JP5014757B2 - 軸受部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、軸を相対回転支持する軸受部材、特に電鋳部を有する軸受部材の製造方法に関する。
この種の軸受部材およびこの軸受部材を備えた軸受装置は、電鋳部の成形母体となるマスター表面に析出した面がマスター表面の面精度に倣って高精度に形成可能であることを利用して、種々の産業分野で好適に用いられている。
例えば、特開2003−56552号公報(特許文献1)には、電鋳部をインサート部
品として一体に型成形した軸受部材が提案されている。この軸受部材は、電鋳部の成形母
体となるマスター軸の非導電性マスキング部以外の領域に電鋳殻である電鋳部を析出形成し、この電鋳部をインサート部品として軸受部材を樹脂で型成形した後、軸受部材の電鋳部をマスター軸から分離することで、分離面となる電鋳部の内周面をそのまま軸受面として使用可能としたことを特徴とするものである。
特開2003−56552号公報
このように、マスター表面に高精度に転写形成される電鋳部(電鋳殻)をマスターから分離させる手段としては、例えば電鋳加工に伴い電鋳部内部に生じる残留応力を解放するためのきっかけ(加熱など)を電鋳部に与え、この残留応力を解放してマスターとの密着面を拡径させることで、マスターから分離する手段が考えられている。しかしながら実際には、残留応力の解放に伴う拡径量は微小であり、マスターの引き抜き(分離)を容易に行うには不十分である。
特に、形成すべき電鋳部を小径化あるいは薄肉化する場合、上述の拡径量はさらに微小となり、あるいは拡径現象自体が生じない可能性もある。これでは、マスターとの分離に多大な引き抜き力が必要となるため、電鋳部の不要な変形を引き起こす恐れがあり、場合によっては軸受面の損傷や変形も懸念される。
以上の事情に鑑み、本発明では、軸受面に不要な変形や損傷を与えることなく電鋳部をマスターから分離可能とする軸受部材の製造方法を提供することを技術的課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、マスター表面に析出形成され、内周に配設した軸を相対回転自在に支持する電鋳部と、電鋳部の外周に配設されて電鋳部を保持する保持部とを備え、電鋳部の内周面が軸受面となる軸受部材の製造方法であって、マスター表面に電鋳部を析出形成する工程と、マスターと一体の電鋳部をインサートした射出成形により保持部を成形する工程と、電鋳部と保持部との一体品からマスターを分離する工程を含むものにおいて、マスター表面に電鋳部を析出形成する工程の後、電鋳部に外力を付与して電鋳部を変形させることで、電鋳部とマスターとの密着状態を解消することなく緩和し、この状態で保持部をインサート成形する工程を行う軸受部材の製造方法を提供する。ここで、本発明における電鋳部は、電解めっき加工に準じる方法により形成されたものの他、無電解めっき加工に準じる方法で形成されたものも含む。
このように、本発明は、電鋳加工時に電鋳部の内部に生じる、いわゆる内力の解放に頼って電鋳部をマスターから分離するのではなく、外力を付与することで、電鋳部を保持部に固定する工程の後に行われる電鋳部とマスターとの分離を容易に行うことを狙ってなされたものである。そのため、保持部との固定前に、予め外力を付与して電鋳部とマスターとの密着状態を緩和しておくことで、マスターの引き抜き時(分離時)、僅かな力で容易にマスターを電鋳部から引き抜く(分離する)ことができる。従い、マスターとの分離面(析出開始面)を傷付けることなく、また不要に変形させることなく得ることができ、これを軸受面として好適に使用することができる。
外力を電鋳部に付与するに当り、電鋳部とマスターとの密着状態を緩和し得る限りにおいて、その負荷態様は特に問わないが、好ましい手段として、例えば外力を、電鋳部に対してランダムに作用させる手段や、外力の作用位置を円周方向に連続的に変化させて行う手段などが考えられる。この場合、外力を電鋳部に対してランダムに作用させる手段の具体例としては、ブラスト加工に代表される、粒子の衝突により外力を付与する手段を挙げることができる。また、外力の作用位置を円周方向に連続的に変化させる手段の具体例としては、いわゆる転造の如く、電鋳部を一対の型で挟持しながら回転させることで外力を付与する手段を挙げることができる。
通常、ショットブラスト等の加工手段は、砥粒(鋼球など)が直接衝突する面のバリ取りやスケールの除去、面粗さの調整などに用いるのが一般的であるが、本発明では、電鋳部が比較的薄肉に形成され、かつ軟質の金属で形成される点に鑑み、直接衝突する面ではなく、その内側の面(マスターとの密着面)に物理的作用を及ぼすことを狙ったものである。従い、上述のように、粒子の衝突でもって外力をランダムに付与するようにすれば、電鋳部に対して万遍なく外力を付与することができるので、電鋳部とマスターとの密着状態を偏りなく緩和することができる。また、例えば転造に準じた手段で、外力を、その作用位置を電鋳部の円周方向に連続的に変化させるよう付与することで、マスターとの密着面全面にわたって漏れなく物理的な作用を及ぼすことができるため、その後の工程でマスターを電鋳部から分離した際に電鋳部の内周に生じる分離面の精度も良好に保たれる。
このようにして密着状態を緩和しておけば、マスターとの分離を容易に行うことができるが、実際には、コストとの兼ね合いから、マスターの加工精度にも限界がある。そのため、必ずしも分離に適した形状(精度)にまで加工精度が高められていない場合(軸方向で径寸法が異なり、マスターの抜き方向によっては引っかかる場合など)もある。あるいは、軸受の用途によっては、動圧発生部を、電鋳部の内周に電鋳加工と同時に形成することも考えられる。そこで、本発明では、電鋳部をマスターに対して圧迫する向きに外力を付与して、マスターとの密着面を拡径させるようにした。また、この場合に得られる軸受部材は、外周からの外力の付与でもって内周面を塑性変形させたもので、これにより内周面が拡径していることを特徴とするものである。
このように、電鋳部のマスターとの密着面を拡径させることができれば、マスターの若干の精度の狂いも許容して分離を容易に行うことができる。また、軸受面となる電鋳部の内周面を傷付けることなくマスターを抜き取ることができる。また、動圧発生部を電鋳加工時に同時に成形した場合であっても、マスターに倣って高精度に形成した動圧発生部を傷付けることなく得ることができる。特に、電鋳部が円筒状に形成される場合には、その形状的な特徴から、全周にわたって圧迫力を付与することで比較的容易にマスターとの密着面を拡径させることが可能である。
また、上述のように密着面を拡径させる場合であれば、外力を電鋳部に対してランダムに作用させる手段、具体的にはショットブラスト等のブラスト加工(ショットブラスト、サンドブラスト、ショットピーニング等を含む)のように、粒子の衝突により外力を付与する手段が好適である。例えばブラスト加工であれば、そのショット径(粒径)やその形状、噴射速度等を調整することにより、任意材料、任意厚みの電鋳部に対しても容易に適正な外力(衝撃力)を付与することができる。
また、上述のようにしてマスターとの密着状態を緩和した電鋳部であれば、例えば更なる加工時間の短縮と材料コストの低減を狙って、密着状態を緩和した後、電鋳部を保持する保持部を、電鋳部をインサートした状態で成形することもできる。
以上の方法で製造された軸受部材は、例えばこの軸受部材と、軸受部材の内周に挿入した軸とを備えた軸受装置として提供することができる。特に、この軸受部材であれば、高精度に形成された電鋳部の内周面を軸受面として使用することができるので、軸の相対回転に伴い、電鋳部の内周面と、これに対向する軸の外周面との間に流体の膜を形成し、この膜で軸を回転自在に支持する流体軸受装置として好適に提供することもできる。
以上のように、本発明によれば、軸受面に不要な変形や損傷を与えることなく電鋳部をマスターから分離することができ、これにより高精度の軸受面を有する軸受部材を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図4に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る軸受装置1の断面図を示す。同図において、軸受装置1は、軸部材2と、軸部材2を内周に挿入可能な軸受部材3とを備える。このうち軸受部材3は、電鋳部4と、電鋳部4を内側に保持する保持部5とからなり、この実施形態では、電鋳部4をインサート部品として樹脂材料で一体に成形される。
軸受部材3の内周面は、この実施形態では電鋳部4の内周面4aで構成される。この内周面は、内周に挿入される軸部材2を回転支持するための軸受面として機能する。
以下、軸受部材3の製造工程の一例を説明する。
軸受部材3は、例えばマスター6の外表面に電鋳部4を析出形成する工程(A)、電鋳部4に外力を付与することで電鋳部4とマスター6との密着状態を緩和する工程(B)、電鋳部4を一体に有するマスター6をインサート部品として軸受部材3の型成形を行う工程(C)、電鋳部4とマスター6とを分離する工程(D)とを経て製造される。
(A)電鋳加工工程
電鋳部4の成形母体となるマスター6は、例えば焼入処理をしたステンレス鋼で形成される。この場合、特に電鋳加工面6aとなる非マスキング領域の加工性やその加工精度等を考慮して材料やその表面処理を定めるのがよい。例えばクロム系合金やニッケル系合金などは、マスキング性、導電性、耐薬品性を有するため使用可能である。
マスター6の外表面のうち、電鋳加工面6aを除く領域には予めマスキング加工が施される。この実施形態では、図2(a)に示すように、電鋳加工面6aの軸方向両側に非導電性のマスキング部7、7が形成される。なお、マスキング部7、7の形成材料には、非導電性をはじめ、電解質溶液に対する耐食性を有する材料が選択使用される。
電鋳加工は、NiやCu等の金属イオンを含んだ電解質溶液(電鋳浴)にマスター6を浸漬し、電解質溶液に通電して目的の金属をマスター6の表面のうち、マスキング部7、7を除く領域(電鋳加工面6a)に電解析出させることにより行われる。電解質溶液には、カーボンなどの摺動材、あるいはサッカリン等の応力緩和材を必要に応じて含有させることも可能である。析出金属の種類は、軸受の軸受面に求められる硬度、あるいは潤滑油に対する耐性(耐油性)など、必要とされる特性に応じて適宜選択される。
以上のようにしてマスター6に電鋳加工を施すことで、図2(b)に示すように、マスター6表面の電鋳加工面6aに電鋳部4が析出形成される。この段階で、電鋳部4の内周面4aは、マスター6の電鋳加工面6aに倣った形状、ここでは断面真円形状に形成されており、マスター6の電鋳加工面6aに密着した状態にある。
(B)密着状態緩和工程
次に、マスター6表面に形成された電鋳部4に対して外力を付与することで、電鋳部4とマスター6との間の密着状態を一部あるいは全体にわたって緩和する。この実施形態では、ショットブラスト加工に準じた方法により電鋳部4に外力(衝撃力)を付与することで、電鋳部4とマスター6との密着状態を緩和する。
詳細には、図3に示すように、電鋳部4を形成したマスター6の周囲に配置したノズル8からショット9を電鋳部4に向けて、ここでは電鋳部4の半径方向内側に向けて吹き付ける。これにより、電鋳部4がその外周から吹き付けられた複数のショット9により内向きの外力(衝撃力)を受ける。
ここで、図4は、ショット9の衝突による電鋳部4の変形態様を描いたもので、図4(a)に示すように、電鋳部4のうちショット9が衝突した部分は当該衝撃力に応じて凹み、図4(a)中1点鎖線で示すように、その分の肉が周囲に逃げる。その後、ショット9の衝突により大きく凹んだ箇所は元に戻ろうとするが、塑性流れにより周囲に逃げた肉は戻ってこないため、結果的に、衝突箇所の肉厚が小さく(薄く)なる。これにより、衝突箇所における電鋳部4の内周面4aがマスター6から離れる向きに復元力を受け、内周面4aと電鋳加工面6aとの間の密着状態が緩和される。ここでは、図4(b)に示すように、ショット9との衝突箇所における電鋳部4の内周面4aが拡径する向きに変形し、電鋳加工面6aとの間に半径方向の隙間が生じる。
上述の現象を、ショット9のノズル8に対してマスター6(電鋳部4)を相対回転させることで、電鋳部の全周にわたって行い、また電鋳部4の軸方向全長にわたって行うことで、電鋳部4の内周面4a全体にわたってマスター6との密着状態がその密着状態を解消することなく和される。
なお、上記はあくまでも電鋳部4の一変形態様であり、電鋳部4の厚みによっては、ショット9の衝突に伴い衝突箇所がマスター6に押し付けられることで、内周面4a側での肉の周囲への逃げを伴う場合もあり得る。特に、この実施形態のように、内周面4aをある程度拡径させるのであれば、内周面4aの側を塑性変形させて圧し延ばす程度に外力(衝撃力)を与えることが肝要となる。このことは、後述する他の実施形態においても同様にいえる。
ここで、ショット9の材質や形状、大きさ等は、衝突させる電鋳部4の材質、厚み等に合わせて設定するのが望ましい。もちろん、電鋳部4に付与される外力(衝撃力)の大きさは、ノズル8からのショット9の投射速度にも左右されるので、この点を踏まえて適正な速度に調整することが望ましい。
(C)インサート成形工程
次に、電鋳部4をマスター6と共に、軸受部材3をインサート成形する成形型内に供給配置し、当該成形型内にて保持部5を電鋳部4と一体に樹脂で成形する。これにより、樹脂製の保持部5が電鋳部4と一体に形成される。この状態では、マスター6は、電鋳部4の内周に保持されている。
なお、樹脂材料としては、例えばLCP、PPS、PEEK、POM、PA等の結晶性樹脂、あるいは、PPSU、PES、PEI、PAI等の非晶性樹脂が好適に使用可能である。もちろんこれらは一例にすぎず、軸受の用途や使用環境に適合した樹脂材料が任意に選択可能である。必要に応じて、上記あるいは上記以外の樹脂を複数混合したものを使用することもできる。あるいは、強化材(繊維状、粉末状等の形態は問わない)や潤滑剤、導電化剤等の各種充填材を加えることで、特性の改善を図ることもできる。
型開き後、成形品を成形型から離型する。この成形品は、この後の分離工程で電鋳部4および保持部5との一体品と、マスター6とに分離される。
(D)分離工程
分離工程では、例えば電鋳部4と保持部5との一体品を保持した状態で、マスター6に引き抜き力を付与することで、電鋳部4の内周面4aをマスター6の外周面(電鋳加工面6a)から完全に分離させ、マスター6を軸受部材3(電鋳部4)から引き抜く。
この際、上述のように、電鋳部4はショット9の衝突により、マスター6との密着状態を緩和した状態にあるので、マスター6の引き抜き時、比較的小さい負荷でマスター6を電鋳部4から引き抜くことができる。また、多大な引き抜き力を要しないので、分離時(マスター6の引き抜き時)、電鋳部4の内周面4aを傷付けたり、不要な変形を生じることもない。そのため、分離により得られた高精度な分離面(内周面4a)を、軸部材2に対する軸受面として好適に使用することができる。
また、この実施形態では、ショットブラスト加工に準じた方法で、複数のショット9を電鋳部4の外周面4b全体にわたって極力万遍なく衝突させるようにしたので、ばらつきやムラを極力抑えて電鋳部4とマスター6との密着状態を緩和することができ、マスター6との分離(引き抜き)を容易かつ確実に行うことができる。
さらに、この実施形態のように、ショットブラスト加工に準じた方法により、複数のショット9を電鋳部4の外周面4bに衝突させることで、外周面4bに複数の凹凸が生じる場合がある。従い、この実施形態のように、密着状態を緩和した後、電鋳部4をインサート部品として保持部5を樹脂で成形する場合であれば、外周面4bに形成された凹凸が電鋳部4と保持部5との抜止めとして作用するため有効である。
また、この実施形態のように、密着状態を緩和した後、保持部5をインサート成形する場合、樹脂の成形収縮で電鋳部4がマスター6に食い付く向きに押し付けられるため、そのまま分離するには多大な力が必要となるが、今回のように、予め密着状態を緩和しておけば、インサート成形後のマスター6との分離を容易に行うことができる。そのため、本発明に係る密着状態の緩和手段は、保持部5のインサート成形を伴う場合に、特に有効である。
なお、電鋳部4とマスター6との分離手段としては、上記手段とは逆に、マスター6を軸方向に拘束した状態で、電鋳部4と保持部5との一体品に軸方向の負荷を与えることで、両者4、6を分離することも可能である。
上述の如く形成された軸受部材3の内周に、引抜いたマスター6とは別に作成した軸部材2を挿入することで、図1に示す軸受装置1が完成する。もちろん、十分な拡径量が確保できるのであれば、電鋳部4から分離した後、引き抜かずにマスター6をそのまま軸部材2として使用することも可能である
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られることなく、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。以下、その例を説明する。
例えば、上記実施形態では、ショット9の衝突により電鋳部4に外力を付与した場合を説明したが、電鋳部4とマスター6との間の密着状態を緩和可能である限り、上記以外の方法で外力を付与することも可能である。
例えば図5は電鋳部4に外力を付与する他の方法を概念的に示すもので、共に平坦な面を有する一対の型10、11で電鋳部4を挟持しながら、一方の型11を他方の型10に対して相対的にスライドさせることで、電鋳部4に対してその全周にわたって挟持力を付与するものである。この場合、図6(a)に示すように、電鋳部4の、最も半径方向に圧迫される箇所では、塑性流れによりその周囲に肉が逃げる(図6(a)中、1点鎖線で示す位置から実線で示す位置に向けて逃げが生じる)。そのため、図6(b)に示すように、双方の型10、11間のスライドに伴い、最も半径方向に圧迫力を受ける箇所が電鋳部4の回転方向後方に移動することで、電鋳部4のうち、直前に挟持力を受けていた箇所がマスター6から離れる向きに復元力を受け、当該箇所における内周面4aと電鋳加工面6aとの間の密着状態が緩和される。
従って、この手段によっても、電鋳部4とマスター6との密着状態を緩和することができ、マスター6との分離(引き抜き)を比較的小さい負荷で容易に行うことができる。また、この実施形態では、いわゆる転造に準じた方法で、電鋳部4の外周面4bに挟持力(外力)を、円周方向に連続的して付与するようにしたので、外周面4b全面にわたって挟持力を付与することができ、これによりマスター6との分離(引き抜き)を容易かつ確実に行うことができる。
この場合、電鋳部4を挟持する双方の型10、11間の対向間隔を適当に設定することで、電鋳部4に付与すべき挟持力(外力)を調整することができる。
なお、上記何れの実施形態においても、外力の付与により電鋳部4の内周面4aが拡径し、マスター6の外周面(電鋳加工面6a)との間に半径方向の隙間が生じた場合を例示しているが、隙間の発生は必須ではない。すなわち、外力の付与によって電鋳部4とマスター6との間の密着状態を解消することなく密着状態が緩和される限りにおいて、外力(衝撃力や挟持力)の大きさやその付与態様は任意である。
また、以上の実施形態では、マスター6の電鋳部4からの引き抜きを、保持部5のインサート成形後で、かつ成形金型から成形品を離型した後に行う場合を説明したが、インサート成形後で、成形金型からの離型と同時にマスター6の引き抜きを行うようにしても構わない。具体的には、成形後に型開きを行った際、成形品が残る側(通常、マスター6を保持する可動型の側)に設けたイジェクト用の押し出しピンを作動させることで、保持部5を型外へと押し出す。この際、マスター6の軸方向への移動を拘束した状態で電鋳部4と保持部5との一体品を金型から押し出すことで、保持部5のインサート成形工程とマスター6との分離工程とを一工程で行うことができ、非常に効率的かつ経済的である。
また、以上の実施形態では、保持部5を樹脂で形成した場合を説明したが、溶融金属等他の液状材料を型内で固化させることで、あるいは、別体としての保持部5を電鋳部4の外側に固定することで一体化しても構わない。
以上の説明に係る軸受装置1は、例えば軸受面となる電鋳部4の内周面4aとこの面に対向する軸部材2の外周面2aとの間に、後述する軸受隙間としての微小隙間を形成する構成を採ることもできる。すなわち、この微小隙間を含む軸受内部空間に潤滑油を満たすことで、軸受装置1を、軸部材2の相対回転時、軸受隙間に形成される潤滑油の油膜で軸部材2を相対回転自在に支持する流体軸受装置として使用することもできる。この場合、マスター6の電鋳加工面6aに倣って高精度に形成された内周面4aを軸受面として使用できることから、非常に回転精度に優れた軸受として使用することができ、好適である。
また、更なる回転精度の向上を図るのであれば、例えば電鋳部4の内周面4aと軸部材2の外周面2aの少なくとも何れか一方に、軸受隙間に潤滑油の動圧作用を発生させるための動圧発生部を設けることも可能である。例えば電鋳部4の内周面4aに設ける場合、マスター6の電鋳加工面6aを予め動圧発生部に対応する形状に加工したものを使用して電鋳部4を形成することで、電鋳部4と共に動圧発生部を形成することができる。この場合、例えばショット9を、電鋳部4に対して半径方向に圧迫する向きに衝突させ、電鋳部4の内周面4aを拡径させるようにすれば、軸受面や動圧発生部をあまり傷付けることなくマスター6を引き抜くことができる。
動圧発生部としては種々の形態が考えられる。例えば軸方向に延びる溝を円周方向まわりに複数配列してなるステップ状や、複数の円弧面を円周方向まわりに配列してなる多円弧状、あるいは互いに傾斜角の異なる傾斜溝を軸方向で対称的にかつ円周方向まわりに複数配列してなるへリングボーン状の動圧発生部が形成可能である。軸部材2の外周面2aに動圧発生部を設けるのであれば、電鋳部4の内周面4aに設ける場合と比べて、採り得る形態の自由度が高まるため好ましい。
また、以上の実施形態では、両端開口の形態をなす軸受部材1について説明したが、本発明は、一端を開口し他端を閉塞した形態の軸受部材に対しても適用可能である。その場合、電鋳部を有底筒状に形成し、その内底面で軸を支持することもできる。また、軸と軸受部材(あるいは電鋳部)とが軸方向に対向する面の少なくとも何れか一方に、既述の動圧発生部を設けることも可能である。また、この場合、他端閉塞側で対向する面の間に動圧軸受を構成することもでき、ラジアル軸受部より半径方向外側に位置し、かつ軸受部材の一端開口側で対向する面の間に動圧軸受を構成することもできる。
また、以上の実施形態では、軸受部材3の一端開口側に特段のシール手段を設けない場合を例示したが、これに限ることなく任意のシール手段が配設可能である。例えば、電鋳加工面6aの軸方向一端側にテーパ面を設けたマスター6を用いて電鋳部4を形成し、電鋳部4の内周面に形成されたテーパ面でもって軸部材2の外周面2aとの間にシール空間を形成することもできる。あるいは、成形金型(で形成されるキャビティ)の形状等を工夫して、保持部5の内周面と軸部材2の外周面2aとの間にシール空間を形成することもできる。
また、以上の実施形態では、軸受隙間を含む軸受装置1の内部を満たす流体として、潤滑油を例示したが、それ以外にも、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
本発明に係る軸受部材3は、駆動機構の回転軸支持用に広く適用可能である。また、その中でも、この軸受部材3を備えた軸受装置1は、上記のとおり、高精度の軸受面を有することから、例えば上記HDD等の磁気ディスク駆動用のスピンドルモータをはじめ、光ディスクの光磁気ディスク駆動用のスピンドルモータ等、高速回転下であっても高い回転精度が要求される情報機器用の小型モータとして、あるいはファンモータなど、高い静粛性が要求される用途に好適に使用することができる。
本発明の一実施形態に係る軸受部材を備えた軸受装置の断面図である。 (a)マスキングを施したマスターの斜視図、および(b)外周に電鋳部を形成したマスターの斜視図である。 ショットブラスト加工に準じる方法で、電鋳部に衝撃力を付与する工程を概念的に示す図である。 (a)は衝撃力を受けた際の電鋳部の変形挙動、(b)は衝撃力を受けた後の電鋳部の変形挙動をそれぞれ模式的に示す拡大断面図である。 転造加工に準じる方法で、電鋳部に外力を付与する工程を概念的に示す図である。 (a)は挟持力を受けた際の電鋳部の変形挙動、(b)は挟持力を受けた後の電鋳部の変形挙動をそれぞれ模式的に示す拡大断面図である。
符号の説明
1 軸受装置
2 軸部材
3 軸受部材
4 電鋳部
4a 内周面
4b 外周面
6 マスター
6a 電鋳加工面
7 マスキング部
9 ショット
10、11 (挟持用の)型

Claims (4)

  1. マスター表面に析出形成され、内周に配設した軸を相対回転自在に支持する電鋳部と、電鋳部の外周に配設されて電鋳部を保持する保持部とを備え、電鋳部の内周面が軸受面となる軸受部材の製造方法であって、
    マスター表面に電鋳部を析出形成する工程と、
    マスターと一体の電鋳部をインサートした射出成形により保持部を成形する工程と、
    電鋳部と保持部との一体品からマスターを分離する工程とを含むものにおいて
    前記マスター表面に電鋳部を析出形成する工程の後、電鋳部に外力を付与して電鋳部を変形させることで、電鋳部とマスターとの密着状態を解消することなく緩和し、この状態で前記保持部をインサート成形する工程を行う軸受部材の製造方法。
  2. 電鋳部をマスターに対して圧迫する向きに外力を付与して、マスターとの密着面の一部を拡径させることで、電鋳部とマスターとの密着状態を解消することなく緩和する請求項1記載の軸受部材の製造方法。
  3. 外力を、電鋳部に対してランダムに作用させた請求項1又は2記載の軸受部材の製造方法。
  4. 外力の作用位置を円周方向に連続的に変化させた請求項1又は2記載の軸受部材の製造方法。
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