JP2011036206A - 酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチチダーゼ活性の高い麹及びその製造方法、並びにその麹を用いた魚調味料 - Google Patents
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Abstract
【課題】
魚介類成分、または魚介類成分と穀類を培養原料として、一般汚染細菌が少なく酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼ活性及びクエン酸生産能が高い麹及びその製造方法、並びにかかる麹を用いることによる呈味性良好であると共に減塩の調味料、魚醤油を提供する。
【解決手段】
鰹節からエキスを浸出させる際に副生する抽出残渣に魚介類エキスを添加したもの、またはフィッシュミールを培地とし、或いは魚介類原料からエキスを浸出させる際に副生する抽出残渣に魚介類エキスを添加したもの、またはフィッシュミールに穀類を添加したものを培地として、高酸性プロテアーゼ及び高酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能を有する麹菌を培養して酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼ活性が高く有機酸、特にクエン酸を多く含むことで一般汚染細菌の少ない麹が得られる。また本発明においてはこのようにして得られた麹を使用して、必要に応じて諸味のpHを酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼ活性が充分働き、かつ酵素蛋白も安定であるような酸性pH領域に設定、維持することで減塩調味料、減塩魚醤油が提供される。
魚介類成分、または魚介類成分と穀類を培養原料として、一般汚染細菌が少なく酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼ活性及びクエン酸生産能が高い麹及びその製造方法、並びにかかる麹を用いることによる呈味性良好であると共に減塩の調味料、魚醤油を提供する。
【解決手段】
鰹節からエキスを浸出させる際に副生する抽出残渣に魚介類エキスを添加したもの、またはフィッシュミールを培地とし、或いは魚介類原料からエキスを浸出させる際に副生する抽出残渣に魚介類エキスを添加したもの、またはフィッシュミールに穀類を添加したものを培地として、高酸性プロテアーゼ及び高酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能を有する麹菌を培養して酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼ活性が高く有機酸、特にクエン酸を多く含むことで一般汚染細菌の少ない麹が得られる。また本発明においてはこのようにして得られた麹を使用して、必要に応じて諸味のpHを酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼ活性が充分働き、かつ酵素蛋白も安定であるような酸性pH領域に設定、維持することで減塩調味料、減塩魚醤油が提供される。
Description
本発明は、酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼ活性及びクエン酸生産能の高い麹及びその製造方法、並びにその麹を用いた魚調味料に関する。更に詳細には、本発明は、フィッシュミール、貝肉、海老残渣、等の魚介類成分、又はこれらフィッシュミール、貝肉、海老残渣、鰹節出汁抽出残渣等の魚介類成分に米、大麦、小麦等の穀類を添加したものを培地として、酸性プロテアーゼ生産能及び酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能の高い麹菌を生育させて、酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼの高い麹及びその製造方法に関する。本発明は又、上記方法で得られた麹をそのまま、又は麹と魚介類を使用することによる、諸味中の一般汚染細菌が少なく、魚特有の生臭さ、油臭さ、腐敗臭が少なく、色調の薄い高品質の魚調味料に関する。
魚介類又はそれに穀類を添加したものを培地とする製麹方法については従来提案されている。例えば、
魚介類抽出残渣に過熱処理炭水化物原料を添加して製麹する方法(特許文献1参照)、
節抽出残渣に割砕小麦を加えて鰹節麹菌を生育させる方法(特許文献2参照)、フィッシュソリュブルに澱粉粉末を添加して製麹する方法(特許文献3参照)、魚肉抽出残渣に豆腐生産時に副生する“おから”を添加して製麹する方法(特許文献4参照)、
鰹節抽出残渣等の魚介類成分に大麦等穀類を混合し、これに麹菌を接種して培養することを特徴とする高プロテアーゼ活性の穀物麹の製造方法(特許文献5参照)、
鰹節抽出残渣等の魚介類成分に魚介類エキス、又はフィッシュミールを添加し、ついでこれに麹菌を接種し、培養することを特徴とする高プロテアーゼ活性の魚麹の製造方法(特許文献6参照)
等が知られている。
魚介類抽出残渣に過熱処理炭水化物原料を添加して製麹する方法(特許文献1参照)、
節抽出残渣に割砕小麦を加えて鰹節麹菌を生育させる方法(特許文献2参照)、フィッシュソリュブルに澱粉粉末を添加して製麹する方法(特許文献3参照)、魚肉抽出残渣に豆腐生産時に副生する“おから”を添加して製麹する方法(特許文献4参照)、
鰹節抽出残渣等の魚介類成分に大麦等穀類を混合し、これに麹菌を接種して培養することを特徴とする高プロテアーゼ活性の穀物麹の製造方法(特許文献5参照)、
鰹節抽出残渣等の魚介類成分に魚介類エキス、又はフィッシュミールを添加し、ついでこれに麹菌を接種し、培養することを特徴とする高プロテアーゼ活性の魚麹の製造方法(特許文献6参照)
等が知られている。
しかしながら、これまでの麹製造技術においては、醤油麹菌に代表される黄麹菌を使用する方法が殆どであり、また麹中の麹菌以外の汚染菌に注目した検討は少ない。これまでに報告されている検討によれば、醤油麹中の細菌汚染に関する9工場の麹分析結果 非特許文献1によれば、総細菌汚染数は麹1g当たり107−109であった。その内Clostridium,Bacillus等のグラム陽性細菌数は104−106であった。
栃倉辰太郎著「醤油の科学と技術」(財)日本醸造協会発行1988年出版 111〜120頁
魚醤油の風味を改善して国内消費を拡大しようとする試みはこれまでに多数の報告があるが、それらの大部分は醤油麹を利用したものである。大豆と小麦を培地として醤油麹菌・アスペルギルス・ソーヤ (Aspergillus sojae) を生育させて得られる醤油麹はプロテアーゼ活性、カルボキシペプチダーゼ活性が高く、魚醤油の呈味性改善には適している。しかし、醤油麹を用いた場合には色調が濃口醤油に似た濃い褐色を呈すると共に、風味も醤油様を呈し、その結果魚醤油の特徴が薄まる危惧もある。
醤油麹以外の麹の作成方法については例えば上記した特許文献1〜特許文献6に記載されたものでは、プロテアーゼ活性のみを判断基準としており、カルボキシペプチダーゼ活性については言及されていない。周知のごとく、原料蛋白質がプロテアーゼによりペプチドに分解された後、カルボキシペプチダーゼ活性により生成する遊離アミノ酸は当該魚醤油の呈味性に深く影響する。また、魚介類、または魚介類と穀類を培地として醤油麹菌などの黄麹菌を生育させて得た麹は一般汚染細菌数が相当多くなる傾向が見られた。麹中の雑菌汚染特にグラム陽性細菌の混入は最終製品である魚調味料の品質に微妙に影響する。また、麹中の汚染菌が多い場合には、分解熟成作業中の増殖抑制のために食塩濃度を高めに設定することが必要となる。
プロテアーゼ活性及びカルボキシペプチダーゼ活性及びクエン酸生産能が高く、一般汚染細菌の汚染が少ない麹が得られれば、更に高品質の魚醤油などの魚介調味料を得ることが可能となる。
そこで、本発明は、魚介類原料からエキスを浸出させる際に副生する抽出残渣に魚介類エキスを添加したもの、またはフィッシュミールを培地とし、或いは魚介類原料からエキスを浸出させる際に副生する抽出残渣に魚介類エキスを添加したもの、又はフィッシュミールに穀類を添加したものを培地として、これに麹菌、特に高酸性プロテアーゼ生産能及び高酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及び高クエン酸生産能を有する麹菌を接種し、培養することにより、高酸性プロテアーゼ活性及び高酸性カルボキシペプチダーゼ活性及びクエン酸生産量大でかつ一般汚染細菌の混入が少ない麹及びその製造方法、並びにかかるクエン酸等の有機酸を多く含んだ麹を使用した減塩調味料、減塩魚醤油のような調味料を提供することを目的としている。
尚、本発明においては、一般汚染細菌とはペプトン-酵母エキス-寒天培地に生育する菌数から乳酸菌数を除いたものであり、バチルス属、クロストリジウム属細菌を主としたものである。
本発明者等は、魚介類、又は、魚介類に穀類を添加したものを培地として高酸性プロテアーゼ活性及び高酸性カルボキシペプチダーゼ活性及びクエン酸生産量大でかつ一般汚染細菌が少ない麹を製造する方法を検討した。その結果、魚介類原料からエキスを浸出させる際に副生する抽出残渣に魚介類エキスを添加したもの、又はフィッシュミールを培地とし、或いは魚介類原料からエキスを浸出させる際に副生する抽出残渣に魚介類エキスを添加したもの、又はフィッシュミールに穀類を添加したものを培地として、これに麹菌、特に高酸性プロテアーゼ及び高酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能を有する黒麹菌を接種し、培養することにより、高酸性プロテアーゼ活性及び高酸性カルボキシペプチダーゼ活性でかつ一般汚染細菌の混入が少ない麹を得ることが出来ることを見出した。本発明はこれらの新事実を基にしたものである。また、このようにして得られる麹菌が生産するクエン酸等の有機酸を多く含んだ麹を使用することで減塩調味料、減塩魚醤油の製造が可能となる。
本発明の第1の発明によれば、魚介類成分に酸性プロテアーゼと酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能の高い麹菌を接種し培養して、高プロテアーゼ活性、高カルボキシペプチダーゼ活性を有し、高クエン酸量で一般汚染細菌の少ないことを特徴とする麹が提供される。
本発明の第2の発明によれば、魚介類成分に穀類を添加して混合し、これに酸性プロテアーゼと酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能の高い麹菌を接種し培養して、高プロテアーゼ活性、高カルボキシペプチダーゼ活性を有し、高クエン酸量でかつ一般汚染細菌の少ない麹が提供される。
本発明の第1及び第2の発明による麹においては、魚介類成分は、鰹節からの出汁抽出残渣又はその乾燥物及び必要に応じて鰹エキスであり得る。また、魚介類成分は、魚頭、中骨、内臓、尾、鰭、海老頭、貝肉等を加熱乾燥、粉末化等の処理で得られるフィッシュミールから成り得る。
麹菌は、Aspergillus saitoi, Aspergillus awamori, Aspergillus tamari, Aspergillus niger, Aspergillus kawachi, Aspergillus usamiiであり得る。
また、本発明の第2の発明による麹においては、穀類と魚介類成分との混合比率は好ましくは乾燥重量概算で1:0.0〜2.0の範囲であり得る。また穀類は米、大麦、小麦等から成り得る。
本発明の第3の発明によれば、魚介類成分に乳酸菌を接種し、培養した後に、酸性培地条件で良好に増殖可能な、酸性プロテアーゼと酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能の高い麹菌を接種し、培養することを特徴とする麹の製造方法が提供される。
本発明の第3の発明による麹の製造方法においては、魚介類成分として、魚頭、中骨、尾、鰭、海老頭、海老尾、貝肉等の生で、又は加熱乾燥、粉末化したフィッシュミールが使用され得る。代わりに、魚介類成分として鰹節からの出し抽出残渣の未処理物、又は乾燥物、及び必要に応じて鰹エキスが使用され得る。また、麹菌としては、特にアスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamari)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)等の黒麹菌のうちの少なくとも一種又はその胞子が自然突然変異で色素を消失した白麹菌が用いられ得る。
本発明の一実施形態では、魚介類成分を含む培地に、米、大麦、小麦等の穀類が添加され得る。
本発明の第4の発明によれば、本発明の第1、又は第2の発明で得られる高酸性プロテアーゼ活性及び高酸性カルボキシペプチダーゼ活性及びクエン酸生産能を有して、かつ一般汚染細菌の少ない麹を魚調味料原料魚介類に少なくとも10〜20%添加して成る魚調味料が提供される。
本発明によれば、未利用副産物である鰹節抽出残渣等を原料として、麹菌等の使用により有機酸、高酸性プロテアーゼ活性及び高酸性カルボキシペプチダーゼ活性及びクエン酸を多く含み、一般汚染細菌の少ない麹を作ることができる。また、出汁生産時に大量に副生する鰹節抽出残渣の用途開発にも資するものであり産業上有用である。本発明で得られる麹は、従来の醤油麹、酒麹、醤油麹、味噌麹とは異なり、高酸性プロテアーゼ活性及び高酸性カルボキシペプチダーゼ活性が高いと共に、クエン酸生産量が大きく、しかも一般汚染細菌が少ないという特徴を有する。すなわち本発明で得られる麹は使用する麹菌の生産する有機酸、とりわけクエン酸の抗菌活性及び培地pH低下効果により一般汚染細菌数の少ない特徴を有する。
また、得られた麹の有する高い酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼ活性及びクエン酸生産量大を利用して、この麹を各種魚介原料と食塩、アルコール等の存在下で分解熟成をすることにより窒素濃度の高い呈味性良好な調味料を作ることが可能である。
さらにまた、クエン酸等の有機酸を多く含み、一般汚染細菌等の雑菌汚染が少ない性質、及び酸性領域で安定性及び分解活性が高い酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチダーゼ活性を豊富に含む性質を利用して、分解諸味のpHを酸性領域に設定管理して微生物汚染を防御することにより食塩濃度を下げた減塩調味料を得ることが可能である。
本発明による魚調味料は、着色の程度が低く、魚臭、生臭さ、腐敗臭等が抑えられたものであり、非常に市場性の高いものを提供できる。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
本発明の麹の培地原料とする魚介類としては作業の容易さから判断した場合には、鰹節出汁の生産時に副生する鰹節出汁粕が最も原料として適している。尚、鰹節出汁粕は鰹節を粉砕したのちに熱水で出汁を取ったあとに残る抽出残渣である。製麹には、出汁粕をそのまま、又は出汁粕を熱風乾燥等の処理を行ったもののいずれをも使用可能である。通常、麹菌に酸性プロテアーゼ及び酸性カルボキシペプチチダーゼ及びクエン酸生産を良好に生産させるために、培地に鰹エキス等を栄養源として添加するのが効果的である。
本発明の麹の培地原料とする魚介類としては作業の容易さから判断した場合には、鰹節出汁の生産時に副生する鰹節出汁粕が最も原料として適している。尚、鰹節出汁粕は鰹節を粉砕したのちに熱水で出汁を取ったあとに残る抽出残渣である。製麹には、出汁粕をそのまま、又は出汁粕を熱風乾燥等の処理を行ったもののいずれをも使用可能である。通常、麹菌に酸性プロテアーゼ及び酸性カルボキシペプチチダーゼ及びクエン酸生産を良好に生産させるために、培地に鰹エキス等を栄養源として添加するのが効果的である。
本発明の麹を生産するために使用する固体麹生産用の市場菌である麹菌は、アスペルギルス属に属する微生物であって、培地中に有機酸、特にクエン酸を生産するような麹菌であれば良い。例えばアスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi), アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori), アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamari), アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger), アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)を挙げることができる。これらの麹菌は一種類だけで使用しても良いが、複数種類を混合して種麹として接種することも可能である。
本発明における穀類とは、一般の穀類として使用可能なものであればいずれでも使用可能であり、特に制限はない。一般的な穀類としては、大麦(裸麦、皮麦)、米、燕麦、稗、粟、小麦、玉蜀黍、胡麻、大豆等が挙げられる。大麦、米等を使用すること、特に精麦、精米した原料を用いることで薄色の魚調味料を製造することが可能であると共に、アレルゲン原料を使用しない調味料を得ることができる。これらの調味料は小麦アレルゲン等の児童、患者等が居る学校、病院等の給食の調理材料としても非常に有用な調味料を生産することができる。
本発明の魚調味料の原料として麹と混ぜる魚調味料原料魚介類としての魚介類成分としては魚体全体、又は魚頭、中骨、内臓、尾、鰭、皮、海老頭、貝肉等、フィッシュミールが使用できる。また、鰹節出汁の生産時に副生する鰹節出汁粕を使用することで非常に呈味性、風味の良い上品な調味料を作ることが可能である。
製麹は実験室的には三角フラスコを用いて実施可能であり、培養規模を大きくする場合は各種の製麹実験装置、例えば培地量10kg規模では(株)フジワラテクノ製無菌円盤型小型製麹装置等を使用することができる。実機規模の最少レベルでは永田産業製回転円盤式製麹機を使うことで1バッチ300kg程度の麹を得ることができる。
製麹用の培地は通常麹菌を接種する前に120℃、15〜25分の加熱殺菌を行う。ついで、培地が35℃程度まで冷却後に麹菌胞子を接種する。約30℃の温度条件で2〜7日、好ましくは3〜5日間の培養を行う。途中、菌の培養が旺盛になった後に温度を25〜28℃に下げることで高い酸性プロテアーゼ活性及び酸性カルボキシペプチチダーゼ活性及びクエン酸を有する麹を作ることができる。小規模の実験では、保存菌株スラントから1白金耳の胞子を接種する。大量の場合には別に無菌的に調製した麹菌胞子を培地に振り掛ける。この麹菌胞子の調製は例えば(株)フジワラテクノ製無菌円盤型小型製麹装置等を用いることにより実施することができる。
本発明で得られる麹の酸性プロテアーゼ活性は、麹を10倍量のpH3の緩衝液で抽出し、濾過をして得られた濾過液の酵素活性を測定して計算した。尚、プロテアーゼ活性1単位(U)とは、pH3で60分間にチロシン1μg相当量のフェノール試薬発色生産物を生じるものと定義している。また、本発明で得られる酸性カルボキシペプチダーゼ活性は同様に麹を10倍量のpH3の緩衝液で抽出し、濾過をして得られた濾過液の酵素活性を測定して計算した。尚、酸性カルボキシペプチダーゼ活性1単位(U)とはpH3で1分間にチロシン1μモル相当量のニンヒドリン試薬発色生産物を生じるものと定義している。
本発明において、一般汚染細菌とは通常の酵母エキス、ペプトン寒天培地に生育する一般細菌総数からXM‐G寒天培地等で生育する乳酸菌数を差し引いた数である。その大部分は、バチルス属、クロストリジウム属細菌を中心とする。
本発明の方法で得られた魚介類のみを培地原料とする麹は、1g麹当たり約5〜12万単位の酸性プロテアーゼ活性を示した。また、1g麹当たり約5〜50単位の酸性カルボキシペプチダーゼ活性を示した。また1g麹当たりの一般汚染細菌は0〜5000の範囲であった。
本発明で得られた麹は、魚調味料原料魚介類に食塩、アルコール等の共存下に混合して分解、熟成することで、魚臭、生臭さを低減した呈味性良好な調味料を得ることができる。魚醤油生産においては通常は14〜18w/w%量の食塩を添加して行うが、本発明で得られる麹中には抗菌作用を有するクエン酸等の有機酸が多量に含まれ、酸性pH領域で酵素活性が高くまた安定である酸性プロテアーゼと酸性カルボキシペプチダーゼを豊富に含むため、諸味pHを酸性pHに調整、維持させることで汚染細菌数の少ない状態で食塩濃度を少なくした魚介調味料を製造することができる。その結果7〜13w/w%食塩濃度の健康に良い魚調味料を得ることが可能であった。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
鰹節を熱水抽出して鰹節出汁を生産する際に副生する鰹節抽出残渣を熱風乾燥して水分を約10%にしたもの5gと鰹エキス(鰹節生産時の煮汁を減圧濃縮してBRIX値で約60にしたもの)を水で20倍希釈した液0.3ml及び水2.7mlを300ml容の三角フラスコに入れシリコン栓を付けて120℃、15分加熱処理した。これにAspergillus usamii mut. shirousamii RIB‐2501の胞子をスラントから1白金耳接種した。培養中に時々シリコン栓を外して培養環境を無菌状態から開放した。5日培養後、得られた麹に10倍量の緩衝液を添加して5時間抽出し、次いで固液分離を行い、得られた濾過液の酵素活性を測定した。麹の酵素活性は麹1g当たり酸性プロテアーゼ活性が5万単位、酸性カルボキシペプチダーゼは30単位であった。また、培地に生産されたクエン酸は麹1g当たり40mgであった。一般汚染細菌数は1g麹当たり1000であった。尚、同様の培地、培養条件で代表的な醤油用麹菌(Aspergillus sojae)を用いた場合には一般汚染細菌数は1g麹当たり4×107であった。
鰹節を熱水抽出して鰹節出汁を生産する際に副生する鰹節抽出残渣を熱風乾燥して水分を約10%にしたもの5kgと鰹エキス(鰹節生産時の煮汁を減圧濃縮してBRIX値で約60にしたもの)を水で2倍希釈した液100ml及び、70%精白麦5kgを一晩水に浸漬した後、4時間水切りをしたものを混合して(株)フジワラテクノ製製麹装置で培養した。培地は120℃、15分加熱殺菌した。これにAspergillus saitoi R-3813の胞子を接種した。培養中に時々培養装置の蓋を外して培養環境を無菌状態から開放した。30℃で5日間培養後、得られた麹の一部に10倍量の緩衝液を添加して3時間抽出し、次いで固液分離を行い、得られた濾過液の酵素活性を測定した。麹の酵素活性は麹1g当たり酸性プロテアーゼ活性が6万単位、酸性カルボキシペプチダーゼは25単位であった。また、培地に生産されたクエン酸は麹1g当たり30mgであった。一般汚染細菌数は1g麹当たり500であった。尚、同じ培地、培養条件で代表的な醤油用麹菌(Aspergillus sojae)を用いた場合には一般汚染細菌数は1g麹当たり5×107であった。
鰹節を製造する際に副生する鰹の頭、中骨、尾、鰭等を原料として、これを加熱、乾燥、粉砕して製造したフィッシュミールを5gと鰹エキス(鰹節生産時の煮汁を減圧濃縮してBRIX値で約60にしたもの)を水で2倍希釈した液0.3ml 及び、70%精白麦2gを一晩水に浸漬した後、4時間水切りをしたものを300ml容の三角フラスコに入れシリコン栓を付けて120℃、15分加熱殺菌した。これにAspergillus usamii mut. shirousamii RIB-2501の胞子をスラントから1白金耳接種した。培養中に時々シリコン栓を外して培養環境を無菌状態から開放した。4日培養後、得られた麹に10倍量の緩衝液を添加して4時間抽出し、次いで固液分離を行い、得られた濾過液の酵素活性を測定した。麹の酵素活性は麹1g当たり酸性プロテアーゼ活性が3万単位、酸性カルボキシペプチダーゼは25単位であった。また、培地に生産されたクエン酸は麹1g当たり30mgであった。一般汚染細菌数は1g麹当たり5000であった。尚、同じ培地、培養条件で代表的な醤油用麹菌(Aspergillus sojae)を用いた場合には一般汚染細菌数は1g麹当たり3×108であった。
鰹節を熱水抽出して鰹節出汁を生産する際に副生する鰹節抽出残渣を熱風乾燥して水分を約10%にしたもの5kgと鰹エキス(鰹節生産時の煮汁を減圧濃縮してBRIX値で約60にしたもの)を水で2倍希釈した液100ml及び、70%精白麦5kgを一晩水に浸漬した後、4時間水切りをしたものをステンレス容器内で充分攪拌後(株)フジワラテクノ製製麹装置に投入した。120℃、15分加熱殺菌した。30℃迄放冷した後、これにAspergillus usamii mut. shirousamii RIB-2501の胞子を接種した。培養中に時々培養装置の上部蓋を外して培養環境を無菌状態から開放した。5日培養後得られた麹の一部に10倍量の緩衝液を添加して3時間抽出し、次いで固液分離を行い、得られた濾過液の酵素活性を測定した。麹の酵素活性は麹1g当たり酸性プロテアーゼ活性が3万単位、酸性カルボキシペプチダーゼは40単位であった。また、培地に生産されたクエン酸は麹1g当たり25mgであった。一般汚染細菌数は1g麹当たり4000であった。尚、同じ培地、培養条件で代表的な醤油用麹菌(Aspergillus sojae)を用いた場合には一般汚染細菌数は1g麹当たり7×108であった。
鰹節から出汁を熱水抽出する際の副産物である出汁粕(未乾燥品)375gに実施例2で得られた麹の一部63g、食塩63g、水375gを加えて、諸味pHを4.0に調整した後45℃で1ヶ月半分解熟成を行った。諸味を固液分離して濾過液を得た。濾液を80℃、30分加熱殺菌して魚調味料を得た。得られた魚調味料の分析値はpH4.3、全窒素1.5%、フォールモール窒素0.6%、食塩8.6%、比重1.094であり、風味良好な調味料が得られた。
鰹節生産時に副生する鰹頭、内臓、中骨、尾、鰭等をボーンカッターで粉砕した。この粉砕物4kgに水4リットル、食塩600g及び実施例2で得られた麹の一部600gを加えて、諸味のpHを3.5に調整したのち45℃で1ヶ月半分解熟成を行った。諸味を固液分離して濾過液3リットルを得た。濾液を80℃、30分加熱殺菌して魚調味料を得た。得られた魚調味料の分析値はpH 3.9、全窒素1.4%、フォールモール窒素0.5%、食塩8.4%、比重1.085であり、風味良好な魚調味料が得られた。
以上説明してきたように、本発明によれば、魚介類原料からエキスを浸出させる際に副生する抽出残渣に魚介類エキスを添加したもの、又はフィッシュミールを培地とし、或いは魚介類原料からエキスを浸出させる際に副生する抽出残渣に魚介類エキスを添加したもの、又はフィッシュミールに穀類を添加したものを培地として、有機酸、特にクエン酸生成能が高く、かつ酸性プロテアーゼと酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能の高い麹菌を培養することにより、高酸性プロテアーゼ及び高酸性カルボキシペプチダーゼ及びクエン酸生産量大でかつ一般汚染細菌の少ない麹を製造することができる。また、このようにして得られる麹を使用することで風味良好な減塩調味料、減塩魚醤油の製造が可能である。
本発明で得られる魚調味料は、めんつゆ、ラーメン、蒲鉾、炒め物、煮物、佃煮、珍味、漬物調味液、ドレッシング、ポン酢等の多くの食品製造に使用可能である。
本発明で得られる魚調味料は、めんつゆ、ラーメン、蒲鉾、炒め物、煮物、佃煮、珍味、漬物調味液、ドレッシング、ポン酢等の多くの食品製造に使用可能である。
Claims (17)
- 魚介類成分に酸性プロテアーゼと酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能の高い麹菌を接種し培養して、高プロテアーゼ活性、高カルボキシペプチダーゼ活性を有し、高クエン酸量で一般汚染細菌の少ないことを特徴とする麹。
- 魚介類成分が、鰹節からの出汁抽出残渣又はその乾燥物及び必要に応じて鰹エキスを含むことを特徴とする請求項1に記載の麹。
- 魚介類成分が、魚頭、中骨、内臓、尾、鰭、海老頭、貝肉等を加熱乾燥、粉末化等の処理で得られるフィッシュミールから成ることを特徴とする請求項1に記載の麹。
- 麹菌がAspergillus saitoi, Aspergillus awamori, Aspergillus tamari, Aspergillus niger, Aspergillus kawachi, Aspergillus usamiiであることを特徴とする請求項1に記載の麹。
- 魚介類成分に穀類を添加して混合し、これに酸性プロテアーゼと酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能の高い麹菌を接種し培養して、高プロテアーゼ活性、高カルボキシペプチダーゼ活性を有し、高クエン酸量でかつ一般汚染細菌の少ないことを特徴とする麹。
- 穀類と魚介類成分との混合比率が乾燥重量概算で1:0.0〜2.0の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の麹。
- 穀類が米、大麦、小麦等から成ることを特徴とする請求項5に記載の麹。
- 魚介類成分が、鰹節からの出汁抽出残渣またはその乾燥物及び必要に応じて鰹エキスを含むことを特徴とする請求項5に記載の麹。
- 魚介類成分が、魚頭、中骨、内臓、尾、鰭、海老頭、貝肉等を加熱乾燥、粉末化等の処理で得られるフィッシュミールから成ることを特徴とする請求項5に記載の麹。
- 麹菌がAspergillus saitoi, Aspergillus awamori, Aspergillus tamari, Aspergillus niger, Aspergillus kawachi, Aspergillus usamiiであることを特徴とする請求項5に記載の麹。
- 魚介類成分を含む培地に乳酸菌を接種し、培養した後に、酸性培地条件で良好に増殖可能な、酸性プロテアーゼと酸性カルボキシペプチダーゼ生産能及びクエン酸生産能の高い麹菌を接種し、培養することを特徴とする麹の製造方法。
- 魚介類成分として、魚頭、中骨、尾、鰭、海老頭、海老尾、貝肉等の生で、又は加熱乾燥、粉末化したフィッシュミールを使用することを特徴とする請求項11に記載の麹の製造方法。
- 魚介類成分として鰹節からの出し抽出残渣の未処理物又は乾燥物を使用することを特徴とする請求項11に記載の麹の製造方法。
- 魚介類成分に鰹エキスを添加することを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の麹の製造方法。
- 麹菌として、特にアスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamari)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)等の黒麹菌のうちの少なくとも一種又はその胞子が自然突然変異で色素を消失した白麹菌を用いることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の麹の製造方法。
- 魚介類成分を含む培地に、米、大麦、小麦等の穀類を添加することを特徴とする請求項11〜15のいずれか一項に記載の麹の製造方法。
- 請求項1に記載の麹又は請求項5に記載の麹を魚調味料原料魚介類に少なくとも10〜20%添加して必要に応じて諸味のpHを4.5〜3.0の範囲に調整し、維持して成ることを特徴とする魚調味料。
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CN103284150A (zh) * | 2013-05-16 | 2013-09-11 | 任峰 | 一种从鱼头中提取脑保健乳化液的制备方法 |
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