JP2011063428A - エレベータの救出運転システム - Google Patents

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Abstract

【課題】停電時にできるだけ長く運転を継続し、乗りかごを階間途中で停止させることなく、各階床の在館者を安全に避難させる。
【解決手段】群管理制御装置11は、停電時にバッテリ運転モードに切り換え、各号機の中で回生運転で乗場呼びに応答可能な号機を優先して乗場呼びの割り当てを行い、その回生運転で発生する電力をバッテリ51に充電する。また、乗場呼びに応答した号機を避難方向へ運転する際に、当該号機の乗車率とオーバーバランスとの関係によって決まる運転時の電力状態に応じて目的階を設定し、その目的階へ当該号機を運転する。これにより、停電時にできるだけ長く運転を継続し、乗りかごを階間途中で停止させることなく、各階床の在館者を安全に避難させることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、建物内で火災による停電が発生した際に、バッテリを使用して各号機のエレベータを運転するエレベータの救出運転システムに関する。
近年の建物の高層化に伴い、エレベータは建物の縦の移動手段として欠くことのできない役割を果たしている。また、車いすの利用者などの身体に障害を持つ人が建物の各階を移動するためにも、エレベータは重要な役割を果たす。
ここで、火災が発生した場合に、現在、エレベータを避難階へ走行後、運転を休止するといった運用がなされており、法令上の制限はないが、エレベータを避難手段として積極的に利用していないのが現状である。しかしながら、高層階から階段を使って避難階(通常1F)まで移動することは大変であり、避難するまでに時間もかかる。
そこで、近年では、建物の防火設備の発達や高層化に伴い、火災発生時にエレベータを避難手段として積極的に利用する要求が高まってきている。例えば特許文献1では、火災による停電が発生したときに、自家発電源を使用してエレベータの運転を継続することにより、各階床の在館者を避難させる方法を開示している。
特開2007−62864号公報
しかしながら、上記特許文献1のように停電時に自家発電源を使用してエレベータの運転を継続した場合に、運転中に電力がパワーダウンし、階間途中で乗りかごが停止して閉じ込め事故が発生する可能性がある。火災が発生しているときには、このような閉じ込め事故は絶対に避けなければならない。
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、停電時にできるだけ長く運転を継続し、乗りかごを階間途中で停止させることなく、各階床の在館者を安全に避難させることのできるエレベータの救出運転システムを提供することを目的とする。
本発明は、複数号機のエレベータが並設された建物に用いられるエレベータの救出運転システムにおいて、停電時に上記各号機で共通のバッテリを用いたバッテリ運転モードに切り換える運転モード切換え手段と、この運転モード切換え手段によってバッテリ運転モードに切り換えられた場合に、上記各号機の中で回生運転で乗場呼びに応答可能な号機を優先して上記乗場呼びの割り当てを行い、その回生運転で発生する電力を上記バッテリに充電する割当制御手段と、この割当制御手段によって上記乗場呼びが割り当てられた号機の乗車率とオーバーバランスとの関係によって決まる運転時の電力状態に応じて目的階を設定する目的階設定手段と、この目的階設定手段によって設定された目的階へ当該号機を運転する救出運転手段とを具備したことを特徴とする。
本発明によれば、停電時にバッテリ運転モードに切り換えた場合に、回生運転で乗場呼びに応答可能な号機を優先して割り当てを行うことで、消費電力を抑えると共に回生電力をバッテリに充電して運転時間の延長化を図ることができる。
また、乗場呼びに応答した号機を避難方向へ運転する際に、そのときの運転の電力状態に応じて目的階を設定することにより、乗りかごを階間途中で停止させることなく、各階床の在館者を安全に避難させることができる。
図1は本発明の一実施形態に係るエレベータの救出運転システムの構成を示すブロック図である。 図2は同実施形態におけるエレベータの乗りかごの構成を示す図である。 図3は同実施形態におけるエレベータの乗場の構成を示す図である。 図4は同実施形態におけるエレベータの駆動機構の構成を示す図である。 図5は同実施形態におけるエレベータの力行運転時の電力波形を示す図である。 図6は同実施形態におけるエレベータの回生運転時の電力波形を示す図である。 図7は同実施形態における群管理制御装置の火災停電時の運転動作を示すフローチャートである。 図8は同実施形態におけるエレベータの乗りかご内の表示器に表示されるメッセージの一例を示す図である。 図9は同実施形態におけるエレベータの乗りかご内の表示器に表示されるメッセージの一例を示す図である。 図10は同実施形態におけるエレベータの乗場の表示器に表示されるメッセージの一例を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るエレベータの救出運転システムの構成を示すブロック図である。
本システムは、群管理制御装置11と、火災検出装置12と、報知装置13と、単体制御装置14a,14b,14c…と、エレベータの乗りかご15a,15b,15c…と、一般呼びボタン16a,16b,16c…と、車いす呼びボタン17a,17b,17c…と、荷重センサ18a,18b,18c…とを有する。
群管理制御装置11は、建物に並設された複数号機のエレベータを群管理制御する。この群管理制御装置11は、コンピュータによって構成される。火災検出装置12は、建物の各階床に設置されており、火災の発生を検知して、その発生場所を群管理制御装置11に通知する。報知装置13は、火災検出装置12によって火災の発生が検知されたときに避難警告等を報知する。
単体制御装置14a,14b,14c…は、例えばかご呼びの登録やドアの開閉など、各号機のエレベータの運転を個別に制御するものである。この単体制御装置14a,14b,14c…についても、群管理制御装置11と同様にコンピュータによって構成される。乗りかご15a,15b,15c…は、図示せぬ巻上機の駆動により昇降路内を昇降動作し、乗客を乗せて各階床間を移動する。
乗りかご15a,15b,15c…には、それぞれに積載荷重を検出するための荷重センサ18a,18b,18c…が設置されており、これらの荷重センサ18a,18b,18c…によって検出された積載荷重の信号が単体制御装置14a,14b,14c…を介して群管理制御装置11に与えられる。
また、一般呼びボタン16a,16b,16c…と車いす呼びボタン17a,17b,17c…は、乗場呼びボタンとして各階床の乗場に設置されている。一般呼びボタン16a,16b,16c…は、一般の利用者が乗場呼びを登録するための操作ボタンである。これに対し、車いす呼びボタン17a,17b,17c…は、車いすの利用者が乗場呼びを登録するための操作ボタンであり、車いすの高さに合わせて、一般呼びボタン16a,16b,16c…よりも低い位置に設置されているのが一般的である。
一般呼びボタン16a,16b,16c…または車いす呼びボタン17a,17b,17c…の操作により、当該乗場の階床と行先方向を示す情報、一般呼び/車いすを示す属性情報を含んだ乗場呼びの信号が群管理制御装置11に送られる。これにより、群管理制御装置11では、各号機のエレベータの運転状態に基づいて当該乗場呼びを割り当てるべきエレベータを選出して応答させる。
また、本システムでは、各号機のエレベータを動作させるための駆動源として、商用電源50の他に、停電時に各号機に共通に使用される所定容量のバッテリ51を備えると共に、そのバッテリ51の残量を検出するためのバッテリチェッカ52を備える。
このような構成において、通常は、商用電源50から供給される電力によって各号機のエレベータが駆動され、これらの乗りかご15a,15b,15c…が呼びに応答して各階床間を移動する。一方、火災が発生し、商用電源50からの電力供給が途絶えた状態つまり停電状態となると、バッテリ運転モードに切り換えられ、バッテリ51の電力を使用して各号機のエレベータが駆動される。
ここで、本実施形態において、群管理制御装置11には、このような火災停電時に関する機能構成として、制御部21と記憶部22が設けられている。
制御部21は、各号機のエレベータの運転制御に関わる処理を行うものであり、ここでは運転モード切換え部21a、割当制御部21b、目的階設定部21c、救出運転部21d、強制回生運転部21e、通知部21fを有する。
運転モード切換え部21aは、停電時に各号機で共通のバッテリ51を用いたバッテリ運転モードに切り換える。
割当制御部21bは、運転モード切換え部21aによってバッテリ運転モードに切り換えられた場合に、各号機の中で回生運転で乗場呼びに応答可能な号機を優先して乗場呼びの割り当てを行い、その回生運転で発生する電力をバッテリ51に充電する。また、各号機の中で回生運転で乗場呼びに応答可能な号機がない場合に、バッテリ残量にて乗場呼びの発生階に到達可能な号機の有無を調べ、該当する号機があれば、その号機に乗場呼びの割り当てを行う。
目的階設定部21cは、割当制御部21bによって乗場呼びが割り当てられた号機の乗車率とオーバーバランスとの関係によって決まる運転時の電力状態に応じて目的階を設定する。詳しくは、乗場呼びが割り当てられた号機の乗車率がオーバーバランス以上であって、運転時に電力を発生させる回生運転となる場合に、建物に定められた避難階を目的階として設定する。一方、乗場呼びが割り当てられた号機の乗車率がオーバーバランス未満であって、運転時に電力を要する力行運転となる場合に、バッテリ残量と予め定められた安全マージン上の標準値との関係式から到達可能階を求め、その到達可能階を目的階として設定する。
救出運転部21dは、目的階設定部21cによって設定された目的階へ当該号機を運転する。
強制回生運転部21eは、乗場呼びが割り当てられた号機の乗車率がオーバーバランス以上であって、運転時に電力を発生させる回生運転となる場合に、各号機の中で上記乗場呼びが割り当てられていない未割当号機のうち、回生運転にてバッテリ電力を増加可能な号機の有無を調べ、該当する号機があれば、その号機を強制的に回生運転させる。
通知部21fは、救出運転部21dによって当該号機が目的階に向けて運転されるときに乗客にその行先を通知する他、各種メッセージの通知に関わる処理を行う。
記憶部22は、制御部21の運転制御に必要な各種情報として、各階床で登録された乗場呼びの情報やその乗場呼びを割り当てた号機などの情報を記憶している。
図2はエレベータの乗りかごの構成を示す図である。
乗りかご15の正面には、かごドア31が開閉自在に設けられており、そのかごドア31の横に各種操作ボタンが配設された操作パネル32が設けられている。この操作パネル32には、乗客が行先階を指定するための行先階指定ボタン33の他、戸開ボタン34a、戸閉ボタン34bなどが設けられている。
また、この乗りかご15内には、メッセージを表示するための表示器35と音声アナウンスを行うためのスピーカ36が設置されている。
さらに、車いす号機であれば、乗りかご15内の側面に車いす利用者用の操作パネル37が設けられている。この操作パネル37は、車いす利用者が操作可能な位置に設置されており、上記操作パネル32と同様に行先階指定ボタン38、戸開ボタン39a、戸閉ボタン39bなどを有する。
図3はエレベータの乗場の構成を示す図である。
エレベータの乗場19には、乗場ドア41が開閉自在に設けられている。乗場ドア41は、乗りかご15が着床したときにかごドア31に係合して開閉する。この乗場ドア41の近傍に一般呼びボタン16が設けられている。
一般呼びボタン16は、一般の利用者が乗場呼びを登録するための操作ボタンであり、具体的には行先方向を指定するための上方向指定ボタンと下方向指定ボタンからなる。この乗場呼びボタン16とは別に車いす利用者専用の車いす呼びボタン15が設けられている。この車いす呼びボタン15は、車いす利用者が操作可能な位置に設置されており、一般呼びボタン16aと同様に上方向指定ボタンと下方向指定ボタンを有する。
また、乗場ドア41の上に現在のかご位置などを表示するためのインジケータ43が設けられている。さらに、乗場ドア41付近に、メッセージを表示するための表示器44と音声アナウンスを行うためのスピーカ45が設置されている。
ここで、本システムの動作を説明する前に、(a)エレベータの力行運転/回生運転と、(b)電力計算について説明する。
(a)エレベータの力行運転/回生運転
図4はエレベータの駆動機構の構成を示す図である。
各号機のエレベータには、それぞれにモータ61と巻上機62が設けられている。これらは、例えば建物の機械室に設置されており、単体制御装置14から出力される駆動信号によって駆動される。巻上機62にはロープ63が巻回されており、その一端に乗りかご15a、他端にカウンタウェイト64が取り付けられている。モータ61の駆動に伴い、巻上機62が回転すると、ロープ63を介して乗りかご15がカウンタウェイト64と反対方向につるべ式に移動する。
このような構成において、例えば乗りかご15が昇降路65の下方向に動く場合に、そのときの乗りかご15の荷重がカウンタウェイト64より重ければ、動力を必要としない。この場合、モータ61は発電機として機能することになり、回生電力が生じる。また、乗りかご15が上方向に動く場合に、そのときの乗りかご15の荷重がカウンタウェイト64より軽ければ、動力を必要としない。よって、上記同様に回生電力が生じる。
このように、動力を必要とせずに乗りかご15を運転することを「回生運転」と呼び、そのときに乗りかご15が移動する方向を「回生方向」と呼ぶ。その逆に、動力を必要する運転を「力行運転」と呼び、そのときに乗りかご15が移動する方向を「力行方向」と呼んでいる。
(b)電力計算
上述したように、エレベータの運転には力行運転と回生運転があるが、電力計算の基本的な考え方はどちらも同じである。エレベータの電力を大分すると、(1)モータで消費/発生する電力、(2)制御用の電力、(3)ドア開閉用電力、(4)その他変換器での消費電力、(5)走行時の機械的損失がある。
ここでは、上記(2)〜(5)を1走行当たりおける損失として纏めて考える。また、その他の電力計算の値を左右するエレベータ特有のパラメータ(例えば乗りかごの重さやモータスペック、定格速度など)は既知であるため、結局のところ、一走行当たりに発生する電力量は乗車人数とその時の移動距離に依ることとなる。
図5に力行運転時の電力波形、図6は回生運転時の電力波形を示す図であり、同図(a)は乗りかごが走行を開始してから停止するまでの速度パターン、同図(b)はその速度パターンに対するモータで消費/発生する電力、同図(c)はその他の損失電力、同図(d)はこれらを合計した消費電力を表している。これらの波形は一般的な力学と電気工学の式により求めることが可能である。
一走行あたりにおける消費電力量は、上記波形(力行時/回生時)の時間積分値で求まる。この時間積分値がマイナスになれば、その値の分だけ電力を発生させることになり、その電力量分だけバッテリ51が充電される。逆に、時間積分値がプラスになれば、その値の分だけバッテリ51から電力が消費される。したがって、下記の式が成立すれば、目的とする階床まで安全に到達することができる。
残存バッテリ電力量−消費電力量≧基準値 …(1)
ここで、上記基準値は安全上の設計マージンである。車いす号機が乗場呼びに応答している場合には、上記基準値を限界まで下げることで、一般号機よりも到達可能階を延長する。
次に、本システムの動作について説明する。
本システムでは、図4に示した乗りかご15とカウンタウェイト64との重量差により生じる回生電力を利用し、火災かつ停電時の運転に必要な電力を確保する。エレベータ側には備え付けのバッテリ51があり、そのバッテリ51はバンク内の各号機で共通に利用できる。
停電時に、このバッテリ51を用いたバッテリ運転モードに切り換えたときに、各号機の中で回生運転にて乗場呼びに応答可能な号機を優先して割り当てを行うことで、消費電力を抑えると共に回生電力をバッテリ51に充電して運転時間の延長化を図る。
また、乗場呼びに応答した号機を避難方向(下方向)へ運転する際に、そのときの運転の電力状態(力行運転/回生運転)に応じて目的階を設定することにより、階間途中で停止させることなく、各階床の在館者を安全に避難させる。この場合、電力不足により避難階(通常、1階)まで運転できない場合には、その途中の安全な階床を目的階として運転し、そこで戸開して乗客に階段を利用するように促す。
ただし、車いす呼びに応答している場合であれば、電力計算のマージン(上記(1)式の標準値)を下げて、できるだけ避難階に近い階まで行けるようにする。また、電力不足時に、他の号機を強制的に回生運転させることで、そのときに得られる回生電力をバッテリ51に充電して運転可能範囲を広げるようにする。
なお、避難時には、各階床で在館者を乗せて下方向へ運転し、その後で空の状態で上方向へ折り返し運転することになるため、基本的に上方向も下方向も回生運転である。バッテリ51の容量は限られているが、各号機を上方向へ折り返し運転するときのタイミングをずらすようにすれば、バッテリ51に効率良く電力補給することができる。
以下に、図7を参照して本システムの動作を詳しく説明する。
図7は本システムにおける群管理制御装置11の火災停電時の運転動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、コンピュータである群管理制御装置11が所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
いま、避難階が1階に定められているものとし、建物内で火災かつ停電が発生した場合を想定する。建物内で火災が発生すると、火災検出装置12によって火災発生場所(火災が発生した階床)が検出され、その検出信号が群管理制御装置11に与えられる(ステップS11)。ここで、群管理制御装置11は、商用電源50からの電力供給が途絶えた状態つまり停電状態を検出すると(ステップS12のYes)、バッテリ運転モードに切り換えて、以下のような運転制御を行う。
すなわち、避難階よりも上の階床で乗場呼びが発生した場合に(ステップS13のYes)、群管理制御装置11は、まず、割当可能な号機のうち、その乗場呼びに応答する場合の運転が回生運転となるものがあるか否かを判断する(ステップS14)。
なお、火災が発生している場合には、上の階へ火災が広がる傾向があるため、少なくとも火災発生階よりも上の階への乗場呼びを禁止するようにしてもよい。
また、乗場呼びが一般呼びであれば、車いす号機を含む各号機を対象として、その中から割当可能な号機が選出される。これに対し、乗場呼びが車いす呼びであった場合には車いす号機だけが対象となる。
乗場呼びに応答する場合の運転が回生運転となれば、走行開始時におけるブレーキの開放などにかかる最低限の電力を除いて、運転に必要な大きな電力を必要としない。したがって、該当する号機があれば(ステップS14のYes)、群管理制御装置11は、その号機に当該乗場呼びを優先的に割り当てて、乗場呼び発生階に応答させる(ステップS15)。
なお、該当する号機が複数存在すれば、その中で最も早く応答可能な号機を選出して応答させるものとする。また、回生運転中に発生する電力つまり回生電力はバッテリ51に与えられて充電される。
次に、当該号機が乗場呼び発生階に到着し、乗客が乗車して戸開したときに(ステップS16のYes)、群管理制御装置11は、乗客の乗車率がオーバーバランス以上になるか否かを判断する(ステップS17)。
ここで言う「オーバーバランス」とは、図4に示した乗りかご15とカウンタウェイト64とが重量的に釣り合わずに、ブレーキを開放すると、乗りかご15が自重で下方向に動く状態のことである。
乗客の乗車率がオーバーバランス以上になる場合、つまり、回生運転で避難方向(下方向)へ走行可能な場合には(ステップS17のYes)、群管理制御装置11は、建物に予め定められた避難階を目的階として設定する(ステップS24)。
そして、群管理制御装置11は、図8に示すようなメッセージを当該号機のかご内表示器35に表示あるいはスピーカ36を通じて音声出力することにより、乗客に行先を通知した後(ステップS25)、当該号機を目的階(避難階)に向けて運転させる(ステップS23)。この場合、回生運転になるので、そのときに発生する回生電力がバッテリ51に充電される。
一方、乗客の乗車率がオーバーバランスにはならず、運転時に電力を要する力行運転となる場合には(ステップS17のNo)、群管理制御装置11は、未割当号機のうち、回生運転してバッテリ残量を増加可能な号機があるか否かを判断する(ステップS18)。条件を満たす号機があれば(ステップS18のYes)、群管理制御装置11は、バッテリ残量を増やすために、該当する号機を強制的に回生運転させる(ステップS19)。
また、群管理制御装置11は、上述した電力計算に基づいて当該号機が現在のバッテリ残量で安全に到達可能な階床を求め(ステップS20)、その到達可能階床を目的階として設定する(ステップS21)。なお、現在のバッテリ残量は、バッテリ51に取り付けられたバッテリチェッカ52によって検出可能である。
そして、群管理制御装置11は、図9に示すようなメッセージを当該号機のかご内表示器35に表示あるいはスピーカ36を通じて音声出力することにより、乗客に行先を通知した後(ステップS22)、当該号機を目的階(到達可能階床)に向けて運転させる(ステップS23)。この場合には、バッテリ51の電力を使って力行運転となる。
ここで、上記ステップS20において、車いす号機の場合には、車いす利用者が乗車している可能性が高いため、上記(1)式の基準値を下げることで一般号機よりも到達可能階を延長し、できるだけ避難階に近付けるようにする。
また、乗場呼びが発生したときに、回生運転で応答できる号機がなかった場合には(ステップS14のNo)、群管理制御装置11は、現在のバッテリ残量にて呼び発生階に到達可能な号機の有無を調べる(ステップS26)。条件を満たす号機があれば(ステップS26のYes)、群管理制御装置11は、その号機を呼び発生階に応答させる(ステップS15)。この場合には、バッテリ51の電力を使って力行運転となる。
応答後の処理は上記同様であり、下方向の運転が力行運転になるか、回生運転になるかで目的階を適宜設定すると共に、力行運転なる場合には他の号機を使って回生電力を発生させてバッテリ51を充電する。
一方、現在のバッテリ残量が足りず、どの号機も応答させることができない場合には(ステップS26のNo)、群管理制御装置11は、未割当号機のうち、回生運転してバッテリ残量を増加可能な号機があるか否かを判断する(ステップS27のYes)。条件を満たす号機があれば(ステップS27のYes)、群管理制御装置11は、バッテリ残量を増やすために、該当する号機を強制的に回生運転させる(ステップS28)。これにより、バッテリ残量が応答可能な量まで増えた時点で、該当する号機が応答することになる。
また、回生運転できる号機がなければ(ステップS27のYes)、この状態でエレベータを動かすのは危険であるため、群管理制御装置11は、割当可能号機なしと判断し、乗場呼びに応答しない(ステップS29)。その際、乗場呼びを一度キャンセルした後、図10に示すようなメッセージを当該乗場の表示器44に表示あるいはスピーカ45を通じて音声出力することにより、呼びの再登録を促す(ステップS30)。
このように、バッテリ運転モードに切り換えた場合に、回生運転で乗場呼びに応答可能な号機を優先して割り当てを行うことで、消費電力を抑えて運転することができ、さらに、そのときに得られる回生電力をバッテリ51に充電することで、運転時間の延長化を図ることができる。
また、乗場呼びに応答した号機を避難方向へ運転する際に、そのときの運転の電力状態(力行運転/回生運転)に応じて目的階を設定することにより、乗りかごを階間途中で停止させることなく、各階床の在館者を安全に避難させることができる。その際、乗場呼びに応答した号機が車いす号機であり、力行運転となる場合には、現在の電力で到達可能な階床を一般号機よりも延ばすことで、車いす利用者などの身体の不自由な人をできるだけ避難階に近い場所で降ろすことができる。
また、バッテリ51の電力不足を補うために、他の号機を強制的に回生運転させることで、運転時間を延ばして、より多くの在館者を避難させることができる。
なお、上記実施形態では、火災発生による停電状態で各号機のエレベータを運転する場合を想定して説明したが、本発明は火災発生に限定されるものではなく、何らかの原因で停電状態となった場合でも同様に適用可能である。
要するに、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
11…群管理制御装置、12…火災検出装置、13…報知装置、14a,14b,14c…単体制御装置、15,15a,15b,15c…乗りかご、16,16a,16b,16c…乗場呼びボタン、17,17a,17b,17c…車いす呼びボタン、18a,18b,18c…荷重センサ、19…乗場、21…制御部、21a…運転モード切換え部、21b…割当制御部、21c…目的階設定部、21d…救出運転部、21e…強制回生運転部、21f…通知部、22…記憶部、31…かごドア、32…操作パネル、33…行先階指定ボタン、34a…戸開ボタン、34b…戸閉ボタン、35…表示器、36…スピーカ、37…操作パネル、38…行先階指定ボタン、39a…戸開ボタン、39b…戸閉ボタン、41…乗場ドア、43…インジケータ、44…表示器、45…スピーカ、50…商用電源、51…バッテリ、52…バッテリチェッカ、61…モータ、62…巻上機、63…ロープ、64…カウンタウェイト、65…昇降路。

Claims (7)

  1. 複数号機のエレベータが並設された建物に用いられるエレベータの救出運転システムにおいて、
    停電時に上記各号機で共通のバッテリを用いたバッテリ運転モードに切り換える運転モード切換え手段と、
    この運転モード切換え手段によってバッテリ運転モードに切り換えられた場合に、上記各号機の中で回生運転で乗場呼びに応答可能な号機を優先して上記乗場呼びの割り当てを行い、その回生運転で発生する電力を上記バッテリに充電する割当制御手段と、
    この割当制御手段によって上記乗場呼びが割り当てられた号機の乗車率とオーバーバランスとの関係によって決まる運転時の電力状態に応じて目的階を設定する目的階設定手段と、
    この目的階設定手段によって設定された目的階へ当該号機を運転する救出運転手段と
    を具備したことを特徴とするエレベータの救出運転システム。
  2. 上記割当制御手段は、上記各号機の中で回生運転で乗場呼びに応答可能な号機がない場合に、上記バッテリの残量にて上記乗場呼びの発生階に到達可能な号機の有無を調べ、該当する号機があれば、その号機に上記乗場呼びの割り当てを行うことを特徴とする請求項1記載のエレベータの救出運転システム。
  3. 上記目的階設定手段は、上記乗場呼びが割り当てられた号機の乗車率がオーバーバランス以上であって、運転時に電力を発生させる回生運転となる場合に、上記建物に定められた避難階を目的階として設定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの救出運転システム。
  4. 上記目的階設定手段は、上記乗場呼びが割り当てられた号機の乗車率がオーバーバランス未満であって、運転時に電力を要する力行運転となる場合に、上記バッテリの残量と予め定められた安全マージン上の標準値との関係式から到達可能階を求め、その到達可能階を目的階として設定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの救出運転システム。
  5. 上記乗場呼びが割り当てられた号機の乗車率がオーバーバランス以上であって、運転時に電力を発生させる回生運転となる場合に、上記各号機の中で上記乗場呼びが割り当てられていない未割当号機のうち、回生運転にて上記バッテリの電力を増加可能な号機の有無を調べ、該当する号機があれば、その号機を強制的に回生運転させる強制回生運転手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータの救出運転システム。
  6. 上記救出運転手段によって当該号機が上記目的階に向けて運転されるときに、乗客にその行先を通知する通知手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータの救出運転システム。
  7. 上記建物内で火災が発生したことを検出する火災検出手段を備え、
    上記運転モード切換え手段は、上記火災検出手段によって火災発生が検出され、かつ、停電状態となったときに上記各号機で共通のバッテリを用いたバッテリ運転モードに切り換えることを特徴とする請求項1記載のエレベータの救出運転システム。
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