JP2011074962A - 保持器、転がり軸受、工作機械および保持器の製造方法 - Google Patents

保持器、転がり軸受、工作機械および保持器の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い強度を有するマグネシウム合金からなる型から無理抜きとなる形状を有する保持器、当該保持器を備えた転がり軸受、当該転がり軸受を備えた工作機械および当該保持器の製造方法を提供する。
【解決手段】保持器14は、マグネシウム合金からなり、マグネシウム合金が保持器14の形状に対応する形状を有するキャビティ部61を備えた金型60を用いた射出成形で成形された金型60から無理抜きとなる形状を有している。
【選択図】図3

Description

本発明は、保持器、転がり軸受、工作機械および保持器の製造方法に関し、特にマグネシウム合金からなる保持器、当該保持器を備えた転がり軸受、当該転がり軸受を備えた工作機械および当該保持器の製造方法に関するものである。
転がり軸受のうち、玉軸受は、ころ軸受に比して高速性、低トルク性が求められる用途に用いられることが多い。玉軸受のうち、深溝玉軸受が広く用いられている。深溝玉軸受において、転動体である玉を保持する保持器には、鋼板をプレス成形した波型保持器と、樹脂を射出成形した冠型保持器が広く用いられている。このうち冠型保持器は、通常ガラス繊維などで強化されたナイロン樹脂で製作されている。
冠型保持器を低トルク化した一例として、たとえば、特開2000−16365号公報(特許文献1)には、冠型保持器の弾性片(つめ部)が冠型保持器の径方向に傾斜するように形成された冠型保持器が開示されている。また、特開2001−271841号公報(特許文献2)には、ポケット部の両端部に形成された円周側凹面の一端と他端とが玉の転動面と当接自在に形成された冠型保持器が開示されている。
また、高い強度を有するマグネシウム合金を保持器に適用することが提案されている。たとえば、特開2000−213544号公報(特許文献3)には、軽量化を達成しつつ、より高い強度が必要な用途にマグネシウム合金を半溶融成形することにより製造した保持器が適用可能であることが提案されている。
特開2000−16365号公報 特開2001−271841号公報 特開2000−213544号公報
転がり軸受の摩擦トルクの一部は、転動体と保持器との間の潤滑油の油膜のせん断によって発生する。したがって、低トルク化のためには転動体と保持器との接触面積は小さいほうが望ましい。しかしながら、特開2000−16365号公報および特開2001−271841号公報の保持器では、転動体と保持器との接触面積を小さくすると十分な強度が確保されないという問題がある。
また、マグネシウム合金を保持器に適用することにより、保持器を肉薄にすることが可能である。しかし、特開2000−213544号公報の保持器では、射出成形により成形したマグネシウム合金製の保持器を実際に作成した場合、型の中の気体の巻き込みおよび偏析相である純マグネシウム相の析出のため本来得られるべき高い強度および疲労特性が十分に得られないという問題がある。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、高い強度を有するマグネシウム合金からなる型から無理抜きとなる形状を有する保持器、当該保持器を備えた転がり軸受、当該転がり軸受を備えた工作機械および当該保持器の製造方法を提供することである。
本発明の保持器は、転がり軸受において転動体を保持する保持器であって、マグネシウム合金からなり、マグネシウム合金が保持器の形状に対応する形状を有するキャビティ部を備えた型を用いた射出成形で成形された型から無理抜きとなる形状を有している。
本発明者は、射出成形により成形したマグネシウム合金製の保持器において、本来得られるべき高い強度および疲労特性が十分に得られない原因およびその対応策について検討を行なった。その結果、以下のような知見が得られ、本発明に想到した。
すなわち、射出成形によりマグネシウム合金製の保持器を作製する場合、液相を含むマグネシウム合金が流動して型の内部(キャビティ部)が充填される。このとき、保持器の形状およびゲート数に起因して、液相を含むマグネシウム合金が合流する領域(いわゆるウエルド部)が形成される。ここで、射出成形が実施される際のマグネシウム合金は、一般的な樹脂の場合に比べて大幅に粘度が小さい状態で型の中に供給される。また、一般的な樹脂と比べてマグネシウム合金は比熱が小さく、熱伝導性に優れることから固化速度が速い。このようなマグネシウム合金の特性に対応するため、マグネシウム合金は、一般的な樹脂の射出成形の場合の数倍〜十倍程度の高速で金型内に充填される。そのため、マグネシウム合金は乱流となりやすく、型の中の気体(空気など)を巻き込みやすくなる。その結果、上記マグネシウム合金が合流する領域(ウエルド部)において当該気体が閉じ込められることにより、ボイドを含むボイド含有部分が形成される。つまり、ボイド含有部分は、マグネシウム合金が合流した部分であり、型の中の気体が閉じ込められることによりボイドを含有している。このように、マグネシウム合金製の保持器においては、ボイド含有部分のボイドによる強度低下に起因して、本来得られるべき高い強度や疲労特性が十分に得られないという問題が発生していた。
これに対し、本発明の保持器においては、液相を含むマグネシウム合金が合流することによりボイドを含むボイド含有部分がマグネシウム合金内に形成され、ボイド含有部分がキャビティ部の外部に押し出されることにより形成される。そのため、保持器内にボイドを含むボイド含有部分が残存して強度が低下することが抑制されるので、軽量で、かつ高い強度を有するマグネシウム合金製の保持器を提供することができる。また、上記保持器においては、融点以上の温度域に加熱されることにより液相のみの状態(固相を含まない状態)に制御されたマグネシウム合金が、型に対して射出されることにより製造されていることが好ましい。これにより、偏析相である純マグネシウム相の析出(α相)を抑えたより疲労強度に優れるマグネシウム合金製の保持器を提供することができる。
本発明の保持器は、型から無理抜きとなる形状に成形されている。型から無理抜きとなる形状では高い強度が求められる。従来の射出成形により形成されたマグネシウム合金からなる保持器では、高い強度が十分に得られないが、上記の本発明の射出成形により高い強度を得ることができる。よって、本発明の保持器は、型から無理抜きとなる形状に成形され得る。型から無理抜きとなる形状を有する保持器として、たとえば、冠型保持器、かご型保持器などがある。また、型から無理抜きとなる形状を有する保持器としては、複数部品から構成されて、たとえばスナップフィットにより固定される保持器もある。冠型形状の保持器では、つめ部がたわみ易いため高い比剛性が求められる。そのため、マグネシウム合金からなることにより高い比剛性を有する本発明の保持器は、冠型保持器への採用に適している。
本発明の保持器によれば、本発明の射出成形によってマグネシウム合金で成形されているため、従来の樹脂製保持器に比べて肉薄でも同等の剛性を得ることができる。また、使用時の遠心力による変形を低減することができるので、従来の樹脂製の保持器に比べて高回転で使用できる。
また、本発明の保持器によれば、保持器のポケット部を肉薄にできるため、転動体とポケット部との接触面積を減少できる。そのため、転動体とポケット部との間における潤滑油の油膜のせん断によって発生する摩擦トルクを減少できる。
また、本発明の保持器によれば、従来の樹脂製保持器の材料の一例であるガラス繊維を25質量%配合した繊維強化66ナイロン樹脂の連続使用可能温度(UL長期耐熱温度(衝撃なし))は約120℃であるのに比べて、マグネシウム合金は軸受鋼の使用限界温度に十分耐えられるため、保持器材質が軸受の使用温度の制限とならない。
また、本発明の保持器によれば、マグネシウム合金を射出成形することにより形成されているため、複雑な形状である型から無理抜きとなる形状を有する保持器を容易に成形できる。また、本発明の保持器によれば、射出成形により成形されているため、切削加工等の機械加工により製造される一般的な金属製保持器と比べると量産性に優れている。
上記の保持器において好ましくは、射出成形後、型の温度が250℃以上350℃以下で型から取り出される。
型から保持器を離型する際に金型温度を、塑性変形性を示す温度近傍以上、たとえば250℃以上に保つことによって、マグネシウム合金の有する脆性を緩和することができる。これにより容易に離型することができるので加工精度を向上できる。型の温度は、280℃以上に保たれるのが好ましい。さらに、型の温度は、300℃以上に保たれることがより好ましい。型の温度は、マグネシウム合金の融点より低ければ、射出成形上問題ないが、高温になるほど冷却時間を長くとる必要があるため、350℃以下に保たれることが好ましい。
上記の保持器において好ましくは、マグネシウム合金は、Mg(マグネシウム)−Al(アルミニウム)−Zn(亜鉛)−Mn(マンガン)系、Mg−Al−Mn系およびMg−Al−Si(珪素)−Mn系のいずれかである。
Mg−Al−Zn−Mn系、Mg−Al−Mn系およびMg−Al−Si−Mn系のマグネシウム合金は、射出成形に適しており、このようなマグネシウム合金を採用することにより、本発明の保持器を容易に製造することができる。ここで、Mg−Al−Zn−Mn系のマグネシウム合金としては、たとえばASTM規格AZ91Dを挙げることができる。Mg−Al−Mn系のマグネシウム合金としては、たとえばASTM規格AM60Bを挙げることができる。Mg−Al−Si−Mn系のマグネシウム合金としては、たとえばASTM規格AS41Aを挙げることができる。
本発明の転がり軸受は、軌道部材と、軌道部材に接触して配置される複数の転動体と、転動体を転動自在に保持する、上記の本発明の保持器とを備えている。
本発明の転がり軸受においては、軽量で、かつ高い強度を有するマグネシウム合金製の本発明に従った保持器が採用されている。その結果、本発明の転がり軸受によれば、高速回転に適し、かつ信頼性の高い転がり軸受を提供することができる。
本発明の工作機械は、工作機械の主軸と、主軸の外周面に対向するように配置されるハウジングと、主軸をハウジングに対して回転可能に支持するための、上記の本発明の転がり軸受とを備えている。
工作機械の主軸は極めて高い回転速度で回転するため、これを支持する転がり軸受(工作機械用転がり軸受)の保持器においては、高強度であるとともに軽量であることが求められる。また、工作機械用転がり軸受の高い回転速度に起因する遠心力に対して剛性が不足すると、保持器が変形し、軸受の回転精度の低下(NRRO(Non−Repeatable Run−Out);非同期振れが上昇)や、軸受での発熱が大きくなるという問題が発生する。
本発明の工作機械によれば、高強度かつ軽量であるだけでなく、比剛性の大きいマグネシウム合金製の保持器を有する本発明の転がり軸受を備えており、高速回転に適し、かつ信頼性の高い工作機械を提供することができる。
本発明の保持器の製造方法は、転がり軸受において転動体を保持する保持器の製造方法である。この製造方法は、マグネシウム合金を加熱することにより液相を生じさせる工程と、液相が生じたマグネシウム合金を、保持器の形状に対応する形状を有するキャビティ部を備えた型に射出してキャビティ部をマグネシウム合金で充填することにより、マグネシウム合金を保持器の型から無理抜きとなる形状に成形する工程と、保持器の型から無理抜きとなる形状に成形されたマグネシウム合金からなる保持器を、型から取り出す工程とを備えている。マグネシウム合金を保持器の型から無理抜きとなる形状に成形する工程では、液相を含むマグネシウム合金が合流することによりボイドを含むボイド含有部分がマグネシウム合金内に形成され、ボイド含有部分はキャビティ部の外部に押し出される。
本発明の保持器の製造方法においては、液相を含むマグネシウム合金が合流することによりボイドを含むボイド含有部分がマグネシウム合金内に形成され、ボイド含有部分はキャビティ部の外部に押し出される。そのため、保持器内にボイドを含むボイド含有部分が残存して強度が低下することが抑制される。その結果、本発明の保持器の製造方法によれば、軽量で、かつ高い強度を有するマグネシウム合金製の保持器を製造することができる。
本発明の保持器の製造方法では、保持器が型から無理抜きとなる形状に形成されている。冠型形状の保持器では、つめ部がたわみ易いため高い比剛性が求められる。そのため、マグネシウム合金からなることにより高い比剛性を有する保持器を製造可能な本発明の保持器の製造方法は、冠型保持器の製造に適している。
上記の保持器の製造方法において好ましくは、保持器を型から取り出す工程では、型の温度が250℃以上350℃以下である。型から保持器を離型する際に金型温度を、塑性変形性を示す温度近傍以上、たとえば250℃以上に保つことによって、マグネシウム合金の有する脆性を緩和することができる。これにより容易に離型することができるので生産効率を向上できる。型の温度は、280℃以上に保たれるのが好ましい。さらに、型の温度は、300℃以上に保たれることがより好ましい。型の温度は、マグネシウム合金の融点より低ければ、射出成形上問題ないが、高温になるほど冷却時間を長くとる必要があるため、350℃以下に保たれることが好ましい。
以上説明したように、本発明の保持器、転がり軸受、工作機械および保持器の製造方法によれば、高い強度を有するマグネシウム合金からなる型から無理抜きとなる形状を有する保持器、当該保持器を備えた転がり軸受、当該転がり軸受を備えた工作機械および当該保持器の製造方法を提供することができる。
本発明の実施の形態1における保持器を有する転がり軸受を備えた工作機械の主軸付近の構成を示す概略断面図である。 本発明の実施の形態1における保持器を有する転がり軸受の構成を示す概略部分断面図である。 本発明の実施の形態1における保持器の構成を示す概略斜視図である。 本発明の実施の形態1における保持器を有する転がり軸受の変形例1の構成を示す概略部分断面図である。 本発明の実施の形態1における保持器を有する転がり軸受の変形例2の構成を示す概略部分断面図である。 本発明の実施の形態1における保持器を有する転がり軸受の変形例3の構成を示す概略部分断面図である。 本発明の実施の形態1における保持器を有する転がり軸受の変形例4の構成を示す概略部分断面図である。 本発明の実施の形態1における保持器を有する転がり軸受の変形例5の構成を示す概略部分断面図である。 本発明の実施の形態1におけるアンギュラ玉軸受の構成を示す概略部分断面図である。 本発明の実施の形態1における射出成形装置の構成を示す概略図である。 本発明の実施の形態1における射出成形装置の型の構成を示す概略図である。 本発明の実施の形態1における保持器の製造工程の概略を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態2における射出成形装置の型の構成を示す概略図である。 実施例における玉と保持器との間のせん断抵抗を説明する図である。 従来の保持器を有する転がり軸受の構成を示す概略部分断面図である。 従来の玉と保持器との間のせん断抵抗を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に本発明の実施の形態1の工作機械の構成について説明する。
図1を参照して、本実施の形態における工作機械90は、円筒状の形状を有する主軸91と、主軸91の外周面を取り囲むハウジング92と、外輪11および外輪21の外周面のそれぞれがハウジングの内壁92Aに接触するとともに、内輪12および内輪22の内周面のそれぞれが主軸91の外周面91Aに接触するように、主軸91とハウジング92との間に嵌め込まれて配置された工作機械用の転がり軸受としての深溝玉軸受1(リア軸受)とアンギュラ玉軸受2(フロント軸受)とを備えている。これにより、主軸91は、ハウジング92に対して軸回りに回転自在に支持されている。
また、主軸91には、外周面91Aの一部を取り囲むようにモータロータ93Bが設置されており、ハウジング92の内壁92Aには、モータロータ93Bに対向する位置にモータステータ93Aが設置されている。このモータステータ93Aおよびモータロータ93Bは、モータ93(ビルトインモータ)を構成している。これにより、主軸91は、モータ93の動力によって、ハウジング92に対して相対的に回転可能となっている。
すなわち、深溝玉軸受1およびアンギュラ玉軸受2は、工作機械90の主軸91を、主軸91に対向するように配置される部材であるハウジング92に対して回転自在に支持する工作機械用の転がり軸受である。
次に、工作機械90の動作について説明する。図1を参照して、モータ93のモータステータ93Aに図示しない電源から電力が供給されることにより、モータロータ93Bを軸回りに回転させる駆動力が発生する。これにより、ハウジング92に対してアンギュラ玉軸受2および深溝玉軸受1により回転自在に支持されている主軸91は、モータロータ93Bとともにハウジング92に対して相対的に回転する。このように、主軸91が回転することにより、主軸91の先端91Bに取り付けられた図示しない工具が被加工物を切削、研削等して、被加工物を加工することができる。
次に、上記深溝玉軸受1について説明する。図2を参照して、深溝玉軸受1は、第1軌道部材としての外輪11と、第2軌道部材としての内輪12と、複数の転動体としての玉13と、保持器14とを備えている。外輪11の内周面には、円環状の第1転走面しての外輪転走面11Aが形成されている。内輪12の外周面には、外輪転走面11Aに対向する円環状の第2転走面としての内輪転走面12Aが形成されている。外輪転走面11Aおよび内輪転走面12Aは、それぞれ深溝型に形成されている。また、複数の玉13には、転動体接触面としての玉転走面13A(玉13の表面)が形成されている。そして、当該玉13は、外輪転走面11Aおよび内輪転走面12Aの各々に玉転走面13Aにおいて接触し、冠型形状の保持器14により周方向に所定のピッチで配置されることにより、円環状の軌道上に転動自在に保持されている。これにより、外輪11と内輪12とは互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、図3を参照して、本実施の形態の保持器14の一例について説明する。保持器14は、型から無理抜きとなる形状を有している。本実施の形態では一例として、保持器14は、冠型形状を有している。冠型形状とは、転動体が挿入されるポケット部の一方側が開口している形状である。保持器14は、つめ部14Aと、ポケット部14Bと、主部14Cとを有している。円環状の主部14Cの円周方向に、玉13を転動自在に保持するためのポケット部14Bが複数設けられている。なお、ポケット部14Bの数は、限定されない。また、ポケット部14Bは、奇数個であってもよく、偶数個であってもよい。
各ポケット部14Bの先端には、互いに間隔をあけて対向するように配置されたつめ部14Cが設けられている。この対向するつめ部14Cの先端の間隔は、玉13の直径より小さくなるように形成されている。各ポケット部14Bの内周面には、球面状の凹形状が形成されている。この凹形状の曲率半径は、玉13の軌道面の曲率半径よりわずかに大きく形成されている。
保持器14は、上記の射出成形により形成されたマグネシウム合金からなっているため、従来の樹脂製保持器に比べて肉薄でも同等の剛性を得ることができる。また、保持器14は、従来の樹脂製保持器より肉薄で同等の剛性を得ることができるため、潤滑油の油膜のせん断抵抗を減少することにより摩擦トルクを減少することができる。
上記では、保持器14は、図2に示す形状に限定されない。図4〜8を参照して、本実施の形態の保持器14の変形例を説明する。変形例の形状であっても、マグネシウム合金で形成されているため、保持器14は高い強度を有している。また、変形例のポケット部形状では、従来の形状より小さな力で離型することができる。
図4に示す変形例1では、断面視において、保持器14の中央部が軸方向に凸形状に形成されている。図5に示す変形例2では、断面視において、保持器14の内周部が軸方向に凸形状に形成されている。図6に示す変形例3では、断面視において、保持器14の外周面が軸方向に根元から先端に向かって断面積が小さくなるように形成されている。図7に示す変形例4では、断面視において、保持器14の外周面が玉13の中心より外輪11側に配置されるように形成されている。図8に示す変形例5では、断面視において、保持器14の内周面が玉13の中心より内輪12側に配置されるように形成されている。
そして、保持器14は、AZ91Dなどのマグネシウム合金からなり、射出成形により成形されている。そして、この保持器14においては、射出成形においてマグネシウム合金が合流することにより形成されたボイドを含むボイド含有部分がキャビティ部の外部に押し出されることにより、ボイド含有部分が保持器14から排除されている。これにより、保持器14は、軽量で、かつ高い強度を有するマグネシウム合金製の保持器となっている。また、保持器14は、つめ部14Aがたわみ易く、高い比剛性が求められる冠型保持器であるが、上記の射出成形で形成されたマグネシウム合金からなっていることにより十分な比剛性が確保されている。
さらに、深溝玉軸受1は、上記の保持器14を備えていることにより、工作機械用の転がり軸受に必要な高速回転に適し、かつ信頼性の高い転がり軸受となっている。
次に、上記アンギュラ玉軸受2について説明する。図1および図9を参照して、アンギュラ玉軸受2と深溝玉軸受1とは基本的には同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、アンギュラ玉軸受2は、軌道輪および転動体の形状等において、深溝玉軸受1とは異なっている。
すなわち、アンギュラ玉軸受2は、第1軌道部材としての外輪21と、第2軌道部材としての内輪22と、複数の転動体としての玉23と、保持器24とを備えている。外輪21の内周面には、円環状の第1転走面としての外輪転走面21Aが形成されている。内輪22の外周面には、外輪転走面21Aに対向する円環状の第2転走面としての内輪転走面22Aが形成されている。また、複数の玉23には、転動体接触面としての玉転走面23A(玉23の表面)が形成されている。そして、当該玉23は、外輪転走面21Aおよび内輪転走面22Aの各々に玉転走面23Aにおいて接触し、円環状の保持器24により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。これにより、外輪21と内輪22とは互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、アンギュラ玉軸受2においては、玉23と外輪21との接触点と、玉23と内輪22との接触点とを結ぶ直線は、ラジアル方向(アンギュラ玉軸受2の回転軸に垂直な方向)に対して角度をなしている。そのため、ラジアル方向の荷重だけでなく、アキシャル方向の荷重をも受けることが可能であるとともに、ラジアル方向の荷重が負荷されると、アキシャル方向(アンギュラ玉軸受2の回転軸の方向)への分力が生じる。図1を参照して、本実施の形態の工作機械90では、前方側(主軸91の先端91B側)に同じ向きのアンギュラ玉軸受2を2つ配置するとともに、後方側(モータロータ93B側)には、前方側とは逆向きのアンギュラ玉軸受2を2つ配置することにより、当該分力を相殺している。
保持器24は、円環状に形成されている。なお、保持器24は、上記の冠型保持器14と同様に形成されていてもよい。
次に、本実施の形態における保持器の製造方法について説明する。まず、本実施の形態において用いられる射出成形装置の一例について説明する。図10を参照して、本実施の形態における射出成形装置70は、射出部50と金型60とを備えている。射出部50は、円筒状の中空部を有するシリンダ51と、シリンダ51の中空部に接続され、当該中空部にマグネシウム合金チップ41を供給する供給部52と、シリンダ51の中空部に嵌め込まれ、外周面に螺旋状の溝が形成されたスクリュ53と、シリンダ51を取り囲むように配置されたヒータ56とを備えている。シリンダ51は、その一方の端部に形成され、金型60に接続されるノズル55を有している。また、スクリュ53の先端側(金型60に近い側の端部)とシリンダ51とによって取り囲まれた領域である貯留部54がスクリュ53の一方の端部側に形成されている。そして、当該貯留部54は、ノズル55を介して金型60に接続されている。本例では、マグネシウム合金のチップを用いた射出成形機を例示したが、たとえば丸棒等のバルク材を用いた射出成形機等も好適に利用できる。
図10および図11を参照して、金型60は、シリンダ51のノズル55に接続された中空領域であるスプルー部63と、冠型形状の保持器の形状に対応した中空領域であるキャビティ部61と、スプルー部63から放射状に延在し、キャビティ部61に接続されるランナー部62とを備えている。ランナー部62は、ゲート部62Aを含んでおり、当該ゲート部62Aにおいて、ランナー部62はキャビティ部61に接続されている。キャビティ部61は、ランナー部62からキャビティ部61に供給されたマグネシウム合金が合流する領域であるウエルド領域65を含んでいる。そして、金型60は、ウエルド領域65に接続され、ウエルド領域65に到達してキャビティ部61から溢れたマグネシウム合金を貯留するオーバーフロー部66をさらに備えている。このオーバーフロー部66は、ウエルド領域65に接続された排出部66Aと、排出部66Aに接続された保持部66Bとを有している。
次に、図10〜図12を参照して上記射出成形装置70を用いた保持器の製造方法について説明する。図12を参照して、本実施の形態における保持器の製造方法においては、まず工程(S10)として原料チップ供給工程が実施される。この工程(S10)では、図10を参照して、マグネシウム合金チップ41が射出部50の供給部52からシリンダ51内に供給される。なお、環境負荷の観点から用いるマグネシウム合金はリサイクル材から再生・製造された材料を用いることが好ましい。
次に、工程(S20)として加熱工程が実施される。この工程(S20)では、スクリュ53が軸回りに回転することにより、工程(S10)においてシリンダ51内に供給されたマグネシウム合金チップ41がスクリュ53の外周面に形成された螺旋状の溝に沿って移動しつつ、ヒータ56によって融点以上にまで加熱される。そして、溶融状態となった溶融マグネシウム合金42が貯留部54に貯留される。このとき、溶融マグネシウム合金42は、固相が存在しない液相のみの完全溶融状態であってもよいし、液相中に固相であるマグネシウム(α相)が分散した半溶融状態であってもよい。ただし、半溶融状態である場合、固相の割合は小さいことが好ましく、具体的には凝固後のマグネシウム合金の断面を観察した場合、α相の割合は面積率で5%未満であることが好ましく、2%未満であることが更に好ましい。これにより、完成後の保持器においてα相界面が応力集中源となり、保持器の疲労強度等が低下することを抑制することができる。
次に、工程(S30)として射出工程が実施される。この工程(S30)では、スクリュ53を金型60に近づく向きに前進させることにより、工程(S20)において貯留部54に貯留された溶融マグネシウム合金42が金型60の内部に射出される。図11を参照して、金型60に射出された溶融マグネシウム合金42は、まずスプルー部63に供給された後、複数のランナー部62に分岐してキャビティ部61に注入される。このとき、転動体を保持するポケット部が偶数個形成された図11の保持器形状では、たとえば隣り合うランナー部62からポケット部を2つ挟むように、すなわちキャビティ部61のうち1つおきに配置されたキャビティ部61Aに溶融マグネシウム合金42が注入される。ここで、図11の互いに隣り合うキャビティ部61(キャビティ部61Aとキャビティ部61B)は、軸方向の前後(紙面の手前側および奥側)において互いに連結されている。そのため、ランナー部62から2つのキャビティ部61Aに注入された溶融マグネシウム合金42は、破線矢印αに示すように、2つのキャビティ部61Aに挟まれたキャビティ部61Bに形成されるウエルド領域65において合流する。ウエルド領域65では、溶融マグネシウム合金42同士が合流することから、乱流となって気体を巻き込むことで、ボイドを含むボイド含有部分100が溶融マグネシウム合金42内に形成される。そして、溶融マグネシウム合金42が2つのキャビティ部61Aにさらに注入されると、キャビティ部61から溶融マグネシウム合金42が溢れ、オーバーフロー部66に流入して貯留される。このオーバーフロー部66は、ウエルド領域65付近においてキャビティ部61と接続されている。このため、ウエルド領域65で生じたボイド含有部分100はキャビティ部61の外部であるオーバーフロー部66へ図中の破線矢印に沿って押し出される。
次に、工程(S40)として取り出し工程が実施される。この工程(S40)では、工程(S30)において金型60に射出されて凝固することにより作製された保持器が、金型60から取り出される。保持器が金型60から離型される際、金型60の温度は、マグネシウム合金が塑性変形性を示す温度である300℃の近傍以上に保たれる。たとえば、金型60の温度は、250℃以上に保たれる。金型60の温度は、280℃以上に保たれるのが好ましい。さらに、金型60の温度は、300℃以上に保たれることがより好ましい。金型60の温度は、マグネシウム合金の融点より低ければ、射出成形上問題ないが、高温になるほど冷却時間を長くとる必要があるため、350℃以下に保たれることが好ましい。
さらに、工程(S50)として分離工程が実施される。工程(S40)において取り出された保持器には、ランナー部62やオーバーフロー部66において凝固したマグネシウム合金が接続されている。この工程(S50)では、この保持器以外の領域のマグネシウム合金が保持器から分離される。
ここで、本実施の形態においては、図11を参照して、ランナー部62において、キャビティ部61との境界面であるゲート部境界面の断面積は、ゲート部境界面に隣接する領域におけるゲート部境界面に平行な断面積に比べて小さくなっている。より具体的には、ランナー部62はキャビティ部61に近づくにつれて長手方向に垂直な断面における断面積が小さくなり、ゲート部境界面においてその断面積が最も小さくなっている。さらに、オーバーフロー部66において、キャビティ部61との境界面である排出部境界面の断面積は、排出部境界面に隣接する領域における排出部境界面に平行な断面積に比べて小さくなっている。つまり、ランナー部62と同様に、オーバーフロー部66はキャビティ部61に近づくにつれて長手方向に垂直な断面における断面積が小さくなり、排出部境界面においてその断面積が最も小さくなっている。そのため、キャビティ部61内で凝固したマグネシウム合金(保持器)とランナー部62内で凝固したマグネシウム合金とをゲート部境界面において容易に分離するとともに、キャビティ部61内で凝固したマグネシウム合金(保持器)とオーバーフロー部66内で凝固したマグネシウム合金とを排出部境界面において容易に分離することができる。その結果、本実施の形態においては、工程(S40)と工程(S50)とを同時に実施する、すなわち金型60から保持器を取り出す際に、保持器以外の領域のマグネシウム合金を保持器から分離することが可能となっている。なお、本例は一例として示したものであり、上述の断面積の縮小は、連続的でも断続的でも良く、また断面形状も円形でも角形でも、上記機能上問題が生じなければ、特に制限されない。
次に、工程(S60)として研磨工程を必要に応じて実施してもよい。この工程(S60)では、工程(S50)において分離された保持器に対して、たとえばバレル研磨や真鍮製などの金属製ブラシなどによる研磨や薬品によるエッチング処理が実施される。これにより、保持器の表面が洗浄され、平滑化される。
次に、工程(S70)として必要に応じて表面処理工程が実施される。この工程(S70)では、たとえば保持器に対して陽極酸化処理やめっき処理などの表面処理が実施される。この工程(S70)は、本発明の保持器の製造方法において必須の工程ではないが、これを実施することにより、保持器の耐食性、耐グリース性および耐摩耗性が向上する。
さらに、工程(S80)として仕上げ工程が実施される。この工程(S80)では、工程(S70)における表面処理によって表面の凹凸が大きくなった場合に実施されるバレル研磨などの研磨処理や、封止(封孔)処理、オーバーコート処理などが必要に応じて実施される。以上の工程により、本実施の形態における保持器14が完成する。
本実施の形態における保持器の製造方法においては、上述のように工程(S30)において溶融マグネシウム合金42が合流することにより、キャビティ部61Bのウエルド領域65において、ボイドを含むボイド含有部分100が形成される。しかし、このボイド含有部分100は、キャビティ部61Bから溶融マグネシウム合金42が溢れてオーバーフロー部66に流入することにより、保持器(キャビティ部61)の外部に押し出される。その結果、当該ボイド含有部分100が保持器から排除され、保持器内にボイドを含むボイド含有部分100が残存して強度が低下することが抑制される。したがって、本実施の形態における射出成形装置70を用いた保持器の製造方法によれば、軽量で、かつ高い強度を有するマグネシウム合金製の保持器を製造することができる。
なお、上記ボイド含有部分100がキャビティ部61の外部に流出したことは、完成品の保持器のウエルド部の表面および断面を調査することにより確認することができる。具体的には、隣接するゲート間、もしくは保持器の転動体保持部付近に生ずるウエルド部は、通常ウエルドラインと呼ばれる特徴のある外観を有する。本発明による製造法により製造された保持器では、ウエルドラインが存在しない、もしくは保持器内部から外部に向かう湯流れ跡やオーバーフロー部の除去跡が観察される。また成形条件にも拠るが、金型内での冷却速度の違いに起因して、排出部近傍のα相の存在率はゲート部近傍に比べて少なくなりやすいことから、組織観察によっても確認できる場合がある。
上記の保持器を軌道部材と転動体と組み合わせることにより、転がり軸受が製造される。また、この転がり軸受が工作機械の主軸をハウジングに対して回転可能に支持されることにより、工作機械が製造される。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態の保持器によれば、射出成形において、液相を含むマグネシウム合金が合流することにより形成されたボイドを含むボイド含有部分100がマグネシウム合金内に形成され、ボイド含有部分100がキャビティ部61の外部に押し出されることにより形成される。そのため、保持器14内にボイドを含むボイド含有部分100が残存して強度が低下することが抑制されるので、軽量で、かつ高い強度を有するマグネシウム合金製の保持器14を提供することができる。また、上記保持器14においては、融点以上の温度域に加熱されることにより液相のみの状態(固相を含まない状態)に制御されたマグネシウム合金が、金型60に対して射出されることにより製造されていることが好ましい。これにより、偏析相である純マグネシウム相の析出を抑えたより疲労強度に優れるマグネシウム合金製の保持器14を提供することができる。
本実施の形態の保持器は、型から無理抜きされる形状に成形されている。型から無理抜きとなる形状では高い強度が求められる。従来の射出成形により形成されたマグネシウム合金からなる保持器では、高い強度が十分に得られないが、上記の本発明の射出成形により高い強度を得ることができる。よって、本実施の形態の保持器は、型から無理抜きとなる形状に成形され得る。型から無理抜きされる形状を有する保持器の一例である冠型形状の保持器14では、つめ部14Aがたわみ易いため高い比剛性が求められる。そのため、マグネシウム合金からなることにより高い比剛性を有する本実施の形態の保持器14は、冠型保持器14への採用に適している。
本実施の形態の保持器によれば、本実施の形態の射出成形によるマグネシウム合金で形成されているため、従来の樹脂製保持器に比べて肉薄でも同等の剛性を得ることができる。また、使用時の遠心力による変形を低減することができるので、従来樹脂製の保持器に比べて高回転で使用できる。
また、本実施の形態の保持器によれば、保持器のポケット部14Bを肉薄にできるため、玉13とポケット部14Bとの接触面積を減少できる。そのため、玉13とポケット部14Bとの間における潤滑油の油膜のせん断によって発生する摩擦トルクを減少できる。
また、本実施の形態の保持器によれば、従来の樹脂製保持器の材料の一例であるガラス繊維を25質量%配合した繊維強化66ナイロン樹脂の連続使用可能温度(UL長期耐熱温度(衝撃なし))は約120℃であるのに比べて、マグネシウム合金は軸受鋼の使用限界温度に十分耐えられるため、保持器材質が軸受の使用温度の制限とならない。
また、本実施の形態の保持器によれば、マグネシウム合金を射出成形することにより形成されているため、複雑な形状である型から無理抜きとなる形状を有する保持器を容易に成形できる。また、本実施の形態の保持器によれば、射出成形により成形されているため、切削加工等の機械加工により製造される一般的な金属製保持器と比べると量産性に優れている。
本実施の形態の保持器によれば、射出成形後、金型60の温度が250℃以上350℃以下で金型60から取り出される。
冠型保持器14を射出成形する場合、つめ部14Aは金型60から無理抜きされる。従来、マグネシウム合金では、マグネシウム合金自体が延性に劣る材料であること、およびつめ部14Aの剛性が高いことから、無理抜きが困難であった。マグネシウム合金は低温ではきわめて剛性の高い脆性材料であるが、一方で300℃以上の高温で塑性変形性を示す特性がある。そこで、金型60から保持器14を離型する際に金型温度を、塑性変形性を示す温度近傍以上、たとえば250℃以上に保つことによって、マグネシウム合金の有する脆性を緩和することができる。これにより容易に離型することができるので加工精度を向上できる。また、変形例のポケット部14Bの形状であれば、従来の形状より小さな力で離型することができる。金型60の温度は、280℃以上に保たれるのが好ましい。さらに、金型60の温度は、300℃以上に保たれることがより好ましい。金型60の温度は、マグネシウム合金の融点より低ければ、射出成形上問題ないが、高温になるほど冷却時間を長くとる必要があるため、350℃以下に保たれることが好ましい。
本実施の形態の保持器よれば、マグネシウム合金は、Mg−Al−Zn−Mn系、Mg−Al−Mn系およびMg−Al−Si−Mn系のいずれかであるため、射出成形に適しており、このようなマグネシウム合金を採用することにより、本実施の形態の保持器を容易に製造することができる。ここで、Mg−Al−Zn−Mn系のマグネシウム合金としては、たとえばASTM規格AZ91Dを挙げることができる。Mg−Al−Mn系のマグネシウム合金としては、たとえばASTM規格AM60Bを挙げることができる。Mg−Al−Si−Mn系のマグネシウム合金としては、たとえばASTM規格AS41Aを挙げることができる。
本実施の形態の転がり軸受によれば、軌道部材である外輪11および内輪12と、外輪11および内輪12に接触して配置される複数の転動体である玉13と、玉13を転動自在に保持する、本実施の形態の保持器14とを備えている。
そのため、軽量で、かつ高い強度を有するマグネシウム合金製の本実施の形態の保持器14が採用されているので、高速回転に適し、かつ信頼性の高い深溝玉軸受1を提供することができる。
本実施の形態の工作機械によれば、工作機械90の主軸91と、主軸91の外周面91Aに対向するように配置されるハウジング92と、主軸91をハウジング92に対して回転可能に支持するための、本実施の形態の転がり軸受とを備えている。
工作機械の主軸は極めて高い回転速度で回転するため、これを支持する転がり軸受(工作機械用転がり軸受)の保持器においては、高強度であるとともに軽量であることが求められる。また、工作機械用転がり軸受の高い回転速度に起因する遠心力に対して剛性が不足すると、保持器が変形し、軸受の回転精度の低下(NRRO(Non−Repeatable Run−Out);非同期振れが上昇)や、軸受での発熱が大きくなるという問題が発生する。
本実施の形態の工作機械によれば、高強度かつ軽量であるだけでなく、比剛性の大きいマグネシウム合金製の保持器14を有する本実施の形態の深溝玉軸受1を備えており、高速回転に適し、かつ信頼性の高い工作機械90を提供することができる。
本実施の形態の保持器の製造方法によれば、液相を含むマグネシウム合金が合流することによりボイドを含むボイド含有部分100がマグネシウム合金内に形成され、ボイド含有部分100はキャビティ部の外部に押し出される。そのため、保持器14内にボイドを含むボイド含有部分100が残存して強度が低下することが抑制される。そのため、軽量で、かつ高い強度を有するマグネシウム合金製の保持器14を製造することができる。
また、本実施の形態の保持器の製造方法によれば、保持器が型から無理抜きとなる形状に形成されている。型から無理抜きとなる形状の一例である冠型形状の保持器14では、つめ部14Aがたわみ易いため高い比剛性が求められる。そのため、マグネシウム合金からなることにより高い比剛性を有する保持器14を製造可能な本実施の形態の保持器の製造方法は、冠型保持器の製造に適している。
本実施の保持器の製造方法によれば、保持器14を金型60から取り出す工程では、金型60の温度が250℃以上350℃以下である。金型60から保持器を離型する際に金型温度を、塑性変形性を示す温度近傍以上、たとえば250℃以上に保つことによって、マグネシウム合金の有する脆性を緩和することができる。これにより容易に離型することができるので生産効率を向上できる。また、上記各変形例のポケット部14Bの形状は、従来の形状より小さな力で離型することができる。金型60の温度は、280℃以上に保たれるのが好ましい。さらに、金型60の温度は、300℃以上に保たれることがより好ましい。金型60の温度は、マグネシウム合金の融点より低ければ、射出成形上問題ないが、高温になるほど冷却時間を長くとる必要があるため、350℃以下に保たれることが好ましい。
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。実施の形態2における保持器および転がり軸受は、実施の形態1の場合と同様の構成を有し、同様の効果を奏するとともに同様に製造することができる。しかし、実施の形態1における保持器は転動体を保持するポケット部を偶数個有していたのに対し、実施の形態2における保持器はポケット部を奇数個有している。その結果、射出成形において使用される金型の構成において、実施の形態1と実施の形態2とは異なっている。これ以外については、実施の形態1と同様であり、同一の部分または相当する部分には、同一の番号を付し、その説明を繰り返さない。
図13を参照して、転動体を保持するポケットが奇数個形成された実施の形態2における保持器形状では、たとえば隣り合うランナー部62からポケットを3つ挟むように、すなわちキャビティ部61のうち2つおきに配置されたキャビティ部61Aに溶融マグネシウム合金42が注入される。ここで、図13の互いに隣り合うキャビティ部61は、軸方向の前後(紙面の手前側および奥側)において互いに連結されている。そのため、ランナー部62から2つのキャビティ部61Aに注入された溶融マグネシウム合金42は、破線矢印αに示すように、2つのキャビティ部61Aに挟まれた2つのキャビティ部61Bに流入し、さらに当該2つのキャビティ部61Bの中央(紙面手前または奥側)に形成されるウエルド領域65において合流する。そして、溶融マグネシウム合金42が2つのキャビティ部61Aにさらに注入されると、キャビティ部から溶融マグネシウム合金42が溢れ、オーバーフロー部66に流入して貯留される。
本実施の形態においても、上記実施の形態1の場合と同様に、工程(S30)において溶融マグネシウム合金42が合流することにより、ウエルド領域65においてボイドを含むボイド含有部分100が形成される。そして、実施の形態2においては、このウエルド領域65が、保持器において厚みの薄い領域であるポケットの中央部(保持器の周方向における中央部)に位置することとなる。そのため、当該領域にボイドを含むボイド含有部分100が残存すると、実施の形態1の場合以上に保持器の強度が不十分となりやすい。しかし、このボイド含有部分100は、キャビティ部61から溶融マグネシウム合金42が溢れてオーバーフロー部66に流入することにより、キャビティ部61の外部に押し出される。その結果、当該ボイド含有部分100が保持器から排除され、保持器内にボイドを含むボイド含有部分100が残存して強度が低下することが抑制される。このように、保持器の厚みの薄い領域にボイド含有部分100が形成される場合、本発明の適用が特に有効である。
なお、上記実施の形態においては、本発明に適用可能なマグネシウム合金としてASTM規格AZ91Dを例示したが、本発明に適用可能なマグネシウム合金はこれに限られず、種々のダイカスト用のマグネシウム合金を適用することができる。本発明において採用可能なマグネシウム合金としては、主成分であるマグネシウム(Mg)に、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、珪素(Si)などを添加した合金類を例示することができる。また難燃性の向上や、耐熱性、靭性向上などを目的に必要に応じて、カルシウム(Ca)やガドリニウム(Gd)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、希土類元素などを添加してもよい。具体的には、ASTM規格のAZ91DなどのMg−Al−Zn−Mn系合金や、AM60BなどのMg−Al−Mn系合金、AS41AなどのMg−Al−Si−Mn系合金などを挙げることができる。
また、オーバーフロー部66の体積(容積)は、特に限定されるものではないが、合流部を保持器(製品)から確実に排除する観点からキャビティ部61体積の5%以上であることが好ましく、より確実に合流部を排除するためには10%以上とすることが好ましい。一方、材料歩留まりの観点から除去される廃材部は少ない方が好ましく、オーバーフロー部66の体積(容積)はキャビティ部61体積の30%以下とすることが好ましい。
さらに、上記工程(S50)で実施されるランナー部62やオーバーフロー部66において凝固したマグネシウム合金の保持器からの分離(除去)は、種々の方法で実施することができる。具体的な方法としては、たとえばプレス機によるトリミング加工、バレル加工、切削加工などの機械加工を例示することができる。
また、スプルー部63やランナー部62において凝固するマグネシウム合金の量を減らすことが可能な所謂ホットノズルやホットランナー方式、また金型内でゲートカットを行なう型内ゲートカット方式での成形法も好適に使用できる。なお、スプルー部63やランナー部62において凝固したマグネシウム合金と共に、型内加工にてオーバーフロー部66において凝固したマグネシウム合金を除去することもできる。
さらに、表面処理は、スプルー部63、ランナー部62およびオーバーフロー部66において凝固したマグネシウム合金の除去の前後を問わず実施することができるが、除去後に実施することが好ましい。具体的な表面処理としては、耐食性に優れる金属を用いためっき処理や、樹脂コーティング、表面を水酸化マグネシウムや酸化マグネシウムに変性する化成処理や陽極酸化処理を挙げることができる。これらの中でも、界面の密着性不足のおそれが小さく、耐食性、耐摩耗性共に優れる陽極酸化処理を採用することが特に好ましい。なお、陽極酸化処理を行なうと表面粗さが大きくなる場合が多いので、必要に応じて表面処理後にバレル研磨などの研磨処理や、樹脂材料による封止(封孔)、あるいは水蒸気処理、沸騰水処理、加熱酢酸ニッケル溶液などの薬液処理などでの封止(封孔)、またはオーバーコート処理を施してもよい。研磨処理をする場合の研磨量は、表面処理により形成した変成層を残存させるため、変性層の厚み以下とすることができる。変性層の厚みは3μm程度以上あれば、機能上大きな問題はないが、保持器には転動体や軌道輪と接触する摺動部が存在することから、5μm以上とすることが耐久性の面で好ましい。なお、変性層の厚みが厚くなればなるほど、耐摩耗性や耐食性には優れるが、変性に伴う凹部の成長(表面粗さの増大)や体積膨張などの形状変化も大きくなることから、20μm以下とすることが好ましく、10μm以下とすることが特に好ましい。
なお、本発明の保持器は、型から無理抜きとなる保持器を備えた転がり軸受に適用可能であり、転がり軸受の形式に特に制限なく好適に採用することができる。また、保持器の案内形式も特に限定されるものではなく、転動体案内、外輪案内、内輪案内など、いずれの案内形式にも適用することができる。
以下、実施例について説明する。
まず、本実施例のマグネシウム合金製冠型保持器のつめ部の厚さについて、従来の樹脂製冠型保持器と比較して検討した。冠型保持器のつめ部は遠心力によって変形するため、冠型保持器は、運転中につめ部の先端が外輪に接触しないように設計されている。つめ部の変形を矩形の片持ち梁の曲げ問題として、材料力学的に解析した。以下、解析の詳細について説明する。
つめ部(梁)には遠心力による等分布荷重が働くと仮定した。すなわち,単位長さあたりの荷重w0は、単位長さあたりの質量m、平均半径r、各回転速度ωを用いて、式(1)で示される。
Figure 2011074962
梁のたわみ曲線Y(x)は、ヤング率E、断面2次モーメントI、軸方向の座標x、梁の長さLを用いて、式(2)で示される。
Figure 2011074962
変位量が最大となる非拘束側の端部の変位量は、式(3)で示される。
Figure 2011074962
従来の樹脂製冠型保持器の材料であるナイロン(PA66、ガラス繊維25%配合)の場合に必要なつめ部の厚さをhとし、本実施例の冠型保持器の材料であるマグネシウム合金(AZ91D)の場合に必要な厚さをah(0<a<)とした。
マグネシウム合金(AZ91D)のヤング率EMg(45GPa)の上記ナイロンのヤング率EPA(7.6GPa)に対する比は、式(4)で示される。
Figure 2011074962
マグネシウム合金の密度ρMg(1820kg/m3)のナイロンの密度ρPA(1310kg/m3)に対する比は、式(5)で示される。
Figure 2011074962
矩形梁の断面2次モーメントIは、梁の幅b、梁の厚さHを用いて、式(6)で示される。
Figure 2011074962
マグネシウム合金製のつめ部の最大変位量とナイロン製のつめ部最大変位量が同じになるように設計すると、式(7)で示されるように、aは0.48となった。
Figure 2011074962
つまり、冠型保持器の材質をナイロンからマグネシウム合金に変更することにより、つめ部の厚さを約1/2に低減できることがわかった
次に、本実施例のマグネシウム合金製冠型保持器の玉と保持器との間の潤滑油の油膜のせん断抵抗による摩擦トルクについて、従来の樹脂製冠型保持器と比較して検討した。
玉と保持器のポケット面との曲率半径の違いから接触面内の各点で油膜厚さhとせん断速度Vが異なるため、せん断抵抗も分布を有している。各点での単位面積当たりのせん断抵抗を求め、ポケット面全体で積分することにより、そのポケット面でのせん断抵抗を求めることができる。玉と保持器の接触点の接線方向であるx方向に相対運動する、せん断抵抗Fpは、式(8)で示される。なお、η0は、潤滑油粘度である。
Figure 2011074962
図14を参照して、せん断速度V(x、y)は、玉13の回転中心C回りの自転角速度ω、保持器14との油膜を介した接触点での玉の回転軸から玉13の表面までの距離r(x,y)を用いて、式(9)で示される。
Figure 2011074962
油膜厚さh(x,y)は、式(10)で示される。
Figure 2011074962
完全な球面である玉とポケット面とが接触していると考えたときの曲率差から与えられる、玉の自転軸に垂直な方向のすきまである油膜厚さh’(x,y)を数値的に求めた。また、玉とポケット面とは最も接近している部分では最大粗さの突起同士が接触していると考え、この部分での油膜厚さhminは玉と保持器との最大粗さの和の1/2とした。せん断抵抗Fpは油膜厚さhに逆比例するため非負荷域の玉がポケット部の中央に位置していると仮定すれば、油膜厚さhは0.1mm程度の極めて大きなオーダーとなるので、通常の軸受の設計では、非負荷領域のせん断抵抗Fpは無視し得る。
なお、この油膜のせん断抵抗による摩擦トルクは、非負荷域の玉はポケット部中央に位置し、負荷域の玉はポケット部の最大粗さの1/2の油膜を介してポケット部と接触していると考えると実測と一致することがわかっている(藤原、藤井、2001年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集、pp.562−563)。
図15および図16に示す従来の樹脂製冠型保持器であるナイロン製冠型保持器と、上記解析によってポケット部の肉厚を1/2としたマグネシウム合金製冠型保持器との油膜のせん断抵抗による摩擦トルクを表1に示す条件で比較した。
Figure 2011074962
つまり、軸受型番6206(JIS規格)、内輪回転速度3000min-1、ラジアル荷重1500N、ラジアルすきま0.01mm、潤滑油動粘度32mm2/sで比較した。この摩擦トルクは、ナイロン製冠型保持器の場合を1とすると、マグネシウム合金製冠型保持器の場合は0.7となった。図14および図16に示すように、ポケット部の面積は半減しているが、比較的油膜厚さの薄い部分が残らざるを得ないため、摩擦トルクは半減にはいたらず、解析の結果0.7倍となった。
これより、冠型保持器をマグネシウム合金で製作しポケット部を肉薄とすることで低トルク化が図れることがわかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、マグネシウム合金からなる保持器、当該保持器を備えた転がり軸受、当該転がり軸受を備えた工作機械および当該保持器の製造方法に特に有利に適用され得る。
1 深溝玉軸受、2 アンギュラ玉軸受、11,21 外輪、11A,21A 外輪転走面、12,22 内輪、12A,22A 内輪転走面、13,23 玉、13A,23A 玉転走面、14,24 保持器、14A つめ部、14B ポケット部、14C 主部、41 マグネシウム合金チップ、42 溶融マグネシウム合金、50 射出部、51 シリンダ、52 供給部、53 スクリュ、54 貯留部、55 ノズル、56 ヒータ、60 金型、61,61A,61B キャビティ部、62 ランナー部、62A ゲート部、63 スプルー部、65 ウエルド領域、66 オーバーフロー部、66A 排出部、66B 保持部、70 射出成形装置、90 工作機械、91 主軸、91A 外周面、91B 先端、92 ハウジング、92A 内壁、93 モータ、93A モータステータ、93B モータロータ、100 ボイド含有部分。

Claims (7)

  1. 転がり軸受において転動体を保持する保持器であって、
    マグネシウム合金からなり、
    前記マグネシウム合金が前記保持器の形状に対応する形状を有するキャビティ部を備えた型を用いた射出成形で成形された前記型から無理抜きとなる形状を有する、保持器。
  2. 前記保持器は、前記射出成形後、前記型の温度が250℃以上350℃以下で前記型から取り出される、請求項1に記載の保持器。
  3. 前記マグネシウム合金は、Mg−Al−Zn−Mn系、Mg−Al−Mn系およびMg−Al−Si−Mn系のいずれかである、請求項1または2に記載の保持器。
  4. 軌道部材と、
    前記軌道部材に接触して配置される複数の転動体と、
    前記転動体を転動自在に保持する、請求項1〜3のいずれかに記載の保持器とを備えた、転がり軸受。
  5. 工作機械の主軸と、
    前記主軸の外周面に対向するように配置されるハウジングと、
    前記主軸を前記ハウジングに対して回転可能に支持するための、請求項4に記載の転がり軸受とを備えた、工作機械。
  6. 転がり軸受において転動体を保持する保持器の製造方法であって、
    マグネシウム合金を加熱することにより液相を生じさせる工程と、
    液相が生じた前記マグネシウム合金を、前記保持器の形状に対応する形状を有するキャビティ部を備えた型に射出して前記キャビティ部を前記マグネシウム合金で充填することにより、前記マグネシウム合金を前記保持器の前記型から無理抜きとなる形状に成形する工程と、
    前記保持器の前記型から無理抜きとなる形状に成形された前記マグネシウム合金からなる前記保持器を、前記型から取り出す工程とを備え、
    前記マグネシウム合金を前記保持器の前記型から無理抜きとなる形状に成形する工程では、液相を含む前記マグネシウム合金が合流することによりボイドを含むボイド含有部分が前記マグネシウム合金内に形成され、前記ボイド含有部分は前記キャビティ部の外部に押し出される、保持器の製造方法。
  7. 前記保持器を前記型から取り出す工程では、前記型の温度が250℃以上350℃以下である、請求項6に記載の保持器の製造方法。
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