JP2013060543A - 硬化型耐火性パテ組成物、そのジオポリマー反応の遅延方法、その長期保管性向上方法 - Google Patents

硬化型耐火性パテ組成物、そのジオポリマー反応の遅延方法、その長期保管性向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水ガラスと活性フィラーを用い、硬化性・耐火性を有しつつ、ジオポリマー反応を遅らせて、長期的に保管できるパテ組成物を提供する。
【解決手段】バインダーとして水ガラス25〜65質量%と、活性フィラーとして金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいは炭酸カルシウムの1種以上を10〜45質量%と、不活性フィラーを10〜45質量%とを、合計で100質量%になるように混合してなるベースパテ組成物100質量部に対して、少なくとも、平均粒径が10〜300nm、全固形分が30〜60質量%の合成ゴムラテックスを2〜10質量部添加してなることを特徴とする硬化型耐火性パテ組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、主に船舶等における防火壁や床などに設けられたケーブル貫通用の開口部に充填するために用いられる硬化型耐火性パテ組成物に関するものである。
電線やケーブルは、建造物(建物や船舶など)の電気室などから各設備・各部屋に多数敷設されるが、ケーブル自体は可燃性のシースに覆われているため、ひとたび火災が起こると、その火災はケーブルを伝わって建造物全体に広がり、甚大な被害をもたらす恐れがある。この対策として、建造物は一定の距離、面積毎に防火壁や床で区画される。この防火壁・床はケーブル貫通用の開口を有しているが、この開口部分では、開口内壁と貫通ケーブルとの間の空隙に耐火材を埋めもどすなどの手段により、一定の耐火性能を有する防火処理を施し、これによりケーブルの延焼防止を図っている。また、建物において壁・床の目地、隙間に対しても燃焼防止処置が求められている。
これらの延焼防止処置の部材として、耐火性もしくは不燃性を有するパテが使用される。ここで用いられるパテは、開口内へ充填後も乾燥・硬化しない非硬化性パテと、充填後に時間経過とともに硬化する硬化性パテがある。特に後者は船舶などの振動のある開口部において、すき間をふさぐと同時に硬化することから、船舶の分野では必要とされている。この硬化性パテとしては、主としてバインダーとしてケイ酸のアルカリ性溶液である水ガラスとフィラーとして水酸化アルミニウム、タルク、クレーなどからなる無機充填材を基本組成としているものが使用されている。なお、バインダーで使用される水ガラスは、大気中の二酸化炭素との反応および水分の減少により、ガラス状に硬化する。これは、水ガラスのケイ酸イオン同士の重合が進み、シロキサン結合によるネットワークが形成されることによる硬化である。また、硬化した水ガラスは、熱により膨張する性質があり、耐火材として広く使用されている。一方、無機充填材に使用される水酸化アルミニウムは、熱により水を放出して酸化アルミニウムになるため吸熱効果が得られ、また、タルクやクレーは不燃性であることから、耐火性を有しており、耐火性製品の原料として広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−061919号公報
しかしながら、水ガラスに無機充填材である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を添加すると、前述の硬化機構とは異なるジオポリマー反応という反応硬化により、梱包後の保管中に未開封状態でも徐々に硬化が進む。そのため、1年以上の長期的な保管が困難になっているという問題点があった。
なお、ジオポリマー反応とは、水ガラスなどのケイ酸アルカリ水溶液に活性フィラー粉末を加えることで無機重合させ、硬化体を得る反応である。その一般的な反応機構は、以下の反応式のようにフィラーから溶出した金属イオン(Mm+)がケイ酸イオンに接することで、ケイ酸錯体を架橋して室温でポリマー化するものである。なお、このような金属イオンが溶出しやすい活性フィラーとしては、カオリン系フィラー(例えば脱水カオリン、すなわちメタカオリンなど)や、水酸化アルミニウム、カルシウムイオンを溶出する微粉炭燃焼ボイラー灰や加圧型流動床灰が挙げられる。
Figure 2013060543
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、水ガラスと活性フィラーを用い、硬化性・耐火性を有しつつ、ジオポリマー反応を遅らせて、長期的に保管できるパテ組成物を提供することである。
前述した目的を達成するために、以下の特徴を持つ発明を提供する。
(1)バインダーとして水ガラス25〜65質量%と、活性フィラーとしての金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいは炭酸カルシウムの1種以上を10〜45質量%と、不活性フィラーを10〜45質量%とを、合計で100質量%になるように混合してなるベースパテ組成物100質量部に対して、少なくとも、平均粒径が10〜300nmで、全固形分が30〜60質量%の合成ゴムラテックスを2〜10質量部添加してなることを特徴とする硬化型耐火性パテ組成物。
(2)バインダーとして水ガラス25〜65質量%と、活性フィラーとしての金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいは炭酸カルシウムの1種以上を10〜45質量%と、不活性フィラーを10〜45質量%とを、合計で100質量%になるように混合してなるベースパテ組成物100質量部に対して、少なくとも、平均粒径が10〜300nmの合成ゴムラテックスを前記合成ゴムラテックスの全固形分が0.6〜6質量部となるように添加してなることを特徴とする硬化型耐火性パテ組成物。
(3)前記合成ゴムラテックスは、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム(MBR)、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴム(VP)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)のいずれか1種以上を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の硬化型耐火性パテ組成物。
(4)前記ベースパテ組成物100質量部に対して、風解性添加物として硫酸ナトリウムおよび/またはホウ酸塩鉱物を、5〜20質量部添加することを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の硬化型耐火性パテ組成物。
(5)前記不活性フィラーが、クレー、タルク、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、ケイ砂、珪藻土のうちの少なくとも1つであることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の硬化型耐火性パテ組成物。
(6)有機系・無機系の繊維および/または、発泡ビーズを、前記ベースパテ組成物100質量部に対して、各0.1〜10質量部添加し、前記有機系・無機系の繊維が、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、セラミック繊維、セルロースファイバーのいずれか1種以上であり、前記発泡ビーズが、ポリスチレン発泡ビーズ、ポリエチレン発泡ビーズ、ポリプロピレン発泡ビーズ、ガラスビーズ、シラスバルーンのいずれか1種以上であることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の硬化型耐火性パテ組成物。
(7)バインダーとして水ガラスと、活性フィラーとしての金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいは炭酸カルシウムの1種以上と、不活性フィラーとしてクレー、タルク、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、ケイ砂、珪藻土のうちの少なくとも1つ以上含む硬化型耐火性パテ組成物に、平均粒径が10〜300nmの合成ゴムラテックスを添加することを特徴とする硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の遅延方法。
(8)前記合成ゴムラテックスがブタジエン・スチレン共重合物であることを特徴とする(7)に記載の硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の遅延方法。
(9)さらに、風解性添加物として、硫酸ナトリウムおよび/またはホウ酸塩鉱物を加えることを特徴とする(7)または(8)に記載の硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の遅延方法。
(10)(7)から(9)のいずれかに記載の硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の遅延方法を用いた硬化型耐火性パテ組成物の長期保管性向上方法。
本発明により、水ガラスと活性フィラーを用い、硬化性・耐火性を有しつつ、有機樹脂を含むラテックスを加えて、ジオポリマー反応を遅らせて長期的に保管できるパテ組成物を提供することができる。
[第1の実施の形態]
(第1の実施の形態にかかるパテ組成物の構成)
第1の実施の形態に係るパテ組成物は、バインダーを25〜65質量%と、活性フィラーを10〜45質量%と、不活性フィラーを10〜45質量%とを合計で100質量%になるように混合してなるベースパテ組成物に対して、合成ゴムラテックスを添加してなることを特徴とする。
(ベースパテ組成物の構成)
バインダーとしては、水ガラス(ケイ酸アルカリ水溶液)が用いられる。水ガラスは、貫通部などへ施工した後、時間経過とともに硬化するため好ましい。なお、アクリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体なども硬化型接着材などで広く使用されているが、これらを水ガラスの代わりにバインダーとして用いた場合、鋼製材への錆、乾燥による肉やせ(収縮)が知られており、特に鋼製材で構成される船舶貫通部への耐火処置材としては適切ではない。水ガラスの濃度は、30〜70質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。例えばJIS K1408の1号(NaOが17〜19質量%、SiOが35〜38質量%)または2号(NaOが14〜15質量%、SiOが34〜36質量%)に規定されるものが使用できる。
活性フィラーに用いられる金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムが用いられる。金属水酸化物由来の金属イオンにより、水ガラスのジオポリマー反応が進行し、硬化する。また、硬化することで、耐水性を向上させることができる。また、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物は吸熱性を有し、フィラーとして使用することで耐火性能の向上が図れる。なお、ジオポリマー反応を進行させるための活性フィラーとしては、前記のアルミニウムやマグネシウム水酸化物の他に例えばカルシウムの炭酸塩であっても良く、金属水酸化物による吸熱性ヘの寄与が不要であるならば炭酸カルシウムなども使用することができる。活性フィラーとして、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物と炭酸カルシウムとを混合して用いても良い。
不活性フィラーとしては、クレー、タルク、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、ケイ砂、珪藻土のうちの少なくとも1つが用いられる。なお、フィラーとして活性フィラーのみでもパテとして製造は可能である。しかしながら、前述のジオポリマー反応により、未開封状態でも硬化が進んでしまう。そこで、クレー、タルク、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、およびケイ砂、珪藻土などの不活性フィラーと呼ばれる水ガラスと反応しない無機物を同時に用いることで硬化を遅延させる。
クレーとは、粘土層から採れるシリカ、マグネシウム、鉄分、カリウム、ナトリウムを主成分とする粘土である。また、タルク(talc)とは、滑石という鉱石を微粉砕した無機粉末である。化学名称は、含水ケイ酸マグネシウム(3MgO・4SiO・HO)であり、工業用の原料や無機充填材として塗料などに広く使用されている物質である。なお、バインダーである水ガラスとタルク、クレーなどの不活性フィラーのみでもパテの製造は可能である。しかし、水ガラスと活性フィラーからなるジオポリマー反応によりパテの耐水性が得られることが分かっており、その耐水性を得るためバインダーとしての水ガラス、活性フィラー、不活性フィラーを同時に用いる。
ベースパテ組成物としては、バインダーを25〜65質量%と、活性フィラーを10〜45質量%と、不活性フィラーを10〜45質量%との割合で、バインダーと活性フィラーと不活性フィラーとを合計して100質量%になるように混合したものであることが好ましい。
バインダーが25質量%未満の場合はパテが硬くなりすぎ、65質量%を超える場合は軟らかすぎ、形状の維持が困難となる。
また、活性フィラーは10質量%では著しく耐水性が低下し、45質量%を超えると保管中のジオポリマー反応による硬化を防ぐことができず、長期の保管が難しい。
不活性フィラーは10質量%未満では保管中のジオポリマー反応による硬化を防ぐことができず、45質量%を超えた場合は、耐水性が著しく低下する。
(ラテックス)
ラテックスは、樹脂(ゴムを含む)の微粒子が水中に安定して分散した水分散体(エマルション)であり、全固形分が30〜60質量%、好ましくは30〜50質量%である。全固形分は、乾燥後の固形分の重量を乾燥前のラテックスの重量で割るなどのJIS K 6387−2に記載の方法で測定できる。ブタジエン・スチレン共重合物(スチレン-ブタジエンゴム(SBR))を始めとして、ブタジエンゴム(BR)、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム(MBR)、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴム(VP)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)の合成ゴムラテックスを使用できる。
また、ラテックスに分散する樹脂の平均粒径は、10〜300nmであることが好ましく、50〜150nmであることがより好ましい。平均粒径10nmより小さい樹脂が分散したラテックスは製造が困難であり、平均粒径300nmを超える樹脂の粒子は、パテ組成物中での分散が不均一となり、長期保管性に問題があった。平均粒径は、樹脂の粒子の光学顕微鏡像または電子顕微鏡像を用いて測定できる。
合成ゴムラテックスを使用することで、ジオポリマー反応による硬化を防ぐことができる。
合成ゴムラテックスは、ベースパテ組成物100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下添加されることが好ましい。2質量部未満であれば、ラテックスが不足し、十分な分散が得られず、保管中のジオポリマー反応による硬化を防ぐことができず、10質量部を超えると、パテ組成物がゴム状となり、固くて作業性が悪くなる。なお、ラテックスの1質量部とは、固形分換算値でなく、ラテックス(水分散体)の状態での質量である。ラテックスの固形分は、ベースパテ組成物100質量部に対して、0.6質量部以上6質量部以下添加されることが好ましいこととなる。
(その他の添加物)
通常、パテを作製する際は、適宜、有機系・無機系の繊維や、有機樹脂系の発泡ビーズなどのその他の添加物を添加する。パテのつながり性を良くするため有機系・無機系の繊維を添加する。また、パテの軽量化を目的とし、有機樹脂系の発泡ビーズを添加する。本発明におけるパテへも目的に応じて有機系・無機系の繊維、有機樹脂系の発泡ビーズを適量添加することが可能である。それぞれ、ベースパテ組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部程度添加することが可能である。有機系・無機系の繊維として、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、セラミック繊維、セルロースファイバーなどを用いることが好ましく、発泡ビーズとしては、ポリスチレン発泡ビーズ、ポリエチレン発泡ビーズ、ポリプロピレン発泡ビーズ、ガラスビーズ、シラスバルーンなどを用いることが好ましい。
(第1の実施の形態にかかるパテ組成物の製造方法)
第1の実施の形態にかかるパテ組成物は、バインダー、活性フィラー、不活性フィラー、合成ゴムラテックス、有機系・無機系の繊維、発泡ビーズなどを、オープンニーダーなどで混練することで得られる。パテ組成物を混練するための装置としては、他に、加圧ニーダーなどの一般的な混練機を用いることができる。
(第1の実施形態にかかるパテ組成物の効果)
第1の実施形態によれば、水ガラスと、活性フィラーを有するパテ組成物に、合成ゴムラテックスを加えたことで、梱包開封前の水ガラスのジオポリマー反応が遅延し、パテ組成物の長期保管が可能となる。
また、第1の実施形態によれば、アクリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などを含まず、バインダーとして水ガラスを用いるパテ組成物であるため、鋼製材への錆を生じず、船舶用パテ組成物として特に適している。
第1の実施形態によれば、バインダーとして水ガラスを用いているため、施工後は、空気中の二酸化炭素などによりケイ酸イオンの重合が進み、パテ組成物は硬化する。また、水ガラスと活性フィラーを含むため、施工後にジオポリマー反応も進み、パテ組成物は硬化する。パテ組成物が硬化するため、船舶などの振動のある開口部において、隙間が生じることを防ぐことができる。
第1の実施形態によれば、バインダーとして水ガラスを用い、さらに活性フィラーを有するため、施工後にジオポリマー反応が進み、パテ組成物が硬化するため、高い耐水性を獲得する。また、前述のように、合成ゴムラテックスを加えたことで、水ガラスのジオポリマー反応が遅延し、パテ組成物の長期保管が可能となる。
第1の実施形態によれば、発泡ビーズなどを加えることができるため、パテ組成物の軽量化が可能である。
[第2の実施形態]
(第2の実施の形態にかかるパテ組成物の構成)
第2の実施の形態に係るパテ組成物は、第1の実施形態に係るパテ組成物に、さらに風解性添加物を添加することを特徴とする。つまり、第2の実施の形態に係るパテ組成物は、バインダーを25〜65質量%と、活性フィラーを10〜45質量%と、不活性フィラーを10〜45質量%と、を混合してなるベースパテ組成物に対して、合成ゴムラテックスおよび、風解性添加物を添加することを特徴とする。
ベースパテ組成物の構成、バインダー、活性フィラー、不活性フィラー、合成ゴムラテックスについては、第1の実施形態と同様である。
風解性添加物は、硫酸ナトリウムおよび/またはホウ酸塩鉱物である。
硫酸ナトリウムは、結晶水を含むことが好ましく、より好ましくは硫酸ナトリウム・10水和物を用いることができる。ホウ酸塩鉱物としては、ホウ砂を用いることができる。ホウ砂は四ホウ酸二ナトリウム・十水和物であり、結晶水を含む。風解性添加物により、パテ内の水分を保ち、水ガラスのジオポリマー反応を遅延させることができる。
第2の実施の形態に係るパテ組成物は、ベースパテ組成物100質量部に対して、ラテックスを2〜10質量部、風解性添加物を5〜20質量部添加してなることが好ましい。
風解性添加物は、ベースパテ組成物100質量部に対して、5質量部を下回ると保管中のジオポリマー反応による硬化を防ぐことができず、20質量部を超えるとこれらの特性である風解性により、パテが水分を多く含みすぎ、パテとして使用する際に形状維持が困難となる。
(第2の実施の形態にかかるパテ組成物の製造方法)
第2の実施の形態にかかるパテ組成物は、バインダー、活性フィラー、不活性フィラー、合成ゴムラテックス、風解性添加物、有機系・無機系の繊維、発泡ビーズなどを、オープンニーダーなどの混練機で混練することで得られる。
(第2の実施の形態にかかるパテ組成物の効果)
第2の実施形態によれば、第1の実施形態におけるラテックスの硬化反応遅延効果に加えて、水ガラスと、活性フィラーを有するパテ組成物に、風解性添加物を加えたことで、パテ組成物の長期保管が可能となる。これは、風解性添加物の風解性によりパテ内の水分が保たれ、水ガラスのジオポリマー反応が遅延することによる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の遅延方法と、硬化型耐火性パテ組成物の長期保管性向上方法である。
バインダーとして水ガラスと、活性フィラーとしての金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいは炭酸カルシウムの1種以上と、不活性フィラーとしてクレー、タルク、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、ケイ砂、珪藻土のうちの少なくとも1つ以上含む硬化型耐火性パテ組成物(ベースパテ組成物)に、合成ゴムラテックスを添加することで、前記硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の進行を遅延させることができる。ベースパテ組成物中の各材料の配合割合は、第1の実施形態と同様である。
第1の実施形態と同様、合成ゴムラテックスは、ベースパテ組成物100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下添加されることが好ましい。なお、ラテックスの1質量部とは、固形分換算値ではなく、ラテックス(水分散体)の状態での質量である。ラテックスの固形分は、ベースパテ組成物100質量部に対して、0.6質量部以上6質量部以下添加されるが、好ましくは、0.6質量部以上5質量部以下、さらに好ましくは、0.8質量部以上4質量部以下が望ましい。ラテックスの好ましい全固形分の範囲や、粒径の範囲は、第1の実施形態と同様である。
さらに、硬化型耐火性パテ組成物(ベースパテ組成物)に、風解性添加物として、硫酸ナトリウムおよび/またはホウ酸塩鉱物を加えることで、前記硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の進行を、さらに遅延させることができる。
硫酸ナトリウムは、結晶水を含むことが好ましく、より好ましくは硫酸ナトリウム・10水和物を用いることができる。ホウ酸塩鉱物としては、ホウ砂を用いることができる。ホウ砂は四ホウ酸二ナトリウム・十水和物であり、結晶水を含む。水に金属イオンが溶出し、水が蒸発してジオポリマー反応が進むが、風解性添加物の風解性により、水が供給され、水ガラスのジオポリマー反応を遅延させることができる。
また、硬化型耐火性パテ組成物に対して、これらの硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の遅延方法を採用することで、硬化型耐火性パテ組成物の長期保管性を向上させることができる。これは、従来の硬化型耐火性パテ組成物は、保管中にジオポリマー反応が進行することで硬化してしまうため、長期間の保管が困難であったところ、ジオポリマー反応の遅延方法を採用することで、保管中の硬化型耐火性パテ組成物の硬化を遅延させることが可能となり、ひいては硬化型耐火性パテ組成物の長期保管性を向上させることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例1〜15、比較例1〜9、参考例1〜3]
ケイ酸ナトリウムの濃度が53質量%の水ガラスに、表1〜4に記載の材料を、それぞれ記載の質量部の割合で加え、オープンニーダーで混練し、パテ組成物を得た。なお、バインダーと金属水酸化物と不活性フィラーの合計が100質量部になるように配合した
それぞれの材料は、以下のとおりである。
バインダー
水ガラス:濃度53質量%のケイ酸ナトリウム水溶液
金属水酸化物
水酸化アルミニウム:水酸化アルミニウムの粉末
水酸化マグネシウム:水酸化マグネシウムの粉末
不活性フィラー
タルク:タルクの粉末
クレー:クレーの粉末
風解性添加物
硫酸ナトリウム:硫酸ナトリウム10水和物の粉末
ホウ砂:ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム10水和物)の粉末
ラテックス
ブタジエン・スチレン共重合物1:全固形分40質量%、平均粒径50nmのブタジエン・スチレン共重合物のラテックス
ブタジエン・スチレン共重合物2:全固形分40質量%、平均粒径300nmのブタジエン・スチレン共重合物のラテックス
ブタジエン・スチレン共重合物3:全固形分40質量%、平均粒径500nmのブタジエン・スチレン共重合物のラテックス
ブチルゴム:固形状のブチルゴム
その他の添加物
繊維:ビニロン繊維
発泡ビーズ:発泡ポリスチレンビーズ
[評価方法]
本発明におけるパテは、長期保管性、粘着性、鋼製材への腐食性、乾燥収縮性、耐水性について、下記の方法を用いて評価を行った。
(長期保管性の評価方法)
恒温槽での保管前のパテ組成物の表面の硬さが約22.5±2.5Nであるパテ組成物を、50℃の恒温槽で72時間保管した後、プッシュプルスケール(IMADA製FB−100N)を用い、直径12mmの円状の先端を持つアタッチメントを用いて、パテ組成物の表面から5mmまで冶具を押し付けるのに要した力(N)を表面硬さとして測定し、硬さの増加量を算出した。硬さの増加量が0N以上20N未満:○、20N以上40N未満:△、40N以上:×
(粘着性の評価方法)
2枚の鋼板の間にパテ組成物を挟み、下側の鋼板を固定し、プッシュプルスケール(IMADA製FB−100N)を用いて、上側の鋼板を引き剥がすのに要した力(N)を測定し、粘着面の面積で割り、粘着力として評価した。0.75以上1.0N/cm未満:○、1.0以上1.25N/cm未満は△、1.25N/cm以上or0.75N/cm未満:×
(鋼製材への腐食性の評価方法)
鋼板にパテ組成物を接着し、96時間養生した。養生後、パテを取り除き、接着部への錆の有無を目視にて評価。錆無:○、錆有:×
(乾燥収縮性の評価方法)
鋼管に施工後、常温下で72時間養生した。養生後の隙間の有無を目視で確認。隙間発生:×、隙間無:○
(耐水性の評価方法)
60℃の恒温槽で72時間養生後、常温下で水に浸漬し、24時間後の形状の変化およびパテの硬さを目視および感触で評価。原型をとどめない:×、柔らかいが形状は保持している:△、硬さがある程度のこり形状も保持している:○
各実施例、比較例、参考例の組成と評価結果を、表1〜4に示す。
Figure 2013060543
Figure 2013060543
Figure 2013060543
Figure 2013060543
実施例1〜15では、長期保管性、粘着性、鋼製材への腐食性、乾燥収縮性、耐水性の何れも△以上であった。
実施例2では、ベースパテ組成物中に水ガラスを30質量%含み、実施例3では55質量%含むが、これらの実地例では長期保管性などに問題なかった。これに対して、水ガラスを21質量%含む比較例2では、パテ組成物が硬くて貫通部に合わせた所定の形状に形成することができないことから、パテとして使用するには問題があったうえに、70質量%含む比較例3では、パテ組成物が柔らかくて形状保持性が悪くパテとして使用するには問題があった。以上より、実施例2、3、比較例2、3より、ベースパテ組成物中に水ガラスを25〜65質量%含むことが好ましいことが分かる。
実施例4では、ベースパテ組成物中に金属水酸化物を14質量%含み、実施例5では36質量%含むが、これらの実施例では長期保管性などに問題なかった。これに対して、金属水酸化物を60.6質量%含む比較例1では、長期保管性と粘着性に劣ったうえに、8質量%含む比較例4では、耐水性が悪かった。以上より、実施例4、5、比較例1、4より、ベースパテ組成物中に金属水酸化物を10〜45質量%含むことが好ましいことが分かる。
実施例2では、ベースパテ組成物中に不活性フィラーを38質量%含み、実施例6では11質量%含むが、これらの実施例では長期保管性などに問題なかった。これに対して、不活性フィラーを5質量%含む比較例5では、長期保管性に劣ったうえに、50質量%含む比較例6では、耐水性が悪かった。以上より、実施例2、6、比較例5、6より、ベースパテ組成物中に不活性フィラーを10〜45質量%含むことが好ましいことが分かる。
実施例8では、ベースパテ組成物100質量部にラテックスを2質量部加え、実施例9では5.5質量部加え、実施例10では8.5質量部加えたが、これらの実施例では長期保管性などに問題なかった。これに対して、ラテックスを20質量部加えた比較例7では、粘着性が悪かった。以上より、実施例8〜10、比較例7より、ベースパテ組成物100質量部に対して、ラテックスを2〜10質量部添加することが好ましいことが分かる。また、本実施例では、ラテックスの全固形分が40%であることから、ベースパテ組成物100質量部に対して、ラテックスを固形分換算で0.8〜4質量部添加することが好ましいことが分かる。
なお、ラテックスの平均粒径50nmのブタジエン・スチレン共重合物1を用いた実施例1〜14、平均粒径300nmのブタジエン・スチレン共重合物2を用いた実施例15では、長期保管性などに問題なかった。これに対して、平均粒径500nmのブタジエン・スチレン共重合物3を用いた比較例9では、粒径が大きすぎたため、ブタジエン・スチレン共重合物のパテ組成物中での分散が不均一となり、長期保管性に問題があった。以上より、ラテックス中に分散したブタジエン・スチレン共重合物の粒子の平均粒径は、10〜300nmであることが好ましいことが分かる。また、表では示していないが、実施例14の組成のうち、ブタジエン・スチレン共重合物をブタジエンゴム(BR)、もしくは2-ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴム(VP)に変えて、ブタジエン・スチレン共重合物と同量加えたサンプルにおいても、長期保管性などに問題はなく、その他の特性も実施例14と同様のものが得られた。
実施例7では、ベースパテ組成物100質量部にラテックスを5質量部と硫酸ナトリウムを7質量部加え、実施例11ではラテックスを8.5質量部と硫酸ナトリウムを18質量部加えたが、これらの実施例では長期保管性などに問題なかった。これに対して、ベースパテ組成物100質量部に硫酸ナトリウムを30質量部加えた参考例3では、パテ組成物が柔らかくパテとして使用するには問題があった。以上より、実施例7と実施例11、参考例1〜3より、ベースパテ組成物100質量部に対して風解性添加物を、5〜20質量部添加することが好ましいことが分かる。
実施例12より金属水酸化物として水酸化マグネシウムを添加でき、実施例13より不活性フィラーとしてクレーを添加でき、実施例14より風解性添加物としてホウ砂を添加できることが分かる。
比較例1では、ベースパテ組成物に不活性フィラーを含まず、保管中にジオポリマー反応が進み、長期保管性と粘着性に劣った。比較例2では、ベースパテ組成物に水ガラスが25質量%以下しか含まれないため、パテ組成物が硬く、パテとして使用するには問題があった。比較例3では、ベースパテ組成物に水ガラスが65質量%以上含むため、パテ組成物がやわらかく、パテとして使用するには問題があった。
比較例4では、ベースパテ組成物に金属水酸化物が10質量%以下しか含まれないため、耐水性が著しく悪かった。比較例5では、ベースパテ組成物に不活性フィラーが10質量%以下しか含まれないため、保管中にジオポリマー反応が進み、長期保管性が悪かった。比較例6では、ベースパテ組成物に不活性フィラーが45質量%以上含むため、耐水性が著しく悪かった。比較例7では、ベースパテ組成物100質量部に対して、ラテックスを10質量部以上加えたため、粘着性が悪かった。比較例8では、有機樹脂として固形状のブチルゴムを添加すると、ブチルゴムの分散が不均一となり、長期保管性と粘着性が悪かった。比較例9では、平均粒径500nmのブタジエン・スチレン共重合物3を用いると、粒径が大きすぎたため、ブタジエン・スチレン共重合物のパテ組成物中での分散が不均一となり、長期保管性に問題があった。
参考例3では、ベースパテ組成物100質量部に対して、風解性添加物を20質量部以上加えたため、パテ組成物がやわらかく、パテとして使用するには問題があった。

Claims (10)

  1. バインダーとして水ガラス25〜65質量%と、活性フィラーとしての金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいは炭酸カルシウムの1種以上を10〜45質量%と、不活性フィラーを10〜45質量%とを、合計で100質量%になるように混合してなるベースパテ組成物100質量部に対して、
    少なくとも、平均粒径が10〜300nmで、全固形分が30〜60質量%の合成ゴムラテックスを2〜10質量部添加してなることを特徴とする硬化型耐火性パテ組成物。
  2. バインダーとして水ガラス25〜65質量%と、活性フィラーとしての金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいは炭酸カルシウムの1種以上を10〜45質量%と、不活性フィラーを10〜45質量%とを、合計で100質量%になるように混合してなるベースパテ組成物100質量部に対して、
    少なくとも、平均粒径が10〜300nmの合成ゴムラテックスを、前記合成ゴムラテックスの全固形分が0.6〜6質量部となるように添加してなることを特徴とする硬化型耐火性パテ組成物。
  3. 前記合成ゴムラテックスは、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム(MBR)、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴム(VP)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)のいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の硬化型耐火性パテ組成物。
  4. 前記ベースパテ組成物100質量部に対して、風解性添加物として硫酸ナトリウムおよび/またはホウ酸塩鉱物を、5〜20質量部添加することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の硬化型耐火性パテ組成物。
  5. 前記不活性フィラーが、クレー、タルク、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、ケイ砂、珪藻土のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の硬化型耐火性パテ組成物。
  6. 有機系・無機系の繊維および/または、発泡ビーズを、前記ベースパテ組成物100質量部に対して、各0.1〜10質量部添加し、
    前記有機系・無機系の繊維が、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、セラミック繊維、セルロースファイバーのいずれか1種以上であり、
    前記発泡ビーズが、ポリスチレン発泡ビーズ、ポリエチレン発泡ビーズ、ポリプロピレン発泡ビーズ、ガラスビーズ、シラスバルーンのいずれか1種以上である
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の硬化型耐火性パテ組成物。
  7. バインダーとして水ガラスと、
    活性フィラーとしての金属水酸化物である水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、あるいは炭酸カルシウムの1種以上と、
    不活性フィラーとしてクレー、タルク、ゼオライト、活性白土、ベントナイト、ケイ砂、珪藻土のうちの少なくとも1つ含む硬化型耐火性パテ組成物に、
    平均粒径が10〜300nmの合成ゴムラテックスを添加することを特徴とする硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の遅延方法。
  8. 前記合成ゴムラテックスがブタジエン・スチレン共重合物であることを特徴とする請求項7に記載の硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の遅延方法。
  9. さらに、風解性添加物として、硫酸ナトリウムおよび/またはホウ酸塩鉱物を加えることを特徴とする請求項7または8に記載の硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の遅延方法。
  10. 請求項7から9のいずれか1項に記載の硬化型耐火性パテ組成物のジオポリマー反応の遅延方法を用いた硬化型耐火性パテ組成物の長期保管性向上方法。
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