ところが、たとえば、両面に印刷され印刷が完了した記録媒体と片面に印刷され再度版胴に向けて給送されるべき記録媒体とでは、後者の記録媒体の方が、コシが強いなどの原因により、これらの記録媒体を版胴から離間する場合の版胴に向けた送風の強さが互いに同じである場合には、後者の記録媒体すなわち再給紙経路に進入すべき記録媒体に対する、版胴からの記録媒体の離間作用が弱すぎて、再給紙経路に進入すべき記録媒体が巻き上がりを生じたり排紙経路に進入したりするという問題が発生し得る。かといって、かかる送風を強めると、前者の記録媒体すなわち排紙経路に進入すべき記録媒体に対するかかる離間作用が強すぎて、排紙経路に進入すべき記録媒体が再給紙経路に進入する巻き下がりという問題が発生し得る。
このような問題は、とくに、記録媒体の経路を排紙経路と再給紙経路とで切り替える切替爪を有している構成(たとえば、〔特許文献1〕参照)において発生しやすい。すなわち、かかる切替爪は、一般に、記録媒体の経路を排紙経路に設定する場合と記録媒体の経路を再給紙経路に設定する場合とで姿勢が変化するものであることから、その姿勢により、送風による版胴からの記録媒体の離間作用を変化させ得るものであるため、たとえば、記録媒体を再給紙経路に進入させるべき場合における切替爪の姿勢が、かかる離間作用を低下させるものである場合には、巻き上がりが生じ易くなり得るが、かといって、これに備えて送風の強さを大きく設定すると、巻き下がりが生じ易くなり得る。
また、両面に印刷され印刷が完了した記録媒体と片面に印刷され印刷が完了した記録媒体とでも、前者の記録媒体の方が、コシが弱くなっているなどの原因により、これらの記録媒体を版胴から離間する場合の版胴に向けた送風の強さが互いに同じである場合には、これら記録媒体は何れも排紙経路に進入すべきにもかかわらず、前者の記録媒体に対する、版胴からの記録媒体の離間作用が強すぎて、前者の記録媒体の巻き下がりの問題が発生し得る。かといって、かかる送風の強さを弱く設定すると、後者の記録媒体の巻き上がりの問題が発生し得る。
本発明は、かかる排紙経路と再給紙経路とを有し、版胴に向けた送風による、版胴との対向領域において印刷された記録媒体を版胴から離間させる作用を適切に生ぜしめる両面印刷装置及び記録媒体剥離方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、版胴との対向領域において一方の面または両面に印刷され印刷が完了した記録媒体を排紙するための排紙経路と、前記対向領域において一方の面に印刷された記録媒体の他方の面に印刷を行うために同記録媒体を再び版胴に向けて給送するための再給紙経路と、版胴から記録媒体を離間させるために版胴に向けて送風する風力発生手段を備えた送風手段と、記録媒体を前記再給紙経路に進入させるべきときの方が、記録媒体を前記排紙経路に進入させるべきときよりも、版胴に向けた前記送風手段による送風の強さが増加するように、同送風手段を制御する送風制御手段とを有する両面印刷装置にある。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の両面印刷装置において、前記送風制御手段は、一方の面に印刷され印刷が完了した記録媒体を前記排紙経路に進入させるべきときの方が、両面に印刷され印刷が完了した記録媒体を前記排紙経路に進入させるべきときよりも、版胴に向けた前記送風手段による送風の強さが増加するように、同送風手段を制御することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の両面印刷装置において、記録媒体を前記再給紙経路に進入させるべきときの方が、記録媒体を前記排紙経路に進入させるべきときよりも、その先端が版胴に近づくように駆動される、前記排紙経路と前記再給紙経路とを隔てるための揺動部材を有することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の両面印刷装置において、前記送風制御手段は、前記風力発生手段の出力を制御することにより前記送風の強さを制御することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の両面印刷装置において、前記送風手段は、前記風力発生手段による送風に対する抵抗となる遮風部材を有し、前記送風制御手段は、前記遮風部材による前記抵抗の度合いを制御することにより前記送風の強さを制御することを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の両面印刷装置において、前記風力発生手段を複数有し、前記送風制御手段は、前記複数の風力発生手段のうち駆動する風力発生手段を選択することにより前記送風の強さを制御することを特徴とする。
請求項7記載の発明は、版胴との対向領域において一方の面または両面に印刷され印刷が完了した記録媒体を排紙するための排紙経路と、前記対向領域において一方の面に印刷された記録媒体の他方の面に印刷を行うために同記録媒体を再び版胴に向けて給送するための再給紙経路と、版胴から記録媒体を離間させるために版胴に向けて送風する風力発生手段を備えた送風手段と、前記送風手段による版胴に向けた送風の強さを制御する送風制御手段とを用い、前記送風制御手段により、記録媒体を前記再給紙経路に進入させるべきときの方が、記録媒体を前記排紙経路に進入させるべきときよりも、前記送風の強さが増加するように制御して、同版胴から記録媒体を離間させる記録媒体剥離方法にある。
本発明は、版胴との対向領域において一方の面または両面に印刷され印刷が完了した記録媒体を排紙するための排紙経路と、前記対向領域において一方の面に印刷された記録媒体の他方の面に印刷を行うために同記録媒体を再び版胴に向けて給送するための再給紙経路と、版胴から記録媒体を離間させるために版胴に向けて送風する風力発生手段を備えた送風手段と、記録媒体を前記再給紙経路に進入させるべきときの方が、記録媒体を前記排紙経路に進入させるべきときよりも、版胴に向けた前記送風手段による送風の強さが増加するように、同送風手段を制御する送風制御手段とを有する両面印刷装置にあるので、記録媒体を再給紙経路に進入させるときも排紙経路に進入させるときも、版胴に向けた送風手段からの送風による、版胴との対向領域において印刷された記録媒体を版胴から離間させる作用を、適切に生ぜしめることができ、巻き上がりや巻き下がりを防止ないし抑制でき、良好な印刷を連続して行うことが可能な、ユーザーの信頼性の高い両面印刷装置を提供することができる。
前記送風制御手段は、一方の面に印刷され印刷が完了した記録媒体を前記排紙経路に進入させるべきときの方が、両面に印刷され印刷が完了した記録媒体を前記排紙経路に進入させるべきときよりも、版胴に向けた前記送風手段による送風の強さが増加するように、同送風手段を制御することとすれば、記録媒体を再給紙経路に進入させるときも排紙経路に進入させるときも、また、排紙経路に進入する記録媒体が片面に印刷されているときも両面に印刷されているときも、版胴に向けた送風手段からの送風による、版胴との対向領域において印刷された記録媒体を版胴から離間させる作用を、適切に生ぜしめることができ、巻き上がりや巻き下がりを防止ないし抑制でき、良好な印刷を連続して行うことが可能な、ユーザーの信頼性のより高い両面印刷装置を提供することができる。
記録媒体を前記再給紙経路に進入させるべきときの方が、記録媒体を前記排紙経路に進入させるべきときよりも、その先端が版胴に近づくように駆動される、前記排紙経路と前記再給紙経路とを隔てるための揺動部材を有することとすれば、記録媒体を再給紙経路に進入させるときに揺動部材によって送風が妨げられても、記録媒体を排紙経路に進入させるときに揺動部材によって送風が妨げられなくても、版胴に向けた送風手段からの送風による、版胴との対向領域において印刷された記録媒体を版胴から離間させる作用を、適切に生ぜしめることができ、巻き上がりや巻き下がりを防止ないし抑制でき、良好な印刷を連続して行うことが可能な、ユーザーの信頼性の高い両面印刷装置を提供することができる。
前記送風制御手段は、前記風力発生手段の出力を制御することにより前記送風の強さを制御することとすれば、記録媒体を再給紙経路に進入させるときも排紙経路に進入させるときも、風力発生手段の出力を制御することによって、版胴に向けた送風手段からの送風による、版胴との対向領域において印刷された記録媒体を版胴から離間させる作用を、適切に生ぜしめることができ、巻き上がりや巻き下がりを防止ないし抑制でき、良好な印刷を連続して行うことが可能な、ユーザーの信頼性の高い両面印刷装置を提供することができる。
前記送風手段は、前記風力発生手段による送風に対する抵抗となる遮風部材を有し、前記送風制御手段は、前記遮風部材による前記抵抗の度合いを制御することにより前記送風の強さを制御することとすれば、記録媒体を再給紙経路に進入させるときも排紙経路に進入させるときも、遮風部材による、風力発生手段による抵抗に対する抵抗の度合いを制御することによって、版胴に向けた送風手段からの送風による、版胴との対向領域において印刷された記録媒体を版胴から離間させる作用を、適切に生ぜしめることができ、巻き上がりや巻き下がりを防止ないし抑制でき、良好な印刷を連続して行うことが可能な、ユーザーの信頼性の高い両面印刷装置を提供することができる。
前記風力発生手段を複数有し、前記送風制御手段は、前記複数の風力発生手段のうち駆動する風力発生手段を選択することにより前記送風の強さを制御することとすれば、記録媒体を再給紙経路に進入させるときも排紙経路に進入させるときも、複数の風力発生手段のうち駆動する風力発生手段を選択することによって、版胴に向けた送風手段からの送風による、版胴との対向領域において印刷された記録媒体を版胴から離間させる作用を、適切に生ぜしめることができ、巻き上がりや巻き下がりを防止ないし抑制でき、良好な印刷を連続して行うことが可能な、ユーザーの信頼性の高い両面印刷装置を提供することができる。
本発明は、版胴との対向領域において一方の面または両面に印刷され印刷が完了した記録媒体を排紙するための排紙経路と、前記対向領域において一方の面に印刷された記録媒体の他方の面に印刷を行うために同記録媒体を再び版胴に向けて給送するための再給紙経路と、版胴から記録媒体を離間させるために版胴に向けて送風する風力発生手段を備えた送風手段と、前記送風手段による版胴に向けた送風の強さを制御する送風制御手段とを用い、前記送風制御手段により、記録媒体を前記再給紙経路に進入させるべきときの方が、記録媒体を前記排紙経路に進入させるべきときよりも、前記送風の強さが増加するように制御して、同版胴から記録媒体を離間させる記録媒体剥離方法にあるので、記録媒体を再給紙経路に進入させるときも排紙経路に進入させるときも、版胴に向けた送風手段からの送風による、版胴との対向領域において印刷された記録媒体を版胴から離間させる作用を、適切に生ぜしめることができ、巻き上がりや巻き下がりを防止ないし抑制でき、良好な印刷を連続して行うことが可能な、ユーザーの信頼性の高い記録媒体剥離方法を提供することができる。
図1に本発明を適用した両面印刷装置としての両面孔版印刷装置の概略を示す。この両面孔版印刷装置100は、一般に印刷等に用いられる普通紙の他、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをも用紙であるシート状の記録媒体として印刷を行なうことが可能である。両面孔版印刷装置100において、スキャナ、製版・給版、排版の機構、主要な機能については従来から知られている製版印刷一体型孔版印刷装置と同様のため説明を省略する。
両面孔版印刷装置100において、版胴としての印刷ドラム1は図示しない駆動源により同図における時計回り方向である矢印方向に回転駆動される。印刷ドラム1の外周面には、画像情報に基づいて製版装置2により穿孔製版された孔版原紙としてのマスタ3がその先端部をクランパ4によってクランプされて巻き付け装着されるようになっている。
製版されたマスタ3には、表面印刷用の第1の画像A(以下、「A面画像」と呼ぶ)と、裏面印刷用の第2の画像B(以下、「B面画像」と呼ぶ)が印刷ドラム1の回転方向順に並んで形成されている。
これらマスタ3上の画像の元となるデジタル画像データは、原稿をスキャナ5で読み取って作成され、又はPC等のコンピュータ上で作成される。原稿のセットは図示しない自動原稿送り装置(ADF)やオペレータによるコンタクトガラスヘの原稿セット操作により行われる。デジタル画像データの作成は、コンピュータ上に作成されたデジタル原稿を出力したものでも良い。これらデジタル画像データが製版装置2に送られマスタ3への穿孔製版が行われる。
給紙台6には記録媒体としての印刷用紙7が積載されている。この印刷用紙7はA面画像の大きさとB面画像の大きさとに適応した用紙サイズとなっている。
つまり片面印刷時の最大印刷サイズが例えばA3サイズである場合は、両面印刷の場合の最大印刷サイズはおおよそA4サイズとなり、最大通紙用紙もA4サイズになる。通紙方向は短手方向になる。
印刷ドラム1の内部には、インキローラ1aとこのインキローラ1aとの間に楔状のインキ溜まり1bを形成するドクターローラ1c等が設けられ、印刷ドラム1の内周面にインキを供給するようになっている。
給紙台6は図示しない昇降機構により昇降可能となっている。印刷用紙7はピックアップ給紙コロ8で送られ、分離コロ9と分離パット10で1枚ずつに分離され、レジストローラ対11へ向けて送られる。印刷用紙7はレジストローラ対11で一旦停止されて斜めずれを修正された後、印刷ドラム1に対して所定の位相タイミングにて印刷ドラム1との対向領域、具体的には印刷ドラム1と押圧部材としてのプレスローラ12の間、すなわち印圧部である印刷部に向けて送り出される。プレスローラ12は印刷ドラム1に対して図示しない接離機構により接離自在に設けられている。
給紙台6、ピックアップ給紙コロ8、分離コロ9及び分離パット10、レジストローラ対11等により給紙装置60が構成されている。
印刷部でA面画像を印刷された印刷用紙7Aは上向きに切り替わっている揺動部材である切替部材としての切替爪13により、図の左下方向に案内され、再給紙トレイ14に向かって排出される。再給紙トレイ14はベルト式の吸引搬送機構を有している。ベルト式吸引搬送機構は、2本のローラ15a、15bと、その間に掛け渡された複数本の無端ベルト16と、比較的弱い吸着力を発生する吸引ファン17から構成されている。
ベルト式吸引搬送機構を有する再給紙トレイ14の上方には、すれ違いガイド板18が設けられていて、このすれ違いガイド板18は図示しない駆動装置によって印刷用紙7の排出に合わせて高速で矢印d方向に往復移動し、印刷用紙7Aの先端部をクランプして案内するようになっている。
両面印刷時において、印刷部で一方の面にA面画像を印刷された印刷用紙7Aは、その先端部をすれ違いガイド板18に設けられたクランパ19で挟持されて、すれ違いガイド板18の左下方向への移動によって、既に再給紙トレイ14上にある一方の面に印刷済みの印刷用紙7Bの上面との接触が防止された状態で再給紙トレイ14上に案内・搬送される。
再給紙トレイ14上にあった印刷用紙7Bは、ベルト式吸引搬送装置によって右方向に搬送されるが、再給紙トレイ14の右端にはストッパ20が設けられており、印刷用紙7Bは先端がストッパ20に突き当たって先端位置を位置決めされた状態で停止している。
印刷用紙7Bはこの状態で一時待機しているが、印刷ドラム1に対して所定のタイミング、すなわち、給紙装置60から印刷部に送られたA面画像印刷用の印刷用紙7の後端に続けて印刷用紙7Bが印刷部に送り込まれるタイミングで、再給紙されることになる。
再給紙トレイ14の図中右側には、片面印刷済みの印刷用紙7をプレスローラ12に所定のタイミングで当接させるローラ手段としての再給紙コロ21が設けられている。再給紙コロ21は図示しない機構によりプレスローラ12に対して接離自在となるように上下方向に揺動自在に支持されており、前記所定のタイミングで印刷用紙7Bの先端部すなわち先頭部を押し上げ、印刷用紙7Bをプレスローラ12に当接させる。
再給紙コロ21の押し上げ動作により印刷用紙7Bの先端はストッパ20から外れ、搬送可能な状態になっている。プレスローラ12は印刷ドラム1の周速と同じ周速にて回転駆動されており、再給紙コロ21によって押し当てられた印刷用紙7Bは搬送カを受けて搬送される。
再給紙コロ21の下流から印刷ドラム1とプレスローラ12のニップ手前までの範囲にかけては、印刷用紙7Bは用紙ガイド手段22によって案内される。
用紙ガイド手段22は全体として弓形の形状をなし、プレスローラ12に対しては、プレスローラ12の外周面から約0.3〜1.0mmの微細な隙間をもって非接触状態に配置されている。すれ違いガイド板18、再給紙トレイ14、再給紙コロ21、ストッパ20、すれ違いガイド板18及びクランパ19、用紙ガイド手段22等により再給紙搬送装置61が構成されている。
印刷用紙7Bは、プレスローラ12と用紙ガイド手段22間の上記微細な隙間を、プレスローラ12に密着した状態で搬送され、印刷ドラム1とプレスローラ12のニップ部である印刷部まで送り込まれる。こうして再給紙されて印刷部に入ってきた印刷用紙7Bは反転されており、先ほどの印刷済みの一方の面が下面に、未印刷面である他方の面が上面になっている。今度はその上面、すなわち未印刷面にB面画像を、マスタ3のB領域によって印刷する。こうして両面印刷が行われることになる。
両面印刷が行われ印刷が完了した印刷用紙7Cは、今度は二点鎖線で示すように下向きに切り替わっている切替爪13により左方向に略水平に案内され、2本のローラ28a、28bと、その間に掛け渡された複数本の無端ベルト29と、吸着カを発生する吸引ファン30から構成されるベルト式吸着搬送装置62により、図示しない排紙トレイに向けて搬送・排出される。そして排紙トレイ上に順次積載される。
切替爪13と再給紙搬送装置61とによって形成される、印刷用紙7の経路、すなわち、印刷ドラム1との対向領域である印刷部において片面に印刷された印刷用紙7の他方の面に印刷を行うためにこの印刷用紙7を再度印刷部に向けて給送するための搬送経路は、再給紙経路となっている。
また、切替爪13とベルト式吸着搬送装置62によって形成される、印刷用紙7の経路、すなわち、印刷部において両面に印刷され印刷が完了した印刷用紙7を排紙トレイに向けて排紙するための搬送経路は、排紙経路となっている。この排紙経路は、両面印刷時と片面印刷時とで共通であり、片面印刷時において一方の面に印刷され印刷が完了した印刷用紙7も排紙トレイに向けて通過する。
切替爪13は全体として印刷ドラム1の軸方向に延びるプレート状に形成され、排紙経路と再給紙経路とを隔てている。
切替爪13の切り替えは、両面孔版印刷装置100全体の動作を制御する制御手段52によって制御される図示しない切替機構によって行われる。切替機構は、印刷ドラム1に同期して回転するカムにより、切替爪13を、印刷が完了した印刷用紙7を排紙トレイへ案内する下向き位置と、両面印刷時において片面に印刷された印刷用紙7を再給紙搬送装置61へ案内する上向き位置との何れかに所定のタイミングで切り替える構成を有している。切替機構を制御する制御手段52は、経路切替制御手段として機能する。
下向き位置は、印刷が完了した印刷用紙7を排紙経路に進入させるべきときに占める切替爪13の姿勢であり、上向き位置は、両面印刷時において片面に印刷された印刷用紙7を再給紙経路に進入させるべきときに占める切替爪13の姿勢である。切替爪13は、上向き位置を占めるときの方が、下向き位置を占めるときよりも、その先端が、印刷ドラム1の外周面、厳密にはマスタ3の表面に近接し、両面印刷時において片面に印刷された印刷用紙7を再給紙搬送装置61へ案内するように、制御手段52による制御の下、切替機構によって、上向き位置と下向き位置との何れかを占めるように駆動される。
制御手段52は、内部に、図示を省略するCPU、ROM、RAMおよびタイマ等を備え、それらが図示しない信号バスによって接続された構成を有している。
切替爪13の印刷ドラム回転方向下流側には、印刷ドラム1の外周面、厳密にはマスタ3の表面より印刷済みの印刷用紙7を剥離し離間させる剥離手段としての送風手段であるエアーナイフ50が配置されている。
エアーナイフ50は、風力発生手段としてのファン50aと、ファン50aによって形成された空気流を印刷ドラム1に向けて送風するためのダクト50bとを有している。ファン50aの駆動は、制御手段52によって制御される。
エアーナイフ50の駆動すなわち送風は、印刷ドラム1の回転と同時に開始される。両面印刷時においては、A面画像の印刷時に、切替機構により、切替爪13が、図2(a)において実線で示す上向き位置となるように駆動される。
所定のタイミングでプレスローラ12が印刷ドラム1に押圧され、続いて、印刷用紙7Aがプレスローラ12のニップである印刷部から排出される。印刷部から排出された印刷用紙7Aはその紙のコシによって、先端部が、同図(b)に示すように、印刷ドラム1から剥がれる。
このコシ力による剥がれをきっかけに、同図(c)に示すように、切替爪13の先端と印刷ドラム1の外周面、厳密にはマスタ3の表面との間を通過してきたエアーナイフ50からのエアー言い換えると空気流によって、印刷用紙7Aが印刷ドラム1から連続的に剥離され、再給紙搬送装置61へ案内される。
その後、印刷用紙7Bが、上述のようにして印刷部に送り込まれ、B面画像を印刷されるが、この印刷用紙7Bの先端が印刷部を通過するときまでに、切替機構により、切替爪13が、図3(a)において実線で示す下向き位置となるように駆動される。
所定のタイミングでプレスローラ12が印刷ドラム1に押圧され、続いて、印刷用紙7Bがプレスローラ12のニップである印刷部から排出される。印刷部から排出された印刷用紙7Bはその紙のコシによって、先端部が、同図(b)に示すように、印刷ドラム1から剥がれる。
このコシ力による剥がれをきっかけに、同図(c)に示すように、印刷ドラム1の外周面、厳密にはマスタ3の表面に沿って流れてきたエアーナイフ50からのエアー言い換えると空気流によって、印刷用紙7Bが印刷ドラム1から連続的に剥離され、切替爪13の上面を経てベルト式吸着搬送装置62、さらには排紙トレイへ案内される。
なお、図3に沿って説明した以上の動作は、後に特別に説明する動作を除いて片面印刷時においても同様に行われる。
ここで、たとえば、両面に印刷され印刷が完了した印刷用紙7Bと片面に印刷され再度印刷ドラム1に向けて給送されるべき印刷用紙7Aとでは、印刷用紙7Aの方が、コシが強いなどの原因により、印刷用紙7A、印刷用紙7Bを印刷ドラム1から離間する場合の印刷ドラム1に向けたエアーナイフ50からの送風の強さが互いに同じである場合には、印刷用紙7Aに対する、印刷ドラム1からの離間作用が弱すぎて、巻き上がりを生じたり排紙経路に進入したりするという問題が発生し得る。かといって、かかる送風の強さを大きく設定すると、印刷用紙7Bに対するかかる離間作用が強すぎて巻き下がりの問題が発生し得る。
このような問題は、とくに、両面孔版印刷装置100のように、記録媒体の経路を排紙経路と再給紙経路とで切り替える切替爪を有している構成において発生しやすい。すなわち、かかる切替爪は、両面孔版印刷装置100においてもそうであるように、一般に、記録媒体の経路を排紙経路に設定する場合と記録媒体の経路を再給紙経路に設定する場合とで姿勢が変化するものであることから、その姿勢により、送風による版胴からの記録媒体の離間作用を変化させ得るものである。そのため、たとえば、両面孔版印刷装置100を例にとって説明すると、図8(a)に示す、両面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7Aを再給紙経路に進入させるべき場合における切替爪13の姿勢が、同図(b)に示すように、エアーナイフ50からの風を遮ることにより、かかる離間作用を低下させると、同図(c)に示すように、巻き上がりが生じ易くなり得るが、かといって、これに備えて送風を大きく設定すると、図9(a)に示す、両面印刷時における両面印刷済み又は片面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7を排紙経路に進入させるべき場合における切替爪13の姿勢は、同図(b)に示すように、エアーナイフ50からの強い風を遮らないことにより、かかる離間作用が強すぎて、同図(c)に示すように、巻き下がりが生じ易くなり得る。
また、両面に印刷され印刷が完了した印刷用紙7Bと片面に印刷され印刷が完了した印刷用紙7とでも、印刷用紙7Bの方が、コシが弱くなっているなどの原因により、これらの印刷用紙7B、7を印刷ドラム1から離間する場合の印刷ドラム1に向けた送風の強さが互いに同じである場合には、これら印刷用紙7B、7は何れも排紙経路に進入すべきであって図10(a)に示すように切替爪13の姿勢もそのようになっているにもかかわらず、同図(b)に示すように、印刷用紙7Bに対する印刷ドラム1からの離間作用が強すぎて巻き下がりの問題が発生したり、同図(c)に示すように、印刷用紙7に対する印刷ドラム1からの離間作用が弱すぎて巻き上がりの問題が発生したりし得る。
そこで、両面孔版印刷装置100においては、制御手段52により、印刷用紙7を再給紙経路に進入させるべきときの方、すなわち両面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7Aを再給紙経路に進入させるべきの方が、印刷用紙7を排紙経路に進入させるべきとき、すなわち、両面印刷時における両面印刷済みの印刷用紙7B又は片面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7を排紙経路に進入させるべきときよりも、印刷ドラム1に向けたエアーナイフ50による送風の強さが増加するように、エアーナイフ50を制御する。
また、これとともに、両面孔版印刷装置100においては、制御手段52により、印刷用紙7を同じ搬送経路に進入させるべきときであっても、一方の面に印刷され印刷が完了した印刷用紙7を排紙経路に進入させるべきとき、すなわち、片面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7を排紙経路に進入させるべきときの方が、両面に印刷され印刷が完了した印刷装置7Bを排紙経路に進入させるべきとき、すなわち、両面印刷時における両面印刷済みの印刷用紙7Bを排紙経路に進入させるべきよりも、印刷ドラム1に向けたエアーナイフ50による送風の強さが増加するように、エアーナイフ50を制御する。
したがって、エアーナイフ50による印刷ドラムに向けたエアーナイフ50による送風の強さは、強い順から、図4(a)に示すように、両面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7Aを再給紙経路に進入させるべきとき、図4(b)に示すように、片面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7を排紙経路に進入させるべきとき、図4(c)に示すように、両面印刷時における両面印刷済みの印刷用紙7Bを排紙経路に進入させるべきとき、となっている。このような制御により、同図に示されているように、図8ないし図10に示したのと異なり、何れの場合においても、印刷用紙7A、7B、7は、印刷ドラム1からの適切な離間作用を受け、進入すべき再給紙経路あるいは排紙経路に進入する。
このような制御を行う点において、制御手段52は、送風制御手段として機能する。本形態において、送風制御手段として機能する制御手段52は、図5に示すように、両面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7Aを再給紙経路に進入させるべきときのエアーナイフ50の出力をエアーナイフ50の最大出力とし、これを100(%)とすると、片面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7を排紙経路に進入させるべきときのエアーナイフ50の出力を86(%)とし、両面印刷時における両面印刷済みの印刷用紙7Bを再給紙経路に進入させるべきときのエアーナイフ50の出力を80(%)としている。
これらの値は、本形態における値に限られるものではないが、本形態において、かかる値は、同図(a)に示す場合においては、切替爪13により風が遮られてしまうことのみならず、印刷用紙7Aを印刷ドラム1から離間させる位置が他の場合に比べてダクト50bから遠い点をも考慮したものとなっている。また同図(c)に示す場合においては、両面印刷により印刷用紙7Bが弱くなっていること及び切替爪13により風が遮られないことのみならず、印刷用紙7Bが再給紙の際にプレスローラ12の外周面に沿って搬送されるためかかる外周面の形にカールして巻き下がりが発生しやすい点をも考慮したものとなっている。また同図(b)に示す場合においては、切替爪13により風が遮られないため同図(a)に示した場合よりも巻き上がりが発生しにくく、かつ片面のみに印刷が行われているため同図(c)に示した場合よりも巻き下がりが発生しにくい点を考慮したものとなっている。
エアーナイフ50による送風の強さ、あるいはエアーナイフ50の出力とは、ダクト50bから吹き出す送風の強さ、エネルギーであって、印刷用紙7A、7B、7を印刷ドラム1から離間させるのに機能する大きさをいう。
本形態において、送風制御手段としての制御手段52は、かかる送風の強さを、ファン50aの出力、具体的にはファン50aの回転数制御によって制御している。
送風の強さの制御態様はこれに限らず、エアーナイフ50の構成等によって種々の制御態様が挙げられる。
たとえば、図6に示すように、エアーナイフ50が、ダクト50b内に、ファン50aによる送風に対する抵抗となる防風部材としての遮風シャッター50cと、遮風シャッター50cを回転駆動して遮風シャッター50cによるファン50aによる送風に対する抵抗の度合いを変化させる、送風制御手段としての制御手段52によって駆動を制御される防風度調整手段としてのモータ50dとを有する場合には、送風制御手段としての制御手段52によってモータ50dを駆動して遮風シャッター50cの位相言い換えると姿勢を制御することにより、遮風シャッター50cによるファン50aによる送風に対する抵抗の度合いを変化させる。なお、ファン50aの出力は一定とする。
この場合、送風制御手段として機能する制御手段52は、同図(a)に示すように、両面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7Aを再給紙経路に進入させるべきときは、遮風シャッター50cの姿勢をファン50aによる送風方向に平行にしてファン50aによる送風に対する抵抗の度合いを最も小さくすることでエアーナイフ50による送風の強さを最大とし、同図(b)に示すように、片面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7を排紙経路に進入させるべきときは、遮風シャッター50cの姿勢をファン50aによる送風方向に対しして傾斜させてファン50aによる送風に対する抵抗の度合いを中程度とすることでエアーナイフ50による送風の強さを中程度とし、同図(c)に示すように、両面印刷時における両面印刷済みの印刷用紙7Bを再給紙経路に進入させるべきときは、遮風シャッター50cの姿勢をファン50aによる送風方向に垂直にしてファン50aによる送風に対する抵抗の度合いを最も大きくすることでエアーナイフ50による送風の強さを最小とする。この場合も、同図に示されているように、図8ないし図10に示したのと異なり、印刷用紙7A、7B、7は、印刷ドラム1からの適切な離間作用を受け、進入すべき再給紙経路あるいは排紙経路に進入する。
また、図7に示すように、エアーナイフ50が、ファン50aを複数有する場合には、送風制御手段としての制御手段52によってこの3つのファン50aのうち駆動するファン50aを選択する。なお、同図に示した一方のファン50aの出力は、他方のファン50aの出力よりも大きいものとする。
この場合、送風制御手段として機能する制御手段52は、同図(a)に示すように、両面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7Aを再給紙経路に進入させるべきときは、すべてのファン50aを選択して駆動することでエアーナイフ50による送風の強さを最大とし、同図(b)に示すように、片面印刷時における片面印刷済みの印刷用紙7を排紙経路に進入させるべきときは、出力の大きい方のファン50aを選択して駆動することでエアーナイフ50による送風の強さを中程度とし、同図(c)に示すように、両面印刷時における両面印刷済みの印刷用紙7Bを再給紙経路に進入させるべきときは、出力の小さい方のファン50aを選択して駆動することでエアーナイフ50による送風の強さを最小とする。この場合も、同図に示されているように、図8ないし図10に示したのと異なり、印刷用紙7A、7B、7は、印刷ドラム1からの適切な離間作用を受け、進入すべき再給紙経路あるいは排紙経路に進入する。
なお、エアーナイフ50がファン50aを3つ以上有する場合には、ファン50aの出力が互いに同じであっても、選択するファン50aの数を各場合で異ならせることによりエアーナイフ50の出力を互いに異ならせることが可能となる。
また、図4、図6、図7に示した構成及び制御を適宜組み合わせることによりエアーナイフ50の出力を互いに異ならせることも可能である。
制御手段52は、メモリに、以上述べた、送風制御手段として機能し、印刷ドラム1から、印刷用紙7Aを離間させる場合、印刷用紙7Bを離間させる場合、印刷用紙7を離間させる場合のそれぞれについて、互いにエアーナイフ50による送風の強さが互いに異なるように制御する記録媒体剥離方法を実行するための記録媒体剥離プログラムを記憶している。この点、制御手段52ないしメモリは、記録媒体剥離プログラム記憶手段として機能している。かかる記録媒体剥離プログラムは、制御手段52に備えられたメモリのみならず、半導体媒体(たとえば、ROM、不揮発性メモリ等)、光媒体(たとえば、DVD、MO、MD、CD−R等)、磁気媒体(たとえば、ハードディスク、磁気テープ、フレキシブルディスク等)その他の記憶媒体に記憶可能であり、かかるメモリ、他の記憶媒体は、かかる記録媒体剥離プログラムを記憶した場合に、かかる記録媒体剥離プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体を構成する。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、両面印刷装置は、製版印刷一体型孔版印刷装置、あるいは孔版印刷装置に限らず、両面印刷が可能な他のタイプの印刷装置であっても良い。
また、風力発生手段による送風の強さは、上述の条件に加えて、記録媒体の種類、たとえば記録媒体が普通紙であるか、カード、ハガキ等の厚紙であるか等に応じて決定するようにしても良い。
本発明は、搖動部材を備えていない両面印刷装置にも適用可能である。版胴からの記録媒体の離間のし易さは、揺動部材を備えていない場合においても、記録媒体を再給紙経路に進入させるか排紙経路にさせるかによって相違しうるためである。なお、搖動部材を備えている場合、揺動部材自体が記録媒体を版胴から離間させる機能を備えていても良い。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。