JP2011119443A - 可変スパイラルインダクタおよび半導体集積回路装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】インダクタンス値を変えることができ、インダクタ素子が占める基板上でのスペースを小さくしつつ、インダクタ素子を簡便な構成により実現可能とした可変スパイラルインダクタを提供する。
【解決手段】接地導体7を設けた半絶縁性の基板2と、この基板2に形成され、平面スパイラル状のパターンを有し、一端から入力された高周波信号を他端へ通過させるスパイラル導体5と、このスパイラル導体5に対し基板面に直交する方向で間隔を介して設けられたマイクロストリップライン導体6と、このマイクロストリップライン導体6の電位を接地電位又は開放電位にするための駆動バイアスを印加される電極4と、を備え、この電極4へ印加される駆動バイアスのオンオフ駆動により、マイクロストリップライン導体6の状態を高周波信号に対して等価的に接地状態又は短絡状態にし、高周波信号に対して値の異なるインダクタンスを生成する。
【選択図】図1
【解決手段】接地導体7を設けた半絶縁性の基板2と、この基板2に形成され、平面スパイラル状のパターンを有し、一端から入力された高周波信号を他端へ通過させるスパイラル導体5と、このスパイラル導体5に対し基板面に直交する方向で間隔を介して設けられたマイクロストリップライン導体6と、このマイクロストリップライン導体6の電位を接地電位又は開放電位にするための駆動バイアスを印加される電極4と、を備え、この電極4へ印加される駆動バイアスのオンオフ駆動により、マイクロストリップライン導体6の状態を高周波信号に対して等価的に接地状態又は短絡状態にし、高周波信号に対して値の異なるインダクタンスを生成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、インダクタンス値を変化させることが可能な可変スパイラルインダクタおよびこの可変スパイラルインダクタを有する半導体集積回路装置に関する。
従来、スパイラルインダクタをGaAs基板上に形成したMMIC(モニリシックマイクロ波集積回路)が知られている(例えば特許文献1、2参照)。また、シリコン又はガリウムヒ素により形成される基板上に構成された可変インダクタが知られている(例えば特許文献3、4参照)。
特許文献3に記載の可変インダクタは、それぞれ螺旋状インダクタの下部に設けられ開放端を持つ複数のループ状の配線層と、それぞれ開放端を開放/短絡する複数のFET(電界効果トランジスタ)と、螺旋状インダクタと配線層との間に設けられた絶縁膜とを設け、FETを開閉してインダクタンス値を変えている。特許文献4に記載の半導体素子は、絶縁性の基板と、この基板上に設けられた容量可変部と、インダクタ部とを備えている。この容量可変部は基板上に第1及び第2制御電極を備えた可変容量ダイオードを有し、この可変容量ダイオードが形成された容量可変部上にインダクタ部が形成されている。
しかしながら、上述した従来技術では、可変スパイラルインダクタを基板上に形成する場合、基板の表面にイオンをドープして内層を形成する必要があり、この可変スパイラルインダクタが占めるレイアウトが制約される。特許文献3、4ではそれぞれ4個のFET及び可変容量ダイオードが内層に形成されており、4個のFETあるいは可変容量ダイオードの制御のための配線が複雑である。4個のFETあるいは可変容量ダイオードが占めるスペースも大きい。また、従来技術では、マイクロ波帯域あるいはマイクロ波帯の波長よりも短い波長の電磁波を伝搬させて動作する化合物半導体基板では、基板上に、インダクタンスを変えるための複雑な構造を有する可変スパイラルインダクタを小型形成することは困難である。
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、化合物半導体といった半絶縁性の基板上に形成され高周波信号を伝搬させるインダクタンス素子において、インダクタンス値を変えることができ、インダクタ素子が占める基板上でのスペースを小さくしつつ、このインダクタ素子を簡便な構成により実現可能とした可変スパイラルインダクタおよび半導体集積回路装置を提供することを目的とする。
このような課題を解決するため、本発明の一態様によれば、接地導体を設けた半絶縁性の基板と、この基板に形成され、平面スパイラル状のパターンを有し、一端から入力された高周波信号を他端へ通過させるスパイラル導体と、このスパイラル導体に対し基板面に直交する方向で間隔を介して設けられたマイクロストリップライン導体と、このマイクロストリップライン導体の電位を接地電位又は開放電位にするための駆動バイアスを印加される電極と、を備え、この電極へ印加される前記駆動バイアスのオンオフ駆動により、前記マイクロストリップライン導体の状態を前記高周波信号に対して等価的に接地状態又は短絡状態にし、前記高周波信号に対して値の異なるインダクタンスを生成することを特徴とする可変スパイラルインダクタが提供される。
また、本発明の別の一態様によれば、接地導体を設けた半絶縁性の基板と、この基板に形成され、平面スパイラル状のパターンを有し、一端から入力された高周波信号を他端へ通過させるスパイラル導体と、このスパイラル導体に対し基板面に直交する方向で間隔を介して設けられたマイクロストリップライン導体と、このマイクロストリップライン導体に接続され、オン状態のときに等価的に抵抗性を呈し、オフ状態のときに等価的に容量性を呈するスイッチング素子と、を備え、このスイッチング素子がオン又はオフ動作し、前記マイクロストリップライン導体の状態を前記高周波信号に対して等価的に接地状態又は短絡状態にすることにより、前記高周波信号に対して値の異なるインダクタンスを生成することを特徴とする半導体集積回路装置が提供される。
本発明によれば、インダクタンス値を変えることができ、インダクタ素子が占める基板上でのスペースを小さくしつつ、このインダクタ素子を簡便な構成により半絶縁性の基板上に実現できるようになる。
以下、本発明の実施の形態に係る可変スパイラルインダクタおよび半導体集積回路装置について、図1乃至図9を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る可変スパイラルインダクタは、インダクタンス値を変化させることが可能な平面スパイラル状のインダクタである。本実施形態に係る半導体集積回路装置はこの可変スパイラルインダクタを有し、マイクロ波帯域で動作するMMICである。
本発明の第1の実施形態に係る可変スパイラルインダクタは、インダクタンス値を変化させることが可能な平面スパイラル状のインダクタである。本実施形態に係る半導体集積回路装置はこの可変スパイラルインダクタを有し、マイクロ波帯域で動作するMMICである。
図1は本実施形態に係る可変スパイラルインダクタの斜視図である。図2は可変スパイラルインダクタを含むMMICの平面図である。MMIC1は、半絶縁性の基板2と、それぞれこの基板2の主面に設けられたFET3(スイッチング素子)、パッドメタル4(電極)、及びスパイラル導体5と、このスパイラル導体5に対し基板面の面法線方向に間隔を空けて設けられたマイクロストリップライン導体6と、基板2の裏面に設けられた接地導体7と、基材内に形成されたビアホール8と、高周波信号をスパイラル導体5へ入力する入力端子部9と、スパイラル導体5からの高周波信号を出力する出力端子部10とを有する。
半絶縁性の基板2とは、電子の移動度が大きく且つ不純物密度が十分低く高い抵抗値を有する基板を指す。基板2には化合物半導体基板が用いられており、この化合物半導体としてはGaAs(ガリウムヒ素)やガリウムナイトライド(GaN)などが用いられる。基板2の基板面には誘電体膜が成膜される。
FET3はDC電圧(駆動バイアス)を印加されるゲート電極3aと、基板2の接地導体7に電気的に接続されるソース電極3bと、マイクロストリップライン導体6に接続されるドレイン電極3cとを有する。ゲート電極3aはFET3のオンオフ動作を制御する制御端子として機能する。FET3の電位はオン状態のときDC電圧に対して接地電位であり、オフ状態のとき開放電位である。FET3の状態は、オン状態のときに高周波信号に対して等価的に接地状態となり、オフ状態のときに高周波信号に対して等価的に短絡状態となる。オンオフ動作の制御は逆にしても可能であり、FET3の状態を、オン状態のときに等価的に短絡状態とし、オフ状態のときに等価的に接地とするようにしてもよい。
パッドメタル4は、一例として、レジスト膜を基板面上に塗布した後、このレジスト膜に複数の開口部を形成しパターニングを行ってから、金などのメッキ層を成長させることによって形成された金属膜である。
スパイラル導体5の導体パターンのパターン面は、このスパイラル導体5のパターン形状に沿ってほぼ同一になるように形成されている。スパイラル導体5は、スパイラル巻線の外方に配置された外部端5aと、このスパイラル巻線の内方に配置された内部端5bとを有し、外部端5aから入力された高周波信号を内部端5bへ通過させる。この内部端5bには、スパイラル導体5の導体パターンよりも下方に予め形成された引出し配線5cが接続されている。スパイラル導体5の導体パターンと、引出し配線5cとの間には絶縁膜が成膜されており、引出し配線5cをスパイラル導体5の一部の下方を迂回して巻線の外方へ引出すことにより、これらの引出し配線5c及びスパイラル導体5が短絡せずインダクタンスに影響を与えずに立体的に交叉可能になっている。
スパイラル導体5は、一例として、レジスト膜の基板面への塗布及びパターニングを行い、基板2上に金蒸着により配線層を形成し、その後レジスト膜を除去することによって、基板2上の金属層を残し、平面スパイラル状の導体パターンを形成することにより得られる。
マイクロストリップライン導体6は一方向に長い一定幅のストライプ状の導体あるいは導体層である。このマイクロストリップライン導体6の一端部はドレイン電極3cに接続され、他端部は開放端にされている。マイクロストリップライン導体6の長手方向は基板2の基板面に平行である。マイクロストリップライン導体6は、このマイクロストリップライン導体6の長手方向と、スパイラル導体5の形成領域の短辺方向とが平行になるように形成されている。
このマイクロストリップライン導体6とスパイラル導体5との間には、酸化膜や窒化膜といった絶縁膜が半導体製造プロセスにより形成されている。マイクロストリップライン導体6は、基板2のフラット面の法線方向で距離を隔ててスパイラル導体5に対向している。FET3のオン又はオフの動作により、スパイラル導体5とマイクロストリップライン導体6との間の容量を変化させ、インダクタンス値を変化させるようになっている。
ビアホール8は基板2の主面上のいずれかの導体部と、接地導体7とを電気的に接続する。入力端子部9及び出力端子部10はいずれも2つの接地電極と、これらの接地電極間に配置された信号電極とを有し、図示しない別の高周波素子などによりコンタクトされるようにされている。
また、基板2、スパイラル導体5、マイクロストリップライン導体6、及びパッドメタル4によって、本実施形態に係る可変スパイラルインダクタ30が構成される。駆動バイアスとしてのDC電圧がパッドメタル4に印加され、このDC電圧が変化し、マイクロストリップライン導体6の電位を接地電位又は開放電位にし、高周波信号に対して値の異なるインダクタンスが生成されるようになっている。
MMIC1では、FET3へ異なる値のDC電圧が印加されることにより、このFET3がオン又はオフ動作し、マイクロストリップライン導体6の電位を接地電位又は開放電位にし、供給された高周波信号に対して値の異なるインダクタンスが生成されるようになっている。インダクタンス値が電圧制御により変化することを可能にされている。
このように構成されたMMIC1において、各導体部のパターン形状やパターン幅等は分布定数線路上の素子として予め適宜に設定することにより入力側の特性インピーダンスと出力側の特性インピーダンスとが整合をとられている。MMIC1では、誘電体層としての基板材と、マイクロストリップライン導体6と、接地導体7とによってマイクロストリップ線路が構成され、このマイクロストリップ線路を伝送線路として電磁波が伝播する。入力端子部9へマイクロ波帯の周波数を有する信号レベル既知の高周波信号を入力し、出力端子部10から出力される高周波信号についての特性を、これらの入力端子部9及び出力端子部10にケーブル接続された図示しない測定系が測定する。
FET3のオンオフ動作について述べる。FET3のピンチオフ電圧以上の値を持つDC電圧がゲート電極3aに印加されると、FET3はオン動作する。FET3のオン抵抗値は小さいため、高周波信号にとってFET3は抵抗値の小さい抵抗体に見える。あるいは高周波信号にとってFET3はほとんどスルーに見える。マイクロストリップライン導体6の状態は等価的に接地された状態になる。
また、ピンチオフ電圧よりも小さな値のDC電圧がゲート電極3aに印加されている間、FET3はオフである。例えば負のDC電圧が印加される。その値はFET3のデバイス種類により変えられる。オフ状態では、FET3のオフ容量値は小さいため、高周波信号にとってFET3は容量性素子に見える。マイクロストリップライン導体6の状態は等価的に短絡された状態になる。
図3(a)は比較例としての従来例に係る構造を有するスパイラルインダクタの斜視図である。図3(b)は可変スパイラルインダクタ30の斜視図である。図4は従来例及び本実施例による各スパイラルインダクタ素子のインダクタンス値の周波数特性を示す図である。これらの図において、上述した符号と同じ符号はそれらと同じ要素を表す。図4中、縦軸はインダクタンス値(H)、横軸は周波数(GHz)を表す。
図4において、曲線11はスパイラルインダクタ100のインダクタンス値の周波数特性を表す。曲線12はFET3がオフ状態であるときの可変スパイラルインダクタ30のインダクタンス値の周波数特性を表す。曲線13はFET3がオン状態でるときの可変スパイラルインダクタ30のインダクタンス値の周波数特性を表す。図3(b)のマイクロストリップライン導体6の一端6aは常に開放にされている。FET3がオフ状態ではマイクロストリップライン導体6は高周波信号に対して短絡であり、FET3(入力)側から見るとオープン状態になる。FET3がオン状態ではマイクロストリップライン導体6は高周波信号に対して接地である。
入力信号周波数が3GHzの場合のインダクタンス値を測定したところ、従来構造でのインダクタンス値は、曲線11に示されるように、8.111×10−10(H)であった。3GHzの場合、可変スパイラルインダクタ30のインダクタンス値は、短絡状態のとき8.004×10−10(H)であり、接地状態のとき7.000×10−10(H)であった。
これは、マイクロストリップ線路に沿って電磁波は伝播する場合、基板面から見てスパイラル導体5の上方にマイクロストリップライン導体6が被っているため、スパイラル導体5とマイクロストリップライン導体6との間で容量成分が生じていると考えられる。DC的に開放状態であるとき、電磁波にとってキャパシタとして作用するように見える。この場合でのインダクタンス値は約0.8nHであり、上方にマイクロストリップライン導体6が存在しているか無いかに関わらず、本実施例のインダクタンス値と従来例によるインダクタンス値とは大きな差は見られない。
一方、スイッチングをオンにすると、マイクロストリップライン導体6の電位はビアホール8の電位に等しくされる。電磁波から見て、スパイラル導体5とマイクロストリップライン導体6との間の容量が極めて小さいように見え、キャパシタとして作用しないように見える。容量成分の寄与が少ない分、電磁波から見ると、インダクタンス値が落ちる。
このようにして、本実施形態に係る可変スパイラルインダクタ30及び半導体集積回路装置によれば、インダクタ素子が占めるスペースを小さくしつつ、インダクタンス値を変えることができ、また、これを簡便な構成により実現できるようになる。スパイラル導体5の上部にマイクロストリップラインを交差させることができるため、配線の省スペース化が図れる。
(第2の実施形態)
上記実施形態のマイクロストリップライン導体6の一端は開放にされていたが、本発明の第2の実施形態に係る可変スパイラルインダクタはこのマイクロストリップライン導体6の両端にFET3と別のFETとを接続し、これらをオンオフ駆動することにより、インダクタンス値を変化させるようにしている。本実施形態に係る半導体集積回路装置も可変スパイラルインダクタを有するMMICである。
上記実施形態のマイクロストリップライン導体6の一端は開放にされていたが、本発明の第2の実施形態に係る可変スパイラルインダクタはこのマイクロストリップライン導体6の両端にFET3と別のFETとを接続し、これらをオンオフ駆動することにより、インダクタンス値を変化させるようにしている。本実施形態に係る半導体集積回路装置も可変スパイラルインダクタを有するMMICである。
図5は本実施形態に係る可変スパイラルインダクタの斜視図である。図6は可変スパイラルインダクタを含むMMICの平面図である。これらの図中で既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
MMIC15は、FET3、パッドメタル4、スパイラル導体5、マイクロストリップライン導体6、接地導体7、ビアホール8、入力端子部9、出力端子部10のそれぞれと、マイクロストリップライン導体6の他端に接続され基板2上のFET16と、それぞれこのFET16に接続されたパッドメタル17及びビアホール18とを有する。このMMIC15は、マイクロストリップライン導体6の両端にそれぞれFETスイッチが設けられている点で、マイクロストリップライン導体6の一端にのみFETスイッチを設けその他端を常時開放にする上記MMIC1と異なる。
FET16のピンチオフ電圧やオン抵抗値といった特性はFET3のそれと実質的に等しい。FET16はDC電圧を印加されるゲート電極16a、接地接続されるソース電極16b、及びマイクロストリップライン導体6に接続されるドレイン電極16cを有する。FET16の電位はオン状態のときDC電圧に対して接地電位であり、オフ状態のときDC電圧に対して開放電位である。FET16の状態は、オン状態のときに高周波信号に対して等価的に接地状態となり、オフ状態のときに高周波信号に対して等価的に短絡状態となる。パッドメタル17、ビアホール18は、それぞれパッドメタル4、ビアホール8と実質同じである。
マイクロストリップライン導体6の一端部はドレイン電極3cに接続され、他端部はドレイン電極16cに接続されている。FET3へのオフオフ駆動のタイミングと、FET16のオンオフ駆動のタイミングとは、同じかあるいはコンプリメンタリのいずれかにされており、FET3へのDC電圧の印加と連動してFET16へDC電圧が印加されるようになっている。
FET3、16が同じタイミングで切替えられる場合、FET3、16がともにオンのとき高周波信号に対してマイクロストリップライン導体6は接地される。FET3、16がともにオフのとき高周波信号に対してマイクロストリップライン導体6は短絡される。これらのFET3、16によるオンオフ動作によって、スパイラル導体5とマイクロストリップライン導体6との間の容量が変化し、本実施形態に係る可変スパイラルインダクタのインダクタンス値が変化するようになっている。
また、基板2、スパイラル導体5、マイクロストリップライン導体6、及びパッドメタル4、17によって、本実施形態に係る可変スパイラルインダクタ31が構成される。DC電圧がパッドメタル4、17に同時に印加され、各DC電圧が変化し、マイクロストリップライン導体6の電位を接地電位又は開放電位にすることにより、値の異なるインダクタンスが生成されるようになっている。
このように構成されたMMIC15に対し、入出力の特性インピーダンスを整合させ、入力端子部9へ高周波信号を入力し、出力端子部10から出力される高周波信号についての特性を測定した。インダクタンス値の測定結果を図7に示す。
図7(a)は比較例としての従来例に係る構造を有するスパイラルインダクタ100の斜視図である。図7(b)は本実施例に係る構造を有する可変スパイラルインダクタ31の斜視図である。図8は従来例及び本実施例による各スパイラルインダクタ素子のインダクタンス値の周波数特性を示す図である。これらの図中、既述の符号とそれらと同じ要素を表す。
図8中、曲線19はスパイラルインダクタ100のインダクタンス値の周波数特性を表す。曲線20は可変スパイラルインダクタ31のマイクロストリップライン導体6を短絡状態にしたときのインダクタンス値の周波数特性を表す。曲線21はこのマイクロストリップライン導体6を接地状態にしたときの可変スパイラルインダクタ31のインダクタンス値の周波数特性を表す。
入力信号周波数が3GHzである場合の測定結果により両方のインダクタンス値を比較すると、本実施例でのインダクタンス値は短絡状態のとき7.993×10−10(H)であり、接地状態のとき6.989×10−10(H)であった。従来例でのインダクタンス値は8.111×10−10(H)であった。マイクロストリップライン導体6の有無に関わらず、本実施例によるインダクタンス値と従来例によるインダクタンス値とは特性上大きな差は見られない。一方、オン状態では、電磁波から見て、これらのスパイラル導体5及びマイクロストリップライン導体6間の容量が極めて小さく、キャパシタとして作用しない。容量成分が少ない分、インダクタンス値が落ちる。本実施形態では、マイクロストリップライン導体6の両端部にスイッチング素子が接続されているため、可変スパイラルインダクタ31の接地時における動作の信頼性が高まり、動作の安定性が増す。
本発明のこの実施形態に係る可変スパイラルインダクタ及び半導体集積回路装置によれば、インダクタンス値を変える動作を安定して行えるようになる。
また、FET3とFET16とは実質的に等しいものであったが、これらのFET3とFET16とは別個の入出力特性を持つFET素子であってもよく、例えばFET3及びFET16をオンオフ駆動するためのバイアス電圧値が異なっていてもよい。この場合でも、FET3とFET16とが同時にオンオフされるタイミングで、駆動電圧がこれらのFET3、16に印加されるようにする。
(第3の実施形態)
上記2つの実施形態では、マイクロストリップライン導体6は1本であったが、本発明の第3の実施の形態に係る可変スパイラルインダクタ及び半導体集積回路装置は、マイクロストリップライン導体6を複数本設ける。
上記2つの実施形態では、マイクロストリップライン導体6は1本であったが、本発明の第3の実施の形態に係る可変スパイラルインダクタ及び半導体集積回路装置は、マイクロストリップライン導体6を複数本設ける。
図9(a)は本実施形態に係る半導体集積回路装置における2本のマイクロストリップライン導体6の配置関係を示す図であり、同図には、MMIC22(半導体集積回路装置)を、マイクロストリップライン導体6の長手方向に直交する面で切断した場合のこのMMIC22の断面構造が示されている。2本のマイクロストリップライン導体6と、スパイラル導体5との間のキャパシタンスを増加又は減少させることによって、所望するインダクタンス値が得られるよう、各マイクロストリップライン導体6間の距離や、これらのマイクロストリップライン導体6の基板2からの距離、又は各マイクロストリップライン導体6の導体幅などを決める。各マイクロストリップライン導体6の導体幅を種々変更し、キャパシタンスを変化させてもよい。
また、2本のマイクロストリップライン導体6を基板2の同じ面側に設ける代わりに、これらのマイクロストリップライン導体6をそれぞれ基板2について異なる面に配置してもよい。
図9(b)は本実施形態に係る他の半導体集積回路装置における2本のマイクロストリップライン導体6の配置関係を示す図である。同図には、MMIC23(半導体集積回路装置)を、基板面に平行にされたマイクロストリップライン導体6の長手方向を含み且つ基板面に直交する面で切断した場合のこのMMIC23の断面構造が示されている。上方のマイクロストリップライン導体6、スパイラル導体5間の距離と、下方のマイクロストリップライン導体6、スパイラル導体5間の距離とは等しくされている。2本のマイクロストリップライン導体6はいずれも基板面に対して平行にされている。更にこれらのマイクロストリップライン導体6はいずれか1本の仮想基板法線に対して等しい距離を空けて配置されている。
本発明のこの実施形態に係る可変スパイラルインダクタ及び半導体集積回路装置によれば、所望のインダクタンス値を実現することができるようになる。
(他の実施形態)
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の実施形態では、スパイラル形状は方形に限らず、円形に近い八角形など多角形でもよい。スイッチング素子にはFET3、16が用いられていたが、スイッチング素子には、オンオフ状態の切替え動作を行えるFET以外のPINダイオードなどの能動素子を用いても良い。この場合、能動素子のオン抵抗やピンチオフ電圧などの値に応じてバイアスとしての電圧あるいは電流の値が変えられる。駆動バイアスには電流駆動される能動素子及び抵抗体を用いてもよい。第2の実施形態では、FET3、16が同じタイミングで切替えられていたが、これらのFET3、16をコンプリメンタリに切替えるように駆動制御を行ってもよい。
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の実施形態では、スパイラル形状は方形に限らず、円形に近い八角形など多角形でもよい。スイッチング素子にはFET3、16が用いられていたが、スイッチング素子には、オンオフ状態の切替え動作を行えるFET以外のPINダイオードなどの能動素子を用いても良い。この場合、能動素子のオン抵抗やピンチオフ電圧などの値に応じてバイアスとしての電圧あるいは電流の値が変えられる。駆動バイアスには電流駆動される能動素子及び抵抗体を用いてもよい。第2の実施形態では、FET3、16が同じタイミングで切替えられていたが、これらのFET3、16をコンプリメンタリに切替えるように駆動制御を行ってもよい。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
1,15,22,23…MMIC(半導体集積回路装置)、2…基板、3,16…FET(スイッチング素子)、3a,16a…ゲート電極、3b,16b…ソース電極、3c,16c…ドレイン電極、4,17…パッドメタル(電極)、5…スパイラル導体、5a…外部端、5b…内部端、5c…引出し配線、6…マイクロストリップライン導体、6a…一端、7…接地導体、8,18…ビアホール、9…入力端子部、10…出力端子部、11〜13,19〜21…曲線、30,31…可変スパイラルインダクタ。
Claims (6)
- 接地導体を設けた半絶縁性の基板と、
この基板に形成され、平面スパイラル状のパターンを有し、一端から入力された高周波信号を他端へ通過させるスパイラル導体と、
このスパイラル導体に対し基板面に直交する方向で間隔を介して設けられたマイクロストリップライン導体と、
このマイクロストリップライン導体の電位を接地電位又は開放電位にするための駆動バイアスを印加される電極と、を備え、
この電極へ印加される前記駆動バイアスのオンオフ駆動により、前記マイクロストリップライン導体の状態を前記高周波信号に対して等価的に接地状態又は短絡状態にし、前記高周波信号に対して値の異なるインダクタンスを生成することを特徴とする可変スパイラルインダクタ。 - 接地導体を設けた半絶縁性の基板と、
この基板に形成され、平面スパイラル状のパターンを有し、一端から入力された高周波信号を他端へ通過させるスパイラル導体と、
このスパイラル導体に対し基板面に直交する方向で間隔を介して設けられたマイクロストリップライン導体と、
このマイクロストリップライン導体に接続され、オン状態のときに等価的に抵抗性を呈し、オフ状態のときに等価的に容量性を呈するスイッチング素子と、を備え、
このスイッチング素子がオン又はオフ動作し、前記マイクロストリップライン導体の状態を前記高周波信号に対して等価的に接地状態又は短絡状態にすることにより、前記高周波信号に対して値の異なるインダクタンスを生成することを特徴とする半導体集積回路装置。 - 前記スイッチング素子のオン又はオフの動作により、前記スパイラル導体と前記マイクロストリップライン導体との間の容量を変化させ、前記インダクタンスを変化させることを特徴とする請求項2記載の半導体集積回路装置。
- 前記スイッチング素子が前記マイクロストリップライン導体の一端に接続され、このマイクロストリップライン導体の状態を前記接地状態又は前記短絡状態にすることを特徴とする請求項3記載の半導体集積回路装置。
- 2つの前記スイッチング素子が前記マイクロストリップライン導体の両端にそれぞれ接続され、このマイクロストリップライン導体の状態を前記接地状態又は前記短絡状態にすることを特徴とする請求項3記載の半導体集積回路装置。
- 前記マイクロストリップライン導体の本数、あるいは前記マイクロストリップライン導体の導体幅を変えることにより、前記容量を変化させることを特徴とする請求項3記載の半導体集積回路装置。
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