JP5115620B2 - インクジェットプリンタのヘッド駆動装置、インクジェットプリンタのヘッド駆動方法 - Google Patents

インクジェットプリンタのヘッド駆動装置、インクジェットプリンタのヘッド駆動方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば複数色の液体インク滴を複数のノズルから吐出してその微粒子(ドット)を印刷用紙(記録材)上に出力することにより、所定の文字や画像を描画するようにしたインクジェットプリンタのヘッド駆動装置に関するものである。
このようなインクジェットプリンタは、一般に安価で且つ高品質のカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このようなインクジェットプリンタは、一般に、インクカートリッジと印字ヘッドとが一体的に備えられたキャリッジなどと称される移動体が印刷媒体(記録紙)上をその紙送り方向の左右に往復しながらその印字ヘッドのノズルから液体インク滴子を吐出(噴射)して記録紙上に微小なドットを形成出力することで、当該記録紙上に所定の文字や画像を描画して所望の印刷物を作成するようになっている。そして、このキャリッジに黒色(ブラック)を含めた4色(イエロー、マゼンタ、シアン)のインクカートリッジと各色毎の印字ヘッドを備えることで、モノクロ印刷のみならず、各色を組み合わせたフルカラー印刷も容易に行えるようになっている(更に、これらの各色に、ライトシアンやライトマゼンタなどを加えた6色や7色、或いは8色のものも実用化されている)。
ところで、この種のインクジェットプリンタでは、記録紙上のインクのにじみを防止するために、乾燥し易いインク又はインク成分を採用している。その結果、印字していないときにはインクジェットヘッドのノズルからインクの溶媒成分(水、溶剤、油など)が蒸発してノズル部のインク粘度が上昇し、インク滴の吐出出力に支障を来すことがある。また、インクジェットヘッドのキャビティ(インク収容部)などに気泡が混入したり、ゴミや紙粉などがノズル面に付着したりした場合にも、インク滴の吐出出力に支障を来すことがある。このようにして、所謂ノズルが目詰まりしてインク滴を吐出できなくなると、記録紙上の画像に所謂ドット抜けが生じ、画質を劣化させる原因となる。
そこで、以下の特許文献1では、アクチュエータである圧電素子を電気信号で駆動してインク室からインク滴を噴射させる装置において、圧電素子を駆動した後に圧電素子に発生する過剰電圧(起電圧)を検出し、その振動の状態からインク室内の気泡の有無、インク未充填を検出してノズル不具合によるプリントミスなどの誤動作を防止している。
特開平10−114068号公報
ところで、印字速度の高速化の要求からノズル数を増やす、所謂多ノズル化やノズルヘッドの小型化が推進されており、これに伴って印字アクチュエータとしての圧電素子も小型化されていることから圧電素子の起電圧(起電力)が小さくなっている。そのため、前記圧電素子の負荷インピーダンス変化による振動分(以下、残留振動とも示す)の検出が困難となっている。この残留振動を用いたドット抜け検出は、光学式センサのように直接記録紙上のインクドットを検出するものではなく、残留振動によってノズルヘッド内のノズル流路や圧力室等の状態を推定するものであるため、残留振動の検出が困難になるとドット抜けの誤検出を招くという問題につながる。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、アクチュエータを構成する圧電素子を駆動したときの圧力室の残留振動を的確に検出することが可能なインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を提供することを目的とするものである。
[適用例1]上記課題を解決するために、適用例1のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルに夫々連通する圧力室と、各圧力室に対応して設けられ且つ圧電素子で構成されるアクチュエータと、前記ノズルからインク滴を吐出するために前記アクチュエータに駆動信号を出力する駆動手段と、前記駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出する残留振動検出手段とを備え、前記駆動手段は、第1の駆動信号と、前記第1の駆動信号の後の第2の駆動信号とを出力し、前記第2の駆動信号により発生した圧力室内の圧力変化は、前記第1の駆動信号により発生した圧力室内の圧力変化を増幅し、前記残留振動検出手段は、前記第2の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出する。
[適用例2]適用例2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記残留振動検出手段は、前記第1の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出し、前記第2の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動は、前記第1の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動よりも大きい、適用例1に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
[適用例3]上記課題を解決するために、適用例3のインクジェットプリンタのヘッド駆動方法は、インクジェットプリンタのヘッド駆動方法であって、前記インクジェットプリンタは、インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルに夫々連通する圧力室と、各圧力室に対応して設けられ且つ圧電素子で構成されるアクチュエータと、前記ノズルからインク滴を吐出するために前記アクチュエータに駆動信号を出力する駆動手段と、前記駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出する残留振動検出手段とを備え、前記駆動手段により、第1の駆動信号と、前記第1の駆動信号の後の第2の駆動信号とを出力し、前記第2の駆動信号により発生した圧力室内の圧力変化は、前記第1の駆動信号により発生した圧力室内の圧力変化を増幅し、前記残留振動検出手段により、前記第2の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出する。
[適用例4]適用例4のインクジェットプリンタのヘッド駆動方法は、前記残留振動検出手段により、前記第1の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出し、前記第2の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動は、前記第1の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動よりも大きい、適用例3に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動方法。
実施の形態1]上記課題を解決するために、実施の形態1のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルに夫々連通する圧力室と、各圧力室に対応して設けられ且つ圧電素子で構成されるアクチュエータとを備えたインクジェットプリンタのノズルヘッドに対し、前記ノズルからインク滴を吐出するために前記アクチュエータに駆動信号を出力する駆動手段と、前記駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出する残留振動検出手段とを備え、前記駆動手段は、前記駆動信号に、圧力室の容積を拡大してインクを引き込む第1段階と、圧力室の容積を縮小してインク滴を吐出する第2段階とを設けるものとし、且つ前記第1段階で生じるインク充満状態での圧力室の固有振動が反転する位相に合わせて第2段階を設定することを特徴とするものである。
この実施の形態に言う、圧力室の固有振動が反転する位相とは、例えば圧力室内のインクのメニスカスが圧力室内に引き込まれ、次いでインク滴を吐出する方向に切替わるタイミングを意味する。つまり、圧力室内に発生する固有振動の方向が切替わるタイミングを意味している。
この実施の形態1に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、ノズルからインク滴を吐出するためにアクチュエータに駆動信号を出力する駆動手段と、駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を、アクチュエータを構成する圧電素子の起電力の変化として検出する残留振動検出手段とを備え、駆動手段は、駆動信号に、圧力室の容積を拡大してインクを引き込む第1段階と、圧力室の容積を縮小してインク滴を吐出する第2段階とを設けるものとし、且つ第1段階で生じるインク充満状態での圧力室の固有振動が反転する位相に合わせて第2段階を設定する構成としたため、圧力室の固有振動が駆動信号の第2段階によって打ち消されにくくなり、その結果、当該駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を確保することができるのでそれを的確に検出することが可能となる。
実施の形態2]実施の形態2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記実施の形態1のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記第1段階から第2段階に切替えるまでの時間を、前記インク充満状態での圧力室の固有振動周期の0.4倍以上0.8倍以下としたことを特徴とするものである。
この実施の形態2に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、駆動信号の第1段階から第2段階に切替えるまでの時間、つまり圧力室の容積を拡大してインクを引き込む段階と、圧力室の容積を縮小してインク滴を吐出する段階との間隔を、インク充満状態での圧力室の固有振動周期の0.4倍以上0.8倍以下としたことにより、圧力室の固有振動が確実に打ち消されにくくなり、その結果、駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を確実に確保することができる。
実施の形態3]実施の形態3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記実施の形態1又は2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記駆動手段は、前記残留振動検出手段で1回の残留振動を検出するために、2つ以上の駆動信号を出力することを特徴とするものである。
この実施の形態3に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、1回の残留振動を検出するために、2つ以上の駆動信号を出力することにより、先の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を次の駆動信号によって増幅することが可能となり、その結果、駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を確実に検出することが可能となる。
実施の形態4]実施の形態4のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記実施の形態3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記駆動手段は、先の駆動信号の出力後、メニスカスの振動が圧力室内方向に引き込まれ次いでインク滴吐出方向で最大となるとき又はその近傍で、前記第1段階となる次の駆動信号を出力することを特徴とするものである。
この実施の形態4に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、先の駆動信号の出力後、メニスカスの振動が圧力室内方向に引き込まれ次いでインク滴吐出方向で最大となるとき又はその近傍で、第1段階、つまり圧力室(メニスカス)の振動が圧力室内方向に引き込まれる次の駆動信号を出力する構成としたため、先の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を次の駆動信号によって確実に増幅することが可能となる。
実施の形態5]実施の形態5のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記実施の形態3又は4の何れかのインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、先の駆動信号の出力から次の駆動信号の出力までの時間を、前記アクチュエータを構成する圧電素子の固有振動周期の0.9倍以上1.1倍以下としたことを特徴とするものである。
この実施の形態5に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、先の駆動信号の出力から次の駆動信号の出力までの時間を、アクチュエータを構成する圧電素子の固有振動周期の0.9倍以上1.1倍以下としたことにより、先の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を次の駆動信号によって確実に増幅することが可能となる。
実施の形態6]実施の形態6のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記実施の形態1乃至5の何れかのインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記インク充満状態での圧力室の固有振動周期と前記アクチュエータを構成する圧電素子の固有振動周期とが異なる場合、前記第1段階の時間及び第2段階の時間を、前記圧電素子の固有振動周期又はその近傍に設定することを特徴とするものである。
この実施の形態6のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置によれば、インク充満状態での圧力室の固有振動周期とアクチュエータを構成する圧電素子の固有振動周期とが異なる場合、第1段階の時間及び第2段階の時間、つまり圧力室の容積を拡大してインクを引き込む段階の時間及び圧力室の容積を縮小してインク滴を吐出する段階の時間を、圧電素子の固有振動周期又はその近傍に設定する構成としたため、駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動に圧電素子の固有振動が現れにくくなり、当該駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を的確に検出することが可能となる。

本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の一実施形態を示すインクジェットプリンタの平面図である。 図1のインクジェットプリンタのインクジェットヘッドの概略構成図である。 図2のインクジェットヘッドのノズルの説明図である。 図1のインクジェットプリンタに設けられた制御装置のブロック図である。 図4の駆動信号発生回路のブロック図である。 図5の波形メモリの説明図である。 駆動信号を圧電式アクチュエータに接続する選択部のブロック図である。 駆動信号生成の説明図である。 残留振動の説明図である。 残留振動検出手段のブロック図である。 インクジェットヘッドの等価回路である。 残留振動の説明図である。 残留振動の説明図である。 残留振動の振幅の説明図である。 残留振動の説明図である。 残留振動の説明図である。 残留振動の振幅の説明図である。 残留振動の振幅の説明図である。
次に、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の概略構成を示す平面図である。このインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、ヘッドユニット2及びインクカートリッジ3を搭載したキャリッジ4を備え、このキャリッジ4は1組のキャリッジ軸5に案内されて主走査方向に移動できるようになっている。また、キャリッジ4の一部は歯付きベルト9に固定され、且つ歯付きベルト9は、モータ6の回転軸に固定された駆動プーリ7と従動プーリ8との間に掛け渡されている。
更にキャリッジ4にはエンコーダ10が取付けられ、キャリッジ4の移動方向に沿ってリニアスケール11が設けられている。これにより、エンコーダ10によりキャリッジ4上のヘッドユニット2の位置を検出するようになっている。なお、図1において、符号12はヘッドユニット2とシステムコントローラなどとを電気的に接続するケーブルであり、符号13は、後述するインクジェットヘッドの表面をクリーニングするワイパであり、符号14は、そのインクジェットヘッドのノズル基板(図3参照)のキャッピングを行うキャップである。
このような構成からなるインクジェットプリンタ1では、エンコーダ10の検出信号がモータ制御回路(図示せず)に入力されると、そのモータ制御回路によりモータ6の回転動作が、加速、一定速度、減速、反転、加速、一定速度、減速、反転…といったように制御される。このようなモータ6の動作に伴って、キャリッジ4が主走査方向に往復移動を繰り返し、一定速度の区間が印刷領域に相当するので、その一定速度の際にキャリッジ4に搭載されるヘッドユニット2のノズルから記録紙a上にインク滴が吐出される。この結果、記録紙aには、そのインク滴からなるインクドットによって所定の文字や画像が記録(印字)される。
次に、図1に示すヘッドユニット2の具体的な構成について、図2a及び図3を参照して説明する。このヘッドユニット2は、図2aに示すようなインクジェットヘッド(ノズルヘッド)20を複数個備え、各インクジェットヘッド20は圧電式アクチュエータを用いたものである。インクジェットヘッド20は、図2aに示すように、振動板21と、この振動板21を変位させる圧電式アクチュエータ22と、内部に液体であるインクが充填され且つ振動板21の変位により内部の圧力が増減されるキャビティ(圧力室)23と、このキャビティ23に連通し且つ当該キャビティ23内の圧力の増減によりインクを液的として吐出するノズル24とを少なくとも備えている。
更に詳述すると、インクジェットヘッド20は、ノズル24が形成されたノズル基板25と、キャビティ基板26と、振動板21と、複数の圧電素子27を積層した積層型の圧電式アクチュエータ22とを備えている。キャビティ基板26は、図示のように所定形状に形成され、これにより、キャビティ23と、これに連通するリザーバ28とが形成されている。また、リザーバ28は、インク供給チューブ29を介してインクカートリッジ3に接続されている。圧電式アクチュエータ22は、対向して配置される櫛歯状の電極31、32と、その電極31、32の各櫛歯と交互に配置される圧電素子27とからなる。また、圧電式アクチュエータ22は、その一端側が図2aに示すように、中間層30を介して振動板21と接合されている。
このような構成からなる圧電式アクチュエータ22では、第1電極31と第2電極32との間に印可される駆動信号源からの駆動信号により、図2aに矢印で示すように上下方向に伸び縮みするモードを利用している。従って、圧電式アクチュエータ22では、例えば図2aに示すような駆動信号が印可されると、振動板21に変位が生じてキャビティ23内の圧力が変化し、ノズル24からインク滴が吐出されるようになっている。具体的には、後段に詳述するように、キャビティ23の容積を拡大してインクを引き込み、次いでキャビティ23の容積を縮小してインク滴を吐出する。なお、図2aに示すノズル基板26に形成されるインクジェットヘッド20毎のノズル24は、例えば図3に示すように配列されている。この図3の例では、4色のインク(Y:イエロー、M:マゼンダ、C:シアン、K:ブラック)に適用した場合のノズル24の配列パターンを示しており、これらの色の組合せにより所謂フルカラー印刷が可能となる。
このようなインクジェットヘッド20を備えたインクジェットプリンタ1では、インク切れ、気泡の発生、目詰まり(乾燥)、紙粉付着などの原因によって、ノズル24からインク滴が吐出すべきときに吐出しないというインク滴の吐出異常(不吐出)、所謂ドット抜け現象を生じることがある。ここで、紙粉とは、木材パルプを原料とする記録紙が記録ローラなどと摩擦接触した際に発生し易く、記録紙の一部からなり、繊維状又はその集合体のものを意味する。
ここで、圧電式アクチュエータ22の他の例を図2bに示す。図中の符号は、図2aのものを流用している。この圧電式アクチュエータは、一般にユニモルフ型アクチュエータと呼ばれ、圧電素子27を二つの電極31、32で挟んだ簡単な構造であるが、駆動信号を印可することによって、図2aの積層型アクチュエータと同様に、図の上下方向に伸び縮みし、キャビティ23の容積を拡大してインクを引き込み、次いでキャビティ23の容積を縮小してノズル24からインク滴を吐出する。
前記インクジェットプリンタ1内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、例えば図4に示すように、例えばパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより記録紙に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データを受取る入力インタフェース部61と、この入力インタフェース部61から入力された印雑データに基づいて印刷処理を実行する例えばマイクロコンピュータで構成される制御部62と、キャリッジモータ41を駆動制御するキャリッジモータドライバ63と、給紙モータ51を駆動制御する給紙モータドライバ64と、インクジェットヘッド20を駆動制御するヘッドドライバ65と、各ドライバ63、64、65の出力信号を外部のキャリッジモータ41、給紙モータ51、インクジェットヘッド20で使用する制御信号に変換して出力すると共に、残留振動検出手段15で検出されたキャビティの残留振動を制御部62に入力する入出力インタフェース67とを備えて構成される。
ここで、制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のアプリケーションプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dとを備えている。この制御部62は、入力インタフェース部61を介してホストコンピュータ60から印刷データを入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、この処理データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63〜65に制御信号を出力する。各ドライバ63〜65から制御信号が出力されると、これらが入出力インタフェース部67で駆動信号に変換されてインクジェットヘッド20の複数のノズル24に対応する圧電式アクチュエータ22、キャリッジモータ41、給紙モータ51が夫々作動して、記録紙に印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
また、制御部62は、後述する駆動信号を形成するための波形形成用データDATAを後述する波形メモリ701に書込むために、書込みイネーブル信号DENと、書込みクロック信号WCLKと、書込みアドレスデータA0〜A3とを出力して、例えば16ビットの波形形成用データDATAを波形メモリ701に書込むと共に、この波形メモリ701に記憶された波形形成用データDATAを読出すための読出しアドレスデータA0〜A3、波形メモリ701から読出した波形形成用データDATAをラッチするタイミングを設定する第1のクロック信号ACLK、ラッチした波形データを加算するためのタイミングを設定する第2のクロック信号BCLK及びラッチデータをクリアするクリア信号CLERをヘッドドライバ65に出力する。
ヘッドドライバ65は、駆動信号COMを形成する駆動信号発生回路70と、クロック信号SCKを出力する発振回路71とを備えている。駆動信号発生回路70は、図5に示すように、制御部62から入力される駆動信号生成のための波形形成用データDATAを所定のアドレスに対応する記憶素子に記憶する波形メモリ701と、この波形メモリ701から読出された波形形成用データDATAを前述した第1のクロック信号ACLKによってラッチするラッチ回路702と、ラッチ回路702の出力と後述するラッチ回路704から出力される波形生成データWDATAとを加算する加算器703と、この加算器703の加算出力を前述した第2のクロック信号BCLKによってラッチするラッチ回路704と、このラッチ回路704から出力される波形生成データWDATAをアナログ信号に変換するD/A変換器705と、このD/A変換器705から出力されるアナログ信号を電圧増幅する電圧増幅部706と、この電圧増幅部706の出力信号を電流増幅して駆動信号COMを出力する電流増幅部707とを備えている。ここで、ラッチ回路702、704には制御部62から出力されるクリア信号CLERが入力され、このクリア信号CLERがオフ状態となったときに、ラッチデータがクリアされる。
波形メモリ701は、図6に示すように、指示したアドレスに夫々数ビットずつのメモリ素子が配列され、アドレスA0〜A3と共に波形データDATAが記憶される。具体的には、制御部62から指示したアドレスA0〜A3に対して、クロック信号WCLKと共に波形データDATAが入力され、書込みイネーブル信号DENの入力のよってメモリ素子に波形データDATAが記憶される。
インクジェットヘッド20には、入出力インタフェース部67を介して、駆動信号発生回路70で生成された駆動信号COM、印刷データに基づいて吐出するノズルを選択するデータ信号SI、全ノズルにノズル選択データが入力された後、これらのデータにより駆動信号COMとインクジェットヘッド20の圧電式アクチュエータ22とを接続させるラッチ信号LAT、これらの選択データ信号SIをシリアル信号としてインクジェットヘッド20に送信するためのクロック信号SCKが入力されている。
次に、前記駆動信号発生回路70から出力される駆動信号COMと圧電式アクチュエータ22とを接続する構成について説明する。図7は、駆動信号COMと圧電式アクチュエータ22とを接続する選択部のブロック図である。この選択部は、インク滴を吐出させるべきノズルに対応した圧電式アクチュエータ22を指定するデータを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換するレベルシフタ213と、レベルシフタの出力に応じて駆動信号COMを圧電式アクチュエータ22に接続する選択スイッチ201によって構成されている。
シフトレジスタ211には、印刷データとしてデータ信号SIが順次入力されると共に、クロック信号CLKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の印字データがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であるため、選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。選択スイッチ201は、PチャンネルFETとNチャンネルFETとを組合せたトランスミッションゲートによるアナログスイッチで構成されており、このアナログスイッチを十分に動作させるためにゲート電圧を高い値にレベル変換している。そして、レベルシフタ213によって選択スイッチ201のゲート電圧が印加されたノズルの圧電式アクチュエータ22は駆動信号COMに接続される。また、シフトレジスタ211の印刷データ信号SIがラッチ回路212に保存された後、次の印字情報をシフトレジスタ211に入力し、インク滴の吐出タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電式アクチュエータ22のグランド端である。
次に、駆動信号生成の原理について説明する。まず、前述したアドレスA0には単位時間当たりの電圧変化量として0となる波形データが書込まれている。同様に、アドレスA1には+ΔV1、アドレスA2には−ΔV2、アドレスA3には+ΔV3の波形データが」書込まれている。また、クリア信号CLERによってラッチ回路702、704の保存データがクリアされる。また、駆動信号COMは、所望の波形データによって中間電位(オフセット)まで立上げられている。
この状態から、例えば図8に示すようにアドレスA1の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に+ΔV1のデジタルデータが保存される。保存された+ΔV1のデジタルデータは加算器703を経てラッチ回路704に入力され、このラッチ回路704では、第2クロック信号BCLKの立上がりに同期して加算器703の出力を保存する。加算器703には、ラッチ回路704の出力も入力されるので、ラッチ回路704の出力(COM)は、第2クロック信号BCLKの立上がりのタイミングで+ΔV1ずつ加算される。この例では、時間幅T1の間、アドレスA1の波形データが読込まれ、その結果、+ΔV1のデジタルデータが3倍になるまで加算されている。
次いで、アドレスA0の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に保存されるデジタルデータは0に切替わる。この0のデジタルデータは、前述と同様に、加算器703を経て、第2クロック信号BCLKの立上がりのタイミングで加算されるが、デジタルデータが0であるので、実質的には、それ以前の値が保持される。この例では、時間幅T0の間、駆動信号COMが一定値に保持されている。
次いで、アドレスA2の波形データが読込まれ且つ第1クロック信号ACLKが入力されるとラッチ回路702に保存されるデジタルデータは−ΔV2に切替わる。この−ΔV2のデジタルデータは、前述と同様に、加算器703を経て、第2クロック信号BCLKの立上がりのタイミングで加算されるが、デジタルデータが−ΔV2であるので、実質的には第2クロック信号に合わせて駆動信号COMは−ΔV2ずつ減算される。この例では、時間幅T2の間、駆動信号COMは、−ΔV2のデジタルデータが6倍になるまで減算されている。
このようにして生成されアナログ変換・電圧電流増幅されて出力された駆動信号COMが、前述した図2aに示すような波形信号になる。このうち駆動信号COMの立上がり部分がキャビティ23の容積を拡大してインクを引き込む(インクの吐出面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動信号COMの立下がり部分がキャビティ23の容積を縮小してインク滴を吐出する(インクの吐出面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階である。本実施形態では、前者を第1段階、後者を第2段階と定義する。ちなみに、夫々の段階の時間は、前述からも容易に推察されるように、アドレスA0〜A3に書込まれる波形データ0、+ΔV1、−ΔV2、+ΔV3、第1クロック信号ACLK、第2クロック信号BCLKによって調整可能である。
さて、このようにして各ノズル24に対応する圧電式アクチュエータ22に駆動信号COMを印加し、インク滴が吐出されると、その際の圧力変動後、キャビティ23内に残留振動(正確には、図2の振動板21の自由振動)が発生する。この残留振動の状態から各ノズル24の状態(キャビティ23内の状態を含む)を検出することが可能である。例えば図9に示すように、ノズル正常時に比べて、気泡がインクの流路やノズル先端に混入した場合(図の「気泡混入」に該当)には、気泡が混入した分だけインク重量(=イナータンス)が減少すると共に、気泡によりノズル径が大きくなった状態と等価となって音響抵抗が減少し、振動周波数が高くなる特徴がある。また、ノズル部のインクが乾燥した場合(図の「乾燥」に該当)には、インクの粘性が増加することによって音響抵抗が増大し、過減衰になるという特徴がある。また、紙粉やゴミがノズル面に付着した場合(図の「紙粉」に該当)には、紙粉によりノズルからインクが染み出すことによって、振動板から見たインク重量が増加してイナータンスが増加し、またノズルに付着した紙粉の繊維によって音響抵抗が増大し、周期が大きくなる(周波数が低くなる)という特徴がある。
そこで、このような残留振動を検出するための残留振動検出手段15として、例えば図10に示す回路が設けられている。この残留振動検出手段15は、キャビティ23内の圧力変化が圧電式アクチュエータ22に伝達されることを利用して検出するものであり、具体的には圧電式アクチュエータ22の機械的変位によって発生する起電力(起電圧)の変化を検出するものである。この残留振動検出手段15は、圧電式アクチュエータ22のグランド端HGNDを接地又は開放するスイッチ(トランジスタQ)と、圧電式アクチュエータ22に駆動信号COMを印可した後にグランド端HGNDを接地又は開放することで発生する残留振動の交流成分を増幅する交流増幅器16と、増幅された残留振動VaOUTを基準電圧Vref1でパルスPOUTに変換する比較器17とで構成されている。このうち、交流増幅器16は、直流成分を除去するコンデンサCと、基準電圧Vref1の電位を基準として抵抗R1、R2で決まる増幅率で反転増幅する演算器AMPとで構成されている。
次に、前述した図2a、bの各インクジェットヘッド20について考察する。図11は、インクジェットヘッド、特に残留振動の発生部分の等価回路である。図中の符号は以下の通りである。
Ca:アクチュエータのコンプライアンス(単位圧力あたりの容積変化)
Ma:アクチュエータのイナータンス(質量)
Cn:メニスカスの表面張力によるコンプライアンス
Mn:ノズル流路のイナータンス
Rn:ノズル流路の抵抗
Ms:インク供給路のイナータンス
Rs:インク供給路の抵抗
Cc:インク室のコンプライアンス=Ci+Cv
Ci:インクの圧縮性によるコンプライアンス
Cv:振動板のコンプライアンス
キャビティ(圧力室)の振動モードは下記1式で表れる。
Tc=2π√(M×Cc)
Tcはキャビティ(インク充満状態)の固有振動周期である。Mは、キャビティからみたインク流路のイナータンスであり、ノズル流路のイナータンスMnとインク供給路のイナータンスMsの並列合成イナータンスとなる。
例えば図2aに示す積層型圧電式アクチュエータ22の場合には、厚さの薄い圧電素子27を積層し、縦振動モードで使用しているため、圧電式アクチュエータ22のコンプライアンスは振動板21のコンプライアンスに比べて小さい値(硬い)となる。また、圧電式アクチュエータ22の縦寸法が大きく、イナータンスMaを無視することができないため、圧電式アクチュエータ22の固有振動モードとして、固有振動周期Taで振動する成分が存在し、それはキャビティ23のインクの有無に関係なく圧電式アクチュエータ22の動作によって発生する。一方、図2bのユニモルフ型圧電式アクチュエータ22の場合には、圧電素子27が薄く小さいため、圧電式アクチュエータ22のイナータンスMaを無視することができ、圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Taは凡そインク充満状態でのキャビティ23の固有振動周期Tcと考えることができる。
即ち、図2aの積層型圧電式アクチュエータ22の場合は、キャビティ23の固有振動モードの他に圧電式アクチュエータ22の固有振動モードが含まれており、この圧電式アクチュエータ22の固有振動モードは、キャビティ23の残留振動を検出する際には不要な振動であるため、圧電式アクチュエータ22の固有振動が可及的に表れず且つ安定した残留振動を確保可能な駆動信号COMの設定が必要となる。一方、図2bのユニモルフ型圧電式アクチュエータ22の場合は、圧電式アクチュエータ22の固有振動モードを無視できるため、安定した残留振動を確保可能な駆動振動COMの設定を行う。
図12は、駆動信号COMを1つだけ印加したときの圧電式アクチュエータ22(図では圧電素子)の変位、即ち検出される残留振動、キャビティ23(図では圧力室)の振動を含むメニスカス(インクのノズル吐出面)の振動、駆動信号COMのシミュレーション結果を示す。圧電式アクチュエータ22には図2aの積層型圧電式アクチュエータを用いた。図に太い線で示す波形は、駆動信号立上がりから立下がりまでの時間、即ち第1段階から第2段階までの時間t4をキャビティ23の固有振動周期Tcの約半分に設定した場合のものであり、図に細い線で示す波形は、第1段階から第2段階までの時間t5を約キャビティ23の固有振動周期Tcになるように設定した場合のものである。なお、駆動信号立上がり時間、即ち第1段階時間t1及び駆動信号立下がり時間、即ち第2段階時間t2は、共に圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Taとした。
第1段階から第2段階までの時間t4をキャビティ23の固有振動周期Tcの約半分に設定した場合には、時間t4の間にキャビティ23の容積が拡大されてメニスカス(インク)が引き込まれ、メニスカスの振動(キャビティの振動)が反転する位相で駆動信号COMが切替えられてキャビティ23の容積が縮小されてインクが押し出されているので、インク滴(図では液滴)の吐出速度が大きくなっている。これに対し、第1段階から第2段階までの時間t4を約キャビティ23の固有振動周期Tcになるように設定した場合には、前記時間t4よりも長い時間t5の間に、キャビティ23の容積が拡大されてメニスカス(インク)が引き込まれた後、キャビティ23の容積が縮小している。その結果、駆動信号COMを立下げてキャビティ23の容積を縮小してもメニスカスの振動は十分に加振されない。また、これらの影響を受けて、圧電式アクチュエータ22の変位、即ち残留振動は、第1段階から第2段階までの時間t4をキャビティ23の固有振動周期Tcの約半分に設定した場合の方が、第1段階から第2段階までの時間t4を約キャビティ23の固有振動周期Tcになるように設定した場合よりも大きくなっている。以上より、第1段階から第2段階までの時間をキャビティ23の固有振動周期Tcの半分、つまりメニスカス(キャビティ)の振動が反転する位相に設定すれば残留振動を確保することができ、第1段階から第2段階までの時間をキャビティ23の固有振動周期Tcに設定すれば残留振動を弱めることができる。
図13は、図12の駆動信号COMの保持時間t3を圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Taの0.6倍に保持し、駆動信号COMの立上がり時間、即ち第1段階時間t1及び駆動信号COMの立下がり時間、即ち第2段階時間t2を、夫々圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Taの0.7倍、等倍、1.3倍に変更したときの残留振動(圧電式アクチュエータ22の変位)を測定した結果である。なお、圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Taの0.6倍は、即ちキャビティ23の固有振動周期の約半分、つまりメニスカス(キャビティ)の振動が反転する位相に相当する。同図から明らかなように、第1段階時間t1及び第2段階時間t2を共に圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Taとした場合には、残留振動の振動モードは明らかにキャビティ23の固有振動周期Tcとなっている。一方、第1段階時間t1及び第2段階時間t2を圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Taの0.7倍に設定した場合も、1.3倍に設定した場合も、圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Taを含む振動モードとなっており、キャビティ23の固有振動周期Tcを検出することが困難である。従って、第1段階時間t1、即ちキャビティ23の容積を拡大してインクを引き込む時間、及び第2段階時間t2、即ちキャビティ23の容積を縮小してインクを押し出す(インク滴を吐出する)時間を、共に圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Ta又はその近傍に設定することにより、残留振動に圧電式アクチュエータ22の固有振動が現れにくくなり、残留振動を的確に検出することが可能となる。
図14は、第1段階時間t1及び第2段階時間t2を共に圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Ta一定とし、第1段階後、第2段階までの保持時間t3を変更することにより、第1段階開始から第2段階開始までの時間t4をキャビティ23の固有振動周期Tc以下の領域で種々に変更し、そのとき検出された残留振動の振動周期に発生順に番号を附し、その番号を残留振動の振幅に合わせてプロットしたものである。同図では、第1段階開始から第2段階開始までの時間t4をキャビティ23の固有振動周期Tcの0.7倍にしたとき、振動周期番号が9まで安定した残留振動が検出されている。これに対し、第1段階開始から第2段階開始までの時間t4をキャビティ23の固有振動周期Tcの0.75倍以上にすると、残留振動の振幅が小さくなり、キャビティ23の固有振動周期Tcになるほど減衰が大きくなる。一方、第1段階開始から第2段階開始までの時間t4がキャビティ23の固有振動周期Tcの0.4倍以上の領域では、残留振動の振幅は比較的安定している。また、図15は、図14の残留振動検出結果を、波形として示したものである。同図から明らかなように、第1段階開始から第2段階開始までの時間t4をキャビティ23の固有振動周期Tcの0.7倍にしたとき、最も安定した残留振動が確保されている。以上より、第1段階開始から第2段階開始までの時間t4をキャビティ23の固有振動周期Tcの0.4倍以上0.8倍以下、好ましくは0.65倍以上0.75倍以下に設定することにより、キャビティ23の固有振動が確実に打ち消されにくくなり、その結果、残留振動を確実に確保することができる。
更に、安定した残留振動を確保するための方法として、前述した残留振動確保のための駆動信号COMを複数組み合わせて印加した場合について図16にシミュレートしてみた。圧電式アクチュエータ22は、前述と同じ積層型圧電式アクチュエータである。図に太い線で示す波形は、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6を約キャビティ23の固有振動周期Tcとした場合のものであり、図に細い線で示す波形は、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t7をキャビティ23の固有振動周期Tcの約1.4倍とした場合のものである。なお、駆動波形COMの第1段階時間t1及び第2段階時間t2は圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Ta、第1段階開始から第2段階開始までの時間t4はキャビティ23の固有振動周期Tcの0.7倍にした。
先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6を約キャビティ23の固有振動周期Tcとした場合には、先の駆動信号COMの印加直後から、メニスカス(インク)がキャビティ23内に引き込まれ、その振幅がインク滴吐出方向で最大となる付近で、次の駆動信号COMが印加される。このため、メニスカスが再びキャビティ23内に引き込まれる位相に一致して次の駆動信号COMの第1段階が開始されるので、振動が増幅される。一方、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6を約キャビティ23の固有振動周期Tcとした場合には、先の駆動信号COM後、メニスカスが再びキャビティ23内に引き込まれる位相から遅れて、次の駆動信号COMの第1段階が開始されるので、メニスカスの振幅が小さく、吐出速度が遅くなってインク滴が吐出されていない。従って、圧電式アクチュエータ22の変位、即ち検出された残留振動は、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6を約キャビティ23の固有振動周期Tcとした場合の方が、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6を約キャビティ23の固有振動周期Tcとした場合よりも、ΔVpだけ大きく表れる結果となった。
以上から、1回の残留振動を検出するために、2つ以上の駆動信号COMを出力することにより、先の駆動信号COMによる残留振動を次の駆動信号COMによって増幅することが可能となり、その結果、先の駆動信号COMによる残留振動を確実に検出することが可能となる。また、先の駆動信号COMの出力後、メニスカスの振動がキャビティ23内方向に引き込まれ次いでインク滴吐出方向で最大となるとき又はその近傍で、第1段階、つまりメニスカスの振動がキャビティ23内方向に引き込まれる次の駆動信号COMを出力することにより、先の駆動信号COMによる残留振動を次の駆動信号COMによって確実に増幅することが可能となる。
図17は、第1段階時間t1及び第2段階時間t2を共に圧電式アクチュエータ22の固有振動周期Ta一定とし、且つ第1段階開始から第2段階開始までの時間t4をキャビティ23の固有振動周期Tcの0.7倍一定とし、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6を種々に変更し、そのとき検出された残留振動の振動周期に発生順に番号を附し、その番号を残留振動の振幅に合わせてプロットしたものである。同図では、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6をキャビティ23の固有振動周期Tcの0.9倍、等倍、1.1倍にしたとき、振動周期番号が9まで安定した残留振動が検出されている。これに対し、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6をキャビティ23の固有振動周期Tcの1.3倍としたときには、著しく減衰している。また、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6をキャビティ23の固有振動周期Tcの1.3倍としたときには、周期番号4で残留振動の振幅が急激に小さくなっている。また、図18は、図17の残留振動検出結果を、波形として示したものである。同図から明らかなように、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6をキャビティ23の固有振動周期Tcにしたとき、最も安定した残留振動が確保されている。以上より、先の駆動信号立下がり後から次の駆動信号立上がりまでの時間t6をキャビティ23の固有振動周期Tcの0.9倍以上1.1倍以下とすることにより、先の駆動信号COMによる残留振動を次の駆動信号COMによって確実に増幅することが可能となる。
なお、前記各実施形態では、所謂マルチパス型インクジェットプリンタを対象として本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を適用した例についてのみ詳述したが、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、ラインヘッド型プリンタを始めとして、あらゆるタイプのインクジェットプリンタを対象として適用可能である。
1はインクジェットプリンタ、15は残留振動検出手段、16は交流増幅器、17は比較器、20はインクジェットヘッド、21は振動板、22は圧電式アクチュエータ、23はキャビティ、24はノズル、62は制御部、70は駆動信号発生回路。

Claims (4)

  1. インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルに夫々連通する圧力室と、各圧力室に対応して設けられ且つ圧電素子で構成されるアクチュエータと、前記ノズルからインク滴を吐出するために前記アクチュエータに駆動信号を出力する駆動手段と、前記駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出する残留振動検出手段とを備え、
    前記駆動手段は、第1の駆動信号と、前記第1の駆動信号の後の第2の駆動信号とを出力し、
    前記第2の駆動信号により発生した圧力室内の圧力変化は、前記第1の駆動信号により発生した圧力室内の圧力変化を増幅し、
    前記残留振動検出手段は、前記第2の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出する、インクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
  2. 前記残留振動検出手段は、前記第1の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出し、
    前記第2の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動は、前記第1の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動よりも大きい、請求項1に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
  3. インクジェットプリンタのヘッド駆動方法であって、
    前記インクジェットプリンタは、インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルに夫々連通する圧力室と、各圧力室に対応して設けられ且つ圧電素子で構成されるアクチュエータと、前記ノズルからインク滴を吐出するために前記アクチュエータに駆動信号を出力する駆動手段と、前記駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出する残留振動検出手段とを備え
    記駆動手段により、第1の駆動信号と、前記第1の駆動信号の後の第2の駆動信号を出力し、
    前記第2の駆動信号により発生した圧力室内の圧力変化は、前記第1の駆動信号により発生した圧力室内の圧力変化を増幅し、
    前記残留振動検出手段により、前記第2の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出することを特徴とするインクジェットプリンタのヘッド駆動方法。
  4. 前記残留振動検出手段により、前記第1の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動を検出し、
    前記第2の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動は、前記第1の駆動信号による圧力室内の圧力変化発生後の残留振動よりも大きい、請求項3に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動方法。
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