JP2011099052A - ポリフェニレンエーテルの製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンエーテルの製造方法 Download PDF

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知宏 近藤
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Abstract

【課題】反応槽間での分子量のばらつきを効果的に抑制し、収率が高く、色調に優れ、かつ耐熱性の良好なポリフェニレンエーテルの製造方法を提供する
【解決手段】触媒の存在下でフェノール化合物を酸化重合する工程を含むポリフェニレンエーテルの製造方法において、前記触媒は、(A)銅化合物、(B)特定の構造を有するジアミン化合物、(C)ハロゲン化合物、及び(D)特定の構造を有するベンズアルデヒド化合物を含み、前記(A)に含まれる銅原子に対する前記(D)のモル割合が1〜50モル%である、ポリフェニレンエーテルの製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリフェニレンエーテルの製造方法に関する。
ポリフェニレンエーテルは、加工性、生産性に優れており、それを用いた溶融射出成型や溶融押出成型等の各種成型法により、所望の形状の製品や部品を効率良く生産できるという利点を有している。そのため、ポリフェニレンエーテルは、電気・電子材料分野及び自動車分野その他各種工業材料分野、並びに食品の包装分野の製品や部品の材料として幅広く用いられている。
このような用途の多様化に伴い、分子量やガラス転移温度等の特性の異なる多種のポリフェニレンエーテルが求められている。また、品質の観点からは、色の白いポリフェニレンエーテルが求められている。さらには、多種のポリフェニレンエーテルを製造する際、分子量などの特性が機械的因子などによる影響でばらつくことを抑え、収率が高く、効率の良い製造技術の要求も高まっている。また、一般にポリフェニレンエーテルを製造するに際して、低分子量体が生成する状況の場合には、副生成物の選択率が高くなることや、収率が低下することが知られている。特にポリフェニレンエーテルは、種々の溶剤に溶解して使用されることが多々あり、溶解しやすさの観点から、パウダー状態の荷姿が望まれている。パウダーの色調と種々の溶剤への溶解性とを両立するポリフェニレンエーテルのパウダーが要求されている。
一般に、ポリフェニレンエーテルは、例えば、特許文献1、2に記載されている、溶剤への溶解性を向上させたり変性させることを目的とした低分子量体から、特許文献3に記載されている、ガスバリア性を高めることを目的とした高分子量体まで存在する。
分子量を変化させるポリフェニレンエーテルの製造方法としては、特許文献4において、2,4,6−トリメチルフェノールを加えることでその添加量に応じて得られるポリフェニレンエーテルの分子量を変化させることが提案されている。
また、特許文献4には、溶媒として、ポリフェニレンエーテルの良溶媒(例えばベンゼン、トルエン、キシレン)とポリフェニレンエーテルの貧溶媒(例えばケトン、エーテル、アルコール)との混合溶媒を用い、良溶媒/貧溶媒の比を変えることにより、種々の分子量のポリマーが得られることが記載されている。しかし、特許文献4には、この方法は不正確であり、要求する分子量のポリマーを得る方法としては適当ではないとも記載されている。
同様に、特許文献5には、ポリフェニレンエーテルの良溶媒である芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)と、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒である脂肪族炭化水素(例えばn−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン等)との混合溶媒中で重合を実施することが開示されている。しかし、特許文献5には、生成水やアミン類が反応系内に存在した状態で反応を進めると、オリゴフェニレンエーテルが粒子を不均一状態で発生させた場合に反応容器などに付着しやすくなる欠点があると記載されている。そのため、特許文献5に開示される方法も満足のいくものではない。
特許文献6には、低分子量体を含み、かつ色調に優れるポリフェニレンエーテルを得る方法が開示されている。しかし、当該方法では、ηsp/cが0.2以上のポリフェニレンエーテルにおいて、色調が十分優れたものをスケール等の発生無しに効率的に得ることはできない。
一方で、特許文献7には、ポリフェニレンエーテルの製造に用いられる触媒であって高活性のものが多数開示されている。そのような触媒を用いることにより、活性が高いため、目的とする分子量への到達時間が短くなるというメリットがある。
米国特許出願公開第2003/0130438号明細書 特開2004−99824号公報 国際公開第02/12370号パンフレット 米国特許第3440217号明細書 特公昭50−6520号公報 特開2003−261674号公報 特開平10−87818号公報
多種のポリフェニレンエーテルを製造する技術としては、バッチ重合方式が有用であることが知られている。ところが、バッチ重合方式は、多種のポリフェニレンエーテルの製造設計の自由度が狭く、効率的なポリフェニレンエーテルの製造技術とはいえない。そのため、多種のポリフェニレンエーテルの製造設計の自由度がより広く、効率的なポリフェニレンエーテルの製造技術を開発することが求められている。特に、バッチ重合の際に発生し得る反応器内のスケールは、ポリフェニレンエーテルの収率を低下させる。従って、所望量のポリフェニレンエーテルを得るためには、原料であるフェノール化合物を必要以上に用いなければならず、その結果、コスト高を招来し、環境への負荷を増大させるおそれもある。また、多種のポリフェニレンエーテルを製造する際、種々の反応槽を用いて重合することが多く、各反応槽間での分子量などの特性がばらつく可能性が高い。
また、活性が高い触媒を用いた場合、効率的にポリフェニレンエーテルを得ることが可能である。しかし、近年では、活性が高いだけでなく、各反応槽間での分子量のばらつきが少ない触媒へのニーズが少なからず存在する。
さらに、同一種類のポリフェニレンエーテルを多量かつ安定的に製造する方式として、連続重合方式が有用であることが知られている。しかしながら、この方式においても同様に、所望量のポリフェニレンエーテルを設計通りに得るためには、反応器内のスケールを低減させる等、効率の高い製造技術が必要である。また、ポリフェニレンエーテルは従来、黄色又は褐色を帯びており、加工時の熱履歴によりさらに色調が強くなる。加工時の熱履歴を受ける前のポリフェニレンエーテルにおける色調が強いと、加工時の熱履歴により、さらに着色する。そのような場合、ポリフェニレンエーテルの色調を整えるために、染料を用いる必要がある。しかし、材料の高純度化が進む昨今では、調色のための染料を含む他の成分の使用量を低減することが求められている。そのため、加熱前のポリフェニレンエーテル自体の着色を極力抑えることも重要となる。
そこで、上述の従来技術の問題点に鑑み、本発明は、反応槽間での分子量のばらつきを効果的に抑制し、収率が高く、色調に優れ、かつ耐熱性の良好なポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、特定の構造を有するベンズアルデヒド化合物をはじめとする所定の化合物群を含む触媒の存在下でフェノール化合物の酸化重合を行ってポリフェニレンエーテルを製造することにより、触媒活性を維持しつつ反応槽間での分子量のばらつきを効果的に抑制し、収率が高く、色調に優れ、かつ耐熱性の良好なポリフェニレンエーテルを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
触媒の存在下でフェノール化合物を酸化重合する工程を含むポリフェニレンエーテルの製造方法において、
前記触媒は、
(A)銅化合物、
(B)下記一般式(1):
Figure 2011099052
(上記式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基からなる群より選ばれる基を表し、ただし、それら全てが同時に水素原子ではなく、R5は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。)
で表されるジアミン化合物、
(C)ハロゲン化合物、並びに
(D)下記一般式(2):
Figure 2011099052
(上記式(2)中、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基からなる群より選ばれる基を表す。)
で表されるベンズアルデヒド化合物を含み、
前記(A)に含まれる銅原子に対する前記(D)のモル割合が1〜50モル%である、ポリフェニレンエーテルの製造方法。
[2]
30℃において0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定された該ポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c)が0.20dL/g以上である、[1]に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
[3]
前記触媒が、3級モノアミン化合物及び/又は2級モノアミン化合物をさらに含有する、[1]又は[2]に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
[4]
前記酸化重合する工程において、前記フェノール化合物100モルに対する前記(A)に含まれる銅原子のモル比が0.02〜0.6である、[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
[5]
前記酸化重合する工程において、前記フェノール化合物を10〜50質量%含有する重合液中で前記フェノール化合物を重合する、[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
本発明によれば、反応槽間での分子量のばらつきを効果的に抑制し、収率が高く、色調に優れ、かつ耐熱性の良好なポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は以下に示す本実施の形態に限定されるものではない。
[ポリフェニレンエーテルの製造方法]
本実施の形態に係るポリフェニレンエーテルの製造方法は、(A)銅化合物、(B)後述の一般式(1)で表されるジアミン化合物、(C)ハロゲン化合物、及び(D)後述の一般式(2)で表されるベンズアルデヒド化合物を含む触媒の存在下で、フェノール化合物を酸化重合する工程を含む。これに加えて、前記(A)に含まれる銅原子に対する前記(D)のモル割合が1〜50モル%である。
〔触媒〕
本実施の形態における触媒は、上記の(A)、(B)、(C)及び(D)の成分を含む。
((A)銅化合物)
本実施の形態における触媒に含まれる上記(A)銅化合物としては、第一銅化合物及び第二銅化合物、並びにこれらの混合物が挙げられる。前記第一銅化合物としては、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅及び硝酸第一銅が挙げられる。前記第二銅化合物としては、例えば、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅及び硝酸第二銅等が挙げられる。これらの中で好ましい銅化合物は、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅及び臭化第二銅である。
また、上記(A)銅化合物は、酸化物(例えば酸化第一銅)、炭酸塩又は水酸化物等と、対応するハロゲン又は酸とから合成されるものであってもよい。そのような銅化合物は、例えば、酸化第一銅とハロゲン化合物(例えばハロゲン化水素の溶液)とを混合することにより合成される。
上記(A)銅化合物の使用量は、触媒量を低減しつつ効率よく生産するという観点から、上記の酸化重合に用いるフェノール化合物100モルに対する前記(A)に含まれる銅原子のモル比は、0.02〜0.6であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.2であり、さらに好ましくは0.02〜0.1である。
((B)ジアミン化合物)
(B)ジアミン化合物は、下記一般式(1)で表される。
Figure 2011099052
上記式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基からなる群より選ばれる基を表し、ただし、それら全てが同時に水素原子ではなく、R5は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、が好ましい。
上記アルキレン基としては、例えば、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,2−ブチレン基、及び1,2−ペンチレン基が挙げられる。中でも、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基が好ましい。
上記一般式(1)で表される(B)ジアミン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N−エチルエチレンジアミン、N−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルエチレンジアミン、N−i−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジ−i−プロピルエチレンジアミン、N−n−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−n−ブチルエチレンジアミン、N−i−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−i−ブチルエチレンジアミン、N−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−1−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、及びN,N,N’,N’−テトラメチル−1,5−ジアミノペンタンが挙げられる。
(B)ジアミン化合物は、好ましくは、R5で示されるアルキレン基の炭素数が2又は3のものである。
(B)ジアミン化合物の使用量は特に限定されないが、上記フェノール化合物100モルに対して0.01モル〜10モルの範囲で用いられ得る。
((C)ハロゲン化合物)
上記(C)ハロゲン化合物としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム及びヨウ化テトラエチルアンモニウムが挙げられる。これらは水溶液や適当な溶媒を用いた溶液として用いられる。また、好ましいハロゲン化合物は、塩化水素の水溶液及び臭化水素の水溶液である。
これらのハロゲン化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記触媒として用いられる(C)ハロゲン化合物の使用量は、特に限定されないが、(A)銅化合物由来の銅原子のモル量に対して、ハロゲン原子として2倍以上20倍以下が好ましい。
((D)ベンズアルデヒド化合物)
また、上記の酸化重合する工程で用いられる触媒は、下記一般式(2)で表される(D)ベンズアルデヒド化合物を含む。
Figure 2011099052
上記式(2)中、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基からなる群より選ばれる基を表す。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
上記アルキレン基としては、例えば、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,2−ブチレン基、及び1,2−ペンチレン基が挙げられる。中でも、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基が好ましい。
上記(D)ベンズアルデヒド化合物の具体例としては、ベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、2,3−ジメチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、2,6−ジメチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、2,3,4−トリメチルベンズアルデヒド、2,3,5−トリメチルベンズアルデヒド、2,3,6−トリメチルベンズアルデヒド、3,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、2,5,6−トリメチルベンズアルデヒド、2,3,4,5−テトラメチルベンズアルデヒド、2,3,5,6−テトラメチルベンズアルデヒド、2,3,4,6−テトラメチルベンズアルデヒド、o−エチルベンズアルデヒド、m−エチルベンズアルデヒド、及びp−エチルベンズアルデヒド等が挙げられる。特に、安価であって入手が容易であるため、ベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、o−エチルベンズアルデヒド、m−エチルベンズアルデヒド、及びp−エチルベンズアルデヒドが好ましい。
上記で挙げた(D)ベンズアルデヒド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、ベンズアルデヒドとo−メチルベンズアルデヒドとを組み合わせて使用する方法、o−メチルベンズアルデヒドとp−ベンズアルデヒドとを組み合わせて使用する方法、及びベンズアルデヒドとp−エチルベンズアルデヒドとを組み合わせて使用する方法等が挙げられる。その際の混合比は任意に選択できる。
また、(D)ベンズアルデヒド化合物の使用量は、上記(A)銅化合物に含まれる銅原子に対して、モル割合として1〜50モル%である。前記使用量が1モル%未満であると、高い重合安定性を得られない可能性があるという問題があり、一方、前記使用量が50モル%を超えると、高い重合活性を維持しつつ重合を安定化させることが困難になる可能性があるという問題がある。即ち、(D)ベンズアルデヒド化合物の使用量を1〜50モル%の範囲とすることにより、反応槽間での分子量のばらつきを効果的に抑制し、かつ、収率が高いポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することができる。また、前記使用量は、好ましくは1〜40モル%、より好ましくは1〜30モル%である。
(触媒を構成し得る他の成分)
上記の酸化重合する工程で用いられる触媒は、上述したものの他に、3級モノアミン化合物及び2級モノアミン化合物を、それぞれ単独で又は組み合わせて、さらに含有することも好ましい。
上記3級モノアミン化合物とは、脂環式3級アミンを含む脂肪族3級アミンである。その具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、及びN−メチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。これらの3級モノアミン化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。その使用量は、特に限定されないが、上記酸化重合に用いるフェノール化合物100モルに対して15モル以下であると好適である。
上記2級モノアミン化合物としては、第2級脂肪族アミンを採用することができる。その具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−i−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジベンジルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、及びシクロヘキシルアミンが挙げられる。
また、前記2級モノアミン化合物として、芳香族を含む2級モノアミン化合物も採用され得る。その具体例としては、N−フェニルメタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルプロパノールアミン、N−(m−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(2’,6’−ジメチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−クロロフェニル)エタノールアミン、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、N−メチル−2−メチルアニリン、N−メチル−2,6−ジメチルアニリン、及びジフェニルアミンが挙げられる。上述の2級モノアミン化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。2級モノアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、上記の酸化重合に用いるフェノール化合物100モルに対して15モル以下であると好適である。
〔フェノール化合物〕
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、下記一般式(3)で表されるフェノール化合物の重合によりポリフェニレンエーテルを製造する。
Figure 2011099052
上記式(3)中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、及び置換されていてもよいアルコキシ基からなる群より選ばれる基を表す。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、中でも塩素原子及び臭素原子が好ましい。
上記アルキル基としては、例えば、炭素数が1〜6(好ましくは1〜3)の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が挙げられる。これらの中では、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記アルケニル基としては、例えば、炭素数2〜6の、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基が挙げられる。その具体例としては、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基が挙げられ、中でもエテニル基及び1−プロペニル基が好ましい。
上記アルキニル基としては、炭素数2〜6の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基が挙げられる。その具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、3−ブチニル基、ペンチニル基、及びヘキシニル基が挙げられ、中でもエチニル基、1−プロピニル基及び2−プロピニル基(プロパルギル基)が好ましい。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
上記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、α−メチルベンジル基、2−ビニルフェネチル基、及び4−ビニルフェネチル基が挙げられ、中でもベンジル基が好ましい。
上記アルコキシ基としては、炭素数が1〜6(好ましくは1〜3)の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられる。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基及びヘキシルオキシ基が挙げられる。これらの中では、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
また、上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基及びアルコキシ基は、1又は2以上の置換可能な位置で置換基により置換されていてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アルケニル基(例えば、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、及びアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)が挙げられる。
上記フェノール化合物の具体例としては、o−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−6−トリルフェノール、2,6−ジトリルフェノール、2、5−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2−メチル−5−エチルフェノール、2−エチル−5−メチルフェノール、2−アリル−5−メチルフェノール、2、5−ジアリルフェノール、2,3−ジエチル−6−n―プロピルフェノール、2−メチル−5−クロルフェノール、2−メチル−5−ブロモフェノール、2−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−メチル−5−n−プロピルフェノール、2−エチル−5−ブロモフェノール、2−メチル−5−n−ブチルフェノール、2,5−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−5−クロルフェノール、2−メチル−5−フェニルフェノール、2,5−ジフェニルフェノール、2,5−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−5−トリルフェノール、2,5−ジトリルフェノール、2,6−ジメチル−3−アリルフェノール、2,3,6−トリアリルフェノール、2,3,6−トリブチルフェノール、2,6−ジーn−ブチル−3−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール、2,6−ジメチル−3―n−ブチルフェノール、2,6−ジメチル−3−t−ブチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール、2,3,5,6−テトラメチルフェノール、及び2,3,5,6−テトラエチルフェノール等が挙げられる。安価であって入手が容易であるという観点から、中でも、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及び2,5−ジメチルフェノールが好ましく、2,3,6−トリメチルフェノールがより好ましい。
また、フェノール基の4位をハロゲン化して得られるフェノール化合物を重合に使用してもよい。
上記で挙げたフェノール化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジエチルフェノールとを組み合わせて使用する方法、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジフェニルフェノールとを組み合わせて用いる方法、及び2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとを組み合わせて用いる方法等が挙げられる。その際の混合比は任意に選択できる。また、酸化重合する工程で用いるフェノール化合物の中には、本発明の目的を逸脱しない限り、フェノール化合物製造の際の副産物として含まれている少量のm−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノールや2,4,6−トリメチルフェノール等が含まれていてもよい。
また、酸化重合する工程で用いるフェノール化合物の中に、下記式(4)で表される二価のフェノール化合物が含まれていてもよい。
Figure 2011099052
上記式(4)で表されるような二価のフェノール化合物は、該当する一価のフェノール化合物とケトン類又はジハロゲン化脂肪族炭化水素との反応等により、工業的に有利に製造できる。例えば、ホルムアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノンやシクロヘキサン等の汎用ケトン化合物と一価のフェノール化合物との反応により得られる化合物群、及び一価のフェノール化合物同士の反応により得られる化合物群が挙げられる。
上記二価のフェノール化合物として、例えば、下記一般式(4−a)、(4−b)及び(4−c)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2011099052
Figure 2011099052
Figure 2011099052
上記式で表される化合物の中でも代表的なものとして、R15及びR16がメチル基、R17及びR18が水素でXが両方のアリール基を直結している化合物;R15及びR16がメチル基、R17及びR18が水素でXがメチレンである化合物;R15及びR16がメチル基、R17及びR18が水素でXがチオである化合物;R15、R16及びR17がメチル基、R18が水素でXがエチレンである化合物;R15及びR16がメチル基、R17及びR18が水素でXがイソプロピリデンである化合物;R15及びR16がメチル基、R17及びR18が水素でXがシクロヘキシリデンである化合物;R15、R16及びR17がメチル基、R18が水素でXが両方のアリール基を直結している化合物;R15、R16及びR17がメチル基、R18が水素でXがメチレンである化合物;R15、R16及びR17がメチル基、R18が水素でXがエチレンである化合物;R15、R16及びR17がメチル基、R18が水素でXがチオである化合物;R15、R16及びR17がメチル基、R18が水素でXがイソプロピリデンである化合物;R15、R16、R17及びR18がメチル基でXがメチレンである化合物;R15、R16、R17及びR18がメチル基でXがエチレンである化合物;R15、R16、R17及びR18がメチル基でXがイソプロピリデンである化合物等が挙げられるが、これらの例に限定されない。
〔フェノール化合物を重合する工程〕
上記の酸化重合する工程において、フェノール化合物を含有する重合液中で重合を行うことが好ましい。その重合液中のフェノール化合物の濃度は特に限定されないが、効率良くポリフェニレンエーテルを製造する観点から、重合液の全量を基準として、10〜50質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましい。前記濃度が10質量%以上であると、ポリフェニレンエーテルの製造効率が高くなる。一方、前記濃度が50質量%以下であると、ηsp/cが0.2以上のポリフェニレンエーテルを製造することを前提とした場合、その粘度が高くなるのを防止しやすくなり、酸素の吸収効率を高められる傾向となる。また、前記濃度が50質量%以下であると、反応槽の内壁面に付着する残存ポリマーを少なくできるため、加温して系内粘度を低下させる必要がなくなる傾向にある。また、前記重合液中には、上記のフェノール化合物及び触媒の他、溶媒や各種添加剤などが含有され得る。なお、以下では、上記の残存ポリマーが反応槽内壁面に付着する現象を「スケール付着」ともいう。
本実施の形態における酸化重合する工程では、後述する酸素含有ガスを系内に供給しながら酸化重合することが好ましい。
(ポリフェニレンエーテルの良溶媒)
上記重合液はポリフェニレンエーテルの良溶媒を含有することができる。ここで、前記「ポリフェニレンエーテルの良溶媒」とは、従来の方法で得られるポリ(2,6−ジメチルフェニレン)エーテルを溶解させることのできる溶媒である。より具体的には、前記「ポリフェニレンエーテルの良溶媒」とは、従来の方法で得られるポリ(2,6−ジメチルフェニレン)エーテルの20℃における溶解度が1以上である溶媒をいう。なお、前記溶解度は、溶媒100mLに溶解する溶質、即ちポリ(2,6−ジメチルフェニレン)エーテルの質量(g)である。
このような溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン(o−、m−、p−の各異性体を含む。)、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン等のニトロ化合物が挙げられる。
また、その他の良溶媒に分類されるものとしては、ペンタン、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサン、シクロへプタン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル;ジメチルスルホキシドが挙げられる。
これらの良溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上述の良溶媒の中では、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びスチレン等の芳香族炭化水素、並びにクロロベンゼン及びジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が好ましい。
(ポリフェニレンエーテルの貧溶媒)
一方、上記重合液はポリフェニレンエーテルの貧溶媒を含有することができる。ここで、「ポリフェニレンエーテルの貧溶媒」とは、従来の方法で得られるポリ(2,6−ジメチルフェニレン)エーテルを全く溶解しないか、又はわずかに溶解させることのできる溶媒である。より具体的には、前記「ポリフェニレンエーテルの貧溶媒」とは、従来の方法で得られるポリ(2,6−ジメチルフェニレン)エーテルの20℃における溶解度が1未満である溶媒をいう。
このような貧溶媒としては、例えば、ケトン及びアルコールが挙げられ、中でも炭素数1〜10のアルコールが好ましい。そのようなアルコールの具体例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール及びエチレングリコールが挙げられる。より好ましい貧溶媒は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール及びtert−ブタノールである。
前記貧溶媒は、さらに水を含有してもよい。また、貧溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。2種以上を組み合わせる場合、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶媒とメタノールやエタノール等のアルコールとを含有する混合溶媒が用いられ得る。
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造方法において、フェノール化合物を酸化重合する工程での重合方式は、特に限定されない。例えば、多種のポリフェニレンエーテルを製造する場合には、様々な種類の(例えば、様々なガラス転移温度を有する)ポリフェニレンエーテルの造り分けが容易なバッチ方式が好ましい。また、連続的かつ安定的にポリフェニレンエーテルを生産する場合には、連続方式が好ましい。
本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、後述する沈殿析出重合又は溶液重合により製造することができる。
(沈殿析出重合)
ポリフェニレンエーテルの製造工程において、沈殿析出重合を行った場合、重合工程は、下記の重合初期、重合中期及び重合後期の各段階に分けられる。
重合初期は、酸素含有ガス導入開始から、析出を観察し始めるまでの期間である。重合中期は、析出開始から、スラリーが安定化するまでの期間である。重合後期は、スラリーが安定化し、重合が完結するまでの期間である。なお、上記各段階は、良溶媒量、モノマー種及びモノマー濃度によって、析出を呈するまでの時間及びスラリーが安定化するまでの時間が異なってくる。
重合体の析出状態は、適宜目視で観察できる。具体的には、所定の反応器の覗き窓から重合体の析出状態を目視観察する方法や、サンプリング口からガラス等の透明容器に重合液を抜き出して析出状態を目視観察する方法等が挙げられる。
重合体の状態の目視観察を開始する目安としては、重合系内に含まれるフェノール化合物の量や、ポリフェニレンエーテルに対する良溶媒又は貧溶媒の量にもよるが、好ましくは、重合化率が80%に達した以降から、より好ましくは重合化率が70%に達した以降から、さらに好ましくは重合化率が50%に達した以降から、重合体の析出に注意しつつ観察を始める。
本実施の形態における、フェノール化合物を酸化重合する工程では、重合溶媒中に沈殿析出が観察された後も、重合中期で沈殿析出を維持したまま重合を継続し、重合後期で重合を完結させることが好ましい。換言すれば、前記重合により生成される前記ポリフェニレンエーテルの沈殿析出が開始した時点から一定以上の時間、前記重合を継続することが好ましい。前記一定以上の時間は、好ましくは1分間以上であり、より好ましくは10分間以上であり、さらに好ましくは15分間以上である。上記した範囲の時間をとると、生成したポリフェニレンエーテルを一層安定化させることができる。
ここで、重合の開始から上記観察により沈殿析出するまでに要する時間を滞留時間T1とし、観察により沈殿析出した時点から重合を完結するまでの時間を滞留時間T2とする。これらの時間「T1」、「T2」は、ポリフェニレンエーテルの作製を行う実際の方式によって定義が異なる。これらの定義を下記に表す。
まず、回分反応の場合、T1は、酸素含有ガスを導入し始めてから析出が目視確認できるまでの時間を意味し、T2は、析出を目視確認してから重合を完結するまでの時間を意味する。
次に、連続操作の場合であって、常に原料・酸素含有ガスが流れており、2槽以上の重合槽を用いる場合、T1は、溶液状態のまま重合を継続させる槽の全容量から原料供給速度を除した時間を意味し、T2は、析出状態のまま重合を継続させる槽の全容量から原料供給速度を除した時間を意味する。
本実施の形態における、フェノール化合物を酸化重合する工程では、上記滞留時間の比(T2/T1)が、0.1〜30の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.3〜20の範囲、さらに好ましくは0.5〜15の範囲である。
滞留時間の比(T2/T1)が0.1以上であると、沈殿析出途中での異形粒子の発生を効果的に防止することができる。一方、滞留時間の比(T2/T1)の比が30以下であると、沈殿析出を開始するまでの重合時間によるが、ポリフェニレンエーテルを得るための製造時間が短縮できるので、実用上十分な製造効率が得られる。
本実施の形態における、フェノール化合物を酸化重合する工程では、重合に用いるフェノール化合物を重合初期から重合槽内に全量存在させて重合を完結させる方法、重合中にフェノール化合物を逐次添加しながら重合を完結させる方法、及び連続的に原料を供給しながら重合し連続的にフェノール化合物を重合させる方法のいずれも適用できる。
上記の中でも、均一なポリフェニレンエーテルを多量かつ安定的に得るには、連続的にフェノール化合物を重合させる方法が好ましく、分子量8000以下のポリフェニレンエーテル成分が20質量%未満、分子量5万以上のポリフェニレンエーテル成分が20質量%未満であるポリフェニレンエーテルを効率的に製造可能となる。
本実施の形態における、フェノール化合物を酸化重合する工程における重合温度を下記に示す。沈殿析出前の重合温度は、0℃〜50℃が好ましく、10℃〜40℃がより好ましく、20℃〜40℃がさらに好ましい。沈殿析出前の温度が低すぎると、重合反応が進行しにくくなる場合がある。
また、沈殿析出後の重合温度は、0℃〜100℃が好ましく、10℃〜80℃がより好ましく、15℃〜70℃がさらに好ましく、20℃〜60℃がさらにより好ましい。沈殿析出後の温度が高すぎると、重合に用いる溶媒の揮発が激しくなり、冷却還流設備への負荷が大きくなる場合がある。
(溶液重合)
ポリフェニレンエーテルを製造する際、フェノール化合物の重合中及び重合終結時に、重合用の良溶媒に溶解した状態で重合を行う方法を溶液重合という。
重合の進行に伴ってポリフェニレンエーテルが析出する場合においては、重合初期又は重合途中に温度を上昇させる処理、モノマーに対する良溶媒量を増大させる処理、モノマーを重合途中に添加する処理や、析出しない重合溶媒を選択する処理等を施すことにより、溶液状態での重合を完結することができる。
重合を完結した後は、重合の終結した重合液に貧溶媒を添加する方法や、重合液を乾燥させる方法等により、ポリフェニレンエーテルを単離できる。
(酸素含有ガス)
本実施の形態における、フェノール化合物の酸化重合工程においては、沈殿析出重合及び溶液重合のいずれにおいても、酸素含有ガスを供給しながら行うことが好ましい。
酸素含有ガスとしては、純酸素ガスの他、酸素ガスと窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの、及び空気、さらには空気と窒素又は希ガス等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの等が使用できる。
重合反応中の系内圧力は、常圧でよいが、必要に応じて減圧でも加圧でも使用できる。
酸素含有ガスの供給速度は、除熱や重合速度等を考慮して任意に選択できるが、上記の酸化重合に用いるフェノール化合物1モル当たりの純酸素として、5NmL/分以上が好ましく、10NmL/分以上がより好ましい。
(添加物)
フェノール化合物の重合反応系には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキサイド、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウム等の中性塩、並びにゼオライト等を添加してもよい。
また、従来から重合活性に向上効果を有することが知られている界面活性剤を重合溶媒中に添加してもよい。このような界面活性剤として、例えば、Aliquat336やCapRiquat(商品名、いずれも株式会社 同仁化学研究所製)で知られるトリオクチルメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。前記界面活性剤の使用量は、重合反応用原料の全量に対して0.1質量%を超えない範囲が好ましい。
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造方法において、酸化重合に用いるフェノール化合物及び/又は触媒は、重合初期から重合槽内に全量存在させてもよいし、重合中に逐次添加するようにしてもよい。
操作の煩雑さを低減させる観点から、フェノール化合物と触媒と溶媒からなる混合液を添加することが好ましく、さらに、触媒をフェノール化合物と十分混合させて共存させたものを同時に添加することが好ましい。これらにより、色調にさらに優れたポリフェニレンエーテルを一層効率的に製造できる。
また、重合反応系に、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキサイド、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウム等の中性塩、並びにゼオライトを添加してもよい。これらにより、重合活性を制御できる。
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造方法は、上記の酸化重合する工程の他、その後に続く後処理工程を有していてもよい。かかる後処理工程は、特に限定されるものではなく、従来公知の工程を採用できる。例えば、通常、塩酸や酢酸等の酸、又はエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、並びにニトリロトリ酢酸及びその塩等を、重合後の重合液に加えて触媒を失活させてもよい。重合が終了した時の重合液はスラリー状であるため、触媒の洗浄除去を目的として、ポリフェニレンエーテルの溶解能が低い溶媒(例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン)エーテルに対する貧溶媒)を主成分とする溶液を用いて、沈殿析出物を繰り返し洗浄する工程を有することが好ましい。
その後、各種乾燥機を用いて、沈殿析出物に対し乾燥処理を施す乾燥工程を経ることにより、ポリフェニレンエーテルを粉体として回収できる。
このように、本実施の形態によれば、重合時の活性を効果的に維持しつつ、重合速度を安定化させ、製品の特性のばらつきを抑制しながら製造する、耐熱性及び色調に優れたポリフェニレンエーテルの製造方法が得られる。
[ポリフェニレンエーテル]
上記のようにして得られたポリフェニレンエーテル(粉体)は、その還元粘度(ηsp/c)が0.20dL/g以上であることが好ましい。これにより、より十分な耐熱性を有するポリフェニレンエーテルが得られる。ここで、「還元粘度(ηsp/c)」とは、30℃においてポリフェニレンエーテルが0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液の還元粘度を意味する。この還元粘度(ηsp/c)は、0.25dL/g以上がより好ましく、0.28dL/g以上がさらに好ましい。
還元粘度(ηsp/c)は、重合液における良溶媒の量、触媒量、酸素含有ガスの供給量及び速度、並びに重合液中の各フェノール化合物の濃度等によって変動する値である。よって、本実施の形態において、還元粘度(ηsp/c)を上記範囲内に制御するには、これらの重合条件を調整すればよい。
一方、還元粘度(ηsp/c)の上限は、例えば押出成型等による加工に使用する場合、成型流動性の低下や加工性の低下を抑制する観点から、1.5dL/g以下であることが好ましく、より好ましくは1.3dL/g以下、さらに好ましくは1.1dL/g以下である。加えて製造時間の短縮という観点から、0.8dL/g以下がさらにより好ましく、0.7dL/g以下が特に好ましい。さらにいえば、優れた色調と重合安定性を両立する効果が顕著に発揮されるという観点から、0.4dL/g以下が最も好ましい。
加えて、ポリフェニレンエーテル(粉体)は、UV波長480nmで測定されるカラーインデックス(C.I.)が0.35以下である。これにより、色調に優れるなたポリフェニレンエーテルが得られる。また、前記カラーインデックスは、好ましくは0.32であり、より好ましくは0.00〜0.28である。
本実施の形態の製造方法により得られたポリフェニレンエーテルを、従来公知の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂と溶融混練することにより樹脂組成物を得てもよい。
そのような熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、フェノール樹脂、ポリ尿素、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、及びジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
また、上記の溶融混練の際に、導電性、難燃性や耐衝撃性等の特性を樹脂組成物に付与する目的で、従来公知の添加剤や熱可塑性エラストマーを樹脂組成物に添加してもよい。
本実施の形態によれば、反応槽間での分子量のばらつきを効果的に抑制し、種々のポリフェニレンエーテルを効率よく、かつ色調に優れるポリフェニレンエーテルを、安定的に製造することができる。
以下、本発明を、実施例、比較例及び参考例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記実施例などに限定されない。
まず、実施例、比較例及び参考例において評価対象とした物性及び特性の測定方法について説明する。
[測定方法]
1.還元粘度(ηsp/c)差の測定
各実施例などにおける、乾燥ポリフェニレンエーテル[1]、及び、装置を大きくして得られる乾燥ポリフェニレンエーテル[2]を、それぞれクロロホルムに溶解して、0.5g/dLのクロロホルム溶液を調製した。そのクロロホルム溶液を試料として、ウベローデ粘度管を用いて30℃における還元粘度(ηsp/c)(dL/g)を求めた。乾燥ポリフェニレンエーテル[1]のηsp/cを「ηsp/c[1]」、装置を大きくして得られる乾燥ポリフェニレンエーテル[2]のηsp/cを「ηsp/c[2]」とし、下記数式(1):
[数1]
|(ηsp/c[1])−(ηsp/c[2])| ・・・(1)
により差を求め、重合安定性を評価した。差の絶対値が小さいほど重合が安定であることを示す。換言すれば、差の絶対値が小さいほど反応槽間での分子量のばらつきを効果的に抑制できることを示す。また、差の絶対値が0.02以下であれば、重合反応は十分安定的であるといえる。
2.カラーインデックス(C.I.)
ポリフェニレンエーテルの粉体を、ポリフェニレンエーテル濃度が0.05g/mLとなるように純クロロホルムに溶解し、クロロホルム溶液を調製した。セル長1cmの石英セルにポリフェニレンエーテルの溶解に用いたのと同じ純クロロホルムを入れ、UV波長480nmで純クロロホルムの吸光度を測定し、その吸光度を0とした。次いで、石英セル内のクロロホルムを廃棄、洗浄後、その石英セルを乾燥した。その石英セルに上記ポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液を入れ、その480nmでの吸光度を測定した。
得られた吸光度から純クロロホルムの吸光度を減じ、得られた値をクロロホルム溶液中のポリフェニレンエーテル濃度で除して、ポリフェニレンエーテルのC.Iとした。C.Iの値が小さいほど、ポリフェニレンエーテルの色調に優れることを示す。なお、クロロホルム溶液にゲルが多量に含まれる場合、ゲルができるだけ石英セル内に入らないよう配慮した。
3.収率
重合に用いたフェノール化合物の全質量に対する、得られた乾燥ポリフェニレンエーテルの質量割合を算出して百分率で表したものを収率とした。
4.ガラス転移温度
示差走査熱量計DSC(PerkinElmer製−Pyris1)を用いて、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度を測定した。詳細には、ポリフェニレンエーテルを、窒素雰囲気中、毎分20℃の昇温速度で室温から280℃まで加熱した後、50℃まで毎分40℃で降温し、その後毎分20℃の昇温速度で昇温して、ガラス転移温度を測定した。ガラス転移温度が210℃以上であれば、ポリフェニレンエーテルの耐熱性は良好であると判断した。
5.スケ−ル付着
(1)沈殿析出重合の場合
重合終了後、重合液を反応器から抜き出した。その後、反応器内に付着しているスケールの量を目視で確認した。スケールが全く観察されない場合は〇(良)、多量に観察された場合は×(不良)と評価し、少量観察された場合は△(普通)と評価した。
(2)溶液重合の場合
重合終了後、重合液に多量のメタノールを添加し、ポリフェニレンエーテルを析出させた。その後、反応器から内容物を抜き出した後、反応器内に付着しているスケールの量を目視で確認した。スケールが全く観察されない場合は〇(良)、多量に観察された場合は×(不良)と評価し、少量観察された場合は△(普通)と評価した。
[純度の高いフェノール化合物の作製]
公知の方法で得られた、不純物を含有するフェノール化合物30kgとn−ヘキサン50Lとを200Lのジャケット付きの槽に投入して、このジャケットに温熱媒を流通させて40℃に加温しながら攪拌を続けた。フェノール化合物が全て溶解した後に、ジャケットに冷熱媒を流通し0℃まで冷却した。数時間後、槽内に2,6−ジメチルフェノールの結晶が析出したため、これをろ過して分離した。このようにして得られたフェノール化合物の結晶を用いて、さらに上記と同様の操作を繰り返し行った。こうして純度の高いフェノール化合物を得た。
得られたフェノール化合物をガスクロマトグラフィーによって下記のようにして分析した。上記の精製操作によって得られたフェノール化合物の結晶1.5000gを精秤して10mLのメスフラスコに入れ、これにメタノールを加え、結晶が完全に溶解したのを確認した。その後、メタノールを加えて全体量を10mLに調整し、それを測定試料として用いた。
ガスクロマトグラフィーの分析装置として、HP社製GC−6890(商品名)を用い、カラムとしてHP−WAX(商品名、L:30m、I.D:0.25mm、膜厚:0.25μm)を用い、キャリアガスとしてヘリウムガスを用いた。試料注入口の温度は250℃に設定し、カラムの温度は250℃に保持し、水素炎イオン化検出器によって検出し、分離されたガスをマスディテクターによる質量分析で定量した。当該フェノール化合物以外の他のフェノール化合物のメタノール溶液(標準試料)を用いて、同条件で測定した検量線を予め作成しておき、フェノール化合物に含まれる前記他のフェノール化合物の組成を求めた。
フェノール化合物として2,6−ジメチルフェノールを作製した場合、そこに含まれる2,6−ジメチルフェノール以外のフェノール化合物は5ppm以下であることが分かった。また、(D)のベンズアルデヒド化合物は分析限界(0.2ppm)以下であった。
このようにして得られた純度の高い2,6−ジメチルフェノール(少なくとも95質量%)を、下記実施例、比較例及び参考例において用いた。
[参考例1:沈殿析出重合]
底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、並びに上部のベントガスラインに還流冷却器をそれぞれ備えた1Lのジャケット付き重合槽を準備した。その重合槽に、50mL/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、0.0921gの塩化第二銅2水和物、0.4057gの35%塩酸、2.559gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、1.206gのジ−n−ブチルアミン、216.7gのキシレン、142.7gのn−ブタノール、71.4gのメタノール、120.0gの純度の高い2,6−ジメチルフェノールを入れた。これらが均一溶液となり、重合槽の内温が40℃になるまで撹拌した。全量は600gであった。
次に、激しく撹拌した重合槽へ、200NmL/分の速度で酸素ガスをスパージャーより供給し始め、これを重合開始の時点とした。重合中は重合槽の内温が40℃になるよう調節した。酸素ガスの供給を開始してから55分後に、ポリフェニレンエーテルが析出し、重合液がスラリー状の形態を示し始めた(沈殿析出重合)。酸素ガスの供給を開始してから120分後に重合を停止した。
上記時間(120分後)に達した時点で酸素ガスの供給を止め、重合生成物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製)の50%水溶液を1.0g添加し、60分間重合生成物を撹拌した。次に、ハイドロキノン(和光純薬社製)をそこに少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。その後、ろ過して、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。その湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール500gと共に1Lの洗浄槽に入れて分散させ、30分間撹拌した後、再度ろ過した。その際、洗浄槽の内温は55℃になるよう制御した。洗浄槽中における上記分散とろ過とを3回繰り返して行い、次いで140℃で120分間真空乾燥して、乾燥ポリフェニレンエーテル[1]を得た。
続いて、重合安定性を確認するために、装置を大きくした。上記組成比(質量比)と同じになるよう原料を仕込んだ。底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、並びに上部のベントガスラインに還流冷却器をそれぞれ備えた10Lのジャケット付き重合槽を準備し、全量が約8500gとなるよう仕込んだ。即ち、重合槽に、200mL/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.3048gの塩化第二銅2水和物、5.7470gの35%塩酸、36.246gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、17.087gのジ−n−ブチルアミン、3706.8gのキシレン、2021.9gのn−ブタノール、10010.9gのメタノール、1700.0gの純度の高い2,6−ジメチルフェノールを入れた。これらが均一溶液となり、かつ重合槽の内温が40℃になるまで撹拌した。
次に、激しく撹拌した重合槽へ、2830NmL/分の速度で酸素ガスをスパージャーより供給し始め、これを重合開始の時点とした。重合中は、重合槽の内温が40℃になるよう調節した。酸素ガスの供給を開始してから52分後に、ポリフェニレンエーテルが析出し、重合液がスラリー状の形態を示し始めた(沈殿析出重合)。酸素ガスの供給を開始してから120分後に重合を停止した。
上記時間(120分後)に達した時点で酸素ガスの供給を止め、重合生成物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製)の50%水溶液を13.6g添加し、90分間重合生成物を撹拌した。次に、ハイドロキノン(和光純薬社製)をそこに少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。その後、ろ過して、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。その湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール7000gと共に20Lの洗浄槽に入れて分散させ、30分間撹拌した後、再度ろ過した。その際、洗浄槽の内温は55℃になるよう制御した。洗浄槽中における上記分散とろ過とを3回繰り返して行い、次いで140℃で120分間真空乾燥して、乾燥ポリフェニレンエーテル[2]を得た。
乾燥ポリフェニレンエーテル[1]と[2]のηsp/cの差の絶対値を求め、重合安定性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例1〜12、比較例1:沈殿析出重合]
各重合槽に(D)ベンズアルデヒド化合物を仕込んだ点、並びに(D)ベンズアルデヒド化合物の種類及び量をそれぞれ表1、2に示す組成とした点以外は参考例1と同様にして、乾燥ポリフェニレンエーテル[1]及び[2]を得た。なお、前記(D)ベンズアルデヒド化合物の量は、銅化合物の銅原子のモル量に対するモル%を表す。以下の(D)ベンズアルデヒド化合物の量についても同様である。
各実施例及び比較例について、上記各物性及び特性の結果を表1、2に示す。
[実施例13〜15、比較例2〜3:沈殿析出重合]
1Lの重合槽に入れるキシレンを117.35g、n−ブタノールを126.86g、メタノールを72.95gとし、10Lの重合槽に仕込む原料は1Lの重合槽に入れた組成比(質量比)と同じにした点と、各重合槽に(D)ベンズアルデヒド化合物を仕込んだ点、並びに(D)ベンズアルデヒド化合物の種類及び量をそれぞれ表2、3に示す組成とした点以外は、参考例1と同様にして、乾燥ポリフェニレンエーテル[1]及び[2]を得た。
各実施例及び比較例について、上記各物性及び特性の結果を表2、3に示す。
[実施例16〜18、比較例4〜5:沈殿析出重合]
1Lの重合槽に入れるキシレンを183.95g、n−ブタノールを60.26g、メタノールを72.95gとし、10Lの重合槽に仕込む原料は1Lの重合槽に入れた組成比(質量比)と同じにした点と、各重合槽に(D)ベンズアルデヒド化合物を仕込んだ点、並びに(D)ベンズアルデヒド化合物の種類及び量をそれぞれ表3に示す組成とした点以外は、参考例1と同様にして、乾燥ポリフェニレンエーテル[1]及び[2]を得た。
各実施例及び比較例について、上記各物性及び特性の結果を表3に示す。
[参考例2:溶液重合]
底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、並びに上部のベントガスラインに還流冷却器をそれぞれ備えた1Lのジャケット付き重合槽を準備した。その重合槽に、50mL/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、0.1096gの酸化第二銅、0.7583gの47%臭化水素水溶液、0.2421gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、1.2380gのジ−n−ブチルアミン、3.6187gのブチルジメチルアミン、516.0gのトルエン、78.0gの2,6−ジメチルフェノールを入れた。これらが均一溶液となり、かつ重合槽の内温が40℃になるまで撹拌した。全量は600gであった。
次に、激しく撹拌した重合槽へ、820NmL/分の速度で乾燥空気をスパージャーより供給し始め、これを重合開始の時点とした。重合中は重合槽の内温が40℃になるよう調節した。酸素ガスの供給を開始してから84分後に重合を停止した。重合終結時の重合液は溶液状態であった。
上記時間(84分後)に達した時点で乾燥空気の供給を止め、重合生成物にエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製)の2.5%水溶液を61.178g添加し、70℃で150分間重合混合物を撹拌し、その後静置し、液−液分離により有機相と水相を分離した。
得られた有機相の一部を1Lの槽から抜き出し、槽内の質量を200gにした。槽の内温を50℃にした後、メタノールを過剰に加えてポリフェニレンエーテルを析出後濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。その湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール500gと共に1Lの洗浄槽に入れて分散させ30分間撹拌した後、再度ろ過した。なお、洗浄槽の内温は55℃になるよう制御した。洗浄槽中における上記分散とろ過とを3回繰り返して行い、次いで140℃で120分間真空乾燥して、乾燥ポリフェニレンエーテル[1]を得た。
続いて、重合安定性を確認するために、装置を大きくした。上記組成比(質量比)と同じになるよう原料を仕込んだ。底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、並びに上部のベントガスラインに還流冷却器をそれぞれ備えた10Lのジャケット付き重合槽を準備し、全量が約7500gとなるよう仕込んだ。即ち、重合槽に、200mL/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.3703gの酸化第二銅、9.4789gの47%臭化水素水溶液、3.0260gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、15.4749gのジ−n−ブチルアミン、45.2334gのブチルジメチルアミン、6450.4gのトルエン、975gの2,6−ジメチルフェノールを入れた。これらが均一溶液となり、かつ重合槽の内温が40℃になるまで撹拌した。
次に、激しく撹拌した重合槽へ、10.24NL/分の速度で乾燥空気をスパージャーより供給し始め、これを重合開始の時点とした。重合中は重合槽の内温が40℃になるよう調節した。酸素ガスの供給を開始してから82分後に重合を停止した。重合終結時の重合液は溶液状態であった。
上記時間(82分後)に達した時点で乾燥空気の供給を止め、重合生成物にエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製)の2.5%水溶液を764.7g添加し、70℃で150分間重合混合物を撹拌し、その後静置し、液−液分離により有機相と水相を分離した。
得られた有機相の一部を10Lの槽から抜き出し、槽内の質量を2500gにした。槽の内温を50℃にした後、メタノールを過剰に加えてポリフェニレンエーテルを析出後濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。その湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール6250gと共に10Lの洗浄槽に入れて分散させ30分間撹拌した後、再度ろ過した。洗浄槽の内温は55℃になるよう制御した。洗浄槽中における上記分散とろ過とを3回繰り返して行い、次いで140℃で120分間真空乾燥して、乾燥ポリフェニレンエーテル[2]を得た。結果を表4に示す。
[実施例19〜30、比較例6:溶液重合]
各重合槽に(D)ベンズアルデヒド化合物を仕込んだ点、並びに(D)ベンズアルデヒド化合物の種類及び量をそれぞれ表4、5に示す組成に変更した点以外は参考例1と同様にして、乾燥ポリフェニレンエーテル[1]及び[2]を得た。
各実施例及び比較例について、上記各物性及び特性の結果を表4、5に示す。
〔実施例31〜33、比較例7、8:溶液重合〕
各重合槽に(D)ベンズアルデヒド化合物を仕込んだ点、並びに(D)ベンズアルデヒド化合物の種類及び量をそれぞれ表5、6に示す組成に変更して仕込み、乾燥酸素ガスの供給を開始してから121分後に重合を停止した点以外は、参考例2と同様にして、乾燥ポリフェニレンエーテル[1]及び[2]を得た。
各実施例及び比較例について、上記各物性及び特性の結果を表5、6に示す。
〔実施例34〜36、比較例9〜10:溶液重合〕
各重合槽に(D)ベンズアルデヒド化合物を仕込んだ点、並びに(D)ベンズアルデヒド化合物の種類及び量をそれぞれ表6に示す組成に変更して仕込み、乾燥酸素ガスの供給を開始してから161分後に重合を停止した点以外は、参考例2と同様にして、乾燥ポリフェニレンエーテル[1]及び[2]を得た。
各実施例及び比較例について、上記各物性及び特性の結果を表6に示す。
Figure 2011099052
Figure 2011099052
Figure 2011099052
Figure 2011099052
Figure 2011099052
Figure 2011099052
表1〜6に示すように、実施例1〜36においては、良好な色調のポリフェニレンエーテルを得ることができた。また、触媒の活性を維持しながらスケール付着の発生も抑制でき、反応槽間での分子量のばらつきを効果的に抑制できることができた。最終的に、ガラス転移温度が高く耐熱性に優れるポリフェニレンエーテルを高い収率で製造できた。
より具体的には、実施例1、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、及び19〜36では、高い重合活性及び重合安定性を維持しながらもスケール付着が発生しなかった。実施例3、6、9、12、15及び18においては、わずかにスケール付着が発生し、重合活性がわずかに低くなった。ただし、これは実用上問題にならない程度であった。一方、参考例1、2、及び比較例2、4、7、9では(D)ベンズアルデヒド化合物を用いなかったため、スケール付着が発生しなかったものの重合安定性と色調が比較的劣ることを確認した。比較例1、3、5、6、8及び10では、スケール付着が発生し、重合活性及び重合収率の低下が確認された。
本発明の製造方法により得られるポリフェニレンエーテルは、機械部品、自動車部品及び電気電子部品、特に、電子部品、フィルム、シート、絶縁シートの表面コート剤及びゴム改質用の添加剤として産業上の利用可能性を有する。

Claims (5)

  1. 触媒の存在下でフェノール化合物を酸化重合する工程を含むポリフェニレンエーテルの製造方法において、
    前記触媒は、
    (A)銅化合物、
    (B)下記一般式(1):
    Figure 2011099052
    (上記式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基からなる群より選ばれる基を表し、ただし、それら全てが同時に水素原子ではなく、R5は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。)
    で表されるジアミン化合物、
    (C)ハロゲン化合物、並びに
    (D)下記一般式(2):
    Figure 2011099052
    (上記式(2)中、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基からなる群より選ばれる基を表す。)
    で表されるベンズアルデヒド化合物を含み、
    前記(A)に含まれる銅原子に対する前記(D)のモル割合が1〜50モル%である、ポリフェニレンエーテルの製造方法。
  2. 30℃において0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定された該ポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c)が0.20dL/g以上である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
  3. 前記触媒が、3級モノアミン化合物及び/又は2級モノアミン化合物をさらに含有する、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
  4. 前記酸化重合する工程において、前記フェノール化合物100モルに対する前記(A)に含まれる銅原子のモル比が0.02〜0.6である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
  5. 前記酸化重合する工程において、前記フェノール化合物を10〜50質量%含有する重合液中で前記フェノール化合物を重合する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
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