以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2と車体フレームBFとを連結する複数の懸架装置4と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
また、車輪2は、図1に示すように、第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備え、各車輪2において、第1トレッド21が車両1の内側に配置され、第2トレッド22が車両1の外側に配置されている。なお、本実施の形態では、両トレッド21,22の幅(図1左右方向の寸法)が同一の幅に構成されている。
また、第1トレッド21及び第2トレッド22は、第2トレッド22が第1トレッド21よりも硬度の高い材料により構成され、第1トレッド21が第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性(高グリップ特性)に構成される一方、第2トレッド22が第1トレッド21に比して転がり抵抗の小さい特性(低転がり特性)に構成されている。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図3参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4は、路面から車輪2を介して車体フレームBFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、図1に示すように、各車輪2に対応してそれぞれ設けられている。また、本実施の形態における懸架装置4は、車輪2のキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2を参照して、懸架装置4の詳細構成について説明する。図2は、懸架装置4の正面図である。なお、ここでは、キャンバ角調整機構として機能する構成のみについて説明し、サスペンションとして機能する構成については周知の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、各懸架装置4の構成は、各車輪2においてそれぞれ共通であるので、右の前輪2FRに対応する懸架装置4を代表例として図2に図示する。但し、図2では、理解を容易とするために、ドライブシャフト31等の図示が省略されている。
懸架装置4は、図2に示すように、ストラット41及びロアアーム42を介して車体フレームBFに支持されるナックル43と、駆動力を発生するFRアクチュエータ44FRと、そのFRアクチュエータ44FRの駆動力を伝達するウォームホイール45及びアーム46と、それらウォームホイール45及びアーム46から伝達されるFRアクチュエータ44FRの駆動力によりナックル43に対して揺動駆動される可動プレート47とを主に備えて構成されている。
ナックル43は、車輪2を操舵可能に支持するものであり、図2に示すように、上端(図2上側)がストラット41に連結されると共に、下端(図2下側)がボールジョイントを介してロアアーム42に連結されている。
FRアクチュエータ44FRは、可動プレート47に揺動駆動のための駆動力を付与するものであり、DCモータにより構成され、その出力軸44aにはウォーム(図示せず)が形成されている。
ウォームホイール45は、FRアクチュエータ44FRの駆動力をアーム46に伝達するものであり、FRアクチュエータ44FRの出力軸44aに形成されたウォームに噛み合い、かかるウォームと共に食い違い軸歯車対を構成している。
アーム46は、ウォームホイール45から伝達されるFRアクチュエータ44FRの駆動力を可動プレート47に伝達するものであり、図2に示すように、一端(図2右側)が第1連結軸48を介してウォームホイール45の回転軸45aから偏心した位置に連結される一方、他端(図2左側)が第2連結軸49を介して可動プレート47の上端(図2上側)に連結されている。
可動プレート47は、車輪2を回転可能に支持するものであり、上述したように、上端(図2上側)がアーム46に連結される一方、下端(図2下側)がキャンバ軸50を介してナックル43に揺動可能に軸支されている。
上述したように構成される懸架装置4によれば、FRアクチュエータ44FRが駆動されると、ウォームホイール45が回転すると共に、ウォームホイール45の回転運動がアーム46の直線運動に変換される。その結果、アーム46が直線運動することで、可動プレート47がキャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動され、車輪2のキャンバ角が調整される。
なお、本実施の形態では、各連結軸48,49及びウォームホイール45の回転軸45aが、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)において、第1連結軸48、回転軸45a、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第1キャンバ状態と、回転軸45a、第1連結軸48、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第2キャンバ状態(図2に示す状態)とのいずれか一方のキャンバ状態となるように車輪2のキャンバ角が調整される。
これにより、車輪2のキャンバ角が調整された状態では、車輪2に外力が加わったとしても、アーム46を回動させる方向の力は発生せず、車輪2のキャンバ角を維持することができる。
また、本実施の形態では、かかる第1キャンバ状態において、車輪2のキャンバ角がマイナス方向の所定の角度(以下「第1キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。これにより、車輪2の横剛性を発揮させることができる。また、第1キャンバ状態では、第2トレッド22の接地に対する第1トレッド21の接地比率が大きくなることで、第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させることができる。
一方、かかる第2キャンバ状態(図2に示す状態)では、車輪2のキャンバ角が0°(以下「第2キャンバ角」と称す)に調整される。これにより、キャンバスラストの影響を回避することができる。また、第2トレッド22は、第1トレッド21よりも硬度の高い材料により構成されているので、車輪2のキャンバ角が第2キャンバ角に調整された場合には、第1トレッド21の接地が第2トレッド22によって妨げられる。これにより、第1トレッド21の接地に対する第2トレッド22の接地比率が大きくなることで、第2トレッド22の低転がり特性を発揮させることができる。
なお、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整した状態が、キャンバ角のON状態に対応し、車輪2のキャンバ角を第2キャンバ角に調整した状態が、キャンバ角のOFF状態に対応する(図4及び図5参照)。
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。
この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(回転角、回転速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置44(図3参照)を作動制御する。
次いで、図3を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図5に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリである。RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
キャンバ角調整装置44は、各車輪2のキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置4の可動プレート47(図2参照)に揺動駆動のための駆動力をそれぞれ付与する合計4個のFL〜RRアクチュエータ44FL〜44RRと、それら各アクチュエータ44FL〜44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。キャンバ角調整装置44は、CPU71からキャンバ角の調整開始の指令を受けると、各アクチュエータ44RL,44RRの駆動を開始し、CPU71からキャンバ角の調整終了の指令を受けると、各アクチュエータ44RL,44RRの駆動を停止する。
キャンバ角センサ装置80は、各車輪2のキャンバ角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2のキャンバ角をそれぞれ検出する合計4個のFL〜RRキャンバ角センサ80FL〜80RRと、それら各キャンバ角センサ80FL〜80RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。CPU71は、このキャンバ角センサ装置80の検出結果に基づき、キャンバ角が目標キャンバ角に達したか否かを判断し、キャンバ角調整装置44にキャンバ角の調整終了の指令を出力する。
なお、本実施の形態では、各キャンバ角センサ80FL〜80RRがミリ波により対象物の角度を検出するミリ波レーダとして構成されている。これら各キャンバ角センサ80FL〜80RRは、車体フレームBFに取り付けられ、各車輪2へ向けてミリ波を発振して可動プレート47の角度を測定することで、各車輪2のキャンバ角をそれぞれ検出する。但し、各キャンバ角センサ80FL〜80RRはミリ波レーダに限られず、他の種類のレーダを採用することは当然可能である。他の種類のレーダとしては、例えば、赤外線レーダや超音波レーダ等が例示される。
加速度センサ装置81は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ81a及び横方向加速度センサ81bと、それら各加速度センサ81a,81bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ81aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度を検出するセンサであり、横方向加速度センサ81bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ81a,81bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
また、CPU71は、加速度センサ装置81から入力された各加速度センサ81a,81bの検出結果(加速度値)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の走行速度(車速、図5のS6参照)を取得することができる。
接地荷重センサ装置55は、各車輪2が路面から受ける荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2が路面から受ける荷重をそれぞれ検出する合計4個のFL〜RR荷重センサ55FL〜55RRと、それら各荷重センサ55FL〜55RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各荷重センサ55FL〜55RRがピエゾ抵抗型の3軸荷重センサとして構成されている。これら各荷重センサ55FL〜55RRは、各車輪2のサスペンション軸上に取り付けられ、車輪2が路面から受ける荷重を車両1の前後方向(図1矢印F−D方向)、左右方向(図1矢印L−R方向)及び上下方向(図1矢印U−D方向)の3方向で検出する。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作量および操舵方向を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリングの回転角(操舵角θ)を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
CPU71は、ステアリングセンサ装置63aの検出結果から得られる車両1の操舵角θと操舵角速度とに基づいて、車両1が所定の旋回状態にあるか否かを判断し、車両1が所定の旋回状態にあると判断される場合は、車輪2のキャンバ角をON状態(第1キャンバ角)とするための指令を出力する一方、車両1が所定の旋回状態にないと判断される場合には、車輪2のキャンバ角をOFF状態(第2キャンバ角)とするための指令を出力する。なお、本実施の形態では、この車輪2のキャンバ角をON状態またはOFF状態とする指令(キャンバ指令)は、RAM73に設けられたフラグ(図示せず)をオン又はオフすることに対応する。CPU71は、各処理において、このフラグの状態と他の状態とに基づいて、車輪2のキャンバ角をON状態またはOFF状態に調整するか否かを判断する(図5参照)。
なお、本実施の形態では、アクセルペダルセンサ装置61a、ブレーキペダルセンサ装置62a、ステアリングセンサ装置63aの各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量や操舵角θ)を時間微分して、各ペダル61,62の操作速度およびステアリング63の操作速度(操舵角速度)を取得することができる。
ヨーレートセンサ装置82は、車両1の中心を通り車両1の高さ方向(図2矢印U−D方向)に沿う軸を中心軸として旋回方向への車両1の回転角速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置である。本実施の形態においては、ヨーレートセンサとしてのジャイロセンサ(図示せず)と、そのジャイロセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、ヨーレートセンサはジャイロセンサに限られず、音叉型やH字型等の振動子を採用することも当然可能である。また、CPU71は、ヨーレートセンサ装置82から入力されたヨーレートの検出結果を時間微分して、ヨーレートの単位時間あたりの変化率を算出して取得することができる。
ナビゲーション装置83は、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共に、車両1の前方にある交差点の位置を取得するための装置であり、GPS衛星から電波を受信して車両1の現在位置や進行方向を取得する現在位置取得部(図示せず)と、道路に関するデータや交差点データ等が記録された地図情報を記憶する情報記憶部(図示せず)と、現在位置取得部により取得された車両1の現在位置および情報記憶部に記憶されている旋回路(所定半径のカーブの他、交差点、十字路、T字路などを含む)の位置情報を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)と、を主に備えている。CPU71は、ナビゲーション装置83から入力された車両1の現在位置、進行方向および旋回路の位置に基づいて、車両1の現在位置を旋回路の位置に対応付けて得ることができる。
図3に示す他の入出力装置90としては、例えば、交差点に設置された車両感知器等が発信する電波を受信して交差点の位置を検出するセンサや、ターンシグナルランプ(方向指示灯)のスイッチが入ったことを検出するセンサなどが例示される。
次いで、図4を参照して、車両1の消費エネルギーEについて説明する。図4(a)は、操舵角θの時間変化を模式的に図示する模式図であり、図4(b)及び図4(c)は、従来方法における消費エネルギーEの時間変化および本願方法における消費エネルギーEの時間変化をそれぞれ模式的に図示する模式図である。なお、図4(b)及び図4(c)では、車輪2のキャンバ状態S(ON状態およびOFF状態)が時間tに対応付けられて図示されている。
ここで、従来方法とは、図4(b)に示すように、車両1の旋回状態に応じて車輪2のキャンバ角をON状態またはOFF状態に切り替える方法であり、車両1が所定の旋回状態にあれば、車輪2のキャンバ角をON状態に調整する一方(t≦ta,tb≦t)、車両1が所定の旋回状態になければ、車輪2のキャンバ角をOFF状態に調整する(ta<t<tb)。これに対し、本願方法とは、本発明を適用した方法であり、図4(c)に示すように、車両1が所定の旋回状態ではない場合であっても、車輪2のキャンバ角をON状態に維持する(ta<t<tb)。
即ち、従来方法では、車両1が所定の旋回状態にある場合(t≦ta,tb≦t)、図4(a)及び図4(b)に示すように、車輪2のキャンバ角をON状態(即ち、第1トレッド21の接地比率が大きくなる第1キャンバ角)に調整することで、第1トレッド21の高グリップ特性とキャンバスラストとを利用して、旋回性能の向上を図る。
一方、車両1が所定の旋回状態ではない場合には(ta<t<tb)、図4(a)及び図4(b)に示すように、車輪2のキャンバ角をOFF状態(即ち、第2トレッドの接地比率が大きくなる第2キャンバ角)に調整することで、第2トレッド22の低転がり抵抗特性を利用して、省燃費性能の向上を図る。
これに対し、本願方法では、車両1が所定の旋回状態にある場合は(t≦ta,tb≦t)、従来方法と同様に、図4(a)及び図4(c)に示すように、車輪2のキャンバ角をON状態(即ち、第1トレッド21の接地比率が大きくなる第1キャンバ角)に調整することで、第1トレッド21の高グリップ特性とキャンバスラストとを利用して、旋回性能の向上を図る。
一方、車両1が所定の旋回状態ではない場合には(ta<t<tb)、図4(a)及び図4(c)に示すように、車輪2のキャンバ角をOFF状態には調整せず、ON状態を維持(第1キャンバ角を維持)することで、キャンバ角調整装置44の作動を回避して、キャン角の頻繁な切り替わりを抑制する。これにより、キャンバ角調整装置44の耐久性の向上やその作動音による乗員の快適性の低下を抑制しつつ、車両1の消費エネルギーの抑制を図る。
即ち、従来方法では、図4(a)及び図4(b)に示すように、車両1が所定の旋回状態ではなくなると(t=ta)、車輪2のキャンバ状態をON状態(第1キャンバ角)からOFF状態(第2キャンバ角)へ調整するべく、キャンバ角調整装置44を作動させるので、その作動による駆動エネルギーe1の分だけ、消費エネルギーEがまず増加する(E=e1)。更に、その後、車両1が所定の旋回状態になると(t=tb)、次いで、車輪2のキャンバ状態をOFF状態(第2キャンバ角)からON状態(第1キャンバ角)へ調整するべく、キャンバ角調整装置44を作動させるので、その作動による駆動エネルギーe2の分だけ、消費エネルギーEが更に増加する(E=e1+e2)。
車輪2のキャンバ状態がOFF状態(第2キャンバ角)からON状態(第1キャンバ角)に調整された後は(tb≦t)、第1トレッド21の接地比率が第2トレッド22に比して大きくなることで、第2トレッド22の低転がり抵抗特性と第1トレッド21の高グリップ特性(即ち、高転がり抵抗特性)との差に起因して増加した転がり抵抗の増加エネルギーの分、図4(b)に示すように、消費エネルギーEが車両1の走行に伴って増加する。なお、図4(b)では、図4(c)と共に、理解を容易とするため、時間ta以前における消費エネルギーEを一定値として図示している。
これに対し、本願方法では、図4(a)及び図4(c)に示すように、車両1が所定の旋回状態ではなくなっても(t=ta)、車輪2のキャンバ状態をOFF状態(第2キャンバ角)に調整せず、ON状態(第1キャンバ角)を維持する。よって、キャンバ角調整装置44の作動による駆動エネルギーe1の増加はなく、第2トレッド22の低転がり特性と第1トレッド21の高グリップ特性(即ち、高転がり抵抗特性)との差に起因する転がり抵抗の増加エネルギーe3の分が、消費エネルギーEの増加分として、車両1の走行に伴って発生する(E=e3)。
なお、車両1が所定の旋回状態になった場合(t=tb)、車輪2のキャンバ状態は既にON状態(第1キャンバ角)へ調整されているので、この場合もキャンバ角調整装置44の作動による消費エネルギーEの増加は発生せず、以後の消費エネルギーEは、従来方法と同様の増加となる。従って、増加エネルギーe3の値が駆動エネルギーe1,e2を上回る前に(e3<e1+e2)、車両1が所定の旋回状態となれば(t=tb)、本願方法の消費エネルギーEが従来方法の消費エネルギーEよりも抑制されることになる。
次いで、図5を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図5は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、所定の旋回状態にある車両1が所定の旋回状態ではなくなった場合に(図4の時間tb)、車輪2のキャンバ角をON状態に所定時間だけ維持した後にOFF状態とするための処理であり、上述した本願方法(図4(c)参照)に対応する。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、車輪2のキャンバ角の設定状態を検出する(S1)。その結果、車輪2のキャンバ角がON状態(第1キャンバ角)ではない、即ち、OFF状態(第2キャンバ角)であると判断される場合には(S2:No)、車両1は所定の旋回状態ではなく、かつ、車輪2のキャンバ角が既にOFF状態(第2キャンバ角)に調整されているということであり、S3からS9の処理を実行する必要がないので、このキャンバ制御処理を終了する。
一方、S2の処理において、車輪2のキャンバ角がON状態であると判断される場合には(S2:Yes)、次いで、キャンバ指令を検出し(S3)、そのキャンバ指令が車輪2のキャンバ角をOFF状態とする指令であるか否かを判断する(S4)。その結果、キャンバ指令が車輪2のキャンバ角をOFF状態とする指令でないと判断される場合には(S4:No)、車両1が未だ所定の旋回状態にあるか(t<ta、図4参照)、或いは、車両1が旋回を開始したということであり(t=tb、図4参照)、S3からS9の処理を実行する必要がないので、このキャンバ制御処理を終了する。なお、車両1が旋回を開始した場合であっても、車輪2のキャンバ角は既にON状態(第1キャンバ角)とされている(ON状態が維持されている)ので、キャンバ角調整装置44を作動制御する必要はない。
これに対し、S4の処理において、キャンバ指令が車輪2のキャンバ角をOFF状態とする指令である場合には(S4:Yes)、所定の旋回中(t<ta、図4参照)であった車両1が所定の旋回状態ではなくなったか(t=ta、図4参照)、所定の旋回状態ではない状態が継続されているということであるので(ta<t<tb、図4参照)、この場合には(S4:Yes)、まず、アクチュエータ(キャンバ角調整装置44)の駆動(作動)に必要な駆動エネルギーEA(=e1+e2、図4参照)を算出する(S5)。
具体的には、FL〜RRアクチュエータ44FL〜44RRの仕事率をP[W]、車輪2をON状態からOFF状態に調整するために必要なFL〜RRアクチュエータ44FL〜44RRの作動時間をdt1[s]、車輪2をOFF状態からON状態に調整するために必要なFL〜RRアクチュエータ44FL〜44RRの作動時間をdt2[s]、キャンバ角をON状態およびOFF状態に調整する車輪2の数をNwとすると、駆動エネルギーEAは、EA=e1+e2=P*(dt1+dt2)*Nwとして算出される。なお、このS5の処理が、請求項1に記載した駆動エネルギー算出手段に該当する。
S5の処理で駆動エネルギーEAを算出した後は、次いで、車速を検出した後(S6)、車輪2のキャンバ角をOFF状態とするまでの基準時間tOFFを算出する(S7)。ここで、基準時間tOFFとは、車輪2のキャンバ角をON状態(第1キャンバ角)に調整した状態で走行した際に、その走行に伴って発生する消費エネルギーEの増加分(図4(c)参照)が、駆動エネルギーEA(=e1+e2、図4(b)参照)と同等(即ち、e1+e2=e3)となるために要する時間であり、次のように算出される。
即ち、車輪2のキャンバ角がON状態(第1キャンバ角)に調整された状態での車輪2の転がり抵抗係数とOFF状態(第2キャンバ角)に調整された状態での車輪2の転がり抵抗係数との差をΔR、車輪2の接地荷重をW、車速をVとすると、上述したON状態で車両1が基準時間tOFFだけ走行する際に、その走行に伴って発生する消費エネルギーEの増加分EBは、ΔR*W*V*tOFFとなり、この増加分EBが、上述した駆動エネルギーEAと等しくなる。よって、EA=EB(P*(dt1+dt2)*Nw=ΔR*W*V*tOFF)を基準時間tOFFについて整理することで、基準時間tOFFを、tOFF=EA/(ΔR*W*V)と算出することができる。
なお、この消費エネルギーEの増加分EBを算出する処理が、請求項1に記載した増加エネルギー算出手段に該当する。また、接地荷重Wは、接地荷重センサ装置55により、各車輪2において独立して測定される。これにより、例えば、乗員の乗車数や荷物の増減などを考慮することができるので、基準時間tOFFをより高精度に算出することができる。
S7の処理において、基準時間tOFFを算出した後は(S7)、キャンバ角をOFF状態とする指令を受けてからの経過時間が、基準時間tOFF以下であるかを判断し(S8)、その結果、経過時間が基準時間tOFF以下であると判断される場合には(S8:Yes)、車両1は所定の旋回状態ではない状態にあり(ta<t<tb、図4参照)、かつ、駆動エネルギーEAよりも消費エネルギーEの増加分EBが小さい値であるということであるので(EB<EA、即ち、e3<e1+e2、図4参照)、S3の処理へ移行する。
これにより、車両1が所定の旋回状態ではない場合であっても(ta<t<tb、図4参照)、車輪2のキャンバ角をOFF状態には調整せず、ON状態を維持(第1キャンバ角を維持)することで、キャンバ角調整装置44の作動を回避して、キャン角の頻繁な切り替わりを抑制する。これにより、キャンバ角調整装置44の耐久性の向上やその作動音による乗員の快適性の低下を抑制しつつ、車両1の消費エネルギーの抑制を図る。
一方、S8の処理において、経過時間が基準時間tOFF以下であると判断されている間に(S8:Yes)、車両1が所定の旋回状態となった場合には(t=tb、図4参照)、車輪2のキャンバ状態は既にON状態(第1キャンバ角)へ調整されている(ON状態が維持されている)ので、キャンバ角調整装置44の作動による消費エネルギーEの増加は発生せず、以後の消費エネルギーEは、従来方法(図4(b)参照)と同様の増加となる。即ち、増加エネルギーe3の値が駆動エネルギーe1,e2よりも小さい値である分(e3<e1+e2、図4参照)、本願方法の消費エネルギーEを従来方法の消費エネルギーEよりも抑制することができる。
なお、S8の処理において、経過時間が基準時間tOFF以下ではないと判断される場合、即ち、経過時間が基準時間tOFFに達した場合には(S8:No)、車輪2のキャンバ角をOFF状態(第2キャンバ角)に調整して(S9)、このキャンバ制御処理を終了する。このように、経過時間が基準時間tOFFに達するまでは、車両1が所定の旋回状態ではない場合であっても、車輪2のキャンバ角をON状態(第1キャンバ角)に維持しつつも、経過時間が基準時間tOFFに達した時点で、車輪2のキャンバ角をOFF状態(第2キャンバ角)に調整することで、その後、車両1の消費エネルギーEの増加を最小限に抑制することができる。
次いで、図6を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、制御対象である車両1が、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRを含む全ての車輪2のキャンバ角をキャンバ角調整装置44により調整可能に構成される場合を説明したが、第2実施の形態における車両201は、左右の後輪202RL,202RRのみのキャンバ角がキャンバ角調整装置44により調整可能とされ、左右の前輪202FL,202FRについてはキャンバ角の調整を行わない構成とされている。
また、第1実施の形態では、制御対象である車両1が、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRを含む全ての車輪2が同じ構成とされる場合を説明したが、第2実施の形態における車両201は、左右の前輪202FL,202FRと左右の後輪202RL,202RRとが異なる構成とされている。なお、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図6は、第2実施の形態における車両用制御装置200が搭載される車両201を模式的に示した模式図である。まず、車両201の概略構成について説明する。
図6に示すように、車両201は、複数の車輪202を備え、その車輪202は、車両201の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪202FL,202FRと、車両201の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪202RL,202RRとから構成されている。
車輪202は、左右の前輪202FL,202FRが互いに同じ形状および特性に構成されると共に、左右の後輪202RL,202RRが互いに同じ形状および特性に構成されている。また、左右の前輪202FL,202FRは、そのトレッドの幅(図6左右方向の寸法)が、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅よりも広い幅に設定されている。なお、左右の前輪202FL,202FRのトレッドと左右の後輪202RL,202RRのトレッドとは同じ特性に構成されている。
また、車輪202は、左右の前輪202FL,202FRが懸架装置504によって車体フレームBFに連結される一方、左右の後輪202RL,202RRが懸架装置4によって車体フレームBFに連結されている。なお、懸架装置504は、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、図2に示す懸架装置4において、FRアクチュエータ44FRによる伸縮機能が省略されている点)を除き、その他の構成は懸架装置4と同じ構成であるので、その説明は省略する。
このように、第2実施の形態における車両201は、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅が、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くされているので、前輪202FL,202FRの路面に対する摩擦係数を、後輪202RL,202RRの路面に対する摩擦係数よりも大きくすることができる。その結果、制動力の向上を図ることができる。また、左右の前輪202FL,202FRが駆動輪とされる本実施の形態においては、加速性能の向上を図ることができる。
一方、左右の後輪202RL,202RRの転がり抵抗を、左右の前輪202FL,202FRの転がり抵抗よりも小さくすることができるので、その分、省燃費化を図ることができる。また、左右の後輪202RL,202RRにキャンバ角を付与することができるので、横力を発生させて、旋回性能の向上を図ることができる。
車両用制御装置200は、上述したように構成される車両201の各部を制御するための装置であり、例えば、ステアリング63の操作状態(操舵角θ)や車両201のヨーレート等に応じてキャンバ角調整装置44(図3参照)を作動させることで、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を制御する。
なお、第2実施の形態におけるキャンバ角調整装置44は、第1実施の形態におけるキャンバ角調整装置44に対し、左右の前輪2FL,2FRに対応するFL,FRアクチュエータ44FL,44FRが省略して構成されている以外は、同じ構成であるので、その説明は省略する。また、図5で説明したキャンバ制御処理においては、キャンバ角を調整する車輪の数が異なる以外は、同じ制御であるから、その説明は省略する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記第1実施の形態では、全ての車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角および第2キャンバ角に調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、前輪2FL,2FR又は後輪2RL,2RRのいずれか一方を第1キャンバ角および第2キャンバ角に調整しても良い。また、左の前輪2FLと右の前輪2FRとのキャンバ角を、左の後輪2RLと右の後輪2RRとのキャンバ角を、それぞれ異なるキャンバ角に調整しても良い。
上記実施の形態では、ステアリング63の操作量(操舵角θ)に基づいて車両1が旋回中であるかを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ステアリング63の操作量に代えて、他の状態量に基づいて車両1が旋回中であるかを判断することは当然可能である。他の状態量としては、例えば、ステアリング63の操作速度(操舵角速度)、車両1のヨーレート、そのヨーレートの単位時間当たりの変化量、車両1の左右方向加速度、その左右方向加速度の単位時間当たりの変化量などが例示される。
上記第1実施の形態では、第1トレッド21が車両1の内側に、第2トレッド22が車両1の外側に、それぞれ配置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第1トレッド21を車両1の外側に、第2トレッド22を車両1の内側に、それぞれ配置しても良い。或いは、第2トレッドを挟んで両側に一対の第1トレッド21を並列に設ける構成としても良い。
上記第1実施の形態では車輪2が2種類のトレッドを備える場合を、上記第2実施の形態では車輪202が1種類のトレッドを備える場合を、それぞれ説明したが、これらを組み合わせることは当然可能である。例えば、第2実施の形態における車両201の後輪に、第1実施の形態における車輪2(後輪2RL,2RR)を適用しても良い。
上記各実施の形態では、経過時間が基準時間tOFF以下である場合に(S8:Yes)、S3の処理へ移行して、車輪2、202のキャンバ角をON状態に維持する構成を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、消費エネルギーEの増加分EBが駆動エネルギーEAと同等の値となるまでに車両1,201が走行する距離である基準距離を算出すると共に、車両1,201の走行距離を監視し、その走行距離が基準距離以下である場合に、車輪2,202のキャンバ角をON状態に維持するように構成しても良い。この構成においても、上述した各実施の形態の場合と同様の効果が得られる。
なお、この場合には、車両1,201が走行する予定の走行予定経路中からその車両1,201を所定の旋回状態とする走行路をナビゲーション装置83を利用して取得する走行路取得手段と、その走行路取得手段により取得された走行路が、消費エネルギーEの増加分EBが駆動エネルギーEAに達するまでの期間に車両1,201が走行する走行経路よりも前方に位置するかを判断する前方判断手段と、を設け、その前方判断手段により、走行路が走行経路よりも前方に位置すると判断される場合には、キャンバ角調整装置44により車輪2,202のキャンバ角を第1キャンバ角から第2キャンバ角に調整するように構成しても良い。即ち、この場合には、消費エネルギーEの増加分EBが駆動エネルギーEAに達するまでの間に、車両1,201が所定の旋回状態とはならず、車輪2,202のキャンバー角をON状態に維持しておく必要がない。よって、車輪2,202のキャンバー角を速やかにOFF状態とすることで、消費エネルギーEの増加分EBが無駄に増加することを回避して、消費エネルギーEの抑制を図ることができる。
上記各実施の形態では、その説明を省略したが、車輪2,202のキャンバー角の調整を行う毎に、FL〜RRアクチュエータ44FL〜44RRの仕事率Pと、作動時間dt1,dt2とを計測すると共に、RAM73に記憶しておき、その記憶された各値の中の直近のものを使用して、駆動エネルギーEAの算出(S5)を行うように構成しても良い。駆動エネルギーEAは、車両1,201の乗員数や荷物、車輪2,202の空気圧の変化などに応じて、増減するところ、このように、仕事率Pや作動時間dt1,dt2を一定値ではなく、直近の測定値を使用して駆動エネルギーEAを算出することで、駆動エネルギーEAをより高精度に算出することができる。
上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのみのキャンバ角を調整する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これに加えて、左右の前輪202FL,202FRについてもそのキャンバ角も調整可能に構成することは当然可能である。この場合には、懸架装置504に代えて、懸架装置4を左右の前輪202FL,202FRに設ければよい。
但し、上記第2実施の形態のように、懸架装置4は左右の後輪202RL,202RRのみに設け、左右の前輪202FL,202FRについては、懸架装置504を設けることが好ましい。キャンバ角を調整する機能を左右の前輪202FL,202FRについては省略することで、その分、部品コストと制御コストとを削減して、製品コストの削減を図ることができると共に、駆動部・制御対象部の減少により、信頼性の向上を図ることができるからである。なお、このように、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角のみを調整可能とする構成であっても、本発明を適用することで、消費エネルギーEの抑制を図ることができる。
上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くして、前輪202FL,202FRの路面に対する摩擦係数を大きく、後輪202RL,202RRの路面に対する摩擦係数を小さくする(即ち、前輪202FL,202FRに対して後輪202RL,202RRを低転がり抵抗とする)ことで、制動性能および加速性能の向上を図りつつ、省燃費性能の向上を図る場合を説明した。かかる後輪202RL,202RRを、前輪FL,FRよりも低転がり抵抗とするための手法としては、必ずしもこれに限られるものではなく、他の手法を採用しても良い。
例えば、他の手法としては、左右の後輪202RL,202RRのトレッドを、左右の前輪202FL,202FRのトレッドよりも硬度の高い材料から構成し、左右の前輪202FL,202FRのトレッドを左右の後輪202RL,202RRのトレッドよりもグリップ力の高い特性(高グリップ性)とする一方、左右の後輪202RL,202RRのトレッドを左右の前輪202FL,202FRのトレッドよりも転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)とする第1の手法、左右の後輪202RL,202RRのトレッドのパターンを、左右の前輪202FL,202FRのトレッドのパターンよりも低転がり抵抗のパターンとする(例えば、左右の後輪202RL,202RRのトレッドのパターンをラグタイプ又はブロックタイプとし、左右の後輪202RL,202RRのトレッドのパターンをリブタイプとする)第2の手法、左右の後輪202RL,202RRの空気圧を、左右の前輪202FL,202FRの空気圧よりも高圧とする第3の手法、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの厚み寸法を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの厚み寸法よりも小さい(薄い)寸法とする第4の手法、或いは、これら第1から第4の手法および上記各実施の形態における手法(トレッドの幅を異ならせる手法)の一部または全部を組み合わせる第5の手法、が例示される。
また、上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅が、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも小さく(狭く)される場合を説明したが、これに加え、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を次のように構成することが好ましい。即ち、タイヤ幅L([mm])をタイヤ外径R([mm])で除した値(L/R)を0.1より大きく、かつ、0.4より小さくすることが好ましく(0.1<L/R<0.4)、0.1より大きく、かつ、0.3より小さくすることが更に好ましい(0.1<L/R<0.3)。操縦安定性を確保しつつ、転がり抵抗を小さくして、省燃費化の向上を図ることができるからである。なお、トレッドの幅は、リム幅よりも大きくタイヤ幅よりも小さな値となる。
上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭く構成する場合を説明した。この場合の左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅の設定方法について説明する。図7は、懸架装置4に支持された後輪302RL,302RRの正面図であり、図8は、懸架装置4に支持された後輪202RL,202RRの正面図である。なお、これら図7及び図8は、図2に対応する正面図であり、右車輪側のみが図示されると共に、懸架装置4の図示が簡略化されている。また、図7及び図8では、車体Bの外形を通る鉛直線(矢印U−D方向線、図2参照)を外形線S(即ち、車両1の全幅を示す線)として二点鎖線を用いて図示している。
後輪302RL,302RRは、上記各実施の形態で説明した前輪202FL,202FRと同じ寸法に構成された車輪である。ここで、車両201は、前後の全車輪202を懸架装置504により支持する既存の車両に対し、後輪側の懸架装置504にのみRL,RRアクチュエータ44RL,44RRによる伸縮機能を追加して懸架装置4とすることで構成された車両である。よって、車両201は、図7(a)に示すように、少なくともキャンバ角が定常角(=0°)においては、後輪302RL,302RRを外形線Sから外側に突出させない(即ち、保安基準を満たす)ように装着可能とされている。
しかしながら、後輪302RL,302RRのキャンバ角を調整する制御を行う場合には、図7(b)に示すように、後輪302RL,302RRが外形線Sを越えて外側へ突出し、保安基準を満たすことができないという問題点があった。そのため、後輪302RL,302RRのキャンバ角を調整可能な範囲が限定され、十分な角度のキャンバ角を付与することができないため、キャンバスラストを十分に得ることができないという問題点があった。
この場合、懸架装置4自体の配設位置を車両201の内側(図7(a)右側)へ移動させることで、キャンバ角の調整可能範囲を確保することも考えられるが、車両201に大幅な構造の変更を加えることが必要となるため、コストが嵩み、現実的でない。一方、後輪302RL,302RRのホイールオフセットを車輪中心線Cから車両201の外側(図7(a)左側)に移動させることで、車両201への構造の変更を行うことなく、比較的大きな角度のキャンバ角を後輪302RL,302RRに付与することが可能となる。しかしながら、この場合には、ホイールオフセットの分だけ、後輪302RL,302RR自体が車両201の内側へ移動することとなるので、車体Bとの干渉が避けられない。
そこで、本願出願人は、図8に示すように、後輪202RL,202RRのタイヤ幅Wlを狭くすることで、既存の車両(車両201)に大幅な構造の変更を加えることを不要とし、かつ、保安基準を満たしながら、キャンバ角の調整可能範囲を十分に確保して、キャンバスラストを十分に発揮させることを可能とする構成に想到した。
後輪202RL,202RRのタイヤ幅Wの設定方法について、図7から図9を参照して説明する。図9は、懸架装置4に支持された車輪の正面図を模式的に図示した模式図であり、キャンバ角θのネガティブキャンバが付与された状態が図示されている。
図9に示すように、車輪の幅寸法をタイヤ幅Wと、直径をタイヤ径Rと、タイヤ中心線(車輪中心線)Cからホイール座面Tまでの距離をホイールオフセットAと、それぞれ規定する。この場合、車輪が外側へ最も突出する位置であるタイヤ外側端Mから、車輪の回転軸とホイール座面Tとの交点である原点Oまでの水平方向の距離である距離Lは次のように算出される。
即ち、図9に示すように、車輪の回転軸と車輪の外側面との交点である位置Pと原点Oとを結ぶ距離は、タイヤ幅Wの半分の値からホイールオフセットAを除算した値(W/2−A)となるので、位置Pから原点Oまでの水平方向の距離である距離Jは、三角比の関係から、J=(W/2−A)・cosθとなる。
一方、位置Pとタイヤ外側端Mとを結ぶ距離は、タイヤ径Rの半分の値(R/2)となるので、タイヤ外側端Kから位置Pまでの水平方向の距離である距離Kは、三角比の関係から、K=(R/2)・sinθとなる。
よって、距離Lは、距離Jと距離Kとの和であるので、これらを加算して、L=(W/2−A)・cosθ+(R/2)・sinθとなる。この関係式をタイヤ幅Wでまとめると、W=2A−R・tanθ+2L/cosθとなる。
車輪のタイヤ外側端Mが車両201の外形線Sを越えて外側へ突出せず、保安基準を満たすためには、距離Lが、原点Oから外形線Sまでの水平方向の距離である距離Z(図7(b)及び図8(b)参照)より小さくなれば良い。よって、タイヤ幅Wを定める上記の式に対し、距離Lの最大値(即ち、距離Z)と、車輪に付与するキャンバ角θの最大値(例えば、3°)とを当てはめることで、車輪のタイヤ幅Wの最大値を決定することができる。
即ち、図7に示す後輪302RL,302RRについては、タイヤ外側端Mが外形線Sを越えて外側に突出しないための最大のキャンバ角をθwとすると、そのタイヤ幅Wwは、W=2A−R・tanθw+2Z/cosθwとなり、図8に示す後輪202RL,202RRについては、タイヤ外側端Mが外形線Sを越えて外側に突出しないための最大のキャンバ角をθlとすると、そのタイヤ幅Wlは、W=2A−R・tanθl+2Z/cosθlとなる。
なお、各車輪のトレッドの幅は、タイヤ幅Wを越えない範囲に設定される。なお、タイヤ幅Wの最小値は、タイヤ外側端Mをホイール座面Tよりも内側へ配置できないことから、ホイールオフセットAの2倍の値となる。
以上のように、タイヤ幅Wを定める上記の式によれば、車輪のタイヤ幅W(即ち、トレッドの幅)を狭くすることで、車輪に付与するキャンバ角θの最大値を大きくすることができる。即ち、上記各実施の形態で説明したように、後輪202RL,202RRのトレッドの幅(タイヤ幅W)を、前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くすることで、既存の車両(車両201)に大幅な構造の変更を加えることを不要とし、かつ、保安基準を満たしつつ、後輪202RL,202RRにおけるキャンバ角の調整可能範囲を確保して、キャンバスラストを十分に発揮させることができる。
なお、この場合には、前輪202FL,202FRのトレッドの幅を広くすることができるので、制動力の向上を図ることができる。特に、前輪202FL,202FRが駆動輪とされる本実施の形態においては、加速性能の向上を図ることができる。一方、後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くすることで、これら後輪202RL,202RRの転がり抵抗を、前輪202FL,202FRの転がり抵抗よりも小さくすることができ、その分、省燃費化を図ることができる。
上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭く構成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、前輪側(図1矢印F側)の車輪のトレッドの幅と後輪側(図1矢印B側)の車輪のトレッドの幅とを同一の幅とすることは当然可能である。このような実施の形態を第3実施の形態として、図10を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。図10は、第3実施の形態における車両301を模式的に示した模式図である。前輪302FL,302FRは、上記第2実施の形態で説明した後輪202RL,202RRと同じ寸法に構成された車輪である。
このように、前輪302FL,302FRと後輪202RL,202RRとを同じ寸法に構成した場合であっても、上記各実施の形態と同様の制御を適用することで、製品コストの低減を図りつつ、スラローム走行時におけるキャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。特に、本実施の形態における車両301によれば、前輪302FL,302FRのトレッドの幅が、後輪202RL,202RRのトレッドの幅と同一とされている(即ち、前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くされている)ので、その分、左右の前輪302FL,302FRの転がり抵抗を小さくすることができ、省燃費化を図ることができる。