本発明に係る減速装置を車両用シート装置のシートチルト装置に実施した第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、シートチルト装置10を備えた車両用シート装置2の一部を示す斜視図であり、図2はシートチルト装置10の一部を示す分解斜視図である。なお、本明細書中において使用する「前後、左右(幅方向)、上下」の方向は、車両のそれを基準として記述する。
車両用シート装置2は、図1に示すように、ロアレール4、アッパレール6、図示しないシートクッションが取付けられるロアアーム8、シートチルト装置10を、主として構成される。シートチルト装置10は駆動モータ機構28を含み、モータ駆動装置28は図3に示す減速装置3を含む。この車両用シート装置2では、車両のフロア12には、車両の前後方向に延在するロアレール4がブラケット14により固定され、ロアレール4にはアッパレール6がスライド可能に組み付けられている。ロアレール4とアッパレール6とは、図略のロック・アンロック機構によって相対的なスライドがロック・アンロック状態に切り替わるようになっている。アッパレール6の上部にはブラケット部材16,18及びボルト・ナット20等によりロアアーム8が組み付けられ、ロアアーム8の後方上部には図略のリクライニング機構を介していずれも図略のシートバックのアッパアームが相対的回動可能に組み付けられている。
シートチルト装置10はロアアーム8の前方部に設けられている。シートチルト装置10は、図1及び図2に示すように、サイドフレームプレート22と、セクタギヤ24と、セクタギヤ24の一端部に設けられた外歯24aと噛合するピニオンギヤ26(図3参照)と、ピニオンギヤ26を駆動させる駆動モータ機構28と、セクタギヤ24の他端部で連結される揺動リンク部材30とから構成されている。サイドフレームプレート22は、図2に示すように、折曲された天板部22aと側面板部22bとが形成されている。そしてサイドフレームプレート22は、側面板部22bの後方端に形成された回動中心孔23が、ロアアーム8に設けられた取付孔32に取り付けられた取付ねじ25によって回動可能に軸支されている。この側面板部22bには、図2に示すように、駆動モータ機構28のピニオンギヤ26が貫通される貫通穴34と、駆動モータ機構28をロアアーム8に取り付けるための支持突部120(後述)の一方が貫通される長穴部36と、揺動リンク部材30の他端部(支持穴61)を係合する支持ビス63が係止される軸支孔40とが形成されている。
天板部22aには、図1に示すように、前縁パネル42がリベット44により固定される。この前縁パネル42は、図略のシートクッションの下面が固定されるクッションフレームの一部を構成する。
セクタギヤ24の中央部には、図2に示すように、回転中心穴46が形成され、一端部にはピニオンギヤ26と噛合する円弧状の外歯24aが設けられ、他端部には揺動リンク部材30と連結する作用穴60が穿設されている。また、セクタギヤ24には、外歯24aに円弧状に沿うガイド溝55が形成されている。このガイド溝55には支持突部120(後述)の一方が嵌入されてセクタギヤ24の揺動動作がガイドされる。回転中心穴46には、基端側より順に鍔部48a、周滑部48b及びセレーション部48cが設けられた固定ビス48のセレーション部48cが相対回転不能に組み付けられている。固定ビス48のセレーション部48cは、さらに駆動伝達ロッド50の先端部に相対回転不能に嵌着され、駆動伝達ロッド50は、他方に形成されたいずれも図略のリフタリンク部材、揺動リンク部材、サイドフレームプレート等により構成されるシートの左側のシートチルト装置10に駆動トルクを伝達する。固定ビス48の周滑部48bは、ロアアーム8の取付穴52に回動可能に軸支されている。
揺動リンク部材30は、図2に示すように、一端部に連結穴58が形成され、他端部に支持穴61が形成されている。連結穴58にはセクタギヤ24の他端部に形成された作用穴60とともに連結ビス56が挿通され、セクタギヤ24と揺動リンク部材30とが相対回動可能に連結される。揺動リンク部材30の他端部の支持穴61は、支持ビス63によりサイドフレームプレート22の軸支孔40に、回動可能に連結される。
駆動モータ機構28は、図1〜図3に示すように、モータ62と減速装置3とからなる。駆動モータ機構28は、車両用シート装置2への組付け状態においてロアアーム8の方向に向かって突設された2箇所の支持突部120を有する。図2、図4に示すように、支持突部120は、支持突部120の各先端面がロアアーム8の内側側面に当接され、ねじ部材128がロアアーム8の外側側面から支持突部120の貫通孔126に挿入される。そしてねじ部材128が、貫通孔126の奥部に形成されケーシング本体74に設けられた雌螺子部材109と螺結されることによって、駆動モータ機構28がロアアーム8に固定される。雌螺子部材109は金属製でケーシング本体74の螺子止穴108にインサート成形によって形成されている。
モータ62と、減速装置3とは、本発明にかかるモータ固定装置87によって固定されており、モータ62は、図略のコイル等からなるヨーク部67とハウジング63とからなる。ハウジング63はヨーク部67を支持する部材である。ハウジング63は嵌合部64を含む。
モータ固定装置87は、モータ62のハウジング63に設けられた嵌合部64と、嵌合部64に形成されたハウジング側被係合部64aとを有する。またモータ固定装置87はケーシング本体74に設けられた被嵌合部74aと、被嵌合部74aに形成されたケーシング本体側被係合部74bとを有する。そしてモータ固定装置87は、被嵌合部74aに嵌合部64が嵌合されたときに、嵌合部64が被嵌合部74aからモータ62の出力軸62a方向に抜けないようにするための係合突起76aを有する。係合突起76aはケーシング蓋体76に設けられ、整列したケーシング本体側被係合部74bとハウジング側被係合部64aとに、モータ62の出力軸62aと直交する方向から貫通して係合している。
嵌合部64は、図6のモータ固定装置87の断面図に示すようにハウジング63においてモータ62の出力軸62aの周りを囲み、出力軸62a周りに円筒状の空間部63aを形成しながら上下左右に各面が正対した略直方体形状にて形成されている(図5参照)。嵌合部64は、上下左右に配置される面が被嵌合部74aの内面に嵌合される。そして嵌合部64と被嵌合部74aとの間の上下左右各方向の隙間が微小になるよう構成されている。これによりケーシング本体74に対してモータ62の位置決めが、精度よく簡易に行なわれる。なお、嵌合部64が被嵌合部74aに嵌合されるとき、例えば左右の面が若干の圧入状態となってもよく、これによっても同様の効果が得られる。
嵌合部64のケーシング本体74側の端面には、モータ62の出力軸と同軸に形成される円筒状嵌合部としての先端凸部64dが突設されている。
ウォームギヤ72は図5、図6に示すように一端と他端の軸部にそれぞれ段部72a、72bを有している。図6において右側となる一端側の段部72aでは、ウォームギヤ72のスラスト軸と直交する端面である当接面72cと軸受部材65aのモータ62側端面とが当接し、ウォームギヤ72の、モータ62と対向する側への移動を規制している。
またモータ62側の他端側の段部72bでは、ウォームギヤ72のスラスト軸と直交する端面である当接面72dと、軸受部材65bのフランジ部65cが設けられた側の端面とが当接している。そして、フランジ部65cのモータ62側端面に、嵌合部64の先端凸部64dの端面が当接することによって、ウォームギヤ72のモータ方向への移動が規制されている。
ハウジング側被係合部64aは、モータ62の出力軸と直角方向に長手部分が形成された所定深さの溝であり、嵌合部64の上下面に開口部を逆にしてそれぞれ形成されている。ハウジング側被係合部64aは嵌合部64の左右の面に亘って形成されている。ハウジング側被係合部64aの長手方向と直交する断面形状は本実施形態においては、上下のいずれかの面が開口された長方形形状である。
ケーシング本体74に設けられた被嵌合部74aは、上下左右が被嵌合部壁74c、74d、74e、74fによって囲繞され、モータ62側の一面が開口されている。被嵌合部74a形状は、嵌合部64が嵌合できるように、被嵌合部壁74c、74d、74e、74fの各内面によって嵌合部64の外形形状と略同一形状である略直方体形状を呈した空間となっている。
図6の断面に示すように、被嵌合部74aのモータ62とは反対側の奥部には嵌合部64の先端に突設された先端凸部64dが収容されるための嵌合孔74gが設けられている。嵌合孔74gと先端凸部64dとの間の隙間は、嵌合部64と被嵌合部74aとの間の隙間より若干大きく形成されている。このようにすることによって、嵌合部64が被嵌合部74aに嵌合されたときの位置のバラツキが吸収でき、様々な条件において組み付けが可能となる。また、嵌合孔74gに先端凸部64dが嵌合されることにより、モータ62の支持強度は向上される。
嵌合部64の先端に設けられた先端凸部64dは、ケーシング本体74側が開口された円筒形状を呈し先端凸部64dの内部空間にはウォームギヤ72の他端側の先端部分が収容されている。
ケーシング本体側被係合部74bは、被嵌合部74aを形成する左右の壁74c、74dに、それぞれ2箇所ずつ長方形形状の孔が上下に並んで貫設されている。そして上下に並んで配置されたそれぞれのケーシング本体側被係合部74bは、嵌合部64が被嵌合部74aに嵌合されたときに嵌合部64のハウジング側被係合部64aと左右方向において整列するよう配置される。
減速装置3は、主にケーシング本体74と、ケーシング本体74の開口部78を閉塞するケーシング蓋体76と、ケーシング本体74内に配設されモータ62の出力軸62aとケーブル62bを介して連結されるウォームギヤ72と、ウォームギヤ72の軸部の一端と他端とを回動自在に軸承する軸受部材65a、65bと、ウォームギヤ72と噛合するヘリカルギヤ82とから構成される。
図6に示すように、モータ62の出力軸62aの先端部にはケーブル嵌合穴が形成されている。このケーブル嵌合穴と、減速装置3のウォームギヤ72の他端に形成されたケーブル嵌合穴との間にケーブル62bが介在されモータ出力軸62aとウォームギヤ72とが一体回転するように連結される。
軸受部材65a、65bはそれぞれケーシング本体74に設けられた軸孔88、89に嵌装されている。軸孔88、89は被嵌合部74aの開口部側から段付きのドリルやリーマによって同時に加工ができる。これにより軸孔88、89は高い同軸度によって形成できる。そして軸受部材65aは軸孔88に外周面が嵌装され、軸受部材65bは、軸受部材65bのフランジ部65cの外周面が軸孔89に嵌装されている。このように構成されるので軸受部材65a、65bは精度の高い同軸度を得ることができ、ウォームギヤ72の安定した回転作動が得られる。また、ケーシング本体74及びケーシング蓋体76は、例えばABS樹脂製である。そしてケーシング本体74にはウォームギヤ収納部84とヘリカルギヤ収納部86とが設けられている。なお、上記において軸孔88、89はドリル等にて加工するとした。しかしこれに限らず樹脂成形時に軸孔形状に加工されたピンを入れておき、成形後に抜くことによって形成してもよく、これによっても精度の高い同軸度が得られる。
ヘリカルギヤ収納部86にはヘリカルギヤ82がその軸心をウォームギヤ72の軸心と直交させて配設されている。ヘリカルギヤ82は、図4に示すように、その片面に短円柱状に突設された軸部82aがヘリカルギヤ収納部86の本体側軸受部94に回動自在に支持されている。
また、ウォームギヤ収納部84とヘリカルギヤ収納部86との間には開口部96が設けられ(図5参照)、開口部96においてウォームギヤ72とヘリカルギヤ82とが噛合するよう構成されている。ヘリカルギヤ82には、図5に示すように、その軸心穴98回りに等間隔で3箇所の係合溝100が設けられ、軸心穴98及び係合溝100には駆動軸としての出力ピニオンギヤ102が基端部において相対回転不能に嵌合されている。
出力ピニオンギヤ102の中央には、図4及び図5に示すように、ヘリカルギヤ82のスラスト荷重をうける鍔部102aが周設されている。出力ピニオンギヤ102の基端側には挿入軸102bが形成され、挿入軸102bの周囲には係合嵌部102cが鍔部102aに沿って等間隔で3箇所に形成されている。挿入軸102bはヘリカルギヤ82の軸心穴98に挿入され、係合嵌部102cはヘリカルギヤ82の係合溝100に係合される。これによって、ヘリカルギヤ82と出力ピニオンギヤ102とは一体回転する。出力ピニオンギヤ102の先端側軸部にはピニオンギヤ26が形成され、ピニオンギヤ26はセクタギヤ24の外歯24aと噛合される。出力ピニオンギヤ102の中間部には鍔部102aの先端側に接して周滑軸部104が形成され、この周滑軸部104において出力ピニオンギヤ102はケーシング蓋体76の蓋体側軸受部106に回転自在に支持される。
ケーシング本体74の開口部78の外側には、図4、図5に示すように、一対の取付肉盛部110が形成されている。一対の取付肉盛部110には螺子止穴108が貫設されている。螺子止穴108には金属製の雌螺子部材109がインサート成形により設けられ、雌螺子部材109は後述するねじ部材128と螺合される。またケーシング本体74の外側上部には一対の係止爪116が設けられ、ケーシング本体74の外側下部のウォームギヤ収納部84外周には被係止部118が設けられている(図3及び図5参照)。
ケーシング蓋体76においてケーシング本体74の取付肉盛部110に対向する位置には、ケーシング本体74と嵌合する側とは反対に突出する支持突部120が設けられている。支持突部120の内部は貫通孔126によって貫通されている。
支持突部120には取り付けられるロアアーム8の外側からねじ部材128が挿入され、ねじ部材128がケーシング本体74に設けられている螺子止穴108の雌螺子部材109に螺合して減速装置3をロアアーム8に取り付ける。
ケーシング蓋体76の外側上部には嵌合する側に延在する1対の係止アーム132が突設され、各係止アーム132はケーシング本体74の一対の係止爪116に夫々係止可能になっている。また、ケーシング蓋体76の外側下部には嵌合する側に延在する帯状係止部134が突設され、帯状係止部134はケーシング本体74の被係止部118に係止可能となっている。
ケーシング蓋体76には、ケーシング本体74に向って係合突起76aが2本突設されている。各係合突起76aは、ハウジング63の嵌合部64と、ケーシング本体74の被嵌合部74aとが嵌合された状態にて整列されたケーシング本体側被係合部74bと、ハウジング側被係合部64aとに係合するよう配置されている。各係合突起76aの断面形状は、ケーシング本体側被係合部74b、及びハウジング側被係合部64aの貫設された形状と略同等であり、若干外形が小さい形状である。
このようにモータ62のハウジング63と、ケーシング本体74とが嵌合され、ケーシング蓋体76がケーシング本体74に締結されると、ケーシング蓋体76の係合突起76aは、整列されたケーシング本体側被係合部74bと、ハウジング側被係合部64aとを貫通し係合する。これによりモータ62の出力軸スラスト方向にモータ62が抜けることは無く、確実にケーシング本体74に保持される。またこのとき、嵌合部64が、被嵌合部74aに隙間少なく嵌合される、又は圧入されるので、嵌合部64を備えるモータ62は、被嵌合部74aを備えるケーシング本体74に強度的にも強固に支持される。
なお、ケーシング本体側被係合部74bは本実施形態においては長方形形状にて形成された。しかし、これに限らず、ケーシング本体側被係合部74bの溝断面形状と同じであれば、どのような形状であってもよい。そして、該形状に合わせてケーシング蓋体76の係合突起76aの形状を変更してやればよい。
次に、上記のように構成された減速装置3の作動について、図1及び図2を参考図として以下に説明する。例えばシートチルト装置10を上昇させる場合、まず、モータ62を駆動させ、モータ62の駆動力を減速装置3を介して出力ピニオンギヤ102を回転させる(図3参照)。出力ピニオンギヤ102の回転によりピニオンギヤ26に噛合しているセクタギヤ24の外歯24aが下方に回動し、セクタギヤ24の作用穴60が上方に回動する(図2においてセクタギヤ24は時計方向に回動する)。この作用穴60に相対回動可能に連結穴58で連結された揺動リンク部材30はセクタギヤ24の回動に伴って上方へ移動する。
一方、揺動リンク部材30の支持穴61はサイドフレームプレート22の軸支孔40に連結されているので、揺動リンク部材30の上方への移動に伴い、サイドフレームプレート22は回動中心孔23を中心にして上方へ回動する。サイドフレームプレート22の上方への回動により、サイドフレームプレート22に固定された前縁パネル42及び図略のシートクッションの前方を上方に移動させる。このようにしてシートチルト装置10として作動する。
上述の説明から明らかなように、第1の実施形態によれば、嵌合部64と被嵌合部74aとを嵌合させてモータ62のハウジング63をケーシング本体74に組付けている。そしてケーシング蓋体76をケーシング本体74に締結するとき、ケーシング蓋体76に形成された係合突起76aをケーシング本体74のケーシング側被係合部74bとハウジング側被係合部64aに係合させてハウジング63がケーシング本体74から抜けないようにしている。このように非常に簡単な構造によって、スクリュを用いずにモータ62をケーシング本体74とケーシング蓋体76を含む減速装置3に確実に組みつけできるのでスクリュ部品の削減が図れるとともに、ケーシング本体74へのめねじの加工や、スクリュの組付け工程が削減でき、製造コストの低減を図ることができる。
また、第1の実施形態によれば、ウォームギヤ72の両側の軸部は、ケーシング本体74内に配置された軸受部材65a、65bによって軸承される。このように、ケーシング本体74の中のみで両側の軸受部が形成できるので、軸受部材65a、65b同士は高精度の同軸度が低コストで簡易に得られ、これによってウォームギヤ72の安定した回転が得られる。また、ドリル等によって形成された円筒孔に軸受部が設けられるので、軸受部はラジアル方向の荷重を確実に支持できる。
また、第1の実施形態によれば、ウォームギヤ72の軸部に設けられた段部72bの当接面72dと、モータ62側の軸受部材65bの端面とが当接するとともに、該軸受部材65bのフランジ部65cのモータ側端面と、円筒状嵌合部としての先端凸部64dの端面とが当接することにより、ウォームギヤ72のモータ62側への移動が規制され位置決めがされる。このように簡易な構造によってウォームギヤ72の位置決めができ製造コストの低減が図られる。
さらに、第1の実施形態によれば、ケーシング本体74とケーシング蓋体76との両方を軽量な樹脂で形成することで、減速装置3全体の軽量化・コスト削減を図ることができる。
次に第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は第1の実施形態に対し、モータ固定装置である嵌合部、及び被嵌合部の形状が一部異なるのみであるため、変更点のみ説明する。そして、第1の実施形態と同様の作用、構成については、説明を省略するとともに、説明図の中で、同じ部品については同じ符号をつけて説明する。
第2の実施形態において、モータ固定装置140の被嵌合部135aは、図7、図8に示すように、ケーシング本体135に形成された嵌合穴である。そしてハウジング136に設けられた嵌合部141は、嵌合凸部137と嵌合凸部137の先端に設けられた円筒状嵌合部138からなる。嵌合凸部137は略直方体形状で形成されている。
嵌合凸部137のケーシング本体135側端面の各角部からは、4つの係止部139がケーシング本体135方向に向って所定量立設されている。係止部139は嵌合凸部137の左右の面と平行な面をもつ板形状によって形成されている。4つの係止部139にはそれぞれハウジング側被係合部136bが左右に貫通して設けられている。ハウジング側被係合部136bの形状は第1の実施形態のケーシング側被係合部74bと同様である。円筒状嵌合部138は、嵌合凸部137の端面からモータ62の出力軸62aと同軸に所定量だけ突設されている。そして円筒状嵌合部138がケーシング本体135に形成された被嵌合部135aに嵌合され、位置決め及び、支持がされている。
円筒状嵌合部138が被嵌合部135aに嵌合されたとき、4つの係止部139はケーシング本体135の左右の面135c、135dの外側にそれぞれ配置される。そしてケーシング本体135には、モータの出力軸62aと直交しハウジング側被係合部136bと整列するように、ケーシング側被係合部135bがケーシング本体135の左右方向に貫設されている。ケーシング側被係合部135aの形状はハウジング側被係合部95aと同様である。
ケーシング蓋体76をケーシング本体135に締結するときには、ケーシング蓋体76に設けられた係合突起76aをまずハウジング136の手前側のハウジング側被係合部136bに係合させる。次に、係合突起76aをケーシング側被係合部135bに係合させ、最後にケーシング蓋体76と対向側のハウジング側被係合部136bに係合させる。このようにしてモータ62が出力軸62aのスラスト方向に抜けないようにした。これによっても第1の実施形態と同様の効果が得られる。
また、第2の実施形態によれば、被嵌合孔である被嵌合部135bにモータ62の出力軸62aと同軸に突設されたハウジング136の円筒状嵌合部138を嵌合させるという簡単な構造によって、ハウジング136をケーシング本体135に確実に組付けている。これによって、さらに安価で製作でき、簡易に固定装置を得ることができる。
なお、本実施形態においてはケーシング本体74、135及びケーシング蓋体76をABS樹脂製としたが、これに限定されず、例えばガラス繊維やアラミド繊維で強化された樹脂で形成されているものでもよい。
また、本実施形態においては、本発明に係る減速装置を車両用シート装置のシートチルト装置に適用させたが、これに限定されず、車両用シート装置のスライド機構の減速装置に適用させてもよい。