信号COMtestでは、圧電式アクチュエータ22を駆動する際、駆動信号の立上がりでキャビティ23の容積を拡大してインクを引き込み、拡大されたキャビティ23の容積を保持した状態でキャビティ23に発生する残留振動を検出する。残留振動の検出が完了してから拡大されたキャビティの容積をゆっくり縮小する。
【選択図】 図19

Description

本発明は、例えば複数色の液体インクの微小なインク滴を複数のノズルから吐出してその微粒子(インクドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像を描画するようにしたインクジェットプリンタのヘッド駆動装置及びヘッド駆動方法に関するものである。
このようなインクジェットプリンタは、一般に安価で且つ高品質のカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このようなインクジェットプリンタは、一般に、インクカートリッジと印字ヘッドとが一体的に備えられたキャリッジなどと称される移動体が印刷媒体上をその搬送方向と交差する方向に往復しながらその印字ヘッドのノズルから液体インク滴を吐出(噴射)して印刷媒体上に微小なインクドットを形成することで、当該印刷媒体上に所定の文字や画像を描画して所望の印刷物を作成するようになっている。そして、このキャリッジに黒色(ブラック)を含めた4色(イエロー、マゼンタ、シアン)のインクカートリッジと各色毎の印字ヘッドを備えることで、モノクロ印刷のみならず、各色を組み合わせたフルカラー印刷も容易に行えるようになっている(更に、これらの各色に、ライトシアンやライトマゼンタなどを加えた6色や7色、或いは8色のものも実用化されている)。
ところで、この種のインクジェットプリンタでは、印刷媒体上のインクのにじみを防止するために、乾燥し易いインク又はインク成分を採用している。その結果、印字していないときにはインクジェットヘッドのノズルからインクの溶媒成分(水、溶剤、油など)が蒸発してノズル部のインク粘度が上昇し、インク滴の吐出に支障を来すことがある。また、インクジェットヘッドのキャビティ(インク収容部)などに気泡が混入したり、ゴミや紙粉などがノズル面に付着したりした場合にも、インク滴の吐出に支障を来すことがある。このようにして、所謂ノズルが目詰まりしてインク滴を吐出できなくなると、印刷媒体上の画像に所謂ドット抜けが生じ、画質を劣化させる原因となる。
そこで、以下の特許文献1では、アクチュエータである圧電素子を電気信号で駆動してインク室からインク滴を噴射させる装置において、圧電素子を駆動した後に圧電素子に発生する過剰電圧(起電圧)を検出し、その振動の状態からインク室内の気泡の有無、インクの乾燥、紙粉やゴミの付着といったノズルの状態を検出してノズル不具合によるプリントミスなどの誤動作を防止している。
特開平10−114068号公報
しかしながら、前記従来のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置では、印刷動作中にインク滴を吐出するノズルに対してはノズルの状態を検査することができるが、インク滴を吐出しないノズルに対してはノズルの状態を検査することができない。即ち、ノズルの状態を検査するためには、インク滴を吐出させる必要があるので、インク滴を吐出するときまでノズルの状態検査を行うことができない。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、インク滴を吐出しないノズルに対しても圧力室の残留振動からノズルの状態をリアルタイムに検出することが可能なインクジェットプリンタのヘッド駆動装置及びヘッド駆動方法を提供することを目的とするものである。
[発明1]上記課題を解決するために、発明1のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルに夫々連通する圧力室と、各圧力室に対応してインク滴を吐出するために設けられ且つ圧電素子で構成されるアクチュエータとを備えたインクジェットプリンタのノズルヘッドに対し、前記アクチュエータに駆動信号を出力する駆動手段と、前記圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出する残留振動検出回路とを備え、前記駆動手段は、インク滴を吐出する駆動信号の前に、インク滴を吐出させないで前記残留振動を検出するための検査用駆動信号を出力し、前記残留振動検出回路は、前記検査用駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出することを特徴とするものである。
この発明1に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、アクチュエータに駆動信号を出力する駆動手段と、圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出する残留振動検出回路とを備え、駆動手段は、インク滴を吐出する駆動信号の前に、インク滴を吐出させないで残留振動を検出するための検査用駆動信号を出力し、残留振動検出回路は、検査用駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出する構成としたため、インク滴を吐出しないノズルのアクチュエータに対しても検査用駆動信号だけを供給すれば残留振動を検出することができるので、その残留振動からノズルの状態をリアルタイムに検出することが可能となる。
[発明2]発明2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記発明1のインク
ジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記駆動手段は、駆動信号によってインク滴を吐出しないノズルのアクチュエータに対しても前記検査用駆動信号を出力し、前記残留振動検出回路は、インク滴を吐出しないノズルの圧力室に対しても、前記検査用駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出することを特徴とするものである。
この発明2に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、駆動手段は、駆動信号によってインク滴を吐出しないノズルのアクチュエータに対しても検査用駆動信号を出力し、残留振動検出回路は、インク滴を吐出しないノズルの圧力室に対しても、検査用駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出する構成としたため、それらの残留振動から全てのノズルの状態をリアルタイムに検出することができる。
[発明3]発明3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記発明1又は2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記検査用駆動信号の出力及び残留振動の検出を印刷動作中に行うことを特徴とするものである。
この発明3に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、検査用駆動信号の出力及び残留振動の検出を印刷動作中に行う構成としたため、印刷動作中でも残留振動からノズルの状態をリアルタイムに検出することができる。
[発明4]発明4のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記発明1乃至3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、少なくとも一枚の印刷媒体の印刷動作中に、前記検査用駆動信号の出力及び残留振動の検出を全てのノズルに対して行うことを特徴とするものである。
この発明4に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、少なくとも一枚
の印刷媒体の印刷動作中に、検査用駆動信号の出力及び残留振動の検出を全てのノズルに対して行う構成としたため、複数の印刷媒体に対して印刷を繰り返す場合であっても、その残留振動からノズルの状態を常時リアルタイムに検出することができる。
[発明5]発明5のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記発明1乃至4の
インクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記駆動手段は、画像データに基づいて各ノズルのインク滴吐出の有無を設定する印字データ及び各ノズルのうち何れのノズルの圧力室に対して前記残留振動の検出を行うかを設定する検査ノズル選択データに基づいて、時系列的に配置された前記検査用駆動信号及び駆動信号を選択することを特徴とするものである。
この発明5に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、駆動手段は、画像データに基づいて各ノズルのインク滴吐出の有無を設定する印字データ及び各ノズルのうち何れのノズルの圧力室に対して残留振動の検出を行うかを設定する検査ノズル選択データに基づいて、時系列的に配置された検査用駆動信号及び駆動信号を選択する構成としたため、インク滴吐出ノズルと検査対象ノズルとを自在に組合せることが可能となる。また、検査用駆動信号と駆動信号とが時系列的に配置され、そのうち必要なものだけを選択する構成であるから、例えばそれら検査用駆動信号と駆動信号とを各ノズルに対して全て記憶する場合に比べて、記憶容量が遙かに少なくてすむ。
[発明6]発明6のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記発明1乃至5の
インクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記駆動手段は、前記検査用駆動信号に、圧力室の容積を拡大してインクを引き込む第1段階と、前記第1段階に引き続いて圧力室の容積を保持する第2段階と、前記第2段階に引き続いてインク滴を吐出しないで圧力室の容積を縮小する第3段階とを設け、前記残留振動検出回路は、前記検査用駆動信号の第2段階で、前記圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出することを特徴とするものである。
この発明6に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、駆動手段は、検査用駆動信号に、圧力室の容積を拡大してインクを引き込む第1段階と、第1段階に引き続いて圧力室の容積を保持する第2段階と、第2段階に引き続いてインク滴を吐出しないで圧力室の容積を縮小する第3段階とを設け、残留振動検出回路は、検査用駆動信号の第2段階で、圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出する構成としたため、駆動信号の第1段階での圧力室の容積拡大の大きさや速さを大きくすることにより、インク滴を吐出することなく、圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を大きくすることが可能となり、その残留振動を確実に検出することができる。
[発明7]発明7のインクジェットプリンタのヘッド駆動方法は、インク滴を吐出する
複数のノズルと、各ノズルに夫々連通する圧力室と、各圧力室に対応してインク滴を吐出するために設けられ且つ圧電素子で構成されるアクチュエータとを備えたインクジェットプリンタのノズルヘッドに対し、前記アクチュエータに駆動信号を出力し、その駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出するにあたり、インク滴を吐出する駆動信号の前に、インク滴を吐出させないで前記残留振動を検出するための検査用駆動信号を出力し、その検査用駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出することを特徴とするものである。
この発明7に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動方法によれば、インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルに夫々連通する圧力室と、各圧力室に対応してインク滴を吐出するために設けられ且つ圧電素子で構成されるアクチュエータとを備えたインクジェ
ットプリンタのノズルヘッドに対し、アクチュエータに駆動信号を出力し、圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出するにあたり、インク滴を吐出する駆動信号の前に、インク滴を吐出させないで前記残留振動を検出するための検査用駆動信号を出力し、その検査用駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出することとしたため、インク滴を吐出しないノズルのアクチュエータに対しても検査用駆動信号だけを出力すれば残留振動を検出することができるので、その残留振動からノズルの状態をリアルタイムに検出することが可能となる。
本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の一実施形態を示すインクジェットプリンタの平面図である。 図1のインクジェットプリンタのインクジェットヘッドの概略構成図である。 図2のインクジェットヘッドのノズルの説明図である。 図1のインクジェットプリンタに設けられた制御装置のブロック図である。 図4の駆動信号発生回路のブロック図である。 図5の波形メモリの説明図である。 駆動信号生成の説明図である。 残留振動の説明図である。 残留振動検出回路のブロック図である。 残留振動検出のための検査用駆動信号の説明図である。 図10の検査用駆動信号によるメニスカスの説明図である。 駆動信号を圧電式アクチュエータに接続する選択部のブロック図である。 駆動信号を圧電式アクチュエータに供給するための残留振動検出回路との接続状態を示すブロック図である。 図12の駆動波形パターン選択回路のブロック図である。 図12の駆動波形選択回路のブロック図である。 検査用駆動波形と駆動波形の説明図である。 印字データ及び検査ノズル選択データによって選択される検査用駆動信号及び駆動信号の説明図である。 検査対象ノズルの説明図である。 印刷処理のフローチャートである。
次に、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の概略構成を示す平面図である。このインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、ヘッドユニット2及びインクカートリッジ3を搭載したキャリッジ4を備え、このキャリッジ4は1組のキャリッジ軸5に案内されて主走査方向に移動できるようになっている。また、キャリッジ4の一部は歯付きベルト9に固定され、且つ歯付きベルト9は、モータ6の回転軸に固定された駆動プーリ7と従動プーリ8との間に掛け渡されている。
更にキャリッジ4にはエンコーダ10が取付けられ、キャリッジ4の移動方向に沿ってリニアスケール11が設けられている。これにより、エンコーダ10によりキャリッジ4上のヘッドユニット2の位置を検出するようになっている。なお、図1において、符号12はヘッドユニット2とシステムコントローラなどとを電気的に接続するケーブルであり、符号13は、後述するインクジェットヘッドの表面をクリーニングするワイパであり、符号14は、そのインクジェットヘッドのノズル基板(図3参照)のキャッピングを行うキャップである。
このような構成からなるインクジェットプリンタ1では、エンコーダ10の検出信号がモータ制御回路(図示せず)に入力されると、そのモータ制御回路によりモータ6の回転動作が、加速、一定速度、減速、反転、加速、一定速度、減速、反転…といったように制御される。このようなモータ6の動作に伴って、キャリッジ4が主走査方向に往復移動を繰り返し、一定速度の区間が印刷領域に相当するので、その一定速度の際にキャリッジ4に搭載されるヘッドユニット2のノズルから印刷媒体a上にインク滴が吐出される。この結果、印刷媒体aには、そのインク滴からなるインクドットによって所定の文字や画像が記録(印字)される。
次に、図1に示すヘッドユニット2の具体的な構成について、図2a及び図3を参照して説明する。このヘッドユニット2は、図2aに示すようなインクジェットヘッド(ノズルヘッド)20を複数個備え、各インクジェットヘッド20は圧電式アクチュエータを用いたものである。インクジェットヘッド20は、図2aに示すように、振動板21と、この振動板21を変位させる圧電式アクチュエータ22と、内部に液体であるインクが充填され且つ振動板21の変位により内部の圧力が増減されるキャビティ(圧力室)23と、このキャビティ23に連通し且つ当該キャビティ23内の圧力の増減によりインクを液滴として吐出するノズル24とを少なくとも備えている。
更に詳述すると、インクジェットヘッド20は、ノズル24が形成されたノズル基板25と、キャビティ基板26と、振動板21と、複数の圧電素子27を積層した積層型の圧電式アクチュエータ22とを備えている。キャビティ基板26は、図示のように所定形状に形成され、これにより、キャビティ23と、これに連通するリザーバ28とが形成されている。また、リザーバ28は、インク供給チューブ29を介してインクカートリッジ3に接続されている。圧電式アクチュエータ22は、対向して配置される櫛歯状の電極31、32と、その電極31、32の各櫛歯と交互に配置される圧電素子27とからなる。また、圧電式アクチュエータ22は、その一端側が図2aに示すように、中間層30を介して振動板21と接合されている。
このような構成からなる圧電式アクチュエータ22では、第1電極31と第2電極32との間に印可される駆動信号源からの駆動信号により、図2aに矢印で示すように上下方向に伸び縮みするモードを利用している。従って、圧電式アクチュエータ22では、例えば図2aに示すような駆動信号が印加されると、振動板21に変位が生じてキャビティ23内の圧力が変化し、ノズル24からインク滴が吐出されるようになっている。具体的には、後段に詳述するように、キャビティ23の容積を拡大してインクを引き込み、次いでキャビティ23の容積を縮小してインク滴を吐出する。なお、図2aに示すノズル基板26に形成されるインクジェットヘッド20毎のノズル24は、例えば図3に示すように配列されている。この図3の例では、4色のインク(Y:イエロー、M:マゼンダ、C:シアン、K:ブラック)に適用した場合のノズル24の配列パターンを示しており、これらの色の組合せにより所謂フルカラー印刷が可能となる。
このようなインクジェットヘッド20を備えたインクジェットプリンタ1では、インク切れ、気泡の発生、目詰まり(乾燥)、紙粉付着などの原因によって、ノズル24からインク滴が吐出すべきときに吐出しないというインク滴の吐出異常(不吐出)、所謂ドット抜け現象を生じることがある。紙粉とは、木材パルプを原料とする印刷媒体が記録ローラなどと摩擦接触した際に発生し易く、印刷媒体の一部からなり、繊維状又はその集合体のものを意味する。
ここで、圧電式アクチュエータ22の他の例を図2bに示す。図中の符号は、図2aのものを流用している。この圧電式アクチュエータは、一般にユニモルフ型アクチュエータと呼ばれ、圧電素子27を二つの電極31、32で挟んだ簡単な構造であるが、駆動信号を印加することによって、図2aの積層型アクチュエータと同様に、図の上下方向に伸び縮みし、キャビティ23の容積を拡大してインクを引き込み、次いでキャビティ23の容積を縮小してノズル24からインク滴を吐出する。
前記インクジェットプリンタ1内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、例えば図4に示すように、例えばパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データを受取る入力インタフェース部61と、この入力インタフェース部61から入力された印雑データに基づいて印刷処理を実行する例えばマイクロコンピュータで構成される制御部62と、キャリッジモータ41を駆動制御するキャリッジモータドライバ63と、給紙モータ51を駆動制御する給紙モータドライバ64と、インクジェットヘッド20を駆動制御するヘッドドライバ65と、各ドライバ63、64、65の出力信号を外部のキャリッジモータ41、給紙モータ51、インクジェットヘッド20で使用する制御信号に変換して出力すると共に、残留振動検出回路15で検出されたキャビティの残留振動を制御部62に入力する入出力インタフェース67とを備えて構成される。
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)
62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のアプリケーションプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM
(Read-Only Memory)62dとを備えている。この制御部62は、入力インタフェース部61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、この処理データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63〜65に制御信号を出力する。各ドライバ63〜65から制御信号が出力されると、これらが入出力インタフェース部67で駆動信号に変換されてインクジェットヘッド20の複数のノズル24に対応する圧電式アクチュエータ22、キャリッジモータ41、給紙モータ51が夫々作動して、印刷媒体に印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
また、制御部62は、後述する駆動信号を形成するための波形形成用データDATAを後述する波形メモリ701に書込むために、書込みイネーブル信号DENと、書込みクロック信号WCLKと、書込みアドレスデータA0〜A3とを出力して、例えば16ビットの波形形成用データDATAを波形メモリ701に書込むと共に、この波形メモリ701に記憶された波形形成用データDATAを読出すための読出しアドレスデータA0〜A3、波形メモリ701から読出した波形形成用データDATAをラッチするタイミングを設定する第1のクロック信号ACLK、ラッチした波形データを加算するためのタイミングを設定する第2のクロック信号BCLK及びラッチデータをクリアするクリア信号CLERをヘッドドライバ65に出力する。
ヘッドドライバ65は、駆動信号COMを形成する駆動信号発生回路70と、クロック信号SCKを出力する発振回路71とを備えている。駆動信号発生回路70は、図5に示すように、制御部62から入力される駆動信号生成のための波形形成用データDATAを所定のアドレスに対応する記憶素子に記憶する波形メモリ701と、この波形メモリ701から読出された波形形成用データDATAを前述した第1のクロック信号ACLKによってラッチするラッチ回路702と、ラッチ回路702の出力と後述するラッチ回路704から出力される波形生成データWDATAとを加算する加算器703と、この加算器703の加算出力を前述した第2のクロック信号BCLKによってラッチするラッチ回路704と、このラッチ回路704から出力される波形生成データWDATAをアナログ信号に変換するD/A変換器705と、このD/A変換器705から出力されるアナログ信号を電圧増幅する電圧増幅部706と、この電圧増幅部706の出力信号を電流増幅して駆動信号COMを出力する電流増幅部707とを備えている。ここで、ラッチ回路702、704には制御部62から出力されるクリア信号CLERが入力され、このクリア信号CLERがオフ状態となったときに、ラッチデータがクリアされる。
波形メモリ701は、図6に示すように、指示したアドレスに夫々数ビットずつのメモリ素子が配列され、アドレスA0〜A3と共に波形データDATAが記憶される。具体的には、制御部62から指示したアドレスA0〜A3に対して、クロック信号WCLKと共に波形データDATAが入力され、書込みイネーブル信号DENの入力のよってメモリ素子に波形データDATAが記憶される。
インクジェットヘッド20には、入出力インタフェース部67を介して、駆動信号発生回路70で生成された駆動信号COM、印刷データに基づいて吐出するノズルを選択するデータ信号SI、全ノズルにノズル選択データが入力された後、これらのデータにより駆動信号COMとインクジェットヘッド20の圧電式アクチュエータ22とを接続したり圧電式アクチュエータ22を残留振動検出回路15に接続したりさせるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、これらの選択データ信号SIをシリアル信号としてインクジェットヘッド20に送信するためのクロック信号SCKが入力されている。
次に、駆動信号生成の原理について説明する。まず、前述したアドレスA0には単位時
間当たりの電圧変化量として0となる波形データが書込まれている。同様に、アドレスA1には+ΔV1、アドレスA2には−ΔV2、アドレスA3には+ΔV3の波形データが」書込まれている。また、クリア信号CLERによってラッチ回路702、704の保存データがクリアされる。また、駆動信号COMは、所望の波形データによって中間電位(オフセット)まで立上げられている。
この状態から、例えば図7に示すようにアドレスA1の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に+ΔV1のデジタルデータが保存される。保存された+ΔV1のデジタルデータは加算器703を経てラッチ回路704に入力され、このラッチ回路704では、第2クロック信号BCLKの立上がりに同期して加算器703の出力を保存する。加算器703には、ラッチ回路704の出力も入力されるので、ラッチ回路704の出力(COM)は、第2クロック信号BCLKの立上がりのタイミングで+ΔV1ずつ加算される。この例では、時間幅T1の間、アドレスA1の波形データが読込まれ、その結果、+ΔV1のデジタルデータが3倍になるまで加算されている。
次いで、アドレスA0の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に保存されるデジタルデータは0に切替わる。この0のデジタルデータは、前述と同様に、加算器703を経て、第2クロック信号BCLKの立上がりのタイミングで加算されるが、デジタルデータが0であるので、実質的には、それ以前の値が保持される。この例では、時間幅T0の間、駆動信号COMが一定値に保持されている。
次いで、アドレスA2の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に保存されるデジタルデータは−ΔV2に切替わる。この−ΔV2のデジタルデータは、前述と同様に、加算器703を経て、第2クロック信号BCLKの立上がりのタイミングで加算されるが、デジタルデータが−ΔV2であるので、実質的には第2クロック信号に合わせて駆動信号COMは−ΔV2ずつ減算される。この例では、時間幅T2の間、駆動信号COMは、−ΔV2のデジタルデータが6倍になるまで減算されている。
このようにして生成されアナログ変換・電圧電流増幅されて出力された駆動信号COMが、前述した図2aに示すような波形信号になる。このうち駆動信号COMの立上がり部分がキャビティ23の容積を拡大してインクを引き込む(インクの吐出面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動信号COMの立下がり部分がキャビティ23の容積を縮小してインク滴を吐出する(インクの吐出面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階である。ちなみに、駆動信号の波形は、前述からも容易に推察されるように、アドレスA0〜A3に書込まれる波形データ0、+ΔV1、−ΔV2、+ΔV3、第1クロック信号ACLK、第2クロック信号BCLKによって調整可能である。
さて、このようにして各ノズル24に対応する圧電式アクチュエータ22に駆動信号COMを印加すると、その際の圧力変動後、キャビティ23内に残留振動(正確には、図2の振動板21の自由振動)が発生する。この残留振動の状態から各ノズル24の状態(キャビティ23内の状態を含む)を検出することが可能である。例えば図8に示すように、ノズル正常時に比べて、気泡がインクの流路やノズル先端に混入した場合(図の「気泡混入」に該当)には、気泡が混入した分だけインク重量(=イナータンス)が減少すると共に、気泡によりノズル径が大きくなった状態と等価となって音響抵抗が減少し、振動周波数が高くなる特徴がある。また、ノズル部のインクが乾燥した場合(図の「乾燥」に該当)には、インクの粘性が増加することによって音響抵抗が増大し、過減衰になるという特徴がある。また、紙粉やゴミがノズル面に付着した場合(図の「紙粉」に該当)には、紙粉によりノズルからインクが染み出すことによって、振動板から見たインク重量が増加してイナータンスが増加し、またノズルに付着した紙粉の繊維によって音響抵抗が増大し、周期が大きくなる(周波数が低くなる)という特徴がある。
そこで、このような残留振動を検出するための残留振動検出回路15として、例えば図9に示す回路が設けられている。この残留振動検出回路15は、キャビティ23内の圧力変化が圧電式アクチュエータ22に伝達されることを利用して検出するものであり、具体的には圧電式アクチュエータ22の機械的変位によって発生する起電力(起電圧)の変化を検出するものである。この残留振動検出回路15は、圧電式アクチュエータ22のグランド端HGNDを接地又は開放するスイッチ(トランジスタQ)と、圧電式アクチュエータ22に駆動信号COMを印可した後にグランド端HGNDを接地又は開放することで発生する残留振動の交流成分を増幅する交流増幅器16と、増幅された残留振動VaOUTを基準電圧Vref1でパルスPOUTに変換する比較器17と、比較器17のパルスPOUT及びトランジスタQのゲート信号DSELが入力される論理和回路ORとで構成されている。このうち、交流増幅器16は、直流成分を除去するコンデンサCと、基準電圧Vref1の電位を基準として抵抗R1、R2で決まる増幅率で反転増幅する演算器AMPとで構成されている。
本実施形態では、前述のようにインク滴を吐出するための駆動信号COMの前に、残留振動検出のための検査用駆動信号COMtestを出力する。つまり、インク滴を吐出するための駆動信号COMの前に検査用駆動信号COMtestが時系列的に配置され、インク滴を吐出するノズルに対しては駆動信号COMを、また状態を検査するノズルに対しては検査用駆動信号COMtestを夫々選択して圧電式アクチュエータ22に供給する。この検査用駆動信号COMtestは、例えば図10に示すように、残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELをハイレベルにして圧電式アクチュエータ22を駆動信号発生回路70に接続した状態で、駆動信号COMの電圧を増大するキャビティ容積拡大駆動信号COMpullを出力する。この状態を、例えば所定時間T01保持して駆動信号の電圧が所定電位VHまで増大したら、キャビティ23の容積が拡大されて圧力変動が発生しているので、残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELをローレベルにして圧電式アクチュエータ22を残留振動検出回路15に接続し、その状態、つまり拡大されたキャビティ23の容積を保持してキャビティ23、即ち圧電式アクチュエータ22に発生する圧力変動発生後の残留振動を検出する。検出された残留振動は残留振動検出回路15の交流増幅器16で増幅された残留振動VaOUTとなり、比較器17からパルスPOUTが出力されるので、このパルスPOUTを、前述したように、予め記憶しておいた基準値と比較してノズルの状態を検出する。この残留振動検出は、所定時間T02で終了するので、残留振動検出が終了したら、再び残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELをハイレベルにして圧電式アクチュエータ22を駆動信号発生回路70に接続し、例えば所定時間T03後から駆動信号COMの電圧を徐々に減少するキャビティ容積縮小駆動信号COMpushを出力する。この場合は、比較的長い所定時間T04をかけてゆっくり駆動信号COMを減少することで、インク滴がノズルから吐出されないようにすることができる。そして、所定時間T04後、駆動信号COMの電位が初期状態になったら残留振動検出のための演算処理が完了する。なお、キャビティ23の容積を拡大するキャビティ容積拡大駆動信号COMpullが本発明の検査用駆動信号COMtstの第1段階、キャビティ23の容積を保持している段階が第2段階、キャビティ23の容積を縮小するキャビティ容積縮小駆動信号COMpushが第3段階に相当する。また、残留振動検出中に駆動信号発生回路70を圧電式アクチュエータ22から切り離すのは、駆動信号発生回路70のフィードバック機能によってキャビティ23内の残留振動が打ち消されてしまうのを回避するためである。
この残留振動検出時のノズル内のインクのメニスカス(meniscus:液面)の状態を図1
1に示す。初期状態を示す図11aでは、インクのメニスカスはノズル面25より少し後退した位置(図の上方)にある。この状態からキャビティ容積拡大駆動信号COMpullが出力されてキャビティ23の容積が拡大すると、図11bのようにメニスカスはノズル24内に引き込まれ、同時にキャビティ23内に負圧側の圧力変動が発生する。この圧力変動が十分に発生したら拡大されたキャビティ23の容積を保持し、そのときに発生する図11cのようなメニスカスの振動、即ちキャビティ23の残留振動を圧電式アクチュエータ22の起電力変動として検出する。この残留振動検出は、メニスカスを引き込んで検出するので、そのときにノズルからインク滴が吐出する恐れはない。従って、キャビティ23の容積拡大には、原則的に限界がなく、発生する残留振動を大きくすることができ、確実に残留振動を検出することができる。
次に、前記駆動信号発生回路70から出力される駆動信号COMと圧電式アクチュエータ22とを接続する構成について説明する。図12は、駆動信号COMと圧電式アクチュエータ22とを接続する選択部のブロック図である。この選択部は、インク滴を吐出させるべきノズルに対応した圧電式アクチュエータ22を指定する画素データSI(SIH、SIL)及び駆動信号の波形(以下、駆動波形)パターンデータSP(SPa〜SPd)を保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212に保存された画素データSIに基づいて選択すべき駆動波形パターンSPa〜SPdを解読するデコーダ213と、デコーダ213の解読結果に基づいて駆動波形パターンSPa〜SPdを選択する駆動波形パターン選択回路(セレクタ)214と、ラッチ信号LATでクリアされ且つチャンネル信号CHをカウントするカウンタ215と、カウンタ215でカウントされるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CHを解読するデコーダ216と、デコーダ216の解読結果に基づいて駆動波形パターン選択回路214で選択された駆動波形SPa〜SPdの各段階区分SP(1)〜SP(4)の出力タイミングを決定する駆動波形選択回路217と、駆動波形選択回路217の出力をレベル変換し、残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELを出力レベルシフタ218によって構成されている。
シフトレジスタ211には、印刷データとして読込んだ画像データを各ノズル、即ち画素レベルに変換した画素データSI及び駆動波形パターンデータSPが順次入力されると共に、クロック信号CLKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の印字データがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。駆動波形選択回路217から出力された信号は、レベルシフタ218によって残留振動検出回路15のトランジスタQからなるスイッチをオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、駆動波形選択回路218の出力電圧に比べて高い電圧であるため、トランジスタQの動作電圧範囲も高く設定されているためである。そして、トランジスタQのゲート電圧DSELがハイレベルになると、該当するノズルの圧電式アクチュエータ22は駆動信号COMに接続される。残留振動検出回路15と各ノズルに対応して設けられた圧電式アクチュエータ22との具体的な構成を図13に示す。即ち、図13において、各残留振動検出回路15中のトランジスタQのゲート電圧DSELがハイレベルになって回路が接地されると駆動信号COMが圧電式アクチュエータ22に供給される。逆に、各残留振動検出回路15中のトランジスタQのゲート電圧DSELがローレベルになると圧電式アクチュエータ22の起電力が残留振動検出回路15で取出され、パルスPOUTが出力される。なお、図中の符号HGNDは、圧電式アクチュエータ22のグランド端である。
図14には駆動波形パターン選択回路214の構成を、図15には駆動波形選択回路217の構成を示す。共に、4つのアンド回路ANDと1つのオア回路ORとを備えて構成される。例えば、駆動波形パターン選択回路214では、デコーダ213の第1出力がハイレベルにあるときに駆動波形パターンSPaを出力し、デコーダ213の第2出力がハイレベルにあるときに駆動波形パターンSPbを出力し、デコーダ213の第3出力がハイレベルにあるときに駆動波形パターンSPcを出力し、デコーダ213の第4出力がハイレベルにあるときに駆動波形パターンSPdを出力する。また、駆動波形選択回路217では、デコーダ216の第1出力がハイレベルにあるときに選択された駆動波形パターンデータSPの第1段階区分に相当する第1駆動波形SP(1)を出力し、デコーダ216の第2出力がハイレベルにあるときに選択された駆動波形パターンデータSPの第2段階区分に相当する第2駆動波形SP(2)を出力し、デコーダ216の第3出力がハイレベルにあるときに選択された駆動波形パターンデータSPの第3段階区分に相当する第3駆動波形SP(3)を出力し、デコーダ216の第4出力がハイレベルにあるときに選択された駆動波形パターンデータSPの第4段階区分に相当する第4駆動波形SP(4)を出力する。
本実施形態の駆動波形は、前述のように或いは図16に示すように、インク滴を吐出するための駆動信号COMの前に検査用駆動信号COMtestが配置されたものになっている。図12の選択部の出力は残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELであるから、ラッチ信号LAT或いはチャンネル信号CH毎に、圧電式アクチュエータ22を駆動信号COMに接続するか遮断するかが決められる。圧電式アクチュエータ22を駆動信号COMから遮断した際には、圧電式アクチュエータ22は残留振動検出回路15に接続される。即ち、例えば図16において、画像データSIを解読した結果、ラッチ信号LATで残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELがハイレベルである場合には検査用駆動信号COMtestのうちのキャビティ容積拡大駆動信号COMpullが圧電式アクチュエータ22に供給されてキャビティ23の容積が拡大される。同様に、最初のチャンネル信号CHで残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELがローレベルである場合には圧電式アクチュエータ22が残留振動検出回路15に接続されて残留振動が検出、即ちノズルの状態が検査される。また、2番目のチャンネル信号CHで残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELがハイレベルである場合には検査用駆動信号COMtestのうちのキャビティ容積縮小駆動信号COMpushが圧電式アクチュエータ22に供給されてキャビティ23の容積が初期状態に徐々に縮小される。また、3番目のチャンネル信号CHで残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELがハイレベルである場合には駆動信号COMが圧電式アクチュエータ22に供給されてインク滴が吐出される。また、3番目のチャンネル信号CHで残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELがローレベルである場合には駆動信号COMが圧電式アクチュエータ22に供給されないのでインク滴は吐出されない。
これをテーブル化したのが図17である。画素データSIは、インク滴を吐出するか否かの情報に相当する印字データSIHと、ノズルの状態を検査するか否かの情報に相当する検査ノズル選択データSILとからなり、印字データSIHが論理値1のときにインク滴を吐出し、検査ノズル選択データSILが論理値0のときにノズル状態の検査を行うものとした。即ち、画素データSIには、画像データに基づいて各ノズルのインク滴吐出の有無を設定する印字データ及び各ノズルのうち何れのノズルの圧力室に対して前記残留振動の検出を行うかを設定する検査ノズル選択データが包含されている。駆動波形パターンデータSPには、前述したように4つの駆動波形パターンSPa〜SPdがある。また、駆動波形パターンデータSPには、前述した検査用駆動信号のCOMtestのキャビティ容積拡大駆動信号COMpullの所定時間T01に相当する第1駆動波形SP(1)、同じく検査用駆動信号COMtestのキャビティ容積保持所定時間T02に相当する第2駆動波形SP(2)、即ち残留振動検出時間、同じく検査用駆動信号COMtestのキャビティ容積縮小駆動信号COMpushの所定時間T03及び所定時間T04に相当する第3駆動波形SP(3)、インク滴吐出のための駆動波形COMの所定時間T05に相当する第4駆動波形SP(4)の4つの段階区分がある。本実施形態では、駆動波形パターンSPaの第1駆動波形SP(1)を論理値1、第2駆動波形SP(2)を論理値0、第3駆動波形SP(3)を論理値1、第4駆動波形SP(4)を論理値0とし、駆動波形パターンSPbの第1駆動波形SP(1)を論理値1、第2駆動波形SP(2)を論理値1、第3駆動波形SP(3)を論理値1、第4駆動波形SP(4)を論理値0とし、駆動波形パターンSPcの第1駆動波形SP(1)を論理値1、第2駆動波形SP(2)を論理値0、第3駆動波形SP(3)を論理値1、第4駆動波形SP(4)を論理値1とし、駆動波形パターンSPdの第1駆動波形SP(1)を論理値1、第2駆動波形SP(2)を論理値1、第3駆動波形SP(3)を論理値1、第4駆動波形SP(4)を論理値1とした。そして、印字データSIHが論理値0、検査ノズル選択データSILが論理値0のときに駆動波形パターンSPaが選択され、印字データSIHが論理値0、検査ノズル選択データSILが論理値1のときに駆動波形パターンSPbが選択され、印字データSIHが論理値1、検査ノズル選択データSILが論理値0のときに駆動波形パターンSPcが選択され、印字データSIHが論理値1、検査ノズル選択データSILが論理値1のときに駆動波形パターンSPdが選択されるように設定した。
また、カウンタ215では、駆動波形パターンデータSPの4つの段階区分をカウントするためにチャンネル信号CHを2ビットでカウントする。即ち、ラッチ信号LATによってカウント値が0,0にクリアされているときにデコーダ216の出力は駆動波形パターンデータSPの第1段階区分で論理値1となり、第1チャンネル信号CHが読込まれてカウント値が0,1になるとデコーダ216の出力は駆動波形パターンデータSPの第2段階区分で論理値1となり、第2チャンネル信号CHが読込まれてカウント値が1,0になるとデコーダ216の出力は駆動波形パターンデータSPの第3段階区分で論理値1となり、第3チャンネル信号CHが読込まれてカウント値が1,1になるとデコーダ216の出力は駆動波形パターンデータSPの第4段階区分で論理値1となる。このデコーダ216の出力と駆動波形パターンデータSPの組合せによる残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELを印字データSIH、検査ノズル選択データSILで整理すると、印字データSIHが論理値0、検査ノズル選択データSILが論理値0のときには、駆動波形パターンデータSPの第1段階区分でゲート電圧DSELがハイレベル、第2段階区分でローレベル、第3段階区分でハイレベル、第4段階区分でローレベルになるので、残留振動が検出され、インク滴は吐出されない。また、印字データSIHが論理値0、検査ノズル選択データSILが論理値1のときには、駆動波形パターンデータSPの第1段階区分でゲート電圧DSELがハイレベル、第2段階区分でハイレベル、第3段階区分でハイレベル、第4段階区分でローレベルになるので、残留振動は検出されず、インク滴も吐出されない。また、印字データSIHが論理値1、検査ノズル選択データSILが論理値0のときには、駆動波形パターンデータSPの第1段階区分でゲート電圧DSELがハイレベル、第2段階区分でローレベル、第3段階区分でハイレベル、第4段階区分でハイレベルになるので、残留振動が検出され、インク滴も吐出される。また、印字データSIHが論理値1、検査ノズル選択データSILが論理値1のときには、駆動波形パターンデータSPの第1段階区分でゲート電圧DSELがハイレベル、第2段階区分でハイレベル、第3段階区分でハイレベル、第4段階区分でハイレベルになるので、残留振動は検出されず、インク滴は吐出される。このように、印字データSIHと検査ノズル選択データSILの組合せに基づいて残留振動検出のための検査用駆動信号COMtest及びインク滴吐出のための駆動信号COMを適宜選択することにより、インク滴の吐出と残留振動の検出とを自在に設定することが可能となる。また、検査用駆動信号COMtestと駆動信号COMを個々のノズル毎に記憶するのに比べて、遙かに記憶容量が少なくてすむ。なお、本実施形態では、例えば図18aに矢印で示すように、キャリッジ4、即ちインクジェットヘッド20が印刷媒体aの幅方向、即ち主走査方向に1回移動する間に全てのノズルの状態の検査が行われるように検査ノズル選択データSILを設定した。ちなみに、所謂ワンパスによる印刷を可能とするラインヘッド型プリンタでは、例えば図18bに示すように、印刷媒体aが搬送されて印刷が完了する間に全てのノズルの状態の検査が行われるようにしてもよい。
図19は、本実施形態の印刷処理のフローチャートである。この演算処理では、まずステップS1で、画像データに基づく印字データSIHを転送する。
次にステップS2に移行して、検査ノズル選択情報を読込む。この検査ノズル選択情報は、例えば前述した図18aのように検査ノズルを設定する際、例えば印刷媒体aの大きさに応じてどのタイミングでノズル状態を検査するかといった内容を示す。
次にステップSに移行して、ステップS2で読込まれた検査ノズル選択情報に基づいて検査ノズル選択データSILを生成する。
次にステップS4に移行して、印字データSIH、検査ノズル選択データSILからなる画素データSI及び駆動波形パターンデータSPを送信する。
次にステップS5に移行して、残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELをハイレベルにして圧電式アクチュエータ22を駆動信号発生回路70に接続する。
次にステップS6に移行して、検査用駆動信号COMtest及び駆動信号COMを出力する。
次にステップS7に移行して、選択部の作用によって各ノズル毎に、画素データSIによる駆動波形を選択する。
次にステップS8に移行して、現在処理しているノズルが検査対象ノズルであるか否かを判定し、検査対象ノズルである場合にはステップS9に移行し、そうでない場合にはステップS14に移行する。
ステップS9では、検査タイミングであるか否かを判定し、検査タイミングである場合にはステップS10に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS10では、残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELをローレベルにして圧電式アクチュエータ22を残留振動検出回路15に接続してからステップS11に移行する。
ステップS11では、キャビティ容積拡大駆動信号COMpullによって拡大されたキャビティの容積を保持しながら、残留振動検出回路15による残留振動検出処理を行ってからステップS12に移行する。
ステップS12では、ステップS11で行われている残留振動検出処理が終了したか否かを判定し、残留振動検出処理が終了した場合にはステップS13に移行し、そうでない場合にはステップS10に移行する。
ステップS13では、残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELをハイレベルにして圧電式アクチュエータ22を駆動信号発生回路70に接続してからステップS14に移行する。
ステップS14では、検査用駆動信号COMtest及び駆動信号COMの出力が終了したか否かを判定し、検査用駆動信号COMtest及び駆動信号COMの出力が終了した場合にはステップS15に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS15では、全画素データが終了したか否かを判定し、全画素データが終了した場合にはメインプログラムに復帰し、そうでない場合にはステップS1に移行する。
この演算処理によれば、印字処理しているノズルが検査対象ノズルである場合には検査用駆動信号COMtestを選択し、残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELをハイレベルにして圧電式アクチュエータ22を駆動信号発生回路70に接続
した状態で、キャビティ容積拡大駆動信号COMpullを当該ノズルの圧電式アクチュエータ22に供給し、キャビティ23の容積が拡大されて圧力変動が発生したら、残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELをローレベルにして圧電式アクチュエータ22を残留振動検出回路15に接続し、その状態、つまり拡大されたキャビティ23の容積を保持してキャビティ23、即ち圧電式アクチュエータ22に発生する圧力変動発生後の残留振動を検出し、前述したようにしてノズルの状態を検査する。検査が終了したら、残留振動検出回路15のトランジスタQのゲート電圧DSELをローレベルにして圧電式アクチュエータ22を駆動信号発生回路70に接続し、検査したノズルがインク滴を吐出するノズルであれば、この検査に引き続いて駆動信号COMを供給してインク滴を吐出する。
このように、本実施形態のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置及びヘッド駆動方法によれば、インク滴を吐出する複数のノズル24と、各ノズル24に夫々連通するキャビティ23と、各キャビティ23に対応してインク滴を吐出するために設けられ且つ圧電素子27で構成される圧電式アクチュエータ22とを備えたインクジェットプリンタのインクジェットヘッド20に対し、圧電式アクチュエータ22に駆動信号COMを出力し、その駆動信号COMによるキャビティ23内の圧力変化発生後の残留振動を、圧電式アクチュエータ22を構成する圧電素子27の起電力の変化として検出し、その残留振動からノズルの状態を検出するにあたり、インク滴を吐出する駆動信号COMの前に、インク滴を吐出させないで残留振動を検出するための検査用駆動信号COMtestを出力し、この検査用駆動信号COMtestによるキャビティ23内の圧力変化発生後の残留振動を、圧電式アクチュエータ22の起電力の変化として検出することにより、インク滴を吐出しないノズルの圧電式アクチュエータ22に対しても検査用駆動信号COMtestだけを供給すれば残留振動を検出することができるので、その残留振動からノズルの状態をリアルタイムに検出することが可能となる。
また、駆動信号によってインク滴を吐出しないノズルの圧電式アクチュエータ22に対しても検査用駆動信号COMtestを出力し、インク滴を吐出しないノズルのキャビティ23に対しても、検査用駆動信号COMtestによるキャビティ23内の圧力変化発生後の残留振動を、圧電式アクチュエータ22の起電力の変化として検出することにより、それらの残留振動から全てのノズルの状態をリアルタイムに検出することができる。
また、検査用駆動信号COMtestの出力及び残留振動の検出を印刷動作中に行う構成としたため、印刷動作中でもその残留振動からノズルの状態をリアルタイムに検出することができる。
また、少なくとも一枚の印刷媒体aの印刷動作中に、検査用駆動信号COMtestの出力及び残留振動の検出を全てのノズルに対して行うことにより、複数の印刷媒体aに対して印刷を繰り返す場合であっても、その残留振動からノズルの状態を常時リアルタイムに検出することができる。
また、画像データに基づいて各ノズルのインク滴吐出の有無を設定する印字データSIH及び各ノズルのうち何れのノズルのキャビティ23に対して残留振動の検出を行うかを設定する検査ノズル選択データSILに基づいて、時系列的に配置された検査用駆動信号COMtest及び駆動信号COMを選択する構成としたため、インク滴吐出ノズルと検査対象ノズルとを自在に組合せることが可能となる。また、検査用駆動信号COMtestと駆動信号COMとが時系列的に配置され、そのうち必要なものだけを選択する構成であるから、例えばそれら検査用駆動信号と駆動信号とを各ノズルに対して全て記憶する場合に比べて、記憶容量が遙かに少なくてすむ。
また、検査用駆動信号COMtestに、キャビティ23の容積を拡大してインクを引
き込む第1段階、即ちキャビティ容積拡大駆動信号COMpullと、第1段階に引き続いてキャビティ23の容積を保持する第2段階と、第2段階に引き続いてインク滴を吐出しないでキャビティ23の容積を縮小する第3段階、即ちキャビティ容積縮小駆動信号COMpushとを設け、検査用駆動信号COMtestの第2段階で、キャビティ23内の圧力変化発生後の残留振動を検出する構成としたため、キャビティ容積拡大駆動信号COMpullでのキャビティ23の容積拡大の大きさや速さを大きくすることにより、インク滴を吐出することなく、キャビティ23内の圧力変化発生後の残留振動を大きくすることが可能となり、その残留振動を確実に検出することができる。
なお、前記各実施形態では、所謂マルチパス型インクジェットプリンタを対象として本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を適用した例についてのみ詳述したが、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、ラインヘッド型プリンタを始めとして、あらゆるタイプのインクジェットプリンタを対象として適用可能である。
1はインクジェットプリンタ、15は残留振動検出回路、16は交流増幅器、17は比較器、20はインクジェットヘッド、21は振動板、22は圧電式アクチュエータ、23はキャビティ、24はノズル、62は制御部、70は駆動信号発生回路、aは印刷媒体

Claims (7)

  1. インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルに夫々連通する圧力室と、各圧力室に対応してインク滴を吐出するために設けられ且つ圧電素子で構成されるアクチュエータとを備えたインクジェットプリンタのノズルヘッドに対し、前記アクチュエータに駆動信号を出力する駆動手段と、前記圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出する残留振動検出回路とを備え、前記駆動手段は、インク滴を吐出する駆動信号の前に、インク滴を吐出させないで前記残留振動を検出するための検査用駆動信号を出力し、前記残留振動検出回路は、前記検査用駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出することを特徴とするインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
  2. 前記駆動手段は、駆動信号によってインク滴を吐出しないノズルのアクチュエータに対
    しても前記検査用駆動信号を出力し、前記残留振動検出回路は、インク滴を吐出しないノズルの圧力室に対しても、前記検査用駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
  3. 前記検査用駆動信号の出力及び残留振動の検出を印刷動作中に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
  4. 少なくとも一枚の印刷媒体の印刷動作中に、前記検査用駆動信号の出力及び残留振動の検出を全てのノズルに対して行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
  5. 前記駆動手段は、画像データに基づいて各ノズルのインク滴吐出の有無を設定する印字
    データ及び各ノズルのうち何れのノズルの圧力室に対して前記残留振動の検出を行うかを設定する検査ノズル選択データに基づいて、時系列的に配置された前記検査用駆動信号及び駆動信号を選択することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
  6. 前記駆動手段は、前記検査用駆動信号に、圧力室の容積を拡大してインクを引き込む第1段階と、前記第1段階に引き続いて圧力室の容積を保持する第2段階と、前記第2段階に引き続いてインク滴を吐出しないで圧力室の容積を縮小する第3段階とを設け、前記残留振動検出回路は、前記検査用駆動信号の第2段階で、前記圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
  7. インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルに夫々連通する圧力室と、各圧力室に対応してインク滴を吐出するために設けられ且つ圧電素子で構成されるアクチュエータとを備えたインクジェットプリンタのノズルヘッドに対し、前記アクチュエータに駆動信号を出力し、その駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出するにあたり、インク滴を吐出する駆動信号の前に、インク滴を吐出させないで前記残留振動を検出するための検査用駆動信号を出力し、その検査用駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出することを特徴とするインクジェットプリンタのヘッド駆動方法。
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