JP2011138625A - 電極基板及び光電変換素子 - Google Patents

電極基板及び光電変換素子 Download PDF

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Abstract

【課題】集電電極が設けられた光電変換素子用の電極基板とその製造方法及びこの電極基板を用いた光電変換素子において、集電電極を被覆する被覆層のクラックの発生を防止して、十分な耐電解液性を確保する。
【解決手段】透明導電性の基板上に設けられた集電電極と、集電電極の表面を被覆する被覆層と、を備える光電変換素子用の電極基板において、被覆層は、集電電極の表面に塗布されたガラスペースト組成物を焼成した結果物からなるものとし、かつ、ガラスペースト組成物に、基板のガラス転移温度または相転移温度以下で溶融しない材料からなるフィラーを含有させた。
【選択図】図4A

Description

本発明は、光電変換素子用の電極基板、及びこの電極基板を使用した光電変換素子に関する。
近年、環境負荷の小さなクリーンエネルギーとして、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池等の光電変換素子の研究開発が盛んに行われている。太陽電池としては、現在、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池等のシリコン系太陽電池や、シリコンの代わりにテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の化合物半導体を用いた化合物半導体太陽電池などが実用化又は研究開発の対象となっている。しかし、これらの太陽電池を普及させるためには、製造コストが高い、原材料確保が困難である、エネルギーペイバックタイムが長いなどの問題点を克服する必要がある。一方、素子の大面積化や低価格化を指向した有機材料を用いた太陽電池もこれまでに多く提案されているが、変換効率や耐久性が低いという問題があった。
このような状況において、色素によって増感された半導体多孔質体を用いた色素増感型太陽電池が開発されている(例えば、非特許文献1、特許文献1等を参照)。この色素増感型太陽電池として、現在主な研究開発の対象となっているものは、多孔性の酸化チタン薄膜の表面に色素を固定した、所謂グレッツェル・セルと呼ばれるものである。グレッツェル・セルは、ルテニウム錯体色素によって分光増感された酸化チタン多孔質薄膜層を作用電極とし、これに、ヨウ素を主体とする電解質層及び対極を積層した色素増感型の光電変換セルである。このグレッツェル・セルの第一の利点は、酸化チタン等の安価な酸化物半導体を用いるため、安価な光電変換素子を提供できる点にあり、第二の利点は、用いられるルテニウム錯体色素が可視光域に幅広く吸収を有していることから、比較的高い変換効率が得られる点にある。また、この方式の色素増感型太陽電池では、最近、12%を超える変換効率も報告され、シリコン系太陽電池と比較しても十分な実用性が確保されつつある。
ところが、一般的に、太陽電池等の光電変換素子を大面積化しようとした場合には、発生した電流が透明電極等の比較的導電性が低い基材中でジュール熱に変換されてしまい、光電変換効率が低くなってしまう。このような事情に対して、銀や銅などの高導電性の金属配線をグリッド状に形成して集電電極(「グリッド(grid)電極」とも呼ばれる。)とし、電気エネルギーの損失を低減する試みが各種の太陽電池でなされている。ただし、このような集電電極を色素増感型太陽電池に設けようとする場合には、形成した集電電極がヨウ素を含有する電解質溶液によって腐食されてしまうことを防止する必要がある(耐電解液性の確保)。
このような観点から、集電電極を形成した後、集電電極の周囲を低融点のガラス材料で被覆又は保護する技術が提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3を参照)。また、集電電極を被覆する被覆層を複数構造にしたり(例えば、特許文献4を参照)、被覆層を形成せずに集電電極自体を耐電解液性に優れる材料にしたりする(例えば、特許文献5を参照)技術も提案されている。さらに、集電線を被覆する被覆層を形成するガラス材料と基材との線膨張係数の差が少ない材料を用いることによって被覆層にクラック(割れ)が発生しないようにする技術が提案されている(例えば、特許文献6を参照)。
米国特許第4927721号明細書 特開2004−164970号公報 特開2006−261090号公報 特開2006−261089号公報 特開2008−117782号公報 特開2008−177022号公報
B.O’Regan,M.Gratzel著、Nature、353巻、737〜740頁、1991年
しかしながら、特許文献2及び3に記載された技術では、十分な耐電解液性が得られない場合がある、という問題があった。また、特許文献4に記載された技術では、太陽電池のセル構造が複雑になり、特許文献5に記載された技術では、耐電解液性に優れる材料は、抵抗値が高いため、太陽電池の特性の低下に繋がる、という問題もあった。さらに、特許文献6に記載された技術でも、被覆層に使用するガラス材料の焼成後に被覆層に応力が生じてクラックが発生する場合があった。このように、従来は、被覆層へのクラックの発生を防止することができていない、という事情があった。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、集電電極が設けられた光電変換素子用の電極基板及びこの電極基板を用いた光電変換素子において、集電電極を被覆する被覆層のクラックの発生を防止して、十分な耐電解液性を確保することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、被覆層の形成にガラス材料を使用した際のクラック(ガラスの割れ)の発生には、ガラス材料の焼成の際に被覆層に発生する空孔が大きく影響することを見出した。すなわち、ガラス材料の焼成後に被覆層に存在する空孔のサイズが大きい場合には、この空孔を起点として、太陽電池等の光電変換素子の作製時に被覆層にクラックが生じる場合がある。また、本発明者らは、ガラス材料を含むガラスペースト組成物中にフィラーを含有させることにより、ガラス材料の焼成の際に被覆層に大きな空孔が発生することを抑制できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のある観点によれば、透明導電性の基板上に設けられた集電電極と、前記集電電極の表面を被覆する被覆層と、を備える光電変換素子用の電極基板であって、前記被覆層は、前記集電電極の表面に塗布されたガラスペースト組成物を焼成した結果物からなり、前記ガラスペースト組成物は、前記基板のガラス転移温度または相転移温度以下で溶融しない材料からなるフィラーを含有する電極基板が提供される。
ここで、前記電極基板において、前記フィラーは、前記ガラスペースト組成物中に0.1質量%以上50質量%以下含有されることが好ましい。これにより、被覆層への大きな空孔の発生を抑制する効果をさらに向上させることができる。
また、前記電極基板において、前記フィラーは、Al、SiO、TiO及びZnOからなる群より選択される少なくとも1種以上の酸化物を含むことが好ましい。これにより、被覆層への大きな空孔の発生を抑制する効果をさらに向上させることができる。
また、本発明の他の観点によれば、前述した電極基板を有する光電変換素子が提供される。
ここで、前記光電変換素子としては、例えば、色素増感型太陽電池等の太陽電池が挙げられる。
本発明によれば、集電電極が設けられた光電変換素子用の電極基板及びこの電極基板を用いた光電変換素子において、集電電極を被覆する被覆層の形成に用いられるガラスペースト組成物中にフィラーを含有させることにより、被覆層のクラックの発生を防止して、十分な耐電解液性を確保することが可能となる。また、このような電極基板を用いることで、光電変換素子の高効率化及び長寿命化を実現することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る光電変換素子の全体構成を示す説明図である。 同実施形態に係る光電変換素子の作動原理を模式的に示す説明図である。 同実施形態に係る電極基板に設けられた被覆層の構成の一例を示す説明図である。 ガラスペースト組成物中にダストが存在する場合の空孔の発生状況を示す説明図である。 ガラスペースト組成物を過焼成した場合の空孔の発生状況を示す説明図である。 被覆層の表面を金属顕微鏡により観察した写真である。 被覆層の表面をレーザ顕微鏡により観察した写真である。 フィラーの表面を電子顕微鏡により観察した写真である。 本発明の実施例におけるP/L強度試験装置を用いた試験方法の概要を示す説明図である。 本発明の実施例におけるP/L強度試験の結果を示すグラフである。 本発明の実施例及び比較例による光電変換セルの変換効率ηと時間との関係を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(光電変換素子の全体構成)
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の一実施形態に係る光電変換素子の全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子1の全体構成を示す説明図である。図2は、本実施形態に係る光電変換素子1の作動原理を模式的に示す説明図である。なお、以下では、光電変換素子1として、図1に示したようなグレッツェル・セルを有する色素増感型太陽電池を例に挙げて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る光電変換素子1は、2つの基板2(2A,2B)と、2つの電極基板と、光電極3と、対極4と、電解質溶液5と、スペーサ6と、取り出し導線7と、を主に備える。
<基板>
2つの基板2(2A,2B)は、所定の間隔を空けて互いに対向して配置される。この基板2の材質としては、光電変換素子1の外部からの光(太陽光など)の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない透明な材料であれば特に限定はされない。基板2の材質としては、例えば、石英、並ガラス、BK7、鉛ガラス等のガラス基材や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、塩化ビニル等の樹脂基材などが挙げられる。
<電極基板>
本実施形態に係る電極基板は、本実施形態に係る透明導電性の基板の一例としての透明電極10(10A,10B)と、集電電極11と、被覆層12とを主に有し、2つの基板2のうち、少なくとも、外部からの光が入射する側の基板2Aの表面に設けられている。また、光電変換効率向上の観点から、電極基板のシート抵抗(表面抵抗)はできるだけ低い方が好ましく、具体的には20Ω/cm(Ω/sq.)以下であることが好ましい。
ただし、2つの基板2のうち、基板2Aと対向した基板2Bの表面に設けられた電極基板については、必ずしも設ける必要はなく、また、当該電極基板(透明電極10Bを有する電極基板)を設けた場合でも、必ずしも透明である(すなわち、光電変換素子1の外部からの光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない)必要は無い。
透明電極10A,10Bは、互いに対向するように、それぞれ、2つの基板2A,2Bに積層されており、例えば、透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conductive Oxide)を用いて膜状に形成される。TCOとしては、例えば、光電変換素子1の外部からの光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない導電材料なら特に限定されないが、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO(酸化スズ)、FTO(フッ素等がドープされた酸化スズ)、ITO/ATO(アンチモン含有酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の良好な導電性を有する金属酸化物が好適である。
集電電極11は、光電極3を構成する金属酸化物微粒子31(図2を用いて後述するように、光電極3は、無機金属酸化物半導体の微粒子31の表面に多量の増感色素33が連結された構造を有している。)を伝わって電極基板に到達した励起電子を取り出し導線7まで伝達するために、透明電極10の表面に設けられた金属配線である。この集電電極11は、一般に、透明電極10のシート抵抗が高い(概ね10Ω/sq以上)ことから、発生した電流がTCO等の比較的導電性が低い基材中でジュール熱に変換されてしまい、光電変換効率が低くなってしまう現象を防止するために設けられる。このような観点から、集電電極11は、透明電極10と電気的に接続されており、集電電極11を形成する材料としては、Ag、Ag/Pd合金、Cu、Au、Ni、Ti、Co、Cr、Al等の高導電性の金属又は合金が好適である。また、集電電極11の配線パターンとしては、電気エネルギーの損失を低減させることができる形状であれば特に限定されず、格子状、縞状、短冊状、櫛型等の任意の形状とすることができる。
ここで、集電電極11は、上述したように、Ag、Ag/Pd合金、Cu、Au、Ni、Ti、Co、Cr、Al等の金属で形成されているため、ヨウ素(I/I 等)を含有する電解質溶液5によって腐食されてしまうおそれがある。そのため、本実施形態に係る光電変換素子1には、以下に説明する被覆層12を設けている。
被覆層12は、前述したような集電電極11の電解質溶液5による腐食を防止するために、集電電極11の周囲を被覆し、電解質溶液5による腐食から保護する層であり、集電電極11に表面に塗布された低融点のガラスペースト組成物を焼成することにより得られるものである。この被覆層12に用いられるガラスペースト組成物は、ガラスフリット、バインダ樹脂、溶剤及び添加剤等を含むペースト状の組成物である。なお、被覆層12の詳細な説明については後述する。
<光電極>
光電極3は、光電変換素子1において、光電変換機能を有する無機金属酸化物半導体膜として使用されるものであり、多孔質の膜状に形成されている。より詳細には、図1に示すように、光電極3は、電極基板10の表面に、複数のTiO等の無機金属酸化物半導体の微粒子31(以下、単に「金属酸化物微粒子31」と称する。)を積層して形成され、この積層された金属酸化物微粒子31の層の中にナノメートルオーダーの細孔を有する多孔質体(ナノポーラスな膜)となっている。この光電極3は、このように、多数の細孔を有する多孔質体となっていることにより、光電極3の表面積を増加させることができ、多量の増感色素33を金属酸化物微粒子31の表面に連結させることができ(図2参照)、これにより、光電変換素子1が高い光電変換効率を有することができる。
ここで、図2に示すように、光電極3においては、金属酸化物微粒子31の表面に、増感色素33を、連結基35を介して連結することにより、無機金属酸化物半導体が増感された光電極3が得られる。なお、ここでいう「連結」とは、無機金属酸化物半導体と増感色素が化学的に結合または物理的に結合(例えば、吸着等により結合)していることを意味する。従って、ここでいう「連結基」には、化学的な官能基のみならず、アンカー基や吸着基も含まれる。
また、図2には、金属酸化物微粒子31の表面に増感色素33が1つだけ連結された状態が示されているが、図2は単に模式的に示したものであり、光電変換素子1の電気的出力の向上という観点から、金属酸化物微粒子31の表面に連結される増感色素33の数は可能な限り多く、多数の増感色素33が金属酸化物微粒子31の表面のできる限り広い範囲を被覆している状態となることが好ましい。ただし、被覆される増感色素33の数が多くなる場合には、近接する増感色素33同士の相互作用により、励起電子が失括してしまい、電気エネルギーとして取り出せない場合があるため、このような場合には、適当な距離をもって増感色素33が被覆できるように、デオキシコール酸などの共吸着物質を用いればよい。
また、光電極3は、1次粒子の数平均粒径で20nm〜100nm程度の大きさを有する金属酸化物微粒子31が複数層積層された構成を有している。この光電極3の膜厚は、数μmのオーダー(好ましくは、10μm以下)であることが好ましい。光電極3の膜厚が数μmのオーダーよりも薄いと、光電極3を透過する光が多くなり、増感色素33の光励起が不十分となり、有効な光電変換効率が得られないおそれがある。一方、光電極3の膜厚が数μmのオーダーよりも厚いと、光電極3の表面(電解質溶液7に接している側の表面)と導電面(光電極3と電極基板との界面)との距離が長くなるために、発生した励起電子が導電面に有効に伝達されにくくなるため、良好な変換効率が得られにくくなるおそれがある。
次に、本実施形態に係る光電極3に使用可能な金属酸化物微粒子31及び増感色素33について詳細に説明する。
<金属酸化物微粒子>
一般に、無機金属酸化物半導体は、一部の波長域の光について光電変換機能を有しているが、金属酸化物微粒子31の表面に増感色素33を連結することにより、可視光から近赤外光までの領域の光に対する光電変換が可能となる。このような金属酸化物微粒子31として使用できる化合物としては、増感色素33を連結することで光電変換機能が増感されるものであれば特に制限はされないが、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、酸化バナジウム等が挙げられる。ここで、金属酸化物微粒子31の表面が増感色素33によって増感されるためには、無機金属酸化物の伝導帯が増感色素33の光励起準位から電子を受け取りやすい位置に存在していることが好ましい。このような観点から、金属酸化物微粒子31として使用する化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ等が特に好ましい。さらに、価格や環境衛生等の観点から、酸化チタンがさらに好ましい。なお、本実施形態では、金属酸化物微粒子31として、上述した無機金属酸化物のうちの一種を単独で用いてもよく、あるいは、複数種を組み合わせて用いてもよい。
<増感色素>
増感色素33としては、金属酸化物微粒子31が光電変換機能を有していない領域(例えば、可視から近赤外の領域)の光に対して光電変換機能を有しているものであれば特に限定はされないが、例えば、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、及びこれらの誘導体などを用いることができる。
また、増感色素33は、光励起された色素の励起電子を無機金属酸化物の伝導帯に迅速に伝達できるように、その構造中に、連結基35として、金属酸化物微粒子31の表面に連結することが可能な官能基を有していることが好ましい。このような官能基としては、金属酸化物微粒子31の表面に増感色素33を連結し、色素の励起電子を無機金属酸化物の伝導帯に迅速に伝達する機能を有する置換基であれば特に制限はされないが、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、ヒドロキサム酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基などが挙げられる。
<対極>
対極4は、光電変換素子1の正極として機能するものであり、2つの透明電極10A,10Bのうち、光電極3が設けられた透明電極10Aと対向する透明電極10Bの表面に、光電極3と対向するように設けられており、膜状に形成される。すなわち、2つの電極基板(透明電極10)とスペーサ6とにより囲まれた領域内には、対極4が、透明電極10Bの表面に、光電極3と対向するように設けられている。この対極4の表面(光電極3と対向する側)には、導電性を有する金属触媒層が設けられている。対極4の金属触媒層に用いられる導電性の材料としては、例えば、金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、金属酸化物(ITO(インジウムスズ酸化物)、酸化スズ(フッ素等がドープされた物を含む)、酸化亜鉛等)、導電性炭素材料または導電性有機材料などが挙げられる。なお、対極4の膜厚は、特に限定されないが、例えば、5nm〜10μmであることが好ましい。
なお、光電極3が設けられている側の透明電極10A及び対極4には、取り出し導線7が接続されており、透明電極10Aからの取り出し導線7と対極4からの取り出し導線7とが光電変換素子1の外部で接続されることにより、電流回路を形成することができる。
また、透明電極10Aと対極4とは、スペーサ6により所定間隔離隔させられている。このスペーサ6は、透明電極10A及び対極4の外縁部に沿って設けられており、透明電極10Aと対極4との間の空間を封止する役割を有している。このスペーサ6としては、密封性および耐蝕性の高い樹脂を使用することが好ましく、例えば、フィルム状に成形した熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、アイオノマー樹脂、ガラスフリット等を使用することができる。アイオノマー樹脂としては、例えば、三井デュポン・ポリケミカル製のハイラミン(商品名)等が挙げられる。
<電解質溶液>
さらに、透明電極10Aと対極4との間の空間には、スペーサ6により電解質溶液5が封入されている。電解質溶液5は、例えば、電解質、媒体、及び添加物を含んでいる。
ここで、電解質としては、I/I 系、Br/Br 系などのレドックス対等を使用できるが、具体例としては、Iとヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、MgI、CaI、CuI、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等)との混合物、Brと臭化物(LiBr等)との混合物、有機溶融塩化合物などを用いることができるが、この限りではない。また、ここでいう有機溶融塩化合物とは、有機カチオンと無機または有機アニオンからなるイオン対化合物であって、融点が室温以下であるものを指す。
有機溶融塩化合物を構成する有機カチオンの具体例としては、芳香族系カチオン類として、例えば、N−メチル−N’−エチルイミダゾリウムカチオン、N−メチル−N’−n−プロピルイミダゾリウムカチオン、N−メチル−N’−n−ヘキシルイミダゾリウムカチオン等のN−アルキル−N’−アルキルイミダゾリウムカチオン類や、N−ヘキシルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン等のN−アルキルピリジニウムカチオン類などが挙げられる。また、脂肪族カチオン類として、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムカチオン等の脂肪族系カチオン類、N,N−メチルピロリジニウム等の環状脂肪族カチオン類などが挙げられる。
一方、有機溶融塩化合物を構成する無機または有機アニオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、六フッ化リンイオン、四フッ化ホウ素イオン、三フッ化メタンスルホン酸塩、過塩素酸イオン、次塩素酸イオン、塩素酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等の無機アニオン類や、ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド等のアミド系アニオン類もしくはイミド系アニオン類などが挙げられる。
なお、有機溶融塩化合物としては、この他にも、Inorganic Chemistry、35巻、1168〜1178頁、1996年に記載のものなど、公知の化合物を用いることができる。
以上例示したヨウ化物、臭化物等は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。このうち特に、Iとヨウ化物の組み合わせ(例えば、IとLiI)、ピリジニウムヨーダイド、またはイミダゾリウムヨーダイド等を混合した電解質が好ましく用いられるが、これらに限定されることはない。
また、電解質溶液5の濃度は、媒体中にIが0.01〜0.5Mであり、ヨウ化物と臭化物のいずれか一方または双方等(複数種の場合はそれらの混合物)が0.1〜15M以下であることが好ましい。
電解質溶液5に用いられる媒体としては、良好なイオン伝導性を発現できる化合物であることが好ましい。このような媒体のうち液体状のものとしては、例えば、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物や、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類や、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類や、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物や、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物や、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物や、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン極性物質や、水などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、または複数種を組み合わせて用いてもよい。また、固体状(ゲル状を含む)の媒体を用いる目的で、液体状媒体にポリマーを含ませることもできる。この場合、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーを上記液体状媒体中に添加したり、エチレン性不飽和基を有した多官能性モノマーを上記液体状媒体中で重合させたりして、媒体を固体状にすることができる。また、電解質溶液5に用いられる媒体として、室温で液体となる有機・無機イオン対(「イオン性液体」とも称される。)を用いてもよい。電解質溶液5に用いる媒体としてイオン性液体を用いることで、電解質溶液5の蒸発を抑制できるので、光電変換素子1の耐久性をより高めることができる。
なお、電解質溶液5としては、この他に、CuI、CuSCN(これらの化合物は液体状媒体を必要としないp型半導体であり電解質として作用する。)等やNature、395巻、583〜585頁(1998年10月8日)記載の2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレンのような正孔輸送材料などを用いてもよい。
また、電解質溶液5中には、光電変換素子1の耐久性や電気的出力を向上させることを目的として、各種添加物を加えてもよい。例えば、耐久性向上を目的としてヨウ化マグネシウム等の無機塩類を添加してもよいし、電気的出力向上を目的としてt−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等のアミン類や、デオキシコール酸等のステロイド類や、グルコース、グルコサミン、グルクロン酸等の単糖類およびそれらの糖アルコール類や、マルトース等の二糖類や、ラフィノース等の直鎖状オリゴ糖類や、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖類や、ラクトオリゴ糖等の加水分解オリゴ糖類などを添加してもよい。
また、電解質溶液5が封入されている層の厚みは、特に限定されないが、対極4と色素が吸着した光電極3とが直接接触しないような最小の厚みとすることが好ましい。具体的には、0.1〜100μm程度であることが好ましい。
(光電変換素子の作動原理)
次に、図2(必要に応じて図1)を参照しながら、前述した光電変換素子1の作動原理について詳細に説明する。
金属酸化物微粒子31と、その表面に連結基35を介して連結された増感色素33とを含む光電極3においては、図1及び図2に示すように、基板2Aを透過してセル内に入射した光(太陽光)は、金属酸化物微粒子31の表面に連結された増感色素33に吸収される。光を吸収した増感色素33は、電子的な基底状態から、MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)遷移により励起状態となり、増感色素33は、光励起された励起電子を放出し、この励起電子は、連結基35を介して金属酸化物(例えば、TiO)の伝導帯に注入される。その結果、増感色素33は酸化されて酸化状態となる。このとき、増感色素の励起電子の金属酸化物への効率的な注入のためには、増感色素33のエネルギー準位が、金属酸化物(半導体)の伝導帯のエネルギー準位よりも低いことが重要である。
金属酸化物の伝導帯に注入された励起電子は、他の金属酸化物微粒子31を伝わって、電極基板(透明電極10A)に到達し、さらに、取り出し導線7を経由して対極4まで導かれる。一方、励起電子を放出して電子が不足する状態(酸化状態)となった増感色素33は、レドックス対のうちの還元体(例えば、I)の電解質51(Red)から電子を受け取り、基底状態の色素に戻る。増感色素33に電子を供給して酸化体(例えば、I )となった電解質51(Ox)は、対極4へ拡散し、対極4から電子を受け取り、還元体の電解質51(Red)に戻る。なお、電解質51(Ox)が電子を受け取る形態としては、電解質51(Ox)の対極4へ拡散する形態だけでなく、例えば、ホッピング伝導等により、他の電解質51(Red)から電子を受け取る形態であってもよい。
(被覆層の構成)
続いて、図3を参照しながら、本実施形態に係る被覆層12の構成について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る電極基板に設けられた被覆層12の構成の一例を示す説明図である。
図3に示すように、本実施形態に係る電極基板は、透明電極10と、集電電極11と、被覆層12と、を主に有する。また、前述したように、本実施形態に係る被覆層12の形成に用いられるガラスペースト組成物は、ガラスフリット、バインダ樹脂、溶剤及び添加剤等を含むペースト状の組成物である。以下、ガラスペースト組成物の各成分について説明する。
<ガラスフリット>
本実施形態のガラスペースト組成物に用いるガラスフリットとしては、基本的には、SiO骨格、B骨格、P骨格に、融点の制御及び化学的な安定性のために他の金属酸化物が含有されたものを使用でき、例えば、SiO−Bi−MOX系、B−Bi−MOX系、SiO−CaO−Na(K)O−MO系、P−MgO−MOX系(Mは一種以上の金属元素とする)等の低融点ガラスを1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
<バインダ樹脂>
本実施形態のガラスペースト組成物に用いるバインダ樹脂としては、基板2が溶融する温度、言い換えると、基板2の形状が物理的及び化学的に保持されない状態となる温度以下で完全に燃焼され、残物が残らないものを使用できる。この「基板2の形状が物理的及び化学的に保持されない状態となる温度」とは、具体的には、基板2のガラス転移温度または相転移温度(例えば、基板2の材質がTCOである場合には、そのガラス転移温度である600℃程度)等のことを意味する。このようなバインダ樹脂の具体例としては、主に、エチルセルロース(EC)樹脂が挙げられる。また、ガラスペースト組成物に用いるバインダ樹脂の他の例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アクリル(メタクリル)樹脂等が挙げられる。
<溶剤>
本実施形態のガラスペースト組成物に用いる溶剤としては、特に限定されない。ただし、光電変換素子1の製造工程を考慮した場合には、乾燥速度が早すぎる場合には、製造中に乾燥してしまい、固形分の析出などが起こるので好ましくない。このような観点から、本実施形態のガラスペースト組成物に用いる溶剤としては、沸点が150℃以上、より好ましくは180℃以上の溶剤が好ましく、このような溶剤として、例えば、テルペン系の溶剤(テルピネオールなど)やカルビトール系溶剤(ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート)等を使用することができる。
<添加剤>
本実施形態のガラスペースト組成物には、必要に応じてガラスフリットや樹脂の分散性の向上やレオロジーの調整等を目的とした添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば、スクリーン印刷などの工程に適正な粘度の調整や、ガラスフリットの分散性の向上を目的として添加されるポリマー、レオロジー調整の目的で添加される増粘剤、分散性の良いガラスペースト組成物の調製を目的として添加される分散剤等が挙げられる。ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、エチルセルロース(EC)、アクリル(メタクリル)樹脂等が挙げられる。また、増粘剤としては、例えば、エチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレン樹脂などが挙げられる。また、分散剤としては、例えば、硝酸等の酸や、アセチルアセトン、ポリエチレングリコール、トリトンX−100などが挙げられる。
(被覆層のクラックの発生原因)
引き続き図3を参照しながら、被覆層12におけるクラックの発生原因について説明する。
一般に、集電電極11を被覆する被覆層12を、低融点のガラスペースト組成物を焼成させることにより形成した場合、焼成の際に不純物が混入されている場合や、ガラスペースト組成物内にバインダ樹脂が残留していると、これらが焼成時に燃焼されることによって被覆層12内でガスとなって、このガスが、空孔等として被覆層12内に存在することとなる。このような空孔としては、図3(a)に示すように、体積の大きなガスが発生した結果として大きなサイズとなった空孔Bや、小さなサイズの空孔が複数凝集して大きなサイズとなった空孔Bや、小さなサイズの空孔B等の様々な大きさや形状のものが存在する。
本発明者らは、この被覆層12の構成と耐電解液性との関係について鋭意検討した結果、焼成後に被覆層12内に存在する空孔の大きさが、耐電解液性に大きく影響を与えることを見出した。すなわち、図3(a)に示すように、被覆層12内に大きなサイズの空孔B,B等が存在すると、被覆層12にクラックが発生しやすくなり、その部分より集電電極11を腐食したりすることが判明した。
逆に、図3(b)に示すように、被覆層12内に存在する空孔が、小さなサイズの空孔Bのみであれば、被覆層12にクラックが発生することが抑制されるとともに、電解質溶液5が空孔を通って集電電極11を腐食したりすることが抑制される、すなわち、耐電解液性を確保することができる、ということが判明した。
なお、耐電解液性を確保するために、空孔の大きさがどの程度であればよいかについては、被覆層12の厚みによることから、一概にはいえないが、概ね、空孔の最大長さが、被覆層12の厚みの半分以下程度であればよい。なお、本実施形態における空孔の最大長さとは、被覆層12を透明電極10に対して平行な面または垂直な面で切断した場合において、空孔の断面の最も大きい部分の長さ(例えば、空孔の断面が円の場合は直径、空孔の断面が楕円の場合は長径)のことを意味する。
(被覆層中の大きなサイズの空孔の発生原因)
次に、図4A及び図4Bを参照しながら、被覆層12中において、大きなサイズの空孔が発生する原因について、本発明者らが検討した結果を説明する。図4Aは、ガラスペースト組成物中にダストが存在する場合の空孔の発生状況を示す説明図であり、図4Bは、ガラスペースト組成物を過焼成した場合の空孔の発生状況を示す説明図である。
前述したように、本実施形態に係る被覆層12の形成に用いられるガラスペースト組成物は、ガラスフリット121と、このガラスフリット121の結合材としてのバインダ樹脂123と、溶剤(図示せず。)と、添加剤(図示せず。)と、を含むが、多くの場合、図4Aの左上図に示すように、ガラスペースト組成物中には、不純物として、ダスト125等が存在している。本発明者らの検討によれば、このように、ダスト125を含む状態でガラスペースト組成物を焼成すると、焼成時に、残留しているバインダ樹脂123のガス化により発生する気泡がダスト125等の不純物の周辺に集中する傾向にあることがわかった。その結果、近い位置に存在する気泡が集合して巨大化することにより、図4Aの左下図に示すように、ダスト125の周囲に大きな空孔Bが形成されてしまう。ここで、ガラスペースト組成物中に存在するダスト125等の不純物を完全に除去することは一般に困難であり、仮に完全に除去できたとしても、更なるプロセスやコストが必要となるため、生産効率が低下するなどのおそれもある。
また、ガラスペースト組成物に所定の処理を施し、図4Bの左上図に示すように、ダスト125等の不純物を完全に取り除くことができた場合であっても、ガラスペースト組成物の材料のばらつき等による焼成不足を防止するために、プロセスマージンを確保することが好ましい。そのため、ガラスペースト組成物を焼成可能な最低限の焼成条件(焼成温度や焼成時間等)ではなく、十分に焼成を行うために、少し余裕を持った過焼成(高めの焼成温度や長めの焼成時間)の条件とする場合がある。このように、過焼成を行った場合であっても、小さな気泡が周囲に存在する別の気泡と集合して巨大化することにより、図4Bの左下図に示すように、大きな空孔Bが形成されてしまうことがわかった。
(被覆層中の大きなサイズの空孔の発生抑制手段)
そこで、本発明者らは、このようなダスト125の存在や過焼成により発生する大きなサイズの空孔Bの発生を抑制する手段について鋭意検討を行った。その結果、図4Aの右上図や図4Bの右上図に示すように、ガラスペースト組成物中に、所定の微粒子状のフィラー127を添加して分散させた後に、ガラスペースト組成物を焼成することにより、図4Aの右下図や図4Bの右下図に示すように、小さな気泡が集中することなく、分散した状態で存在するフィラー125の周囲に小さな空孔Bを形成させることができる、ということがわかった。
この理由について、本発明者らは以下のように考えている。まず、図4Aの右上図に示すように、ガラスペースト組成物中にダスト125等の不純物が存在する場合には、フィラー127を分散させることにより、ダスト125等の不純物とフィラー127とからなる多数の粒子を、ガラスペースト組成物の全体に分散して存在させることができる。このような状態でガラスペースト組成物を焼成すると、ダスト125等の不純物のみが存在する場合とは異なり、焼成時に発生した気泡が、少数しか存在しない不純物の周囲のみに集中せずに、図4Aの右下図に示すように、少数のダスト125等の不純物と多数存在するフィラー127のそれぞれの周囲に分散されるため、気泡が集合して巨大化することがなく、その結果、大きな空孔Bの発生を抑制することができるものと推測される。
また、図4Bの右上図に示すように、ガラスペースト組成物中に、ダスト125等の不純物が存在しない場合でも、同様に考えられる。すなわち、多数のフィラー127をガラスペースト組成物中に分散して存在させた状態で、ガラスペースト組成物を焼成することにより、図4Bの右下図に示すように、焼成時に発生した気泡が、多数存在するフィラー127のそれぞれの周囲に分散されるため、気泡が集合して巨大化することがなく、その結果、大きな空孔Bの発生を抑制することができるものと推測される。
以上のように、ガラスペースト組成物中にフィラー127を分散した状態で存在させることにより、被覆層12内に大きな空孔Bが発生することを抑制でき、これにより、被覆層12の強度を向上させることができる。従って、本実施形態に係るガラスペースト組成物を用いれば、被覆層12におけるクラックの発生を防止することが可能となり、耐電解液性を確保することができる。また、フィラー127を添加することで被覆層12の強度が上がり、光電変換セルを形成する際、対極4上の集電電極11との接触によるクラックを抑制する効果も期待できる。
(本実施形態で使用可能なフィラー)
続いて、本実施形態に係るガラスペースト組成物に使用可能なフィラーについて詳細に説明する。
<フィラーの定義>
本実施形態で使用するフィラーは、前述した基板2が溶融する温度、言い換えると、基板2の形状が物理的及び化学的に保持されない状態となる温度(具体的には、基板2のガラス転移温度または相転移温度)以下で溶融しない材料からなる。ここで、フィラーが「溶融しない」とは、基板2のガラス転移温度または相転移温度(例えば、基板2の材質がTCOである場合には、そのガラス転移温度である600℃程度)以下で、フィラーの形状が物理的及び化学的に保持されることを意味する。従って、フィラーが、例えば、金属酸化物である場合には、その相転移温度は、基板2のガラス転移温度または相転移温度よりも高く、フィラーが、例えば、ガラス材料である場合には、そのガラス転移温度は、基板2のガラス転移温度または相転移温度よりも高い。
<フィラーの具体例>
前述したようなフィラーの材料、すなわち、基板2のガラス転移温度または相転移温度以下で溶融しない材料としては、Al、SiO、TiO、ZnO、SnO、MgO及びCaOのうちの少なくとも1種以上の酸化物を含むことが好ましい。フィラーとして、前記の酸化物を含むことにより、被覆層12における大きな空孔の発生をより確実に抑制することができる。このような観点から、フィラーの材料としては、Al及びSiOが特に好ましい。
<フィラーの含有量>
また、本実施形態で使用するフィラーは、ガラスペースト組成物中に、0.1質量%以上50質量%以下含有されることが好ましい。フィラーの含有量を0.1質量%以上50質量%以下とすることにより、被覆層12における大きな空孔の発生の抑制(ガラスペースト組成物の焼成時における気泡の集中の抑制)を効果的に実現することができる。一方、フィラーの添加量が0.1質量%未満であると、前記の大きな空孔の発生の抑制効果が不十分となる場合があり、フィラーの添加量が50質量%を超えると、フィラーの添加量が多いことから、一のフィラー粒子の近傍に他のフィラー粒子が存在することとなるが、フィラー粒子とガラス成分との界面が電解液の流路となり、さらに、電解液は、近傍に位置する他のフィラー粒子とガラス成分との界面を伝わり、集電電極まで達するおそれがある。また、複数のフィラー粒子が凝集して大きな塊となり、このフィラーの塊を起点として、被覆層12にクラックが生じる可能性もある。
また、被覆層12における大きな空孔の発生の抑制効果をさらに向上させるという観点からは、フィラーのガラスペースト組成物中における添加量は、より好ましくは、0.1質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは、0.1質量%以上10質量%以下である。
<フィラーの粒径>
また、本実施形態で使用するフィラーは、粒径が小さ過ぎると、ガラスペースト組成物中に分散し難くなり、フィラーの分散性を向上させるために、ガラスペースト組成物中に分散助剤等の添加剤をさらに含有させたり、分散時間が長く必要になったりして、量産性の低下が生じる場合がある。一方、フィラーの粒径が被覆層12の厚みに対して大き過ぎると、フィラーの周囲における被覆層12の厚みが相対的に減少して被覆層12の強度が低下するため、フィラーの周囲を起点として被覆層12のクラックが発生するおそれがある。このような観点から、フィラーの粒径は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。なお、フィラーの分散性向上のための分散助剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド、ポリグリセリン酸脂肪エステル、特殊脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等を使用できる。
また、本実施形態におけるフィラーの粒径は、いわゆる50%粒径(「メジアン径」とも呼ばれる。)D50を用いた代表径として表される。また、フィラーの粒径D50は、例えば、標準篩いによる篩い分け等により測定された粒度の個数分布に基づいて、粗粒と細粒とをちょうど50%ずつに分割する粒径として求めることができる。
(光電変換素子の製造方法について)
以上、本発明の一実施形態に係る光電変換素子1の構成について詳細に説明した。続いて、前述した構成を有する本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法について詳細に説明する。
<正極の作製>
まず、前述した基板2(ガラス基板や透明樹脂基板等)の表面に、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO(酸化スズ)、FTO(フッ素等がドープされた酸化スズ)、ITO/ATO(アンチモン含有酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)等のTCOをスパッタリング法等により塗布し、透明電極10を形成する。
次いで、透明電極10上に、Ag、Ag/Pd、Cu、Au、Ni、Ti、Co、Cr、Al等の高導電性の金属又は合金、樹脂、溶剤等を含むペースト組成物を、光電変換効率が最も良くなる構造(例えば、櫛型状)となるように塗布する。上記金属又は合金の塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサーによる塗布、インクジェット印刷、メタルマスク法等が挙げられる。さらに、塗布したペースト組成物を溶剤が消失する温度(80℃〜200℃程度)にて乾燥後、樹脂が消失し、且つ、上記の金属が焼結する温度(400℃〜600℃程度)にて焼成し、集電電極11を形成する。
次に、集電電極11の表面を覆うように被覆層12を形成する。具体的には、前述したガラスフリット、これを結着させるバインダ樹脂、必要に応じて添加する添加剤を、水または適当な溶剤中に分散させたガラスペースト組成物を調製する。このとき、ガラスペースト組成物には、後述するような方法で前述したフィラーを添加して分散させる。次いで、調製したガラスペースト組成物を、取り出し導線7が接続された部分(取り出し部)を除いた集電電極11の全体を覆うように塗布する。上記ガラスペースト組成物の塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサーによる塗布、インクジェット印刷等が挙げられる。ただし、被覆層12は導電性が低い材料で形成されているため、光電変換効率を向上させるという観点から、被覆層12が、集電電極11を十分に覆いつつ、且つ、なるべく被覆面積が小さくなるように、ガラスペースト組成物を塗布することが好ましい。さらに、塗布したガラスペースト組成物を溶剤が消失する温度(80℃〜200℃程度)にて乾燥後、バインダ樹脂が消失し、且つ、ガラスフリットが焼結する温度(ガラスフリットのガラス軟化点(400℃〜600℃程度)以上の温度)にて焼成し、被覆層12を形成する。
ここで、本実施形態におけるガラスペースト組成物の調製方法、特に、フィラーの添加方法の詳細について説明する。
ガラスペースト組成物は、例えば、初めに、ビヒクル成分(バインダ樹脂、溶剤、添加剤等)を混合しておき、ここに、粉状成分(ガラスフリット等)を添加して、三本ロールミル等を用いて粉状成分をビヒクル成分に分散させることにより調製される。このとき、粉状成分側にフィラーを添加してガラスフリットと混合しておき、ガラスフリットとフィラーとを含む粉状成分をビヒクル成分に分散させることにより、本実施形態に係るガラスペースト組成物を調製することができる。ただし、フィラーの添加は、ガラスフリットをビヒクル成分と混合する前である必要は無く、ガラスフリットをビヒクル成分に混合(さらには分散)させた後に、ビヒクル成分にガラスフリットが混合された組成物中にフィラーを添加してもよい。この場合、フィラーの添加後に三本ロールミル等を用いてフィラーを分散させる。
このように、フィラーの添加のタイミングは特に限定されず、本実施形態に係るガラスペースト組成物中の全ての成分を混合した後に、三本ロールミルまたはこれに準ずる機械的な分散方法を用いて、ガラスフリットとフィラーを分散させることができる方法であれば、特に問題はない。
なお、三本ロールミルとは、それぞれ回転数及び回転方向が異なる3本のロール(主に、セラミック製)を有する分散機の一種である。この三本ロールミルによれば、回転速度及び回転方向の異なる3本のロールの間にビヒクルを通すことで、ガラスフリットやフィラーなどの粉状成分(固形分)をビヒクルに分散させることができる。
以上のようにして被覆層12を形成した後に、電極基板の表面の有効面積(光電変換が可能な領域の面積)全体に、金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、金属酸化物(ITO(インジウムスズ酸化物)、酸化スズ(フッ素等がドープされた物を含む)、酸化亜鉛等)、導電性炭素材料または導電性有機材料などをスパッタリング法等の公知の方法により処理し、対極4を形成する。
以上のようにして、正極を作製することができる。
<負極の作製>
次に、負極については、まず、正極の場合と同様にして、基板2の表面に、透明電極10、集電電極11及び被覆層12を含む電極基板を形成する。
次に、TiO等の金属酸化物微粒子31(好ましくは、ナノメートルオーダーの粒径を有するもの)、及び、これを結着させるためのバインダ樹脂を、水または適当な有機溶剤中に分散させたペースト組成物を調製する。次いで、調製したペースト組成物を、電極基板の表面に有効面積(光電変換が可能な領域の面積)全体に塗布する。上記ペースト組成物の塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサーによる塗布、スピンコーティング、スキージを用いた塗布、ディップコーティング、吹き付けによる塗布、ダイコーティング、インクジェット印刷等が挙げられる。次に、塗布したペースト組成物を溶剤が消失する温度(80℃〜200℃程度)にて乾燥後、バインダ樹脂が消失し、且つ、金属酸化物微粒子が焼結する温度(400℃〜600℃程度)にて焼成し、金属酸化物半導体膜を形成する。
さらに、得られた金属酸化物半導体膜を基板2及び電極基板ごと、増感色素33を溶解させた溶液(例えば、ルテニウム錯体系色素のエタノール溶液)中に数時間浸漬させることにより、金属酸化物微粒子31の表面と増感色素33の連結基35との親和性を利用して、金属酸化物微粒子31の表面に増感色素33を結合させる。最後に、溶剤が消失する温度(40℃〜100℃程度)にて増感色素33が結合した金属酸化物半導体膜を乾燥させ、光電極3を形成する。なお、増感色素33を金属酸化物微粒子31の表面に結合させる方法は、上記の方法には限られない。
<正極と負極の接合>
以上のようにして作製した正極と負極とを対面させ、それぞれの基板2の周縁部にスペーサ6(例えば、三井デュポン・ポリケミカル製のハイミラン(商品名)等のアイオノマー樹脂)を配置し、120℃程度の温度で正極と負極とを熱融着させる。次いで、電解質溶液5(例えば、LiIとIとを溶解したアセトニトリル電解質溶液)を電解液の注入口から注入し、セル全体に行き渡らせ、光電変換素子1を得ることができる。
なお、光電変換素子1は、必要に応じて、複数の光電変換素子1を連結させるなどして組み合わせてもよい。例えば、複数の光電変換素子1を直列に組み合わせることによって、全体としての起電圧を高くすることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態では、光電変換機能を有し、表面に増感色素が連結されて増感される無機半導体微粒子として、金属酸化物微粒子31を例に挙げて説明したが、本発明に係る無機半導体微粒子としては、金属酸化物微粒子31には限られず、例えば、金属酸化物ではない無機半導体微粒子であってもよい。このような金属酸化物ではない無機半導体微粒子として使用できる化合物の例としては、シリコン、ゲルマニウム、III族−V族系半導体、金属カルコゲニド等が挙げられる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
本実施例では、被覆層の電解質溶液に対する耐久性(耐電解液性)の評価、フィラー粒径の空孔の発生に与える影響の調査、被覆層の機械的強度及び色素増感型太陽電池としての性能(光電変換効率)の評価を行った。
(電解質溶液に対する耐久性の評価)
まず、被覆層の電解質溶液に対する耐久性の評価を行った。
<集電電極の形成>
フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO、112mm×106mm×1mm厚)上にAgペースト(田中貴金属社製MH1085)を厚み10μm、幅0.5mm×長さ100mmの16本のラインを有するストライプ状となるようにスクリーン印刷法を用いてパターニングし、集電電極を形成した。
<ガラスペースト組成物の調製>
エチルセルロース樹脂(消失温度400℃、)を5g、ガラスフリット(B−SiO−Bi系、ガラス軟化点Ts:475℃)を60g、テルピネオール(関東化学製)を30g、ブチルカルビトールアセテート(関東化学社製)5g、さらに、表1に示す種類のフィラーを表1に示す量だけ混合した後、3本ロールミキサーで十分に分散してガラスペースト組成物を得た。なお、表1に示したフィラーの添加量は、エチルセルロース樹脂、ガラスフリット、テルピネオール及びブチルカルビトールアセテートの合計の質量を100質量部とした場合の、フィラーの質量部で表されている。
<被覆層の形成>
得られたガラスペースト組成物を用いて、集電電極が完全に被覆されるように幅1mmのストライプ状となるようにスクリーン印刷法によりパターン形成した。次いで、150℃のオーブンでガラスペースト組成物中の溶剤を乾燥除去した後、空気雰囲気下、500℃の焼成温度で30分間焼成してバインダ樹脂成分を消失させ、被覆層を形成した。なお、本実施例において、焼成温度とは、焼成時におけるガラスペースト組成物の最高到達温度をいう。
<評価用セルの作製>
上述のようにして得られた集電電極が形成された各ガラス基板と、FTOガラス基板とをホットメルト樹脂「ハイミラン(厚み120μm)を用いて熱圧着し、予め開けておいた電解液注入口から電解質溶液を注入し、その後、注入口をHimilan及びガラスカバーを用いて封止し、評価用のセルを作製した。
<耐電解液性の評価>
作製した評価用セルを、85℃で864時間放置し、その後の集電電極と被覆層の様子を観察した。実施例1〜16及び比較例1のセルについて顕微鏡観察を行い、エラー箇所の数を調査した結果を表1に示す。なお、「エラー箇所の数」とは、被覆層に発生したクラックにより集電電極がダメージを受けた箇所の数のことを意味している。
上記表1に示すように、フィラーを添加した実施例1〜16のセルでは、フィラーを添加しなかった比較例1のセルと比較して、エラー箇所の数が顕著に少ない結果となった。このことから、フィラーを添加したガラスペースト組成物を用いて被覆層を形成した場合には、フィラーにより気泡が分散される結果、大きな空孔の発生が抑制され、被覆層へのクラックの発生を抑制できることが示唆された。
また、フィラーの種類に着目すると、本評価で用いた4種類のフィラーのうち、Al及びSiOが特に、被覆層へのクラックの発生の抑制効果が高いという結果が得られた。
さらに、フィラーの添加量に着目すると、0.1質量%以上20質量%以下の範囲で良好な結果が得られており、0.1質量%以上10質量%以下であるとさらに好ましい、という結果が得られた。
(フィラー粒径の空孔の発生に与える影響)
次に、フィラーの粒径を変えたときの被覆層におけるフィラーの分散状況及び空孔の発生状況を調査した。具体的には、粒径の異なる複数のフィラーのサンプルを用意し、それぞれを同量ずつ添加したガラスペースト組成物を用いて、前述した方法と同様にして被覆層を形成し、形成された被覆層の表面を金属顕微鏡またはレーザ顕微鏡で観察した。その結果を図5及び図6に示す。図5は、被覆層の表面を金属顕微鏡により観察した写真であり、図6は、被覆層の表面をレーザ顕微鏡により観察した写真である。なお、図5及び図6には、使用したフィラーの種類、50%粒径及び添加量(%は質量基準)を順に示してある。また、図7には、参考までに、フィラー自体の表面を電子顕微鏡により観察した写真を示している。
図5及び図6に示すように、フィラーが、いずれの種類、粒径及び添加量であっても、全般的に、あまり大きな空孔は形成されておらず、フィラーを添加することにより、大きな空孔の発生を抑制できることがわかる。ただし、粒径の比較的小さなフィラーを用いた図5(a)、(c)及び図6(a)、(c)の被覆層と、粒径の比較的大きなフィラーを用いた図5(b)、(d)及び図6(b)の被覆層とを比較すると、粒径の比較的小さなフィラーを用いた被覆層の方が、ややフィラーの分散がやや不足しているか、あるいは、大きな空孔の数が比較的多く発生している傾向にあった。
(被覆層の機械的強度の評価)
次に、被覆層の機械的強度の評価を行った。本実施例では、被覆層の機械的強度を、P/L強度試験により評価した。以下、詳細を説明する。
<P/L強度試験の方法>
まず、図8を参照しながら、本実施例におけるP/L強度試験の方法について説明する。図8は、本実施例におけるP/L強度試験装置を用いた試験方法の概要を示す説明図であり、図8(b)は、図8(a)の破線で囲んだA部の拡大図である。
図8(a)に示すように、P/L強度試験装置60は、測定基板61上に載置されたサンプルである(透明電極10上に形成された)被覆層12に、圧子63を接触させた後に、圧子63をサンプル表面に対してさらに押し込み、圧子63の変位(押し込み距離)と、そのときにサンプルにかかっている圧縮力を測定する装置である。本実施例における試験では、圧子63として、50μmの径を有する円錐状の形状を有し、ストローク(移動可能距離)が最大100μmであり、最大圧縮強度が4000mNのものを用いた。
このようなP/L強度試験装置60を用いて、測定基板61上に載置した被覆層12のP/L強度を測定する際には、まず、測定基板61にサンプルである被覆層12を設置し、被覆層12が設置された場所の上に圧子63を移動させる。このときの圧子63の位置決めは、例えば、圧子63の近傍に設けられた対物レンズ(図示せず。)等を用いて行うことができる。
次に、圧子63をサンプルである被覆層12の表面に向けて鉛直方向に下降させ、図8(b)に示すように、被覆層12の表面と接触させる。このときの圧子63の位置を0(ゼロ)点位置とする。さらに、圧子63を鉛直方向に下降させると、被覆層12の表面が圧子63により圧縮され押し込まれる。P/L強度試験装置60は、このように、被覆層12の表面が圧子63により圧縮されているときの圧子63の変位(圧子63の0点位置からの下降距離)ΔZ[μm]と、このときに被覆層12にかかっている圧縮力(mN)を測定する。以上のような試験方法により、ガラス基板(参考)、フィラーを添加していない被覆層(比較例)、フィラーとしてSiOを10質量%添加した被覆層(実施例)、フィラーとしてAlを10質量%添加した被覆層(実施例)、及びフィラーとしてTiOを10質量%添加した被覆層(実施例)について、圧子63の変位ΔZ[μm]と、そのときの圧縮力(mN)との関係を求めた。
<P/L強度試験の結果>
以上のP/L強度試験の結果を図9に示す。図9は、本実施例におけるP/L強度試験の結果を示すグラフである。
図9に示すように、本発明の実施例であるフィラーとしてSiO、Al、TiOをそれぞれ10質量%添加した3種類の被覆層については、ガラス基板とほぼ同等レベルの強度を示した。一方、本発明の比較例であるフィラーを添加していない被覆層については、ガラス基板や各実施例の被覆層と比較して、大きく強度が劣っていた。
以上の結果から、各実施例の被覆層においては、フィラーを添加したことにより、空孔がフィラーの周囲に分散して形成されたことにより、大きな空孔の発生が抑制されることと、被覆層自体の強度も向上したことで、対極との接触によるクラック発生を抑制でき、エラー箇所の数を抑制することができたものと考えられる。一方、比較例の被覆層においては、フィラーを添加していないため、ダスト等の不純物の周囲に空孔が集中して凝集した結果、大きな空孔が発生し、この大きな空孔を起点として被覆層にクラックが生じ、エラー(集電電極の腐食)が発生したと考えられる。
(色素増感型太陽電池としての性能評価)
次に、実施例3、実施例8及び比較例1の被覆層が形成された電極基板を用いて色素増感型太陽電池セルを作成し、このセルの光電変換効率ηを評価した。
<対極>
実施例3、実施例8及び比較例1の被覆層が形成された電極基板に、スパッタリング法により白金層(白金電極層)(厚み150nm)を積層したものを用いた。
<光電極(酸化チタン電極)用ペースト組成物の調製>
次に、光電極用ペースト組成物を作製した。具体的には、酸化チタン微粒子(日本アエロジル社製P−25)3g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤(和光純薬製ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)0.3gをテルピネオール7.0gと共にビーズミル処理により12時間分散を施した。さらに、バインダ樹脂としてエチルセルロース樹脂1.0gを加えてペースト組成物を作製した。ペースト組成物のShear rate 10sec−1での粘度は、例えばスクリーン印刷を行うことが可能な程度に十分な粘度を有するものであった。
<酸化チタン電極の作製>
次に、酸化チタン微粒子を含む酸化チタン電極を作製した。具体的には、実施例3、実施例8及び比較例1の被覆層が形成された電極基板の導電面に、前述したようにして作製したペースト組成物をスクリーン印刷により製膜し、450℃のオーブンで1時間焼結して、膜厚10μm、有効面積100cmの酸化チタン多孔質膜を有する酸化チタン電極を得た。
<増感色素の吸着>
次に、前述したようにして得られた酸化チタン電極に、以下のようにして増感色素を吸着させた。光電変換用増感色素N719(Solaronix社製)をエタノール(濃度0.6mmol/L)に溶解させて色素溶液を調製し、この色素溶液に、上記酸化チタン電極を浸漬させた後に、室温で24時間放置した。着色した酸化チタン電極の表面をエタノールで洗浄した後、4−t−ブチルピリジンの2mol%アルコール溶液に30分間浸漬させ、室温で乾燥させて、増感色素の吸着した酸化チタン多孔質膜を有する光電極を得た。
<電解質溶液の調製>
次に、下記処方の電解質溶液を調製した。電解質を溶解させる溶媒としては、メトキシアセトニトリルを用いた。
LiI : 0.1M
I2 : 0.05M
4−t−ブチルピリジン : 0.5M
1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド : 0.6M
<光電変換セルの組み立て>
次に、上述したようにして作製した光電極及び対極を用いて、図1に示したような光電変換セル(光電変換素子)の試験サンプルを組み立てた。すなわち、上記のようにして作製した光電極と、上記のようにして作製した対極とを、樹脂フィルム製スペーサ(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン」フィルム(120μm厚))を挟んで固定し、その空隙に上記電解質溶液を注入して電解質溶液層を形成した。ガラス基板には、それぞれ変換効率測定用の導線を接続した。
<変換効率の測定>
以上のようにして作製した実施例及び比較例における光電変換セルについて、以下の方法により変換効率を測定した。すなわち、ORIEL社製ソーラーシュミレータをエアマスフィルタと組み合わせ、光量計で100mW/cmの光量に調整して測定用光源とし、光電変換セルの試験サンプルに光照射をしながら、KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用してI‐Vカーブ特性を測定した。変換効率η(%)は、I‐Vカーブ特性測定から得られたVoc(開放電圧値)、Isc(短絡電流値)、ff(フィルファクター値)を用いて、下記変換効率式(1)により算出した。得られた変換効率の値の経時変化の様子を図10に示す。図10は、本発明の実施例3、実施例8及び比較例1による光電変換セルの変換効率ηと時間との関係を示すグラフである。
図10に示すように、実施例3、実施例8及び比較例1の光電変換セルについては、いずれも初期の光電変換効率については6%を超える高い変換効率が得られた。しかしながら、比較例1の光電変換セルについては、時間が経過するにつれて、著しく変換効率が低下していくのに対し、実施例3及び実施例8の光電変換セルについては、時間が経過しても高い変換効率を保持できていることがわかった。これは、比較例1の光電変換セルでは、大きな空孔の数が多いため、被覆層にクラックが発生した結果、集電電極が電解質溶液によって腐食され、変換効率が低下したものと考えられる。一方、実施例3及び実施例8の光電変換セルについては、被覆層における大きな空孔の発生が抑制されたため、被覆層へのクラックの発生が抑制され、集電電極の腐食がほとんど起こらないことから、変換効率を維持できているためと考えられる。
このように、フィラーを添加したガラスペースト組成物を用いて被覆層を形成すると、被覆層に大きなサイズの空孔が発生することを抑制できる。その結果、被覆層のクラック(割れ)を防止することができ、これにより、集電電極が電解質溶液に接触することがなくなるため、集電電極の腐食を防止することができる。よって、このような電極基板を用いて製造した色素増感型太陽電池等の光電変換素子は、高効率、長寿命、高耐久性を有するものすることができる。
1 光電変換素子
2 基板
3 光電極
4 対極
5 電解質溶液
6 スペーサ
7 取り出し導線
10 透明電極
11 集電電極
12 被覆層
31 金属酸化物微粒子
33 増感色素
51 電解質
60 強度試験装置
61 測定基板
63 圧子
121 ガラスフリット
123 バインダ樹脂
125 ダスト
127 フィラー
,B,B 空孔

Claims (5)

  1. 透明導電性の基板上に設けられた集電電極と、前記集電電極の表面を被覆する被覆層と、を備える光電変換素子用の電極基板であって、
    前記被覆層は、前記集電電極の表面に塗布されたガラスペースト組成物を焼成した結果物からなり、
    前記ガラスペースト組成物は、前記基板のガラス転移温度または相転移温度以下で溶融しない材料からなるフィラーを含有することを特徴とする、電極基板。
  2. 前記フィラーは、前記ガラスペースト組成物中に0.1質量%以上50質量%以下含有されることを特徴とする、請求項1に記載の電極基板。
  3. 前記フィラーは、Al、SiO、TiO及びZnOからなる群より選択される少なくとも1種以上の酸化物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の電極基板。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極基板を有する、光電変換素子。
  5. 前記光電変換素子は、色素増感型太陽電池であることを特徴とする、請求項4に記載の光電変換素子。

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