JP2011091012A - 電極基板とその製造方法及び光電変換素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】集電電極が設けられた光電変換素子用の電極基板とその製造方法及びこの電極基板を用いた光電変換素子において、集電電極を被覆する被覆層のクラックの発生を防止して、十分な耐電解液性を確保する。
【解決手段】透明導電性の基板上に設けられた集電電極と、集電電極の表面を被覆する被覆層とを備え、被覆層が集電電極の表面に塗布されたガラスペースト組成物を焼成した結果物からなる光電変換素子用の電極基板において、被覆層の厚みをa(μm)、焼成により被覆層に発生する空孔の最大長さをb(μm)とすると、b≦0.5aを満たすようにするか、又は、空孔の最大長さが10μm以下となるようにする。
【選択図】図4
【解決手段】透明導電性の基板上に設けられた集電電極と、集電電極の表面を被覆する被覆層とを備え、被覆層が集電電極の表面に塗布されたガラスペースト組成物を焼成した結果物からなる光電変換素子用の電極基板において、被覆層の厚みをa(μm)、焼成により被覆層に発生する空孔の最大長さをb(μm)とすると、b≦0.5aを満たすようにするか、又は、空孔の最大長さが10μm以下となるようにする。
【選択図】図4
Description
本発明は、光電変換素子用の電極基板とその製造方法、及びこの電極基板を使用した光電変換素子に関する。
近年、環境負荷の小さなクリーンエネルギーとして、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池等の光電変換素子の研究開発が盛んに行われている。太陽電池としては、現在、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池等のシリコン系太陽電池や、シリコンの代わりにテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の化合物半導体を用いた化合物半導体太陽電池などが実用化又は研究開発の対象となっている。しかし、これらの太陽電池を普及させるためには、製造コストが高い、原材料確保が困難である、エネルギーペイバックタイムが長いなどの問題点を克服する必要がある。一方、素子の大面積化や低価格化を指向した有機材料を用いた太陽電池もこれまでに多く提案されているが、変換効率や耐久性が低いという問題があった。
このような状況において、色素によって増感された半導体多孔質体を用いた色素増感型太陽電池が開発されている(例えば、非特許文献1、特許文献1等を参照)。この色素増感型太陽電池として、現在主な研究開発の対象となっているものは、多孔性の酸化チタン薄膜の表面に色素を固定した、所謂グレッツェル・セルと呼ばれるものである。グレッツェル・セルは、ルテニウム錯体色素によって分光増感された酸化チタン多孔質薄膜層を作用電極とし、これに、ヨウ素を主体とする電解質層及び対極を積層した色素増感型の光電変換セルである。このグレッツェル・セルの第一の利点は、酸化チタン等の安価な酸化物半導体を用いるため、安価な光電変換素子を提供できる点にあり、第二の利点は、用いられるルテニウム錯体色素が可視光域に幅広く吸収を有していることから、比較的高い変換効率が得られる点にある。また、この方式の色素増感型太陽電池では、最近、12%を超える変換効率も報告され、シリコン系太陽電池と比較しても十分な実用性が確保されつつある。
ところが、一般的に、太陽電池等の光電変換素子を大面積化しようとした場合には、発生した電流が透明電極等の比較的導電性が低い基材中でジュール熱に変換されてしまい、光電変換効率が低くなってしまう。このような事情に対して、銀や銅などの高導電性の金属配線をグリッド状に形成して集電電極(「グリッド(grid)電極」とも呼ばれる。)とし、電気エネルギーの損失を低減する試みが各種の太陽電池でなされている。ただし、このような集電電極を色素増感型太陽電池に設けようとする場合には、形成した集電電極がヨウ素を含有する電解質溶液によって腐食されてしまうことを防止する必要がある(耐電解液性の確保)。
このような観点から、集電電極を形成した後、集電電極の周囲を低融点のガラス材料で被覆又は保護する技術が提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3を参照)。また、集電電極を被覆する被覆層を複数構造にしたり(例えば、特許文献4を参照)、被覆層を形成せずに集電電極自体を耐電解液性に優れる材料にしたりする(例えば、特許文献5を参照)技術も提案されている。さらに、集電線を被覆する被覆層を形成するガラス材料と基材との線膨張係数の差が少ない材料を用いることによって被覆層にクラック(割れ)が発生しないようにする技術が提案されている(例えば、特許文献6を参照)。
B.O’Regan,M.Gratzel著、Nature、353巻、737〜740頁、1991年
しかしながら、特許文献2及び3に記載された技術では、十分な耐電解液性が得られない場合がある、という問題があった。また、特許文献4に記載された技術では、太陽電池のセル構造が複雑になり、特許文献5に記載された技術では、耐電解液性に優れる材料は、抵抗値が高いため、太陽電池の特性の低下に繋がる、という問題もあった。さらに、特許文献6に記載された技術でも、被覆層に使用するガラス材料の焼成後に被覆層に応力が生じてクラックが発生する場合があった。このように、従来は、被覆層へのクラックの発生を防止することができていない、という事情があった。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、集電電極が設けられた光電変換素子用の電極基板とその製造方法及びこの電極基板を用いた光電変換素子において、集電電極を被覆する被覆層のクラックの発生を防止して、十分な耐電解液性を確保することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、被覆層の形成にガラス材料を使用した際のクラック(ガラスの割れ)の発生には、ガラス材料と基材との線膨張係数の差等だけではなく、ガラス材料の焼成の際に被覆層に発生する空孔が大きく影響することを見出した。すなわち、ガラス材料の焼成後に被覆層に存在する空孔の大きさによっては、この空孔を起点として、太陽電池等の光電変換素子の作製時に被覆層にクラックが生じる場合がある。この検討結果から、本発明者らは、ガラス材料の焼成の際に被覆層に発生する空孔の大きさを制御することにより、被覆層のクラックの発生を防止できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のある観点によれば、透明導電性の基板上に設けられた集電電極と、前記集電電極の表面を被覆する被覆層と、を備える光電変換素子用の電極基板であって、前記被覆層は、前記集電電極の表面に塗布されたガラスペースト組成物を焼成した結果物からなり、前記被覆層の厚みをa(μm)、前記焼成により前記被複層に発生する空孔の最大長さをb(μm)とすると、b≦0.5aを満たす電極基板が提供される。
また、本発明の他の観点によれば、透明導電性の基板上に設けられた集電電極と、前記集電電極の表面を被覆する被覆層と、を備える光電変換素子用の電極基板であって、前記被覆層は、前記集電電極の表面に塗布されたガラスペースト組成物を焼成した結果物からなり、前記焼成により前記被複層に発生する空孔の最大長さが10μm以下である電極基板が提供される。
また、本発明のさらに他の観点によれば、前述した電極基板を有する光電変換素子が提供される。
ここで、前記光電変換素子としては、例えば、色素増感型太陽電池等の太陽電池が挙げられる。
また、本発明のさらに他の観点によれば、透明導電性の基板上に設けられた集電電極の表面に、ガラスフリット、バインダ樹脂及び有機溶剤を含むガラスペースト組成物を塗布した後に、前記ガラスペースト組成物を、前記ガラスフリットの軟化点Ts(℃)以上かつ(Ts+40)℃未満の焼成温度で焼成することで、前記集電電極の表面を被覆する被覆層を形成する電極基板の製造方法が提供される。
前記電極基板の製造方法において、前記焼成温度に到達する前に、前記バインダ樹脂の消失温度(℃)以上かつTs(℃)以下の温度を5分間以上保持させることが好ましい。
本発明によれば、集電電極が設けられた光電変換素子用の電極基板とその製造方法及びこの電極基板を用いた光電変換素子において、ガラスペースト組成物の焼成により被覆層に発生する空孔の最大長さを被覆層の厚みの半分以下、又は10μm以下とすることにより、集電電極を被覆する被覆層のクラックの発生を防止して、十分な耐電解液性を確保することが可能となる。また、このような電極基板を用いることで、光電変換素子の高効率化及び長寿命化を実現することが可能となる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[第1の実施形態]
(光電変換素子の全体構成について)
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子1の全体構成を示す説明図である。図2は、無機金属酸化物半導体に色素が連結された状態を模式的に示す説明図である。なお、以下では、光電変換素子1として、図1に示したようなグレッツェル・セルを有する色素増感型太陽電池を例に挙げて説明する。
(光電変換素子の全体構成について)
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子1の全体構成を示す説明図である。図2は、無機金属酸化物半導体に色素が連結された状態を模式的に示す説明図である。なお、以下では、光電変換素子1として、図1に示したようなグレッツェル・セルを有する色素増感型太陽電池を例に挙げて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る光電変換素子1は、2つの基板2と、2つの電極基板10と、光電極3と、対極4と、電解質溶液5と、スペーサ6と、取り出し導線7と、を主に備える。
<基板について>
2つの基板2は、所定の間隔を空けて互いに対向して配置される。この基板2の材質としては、光電変換素子1の外部からの光(太陽光など)の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない透明な材料であれば特に限定はされない。基板2の材質としては、例えば、石英、並ガラス、BK7、鉛ガラス等のガラス基材や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、塩化ビニル等の樹脂基材などが挙げられる。
2つの基板2は、所定の間隔を空けて互いに対向して配置される。この基板2の材質としては、光電変換素子1の外部からの光(太陽光など)の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない透明な材料であれば特に限定はされない。基板2の材質としては、例えば、石英、並ガラス、BK7、鉛ガラス等のガラス基材や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、塩化ビニル等の樹脂基材などが挙げられる。
<電極基板について>
電極基板10(10A,10B)は、2つの基板2のうち、少なくとも、外部からの光が入射する側の基板2Aの表面に設けられており、例えば、透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conductive Oxide)を用いて膜状に形成された透明電極(詳細は後述する。)を有する。また、光電変換効率向上の観点から、電極基板10のシート抵抗(表面抵抗)はできるだけ低い方が好ましく、具体的には20Ω/cm2(Ω/sq.)以下であることが好ましい。
電極基板10(10A,10B)は、2つの基板2のうち、少なくとも、外部からの光が入射する側の基板2Aの表面に設けられており、例えば、透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conductive Oxide)を用いて膜状に形成された透明電極(詳細は後述する。)を有する。また、光電変換効率向上の観点から、電極基板10のシート抵抗(表面抵抗)はできるだけ低い方が好ましく、具体的には20Ω/cm2(Ω/sq.)以下であることが好ましい。
ただし、2つの基板2のうち、基板2Aと対向した基板2Bの表面に設けられた電極基板10Bについては、必ずしも設ける必要はなく、また、電極基板10Bを設けた場合でも、必ずしも透明である(すなわち、光電変換素子1の外部からの光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない)必要は無い。なお、本実施形態に係る電極基板のさらに詳細な説明については後述する。
<光電極について>
光電極3は、光電変換素子1において、光電変換機能を有する無機金属酸化物半導体膜として使用されるものであり、多孔質の膜状に形成されている。より詳細には、図1に示すように、光電極3は、電極基板10の表面に、複数のTiO2等の無機金属酸化物半導体の微粒子31(以下、単に「金属酸化物微粒子31」と称する。)を積層して形成され、この積層された金属酸化物微粒子31の層の中にナノメートルオーダーの細孔を有する多孔質体(ナノポーラスな膜)となっている。この光電極3は、このように、多数の細孔を有する多孔質体となっていることにより、光電極3の表面積を増加させることができ、多量の増感色素33を金属酸化物微粒子31の表面に連結させることができ、これにより、光電変換素子1が高い光電変換効率を有することができる。
光電極3は、光電変換素子1において、光電変換機能を有する無機金属酸化物半導体膜として使用されるものであり、多孔質の膜状に形成されている。より詳細には、図1に示すように、光電極3は、電極基板10の表面に、複数のTiO2等の無機金属酸化物半導体の微粒子31(以下、単に「金属酸化物微粒子31」と称する。)を積層して形成され、この積層された金属酸化物微粒子31の層の中にナノメートルオーダーの細孔を有する多孔質体(ナノポーラスな膜)となっている。この光電極3は、このように、多数の細孔を有する多孔質体となっていることにより、光電極3の表面積を増加させることができ、多量の増感色素33を金属酸化物微粒子31の表面に連結させることができ、これにより、光電変換素子1が高い光電変換効率を有することができる。
ここで、図2に示すように、光電極3においては、金属酸化物微粒子31の表面に、増感色素33を、連結基35を介して連結することにより、無機金属酸化物半導体が増感された光電極3が得られる。なお、ここでいう「連結」とは、無機金属酸化物半導体と増感色素が化学的に結合または物理的に結合(例えば、吸着等により結合)していることを意味する。従って、ここでいう「連結基」には、化学的な官能基のみならず、アンカー基や吸着基も含まれる。
また、図2には、金属酸化物微粒子31の表面に増感色素33が1つだけ連結された状態が示されているが、図2は単に模式的に示したものであり、光電変換素子1の電気的出力の向上という観点から、金属酸化物微粒子31の表面に連結される増感色素33の数は可能な限り多く、多数の増感色素33が金属酸化物微粒子31の表面のできる限り広い範囲を被覆している状態となることが好ましい。ただし、被覆される増感色素33の数が多くなる場合には、近接する増感色素33同士の相互作用により、励起電子が失括してしまい、電気エネルギーとして取り出せない場合があるため、このような場合には、適当な距離をもって増感色素33が被覆できるように、デオキシコール酸などの共吸着物質を用いればよい。
また、光電極3は、1次粒子の数平均粒径で20nm〜100nm程度の大きさを有する金属酸化物微粒子31が複数層積層された構成を有している。この光電極3の膜厚は、数μmのオーダー(好ましくは、10μm以下)であることが好ましい。光電極3の膜厚が数μmのオーダーよりも薄いと、光電極3を透過する光が多くなり、増感色素33の光励起が不十分となり、有効な光電変換効率が得られないおそれがある。一方、光電極3の膜厚が数μmのオーダーよりも厚いと、光電極3の表面(電解質溶液7に接している側の表面)と導電面(光電極3と電極基板10との界面)との距離が長くなるために、発生した励起電子が導電面に有効に伝達されにくくなるため、良好な変換効率が得られにくくなるおそれがある。
次に、本実施形態に係る光電極3に使用可能な金属酸化物微粒子31及び増感色素33について詳細に説明する。
<金属酸化物微粒子について>
一般に、無機金属酸化物半導体は、一部の波長域の光について光電変換機能を有しているが、金属酸化物微粒子31の表面に増感色素33を連結することにより、可視光から近赤外光までの領域の光に対する光電変換が可能となる。このような金属酸化物微粒子31として使用できる化合物としては、増感色素33を連結することで光電変換機能が増感されるものであれば特に制限はされないが、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、酸化バナジウム等が挙げられる。ここで、金属酸化物微粒子31の表面が増感色素33によって増感されるためには、無機金属酸化物の伝導帯が増感色素33の光励起準位から電子を受け取りやすい位置に存在していることが好ましい。このような観点から、金属酸化物微粒子31として使用する化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ等が特に好ましい。さらに、価格や環境衛生等の観点から、酸化チタンがさらに好ましい。なお、本実施形態では、金属酸化物微粒子31として、上述した無機金属酸化物のうちの一種を単独で用いてもよく、あるいは、複数種を組み合わせて用いてもよい。
一般に、無機金属酸化物半導体は、一部の波長域の光について光電変換機能を有しているが、金属酸化物微粒子31の表面に増感色素33を連結することにより、可視光から近赤外光までの領域の光に対する光電変換が可能となる。このような金属酸化物微粒子31として使用できる化合物としては、増感色素33を連結することで光電変換機能が増感されるものであれば特に制限はされないが、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、酸化バナジウム等が挙げられる。ここで、金属酸化物微粒子31の表面が増感色素33によって増感されるためには、無機金属酸化物の伝導帯が増感色素33の光励起準位から電子を受け取りやすい位置に存在していることが好ましい。このような観点から、金属酸化物微粒子31として使用する化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ等が特に好ましい。さらに、価格や環境衛生等の観点から、酸化チタンがさらに好ましい。なお、本実施形態では、金属酸化物微粒子31として、上述した無機金属酸化物のうちの一種を単独で用いてもよく、あるいは、複数種を組み合わせて用いてもよい。
<増感色素について>
増感色素33としては、金属酸化物微粒子31が光電変換機能を有していない領域(例えば、可視から近赤外の領域)の光に対して光電変換機能を有しているものであれば特に限定はされないが、例えば、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、及びこれらの誘導体などを用いることができる。
増感色素33としては、金属酸化物微粒子31が光電変換機能を有していない領域(例えば、可視から近赤外の領域)の光に対して光電変換機能を有しているものであれば特に限定はされないが、例えば、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、及びこれらの誘導体などを用いることができる。
また、増感色素33は、光励起された色素の励起電子を無機金属酸化物の伝導帯に迅速に伝達できるように、その構造中に、連結基35として、金属酸化物微粒子31の表面に連結することが可能な官能基を有していることが好ましい。このような官能基としては、金属酸化物微粒子31の表面に増感色素33を連結し、色素の励起電子を無機金属酸化物の伝導帯に迅速に伝達する機能を有する置換基であれば特に制限はされないが、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、ヒドロキサム酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基などが挙げられる。
<対極について>
<対極について>
対極4は、光電変換素子1の正極として機能するものであり、2つの基板2のうち、電極基板10が設けられた基板2と対向する基板2の表面に、電極基板10に対向するように設けられており、膜状に形成される。すなわち、2つの電極基板10とスペーサ6により囲まれた領域内には、対極4が、電極基板10の表面に、光電極3と対向するように設けられている。この対極4の表面(光電極3と対向する側)には、導電性を有する金属触媒層が設けられている。対極4の金属触媒層に用いられる導電性の材料としては、例えば、金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、金属酸化物(ITO(インジウムスズ酸化物)、酸化スズ(フッ素等がドープされた物を含む)、酸化亜鉛等)、導電性炭素材料または導電性有機材料などが挙げられる。なお、対極4の膜厚は、特に限定されないが、例えば、5nm〜10μmであることが好ましい。
なお、光電極3が設けられている側の電極基板10A及び対極4には、取り出し導線7が接続されており、電極基板10Aからの取り出し導線7と対極4からの取り出し導線7とが光電変換素子1の外部で接続されることにより、電流回路を形成することができる。
また、電極基板10Aと対極4とは、スペーサ6により所定間隔離隔させられている。このスペーサ6は、電極基板10A及び対極4の外縁部に沿って設けられており、電極基板10と対極4との間の空間を封止する役割を有している。このスペーサ6としては、密封性および耐蝕性の高い樹脂を使用することが好ましく、例えば、フィルム状に成形した熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、アイオノマー樹脂、ガラスフリット等を使用することができる。アイオノマー樹脂としては、例えば、三井デュポン・ポリケミカル製のハイラミン(商品名)等が挙げられる。
<電解質溶液について>
さらに、電極基板10Aと対極4との間の空間には、スペーサ6により電解質溶液5が封入されている。電解質溶液5は、例えば、電解質、媒体、及び添加物を含んでいる。
さらに、電極基板10Aと対極4との間の空間には、スペーサ6により電解質溶液5が封入されている。電解質溶液5は、例えば、電解質、媒体、及び添加物を含んでいる。
ここで、電解質としては、I3−/I−系、Br3−/Br−系などのレドックス電解質等を使用できるが、具体例としては、I2とヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、MgI2、CaI2、CuI、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等)との混合物、Br2と臭化物(LiBr等)との混合物、有機溶融塩化合物などを用いることができるが、この限りではない。また、ここでいう有機溶融塩化合物とは、有機カチオンと無機または有機アニオンからなるイオン対化合物であって、融点が室温以下であるものを指す。
有機溶融塩化合物を構成する有機カチオンの具体例としては、芳香族系カチオン類として、例えば、N−メチル−N’−エチルイミダゾリウムカチオン、N−メチル−N’−n−プロピルイミダゾリウムカチオン、N−メチル−N’−n−ヘキシルイミダゾリウムカチオン等のN−アルキル−N’−アルキルイミダゾリウムカチオン類や、N−ヘキシルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン等のN−アルキルピリジニウムカチオン類などが挙げられる。また、脂肪族カチオン類として、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムカチオン等の脂肪族系カチオン類、N,N−メチルピロリジニウム等の環状脂肪族カチオン類などが挙げられる。
一方、有機溶融塩化合物を構成する無機または有機アニオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、六フッ化リンイオン、四フッ化ホウ素イオン、三フッ化メタンスルホン酸塩、過塩素酸イオン、次塩素酸イオン、塩素酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等の無機アニオン類や、ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド等のアミド系アニオン類もしくはイミド系アニオン類などが挙げられる。
なお、有機溶融塩化合物としては、この他にも、Inorganic Chemistry、35巻、1168〜1178頁、1996年に記載のものなど、公知の化合物を用いることができる。
以上例示したヨウ化物、臭化物等は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。このうち特に、I2とヨウ化物の組み合わせ(例えば、I2とLiI)、ピリジニウムヨーダイド、またはイミダゾリウムヨーダイド等を混合した電解質が好ましく用いられるが、これらに限定されることはない。
また、電解質溶液5の濃度は、媒体中にI2が0.01〜0.5Mであり、ヨウ化物と臭化物のいずれか一方または双方等(複数種の場合はそれらの混合物)が0.1〜15M以下であることが好ましい。
電解質溶液5に用いられる媒体としては、良好なイオン伝導性を発現できる化合物であることが好ましい。このような媒体のうち液体状のものとしては、例えば、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物や、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類や、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類や、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物や、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物や、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物や、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン極性物質や、水などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、または複数種を組み合わせて用いてもよい。また、固体状(ゲル状を含む)の媒体を用いる目的で、液体状媒体にポリマーを含ませることもできる。この場合、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーを上記液体状媒体中に添加したり、エチレン性不飽和基を有した多官能性モノマーを上記液体状媒体中で重合させたりして、媒体を固体状にすることができる。また、電解質溶液5に用いられる媒体として、室温で液体となる有機・無機イオン対(「イオン性液体」とも称される。)を用いてもよい。電解質溶液5に用いる媒体としてイオン性液体を用いることで、電解質溶液5の蒸発を抑制できるので、光電変換素子1の耐久性をより高めることができる。
なお、電解質溶液5としては、この他に、CuI、CuSCN(これらの化合物は液体状媒体を必要としないp型半導体であり電解質として作用する。)等やNature、395巻、583〜585頁(1998年10月8日)記載の2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレンのような正孔輸送材料などを用いてもよい。
また、電解質溶液5中には、光電変換素子1の耐久性や電気的出力を向上させることを目的として、各種添加物を加えてもよい。例えば、耐久性向上を目的としてヨウ化マグネシウム等の無機塩類を添加してもよいし、電気的出力向上を目的としてt−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等のアミン類や、デオキシコール酸等のステロイド類や、グルコース、グルコサミン、グルクロン酸等の単糖類およびそれらの糖アルコール類や、マルトース等の二糖類や、ラフィノース等の直鎖状オリゴ糖類や、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖類や、ラクトオリゴ糖等の加水分解オリゴ糖類などを添加してもよい。
また、電解質溶液5が封入されている層の厚みは、特に限定されないが、対極4と色素が吸着した光電極3とが直接接触しないような最小の厚みとすることが好ましい。具体的には、0.1〜100μm程度であることが好ましい。
<光電変換素子の作動原理>
金属酸化物微粒子31と、その表面に連結基35を介して連結された増感色素33とを含む光電極3においては、図2に示すように、金属酸化物微粒子31の表面に連結された増感色素33に光が当たると、増感色素33が励起状態となり、増感色素33は、光励起された励起電子を放出する。放出された励起電子は、連結基35を介して、金属酸化物微粒子31の伝導帯に伝達される。さらに、金属酸化物微粒子31に到達した励起電子は、他の金属酸化物微粒子31を伝わって、電極基板10に達し、取り出し導線7を通って光電変換素子1の外部に流出する。一方、励起電子を放出して電子が不足する状態となった増感色素33は、対極4から供給される電子を、電解質溶液5中のI−/I3 −等の電解質を介して受け取ることにより、電気的に中性の状態に戻る。
金属酸化物微粒子31と、その表面に連結基35を介して連結された増感色素33とを含む光電極3においては、図2に示すように、金属酸化物微粒子31の表面に連結された増感色素33に光が当たると、増感色素33が励起状態となり、増感色素33は、光励起された励起電子を放出する。放出された励起電子は、連結基35を介して、金属酸化物微粒子31の伝導帯に伝達される。さらに、金属酸化物微粒子31に到達した励起電子は、他の金属酸化物微粒子31を伝わって、電極基板10に達し、取り出し導線7を通って光電変換素子1の外部に流出する。一方、励起電子を放出して電子が不足する状態となった増感色素33は、対極4から供給される電子を、電解質溶液5中のI−/I3 −等の電解質を介して受け取ることにより、電気的に中性の状態に戻る。
(電極基板10の構成について)
以上、本実施形態に係る光電変換素子1の全体構成について説明したが、続いて、図3及び図4を参照しながら、本実施形態に係る電極基板10の構成について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る電極基板10の構造の一例を示す説明図である。図4は、図3に示した電極基板10に設けられた被覆層の構造の一例を示す説明図である。
以上、本実施形態に係る光電変換素子1の全体構成について説明したが、続いて、図3及び図4を参照しながら、本実施形態に係る電極基板10の構成について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る電極基板10の構造の一例を示す説明図である。図4は、図3に示した電極基板10に設けられた被覆層の構造の一例を示す説明図である。
図3に示すように、本実施形態に係る電極基板10は、本実施形態に係る透明導電性の基板の一例としての透明電極110と、集電電極120と、被覆層130と、を主に有する。
透明電極110は、例えば、透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conductive Oxide)を用いて膜状に形成される。TCOとしては、例えば、光電変換素子1の外部からの光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない導電材料なら特に限定されないが、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO2(酸化スズ)、FTO(フッ素等がドープされた酸化スズ)、ITO/ATO(アンチモン含有酸化スズ)、ZnO2(酸化亜鉛)等の良好な導電性を有する金属酸化物が好適である。
集電電極120は、金属酸化物微粒子31を伝わって電極基板10に到達した励起電子を取り出し導線7まで伝達するために、電極基板10の表面に設けられた金属配線である。この集電電極120は、一般に、電極基板10のシート抵抗が高い(概ね10Ω/sq以上)ことから、発生した電流が透明電極110等の比較的導電性が低い基材中でジュール熱に変換されてしまい、光電変換効率が低くなってしまう現象を防止するために設けられる。このような観点から、集電電極120は、電極基板10と電気的に接続されており、集電電極120を形成する材料としては、Ag、Ag/Pd、Cu、Au、Ni、Ti、Co、Cr、Al等の高導電性の金属又は合金が好適である。また、集電電極120の配線パターンとしては、電気エネルギーの損失を低減させることができる形状であれば特に限定されず、格子状、縞状、短冊状、櫛型等の任意の形状とすることができる。
ここで、集電電極120は、上述したように、Ag、Ag/Pd、Cu、Au、Ni、Ti、Co、Cr、Al等の金属で形成されているため、ヨウ素(I−/I3 −等)を含有する電解質溶液5によって腐食されてしまうおそれがある。そのため、本実施形態に係る光電変換素子1には、以下に説明する被覆層130を設けている。
被覆層130は、前述したような集電電極120の電解質溶液5による腐食を防止するために、集電電極120の周囲を被覆し、電解質溶液5による腐食から保護する層であり、集電電極120に表面に塗布された低融点のガラスペースト組成物を焼成することにより得られるものである。この被覆層130に用いられるガラスペースト組成物は、ガラスフリット、バインダ樹脂、溶剤及び添加剤等を含むペースト状の組成物である。以下、ガラスペースト組成物の各成分について説明する。
本実施形態のガラスペースト組成物に用いるガラスフリットとしては、基本的には、SiO2骨格、B2O3骨格、P2O5骨格に、融点の制御及び化学的な安定性のために他の金属酸化物が含有されたものを使用でき、例えば、SiO2−Bi2O3−MOX系、B2O3−Bi2O3−MOX系、SiO2−CaO−Na(K)2O−MO系、P2O5−MgO−MOX系(Mは一種以上の金属元素とする)等の低融点ガラスを1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
本実施形態のガラスペースト組成物に用いるバインダ樹脂としては、600℃以下で完全に燃焼され、残物が残らないものを使用でき、具体例としては、主に、エチルセルロース(EC)樹脂が挙げられる。また、ガラスペースト組成物に用いるバインダ樹脂の他の例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アクリル(メタクリル)樹脂等が挙げられる。
本実施形態のガラスペースト組成物に用いる溶剤としては、特に限定されない。ただし、光電変換素子1の製造工程を考慮した場合には、乾燥速度が早すぎる場合には、製造中に乾燥してしまい、固形分の析出などが起こるので好ましくない。このような観点から、本実施形態のガラスペースト組成物に用いる溶剤としては、沸点が150℃以上、より好ましくは180℃以上の溶剤が好ましく、このような溶剤として、例えば、テルペン系の溶剤(テルピネオールなど)やカルビトール系溶剤(ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート)等を使用することができる。
本実施形態のガラスペースト組成物には、必要に応じてガラスフリットや樹脂の分散性の向上やレオロジーの調整等を目的とした添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば、スクリーン印刷などの工程に適正な粘度の調整や、ガラスフリットの分散性の向上を目的として添加されるポリマー、レオロジー調整の目的で添加される増粘剤、分散性の良いガラスペースト組成物の調製を目的として添加される分散剤等が挙げられる。ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、エチルセルロース(EC)、アクリル(メタクリル)樹脂等が挙げられる。また、増粘剤としては、例えば、エチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレン樹脂などが挙げられる。また、分散剤としては、例えば、硝酸等の酸や、アセチルアセトン、ポリエチレングリコール、トリトンX−100などが挙げられる。
ところで、集電電極120を被覆する被覆層130を、低融点ガラスペーストを焼成させることにより形成した場合、焼成の際にガラスペースト内にバインダ樹脂が残留していると、この残留したバインダ樹脂が焼成時に燃焼されることによって被覆層130内でガスとなって、このガスが、図4に示すように、空孔131として被覆層130内に存在することとなる。この空孔131としては、図4(a)に示すように、体積の大きなガスが発生した結果として大きなサイズとなった空孔131aや、小さなサイズの空孔が複数凝集して大きなサイズとなった空孔131bや、小さなサイズの空孔131c等の様々な大きさや形状のものが存在する。
本発明者らは、この被覆層130の構成と耐電解液性との関係について鋭意検討した結果、焼成後に被覆層130内に存在する空孔131の大きさが、耐電解液性に大きく影響を与えることを見出した。すなわち、図4(a)に示すように、被覆層130内に大きなサイズの空孔131a、131b等が存在すると、被覆層130にクラックが発生しやすくなったり、電解質溶液5が空孔131a、131b等を通って集電電極120を腐食したりすることが判明した。
そこで、本実施形態に係る光電変換素子1においては、図4(b)に示すように、被覆層130の厚みをa(μm)、被複層130に存在する空孔131の最大長さをb(μm)とすると、b≦0.5aを満たすように制御することとした。空孔131の最大長さb(μm)が、b>0.5aであると、被覆層130にクラックが発生しやすくなったり、電解質溶液5が空孔131a、131b等を通って集電電極120を腐食したりするおそれがある。クラックの発生や電解質溶液5の空孔131a、131b等からの浸入をより確実に防止するという観点から、空孔131の最大長さb(μm)は、b≦0.3aを満たすことがより好ましい。
一方、空孔131の最大長さb(μm)は、被覆層130の厚みに対して小さいほど好ましいため、空孔131の最大長さb(μm)の下限値については、特に規定する必要はないが、実際に制御可能な空孔131の最大長さb(μm)の下限値としては、b≧0.01a程度となる。
ここで、本実施形態における空孔131の最大長さとは、被覆層130を透明電極110に対して平行な面または垂直な面で切断した場合において、空孔131の断面の最も大きい部分の長さ、すなわち、空孔131の断面の周上の任意の2点を結んだ線分のうち長さが最大となるものの長さ(例えば、空孔131の断面が円の場合は直径、空孔131の断面が楕円の場合は長径)のことを意味する。
また、空孔131の最大長さbについては、被覆層130内に存在する全ての空孔131がb≦0.5aを満たしていることが必要である。例えば、被覆層130内に存在する空孔131の最大長さbの平均値が0.5a以下であっても、b>0.5aである空孔131が1つでもある場合には、その空孔131から被覆層130にクラックが発生する場合があるためである。ただし、実際には、被覆層130内の全ての空孔131の最大長さbを測定することは困難であるため、本実施形態では、被覆層の断面全体の面積の0.2%程度の範囲内で上記条件を満たしていればよいこととする。
前述した空孔131の最大長さbについては、以下のようにして測定することができる。まず、空孔131を金属顕微鏡にて撮影し、画像を二値化することで空孔131部分を同定する。なお、この空孔131部分の同定は、例えば、キーエンス製の「GRADING ANALYSIS」等の画像解析ソフトを利用して自動測定することにより、二値化された画像を得ることができる。また、このような画像解析ソフトを利用することで、二値化された画像における空孔131部分の数、最大長さb及びその平均値を測定することができる。
なお、被覆層130の厚みは、表面形状測定器(例えば、Veeco社製のDektak150等)を用いて測定することが可能である。
以上説明したような空孔131の最大長さbは、集電電極120の表面に塗布したガラスペースト組成物を所定条件により焼成することにより制御することができる。この焼成の条件の詳細については後述する。
(光電変換素子の製造方法について)
以上、本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子1の構成について詳細に説明した。続いて、前述した構成を有する本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法について詳細に説明する。
以上、本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子1の構成について詳細に説明した。続いて、前述した構成を有する本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法について詳細に説明する。
<正極の作製>
まず、前述した基板2の表面に、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO2(酸化スズ)、FTO(フッ素等がドープされた酸化スズ)、ITO/ATO(アンチモン含有酸化スズ)、ZnO2(酸化亜鉛)等のTCOをスパッタリング法等により塗布し、透明電極110を形成する。
まず、前述した基板2の表面に、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO2(酸化スズ)、FTO(フッ素等がドープされた酸化スズ)、ITO/ATO(アンチモン含有酸化スズ)、ZnO2(酸化亜鉛)等のTCOをスパッタリング法等により塗布し、透明電極110を形成する。
次いで、透明電極110上に、Ag、Ag/Pd、Cu、Au、Ni、Ti、Co、Cr、Al等の高導電性の金属又は合金、樹脂、溶剤等を含むペースト組成物を、光電変換効率が最も良くなる構造(例えば、櫛型状)となるように塗布する。上記金属又は合金の塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサーによる塗布、インクジェット印刷、メタルマスク法等が挙げられる。さらに、塗布したペースト組成物を溶剤が消失する温度(80℃〜200℃程度)にて乾燥後、樹脂が消失し、且つ、上記の金属が焼結する温度(400℃〜600℃程度)にて焼成し、集電電極120を形成する。
次に、集電電極120の表面を覆うように被覆層130を形成する。具体的には、前述したガラスフリット、これを結着させるバインダ樹脂、必要に応じて添加する添加剤を、水または適当な溶剤中に分散させたガラスペースト組成物を調製する。次いで、調製したガラスペースト組成物を、取り出し導線7が接続された部分(取り出し部)を除いた集電電極120の全体を覆うように塗布する。上記ガラスペースト組成物の塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサーによる塗布、インクジェット印刷等が挙げられる。ただし、被覆層130は導電性が低い材料で形成されているため、光電変換効率を向上させるという観点から、被覆層130が、集電電極120を十分に覆いつつ、且つ、なるべく被覆面積が小さくなるように、ガラスペースト組成物を塗布することが好ましい。さらに、塗布したガラスペースト組成物を溶剤が消失する温度(80℃〜200℃程度)にて乾燥後、バインダ樹脂が消失し、且つ、ガラスフリットが焼結する温度(ガラスフリットのガラス軟化点温度(Ts)以上の温度)にて焼成し、被覆層130を形成する。
ここで、図5を参照しながら、本実施形態におけるガラスペースト組成物の焼成方法の詳細について説明する。図5は、本実施形態に係るガラスペースト組成物の焼成プロファイルの一例を示すグラフである。
図5に示すように、本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法においては、前述したように空孔131の最大長さbが、被覆層130の厚みaに対して、b≦0.5aとなるように制御するために、室温(R.T.)からガラスフリットのTs以上の温度まで昇温し、(Ts+40)℃未満の温度を保ちながら、ガラスペースト組成物を焼成することが必要である。ガラスペースト組成物の焼成温度が(Ts+40)℃以上の場合、バインダ樹脂が燃焼して発生するガスの気泡の大きさが大きくなり過ぎるため、b≦0.5aとすることができず、被覆層130にクラックが発生しやすくなったり、電解質溶液5が空孔131を通って集電電極120を腐食したりするおそれがある。
また、ガラスフリットが焼結する温度以上でガラスペースト組成物を焼成することが必要であることから、ガラスフリットのTs以上の温度で焼成する必要がある。すなわち、本実施形態におけるガラスペースト組成物の焼成温度は、ガラスフリットの軟化点Ts(℃)以上かつ(Ts+40)℃未満とすることが必要である。さらに、焼成温度をガラスフリットの軟化点Ts(℃)以上かつ(Ts+40)℃未満の範囲の温度に保持する時間は、バインダ樹脂が消失し、且つ、ガラスフリットが焼結する程度であれば特に限定はされないが、焼成温度にもよるが、例えば、5分〜60分程度とすればよい。
また、本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法では、図5に示すように、前述した焼成温度に到達する前に、バインダ樹脂の消失温度(℃)以上、且つ、Ts(℃)以下の温度を5分間以上保持させることが好ましい。この場合の「保持」とは、バインダ樹脂の消失温度(℃)以上、且つ、Ts(℃)以下の範囲内の温度を5分間以上保っていればよく、この温度範囲内であれば、一定温度である必要はなく、温度変化があってもよい。このように、
焼成温度に到達する前に、バインダ樹脂の消失温度(℃)以上、且つ、Ts(℃)以下の温度を5分間以上保持させることにより、ガラスペースト組成物の焼成温度に到達する前、すなわち、ガラスフリットが軟化溶融する前に、ガラスペースト組成物中に含まれるバインダ樹脂や他の有機分をガス化させて除去することができる。従って、ガラスペースト組成物を焼成する際には、ガラスペースト組成物中にバインダ樹脂や他の有機分がほとんど残留していない状態となるので、最大長さbの大きな空孔131の発生を抑制することができる。なお、ここでいう「バインダの消失温度(℃)」とは、空気中でTG−DTA測定を行った際に、95%以上の重量が消失される温度とする。
以上のようにして被覆層130を形成した後に、電極基板10の表面の有効面積(光電変換が可能な領域の面積)全体に、金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、金属酸化物(ITO(インジウムスズ酸化物)、酸化スズ(フッ素等がドープされた物を含む)、酸化亜鉛等)、導電性炭素材料または導電性有機材料などをスパッタリング法等の公知の方法により処理し、対極4を形成する。
以上のようにして、正極を作製することができる。
<負極の作製>
次に、負極については、まず、正極の場合と同様にして、基板2の表面に、透明電極110、集電電極120及び被覆層130を含む電極基板10を形成する。
次に、負極については、まず、正極の場合と同様にして、基板2の表面に、透明電極110、集電電極120及び被覆層130を含む電極基板10を形成する。
次に、TiO2等の金属酸化物微粒子11(好ましくは、ナノメートルオーダーの粒径を有するもの)、及び、これを結着させるためのバインダ樹脂を、水または適当な有機溶剤中に分散させたペースト組成物を調製する。次いで、調製したペースト組成物を、電極基板10の表面に有効面積(光電変換が可能な領域の面積)全体に塗布する。上記ペースト組成物の塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサーによる塗布、スピンコーティング、スキージを用いた塗布、ディップコーティング、吹き付けによる塗布、ダイコーティング、インクジェット印刷等が挙げられる。次に、塗布したペースト組成物を溶剤が消失する温度(80℃〜200℃程度)にて乾燥後、バインダ樹脂が消失し、且つ、金属酸化物微粒子31が焼結する温度(400℃〜600℃程度)にて焼成し、金属酸化物半導体膜を形成する。
さらに、得られた金属酸化物半導体膜を基板2及び電極基板10ごと、増感色素33を溶解させた溶液(例えば、ルテニウム錯体系色素のエタノール溶液)中に数時間浸漬させることにより、金属酸化物微粒子31の表面と増感色素33の連結基35との親和性を利用して、金属酸化物微粒子31の表面に増感色素33を結合させる。最後に、溶剤が消失する温度(40℃〜100℃程度)にて増感色素33が結合した金属酸化物半導体膜を乾燥させ、光電極3を形成する。なお、増感色素33を金属酸化物微粒子31の表面に結合させる方法は、上記の方法には限られない。
<正極と負極の接合>
以上のようにして作製した正極と負極とを対面させ、それぞれの基板2の周縁部にスペーサ6(例えば、三井デュポン・ポリケミカル製のハイミラン(商品名)等のアイオノマー樹脂)を配置し、120℃程度の温度で正極と負極とを熱融着させる。次いで、電解質溶液(例えば、LiIとI2とを溶解したアセトニトリル電解質溶液)を電解液の注入口から注入し、セル全体に行き渡らせ、光電変換素子1を得ることができる。
以上のようにして作製した正極と負極とを対面させ、それぞれの基板2の周縁部にスペーサ6(例えば、三井デュポン・ポリケミカル製のハイミラン(商品名)等のアイオノマー樹脂)を配置し、120℃程度の温度で正極と負極とを熱融着させる。次いで、電解質溶液(例えば、LiIとI2とを溶解したアセトニトリル電解質溶液)を電解液の注入口から注入し、セル全体に行き渡らせ、光電変換素子1を得ることができる。
なお、光電変換素子1は、必要に応じて、複数の光電変換素子1を連結させるなどして組み合わせてもよい。例えば、複数の光電変換素子1を直列に組み合わせることによって、全体としての起電圧を高くすることができる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る光電変換素子は、上述した第1の実施形態に係る光電変換素子と構成はほとんど同様であるが、被覆層に存在する空孔の最大長さを、被覆層の厚みとの関係ではなく、空孔の最大長さそのもので規定したものである。具体的には、本実施形態に係る空孔の最大長さは、10μm以下であることが必要である。空孔の最大長さが10μm超であると、被覆層にクラックが発生しやすくなったり、電解質溶液が空孔を通って集電電極を腐食したりするおそれがある。また、光電変換素子の変換効率を向上させるという観点からも、空孔の最大長さを10μm以下とすることが必要である。一般に、光電変換素子において、セルのギャップ、すなわち、アノード及びカソード間の間隔を大きくとり過ぎると、光電変換素子の変換効率が低下してしまう。ここで、本発明者らが確認したセルのギャップと変換効率との関係の一例について説明する。本発明者らは、後述する実施例に示す被覆層(表4を参照)を用いて、実施例と同様の方法で光電変換セルを作成した。その際、セルのギャップを変化させ、それぞれのセルギャップにおける光電変換セルの変換効率を実施例と同様の方法により測定した。この測定結果を下記表1に示す。
本発明の第2の実施形態に係る光電変換素子は、上述した第1の実施形態に係る光電変換素子と構成はほとんど同様であるが、被覆層に存在する空孔の最大長さを、被覆層の厚みとの関係ではなく、空孔の最大長さそのもので規定したものである。具体的には、本実施形態に係る空孔の最大長さは、10μm以下であることが必要である。空孔の最大長さが10μm超であると、被覆層にクラックが発生しやすくなったり、電解質溶液が空孔を通って集電電極を腐食したりするおそれがある。また、光電変換素子の変換効率を向上させるという観点からも、空孔の最大長さを10μm以下とすることが必要である。一般に、光電変換素子において、セルのギャップ、すなわち、アノード及びカソード間の間隔を大きくとり過ぎると、光電変換素子の変換効率が低下してしまう。ここで、本発明者らが確認したセルのギャップと変換効率との関係の一例について説明する。本発明者らは、後述する実施例に示す被覆層(表4を参照)を用いて、実施例と同様の方法で光電変換セルを作成した。その際、セルのギャップを変化させ、それぞれのセルギャップにおける光電変換セルの変換効率を実施例と同様の方法により測定した。この測定結果を下記表1に示す。
表1に示すように、セルのギャップが大きくなるほど、変換効率が低下することがわかる。また、本発明における被覆層の厚みが厚くなればなるほど、セルのギャップも大きくとる必要があることから、被覆層の厚みをなるべく小さくすることが好ましい。さらに、被覆層の厚みに対して空孔の最大長さが大きすぎると、被覆層にクラックが発生しやすくなってしまう。従って、空孔の最大長さをなるべく小さくする(本発明では、10μm以下に)することが変換効率を向上させる点から好ましい。
一方、空孔の最大長さは小さいほど好ましいため、空孔の最大長さの下限値については、特に規定する必要はないが、実際に制御可能な空孔の最大長さの下限値としては、0.2μm程度となる。
なお、空孔の最大長さの定義、測定方法及び制御方法については、第1の実施形態の場合と同様である。また、その他の光電変換素子の構成及び光電変換素子の製造方法についても、第1の実施形態の場合と同様であるので、詳細な説明については省略する。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
本実施例では、被覆層の電解質溶液に対する耐久性(耐電解液性)の評価、及び色素増感型太陽電池としての性能(光電変換効率)の評価を行った。
(電解質溶液に対する耐久性の評価)
まず、被覆層の電解質溶液に対する耐久性の評価を行った。
<集電電極の形成>
フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)上にAgペースト(田中貴金属社製MH1085)を厚み10μm、幅500μmのストライプ状となるようにスクリーン印刷法を用いてパターニングし、集電電極を形成した。
まず、被覆層の電解質溶液に対する耐久性の評価を行った。
<集電電極の形成>
フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)上にAgペースト(田中貴金属社製MH1085)を厚み10μm、幅500μmのストライプ状となるようにスクリーン印刷法を用いてパターニングし、集電電極を形成した。
<ガラスペースト組成物の調製>
エチルセルロース樹脂(消失温度400℃、)を5g、ガラスフリット(B2O3−SiO2−Bi2O3系、ガラス軟化点Ts:475℃)を60g、テルピネオール(関東化学製)を30g、及びブチルカルビトールアセテート(関東化学社製)5gを混合した後、3本ロールミキサーで十分に分散してガラスペースト組成物を得た。
エチルセルロース樹脂(消失温度400℃、)を5g、ガラスフリット(B2O3−SiO2−Bi2O3系、ガラス軟化点Ts:475℃)を60g、テルピネオール(関東化学製)を30g、及びブチルカルビトールアセテート(関東化学社製)5gを混合した後、3本ロールミキサーで十分に分散してガラスペースト組成物を得た。
<被覆層の形成>
得られたガラスペースト組成物を用いて、集電電極が完全に被覆されるように幅1000μmのストライプ状となるようにスクリーン印刷法によりパターン形成した。次いで、150℃のオーブンでガラスペースト組成物中の溶剤を乾燥除去した後、空気雰囲気下で30分間焼成してバインダ樹脂成分を消失させ、被覆層を形成した。ガラスペースト組成物の焼成温度は、表1に示す各温度(490℃、500℃、510℃、520℃)で行った。また、形成した被覆層に存在する空孔の全個数、空孔の最大長さbのうち最大の値、及び空孔の最大長さbの数平均値を測定した。空孔の最大長さbの値としては、画像解析ソフトとしてGRADING ANALYSIS(キーエンス社製)を用いて自動測定した値を用い、空孔の最大長さbは、装置画面上の160μm×120μmの領域を5箇所測定した。下記表2に、形成した被覆層ごとに、焼成温度、焼成温度までの昇温速度、空孔の最大長さbの最大値、空孔の全個数、全空孔の最大長さbの数平均値を示した。なお、被覆層の厚みは、全ての例で20μmとした。
得られたガラスペースト組成物を用いて、集電電極が完全に被覆されるように幅1000μmのストライプ状となるようにスクリーン印刷法によりパターン形成した。次いで、150℃のオーブンでガラスペースト組成物中の溶剤を乾燥除去した後、空気雰囲気下で30分間焼成してバインダ樹脂成分を消失させ、被覆層を形成した。ガラスペースト組成物の焼成温度は、表1に示す各温度(490℃、500℃、510℃、520℃)で行った。また、形成した被覆層に存在する空孔の全個数、空孔の最大長さbのうち最大の値、及び空孔の最大長さbの数平均値を測定した。空孔の最大長さbの値としては、画像解析ソフトとしてGRADING ANALYSIS(キーエンス社製)を用いて自動測定した値を用い、空孔の最大長さbは、装置画面上の160μm×120μmの領域を5箇所測定した。下記表2に、形成した被覆層ごとに、焼成温度、焼成温度までの昇温速度、空孔の最大長さbの最大値、空孔の全個数、全空孔の最大長さbの数平均値を示した。なお、被覆層の厚みは、全ての例で20μmとした。
また、本実施例において、焼成温度とは、焼成時におけるガラスペースト組成物の最高到達温度をいい、昇温速度とは、ガラスペースト組成物の温度がガラスフリットのガラス軟化点温度に達してから、焼成温度まで昇温する際の昇温速度のことを意味することとする。
上記表2に示すように、本発明で規定されている焼成温度の条件(ガラスフリットの軟化点Ts以上(Ts+40℃)以下)を満たしていれば(焼成温度が490℃、500℃、510℃の例:実施例)、空孔の最大長さbの最大値が10μm以下となり、本発明で規定する空孔の最大長さbの条件を満たすことがわかる。一方、焼成温度が(Ts+40)℃を超える場合(焼成温度が520℃の例:比較例)には、空孔の最大長さbの最大値が10μmを超え、本発明で規定する空孔の最大長さbの条件を満たさないことがわかる。
<評価用セルの作製>
上述のようにして得られた集電電極が形成された各ガラス基板と、FTOガラス基板とをホットメルト樹脂「ハイミラン(厚み120μm)を用いて熱圧着し、予め開けておいた電解液注入口から電解質溶液を注入し、その後、注入口をHimilan及びガラスカバーを用いて封止し、評価用のセルを作製した。
上述のようにして得られた集電電極が形成された各ガラス基板と、FTOガラス基板とをホットメルト樹脂「ハイミラン(厚み120μm)を用いて熱圧着し、予め開けておいた電解液注入口から電解質溶液を注入し、その後、注入口をHimilan及びガラスカバーを用いて封止し、評価用のセルを作製した。
<耐電解液性の評価>
作製した評価用セルを、85℃で1000時間放置し、その後の集電電極と被覆層の様子を観察した。その結果、実施例のセルにおいては、目視でのダメージは観察されなかった。
作製した評価用セルを、85℃で1000時間放置し、その後の集電電極と被覆層の様子を観察した。その結果、実施例のセルにおいては、目視でのダメージは観察されなかった。
<焼成温度の空孔の発生に与える影響>
次に、焼成温度が被覆層への空孔の発生に与える影響を調査した。すなわち、上記のようにして得られたガラスペースト組成物をフッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)に塗布し、150℃のオーブンでガラスペースト組成物中の溶剤を乾燥除去した後、空気雰囲気下で焼成した。このとき、焼成条件については、図6A〜図6Fに示すように、焼成温度をTs+15℃〜75℃と変化させ、昇温速度を10℃/分(図6Fの場合のみ5℃/分)とし、焼成時間を20分とした。なお、図6A〜図6Fは、焼成後の被覆層の状態の一例を示す顕微鏡写真である。
次に、焼成温度が被覆層への空孔の発生に与える影響を調査した。すなわち、上記のようにして得られたガラスペースト組成物をフッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)に塗布し、150℃のオーブンでガラスペースト組成物中の溶剤を乾燥除去した後、空気雰囲気下で焼成した。このとき、焼成条件については、図6A〜図6Fに示すように、焼成温度をTs+15℃〜75℃と変化させ、昇温速度を10℃/分(図6Fの場合のみ5℃/分)とし、焼成時間を20分とした。なお、図6A〜図6Fは、焼成後の被覆層の状態の一例を示す顕微鏡写真である。
その結果、本発明に係る光電変換素子の製造方法における焼成温度の条件(Ts+40℃未満)を満たす図6A〜図6Cの例については、空孔(写真中の黒い部分)の大きさが小さく、数も少ないことがわかる。一方、焼成温度がTs+40℃以上である図6D〜図6Fの例については、空孔の大きさが大きいことがわかる。
<前処理工程の空孔の発生に与える影響>
次に、前処理工程(焼成前の温度保持工程)が被覆層への空孔の発生に与える影響を調査した。すなわち、上記のようにして得られたガラスペースト組成物をフッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)に塗布し、150℃のオーブンでガラスペースト組成物中の溶剤を乾燥除去した後、空気雰囲気下で焼成した。焼成条件は、焼成温度500℃、当該焼成温度の保持時間を20分、昇温速度を10℃/分とした。このとき、同一の条件で焼成した2種類のサンプルの一方については、焼成前に420℃で30分間保持する前処理工程を追加し、他方については、この前処理工程を追加しなかった。その結果を図7A及び図7Bに示した。なお、図7Aは、前処理工程を追加しなかった場合の焼成後の被覆層の状態の一例を示す顕微鏡写真である。図7Bは、前処理工程を追加した場合の焼成後の被覆層の状態の一例を示す顕微鏡写真である。
次に、前処理工程(焼成前の温度保持工程)が被覆層への空孔の発生に与える影響を調査した。すなわち、上記のようにして得られたガラスペースト組成物をフッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)に塗布し、150℃のオーブンでガラスペースト組成物中の溶剤を乾燥除去した後、空気雰囲気下で焼成した。焼成条件は、焼成温度500℃、当該焼成温度の保持時間を20分、昇温速度を10℃/分とした。このとき、同一の条件で焼成した2種類のサンプルの一方については、焼成前に420℃で30分間保持する前処理工程を追加し、他方については、この前処理工程を追加しなかった。その結果を図7A及び図7Bに示した。なお、図7Aは、前処理工程を追加しなかった場合の焼成後の被覆層の状態の一例を示す顕微鏡写真である。図7Bは、前処理工程を追加した場合の焼成後の被覆層の状態の一例を示す顕微鏡写真である。
その結果、前処理工程を追加した図7Bの例の方が、前処理工程を追加しなかった図7Aの例よりも空孔(写真中の黒い部分)の大きさが小さく、数も少ないことがわかる。すなわち、図7Bの例では、前処理工程を追加したことにより、空孔の数自体が減少するとともに、最大長さbの大きな空孔の発生を抑制することができており、その結果として、表3に示すように、空孔の最大長さの平均値が、前処理工程を追加した図7Bの例では著しく低下しているものと推察される。
<空孔の原因で集電電極の腐食が生じた例>
ここで、被覆層に存在する空孔の大きさが大きすぎることが原因で、被覆層にクラックが生じ、集電電極に腐食が生じた場合の例を図8A及び図8Bに示す。なお、図8A及び図8Bは、集電電極に腐食が生じた状態の一例を示す顕微鏡写真である。
ここで、被覆層に存在する空孔の大きさが大きすぎることが原因で、被覆層にクラックが生じ、集電電極に腐食が生じた場合の例を図8A及び図8Bに示す。なお、図8A及び図8Bは、集電電極に腐食が生じた状態の一例を示す顕微鏡写真である。
図8A及び図8Bに示すように、被覆層の膜厚aに対して、空孔の最大長さbが、b>0.5aである場合には、被覆層の中央に存在する大きな空孔が原因で、集電電極が電解質溶液により腐食し、無くなっていることがわかる(図8A及び図8Bの透明部分が集電電極が無くなっている部分)。
(色素増感型太陽電池としての性能評価)
次に、色素増感型太陽電池としての性能評価を行った。
次に、色素増感型太陽電池としての性能評価を行った。
<透明電極>
全ての実施例及び比較例において、透明電極としては、フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)を使用した。
全ての実施例及び比較例において、透明電極としては、フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)を使用した。
<集電電極の形成>
上記ガラス基板上にAgペースト(田中貴金属社製MH1085)を厚み10μm、幅500μmのストライプ状となるようにスクリーン印刷法を用いてパターニングし、集電電極を形成した。また、集電電極間のピッチを7000μmとした。
上記ガラス基板上にAgペースト(田中貴金属社製MH1085)を厚み10μm、幅500μmのストライプ状となるようにスクリーン印刷法を用いてパターニングし、集電電極を形成した。また、集電電極間のピッチを7000μmとした。
<被覆層の形成>
エチルセルロース樹脂(消失温度400℃、)を5g、ガラスフリット(B2O3−SiO2−Bi2O3系、ガラス軟化点Ts:480℃)を60g、テルピネオール(関東化学製)を30g、及びブチルカルビトールアセテート(関東化学社製)5gを混合した後、3本ロールミキサーで十分に分散してガラスペースト組成物を得た。得られたガラスペースト組成物を用いて、以下の焼成条件により、本発明の実施例及び比較例による被覆層が形成された電極基板を作製した。
エチルセルロース樹脂(消失温度400℃、)を5g、ガラスフリット(B2O3−SiO2−Bi2O3系、ガラス軟化点Ts:480℃)を60g、テルピネオール(関東化学製)を30g、及びブチルカルビトールアセテート(関東化学社製)5gを混合した後、3本ロールミキサーで十分に分散してガラスペースト組成物を得た。得られたガラスペースト組成物を用いて、以下の焼成条件により、本発明の実施例及び比較例による被覆層が形成された電極基板を作製した。
実施例の焼成条件としては、420℃で30分間保持する前処理工程後、焼成温度を500℃、焼成温度保持時間を20分間として行った。また、比較例の焼成条件としては、前処理工程を加えずに、焼成温度を550℃、焼成温度保持時間を20分間として行った。また、被覆層は、実施例及び比較例のいずれも、膜厚が20μmとなるように形成した。
このようにして得られた被覆層について、被覆層の厚みaと空孔の最大長さbとの比(b/a)、及び各(b/a)の範囲の空孔数について測定した。空孔の最大長さbの測定値としては、画像解析ソフトとしてGRADING ANALYSIS(キーエンス社製)を用いて自動測定した値を用いた。なお、空孔の最大長さbは、装置画面上の10mm×50mmの領域を1箇所測定した。以上の測定結果を表4(実施例)及び表5(比較例)に示す。なお、表4及び表5中の「エラー箇所の数」とは、最大長さbの大きな空孔によって発生したクラックにより被覆層に集電電極がダメージを受けた箇所の数のことを意味している。
上記表4及び表5に示すように、実施例による被覆層では、測定範囲内の全ての空孔についてb/a≦0.5(b≦0.5a)を満足しており、エラー箇所は発生しなかった。一方、比較例による被覆層では、b/a>0.5といった最大長さbの大きな空孔が多数発生しており、この大きな空孔によって、エラー箇所も多数発生していることがわかった。
<対極>
実施例及び比較例のいずれにおいても、対極としては、フッ素ドープ型酸化スズ層付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)の導電層上に、集電電極及び被覆層を形成した後に、スパッタリング法により白金層(白金電極層)(厚み150nm)を積層したものを用いた。なお、集電電極及び被覆層の作成方法は上述した通りである。
実施例及び比較例のいずれにおいても、対極としては、フッ素ドープ型酸化スズ層付きのガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)の導電層上に、集電電極及び被覆層を形成した後に、スパッタリング法により白金層(白金電極層)(厚み150nm)を積層したものを用いた。なお、集電電極及び被覆層の作成方法は上述した通りである。
<光電極(酸化チタン電極)用ペースト組成物の調製>
次に、光電極用ペースト組成物を作製した。具体的には、実施例及び比較例のいずれにおいても、酸化チタン微粒子(日本アエロジル社製P−25)3g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤(和光純薬製ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)0.3gをテルピネオール7.0gと共にビーズミル処理により12時間分散を施した。さらに、バインダ樹脂としてエチルセルロース樹脂1.0gを加えてペースト組成物を作製した。ペースト組成物のShear rate 10sec−1での粘度は、例えばスクリーン印刷を行うことが可能な程度に十分な粘度を有するものであった。
次に、光電極用ペースト組成物を作製した。具体的には、実施例及び比較例のいずれにおいても、酸化チタン微粒子(日本アエロジル社製P−25)3g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤(和光純薬製ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)0.3gをテルピネオール7.0gと共にビーズミル処理により12時間分散を施した。さらに、バインダ樹脂としてエチルセルロース樹脂1.0gを加えてペースト組成物を作製した。ペースト組成物のShear rate 10sec−1での粘度は、例えばスクリーン印刷を行うことが可能な程度に十分な粘度を有するものであった。
<酸化チタン電極の作製>
次に、酸化チタン微粒子を含む酸化チタン電極を作製した。具体的には、実施例及び比較例における被覆層が形成された電極基板の導電面に、前述したようにして作製したペースト組成物をスクリーン印刷により製膜し、450℃のオーブンで1時間焼結して、膜厚10μm、有効面積100cm2の酸化チタン多孔質膜を有する酸化チタン電極を得た。
次に、酸化チタン微粒子を含む酸化チタン電極を作製した。具体的には、実施例及び比較例における被覆層が形成された電極基板の導電面に、前述したようにして作製したペースト組成物をスクリーン印刷により製膜し、450℃のオーブンで1時間焼結して、膜厚10μm、有効面積100cm2の酸化チタン多孔質膜を有する酸化チタン電極を得た。
<増感色素の吸着>
次に、前述したようにして得られた酸化チタン電極に、以下のようにして増感色素を吸着させた。光電変換用増感色素N719(Solaronix社製)をエタノール(濃度0.6mmol/L)に溶解させて色素溶液を調製し、この色素溶液に、上記酸化チタン電極を浸漬させた後に、室温で24時間放置した。着色した酸化チタン電極の表面をエタノールで洗浄した後、4−t−ブチルピリジンの2mol%アルコール溶液に30分間浸漬させ、室温で乾燥させて、増感色素の吸着した酸化チタン多孔質膜を有する光電極を得た。
次に、前述したようにして得られた酸化チタン電極に、以下のようにして増感色素を吸着させた。光電変換用増感色素N719(Solaronix社製)をエタノール(濃度0.6mmol/L)に溶解させて色素溶液を調製し、この色素溶液に、上記酸化チタン電極を浸漬させた後に、室温で24時間放置した。着色した酸化チタン電極の表面をエタノールで洗浄した後、4−t−ブチルピリジンの2mol%アルコール溶液に30分間浸漬させ、室温で乾燥させて、増感色素の吸着した酸化チタン多孔質膜を有する光電極を得た。
<電解質溶液の調製>
次に、下記処方の電解質溶液を調製した。電解質を溶解させる溶媒としては、メトキシアセトニトリルを用いた。
LiI : 0.1M
I2 : 0.05M
4−t−ブチルピリジン : 0.5M
1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド : 0.6M
次に、下記処方の電解質溶液を調製した。電解質を溶解させる溶媒としては、メトキシアセトニトリルを用いた。
LiI : 0.1M
I2 : 0.05M
4−t−ブチルピリジン : 0.5M
1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド : 0.6M
<光電変換セルの組み立て>
次に、上述したようにして作製した光電極及び対極を用いて、図1に示したような光電変換セル(光電変換素子)の試験サンプルを組み立てた。すなわち、上記のようにして作製した光電極と、上記のようにして作製した対極とを、樹脂フィルム製スペーサ(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン」フィルム(120μm厚))を挟んで固定し、その空隙に上記電解質溶液を注入して電解質溶液層を形成した。ガラス基板には、それぞれ変換効率測定用の導線を接続した。
次に、上述したようにして作製した光電極及び対極を用いて、図1に示したような光電変換セル(光電変換素子)の試験サンプルを組み立てた。すなわち、上記のようにして作製した光電極と、上記のようにして作製した対極とを、樹脂フィルム製スペーサ(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン」フィルム(120μm厚))を挟んで固定し、その空隙に上記電解質溶液を注入して電解質溶液層を形成した。ガラス基板には、それぞれ変換効率測定用の導線を接続した。
<変換効率の測定>
以上のようにして作製した実施例及び比較例における光電変換セルについて、以下の方法により変換効率を測定した。すなわち、ORIEL社製ソーラーシュミレータをエアマスフィルタと組み合わせ、光量計で100mW/cm2の光量に調整して測定用光源とし、光電変換セルの試験サンプルに光照射をしながら、KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用してI‐Vカーブ特性を測定した。変換効率η(%)は、I‐Vカーブ特性測定から得られたVoc(開放電圧値)、Isc(短絡電流値)、ff(フィルファクター値)を用いて、下記変換効率式(1)により算出した。得られた変換効率の値の経時変化の様子を図9に示す。図9は、本発明の実施例及び比較例による光電変換セルの変換効率ηと時間との関係を示すグラフである。
以上のようにして作製した実施例及び比較例における光電変換セルについて、以下の方法により変換効率を測定した。すなわち、ORIEL社製ソーラーシュミレータをエアマスフィルタと組み合わせ、光量計で100mW/cm2の光量に調整して測定用光源とし、光電変換セルの試験サンプルに光照射をしながら、KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用してI‐Vカーブ特性を測定した。変換効率η(%)は、I‐Vカーブ特性測定から得られたVoc(開放電圧値)、Isc(短絡電流値)、ff(フィルファクター値)を用いて、下記変換効率式(1)により算出した。得られた変換効率の値の経時変化の様子を図9に示す。図9は、本発明の実施例及び比較例による光電変換セルの変換効率ηと時間との関係を示すグラフである。
図9に示すように、実施例及び比較例の光電変換セルについては、いずれも初期の光電変換効率については6%を超える高い変換効率が得られた(例えば、経過時間0における実施例の光電変換セルの変換効率は6.67%、比較例の光電変換セルの変換効率は6.75%)。しかしながら、比較例の光電変換セルについては、時間が経過するにつれて、著しく変換効率が低下していくのに対し、実施例の光電変換セルについては、時間が経過しても高い変換効率を保持できていることがわかった。これは、比較例の光電変換セルでは、最大長さの大きな空孔の数が多いため、被覆層にクラックが発生した結果、集電電極が電解質溶液によって腐食され、変換効率が低下したものと考えられる。一方、実施例の光電変換セルについては、被覆層に存在する全ての空孔の最大長さが、被覆層の厚みの0.5倍以内となっているため、被覆層へのクラックの発生が抑制され、集電電極の腐食がほとんど起こらないことから、変換効率を維持できているためと考えられる。
以上の結果から分かるように、本発明の範囲に属する条件で形成した集電電極を被覆する被覆層を形成すると、被覆層に存在する空孔の大きさも本発明の範囲に属することとなる。その結果、被覆層のクラック(割れ)を防止することができ、これにより、集電電極が電解質溶液に接触することがなくなるため、集電電極の腐食を防止することができる。よって、このような電極基板を用いて製造した色素増感型太陽電池等の光電変換素子は、高効率、長寿命、高耐久性を有するものすることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態では、光電変換機能を有し、表面に増感色素が連結されて増感される無機半導体微粒子として、金属酸化物微粒子31を例に挙げて説明したが、本発明に係る無機半導体微粒子としては、金属酸化物微粒子31には限られず、例えば、金属酸化物ではない無機半導体微粒子であってもよい。このような金属酸化物ではない無機半導体微粒子として使用できる化合物の例としては、シリコン、ゲルマニウム、III族−V族系半導体、金属カルコゲニド等が挙げられる。
1 光電変換素子
2 基板
3 光電極
4 対極
5 電解質溶液
6 スペーサ
7 取り出し導線
10 電極基板
31 金属酸化物微粒子
33 増感色素
110 透明電極
120 集電電極
130 被覆層
131 空孔
2 基板
3 光電極
4 対極
5 電解質溶液
6 スペーサ
7 取り出し導線
10 電極基板
31 金属酸化物微粒子
33 増感色素
110 透明電極
120 集電電極
130 被覆層
131 空孔
Claims (6)
- 透明導電性の基板上に設けられた集電電極と、前記集電電極の表面を被覆する被覆層と、を備える光電変換素子用の電極基板であって、
前記被覆層は、前記集電電極の表面に塗布されたガラスペースト組成物を焼成した結果物からなり、
前記被覆層の厚みをa(μm)、前記焼成により前記被複層に発生する空孔の最大長さをb(μm)とすると、b≦0.5aを満たすことを特徴とする、電極基板。 - 透明導電性の基板上に設けられた集電電極と、前記集電電極の表面を被覆する被覆層と、を備える光電変換素子用の電極基板であって、
前記被覆層は、前記集電電極の表面に塗布されたガラスペースト組成物を焼成した結果物からなり、
前記焼成により前記被複層に発生する空孔の最大長さが10μm以下であることを特徴とする、電極基板。 - 請求項1または2に記載の電極基板を有する、光電変換素子。
- 前記光電変換素子は、色素増感型太陽電池であることを特徴とする、請求項3に記載の光電変換素子。
- 透明導電性の基板上に設けられた集電電極の表面に、ガラスフリット、バインダ樹脂及び有機溶剤を含むガラスペースト組成物を塗布した後に、前記ガラスペースト組成物を、前記ガラスフリットの軟化点Ts(℃)以上かつ(Ts+40)℃未満の焼成温度で焼成することで、前記集電電極の表面を被覆する被覆層を形成することを特徴とする、電極基板の製造方法。
- 前記焼成温度に到達する前に、前記バインダ樹脂の消失温度(℃)以上かつTs(℃)以下の温度を5分間以上保持させることを特徴とする、請求項5に記載の電極基板の製造方法。
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