JP2011068873A - 摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性、流動性、強度、靭性及び低吸水性に優れ、さらに摺動性(耐磨耗性、低摩擦係数)に優れた摺動部材を提供する。
【解決手段】(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンとを重合させたポリアミドを含有する、摺動部材。
【選択図】なし

Description

本発明は、摺動部材に関する。
ポリアミド6及びポリアミド66(以下、それぞれ、「PA6」及び「PA66」と略称する場合がある。)などに代表されるポリアミドは、成形加工性、機械物性又は耐薬品性に優れていることから、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用などの各種部品材料として広く用いられている。
自動車産業においては、環境に対する取り組みとして、排出ガス低減のために、金属代替による車体軽量化の要求がある。該要求に応えるために、外装材料や内装材料などにポリアミドが一段と用いられる様になり、ポリアミド材料に対する耐熱性、強度、及び外観などの要求特性のレベルは一層向上している。中でも、エンジンルーム内の温度も上昇傾向にあるため、ポリアミド材料に対する高耐熱化の要求が強まっている。
また、家電などの電気及び電子産業において、表面実装(SMT)ハンダの鉛フリー化に対応すべく、ハンダの融点上昇に耐えることができる、ポリアミド材料に対する高耐熱化が要求されている。
PA6及びPA66などのポリアミドでは、融点が低く、耐熱性の点でこれらの要求を満たすことができない。
PA6及びPA66などの従来のポリアミドの前記問題点を解決するために、高融点ポリアミドが提案されている。具体的には、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド(以下、「PA6T」と略称する場合がある。)などが提案されている。
しかしながら、PA6Tは、融点が370℃程度という高融点ポリアミドであるため、溶融成形により成形品を得ようとしても、ポリアミドの熱分解が激しく起こり、十分な特性を有する成形品を得ることが難しい。
PA6Tの前記問題点を解決するために、PA6TにPA6及びPA66などの脂肪族ポリアミドや、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンからなる非晶性芳香族ポリアミド(以下、「PA6I」と略称する場合がある。)などを共重合させ、融点を220〜340℃程度にまで低融点化したテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンを主成分とする高融点半芳香族ポリアミド(以下、「6T系共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)などが提案されている。
6T系共重合体ポリアミドとして、特許文献1には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなり、脂肪族ジアミンがヘキサメチレンジアミン及び2−メチルペンタメチレンジアミンの混合物である芳香族ポリアミド(以下、「PA6T/2MPDT」と略称する場合がある。)が開示されている。
また、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる芳香族ポリアミドに対して、アジピン酸とテトラメチレンジアミンからなる高融点脂肪族ポリアミド(以下、「PA46」と略称する場合がある。)や、脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる脂環族ポリアミドなどが提案されている。
特許文献2及び3には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなる脂環族ポリアミド(以下、「PA6C」と略称する場合がある。)と他のポリアミドとの半脂環族ポリアミド(以下、「PA6C共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)が開示されている。
特許文献2には、ジカルボン酸単位として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を1〜40%配合した半脂環族ポリアミドの電気及び電子部材はハンダ耐熱性が向上することが開示され、特許文献3には、自動車部品では、流動性及び靭性などに優れることが開示されている。
さらに、特許文献4には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含むジアミン単位からなるポリアミドが耐光性、靭性、成形性、軽量性、及び耐熱性などに優れることが開示されている。また、該ポリアミドの製造方法として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,9−ノナンジアミンを230℃以下で反応してプレポリマーを作り、そのプレポリマーを230℃で固相重合し融点311℃のポリアミドを製造することが開示されている。
また、特許文献5には、トランス/シス比が50/50から97/3である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を原料として用いたポリアミドが、耐熱性、低吸水性、及び耐光性などに優れることが開示されている。
特表平6−503590号公報 特表平11−512476号公報 特表2001−514695号公報 特開平9−12868号公報 国際公開第2002/048239号パンフレット
6T系共重合ポリアミドは、低吸水性、高耐熱性、及び高耐薬品性という特性を持ってはいるが、流動性が低く成形性や成形品表面外観が不十分であり、靭性及び耐光性に劣る。そのため、外装部品のような成形品の外観が要求されたり、日光などに曝されたりする用途においては特性の改善が望まれている。また比重も大きく、軽量性の面でも改善が望まれている。
特許文献1に開示されているPA6T/2MPDTは、従来のPA6T共重合ポリアミドの問題点を一部改善することができるが、流動性、成形性、靭性、成形品表面外観、及び耐光性の面でその改善水準は不十分である。
PA46は、良好な耐熱性及び成形性を有するものの、吸水率が高く、また、吸水による寸法変化や機械物性の低下が著しく大きいという問題点を持っており、自動車用途などで要求される寸法変化の面で要求を満たせない場合がある。
特許文献2及び3に開示されているPA6C共重合ポリアミドも、吸水率が高く、また、流動性が十分でないなどの問題がある。
特許文献4及び5に開示されているポリアミドも、靭性、強度、及び流動性の面で改善が不十分である。
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、流動性、強度、靭性、低吸水性及び耐熱エージング性に優れ、さらに摺動性(耐磨耗性、低摩擦係数)にも優れる、摺動部材を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、特定のジカルボン酸と特定のジアミンとを構成成分として重合させたポリアミドを含有する摺動部材とすることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンとを重合させたポリアミドを含有する、摺動部材。
〔2〕
前記主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、前記〔1〕に記載の摺動部材。
〔3〕
前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の摺動部材。
〔4〕
前記(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の摺動部材。
〔5〕
前記(A)ポリアミドが(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドである、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の摺動部材。
〔6〕
前記(A)ポリアミドの融点が270〜350℃である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の摺動部材。
〔7〕
前記(A)ポリアミド中、前記脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率が50〜85モル%である、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の摺動部材。
〔8〕
(B)充填材をさらに含有する、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の摺動部材。
〔9〕
前記(B)充填材が、フッ素樹脂、シリコーン、変性ポリオレフィン、二硫化モリブデン、グラファイト、鉱物油、アラミド繊維、LCP繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、及び脂肪酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記〔8〕に記載の摺動部材。
〔10〕
(C)熱安定剤をさらに含有する、前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載の摺動部材。
〔11〕
自動車用摺動部材である、前記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一に記載の摺動部材。
本発明によれば、耐熱性、流動性、強度、靭性、低吸水性に優れ、摺動性(耐磨耗性、低摩擦係数)にも優れ、かつ所定の熱安定剤を付加することにより耐熱エージング性にも優れた特性を発揮する摺動部材を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(摺動部材)
本実施形態の摺動部材は、(A)ポリアミドを含有するポリアミド組成物により構成されている。
[(A)ポリアミド]
本実施形態において用いられる(A)ポリアミドは、下記(a)及び(b)を重合させたポリアミドである。
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸。
(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミン。
本実施形態において、ポリアミドとは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。
〔(a)ジカルボン酸〕
本実施形態に用いられる(a)ジカルボン酸は、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含む。
(a)ジカルボン酸として、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むことにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
<(a−1)脂環族ジカルボン酸>
(a−1)脂環族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸とも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの、脂環構造の炭素数が3〜10である、好ましくは脂環構造の炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、耐熱性、低吸水性、及び強度などの観点で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であることが好ましい。
脂環族ジカルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸には、トランス異性体とシス異性体の幾何異性体が存在する。
原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス異性体とシス異性体のどちらか一方を用いてもよく、トランス異性体とシス異性体の種々の比率の混合物として用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることやシス異性体の方がトランス異性体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとして、トランス異性体/シス異性体の比がモル比にして、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
脂環族ジカルボン酸のトランス異性体/シス異性体の比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。ここで、本明細書におけるトランス異性体/シス異性体の比(モル比)は、1H−NMRにより求めることとする。
<(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸>
本実施形態に用いられる(a)ジカルボン酸の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸などの炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩などのその塩などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を共重合する場合としては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度などの観点で、好ましくは脂肪族ジカルボン酸であり、より好ましくは、炭素数が6以上である脂肪族ジカルボン酸である。
中でも、耐熱性及び低吸水性などの観点で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸などが挙げられる。
中でも、耐熱性などの観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸成分として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を含んでもよい。
多価カルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸中の(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。脂環族ジカルボン酸の割合は、50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましく、さらに好ましくは70〜100モル%であり、もっとも好ましくは、100モル%である。脂環族ジカルボン酸の割合が、少なくとも50モル%であることにより、耐熱性、低吸水性、及び強度などに優れるポリアミドとすることができる。
(a)ジカルボン酸中の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合(モル%)は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
(a)ジカルボン酸成分として、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を含む場合には、(a−1)脂環族ジカルボン酸が50〜99.9モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸0.1〜50モル%であることが好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が60〜95モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸5〜40モル%であることがより好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が80〜95モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸5〜20モル%であることがさらに好ましい。
本実施形態において、(a)ジカルボン酸としては、上記ジカルボン酸として記載の化合物に限定されるものではなく、上記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。
ジカルボン酸と等価な化合物としては、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物などが挙げられる。
〔(b)ジアミン〕
本実施形態に用いられる(b)ジアミンは、少なくとも50モル%の、(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含む。
<(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン>
(b)ジアミンとして、(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを少なくとも50モル%含むことにより、流動性、靭性、及び強度などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
主鎖から分岐した置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミンなどの炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、耐熱性及び強度などの観点で、2−メチルペンタメチレンジアミンであることが好ましい。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミン>
本実施形態に用いられる(b)ジアミンの(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、及び芳香族ジアミンなどが挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミンなどが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、芳香族を含有するジアミンであり、例えば、メタキシリレンジアミンなどが挙げられる。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度などの観点で、好ましくは脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンであり、より好ましくは、炭素数4〜13の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらに好ましくは、炭素数6〜10の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、よりさらに好ましくはヘキサメチレンジアミンである。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン成分として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミンなどの3価以上の多価脂肪族アミンを含んでもよい。
多価脂肪族アミンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン中の(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合(モル%)は、上述したとおり、少なくとも50モル%である。主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合は、50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましい。より好ましくは80〜100モル%であり、さらに好ましくは85〜100モル%であり、さらにより好ましくは90〜100モル%、もっとも好ましくは100モル%である。主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合が、少なくとも50モル%であることにより、流動性、靭性、及び強度に優れるポリアミドとすることができる。
(b)ジアミン中の(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンの割合(モル%)は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
(a)ジカルボン酸の添加量と(b)ジアミンの添加量は、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中の(b)ジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン全体のモル量は、0.90〜1.20であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.10であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
〔(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸〕
(A)ポリアミドは、靭性の観点で、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させることができる。
本実施形態に用いられる(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、重(縮)合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
(A)ポリアミドが、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を重合させたポリアミドである場合には、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、炭素数が4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸が好ましく、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いることがより好ましい。
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)などが挙げられる。
中でも、靭性の観点で、ε−カプロラクタム、ラウロラクタムなどが好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
アミノカルボン酸としては、例えば、前記ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸などが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸などが挙げられ、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸なども挙げられる。
ラクタム及び/又はアミノカルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の添加量(モル%)は、(a)、(b)及び(c)の各モノマー全体のモル量に対して、0〜20モル%であることが好ましい。
<末端封止剤>
上述した(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、さらに必要に応じて(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からポリアミドを重合する際には、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加することができる。
末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類などが挙げられ、熱安定性の観点で、モノカルボン酸、及びモノアミンが好ましい。
末端封止剤としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば、以下に制限されないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族モノカルボン酸;並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば、以下に制限されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなどの脂環族モノアミン;並びにアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミンなどの芳香族モノアミンが挙げられる。
モノアミンとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンの組み合わせは、以下に制限されないが、(a−1)少なくとも50モル%以上の脂環族ジカルボン酸を含有するジカルボン酸、及び(b−1)少なくとも50モル%以上の2−メチルペンタメチレンジアミンを含有するジアミンの組み合わせが好ましく、(a−1)少なくとも50モル%以上の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含有するジカルボン酸及び(b−1)少なくとも50モル%以上の2−メチルペンタメチレンジアミンを含有するジアミンの組み合わせがより好ましい。
これらの組み合わせをポリアミドの成分として重合させることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度に優れることを同時に満足するポリアミドとすることができる。
(A)ポリアミドにおいて、脂環族ジカルボン酸構造は、トランス異性体及びシス異性体の幾何異性体として存在する。
(A)ポリアミド中、(a−1)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率は、ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸全体中のトランス異性体である比率を表し、トランス異性体比率は、好ましくは50〜85モル%であり、より好ましくは50〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜80モル%である。
前述したように、重合前の(a−1)脂環族ジカルボン酸としては、トランス異性体/シス異性体の比(モル比)が50/50〜0/100である脂環族ジカルボン酸を用いることが好ましいが、その一方で、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミン、必要に応じてさらに(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いて、重合することにより得られる(A)ポリアミド中、(a−1)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率が50〜85モル%であることが好ましい。
トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、ポリアミドは、高融点、靭性及び強度に優れるという特徴に加えて、高いTgによる熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性を同時に満足するという性質を持つ。
ポリアミドのこれらの特徴は、(a)少なくとも50モル%以上の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含有するジカルボン酸、(b)少なくとも50モル%以上の2−メチルペンタメチレンジアミンを含有するジアミンの組み合わせからなり、かつポリアミド中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸構造のトランス異性体比率が50〜85モル%であるポリアミドで特に顕著である。
本実施形態において、トランス異性体比率は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
[(A)ポリアミドの製造方法]
(A)ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つ脂肪族ジアミンを含むジアミンと、を重合させる工程を含む、ポリアミドの製造方法により製造することができる。
(A)ポリアミドの製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。
ポリアミドの製造方法としては、例えば、以下に例示する種々の方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)。
3)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」と略称する場合がある。)。
4)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」と略称する場合がある。)。
5)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物を固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と略称する場合がある)。
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いたて重合させる方法(以下、「溶液法」と略称する場合がある)。
ポリアミドの製造方法において、ポリアミドの流動性の観点から、(A)ポリアミド中、(a−1)脂環族ジカルボン酸に由来する部分のトランス異性体比率を85モル%以下に維持して重合することが好ましく、80モル%以下に維持して重合することがより好ましい。これにより、さらに色調や引張伸度に優れ、高融点のポリアミドを得ることができる。
ポリアミドの製造方法において、重合度を上昇させてポリアミドの融点を上昇させるために、加熱の温度を上昇させたり、及び/又は加熱の時間を長くしたりする必要が生ずるが、その場合、加熱によるポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下が起こる場合がある。また、分子量の上昇する速度が著しく低下する場合がある。
ポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下を防止することができるため、(a−1)脂環族ジカルボン酸に由来する部分のトランス異性体比率を80モル%以下に維持して重合することが好適である。
ポリアミドを製造する方法としては、(a−1)脂環族ジカルボン酸に由来する部分のトランス異性体比率を85モル%以下に維持することが容易であるため、また、得られるポリアミドの色調に優れるため、1)熱溶融重合法、及び2)熱溶融重合・固相重合法によりポリアミドを製造することが好ましい。
ポリアミドの製造方法において、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。
重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置(例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及びニーダーなどの押出機型反応器など)が挙げられる。
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、以下に記載するバッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
バッチ式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒として、ポリアミド成分((a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び、必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
また、以下に記載する連続式の熱溶融重合法によってポリアミドを製造することもできる。
連続式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒としてポリアミド成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮槽/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、その後、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物は押し出されてストランドとなり、冷却、カッティングされペレットとなる。
〔(A)ポリアミドの物性〕
<分子量>
(A)ポリアミドの分子量としては、25℃での相対粘度ηrを指標とする。
(A)ポリアミドの分子量は、靭性及び強度などの機械的物性並びに成形性などの観点で、JIS−K6810に従って測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度ηrにおいて、好ましくは1.5〜7.0であり、より好ましくは1.7〜6.0であり、さらに好ましくは1.9〜5.5である。
25℃での相対粘度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6810に準じて行うことができる。
<融点>
後述する実施例により測定される(A)ポリアミドの融点(Tm2)は、耐熱性の観点から、270〜350℃であることが好ましい。前記融点(Tm2)は、好ましくは270℃以上であり、より好ましくは275℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上である。
また、前記融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。
(A)ポリアミドの融点Tm2を270℃以上とすることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。また、(A)ポリアミドの融点Tm2を350℃以下とすることにより、押出、成形などの溶融加工の際のポリアミドの熱分解などを抑制することができる。
<融解熱量>
(A)ポリアミドの融解熱量(ΔH)は、耐熱性の観点から、好ましくは10J/g以上であり、より好ましくは14J/g以上であり、さらに好ましくは18J/g以上であり、さらにより好ましくは20J/g以上である。
(A)ポリアミドの融点(Tm1又はTm2)及び融解熱量(ΔH)の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点及び融解熱量の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
<ガラス転移温度>
(A)ポリアミドのガラス転移温度(Tg)は、90〜170℃であることが好ましい。ガラス転移温度は、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上である。また、ガラス転移温度は、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは165℃以下であり、さらに好ましくは160℃以下である。
(A)ポリアミドのガラス転移温度を90℃以上とすることにより、耐熱性や耐薬品性に優れるポリアミドとすることができる。また、(A)ポリアミドのガラス転移温度を170℃以下とすることにより、外観のよい成形品を得ることができる。
ガラス転移温度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
ガラス転移温度の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
本実施形態の摺動部材は、上述した(A)ポリアミドを必須成分として含有するが、その他の成分として後述する(B)充填材、さらには(C)熱安定剤などを含有するポリアミド組成物によって形成することもできる。(A)ポリアミドに(B)充填材を含有することは、強度、摺動性、及び成形性などの向上の観点より、好ましい。
[(B)充填材]
本実施形態に用いられる(B)充填材としては、以下に制限されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン・ポリヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂;(高分子量)(変性)ポリエチレン、(変性)ポリプロピレン等の(変性)ポリオレフィン;ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、アルコール変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシ変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン等のシリコーン;二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、タルク、雲母等の層状無機化合物;ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、ボロン酸ウィスカ、メタケイ酸カルシウムウィスカー、ウォラストナイト等の無機繊維;LCP繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等の有機繊維;アルミナ、シリカ等の無機粒子;ポリアミド66、ポリアミド46、液晶ポリエステル等の高分子化合物;鉱物油等の潤滑油、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドなどの脂肪酸化合物などを挙げることができる。これらの中でも、フッ素樹脂、シリコーン、変性ポリオレフィン、二硫化モリブデン、グラファイト、鉱物油、アラミド繊維、LCP繊維、カーボン繊維、ガラス繊維及び脂肪酸化合物が好ましい。
これら(B)充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フッ素樹脂、層状無機化合物、無機粒子及び脂肪酸金属塩は、摺動特性向上の観点から、平均粒径0.1〜200μmの範囲が好ましく、1〜100μmの範囲がより好ましく、1〜50μmがさらに好ましい。ここで、本明細書における平均粒径の測定は、ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片を冷凍破断して、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらの平均粒径を測定する方法を採用する。
シリコーンは、25℃の状態で液状でも固体状でもよい。シリコーンが25℃の状態で液状の場合、摺動特性向上の観点より、25℃での粘度が1〜100万csが好ましく、1,000〜50万csがより好ましく、1万〜10万csがさらに好ましい。一方、シリコーンが25℃の状態で固体状の場合、押出や成形などの溶融加工時に溶融するものが好ましい。
無機繊維及び有機繊維は、その断面が真円状でも扁平状でもよい。かかる扁平状の断面としては、以下に制限されないが、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、及び長手方向の中央部がくびれた繭型が挙げられる。ここで、本明細書における「扁平率」は、当該繊維断面の長径をD2及び当該繊維断面の短径をD1とするとき、D2/D1で表される値をいう(真円状は、扁平率が約1となる。)。
無機繊維及び有機繊維の中でも、優れた機械的強度や摺動特性向上の観点から、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が100〜750μmであり、且つ重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)が10〜100であるものが、好適に用いられる。
ここで、本明細書における無機繊維及び有機繊維の数平均繊維径及び重量平均繊維長は、以下の方法により求められた値を採用する。ポリアミド組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理する。当該処理後の残渣分から、100本以上の無機繊維及び有機繊維を任意に選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらの無機繊維及び有機繊維の繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定する。加えて、倍率1,000倍で撮影した、上記100本以上の無機繊維及び有機繊維についてのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより、重量平均繊維長を求める。
層状無機化合物、無機繊維、有機繊維及び無機粒子などの充填材は、シランカップリング剤などにより表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、以下に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙した成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
このような表面処理剤は、予め充填材表面に処理することもできるし、(A)ポリアミドなどと(B)充填材を混合する際に添加してもかまわない。また、好ましい表面処理剤の量は、(B)充填材に対して0.05〜1.5質量%である。
また、上記のガラス繊維や炭素繊維については、さらに集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩、並びにカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを含む共重合体などを含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、得られる摺動部材の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせがより好ましい。
上記したカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体のうち、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されることはないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸及び無水シトラコン酸が挙げられ、中でも無水マレイン酸が好ましい。一方、前記のカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいう。前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレートが挙げられる。中でもスチレン及びブタジエンが好ましい。
上記したこれらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
また、上記したカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましい。また、得られる摺動部材の流動性向上の観点から、より好ましくは2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは2,000〜500,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
エポキシ化合物としては、以下に制限されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド、エイコセンオキサイドなどの脂肪族エポキシ化合物;グリシド−ル、エポキシペンタノ−ル、1−クロロ−3,4−エポキシブタン、1−クロロ−2−メチル−3,4−エポキシブタン、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド、エポキシ化シクロヘキセンメチルアルコールなどの脂環族エポキシ化合物;ピネンオキサイドなどのテルペン系エポキシ化合物;スチレンオキサイド、p−クロロスチレンオキサイド、m−クロロスチレンオキサイドなどの芳香族エポキシ化合物;エポキシ化大豆油;及びエポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
上記のポリウレタン樹脂は、集束剤として一般的に用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)やイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが好適に使用できる。
上記のアクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)の重量平均分子量は1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
ポリアクリル酸は塩形態であってもよい。前記塩形態として、以下に制限されないが、例えば、第一級、第二級又は第三級のアミンが挙げられる。以下に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びグリシン等が挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性向上の観点や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
塩を形成するポリアクリル酸の重量平均分子量は、以下に制限されないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。ガラス繊維や炭素繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、得られる摺動部材の機械的特性向上の観点から、50,000以下が好ましい。
上記のアクリル酸のポリマーは、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーであってもよい。前記アクリル酸と共重合体を形成するモノマーとしては、以下に制限されないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。特に上記したモノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有するものが好ましい。
上記のアクリル酸のポリマー(コポリマー)は塩形態であってもよい。前記塩形態として、以下に制限されないが、例えば第一級、第二級又は第三級のアミンが挙げられる。かかるアクリル酸のポリマーの塩として、以下に制限されないが、トリエチルアミン、トリエタノールアミンやグリシンが挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
塩を形成するアクリル酸のコポリマーの重量平均分子量は、以下に制限されないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。ガラス繊維や炭素繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、得られる摺動部材の機械的特性向上の観点から、50,000以下が好ましい。
ガラス繊維や炭素繊維は、上記の集束剤を、公知の当該ガラス繊維や炭素繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、当該ガラス繊維や炭素繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することによって連続的に反応させて得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。かかる集束剤は、当該ガラス繊維や炭素繊維100質量%に対し、固形分率として、0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%相当を付与(添加)する。すなわち、当該ガラス繊維や炭素繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、当該ガラス繊維や炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、得られる摺動部材の熱安定性向上の観点から、固形分率として3質量%以下であることが好ましい。ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、ストランドを乾燥した後に切断してもよい。
脂肪酸化合物としては、以下に制限されないが、例えば高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドなどが挙げられ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の高級脂肪酸としては、以下に制限されないが、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸などの炭素数8〜40の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸が挙げられ、ステアリン酸及びモンタン酸などが好ましい。
高級脂肪酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の高級脂肪酸金属塩とは、前記高級脂肪酸の金属塩である。
かかる金属元素としては、元素周期律表の第1,2,3族元素、亜鉛、及びアルミニウムなどが好ましく、より好ましくはカルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウムなどの第1,2族元素、並びにアルミニウムなどが挙げられる。
高級脂肪酸金属塩としては、以下に制限されないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、及びモンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウムなどが挙げられ、モンタン酸の金属塩及びステアリン酸の金属塩などが好ましい。
高級脂肪酸金属塩としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の高級脂肪酸エステルとは、前記高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。炭素数8〜40の脂肪族カルボン酸と炭素数8〜40の脂肪族アルコールとのエステルであることが好ましい。
前記脂肪族カルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸、及びラウリン酸などが挙げられ、前記脂肪族アルコールとしては、以下に制限されないが、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びラウリルアルコールなどが挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、以下に制限されないが、例えば、ステアリン酸ステアリル、及びベヘン酸ベヘニルなどが挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の高級脂肪酸アミドとは、前記高級脂肪酸のアミド化合物である。
高級脂肪酸アミドとしては、以下に制限されないが、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、及びN−ステアリルエルカアミドなどが挙げられる。
高級脂肪酸アミドとしては、好ましくはステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN−ステアリルエルカアミドであり、より好ましくはエチレンビスステアリルアミド及びN−ステアリルエルカアミドである。
高級脂肪酸アミドとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)充填材の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、好ましくは0.01〜100質量部であり、より好ましくは0.03〜80質量部であり、さらに好ましくは0.05〜60質量部であり、さらにより好ましくは0.10〜50質量部であり、よりさらに好ましくは0.20〜40質量部である。
上記の含有量を0.01質量部以上とすることにより、摺動特性向上効果が十分に発現される。一方、上記の含有量を100質量部以下とすることにより、押出性、成形性及び表面外観に優れる摺動部材を得ることができる。
本実施形態の摺動部材は、耐熱エージング性などの向上の観点より、(C)熱安定剤を含有することが好ましい。
[(C)熱安定剤]
本実施形態に用いられる(C)熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤、並びに周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族及び第IVb族の元素の金属塩、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物が挙げられる。
これらの中でも、耐熱エージング性の観点から周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族及び第IVb族の元素の金属塩、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物が好ましい。上記した熱安定剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<フェノール系熱安定剤>
フェノール系熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、ヒンダートフェノール化合物が挙げられる。前記ヒンダードフェノール化合物は、ポリアミド等の樹脂や繊維に優れた耐熱性及び耐光性を付与する性質を有する。
ヒンダードフェノール化合物としては、以下に制限されないが、例えば、N,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、耐熱エージング性向上の観点から、好ましくはN,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]である。
フェノール系熱安定剤を用いる場合、摺動部材中のフェノール系熱安定剤の含有量は、摺動部材100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらにガス発生量を低減させることができる。
<リン系熱安定剤>
リン系熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4'−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス(4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))・1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイトが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の列挙したものの中でも、耐熱エージング性の一層の向上及び発生ガスの低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物及び/又はトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。前記ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、以下に制限されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・メチル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−エチルヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ラウリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソトリデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・シクロヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ベンジル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・エチルセロソルブ・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ブチルカルビトール・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,6−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−シクロヘキシルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
上記で列挙したペンタエリスリトール型ホスファイト化合物の中でも、ガス発生量を低減させる観点から、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2、6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系熱安定剤を用いる場合、摺動部材中のリン系熱安定剤の含有量は、摺動部材100質量部に対して、0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.10〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらにガス発生量を低減させることができる。
<アミン系熱安定剤>
アミン系熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β',β'−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系熱安定剤を用いる場合、摺動部材中のアミン系熱安定剤の含有量は、摺動部材100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.10〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させることができ、さらにガス発生量を低減させることができる。
<周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族及び第IVb族の元素の金属塩>
周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族及び第IVb族の元素の金属塩としては、これらの族に属する金属の塩であれば何ら制限されることはない。耐熱エージング性を一層向上させる観点から、好ましくは銅塩である。かかる銅塩としては、以下に制限されないが、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅など)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅及びステアリン酸銅、並びにエチレンジアミン及びエチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に銅の配位した銅錯塩が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記で列挙した銅塩の中でも、好ましくはヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅及び酢酸銅からなる群より選択される1種以上であり、より好ましくはヨウ化銅及び/又は酢酸銅である。上記の(より)好ましい銅塩を用いた場合、耐熱エージング性に優れ、且つ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に「金属腐食」ともいう。)を効果的に抑制できる摺動部材が得られる。
銅塩を用いる場合、摺動部材中の銅塩の含有量は、摺動部材100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.20質量部であり、より好ましくは0.020〜0.15質量部である。上記範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させるとともに、銅の析出や金属腐食を効果的に抑制することができる。
また、上記の銅塩に由来する銅元素の含有濃度は、耐熱エージング性を向上させる観点から、摺動部材100質量%に対し、好ましくは10〜500質量ppmであり、より好ましくは30〜500質量ppmであり、さらに好ましくは50〜300質量ppmである。
<アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物>
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、以下に制限されないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。中でも、耐熱エージング性の向上及び金属腐食の抑制という観点から、好ましくはヨウ化カリウム及び/又は臭化カリウムであり、より好ましくはヨウ化カリウムである。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いる場合、摺動部材中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量は、摺動部材100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部であり、より好ましくは0.20〜2質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を効果的に抑制することができる。
上記で説明してきた熱安定剤の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、耐熱エージング性を一層向上させる観点から、銅塩と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との混合物が好適である。
銅塩と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との割合は、ハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)として、好ましくは2/1〜40/1であり、より好ましくは5/1〜30/1である。上記した範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させることができる。
上記のハロゲン/銅が2/1以上である場合、銅の析出及び金属腐食を効果的に抑制することができるため、好適である。一方、上記のハロゲン/銅が40/1以下である場合、機械的物性(靭性など)を殆ど損なうことなく、成形機のスクリュー等の腐食を防止できるため、好適である。
(摺動部材を構成するポリアミド組成物の製造方法)
(A)ポリアミドに他の成分((B)充填材、(C)熱安定剤など)を含有させる場合の、摺動部材の原料であるポリアミド組成物の製造方法としては、(A)ポリアミドと前記他の成分とを混合する方法であれば、特に限定されるものではない。
(A)ポリアミドと上記他の成分との混合方法として、例えば、(A)ポリアミドと前記他の成分とをヘンシェルミキサーなどを用いて混合し溶融混練機に供給して混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミドに、サイドフィーダーから前記他の成分を配合する方法などが挙げられる。
摺動部材の原料であるポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。溶融混練温度は、樹脂温度にしてポリアミド樹脂の融点〜375℃程度であることが好ましい。
溶融混練時間は、0.25〜5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置(例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロールなどの溶融混練機)を用いることができる。
本実施形態の摺動部材の原料であるポリアミド組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ポリアミドに慣用的に用いられる添加剤、例えば、顔料及び染料などの着色剤(着色マスターバッチを含む。)、難燃剤、フィブリル化剤、潤滑剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、充填剤、補強剤、展着剤、核剤、ゴム、強化剤、並びに他のポリマー等を含有させることもできる。
本実施形態に係る摺動部材が、上記で説明してきた摺動部材に含まれ得るその他の原料を含有する場合、当該その他の原料の含有量は、その種類や摺動部材の用途などによって様々であるため、本実施の形態の目的を損なわない範囲であれば特に制限されることはない。
本実施形態の摺動部材の原料であるポリアミド組成物の25℃での相対粘度ηr、融点Tm2、融解熱量ΔH、ガラス転移温度Tgは、上記したポリアミドにおける測定方法と同様の方法により測定することができる。また、前記ポリアミド組成物における測定値が、上記したポリアミドの測定値として好ましい範囲と同様の範囲にあることにより、耐熱性、成形性、耐薬品性、及び摺動特性に優れる摺動部材を得ることができる。
(摺動部材の製造方法)
本実施形態の摺動部材は、公知の成形方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いて得ることができる。
なお、前記摺動部材は、上述した(A)ポリアミド、又は(A)ポリアミドに加えて(B)充填材や(C)熱安定剤などを含有するポリアミド組成物を成形することにより得られる。
本実施形態の摺動部材は、耐熱性、流動性、強度、靭性、低吸水性に優れ、さらに摺動性(耐磨耗性、低摩擦係数)に優れる。したがって、本実施形態の摺動部材は、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、及び日用及び家庭品用などの各種の摺動部品として好適に用いることができる。
自動車用摺動部材としては、以下に制限されないが、例えば、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナ、軸受け、チェーンガイド、チェーンテンショナーのシュー、スイッチ、ピストン、パッキン、ローラー及びベルト等の摺動部品の素材として使用することができる。
電気及び電子用摺動部材、産業機器用摺動部材、日用及び家庭品用摺動部材としては、以下に制限されないが、例えば、ギア、ベアリングリテーナ、軸受け、プーリー、メカニカルシールの端面材、バルブの弁座、Vリング、ロッドパッキン、ピストンリング、ピストン、インペラー、ベーン及びローターに用いられる。
上記のギアとしては、以下に制限されないが、例えば、平歯車、はすば歯車、やまば歯車、内歯車対、ラック− 小歯車、すぐばかさ歯車、まがりばかさ歯車、交差軸フェースギア、ねじ歯車、ウォームギア及びハイポイドギアが挙げられる。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。なお、本実施例において、1kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
[原材料]
本実施例において下記化合物を用いた。
〔(A)ポリアミド〕
<(a)ジカルボン酸>
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA) イーストマンケミカル製 商品名 1,4−CHDA HPグレード(トランス異性体/シス異性体(モル比)=25/75)
(2)テレフタル酸(TPA) 和光純薬工業製 商品名 テレフタル酸
(3)アジピン酸(ADA) 和光純薬工業製 商品名 アジピン酸
(4)セバシン酸(C10DA) 和光純薬工業製 商品名 セバシン酸
(5)ドデカン二酸(C12DA) 和光純薬工業製 商品名 ドデカン二酸
<(b)ジアミン>
(6)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MPD) 東京化成工業製 商品名 2−メチル−1,5−ジアミノペンタン
(7)ヘキサメチレンジアミン(HMD) 和光純薬工業製 商品名 ヘキサメチレンジアミン
(8)1,9−ノナメチレンジアミン(NMD) アルドリッチ製 商品名 1,9−ノナンジアミン
(9)2−メチルオクタメチレンジアミン(2MOD) 特開平05−17413号公報に記載されている製法を参考にして製造した。
<(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸>
(10)ε−カプロラクタム(CPL) 和光純薬工業製 商品名 ε−カプロラクタム
〔(B)充填材〕
(11)モンタン酸カルシウム(B−1) クラリアント製 商品名 Licomont CaV 102
(12)ポリテトラフルオロエチレン(B−2) 旭硝子(株)製 商品名 L150J 平均粒径 9μm
(13)二硫化モリブデン(B−3) ダウコーニング製 商品名 モリコート マイクロサイズパウダー 平均粒径 0.7μm
〔(C)熱安定剤〕
(14)ヨウ化銅(CuI)和光純薬工業製 商品名 ヨウ化銅(I)
(15)ヨウ化カリウム(KI)和光純薬工業製 商品名 ヨウ化カリウム
[ポリアミド成分量の計算]
(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた全ての(a)ジカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル%は、(原料モノマーとして加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数/原料モノマーとして加えた全ての(b)ジアミンのモル数)×100として、計算により求めた。
また、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた、全ての(a)ジカルボン酸のモル数+(b)全てのジアミンのモル数+(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
なお、上記式により計算する際に、分母及び分子には、追添分として加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数は含まれない。
[測定方法]
(1)融点Tm1、Tm2(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minでサンプルの融点に応じて300〜350℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とし、昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最大ピーク温度を融点Tm2(℃)とし、その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。なお、ピークが複数ある場合には、融解熱量が1J/g以上のものをピークとみなした。例えば、融点295℃、融解熱量20J/gと融点325℃、融解熱量5J/gの二つのピークが存在する場合、融点Tm2は325℃とし、融解熱量ΔHは25J/g(=20J/g+5J/g)とした。
(2)トランス異性体比率
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、1H−NMRで測定した。ポリアミドを構成する脂環族ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積とシス異性体に由来する1.77ppmと1.86ppmのピーク面積の比率から、ポリアミド中における脂環族ジカルボン酸構造のトランス異性体比率を求めた。
(3)ガラス転移温度Tg(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、試料をホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させて得られた溶融状態のサンプルを、液体窒素を用いて急冷し、固化させ、測定サンプルとした。そのサンプル10mgを用いて、昇温スピード20℃/minの条件下、30〜350℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度を測定した。
(4)25℃の相対粘度ηr
JIS−K6810に準じて実施した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作製し、25℃の温度条件下で測定した。
(5)銅濃度、ハロゲン濃度、並びにハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/銅)
銅濃度は、試料(ポリアミド組成物)に硫酸を加え、加熱しながら硝酸を滴下して有機成分を分解し、得られた分解液を純水中で定容し、ICP発光分析(高周波プラズマ発光分析)法により定量した。ICP発光分析装置は、SEIKO電子工業社製Vista−Proを用いた。
ハロゲン濃度は、ヨウ素を例にとると、試料(ポリアミド組成物)を高純度の酸素で置換したフラスコ中で燃焼し、発生したガスを吸収液に捕集し、得られた捕集液中のヨウ素を1/100N 硝酸銀溶液による電位差滴定法を用いて定量した。
ハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/Cu)は、上記したそれぞれの定量値を用いて、分子量からモルに換算し算出した。
実施例及び比較例は、ハロゲンとしてヨウ素を用いたため、I/Cuとなる。
(6)引張強度(MPa)及び(7)引張伸度(%)
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を用いて、ASTM D638に準じて行った。成形試験片は、射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)にASTM引張試験(ASTM D638)用のダンベル試験片(3mm厚)の金型(金型温度=下記表2中のポリアミドのガラス転移温度Tg+20℃)を取り付けて、シリンダー温度を(下記表2中のポリアミドのTm2+10)℃〜(下記表2中のポリアミドのTm2+30)℃として、成形を行った。
(8)吸水率(%)
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を成形後の絶乾状態(dry as mold)で、試験前質量(吸水前質量)を測定した。80℃の純水中に24時間浸漬させた。その後、水中から試験片を取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定した。吸水前質量に対しての吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を、試行数n=3で求め、その平均値を吸水率(%)とした。
(9)比摩耗量(mm3/(N・km))及び(10)動摩擦係数
実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物のペレットを、射出成形機[住友重機械工業(株)製SE130D]を用いて、平板プレート成形片(12cm×8cm、厚さ3mm)を得た。射出条件(3mm厚)は、射出圧力105MPa、射出時間0.4秒、保圧時間12秒、冷却時間18秒、スクリュー回転数100rpmに設定した。金型温度を下記表2中のポリアミドのガラス転移温度Tg+20℃、シリンダー温度を(下記表2中のポリアミドのTm2+10)℃〜(下記表2中のポリアミドのTm2+30)℃に設定し、得られた平板を切削し、平板プレート試験片(3cm×3cm、厚さ3mm)を得た。
得られた試験片を用いて、JIS K7218 A法に準じて、摩擦摩耗試験機(オリエンテック製MODEL EMF−III−F)を使用し、面圧0.5MPa、すべり速度10cm/秒の条件下、鋼材S45C(サンドペーパー仕上げ)を用いて、120分間(すべり距離0.72km)試験したときの摩耗質量を測定した。その際、上記試験を行わない同一試験片のダミー材を同条件下に置くことにより、測定値の補正(吸湿補正)を行った。さらに、別途測定した成形品の比重を用いて、比摩耗量を求めた。
また、動摩擦係数は、120分時点での値を採用した。
ポリアミド
[製造例1]
「熱溶融重合法」でのポリアミド重合を実施した。
(a)CHDA 896g(5.20モル)及び(b)2MPD 604g(5.20モル)を蒸留水1,500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作った。当該均一水溶液に2MPD 15g(0.13モル)を追添した(表1参照)。
得られた水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm2になるまで、液温を約50℃から加熱を続けた(この系での液温は約145℃であった。)。槽内の圧力を約2.5kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約75質量%になるまで濃縮した(この系での液温は約160℃であった。)。水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約245℃であった。)。槽内の圧力を約30kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、最終温度(後出の350℃)−50℃(ここでは300℃)になるまで加熱を続けた。液温が最終温度(後出の350℃)−50℃(ここでは300℃)まで上昇した後に、加熱は続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで120分ほどかけながら降圧した。
その後、樹脂温度(液温)の最終温度が約350℃になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度は約350℃のまま、槽内を真空装置で約53.3kPa(400torr)の減圧下に30分維持した。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドを、窒素気流中で乾燥し、水分含有率を約0.2質量%に調整した。かかるポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の結果を表2に示す。
[製造例2〜11]
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、並びに(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、表1に記載の化合物及び量を用いた点と、樹脂温度の最終温度を表1に記載の温度にした点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。
得られたポリアミドを、窒素気流中で乾燥し、水分含有率を約0.2質量%に調整した。かかるポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の結果を表2に示す。
[比較製造例1]
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、並びに(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、表1に記載の化合物及び量を用いた点と、樹脂温度の最終温度を表1に記載の温度にした点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。
比較製造例1においては、重合の途中で、オートクレーブ内で固化が生じたため、ストランドでの取り出しができなかった。そのため、冷却後、塊で取り出し、粉砕機を用いて粉砕して、ペレット程度の大きさにした。
得られたポリアミドを、窒素気流中で乾燥し、水分含有率を約0.2質量%に調整した。かかるポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の測定結果を表2に示す。
[比較製造例2〜6]
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、並びに(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、表1に記載の化合物及び量を用いた点と、樹脂温度の最終温度を表1に記載の温度にした点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。
得られたポリアミドを、窒素気流中で乾燥し、水分含有率を約0.2質量%に調整した。かかるポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の測定結果を表2に示す。
[製造例12]
KI 73質量部、及びエチレンビスステアリルアミド10質量部を混合し、KI及びエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。得られた混合物にCuI 17質量部を十分混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製 F5−11−175)で顆粒化し、熱安定剤顆粒を得た。
[実施例1]
製造例1のポリアミドを窒素気流中でさらに乾燥し、水分率を約0.05質量%に調整した。得られたポリアミド又はその成形片(成形品)についての上記測定方法(6)〜(10)の結果を表2に示す。
また、上記測定方法(6)及び(7)のASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を熱風オーブン中で150℃、240時間処理した後、ASTM−D638に準じて引張強度を測定した。熱処理前に測定した引張強度に対する熱処理後に測定した引張強度を引張強度保持率として算出したところ、引張強度保持率は50%未満であった。
[実施例2]
製造例1のポリアミドを用いた。2軸押出機[東芝機械(株)製TEM35、L/D=47.6(D=37mmφ)、設定温度=融点Tm2+20℃(この場合、327+20=347℃)、スクリュー回転数300rpm]を用いて、押出し機最上流部に設けられたトップフィード口より、前記ポリアミド、及び製造例12で製造した熱安定剤顆粒を表2の組成になるように供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして、ポリアミド組成物のペレットを得た。
得られたポリアミド組成物又はその成形片(成形品)についての上記測定方法(5)〜(10)の結果を表2に示す。
また、実施例1と同様にして、引張強度保持率を測定・算出したところ、95%以上であった。これにより、得られた成形品(摺動部材)が、自動車用途など、使用環境温度が高い特別な状況での摺動用途にも十分適していることを確認した。
[実施例3〜5]
製造例1のポリアミドを用いた。2軸押出機[東芝機械(株)製TEM35、L/D=47.6(D=37mmφ)、設定温度=融点Tm2+20℃(この場合、327+20=347℃)、及びスクリュー回転数300rpm]を用いて、押出機の最上流部に設けられたトップフィード口より、前記ポリアミド、表2に記載の充填材、及び製造例12で製造した熱安定剤顆粒を、表2の組成になるように供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして、ポリアミド組成物のペレットを得た。
得られたポリアミド組成物又はその成形片(成形品)についての上記測定方法(5)〜(10)の結果を表2に示す。
また、実施例1と同様にして、引張強度保持率を測定・算出したところ、95%以上であった。これにより、得られた成形品(摺動部材)が、自動車用途など、使用環境温度が高い特別な状況での摺動用途にも十分適していることを確認した。
[実施例6〜15、比較例1〜6]
製造例1のポリアミドに代えて、製造例2〜11及び比較製造例1〜6の各ポリアミドを用いた点以外は、実施例3と同様にしてポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物又はその成形片(成形品)についての上記測定方法(5)〜(10)の結果を表2に示す。
なお、比較例1に関しては、押出状態が非常に不安定であったため、ポリアミド組成物を得ることができなかった。
Figure 2011068873
Figure 2011068873
表2の結果から、(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンとを重合させたポリアミドを含有する成形品(摺動部材)は、耐熱性、流動性、強度、靭性及び低吸水性に優れ、さらに摺動性(耐磨耗性、低摩擦係数)にも優れることが明らかとなった。
本発明の摺動部材は、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用など各種摺動部材として好適に使用することができるなど、産業上の利用可能性を有する。

Claims (11)

  1. (A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンとを重合させたポリアミドを含有する、摺動部材。
  2. 前記主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、請求項1又は2に記載の摺動部材。
  4. 前記(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の摺動部材。
  5. 前記(A)ポリアミドが(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の摺動部材。
  6. 前記(A)ポリアミドの融点が270〜350℃である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の摺動部材。
  7. 前記(A)ポリアミド中、前記脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率が50〜85モル%である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の摺動部材。
  8. (B)充填材をさらに含有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の摺動部材。
  9. 前記(B)充填材が、フッ素樹脂、シリコーン、変性ポリオレフィン、二硫化モリブデン、グラファイト、鉱物油、アラミド繊維、LCP繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、及び脂肪酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の摺動部材。
  10. (C)熱安定剤をさらに含有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の摺動部材。
  11. 自動車用摺動部材である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の摺動部材。
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