以下、本発明の実施例1〜3について図面を参照しながら説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例1〜3に限定されるものではない。なお、実施例1〜3では、プリンター1とコンピューター2の組み合わせを請求項の「印刷装置」として説明するが、以下に説明するプリンター1の各機能とコンピューター2の各機能を両方持ち合せた単一の印刷装置となるように構成してもよい。
まず、本発明の実施例1に係る印刷装置の概要について説明する。図1は、本発明の実施例1に係る印刷装置を構成するプリンター1の概略構成図である。
図1に示すように、プリンター1は、紙送りモーター11によって印刷用紙Pを搬送する副走査送り機構と、キャリッジモーター12によってキャリッジ13を紙送りローラー14の軸方向に往復動させる主走査送り機構とを有している。ここで、副走査送り機構による印刷用紙Pの送り方向を副走査方向といい、主走査送り機構によるキャリッジ13の移動方向を主走査方向という。
また、プリンター1は、キャリッジ13に搭載され、印刷ヘッド15を備えた印刷ヘッドユニット16と、この印刷ヘッドユニット16を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動機構と、これらの紙送りモーター11、キャリッジモーター12、印刷ヘッドユニット16および操作パネル17との信号のやり取りを司る制御回路18と、を備えている。
キャリッジ13には、図1に示すように、ブラック(K)のインクを収納したカートリッジ19、シアン(C)のインクを収納したカートリッジ20、マゼンタ(M)のインクを収納したカートリッジ21、イエロー(Y)のインクを収納したカートリッジ22の4つのカートリッジ19〜22が着脱可能に搭載される。
キャリッジ13の下部には印刷ヘッド15が設けられている。印刷ヘッド15には、インク吐出箇所としてのノズルが印刷用紙Pの搬送方向に列状に配置され、それぞれの色のインクに対応したノズル列を形成している。
また、キャリッジ13の下部に設けられ、各インクに対応づけられたノズル列(不図示)には、ノズル毎に、電歪素子の1つであって応答性に優れたピエゾ素子(不図示)が配置されている。ピエゾ素子は、ノズルまでインクを導くインク通路を形成する部材に接する位置に設置されている。ピエゾ素子は、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギーの変換を行う。
本実施例では、ピエゾ素子の両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加することにより、ピエゾ素子が電圧の印加時間だけ伸張し、インク通路の一側壁を変形させる。この結果、インク通路の体積はピエゾ素子の伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって、ノズルの先端から高速に吐出される。このインク滴が紙送りローラー14に沿わされた印刷用紙Pに染み込むことにより、ドットが形成されて印刷が行われる。インク滴の大きさは、ピエゾ素子への電圧の印加方法によって変更することができる。これにより、本実施例では大、中、小の3種類のインク量の異なるドットを形成することができる。また、言い換えると、本実施例では、大、中、小の3種類のインクのドット径の異なるドットを形成することができる。
制御回路18は、コネクター23を介してコンピューター2に接続されている。記録率テーブル変更手段の一例であるコンピューター2は、後述するようにプリンター1用のドライバープログラムを搭載し、入力装置59(図3参照)であるキーボードや、マウスなどの操作によるユーザーの指令を受け付け、また、プリンター1における種々の情報を表示装置の画面表示によりに提示するユーザーインターフェイスを構成している。
印刷用紙Pを搬送する副走査送り機構は、紙送りモーター11の回転を紙送りローラー14と用紙搬送ローラー(不図示)とに伝達するギヤトレイン(不図示)を備える。
また、キャリッジ13を往復動させる主走査送り機構は、紙送りローラー14の軸と並行に架設されキャリッジ13を摺動可能に保持する摺動軸24と、キャリッジモーター12との間に無端の駆動ベルト25を張設するプーリー26と、キャリッジ13の原点位置を検出するための光学センサー27とを備えている。なお、光学センサー27は、光を印刷用紙Pに対して投射する光源と、印刷用紙Pからの反射光を対応する画像信号に変換するラインセンサー(または、CCD素子)とによって構成されている。
続いて、プリンター1の制御回路18について説明する。図2は、図1に示す制御回路18を中心としたプリンター1の主要部の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、制御回路18は、CPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタージェネレータ(CG:Character Generator)34、およびEEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)35を備えた算術論理演算回路として構成されている。
この制御回路18は、さらに、外部のモーターなどとのインターフェース(I/F:Interface)であるI/F専用回路36と、このI/F専用回路36に接続され印刷ヘッドユニット16を駆動してインクを吐出させるヘッド駆動回路37と、紙送りモーター11およびキャリッジモーター12を駆動するモーター駆動回路38とを備えている。
I/F専用回路36は、パラレルインターフェース回路を内蔵しており、コネクター23を介してコンピューター2から供給される印刷信号PSを受け取ることができる。
続いて、コンピューター2の構成について、図3を参照しつつ説明する。図3は、図1に示すコンピューター2の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、コンピューター2は、CPU51、ROM52、RAM53、HDD(Hard Disk Drive)54、ビデオ回路55、I/F56、バス57、表示装置58、入力装置59および外部記憶装置60によって構成されている。
ここで、CPU51は、ROM52やHDD54に格納されているプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、装置の各部を制御する制御部である。
ROM52は、CPU51が実行する基本的なプログラムやデータを格納しているメモリである。RAM53は、CPU51が実行途中のプログラムや、演算途中のデータなどを一時的に格納するメモリである。
HDD54は、CPU51からの要求に応じて、記録媒体であるハードディスクに記録されているデータやプログラムを読み出すとともに、CPU51の演算処理の結果として発生したデータを前述したハードディスクに記録する記録装置である。
ビデオ回路55は、CPU51から供給された描画命令に応じて描画処理を実行し、得られた画像データを映像信号に変換して表示装置58に出力する回路である。
I/F56は、入力装置59および外部記憶装置60から出力された信号の表現形式を適宜変換するとともに、プリンター1に対して印刷信号PSを出力する回路である。
バス57は、CPU51、ROM52、RAM53、HDD54、ビデオ回路55およびI/F56を相互に接続し、これらの間でデータの授受を可能とする信号線である。
表示装置58は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)モニター、CRT(Cathode Ray Tube)モニターによって構成され、ビデオ回路55から出力された映像信号に応じた画像を表示する装置である。
入力装置59は、例えば、キーボードやマウスによって構成されており、ユーザーの操作に応じた信号を生成して、I/F56に供給する装置である。たとえば、ユーザーは、入力装置59を操作することにより、所望の画像データの印刷処理を開始させる、または、当該印刷処理をするにあたって、印刷モードを「通常印刷モード」もしくは「インク節約モード」のいずれかをコンピューター2に指示することができる。
外部記憶装置60は、例えば、CD−ROM(Compact Disc-ROM)ドライブユニット、MO(Magneto Optic)ドライブユニット、FDD(Flexible Disk Drive)ユニットによって構成され、CD−ROMディスク、MOディスク、FDに記録されているデータやプログラムを読み出してCPU51に供給する装置である。また、MOドライブユニットおよびFDDユニットの場合には、CPU51から供給されたデータを、MOディスクまたはFDに記録する装置である。
図4は、図1に示すコンピューター2に実装されているプログラムおよびドライバーの機能について説明するための図である。なお、これらの機能は、コンピューター2の上述したハードウェアと、HDD54に記録されているソフトウェアとが協働することにより実現される。この図に示すように、コンピューター2には、アプリケーションプログラム61、ビデオドライバープログラム62、およびプリンタードライバープログラム70が実装されており、これらが所定のオペレーティングシステム(OS)の下で動作している。
ここで、アプリケーションプログラム61は、例えば、画像処理プログラムであり、ディジタルカメラなどから取り込まれた画像を加工処理後、またはユーザーによって描画された画像を加工処理後、プリンタードライバープログラム70およびビデオドライバープログラム62に出力する。
ビデオドライバープログラム62は、ビデオ回路55を駆動するためのプログラムであり、例えば、アプリケーションプログラム61から供給された画像データに対してガンマ処理やホワイトバランスの調整などを行った後、映像信号を生成して表示装置58に供給して表示させる。
プリンタードライバープログラム70は、解像度変換モジュール71、色変換モジュール72、色変換テーブル73、記録率テーブル変更モジュール74、ハーフトーンモジュール75、記録率テーブル76、および印刷データ生成モジュール77によって構成されており、アプリケーションプログラム61によって生成された画像データに対して後述する種々の処理を施して印刷データを生成し、プリンター1に供給する。
解像度変換モジュール71は、アプリケーションプログラム61から供給された画像データの解像度を、印刷ヘッド15の解像度に応じて変換する処理を行う。
色変換モジュール72は、RGB(Red,Green,Blue)表色系によって表現されている画像データを、色変換テーブル73を参照して、CMYK(Cyan,Magenta,Yellow,Black)表色系の画像データに変換する処理を行う。
記録率テーブル変更モジュール74は、コンピューター2が入力装置59を介して検出した印刷モード変更のデータ(インク節約モードの指示)を受信すると、記録率テーブル76に記憶されている各ドットの記録率を変更する。なお、記録率テーブル76および記録率テーブル76の各ドットの記録率を変更する詳細な説明は、後述する。
ハーフトーンモジュール75は、後述するディザ処理により、CMYK表色系によって表された画像データを、記録率テーブル76を参照して、3種類のドットの組み合わせ(大、中、小のインク量の異なるドット)からなるビットマップデータに変換する。
印刷データ生成モジュール77は、ハーフトーンモジュール75から出力されたビットマップデータから、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとを含む印刷データを生成して、プリンター1に供給する。
(ドット形成処理について)
続いて、図5を参照して、ドットを形成する際の処理の流れについて説明する。図5は、図1に示すコンピューター2においてドットを形成する際に実行される処理を示すフローチャートである。たとえば、ユーザーが印刷したい画像データについて入力装置59を操作して印刷処理の指示を入力すると、このフローチャートが開始され、以下のステップS10〜ステップS16の処理が実行される。
ステップS10:プリンタードライバープログラム70はRGB表色系によって表されている画像データをアプリケーションプログラム61から受け取る。なお、この画像データは、各画素ごとにR,G,Bそれぞれの色について、値0〜255の256段階の階調値を有するデータである。この画像データとしては、64段階(0〜63)の階調値中32段階(0〜31)の階調値を有するデータなどの場合もあるが、ここでは256段階の階調値を例として説明する。
ステップS11:解像度変換モジュール71は、入力された画像データの解像度をプリンター1の解像度(以下、「印刷解像度」と称する)に変換する。画像データの解像度が印刷解像度よりも低い場合には、線形補間などにより隣接する原画像データの間に新たなデータを生成することで解像度変換が行われる。逆に画像データの解像度が印刷解像度よりも高い場合には、一定の割合で画像データを間引くなどの処理を行うことにより解像度変換が行われる。
ステップS12:色変換モジュール72は、色変換処理を行う。色変換処理とはR,G,Bの階調値からなる画像データをプリンター1で使用するC,M,Y,Kの各色の階調値を表す多階調データに変換する処理である。この処理は、R,G,Bのそれぞれの組み合わせからなる色をプリンター1で表現するためのC,M,Y,Kの組み合わせを記憶した色変換テーブル73を用いて行われる。
ステップS13:記録率テーブル変更モジュール74は、インク量節約モードが指定されている場合に所定の方法で記録率テーブル76に記憶されている各ドットの記録率(各ドットの発生割合)を変更する。この変更処理の詳細については後述する。なおインク量節約モードが指定されない場合には、この変更処理は行われない。
ステップS14:ハーフトーンモジュール75は、ステップS12において色変換された画像データに対して記録率テーブル76を参照しながらハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、原画像データの階調値(本実施の形態では256階調)をプリンター1が画素毎に表現可能な階調値に減色する処理をいう。ここで「減色」とは、色を表現する階調の数を減らすことをいう。なお、本実施例では、「ドットの形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、「大ドットの形成」の4階調への減色を行っている。なお、ハーフトーン処理の詳細については図6を参照して後述する。
ステップS15:印刷データ生成モジュール77は、ハーフトーン処理によって生成されたビットマップデータから印刷データを生成する処理を実行する。ここで、印刷データとは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとを含むデータである。
ステップS16:印刷データ生成モジュール77は、印刷データ生成処理により生成された印刷データを、プリンター1に対して出力する。そして、処理を終了する。
(ハーフトーン処理の詳細について)
続いて、図5に示すフローチャート中のステップS14に示すハーフトーン処理の詳細について図6を参照して説明する。
図6は、図5のステップS14に示すハーフトーン処理の詳細を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、たとえば、ユーザーが印刷したい画像データについて入力装置59を操作して印刷処理の指示が入力されると、図5のステップS14のハーフトーン処理が開始され、以下のステップS30〜ステップS41が実行される。
ステップS30:ハーフトーンモジュール75は、色変換モジュール72から多階調データを受け取る。なお、ここで入力される多階調データとは、色変換処理(図5のステップS12)が施され、C,M,Y,Kの各色につき256階調で表現されたデータのことである。
ステップS31:ハーフトーンモジュール75は、画像データの階調に応じて、次の図7において説明する各ドットのレベルデータ(LVL、LVM、LVS)を設定する。このステップS31では、大ドット用のプロファイルLDから階調値に応じたレベルデータLVLを読み取る。例えば、後述する図7に示すように、多階調データの階調値がgrであれば、レベルデータLVLはプロファイルLDを用いて1dと求められる。実際には、プロファイルLDを1次元のテーブルとしてRAM53に記憶しておき、この1次元のテーブルを参照して大ドットのレベルデータを求めている。つまり、この1次元のテーブルが記録率テーブル76である。ハーフトーンモジュール75は、ステップS31の処理が完了すると、ステップS32の処理へと進む。
ステップS32:ハーフトーンモジュール75は、ステップS31のようにして設定されたレベルデータLVLが閾値THLより大きいか否かを判定する。ここでの判定は、例えば、ディザ法によるドットのオン・オフ判定により行う。なお、本実施例では16×16の正方形の画素ブロックに値0〜254までが現れるマトリックスを用いてオン・オフ判定を行っている。閾値THLは、いわゆるデイザマトリックスにより各画素毎に異なる値が設定される。ハーフトーンモジュール75は、レベルデータLVLが閾値THLよりも大きい場合には、ステップS40に進み、それ以外の場合にはステップS33に進む。
ステップS33:ハーフトーンモジュール75は、大ドットのレベルデータの設定と同様にして、中ドットのレベルデータLVMを設定する。中ドットのレベルデータLVMは、階調値に基づいて、前述の記録率テーブル76により設定される。すなわち、後述する図7に示すように、多階調データの階調値がgrであれば、レベルデータLVMは2dとして求められる。ハーフトーンモジュール75は、ステップS33の処理が完了すると、ステップS34の処理へと進む。
ステップS34:ハーフトーンモジュール75は、中ドットのレベルデータLVMと閾値THMとの大小関係を比較することにより、中ドットのオン・オフの判定を行う。なお、オン・オフの判定方法は、大ドットの場合と同じであるが、判定に用いる閾値THMを大ドットの場合の閾値THLとは異なる値としてもよい。そして、ハーフトーンモジュール75は、中ドットのレベルデータLVMが閾値THMよりも大きい場合には、中ドットをオンにすると判定して、ステップS39に進み、それ以外の場合にはステップS35に進む。
ステップS35:ハーフトーンモジュール75は、大ドットや中ドットのレベルデータの設定と同様にして、小ドットのレベルデータLVSを設定する。すなわち、後述する図7に示すように、多階調データの階調値がgrであれば、レベルデータLVSは3dとして求められる。なお、小ドット用のディザマトリクスは、小ドットの記録率の低下を抑制するために中ドットや大ドット用のものと異なるものとしてもよい。ハーフトーンモジュール75は、ステップS35の処理が完了すると、ステップS36の処理へと進む。
ステップS36:ハーフトーンモジュール75は、小ドットのレベルデータLVSと閾値THSとの大小関係を比較することにより、小ドットのオン・オフの判定を行う。レベルデータLVSが小ドットの場合の閾値THSよりも大きい場合には、ステップS38に進み、それ以外の場合にはステップS37に進む。
ステップS37:ハーフトーンモジュール75は、ドットを形成しないと判断して、結果値を格納する変数REに2進数の値“00”を格納する。そして、ハーフトーンモジュール75は、ステップS37の処理が完了すると、ステップS41へ進む。
ステップS38:ハーフトーンモジュール75は、小ドットを形成すると判断して、結果値を格納する変数REに2進数の値“01”を格納する。そして、ハーフトーンモジュール75は、ステップS38の処理が完了すると、ステップS41へ進む。
ステップS39:ハーフトーンモジュール75は、中ドットを形成すると判断して、結果値を格納する変数REに2進数の値“10”を格納する。そして、ハーフトーンモジュール75は、ステップS39の処理が完了すると、ステップS41へ進む。
ステップS40:ハーフトーンモジュール75は、大ドットを形成すると判断し、結果値を格納する変数REに2進数の値“11”を格納する。そして、ハーフトーンモジュール75は、ステップS40の処理が完了すると、ステップS41へ進む。
ステップS41:以上の処理により、1つの画素について、いずれのドットを形成すべきかの判定がなされるので、ハーフトーンモジュール75は、全画素について処理が終了するまで、ステップS31〜ステップS40の処理を繰り返す。そして、全画素に対する処理が終了すると、ハーフトーン処理(図5のステップS14)を終了して、印刷データ生成処理(図5のステップS15)へと進む。
(記録率テーブルについて)
図7は、図6に示すハーフトーン処理時における、大、中、小、各ドットのレベルデータの決定に利用される複数の記録率テーブル76の一例を示す図である。
図7の横軸は、階調値(0〜255)を示し、左側の縦軸は、ドット記録率(%)を示し、右側の縦軸は、レベルデータ(0〜255)を示すものである。ここで、「ドット記録率」とは、一定の階調値に応じて一様な領域が再現されるときに、当該領域内の画素のうちで当該ドットが形成される画素の割合を意味する。
図7中の実線細線で示されるプロファイルSDが小ドットの記録率を示しており、また、実線太線で示されるプロファイルMDが中ドットの記録率を、点線で示されるプロファイルLDが大ドットの記録率をそれぞれ示している。また、レベルデータとは、ドットの記録率を値0〜255の256段階に変換したデータをいう。なお、記録率テーブル76の設定方法については後述する。
図8は、図6に示すハーフトーン処理時における、ディザ法によるドットのオン・オフ判定の様子を示す図である。なお、図示の都合上、一部の画素についてのみ示す。
図8に示す通り、レベルデータの各画素とディザテーブルの対応箇所の大小を比較する。レベルデータの方がディザテーブルに示された閾値よりも大きい場合にはドットをオンにし、レベルデータの方が小さい場合にはドットをオフとする。図8中でハッチングを施した画素がドットをオンにする画素を示している。
(記録率テーブルの設定方法について)
続いて、図4に示した記録率テーブル76の設定方法について説明する。
図9は、図4に示す記録率テーブル76とインク吐出量との間の関係を示す図であり、(A)は、階調値と各ドットのドット記録率との間の関係を示す図であり、(B)は、階調値と所定の領域に吐出されるインク量との間の関係を示す図である。なお、本実施例における所定の領域は、255個の画素から構成される領域とされており、本実施例におけるインク量は、小ドットが3ピコリットル(以下、ピコリットルは「pl」と表記)、中ドットが6pl、そして大ドットが15plと設定されている。
具体的には、図9(B)は、各階調値毎に下記(1)(2)(3)の各値の積をプロットしたものである。
(1)各サイズのドットの記録率(例えば、階調値G2において小ドットは25%、中ドットは50%)
(2)インク量(小ドットは3pl、中ドットは6pl、大ドットは15pl)
(3)所定の領域の画素数(255画素)
例えば、階調値が255(最大階調値)の場合には、上記の積は3825pl(=100%×15pl×255画素)となる。
図9(B)において、階調値が“0”から“255”に向かって大きくなると、インク吐出量は直線Wiに沿って0plから3825plに向かって増加する。このように、本実施例では、説明を簡潔化するために所定の領域に吐出されるインク量と階調値とは線形の関係を有するものとして設定されている。
所定の領域に吐出されるインク量は、図9(A)、(B)に示すように、階調値の増大に応じて以下の(4)、(5)、(6)、(7)のように増加する。
(4)階調値“0”から階調値G1までの領域においては、小ドットの記録率の増大に応じて線形にインク量が増加する。この領域は小ドットのみで占められている。
(5)階調値G1から階調値G2までの領域においては、小ドットのドット記録率は一定となり、中ドットのドット記録率の増大に応じて線形にインク量が増加する。この領域は、小ドットと中ドットで構成される。
(6)階調値G2から階調値G3までの領域においては、小ドットと中ドットの記録率は一定となり、大ドットのドット記録率の増大に応じて線形にインク量が増加する。この領域は、小ドットと中ドットと大ドットの3種類で構成される。
(7)階調値G3から最大階調値までの領域においては、小ドットと中ドットのドット記録率は減少に転じ、小ドットと中ドットを大ドットに置き換えていくことにより、線形にインク量が増加する。この領域も小ドットと中ドットと大ドットの3種類で構成される。
なお、このようなドット記録率のプロファイル(記録率テーブル)は、一般的に以下の(A)、(B)のようなトレードオフを考慮して決定される。
(A)粒状性(画像のざらつき)を抑制するためには、視認されやすい比較的大きなドットのドット記録率を低くして、比較的小さなドットのドット記録率を高くすることが望ましい。このような特性は、低い階調領域において特に顕著である。
(B)バンディング(筋状の画質劣化)を少なくするためには、比較的小さなドットを比較的大きなドットに置き換えることにより、比較的小さなドットのドット記録率を低くするのが望ましい。このような特性は、高い階調領域において特に顕著である。
(記録率テーブルの設定変更処理について)
続いて、上述の(A)、(B)のようなトレードオフを考慮して決定された記録率テーブル76に記憶されている記録率の設定値(各ドットの発生割合)を変更する処理について説明する。
図10は、図5のステップS13に示す記録率テーブル76に記憶されている記録率の設定値を変更する処理を示すフローチャートである。この図10に示すフローチャートが開始されると、以下のステップS50およびステップS51の処理が実行される。
ステップS50:記録率テーブル変更モジュール74は、インク節約モードの指示判定を行い、コンピューター2がインク節約モードの処理要求を受信したか否かを判定し、その要求を受信したと判定した場合(ステップS50でYES)には、ステップS51の処理を行う。一方、節約モードの処理要求以外(たとえば、通常印刷モードの指示)の処理要求が受信された場合(ステップS50でNO)には、手続は、図5のステップS14のハーフトーン処理へと進む。
ステップS51:記録率テーブル変更モジュール74は、図9で示した記録率テーブル76の全ての階調値における大ドットの記録率をゼロに変更する。そして、手続きは、図5のステップS14のハーフトーン処理へと進む。
図11は、ステップS51での変更処理を行う前後の記録率テーブル76の一例を示す図である。図11(A)には、変更処理前の記録率テーブル76の一例として図9(A)と同じ記録率テーブル76が示されている。図11(B)には、図11(A)に示す記録率テーブル76に記憶されている記録率の設定値を、ステップS51の変更処理で変更した後の記録率テーブル76が示されている。
図11(B)では、大ドットの記録率が削除されているとともに、中ドットの記録率が、変更前の大ドットの記録率(すなわち図11(A)に示される大ドットの記録率)分だけ増加している。すなわちこの例の場合、ステップS51の変更処理により、大ドットの発生割合がゼロに変更されるとともに、中ドットの発生割合が変更前の大ドットの発生割合分だけ増加するように変更される。
図12は、同一の画像データがコンピューター2からプリンター1へ入力された場合であって、図11に示した変更処理を行わなかった場合と、変更処理を行った場合の両方の総インク量を説明するための図である。
図12に示す事例では、変更処理を行わなかった場合には、総インク量は124,985,238plであるのに対して、変更処理を行った場合には、総インク量が69,928,404plとなっている。これにより、総インク量の44.1%が節約できたことを示している。
つまり、実施例1の印刷装置および印刷方法では、上述したステップS51の処理を行うことにより、その後のハーフトーン処理時において大ドットの発生割合がゼロとなるため大ドットが選択されることがなくなり、全ての階調値において小ドットおよび中ドットが使用されることで、インク量の節約が可能となる。
また、実施例1の印刷装置および印刷方法では、インク量が多い部分(つまり、階調値が高く設定され、インク濃度が高い部分)ではにじみなどが発生するため、当該部分で最も多く使用される大ドットの発生割合をゼロに下げても、インク量が少ない部分(つまり、階調値が低く設定され、インク濃度が低い部分)と比較すると画質の再現性についての影響が少ない。したがって、この印刷装置および印刷方法では、階調値に応じてインク量を適切に節約できる。
また、実施例1の印刷装置および印刷方法では、大ドットのインク量(15pl)は、中ドットのインク量(6pl)の2倍以上に設定されているため、1ドットあたりのインク量を通常時の2分の1以上節約することができる。
続いて、本発明の実施例3について説明する。なお、実施例3の構成は、記録率テーブル76に設定されている各ドットが初めて発生する階調値を変更する処理以外は、実施例1のハードウェア構成およびソフトウェア構成と同一であり、同一のドット形成処理を行うため、これらの説明及び図示を省略する。なお、以下で説明する実施例3では、大ドットが初めて使用される階調値(以下、ドットが初めて使用される階調値を便宜的に「開始階調値」と呼ぶ)に所定値を加算して当該加算後の階調値(以下、当該階調値を便宜的に「変更後階調値」と呼ぶ)を変更する一例であるが、大ドットに加えて中ドットの開始階調値に、同一の所定値(たとえば、大ドットおよび中ドットの階調値に対して一律に所定値「30」を加算する)、または異なる所定値(たとえば、大ドットの開始階調値に対しては所定値30を加算し、中ドットの開始階調値に対しては所定値35を加算するなど)をそれぞれ加算するように設計変更してもよい。また、大ドットの開始階調値については何ら加算せずに、中ドットの開始階調値についてのみ所定値を加算するように設計変更してもよい。
図16は、本発明の実施例3に係る印刷装置の記録率テーブル76の設定値を変更する処理を示すフローチャートである。この図16に示すフローチャートが開始されると、以下のステップS50BおよびS51Bが実行される。
ステップS50B:記録率テーブル変更モジュール74は、インク節約モードの指示判定を行い、コンピューター2がインク節約モードの処理要求を受信したか否かを判定し、その要求を受信したと判定した場合(ステップS50BでYES)には、ステップS51の処理を行う。一方、節約モードの処理要求以外(たとえば、通常印刷モードの指示)の処理要求が受信された場合(ステップS50BでNO)には、手続は、実施例1にて説明した図5のステップS14に相当するハーフトーン処理へと進む。
ステップS51B:記録率テーブル変更モジュール74は、インク節約モードの処理要求があると、図4で示した記録率テーブル76の大ドットの使用が開始される階調値(以下、「開始階調値」と称する、なお、後述する図17では大ドットの開始階調値はG2となる)に対して所定係数(たとえば、30)を加算し、当該開始階調値から開始階調値に所定の係数を加算して得られる階調値(後述する図17ではG3)の間の大ドットの記録率を、開始階調値に対応する発生割合となるように変更する。そして、手続は、実施例1にて説明した図5のステップS14に相当するハーフトーン処理へと進む。
図17は、図16に示すステップS51Bでの変更処理を行う前後の記録率テーブル76の一例を示す図である。図17(A)には、変更処理前の記録率テーブル76の一例として図9(A)と同じ記録率テーブル76が示されている。図17(B)には、図17(A)に示す記録率テーブル76に記憶されている記録率の設定値を、図16に示すステップS51Bの変更処理で変更した後の記録率テーブル76が示されている。
例えば、大ドット、中ドット、小ドットの発生割合が図17(A)に示すように予め設定されている場合に、図16に示すステップS51Bの変更処理を行うと、図17(B)に示すように大ドットの開始階調値がG2に所定値加算されたG3に変更され、G2からG3の間における大ドットの発生割合はゼロに変更される。
図18は、同一の画像データがコンピューター2からプリンター1へ入力された場合であって、図16に示す変更処理を行わなかった場合と、図16に示す変更処理を行った場合の両方の総インク量を説明するための図である。
図18に示す事例では、図16に示す変更処理を行わなかった場合には、総インク量は124,985,238plであるのに対して、図16に示す変更処理を行った場合には、総インク量が102,044,891plとなっている。これにより、総インク量の18.4%が節約できたことを示している。
実施例3の印刷装置および印刷方法では、記録率テーブル76内のすべての階調値における大ドットの発生割合は、開始階調値から所定値加算後の階調値までの発生割合がゼロになるため、所定値加算前のすべての階調値における発生割合と比較して全体的に減少することになる。
また、実施例3の印刷装置および印刷方法では、インク量が多い部分(つまり、階調値が高く設定され、インク濃度が高い部分)ではにじみなどが発生するため、当該部分で最も多く使用される大ドットの開始階調値をより大きな階調値へと変更しても、インク量が少ない部分(つまり、階調値が低く設定され、インク濃度が低い部分)と比較すると画質の再現性についての影響が少ない。したがって、実施例3の印刷装置および印刷方法では、階調値に応じてインク量を適切に節約できる。
また、実施例3の印刷装置および印刷方法では、大ドットのインク量(15pl)は、中ドットのインク量(6pl)の2倍以上に設定されているため、1ドットあたりのインク量を通常時の2分の1以上節約することができる。
(その他の変形例)
以上、本発明の実施例1〜3について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能である。たとえば、以上の本発明の実施例1〜3においては、記録率テーブル76に記憶されているすべての階調値を変更対象としたが、その他にも、所定の階調値以上(たとえば、階調値が128以上など)を変更対象とするように設計変更してもよい。このような印刷装置および印刷方法とした場合、階調値が高い箇所(所定の階調値以上)に対応する各ドットの発生割合を変更すると共に、階調値が低い箇所(所定の階調値未満)に対応する各ドットの発生割合は変更しないようにすることができる。したがって、このような印刷装置および印刷方法は、印刷濃度が薄くなる部分(たとえば、ハイライト部分)においては、インク量を減らすことがなく、印刷濃度が濃くなる部分においては、インク量を節約することができるので、画質の再現性について影響しないようにすることが可能となる。
また、以上の本発明の実施例1〜3及び上述したその他の変形例において使用するインクとしては、CMYKの4色であるが、これ以外に淡色系のインク(ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、ダークイエロー(DY))のインクを用いるようにしてもよい。なお、その場合にはこれらの淡色系の各インクに対応した記録率テーブル76を追加して用意すると共に、記録率テーブル変更モジュール74によりこれらの記録率テーブル76に記憶されている各ドットの発生割合を上述した実施例1〜3に示したような方法で変更するようにすることが好ましい。
また、以上の本発明の実施例1〜3及び上述したその他の変形例では、ピエゾ素子を用いてインクを吐出するヘッドを備えたプリンター1を用いているが、吐出駆動素子としては、ピエゾ素子以外の種々のものを利用することが可能である。例えば、インク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する気泡(バブル)によりインクを吐出するタイプの吐出駆動素子を備えたプリンター1に適用することも可能である。
また、以上の本発明の実施例1〜3及び上述したその他の変形例では、大ドットのインク量は、中ドットのインク量と比較して2倍以上のインク量に設定したが、その他にも、中ドットの1.5倍、1.8倍のインク量などの2倍以下のインク量に設定してもよいし、中ドットの3倍、4倍のインク量などの2倍以上のインク量に設定してもよい。また、本発明の実施例1〜3及び上述したその他の変形例における大ドット、中ドット、小ドットのインク量はそれぞれ、15pl、6pl、3plとしたが、それ以外のインク量に設定されていてもよい。
また、以上の本発明の実施例1〜3および上述したその他の変形例では、記録率テーブル76に対して変更処理前と処理後を示して説明したが、その他にも、入力する画像データの特性によっては、使用される階調値にばらつきがあることが想定されることから、実施例1〜3の各方法により変更前後の総インク量を求めて、総インク量が減少する場合には「インク節約モード」を続行し、総インク量が減少しない場合にはその旨を表示装置58に出力するなどして、処理を中止するように構成してもよい。また、このような変形例において総インク量が所定割合(たとえば10%)以上の節約ができないときは、その旨を表示装置に出力するなどして、処理を中止するように構成してもよい。
また、以上の本発明の実施例1〜3及び上述したその他の変形例では、HDD54(または、外部記憶装置60)に格納されたプリンタードライバープログラム70により、前述した処理を実行するようにしている。しかし、プリンター1のROM43にプリンタードライバープログラム70の機能を有するプログラムを格納しておき、このプログラムにより前述の処理を実行するように設計変更する、または、コンピューター2とプリンター1によりこれらの機能を分担して処理するように設計変更することも可能である。
なお、以上の処理機能を記述したプログラムは、コンピューター2で読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピューター2で読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記録装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD、DVD−RAM(Random Access Memory)、CD−ROM、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。光磁気記録媒体には、MOなどがある。
上述したプログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバーコンピューターの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバーコンピューターから他のコンピューターにそのプログラムを転送することもできる。
上述したプログラムを実行するコンピューター2は、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバーコンピューターから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピューター2は、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピューター2は、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピューター2は、サーバーコンピューターからプログラムが転送される毎に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。