JP2011061919A - 防火構造体、防火構造体の施工方法および防火構造体へのケーブルの追加方法 - Google Patents

防火構造体、防火構造体の施工方法および防火構造体へのケーブルの追加方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 揺れや振動等を生じる船舶などにとくに適し、脱落等の恐れがなく、施工性に優れ、ケーブルの追加等が容易であるとともに、ケーブルの設置スペースを小さくすることが可能な防火構造等を提供する。
【解決手段】 開口部5内には、複数のケーブル7が挿通される。開口部5のケーブル7が挿通されていない領域にはブロック9が設置される。ブロック9は、外周に被覆部材13が設けられた円柱状の部材である。開口部5内に設置されたケーブル7およびブロック9を埋めるように、開口部5内にはシール部材11が設けられる。シール部材11は、難燃性または不燃性の硬化型のシール部材である。シール部材11は、施工時には不定形であるが、ケーブル7およびブロック9と開口部5との隙間を埋めるように設置されたのち、乾燥、反応等により硬化して、セメントのように硬くなるものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、主に船舶等における防火壁や床等の防火区画部に対してケーブルが貫通する防火構造体等に関するものである。
建造物等の電気室等から各設備、各部屋に電線等のケーブルが配設される場合がある。この場合、通常ケーブルは可燃性のシースに覆われるため、ひとたび火災が発生すると、ケーブルを伝わって火災が建造物全体に広がり、甚大な被害をもたらすおそれがある。したがって、建造物は一定の距離等ごとに防火壁や床で区画され、ケーブルは防火壁等を貫通するように敷設される。
ケーブルは、防火壁等に設けられた開口部を貫通し、ケーブルと開口部との隙間は耐火材により埋め戻される。ケーブルとの隙間に設けられる耐火材としては、大きく分けて、硬化型および非硬化型のものがある。非硬化型のものは、一度ケーブルを埋め戻した後、さらにケーブルを追加することも容易である。しかし、建造物が船舶等である場合には、長時間の揺れや振動によって、耐火材の脱落の恐れがあり、このため、このような状況での耐火構造には、硬化型の耐火材が用いられる。
このような硬化型の耐火材を用いた耐火構造としては、例えば、防火壁に設けられた充填材受容具に、不燃性の固化シールを充填し、シールを固化させることでケーブルを固定する延焼防止構造がある(特許文献1)。
また、中央部にケーブル貫通孔を有する難燃ゴムからなる凹型のブロックを船舶の防火壁に設置した把持フレームに配置し、ケーブルを挟み込むようにしてブロック内にケーブルを配線する挿通装置がある(特許文献2)。
特開平11−308736公報 特表2005−513981号公報
しかし、特許文献1の延焼防止構造では、防火壁を貫通するケーブルの交換や追加に対して、固化したシール材を破壊して取り除く必要がある。したがって、工数を要し、シール材の破壊および再充填の際に既設ケーブルを傷める恐れがあり、また、シールの破壊等に時間を要するため、施工中の火災の発生に対して、火災が延焼する恐れがある。
また、特許文献2に記載の挿通装置は、ゴム等からなる凹ブロックを用いるため、再通線時には、これをばらして再組み立てを行えばよいが、多種多様なケーブルの外径に対応するためには、ゴムブロックの内壁を細かく剥ぎとる必要があり作業性が悪い。
また、把持フレームを緩めて作業を行う必要があるため、全体のケーブルに対して再度締め付けを行う必要があり、さらに、フレームによりケーブルをブロックで固定するため、一つのブロックに対しては1本のケーブルのみしか通線させることができず、ケーブルの通線スペースが必要となるという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、揺れや振動等を生じる船舶などに特に適し、脱落等の恐れがなく、施工性に優れ、ケーブルの追加等が容易であるとともに、ケーブルの設置スペースを小さくすることが可能な防火構造等を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、第1の発明は、区画部に設けられた開口部と、前記開口部を貫通するように設けられるケーブルと、前記開口部に設けられる柱状のブロック部材と、前記ケーブルおよび前記ブロック部材と、前記開口部との隙間を埋めるように設けられ、難燃性または不燃性である硬化型のシール部材と、を具備し、前記ブロック部材の、少なくとも前記シール部材との接触面には、ブロック部材本体の外周を被覆する被覆部材が設けられ、前記シール部材の硬化後、前記シール部材から前記ブロック部材を抜き取ることが可能であることを特徴とする防火構造体である。
前記ブロック部材は、前記開口部の両端面近傍にそれぞれ設けられ、前記ブロック部材で挟まれる部位には、耐火介在物が充填されてもよい。
前記被覆部材は、熱膨張シートであってもよく、または、前記被覆部材は、樹脂フィルムを前記ブロック部材にシュリンクパックまたは接着により設けられてもよい。
前記シール部材は、ケイ酸アルカリ水溶液に無機充填材を混練して乾燥硬化させるか、または、ケイ酸アルカリ水溶液をモノマー源としたアルミニウムまたはカルシウム等の金属イオンとの反応重合体のいずれかであることが望ましい。この場合、前記無機充填材は、水和金属化合物、クレー、タルク、ゼオライト、炭酸カルシウム、カオリナイトまたはそれを熱処理した焼成カオリン、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、微粉炭燃焼ボイラー灰または加圧型流動床灰からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記シール部材はさらに、熱膨張材として、熱膨張黒鉛、パーライト、ひる石およびほう砂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
前記ブロック部材は、側面の少なくとも一部にテーパを有する略錐台形状であってもよい。前記ブロック部材の端面には、前記ブロック部材の軸方向に垂直な溝部が形成されてもよい。
第1の発明によれば、シール部材が硬化型であるため、振動や揺れにより脱落することがない。また、ブロック部材の外周にシール部材との密着性等を低減させるための被覆部材が設けられるため、硬化後のシール部材から容易にブロック部材を抜き取ることができる。このため、当該ブロック部材が設けられた状態では、防火壁や床などの区画部を埋めて火災の延焼を防ぐことができるとともに、ケーブルの挿通孔を容易に形成することができるため、容易にケーブルの追加を行うことができる。また、この際、他のケーブルを傷める恐れがなく、さらに他のケーブルはシール部材で耐火性を確保した状態で施工を行うことができる。
被覆部材として熱膨張部材を用いれば、火災時に確実にブロック部材とシール部材との隙間を埋めて、火災の延焼を防ぐことができる。また、被覆部材として樹脂フィルムをシュリンクパックまたは接着して設ければ、シール部材との密着性が低くなり、ブロック部材の抜き取りが容易となる。
シール部材としてケイ酸アルカリ水溶液に無機充填材を混練して乾燥硬化させれば、容易にシール部材を硬化させることができ、また、ケイ酸アルカリ水溶液をモノマー源として無機充填材中の金属イオンの溶出により反応硬化させた重合体を用いれば、反応により硬化するため、硬化が早く、また、耐水性にも優れる。
また、前記無機充填材として水和金属化合物、クレー、タルク、ゼオライト、炭酸塩、カオリナイトまたはそれを熱処理した焼成カオリン、水酸化アルミニウム、金属酸化物、微粉炭燃焼ボイラー灰、加圧型流動床灰、活性白土、ベントナイト、ケイ酸カルシウム、結晶性ケイ酸カルシウム水和物、けい砂、珪藻土およびゼヒオライトの少なくとも1種を含むシール部材等を用いることで、施工性や形状保持性を調整可能である。また、シール部材にさらに熱膨張材として、熱膨張黒鉛、パーライト、ひる石およびほう砂等を用いれば、熱によりシール部材が膨張し、ケーブルとシール部材との隙間が形成されることを防ぐことができる。
また、ブロック部材を略錐台形状とすれば、より容易にシール部材からブロック部材を抜き取ることができるとともに、床に設置するような場合には、ブロック部材の脱落を防止することができる。
また、ブロック部材の端面に溝部を形成することで、例えばタガネやマイナスドライバー等で硬化したシール部材に埋設されたブロック部材を回転させることができる。このため、ブロック部材がシール部材から剥離し、容易にブロック部材を抜き取ることができる。
第2の発明は、区画部に形成された開口部にケーブルを通す工程と、前記開口部の前記ケーブル以外の部位に柱状のブロック部材を設けるとともに、前記ケーブルおよび前記ブロック部材と、前記開口部との隙間を埋めるように難燃性または不燃性である硬化型のシール部材を設ける工程と、を具備し、前記ブロック部材の外周部には被覆部材が設けられることを特徴とする防火構造体の施工方法である。
第2の発明によれば、シール部材が硬化型であるため、振動や揺れにより脱落することがなく、また、ブロック部材の外周にシール部材との密着性等を低減させるための被覆部材が設けられるため、ケーブルの追加等が容易な防火構造体の施工方法を得ることができる。
第3の発明は、区画部に設けられた開口部と、前記開口部を貫通するように設けられるケーブルと、前記開口部に設けられる柱状のブロック部材と、前記ケーブルおよび前記ブロック部材と、前記開口部との隙間を埋めるように設けられ、難燃性または不燃性である硬化型のシール部材と、前記ブロック部材の外周部に設けられる被覆部材とを有する防火構造体に対し、前記ブロック部材を前記シール部材より抜き取る工程と、抜き取られた前記ブロック部材により形成された貫通孔に、追加ケーブルと通線する工程と、前記貫通孔と追加ケーブルとの隙間を難燃性のシール部材で埋め戻す工程と、を具備することを特徴とする防火構造体へのケーブルの追加方法である。
第3の発明によれば、防火構造体に容易にケーブルの追加を行うことができる。また、形成された挿通孔には複数のケーブルを敷設することができるため、ケーブルの設置効率がよい。
本発明によれば、揺れや振動等を生じる船舶などにとくに適し、脱落等の恐れがなく、施工性に優れ、ケーブルの追加等が容易であるとともに、ケーブルの設置スペースを小さくすることが可能な防火構造等を提供することができる。
防火構造体1を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A線断面図。 図1(b)のB−B線断面図であり、(a)は防火構造体1を示す図、(b)は防火構造体1aを示す図。 ブロック9を示す斜視図。 防火構造体1を施工する工程を示す図で、(a)は図2(a)に相当する図、(b)は図1(b)に相当する図。 防火構造体1を施工する工程を示す図で、(a)は図2(a)に相当する図、(b)、(c)は図1(b)に相当する図。 防火構造体1を施工する工程を示す、図2(a)に相当する図。 防火構造体1を施工する工程を示す図で、(a)は図2(a)に相当する図、(b)、(c)は図1(b)に相当する図。 他のブロック部材を示す図で、(a)はブロック20を示す図、(b)はブロック20を用いた耐火構造25を示す図。 他のブロック部材を示す図で、(a)はブロック30を示す図、(b)はブロック40を示す図、(c)はブロック50を示す図。 耐火構造50を示す図。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明にかかる防火構造体1を示す図であり、図1(a)は、防火構造体1の斜視図、図1(b)は図1(a)のA―A線断面図である。また、図2(a)は、図1(b)のB−B線断面図である。
防火構造体1は、主に、部屋等を区画する区画部である防火壁3と、防火壁3に形成された開口部5と、開口部5に設置された複数のケーブル7およびブロック9と、開口部5内面とケーブル7およびブロック9との隙間を塞ぐように設けられたシール部材11等から構成される。なお、以下の例では、防火構造体1として防火壁3について示すが、鉛直方向に区画する床(天井)等に設けられてもよい。
防火壁3は、船舶の場合には鋼板等で形成される。開口部5は、鋼板を筒状(図に示す例では略矩形断面の筒状)に形成し、防火壁3に設けられた貫通孔に設置される。開口部5の周囲は防火壁3に例えば溶接により接合される。
開口部5内には、複数のケーブル7が挿通される。開口部5の断面サイズは、当初必要な全ケーブル7の挿通面積に対して大きめに設定される。すなわち、開口部5にケーブル7を順に挿通した状態で、開口部5内にはまだ空間が存在する。
開口部5のケーブル7が挿通されていない領域にはブロック部材としてのブロック9が設置される。ブロック9は、外周に被覆部材13が設けられた、例えば10mmから100mm程度の外径を有する円柱状の部材である。ブロック9の端面には、ブロック9の軸方向に対して垂直な方向に溝15が形成される。なお、ブロック9の詳細については後述する。また、ブロック9を複数設置する場合には、それぞれ異なる外径のブロック9を設置することもできる。
開口部5内に設置されたケーブル7およびブロック9を埋めるように、開口部5内にはシール部材11が設けられる。シール部材11は、難燃性または不燃性の硬化型のシール部材である。シール部材11は、施工時には不定形であるが、ケーブル7およびブロック9と開口部5との隙間を埋めるように設置されたのち、乾燥、反応等により硬化して、セメントのように硬くなるものである。
シール部材11としては、例えば、Ca系バインダーを用いたポルトランドセメントが使用できるが、より好適には、バインダーとしての珪酸アルカリ水溶液(たとえば水ガラス)にフィラーとしての無機充填材を混練りして乾燥硬化した物が使用できる。この場合、フィラーとしては水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムのような水和金属化合物を配合して難燃性および吸熱性を付与することができる。また、クレー、タルク、ゼオライト、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、カオリナイトまたはそれを熱処理した焼成カオリン、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムや酸化チタンなどの金属酸化物、微粉炭燃焼ボイラー灰、加圧型流動床灰、活性白土、ベントナイト、ケイ酸カルシウム及び結晶性ケイ酸カルシウム水和物(ゾノライトまたはトバモライト)、けい砂、珪藻土またはゼヒオライトなどの充填材を添加して、加工性、形状保持性等を調整することもできる。なお、クレーとは、粘土層から採れる、シリカ、マグネシウム、鉄分、カリウム、ナトリウムを主成分とする粘土である。また、タルク(talc)とは、滑石という鉱石を微粉砕した無機粉末である。化学名称は、含水ケイ酸マグネシウム(3MgO・4SiO・HO)であり、工業用の原料や無機充填剤として塗料等に広く使用されている物質である。また、ゼオライトとはアルミナとシリカを主成分とする結晶中に細孔をもつアルミノケイ酸塩の総称であり、無機充填剤として使用されている。
シール部材11には、更に、前述した成分の他に、膨張黒鉛やパーライト、ひる石、ほう砂などを適量配合して、熱膨張性を付与してもよく、老化防止剤、繊維チップ、顔料、あるいは軽量化のための発泡スチレンビーズ、ポリプロピレンビーズ、ポリウレタンビーズなどを適量配合してもよい。シール部材11に熱膨張性が付与されると、火災等により温度が上昇すると、シール部材11が膨張し、ケーブル7やブロック9等との隙間を埋めることができる。
また、シール部材11としては、ケイ酸アルカリ水溶液をモノマー源としてカオリナイト(kaolinite、カオリン石)AlSi(OH)に代表される活性フィラーを用いて反応硬化させたジオポリマー重合体などを用いることもできる。ジオポリマーとは、ケイ酸アルカリ水溶液(主に水ガラスなど)にフィラーと呼ばれる粉末を加えることで、無機重合させ、得られる硬化体のことである。その一般的な反応機構は、化1の反応式に示すように、フィラーから溶出した金属イオンが、ケイ酸アルカリ水溶液を含む水に接することで、珪酸錯体を架橋してポリマー化するものである。なお、このような金属イオンが溶出しやすいフィラーを活性フィラーという。
Figure 2011061919
この場合、活性フィラーとしては、ジオポリマー反応を進めるものであればよく、徐々にアルミニウムイオンを溶出するカオリン系フィラー(例えば脱水カオリン、すなわちメタカオリンなど)や、水酸化アルミニウム、カルシウムイオンを溶出する微粉炭燃焼ボイラー灰や加圧型流動床灰などが使用できる。これらは通常は粉体であるため、他の無機充填材フィラーと同じように混練りして使用し、加工性、形状保持性等を調整することもできる。ジオポリマー反応を利用することで、加熱養生によって硬化を進められるため成型品として工場において製造し易く、また場合によっては施工現場においても養生硬化を促進させることができ作業性に優れる。さらにポリマー化したものは硬化後のシール部材の耐水性に優れるため、そうではないタルク等の不活性フィラーを無機充填材として添加して乾燥硬化させた場合に比べ、特に洋上で用いられる船舶等には好適である。
なお、これらの活性フィラーのうち、発明者らにおいては特に、水酸化アルミの水和物を選択した場合、アルミニウムイオンを溶出することによるポリマー化反応が得られるほか、水和金属化合物としての難燃性および吸熱性を付与でき、かつ製造面、コスト面、混練り物の作業性、硬化時間等においても好適であった。
シール部材のその他の実施例としては、酢酸ビニル、アクリル共重合体などのエマルジョン系のバインダーに、同様にフィラーとしての無機充填材を混練りして乾燥硬化した物も、本発明の防火構造体ならびにその施工方法に使用できる。ただしこれらは、鋼板に錆を発生させる場合が多く、鋼板で防火壁ならびに開口部が形成される船舶の場合には不適である。しかしながら鋼板以外で形成される場合、例えば陸上の建築物の防火壁に本構造体を使用する場合には選択できる。
なお、ケーブル7に代えて、長尺の配管等を設けることもできる。また、図2(a)に示すように、ブロック9を開口部5と同じ長さとすることもできるが、図2(b)に示すように、ブロック9の長さを、シール部材11が充填される開口部5の長さよりも長くすることもできる。ブロック9の長さを開口部5(シール部材11設置範囲)よりも長くする(例えばシール部材11の充填長+10%程度)ことで、シール部材11からブロックがわずかに突出し、ブロック9の視認性に優れ、以後の抜き取り作業性がよい。
次に、ブロック9について詳細に説明する。図3はブロック9を示す斜視図である。ブロック9は円柱状の部材であり、外側面(シール部材11との接触面)には被覆部材13が設けられる。ブロック9の本体部は、難燃性または不燃性の材質であり、ある程度の強度(硬度)を有すればよい。ブロック9の本体部としては、前述したシール部材11に使用可能な材質を用いることができる。なお、ブロック9の本体部とシール部材11とは同一の材質であってもよく、別材質であってもよい。
ブロック9の端面には溝15が設けられる。溝15は、ブロック9の軸方向(図中左右方向)に対して垂直な方向に設けられる。溝15は、ブロック9をシール部材11から抜き取る際に、たがねやマイナスドライバーなどが挿入可能であれば良い。なお、溝15の形状は、図に示した形態に限られず、例えば十字に設けられてもよい。
被覆部材13は、シール部材11とブロック9の本体部との密着性や摩擦を低減できるものであればいずれのものでも使用できる。すなわち、セメント状のシール部材と一体化せずに分離可能なものであればよい。たとえば、ポリプロピレン等の樹脂フィルムを予め円柱状に成型した本体にシュリンクパックにより被覆して形成してもよい。この場合、例えば、ブロック9の本体部の側面のみではなく端面も含めた全面に被覆部材が形成されてもよい。また、樹脂フィルムを筒状に形成して円柱状の本体に接着したものでも良い。
また、被覆部材13として、熱膨張性シートを用いることもできる。熱膨張性シートは、火災時に数倍から数十倍に熱膨張するものであり、例えば膨張黒鉛を有機バインダーに混練してシート化されたものが使用できる。このような熱膨張性シートとしては、古河テクノマテリアル株式会社製の(商品名)「ダンシールーD」が使用できる。なお、この場合、柱状の本体に熱膨張性シートを巻き付けてもよく、また、筒状の被覆部材内部に不定形の難燃材または不燃材を充填後に硬化させて円柱状に成型してもよい。
被覆部材13として熱膨張性シートを用いることで、ブロック9と周囲のシール部材11との間にわずかに隙間が生じていたとしても、火災時には被覆部材13が膨張して隙間が埋まり、また、ブロック9がシール部材11に強く押し付けられるため、火災時におけるブロック9の脱落等が防止できる。
次に、防火構造体1の施工方法について説明する。図4〜図5は、防火構造体1の施工工程を示す図であり、図4(a)および図5(a)は、図2(a)に相当する図であり、図4(b)、図5(b)および図5(c)は図1(b)に相当する図である。
まず、図4に示すように、防火壁3に設けられた貫通孔に開口部3が接合される。開口部5は防火壁3を貫通する筒状部材である。開口部5の内部には、複数のケーブル7が挿通される。また、ケーブル7が配置されない領域には、必要に応じた外径を有するブロック9が必要個数設置される。図4(b)の例では、外径の異なるブロック9が4本設置された状態を示す。
次に、図5に示すように。ケーブル7が固定されるように、開口部5内のケーブル7が挿通された範囲にシール部材11が充填される。ケーブル7が配置されていない領域がブロック用空間17となる。なお、図5(b)に示すようにケーブル7をシール部材11で固定し、ブロック用空間7を形成後、ブロック9を配置してもよい。
さらに、図5(c)に示すように、ブロック用空間17におけるブロック9と開口部5との隙間を埋めるようにシール部材11を充填する。以上により、開口部5内面とケーブル7およびブロック9の外面との隙間がシール部材11で埋められる。シール部材11は、乾燥または反応により硬化し、完全に硬化した状態で防火構造体1が完成する。なお、シール部材11の充填を2回に分けず、図4(b)の状態から図5(c)の状態に一度に行ってもよい。
次に、防火構造体1に対して、ケーブルを追加する際の施工手順について説明する。図6、図7は、防火構造体1に対してケーブルを追加する工程を示す図であり、図1(b)、図2(a)に相当する図である。
まず、図6(a)に示すように、防火構造体1からブロック9を抜き取る。この際、ブロック9の端面をハンマ等で叩いて(図中矢印C方向)、ブロック9を抜き取ってもよく、または、溝15にたがねやマイナスドライバー等を挿入して、ブロック9を回転させて、ブロック9とシール部材11との密着を剥離した後に、後方(図中矢印C方向)に押して、ブロック9をシール部材11より抜き取ってもよい。ブロック9が抜き取られると、図6(b)に示すように、シール部材11内には貫通孔19が形成される。
次に、図7(a)に示すように、貫通孔19に必要な追加ケーブル7aを挿通させる。図7(b)に示すように、本例では、貫通孔19に3本のケーブル7aを挿通した状態を示す。
次に、図7(c)に示す様に、貫通孔19内面とケーブル7a外面との隙間を埋めるように、貫通孔19にシール部材11を充填する。シール部材11が硬化すれば、防火構造1へのケーブル7aの追加が完了する。なお、さらに多数のケーブルを通過する場合には、他のブロック9を抜き取れば良い。また、ブロック9の大きさをある程度以上にしておけば、太いケーブルの追加も可能であり、また、さらに多数のケーブルを一つの貫通孔19(ブロック9)に対して挿通することもできる。
以上説明したように、本発明にかかる防火構造体1によれば、シール部材11が硬化型であるため、揺れや振動が大きな船舶等に対しても好適な防火構造を得ることができる。また、シール部材11で開口部5が完全に塞がれるため、火災時に延焼を防止することができる。
また、あらかじめ柱状のブロック9が設置されるため、ケーブルを追加する場合にはブロック9をシール部材11より抜き取ればよい。このため、シール部材11を破壊する必要がなく、作業性に優れ、既設のケーブルを損傷することもない。特に、ブロック9には被覆部材13が設けられるため、ブロック9の抜き取り作業が容易である。
また、ブロック9の端面には、シール部材11に固定されたブロック9を回転させるための溝15が形成されるため、ブロック9を回転させることでブロック9とシール部材11との密着が剥離して、容易にブロック9を抜き取ることができる。
また、シール部材11が熱膨張性を有すれば、シール部材11とケーブル7との間に隙間が生じている場合であっても、火災時にシール部材11が膨張して隙間を完全に埋めることができる。また、ブロック9の被覆部材13が熱膨張性を有すれば、ブロック9とシール部材11との間に隙間が生じている場合であっても、火災時に被覆部材13が膨張して隙間を完全に埋めることができる。また、被覆部材13が膨張することで、ブロック9の脱落が防止できる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
たとえば、前述の実施形態においては、円柱状のブロック9を用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図8(a)に示すように、側面の一部にテーパ21を有するブロック20を用いることもできる。ブロック20は、一方の側から他方の側に軸方向に沿って断面積が変化する略錐台形状である。ここで、略円錐台形状とは、側面全体がテーパ21であってもよいが、図8(a)に示すように、側面の一部がテーパ21であり、大径側の側面の一部にブロックの軸方向に平行な平面である平坦部27が形成されてもよい。平坦部27が設けられれば、ブロック20の設置の際に、ブロック20の軸方向が分かりやすく、また、抜け止めの効果も有する。
ブロック20を用いれば、小径面方向からハンマ等で叩くかまたは押すことで、より簡易にブロック20をシール部材11より抜き取ることができる。また、図8(b)に示すように、鉛直方向に部屋等を区画する区画部である防火床23にブロック20の小径面方向を下方に向けて床等の区画部にブロック20を設置すれば、重力によりブロック20が下方に脱落することがない。
また、図9(a)に示すように、側面の軸方向に沿って溝31が形成されるブロック30を用いても良い。ブロック30によれば、溝31がシール部材11との抵抗となり、ブロックの脱落の恐れがない。なお、溝31は、一本でも良くまたは複数本であってもよい。また、溝31は、ブロック30の軸方向全長にわたって形成されなくてもよく、軸方向の一部に形成されてもよい。また、図9(b)に示すように、被覆部材13の一部に孔41が形成されたブロック40を用いてもよい。なお、孔41の配置及び個数は図9(b)の例に限られず、孔1を一つとしてもよく、または、複数個の孔41を軸方向や周方向に並列させてもよい。ブロック40に用いられる被覆部材13の一部は貫通孔である孔41が設けられるため、ブロック40をシール部材11に埋設した際、ブロック40の本体部とシール部材11とが連通する。このため、ブロック40のシール部材11からの脱落を防止することができる。また、図9(c)に示すような角柱状のブロック50を用いてもよい。角柱状のブロック50を用いてもブロック9と同様の効果を得ることができる。なお、さらに角錐台形状であってもよく、断面形状やテーパの有無によらず柱状のブロックであれば形状は問わない。
同様にたとえば、前述の実施形態においては、柱状のブロック部材と硬化型のシール部材のみで開口部内が充填される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図10に示すように、耐火時間をさらに長くするためにケーブルに対する耐火充填部材の処理長を長くする場合や、開口部に奥行きがあってシール部材単体では充填が困難であったりした場合に、開口部内の中間部分に無機繊維(たとえば、ガラス繊維やセラミック繊維)などの耐火性の介在物53(餡子)を入れる場合においても、その両端(開口部の両端面近傍)のシール部分において本発明のブロック51を用いることもできる。
また、本発明は主に船舶の用途に適しているが、同様のニーズにおいて陸上の建築物にも使用できるものである。
1、1a、25、50………防火構造体
3………防火壁
5………開口部
7………ケーブル
9、20、30、40、50、51………ブロック
11………シール部材
13………被覆部材
15………溝
17………ブロック用空間
19………管通孔
21………テーパ
23………防火床
31………溝
41………孔
53………介在物

Claims (10)

  1. 区画部に設けられた開口部と、
    前記開口部を貫通するように設けられるケーブルと、
    前記開口部に設けられる柱状のブロック部材と、
    前記ケーブルおよび前記ブロック部材と、前記開口部との隙間を埋めるように設けられ、難燃性または不燃性である硬化型のシール部材と、
    を具備し、
    前記ブロック部材の、少なくとも前記シール部材との接触面には、ブロック部材本体の外周を被覆する被覆部材が設けられ、
    前記シール部材の硬化後、前記シール部材から前記ブロック部材を抜き取ることが可能であることを特徴とする防火構造体。
  2. 前記ブロック部材は、前記開口部の両端面近傍にそれぞれ設けられ、前記ブロック部材で挟まれる部位には、耐火介在物が充填されることを特徴とする請求項1記載の防火構造体。
  3. 前記被覆部材は、熱膨張シートであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防火構造体。
  4. 前記被覆部材は、樹脂フィルムを前記ブロック部材にシュリンクパックまたは接着により設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防火構造体。
  5. 前記シール部材は、ケイ酸アルカリ水溶液に無機充填材を混練して乾燥硬化させるか、または、ケイ酸アルカリ水溶液をモノマー源とした金属イオンとの反応重合体の硬化物のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の防火構造体。
  6. 前記無機充填材は、水和金属化合物、クレー、タルク、ゼオライト、炭酸塩、カオリナイトまたはそれを熱処理した焼成カオリン、水酸化アルミニウム、金属酸化物、微粉炭燃焼ボイラー灰、加圧型流動床灰、活性白土、ベントナイト、ケイ酸カルシウム、結晶性ケイ酸カルシウム水和物、けい砂、珪藻土およびゼヒオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
    前記シール部材はさらに、
    熱膨張材として、熱膨張黒鉛、パーライト、ひる石およびほう砂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5記載の防火構造体。
  7. 前記ブロック部材は、側面の少なくとも一部にテーパを有する略錐台形状であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の防火構造体。
  8. 前記ブロック部材の端面には、前記ブロック部材の軸方向に垂直な溝部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の防火構造体。
  9. 区画部に形成された開口部にケーブルを通す工程と、
    前記開口部の前記ケーブル以外の部位に柱状のブロック部材を設けるとともに、前記ケーブルおよび前記ブロック部材と、前記開口部との隙間を埋めるように難燃性または不燃性である硬化型のシール部材を設ける工程と、
    を具備し、前記ブロック部材の外周部には被覆部材が設けられることを特徴とする防火構造体の施工方法。
  10. 区画部に設けられた開口部と、前記開口部を貫通するように設けられるケーブルと、前記開口部に設けられる柱状のブロック部材と、前記ケーブルおよび前記ブロック部材と、前記開口部との隙間を埋めるように設けられ、難燃性または不燃性である硬化型のシール部材と、前記ブロック部材の外周部に設けられる被覆部材とを有する防火構造体に対し、
    前記ブロック部材を前記シール部材より抜き取る工程と、
    抜き取られた前記ブロック部材により形成された貫通孔に、追加ケーブルと通線する工程と、
    前記貫通孔と追加ケーブルとの隙間を難燃性のシール部材で埋め戻す工程と、
    を具備することを特徴とする防火構造体へのケーブルの追加方法。
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