JP2009007199A - 厚膜抵抗体組成物、抵抗ペースト及び厚膜抵抗体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 鉛を含まないガラスフリットを用いても発泡がなく、抵抗値やノイズなど良好な電気的特性を有する厚膜抵抗体を形成できる厚膜抵抗体組成物、その抵抗ペースト、及びこれを用いて形成された厚膜抵抗体を提供する。
【解決手段】 導電性粒子とガラスフリットを含有する厚膜抵抗体組成物において、導電性粒子がルテニウム化合物及びイリジウム化合物から選ばれた少なくとも1種で且つ鉛を含まない導電性粒子であり、ガラスフリットが鉛を含まないガラスフリットであって、更にアルカリ土類金属フッ化物を0.8〜2.5質量%含んでいる。この厚膜抵抗体組成物と有機ビヒクルを含む抵抗ペーストを用いて、発泡がなく且つ電気的特性に優れた厚膜抵抗体を形成することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、厚膜チップ抵抗器やハイブリッドICなどの抵抗体を形成するために用いる抵抗ペースト、特に鉛を含有しない抵抗ペーストと、そのための厚膜抵抗体組成物、及びこれを用いて形成した厚膜抵抗体に関するものである。
従来、電子部品の抵抗体被膜を形成方法としては、抵抗ペーストを用いる厚膜方式と、膜形成材料のスパッタリングなどによる薄膜方式がよく知られている。そのうちの厚膜方式は、抵抗ペーストをセラミック基板上に印刷、焼成して抵抗体を形成するものであり、設備が安価で、生産性も高いことから、チップ抵抗器やハイブリッドICなどの抵抗体の製造に広範に利用されている。
厚膜方式に用いる抵抗ペーストは、導電性粒子とガラスフリット、及びそれらを印刷に適したペースト状にするための有機ビヒクルから実質的に構成される。導電性粒子としては、二酸化ルテニウム(RuO)や、パイロクロア型ルテニウム系酸化物(PbRu7−X、BiRu)が一般に使用されている。特に導電性粒子としてルテニウム(Ru)系酸化物が使用されるのは、主に導電性粒子の濃度に対して抵抗値がなだらかに変化するためである。
また、ガラスフリットとしては、ホウケイ酸鉛ガラス(PbO−SiO−B)や、アルミノホウケイ酸鉛ガラス(PbO−SiO−B−Al)など、鉛を多量に含むホウケイ酸鉛系ガラスが使われている。ガラスフリットにホウケイ酸鉛系ガラスが用いられるのは、Ru系酸化物との濡れ性が良く、熱膨張係数が基板のそれに近く、焼成時の粘性などが適しているからである。
一方、最近では、鉛を含んだ抵抗ペーストの使用は環境保護の観点から望ましくないことから、抵抗ペーストについて鉛のフリー化が強く望まれている。このような要望に対して、例えば、特開平08−253342号公報、特開2001−196201号公報、特開2003−257242号公報などには、鉛を含まないガラスフリットやそれを用いた抵抗ペーストが提案されている。
特開平08−253342号公報 特開2001−196201号公報 特開2003−257242号公報
上記した鉛を含まないガラスフリットを用いた抵抗ペーストは、従来の環境問題を解決するものである。しかしながら、鉛を含まないガラスフリットを用いた抵抗ペーストで厚膜抵抗体を作製すると、焼成の際に発生する微細な気泡が成長して、得られ厚膜抵抗体に直径10μmを超える大きな気泡が存在する状態(以下、発泡と称する)が発生し易いという問題があった。
このように厚膜抵抗体に発泡が存在すると、焼成後に抵抗値を調整するためのレーザートリミング工程において、所望の抵抗値に調整できないことがある。また、発泡が顕著な場合には、その厚膜抵抗体自体の抵抗値が高くなったり、抵抗値のバラツキやノイズが悪化したりしやすいうえ、厚膜抵抗体に力が加わったとき割れやすいという欠点があった。
本発明は、このような従来の事情に鑑み、鉛を含まない厚膜抵抗体組成物、特に鉛を含まないガラスフリットを用いても発泡がなく、抵抗値やノイズなど良好な電気的特性を有する厚膜抵抗体を形成することができる厚膜抵抗体組成物を提供すること、並びに、その抵抗ペースト及びこれを用いて形成された厚膜抵抗体を提供することを目的とする。
本発明者は、鉛を含まないガラスフリットを用いた抵抗ペーストについて、厚膜抵抗体形成の過程で発生する発泡について検討した。その結果、抵抗ペーストの焼成過程で微小気泡が発生し、この微小気泡が成長して抵抗体の発泡に至ることが分った。尚、この微小気泡の発生は、導電性粒子やガラスフリットの反応によるものではなく、導電性粒子やガラスフリットなどの粒子間に存在する隙間や、有機ビヒクルの分解ガスによるものである。
ホウケイ酸鉛系などの鉛を含むガラスフリットを用いた抵抗ペーストでは、抵抗体に不都合となるような発泡は認められない。これに対し、鉛を含まないガラスフリットで発泡が生じるのは、鉛を含むガラスフリットに比べて比重が小さいために、微小気泡が抵抗体表面まで上昇して抜けることが起こり難く、焼成終了までに直径10〜100μm程度の大きさにまで成長しやすく、これが抵抗体に内包されて発泡に至るものと考えられる。
そこで、本発明者は、鉛を含まないガラスフリットを用いた場合に起こりやすい抵抗体の発泡をなくすため、種々の検討を重ねた結果、アルカリ土類金属フッ化物の添加が有効であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明が提供する厚膜抵抗体組成物は、導電性粒子とガラスフリットを含有する厚膜抵抗体組成物において、該導電性粒子がルテニウム化合物及びイリジウム化合物から選ばれた少なくとも1種で且つ鉛を含まない導電性粒子であり、該ガラスフリットが鉛を含まないガラスフリットであって、アルカリ土類金属フッ化物を0.8〜2.5質量%含んでいることを特徴とするものである。
また、本発明は、上記した本発明の厚膜抵抗体組成物と有機ビヒクルとを含むことを特徴とする抵抗ペースト、並びにその抵抗ペーストから形成されることを特徴とする厚膜抵抗体を提供するものである。
本発明によれば、抵抗ペースト及びそれを用いて形成される厚膜抵抗体から有害な鉛を排除できるため、従来の鉛を含む抵抗ペーストや厚膜抵抗体のような環境汚染を引き起こすことがない。しかも、鉛を含まないガラスフリットを用いながら、抵抗値のバラツキ及びノイズが小さく良好な電気的特性を有すると共に、発泡のない厚膜抵抗体を形成することができる。
本発明の厚膜抵抗体組成物は、ルテニウム化合物及びイリジウム化合物から選ばれた少なくとも1種で且つ鉛を含まない導電性粒子と、鉛を含まないガラスフリットとを含有すると共に、アルカリ土類金属フッ化物を0.8〜2.5質量%含んでいる。尚、本発明の厚膜抵抗体組成物は、これら必須成分の他に、抵抗体の電気的特性を調製するための種々の添加剤を含むことができる。
本発明において導電性粒子及びガラスフリットが鉛を含まないとは、不可避不純物としての鉛をも含まないという意味ではない。これらの素原料を精製しても不可避不純物を避けることができないため、厚膜抵抗体組成物中に不可避不純物として混入する鉛は1000質量ppm程度まで許容されるものである。尚、鉛の分析は化学分析により行い、例えば、試料を硫酸、硝酸、王水などの酸に溶解して、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置により鉛の含有率を測定することができる。
上記導電性粒子は、ルテニウム化合物又はイリジウム化合物のいずれか1種を用いるか、又は2種以上を併用することができる。例えば、二酸化ルテニウム、ルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、ルテニウム酸バリウム、二酸化イリジウム等を好適に用いることができる。これらのルテニウム化合物及びイリジウム化合物は、鉛を含まないガラスフリットと組み合わせることで、抵抗体の抵抗値を制御できる。
厚膜抵抗体組成物中における導電性粒子の含有率は、二酸化ルテニウム等のルテニウム化合物を単独で用いる場合、5〜50質量%の範囲が好ましい。ルテニウム化合物単独の含有率が5質量%未満では、導電性粒子が少なすぎるため、抵抗値が急激に上昇して制御困難になりやすい。また、50質量%を超えると、導電性粒子が多くなりすぎるため、抵抗体が脆くなってしまったり、抵抗体にクラックが入ってしまう。さらに抵抗体と基板の密着力が弱くなる。ただし、二酸化ルテニウムを用いる場合には、抵抗体の抵抗値が100kΩ/□以下となることが好ましい。抵抗値が100kΩ/□を超える場合には、二酸化ルテニウムでは抵抗値の制御が困難になる。
また、イリジウム化合物を単独で用いる場合には、厚膜抵抗体組成物中のイリジウム化合物単独の含有率は5〜50質量%の範囲が好ましい。イリジウム化合物の含有率が5質量%未満では、抵抗値が急激に上昇して制御困難になりやすく、且つノイズも悪化する。また、50質量%を超えると、導電性粒子が多くなりすぎるため、抵抗体が脆くなってしまったり、抵抗体にクラックが入ってしまう。さらに抵抗体と基板の密着力が弱くなる。
更に、ルテニウム化合物とイリジウム化合物を併用する場合、厚膜抵抗体組成物中の導電性粒子の含有率は5〜50質量%の範囲が望ましい。ルテニウム化合物やイリジウム化合物を単独で用いた場合と同様の理由による。尚、ルテニウム化合物とイリジウム化合物の配合割合は、特に制限されるものではないが、抵抗値が100kΩ/□を超える場合には、イリジウム化合物が25質量%未満ではノイズが悪化するため、イリジウム化合物の割合を25質量%以上とすることが望ましい。
抵抗値のバラツキ及びノイズの悪化を防ぐためには、厚膜抵抗体中の導電パスを微細にする必要があり、そのためには上記導電性粒子の平均粒径は1.0μm以下であることが望ましい。尚、導電性粒子の平均粒径は、BET法により測定した比表面積から算出することができる。また、上記導電性粒子の製法については、特に制限されず、公知の方法により得ることができる。例えば、二酸化ルテニウムであれば、水酸化ルテニウムを焙焼することで得ることができる。
上記ガラスフリットは、鉛を含まないものであれば良く、その組成に特に制限はない。例えば、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸アルカリ土類ガラス、ホウケイ酸アルカリガラス、ホウケイ酸亜鉛ガラス、ホウケイ酸ビスマスガラス等を用いることができる。尚、ガラスフリットが鉛を含まないとの意味については、導電性粒子に関連して上述したとおりである。
また、抵抗値のバラツキ及びノイズの悪化を防ぐためには、厚膜抵抗体中の導電パスを微細にする必要があり、そのためには上記ガラスフリットの平均粒径を5μm以下とすることが好ましい。所望の平均粒径のガラスフリットを得るためには、熔融し冷却したガラスフリットを、ボールミル、ジェットミル等の公知の粉砕方法を用いて粉砕すればよい。尚、ガラスフリットの平均粒径は、公知の粒度解析計により、例えばマイクロトラック(登録商標)を用いて測定することができる。
使用するガラスフリットの特性としては、ガラス転移点が500〜600℃の範囲であることが望ましい。ガラス転移点が500℃よりも低いと、抵抗ペーストを焼成して抵抗体を形成する際にガラスフリットが融けすぎて、抵抗体のパターンが崩れてしまうからである。一方、ガラス転移点が600℃よりも高いと、ガラスフリットが熔融しにくくなり、導電性粒子との馴染み(濡れ)が悪くなるため、得られる厚膜抵抗体の電流ノイズが悪化する。
尚、ガラスフリットのガラス転移点を上記範囲外に調整することによっても、抵抗体の発泡をなくすことは可能である。即ち、ガラス転移点を低くすれば気泡は焼成終了までに抜けてしまい、逆にガラス転移点を高くすれば微小気泡は成長しないため、いずれの場合も発泡に至らない。しかし、上記したように、ガラス転移点が低い場合は焼成時に抵抗体のパターンが崩れやすく、ガラス転移点が高い場合には導電性粒子との馴染み(濡れ)が低下して電流ノイズが悪化するため、500〜600℃の適切なガラス転移点を有するガラスフリットを使用する限り、発泡の問題を避けることはできない。
また、ガラスフリットの他の特性として、熱膨張係数はアルミナ基板など厚膜抵抗体を形成すべき基板の熱膨張係数よりも小さいことが必要であり、具体的には50〜70×10−7/Kの範囲であることが望ましい。この範囲の熱膨張係数を有するガラスフリットを用いることによって、アルミナ基板上に焼成された厚膜抵抗体にかかる引張応力が緩和され、厚膜抵抗体のクラックを防止することができる。尚、上記したガラスフリットのガラス転移点や熱膨張係数は、ガラスフリットの組成の検討によって実現することができる。
厚膜抵抗体組成物中におけるガラスフリットの含有率は、厚膜抵抗体の抵抗値の制御などの特性面から、並びに上述した導電性粒子をはじめ、アルカリ土類金属フッ化物その他の構成成分の含有率に応じて、適宜定めることができる。
本発明の厚膜抵抗体組成物では、ガラスフリットが鉛を含まないものであるにもかかわらず、アルカリ土類金属フッ化物を添加することによって、抵抗体の発泡を防止することができる。上記アルカリ土類金属フッ化物としては、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化バリウム(BaF)などを好適に用いることができる。
厚膜抵抗体組成物中におけるアルカリ土類金属フッ化物の含有量は、0.8〜2.5質量%の範囲とする。アルカリ土類金属フッ化物の含有量が0.8質量%よりも少ないと、発泡を防ぐ効果が十分に得られない。また、アルカリ土類金属フッ化物の含有量が2.5質量%を越えると、発泡を防ぐことはできるものの、得られる抵抗体のノイズが大きくなってしまうからである。
アルカリ土類金属フッ化物が発泡を防止する理由について、現時点では明らかではない。アルカリ土類金属フッ化物は融点が高い(例えばフッ化カルシウムの融点は1300℃)ため、厚膜抵抗体組成物中でフィラーとして働き、ガラス転移点の高いガラスフリットを使用した場合と同様の効果により発泡が防止されると予測することもできる。しかし、更に融点の高いアルミナ粉末を添加した実験では、発泡の防止効果を確認することはできなかった。
抵抗値のバラツキ及びノイズの悪化を防ぐためには、厚膜抵抗体中の導電パスを微細にする必要があり、そのためには上記アルカリ土類金属フッ化物の平均粒径は5μm以下が好ましく、1μm以下が更に好ましい。尚、アルカリ土類金属フッ化物の平均粒径は、公知の粒度解析計により、例えばマイクロトラック(登録商標)を用いて測定することができる。
本発明による抵抗ペーストは、上記した厚膜抵抗体組成物と有機ビヒクルとを含むものであり、従って鉛は含まれていない。使用する有機ビヒクルとしては、抵抗ペーストに通常使用されているものであってよく、例えば、エチルセルロース、ブチラール、アクリルなどの樹脂を、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテートなどの溶剤に溶解したものを用いることができる。
上記有機ビヒクル中の樹脂の分子量は、ターピネオールなどの溶剤に溶解できる範囲であって、且つ抵抗ペーストが印刷に適した粘性となる範囲で選択すればよい。例えばエチルセルロースでは、質量平均分子量5000〜400000のものが好ましい。また、溶剤としては、スクリーン印刷等の作業中に揮発してペーストの流動性が失われないものを選択すればよく、例えば沸点が150℃以上の溶剤を用いることが好ましい。
抵抗ペースト中に含まれる有機ビヒクルの量は、スクリーン印刷に適した粘性を示す範囲で適宜調整することができ、通常は10〜60質量%の範囲が望ましい。尚、本発明の抵抗ペーストは、上記した必須成分の他に、粘性や乾燥性などを調整するために、従来から通常使用されている種々の添加剤、分散剤、可塑剤などを適宜含有することができる。また、抵抗ペーストを製造するには、各成分をロールミルなどの市販の粉砕装置を用いて、通常のごとく混練すればよい。
上記した本発明の抵抗ペーストを用いて、鉛を含まず且つ電気的特性に優れた厚膜抵抗体を形成することができる。例えば、本発明の抵抗ペーストをアルミナ基板などの基板上にスクリーン印刷し、加熱して抵抗ペースト中の溶剤を乾燥除去した後、大気中において750〜900℃の温度で焼成することによって、本発明の厚膜抵抗体を形成することができる。尚、この厚膜抵抗体を電気回路に接続するため、通常は基板上の厚膜抵抗体の両端となる位置などに、Ag、Ag/Pd合金などの電極が予め形成されている。
導電性粒子の二酸化ルテニウム(RuO)又は二酸化イリジウム(IrO)と、鉛を含まないガラスフリットと、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)又はフッ化バリウム(BaF)のいずれかのアルカリ土類金属フッ化物と用いて、下記表1に示す組成を有する試料1〜13の厚膜抵抗体組成物を準備した。
上記導電性粒子のRuOは、水酸化ルテニウムを大気中にて700℃で3時間焙焼することにより作製したものであり、その平均粒径は20nmであった。また、IrOはヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを酸素気流中にて830℃で4時間焙焼することにより製造したものであり、その平均粒径は50nmであった。また、アルカリ土類金属フッ化物の平均粒径は、粒度解析計マイクロトラック(登録商標)で測定したところ、いずれも1μmであった。
ガラスフリットとしては、35重量%BaO−30重量%SiO−20重量%B−5重量%Al−10重量%ZnOの組成を有する鉛を含まないガラスフリットを用いた。このガラスフリットは、通常の方法に従って混合、溶融、急冷、粉砕することにより、具体的には、上記組成となるように素原料を混合し、1300℃で溶融して室温まで急冷した後、ボールミルで粉砕することによって作製した。得られたガラスフリットを棒状に整形してTMA(熱機械的分析装置)にてガラス転移点と熱膨張係数を測定したところ、ガラス転移点は580℃であり、熱膨張係数は58×10−7/Kであった。また、粒度解析計マイクロトラック(登録商標)で測定した平均粒径は2μmであった。
Figure 2009007199
上記表1に示す試料1〜13の各厚膜抵抗体組成物60質量%を、エチルセルロースとターピネオールを主成分とする有機ビヒクル40質量%と混合し、三本ロールミルで混練して抵抗ペーストを作製した。使用した有機ビヒクルは、質量平均分子量180000のエチルセルロース10質量%と、ターピネオール90質量%とを混合し、60℃に加熱溶解して作製したものである。
得られた各試料の抵抗ペーストを用いて、予めAgPdペーストで電極を形成したアルミナ基板上に、幅1mmで電極間距離1mmとなるサイズのパターンをスクリーン印刷した。引き続き、150℃で10分間乾燥した後、ベルト炉を用いて大気中にてピーク温度850℃で9分間の焼成を行い、試料1〜13の厚膜抵抗体を作製した。
得られた各厚膜抵抗体について、発泡の有無と、電気的特性(面積抵抗値、ノイズ)を調べ、結果を下記表2に示した。抵抗体の発泡の有無は、光学顕微鏡により抵抗体表面を観察し、直径10μmを超える大きな発泡が存在する場合を発泡有りとした。面積抵抗値は、KEITHLEY社製のModel2001Multimeterを用いて、4端子法にて測定した。ノイズは、Quan−Tech社製のノイズメーターModel315Cを用いて、1/10W印加にて測定した。また、抵抗体の発泡の有無は10個の抵抗体を観察し、面積抵抗値とノイズは10点の抵抗体の平均値である。
Figure 2009007199
厚膜抵抗体に発泡が存在すると、レーザートリミングにより所望の抵抗値に調整することが難しく、抵抗値のバラツキやノイズが悪化しやすいうえ、応力を受けて割れやすいなど種々の問題が生じる。また、厚膜抵抗体のノイズは、抵抗値の範囲ごとに望ましい値が異なっており、例えば面積抵抗値が800Ω/□〜2kΩ/□の範囲では−15dB以下、20〜80kΩ/□の範囲では1dB以下が好ましいとされている。
上記表1の結果から、本発明による試料1〜8の各厚膜抵抗体は、いずれも発泡がなく、上記した各抵抗値の範囲で望ましいノイズを示すことが分る。一方、比較例の試料10と12はアルカリ土類金属フッ化物を含まず、また試料9はアルカリ土類金属フッ化物の含有量が少なすぎるため、いずれも厚膜抵抗体に発泡が発生した。また、試料11と13では発泡はないが、アルカリ土類金属フッ化物の含有量が多すぎるために、上記した厚膜抵抗体の抵抗値の範囲で望ましいノイズが得られないことが分る。

Claims (3)

  1. 導電性粒子とガラスフリットを含有する厚膜抵抗体組成物において、該導電性粒子がルテニウム化合物及びイリジウム化合物から選ばれた少なくとも1種で且つ鉛を含まない導電性粒子であり、該ガラスフリットが鉛を含まないガラスフリットであって、アルカリ土類金属フッ化物を0.8〜2.5質量%含んでいることを特徴とする厚膜抵抗体組成物。
  2. 請求項1に記載の厚膜抵抗体組成物と有機ビヒクルとを含むことを特徴とする抵抗ペースト。
  3. 請求項2に記載の抵抗ペーストから形成されることを特徴とする厚膜抵抗体。
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