JP2011031541A - 親水性シリカコーティング発泡金属体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Ti、Cu、Ni、Al、Ag、ステンレス鋼等の何れかからなる発泡金属の骨格表面が、平均層厚0.01〜1μmのシリカで被覆されてなるシリカコーティング発泡金属体において、発泡金属の気孔率は50〜99体積%であり、また、発泡金属の少なくとも一つの最外面に開口する空隙の開口率は5〜80面積%であり、さらに、上記開口率は、該最外面に平行な発泡金属内部の任意断面における空隙の断面開口率より小さく形成されている。
【選択図】図1
Description
上記シリカをコーティングした多孔質金属体においては、いずれも、多孔質金属体の親水性向上が大きな課題とされ、種々の工夫がなされているが、例えば、発泡金属の骨格表面を、C:2.5〜15質量%を含有し、残部がシリカからなるシリカコーティング層を被覆形成することにより、親水性の向上を図ることが知られている(特許文献4参照)。
そこで、この発明では、長期の使用に亘っても、親水性の低下が生じることのないシリカコーティング発泡金属体を提供することを目的とする。
即ち、発泡金属の骨格表面が、平均膜厚0.01〜1μmのシリカで被覆されてなるシリカコーティング発泡金属体において、発泡金属に占める空隙全体の体積割合(以下、気孔率という)を50〜99体積%とするとともに、発泡金属の少なくとも一つの最外面、好ましくは、流体の流れ方向に沿って平行な、発泡金属の最外面、に開口する空隙の面積割合(以下、開口率という)は、該最外面の面積の5〜80面積%とし、かつ、最外面に開口する空隙の上記開口率を、該最外面に平行な発泡金属内部の任意の断面における空隙開口の面積割合(以下、断面開口率という)より小さくすることにより、シリカコーティング発泡金属体の毛細管力が長時間に亘って維持されるため親水性が格段に向上し、その結果、長時間の使用においても、シリカコーティング発泡金属体の親水性の劣化が生じないことを見出したのである。
そして、発泡金属に占める空隙全体の体積割合(気孔率)は、発泡金属の重量をWpおよび同じ外形寸法の中実体の同じ金属材料とした時の重量をWとした場合、
気孔率(体積%)=(W−Wp)/W×100
によって算出する。
開口率(面積%)=Ap/A×100
によって算出することができる。
断面開口率(面積%)=Acp/Ac×100
によって算出することができる。
「(1) 発泡金属の骨格表面が、平均膜厚0.01〜1μmのシリカで被覆されてなるシリカコーティング発泡金属体において、発泡金属の空隙全体の気孔率は50〜99体積%であり、また、発泡金属の少なくとも一つの最外面に開口する空隙の開口率は、該最外面の面積の5〜80面積%であり、さらに、最外面に開口する空隙の上記開口率は、該最外面に平行な発泡金属内部の任意の断面における空隙の断面開口率より小さいことを特徴とするシリカコーティング発泡金属体。
(2) 前記発泡金属の骨格が、Ti、Cu、Ni、Al、Ag、ステンレス鋼のうちのいずれかで構成されている前記(1)に記載のシリカコーティング発泡金属体。」
に特徴を有するものである。
ここで、被覆したシリカの平均膜厚は、シリカコーティング重量と発泡金属の比表面積から算出することができる。
気孔率が50体積%未満では、シリカコーティング発泡金属体中の毛細管として働く空隙が不足し、親水性向上効果を十分に発揮することができず、一方、気孔率が99体積%を超えると、シリカコーティング発泡金属体としての強度が不足するため、気孔率は50〜99体積%とすることが必要である。
図1(a)は、Ti製発泡金属(厚さ:2.0mm)の最外面の顕微鏡像であり、この顕微鏡写真により求めた開口率は14面積%であり、また、図1(b)は、上記Ti製発泡金属の厚さ中央部分かつ最外面に平行な断面における顕微鏡像であり、この顕微鏡写真により求めた厚さ中央部分断面に占める開口空隙の面積割合(断面開口率)は83面積%である。
図1(a),(b)にも例示したように、この発明では、発泡金属の最外面における空隙の存在割合と該発泡金属の内部における空隙の存在割合とを敢えて異ならしめることにより、シリカコーティング発泡金属体全体としての長期間使用による、毛細管力の低下を防止するとともに、親水性の劣化防止を図る。
まず、金属粉末と発泡剤とを含有する発泡性スラリーを作成する。
発泡性スラリーは、骨格を形成する金属粉末、バインダ(水溶性樹脂結合剤)、発泡剤および水と、必要に応じて界面活性剤および/または可塑剤とを混合することにより作成される。
より具体的には、まず金属粉末、バインダおよび水を含有するスラリーを作成した後、このスラリーに発泡剤を添加し、ミキサーなどの攪拌装置で攪拌する。金属粉末としては、特に限定されず、Ni,Cu,Ti,Al,Ag,ステンレス鋼等を用いることができる。
このように作成した発泡性スラリーから、成形装置を用いて、グリーンシートを形成する成形工程および発泡乾燥工程を行う。
成形装置は、ドクターブレード法を用いてシートを形成する装置であり、発泡性スラリーが貯留されるホッパ、ホッパから供給された発泡性スラリーを移送するキャリアシート、キャリアシートを支持するローラ、キャリアシート上の発泡性スラリーを所定厚さに成形するブレード(ドクターブレード)、発泡性スラリーを発泡させる恒温・高湿度槽、発泡したスラリーを乾燥させる乾燥槽を備えている。
なお、キャリアシートの下面は、支持プレートによって支えられている。
上記の成形装置において、まず、均一化した発泡性スラリーをホッパに投入しておき、このホッパから発泡性スラリーをキャリアシート上に供給し、キャリアシート上に供給された発泡性スラリーは、キャリアシートとともに移動しながらブレードによって薄板状に成形される。
次いで、薄板状の発泡性スラリーは、所定条件(例えば温度30℃〜40℃、湿度75%〜95%)の恒温・高湿度槽内を、例えば10分〜20分かけて移動しながら発泡する。続いて、この恒温・高湿度槽内で発泡したスラリーは、所定条件(例えば温度50℃〜80℃)の乾燥槽内を例えば10分〜20分かけて移動し、乾燥される。
これにより、スポンジ状のグリーンシートが得られる。
このようにして得られたグリーンシートを脱脂・焼結することにより、薄板状の焼結体を形成する。
具体的には、例えば真空中、温度550℃〜650℃、25分〜35分の条件下でグリーンシート中のバインダ(水溶性樹脂結合剤)を除去(脱脂)した後、さらに、真空中、1200℃〜1300℃、60分〜120分の条件下で焼結する。
なお、焼結後、圧延することにより、任意の厚さ、気孔率に調整することが可能である。
例えば、焼結後、5〜90%の圧延率で圧延することによって、本発明の気孔率50〜99体積%を得ることができる。
ここで、圧延率とは、[1−(圧延後の板厚/圧延前の板厚)]×100で表される。
また、開口率、断面開口率の調整については、金属粉末の種類、スラリーの組成、キャリアシートの表面状態、恒温・高湿度槽の条件(温度、湿度、時間、圧力等)、乾燥槽の条件(温度、時間、圧力等)によって変化するが、具体的な条件については後記実施例に示すとおりである。
なお、ここでは、シリカコーティングTi製発泡金属体、シリカコーティングCu製発泡金属体およびシリカコーティングNi製発泡金属体について説明するが、本発明はこれらに制限されるものではなく、Al、Ag、ステンレス鋼等の発泡金属からなるシリカコーティング発泡金属体についても適用できるものである。
金属粉末として平均粒径10μmのTi粉末、バインダ(水溶性樹脂結合剤)としてメチルセルロース10%を含む水溶液、可塑剤としてエチレングリコール、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、発泡剤としてネオペンタンを用意し、これらを原料粉末20質量%、水溶性樹脂結合剤10質量%、可塑剤1質量%、界面活性剤3質量%、発泡剤0.6質量%、残部:水となるように配合し、15分間攪拌し、発泡スラリーを作製した。
得られた発泡スラリーをブレードギャップ0.5mmでドクターブレード法によりキャリアシート上に成形し、恒温・高湿度槽に供給し、そこで温度35℃、湿度90%の恒温・高湿度槽内を20分かけて移動し、引き続き温度80℃の乾燥槽内を20分かけて移動し、スポンジ状のグリーンシートを作製した。
このグリーンシートをキャリアシートから剥離し、アルミナ板上に載せ、真空焼結炉で、雰囲気5×10−3Pa、温度550℃、180分間保持の条件で脱脂し、引き続いて真空焼結炉で、雰囲気5×10−3Pa、温度1200℃、1時間保持の条件で焼結し、圧延することにより、気孔率70%を有し、厚さ2.0mmを有し、かつ、表面に開口し内部の空隙に連続している連続空隙を有するTi製発泡金属を作製した。
得られたTi製発泡金属を縦20mm、横20mmの寸法になるように切断して試験片を作製した。
これらの試験片を、表1に示す配合割合のシリカコート液に浸漬し、大気乾燥機にて、60℃、60分間保持の条件で乾燥し、Ti製発泡金属からなる骨格表面に表2に示す平均膜厚のシリカコーティング層を形成し、本発明のシリカコーティングTi製発泡金属体1〜3(実施例1〜3という)を作製した。
金属粉末として平均粒径8μmのCu粉末、バインダ(水溶性樹脂結合剤)としてメチルセルロース10%を含む水溶液、可塑剤としてエチレングリコール、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、発泡剤としてネオペンタンを用意し、これらを原料粉末20質量%、水溶性樹脂結合剤10質量%、可塑剤1質量%、界面活性剤6質量%、発泡剤3質量%、残部:水となるように配合し、15分間攪拌し、発泡スラリーを作製した。
得られた発泡スラリーをブレードギャップ0.05mmでドクターブレード法によりキャリアシート上に成形し、恒温・高湿度槽に供給し、そこで温度35℃、湿度90%の恒温・高湿度槽内を20分かけて移動し、引き続き温度80℃乾燥槽内を20分かけて移動し、スポンジ状のグリーンシートを作製した。
このグリーンシートをキャリアシートから剥離し、アルミナ板上に載せ、大気中、温度450℃、180分間保持の条件で脱脂し、引き続いて水素雰囲気中、温度900℃、1時間保持の条件で焼結し、圧延することにより、気孔率93%を有し、厚さ0.2mmを有し、かつ、表面に開口し内部の空隙に連続している連続空隙を有するCu製発泡金属を作製した。
得られたCu製発泡金属を縦20mm、横20mmの寸法になるように切断して試験片を作製した。
これらの試験片を、表1に示す配合割合のシリカコート液に浸漬し、大気乾燥機にて、60℃、60分間保持の条件で乾燥し、Cu製発泡金属からなる骨格表面に表2に示す平均膜厚のシリカコーティング層を形成し、本発明のシリカコーティングCu製発泡金属体4〜6(実施例4〜6という)を作製した。
金属粉末として平均粒径5μmのNi粉末、バインダ(水溶性樹脂結合剤)としてメチルセルロース10%を含む水溶液、可塑剤としてエチレングリコール、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、発泡剤としてネオペンタンを用意し、これらを原料粉末20質量%、水溶性樹脂結合剤10質量%、可塑剤1質量%、界面活性剤3質量%、発泡剤1質量%、残部:水となるように配合し、15分間攪拌し、発泡スラリーを作製した。
得られた発泡スラリーをブレードギャップ0.3mmでドクターブレード法によりキャリアシート上に成形し、恒温・高湿度槽に供給し、そこで温度35℃、湿度90%の恒温・高湿度槽内を20分かけて移動し、引き続き温度80℃乾燥槽内を20分かけて移動し、スポンジ状のグリーンシートを作製した。
このグリーンシートをキャリアシートから剥離し、アルミナ板上に載せ、真空焼結炉で、雰囲気5×10−3Pa、温度550℃、180分間保持の条件で脱脂し、引き続いて真空焼結炉で、雰囲気5×10−3Pa、温度1000℃、1時間保持の条件で焼結し、圧延することにより、気孔率93%を有し、厚さ0.2mmを有し、かつ、表面に開口し内部の空隙に連続している連続空隙を有するNi製発泡金属を作製した。
得られたNi製発泡金属を縦20mm、横20mmの寸法になるように切断して試験片を作製した。
これらの試験片を、表1に示す配合割合のシリカコート液に浸漬し、大気乾燥機にて、60℃、60分間保持の条件で乾燥し、Ni製発泡金属からなる骨格表面に表2に示す平均膜厚のシリカコーティング層を形成し、本発明のシリカコーティングNi製発泡金属体7〜9(実施例7〜9という)を作製した。
即ち、実施例1〜3と同様な方法で、Ti製発泡金属試験片を作製した後、Ti製発泡金属試験片を、シランカップリング剤(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)を10倍率のエタノールで希釈(比較例1)、または、50倍率のエタノールで希釈(比較例2)、または、100倍率のエタノールで希釈(比較例3)した溶液に浸漬し、大気乾燥機にて50℃、10分間保持の条件で乾燥した。その後、これを大気中、温度400℃、10分間保持の焼成を行い、骨格表面にシリカコーティング層を形成し、比較例のシリカコーティング多孔質Tiを作製した。
参考例2のシリカコーティングTi製発泡金属体の作成手順は次のとおりである。
まず、金属粉末として平均粒径20μmのTi粉末、バインダ(水溶性樹脂結合剤)としてメチルセルロース、可塑剤としてエチレングリコール、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、これらを原料粉末20質量%、水溶性樹脂結合剤7質量%、可塑剤1質量%、界面活性剤0.1質量%、残部:水となるように配合し、30分間攪拌し、発泡スラリーを作製した。
得られた発泡スラリーをブレードギャップ0.5mmでドクターブレード法によりキャリアシート上に成形し、恒温・高湿度槽に供給し、そこで温度35℃、湿度90%の恒温・高湿度槽内を5分かけて移動し、引き続き温度110℃の乾燥槽内を5分かけて移動し、スポンジ状のグリーンシートを作製した。
このグリーンシートをキャリアシートから剥離し、アルミナ板上に載せ、真空焼結炉で、雰囲気5×10−3Pa、温度550℃、180分間保持の条件で脱脂し、引き続いて真空焼結炉で、雰囲気5×10−3Pa、温度1200℃、1時間保持の条件で焼結し、圧延することにより、気孔率45%を有し、厚さ0.8mmを有し、かつ、表面に開口し内部の空隙に連続している連続空隙を有するTi製発泡金属を作製した。
得られたTi製発泡金属を縦20mm、横20mmの寸法になるように切断して試験片を作製した。
これらの試験片を、表1に示す配合割合のシリカコート液に浸漬し、大気乾燥機にて、60℃、60分間保持の条件で乾燥し、Ti製発泡金属からなる骨格表面にシリカコーティング層を形成することにより、参考例2のシリカコーティングTi製発泡金属体(参考例2)を作製した。
上記の実施例1〜9、比較例1〜3および参考例1,2について、長期間使用条件下における親水性の良否を評価するため、以下の条件で親水性評価試験を実施した。
即ち、常温の水道水20mL/分の流水に1時間浸漬し、その後、大気中150℃で2〜12時間乾燥し、この試料を用い、スポイトにて蒸留水0.005mlを滴下し、蒸留水が吸い込まれるか、それとも、液滴のまま残るかを観察することにより、親水性の有無を判断した。
この操作を繰り返し行ない、液滴のまま残ることにより親水性無と判断されるまで続け、親水性が保持された回数を表2に示した。
これに対して、比較例1〜3および参考例1,2では、親水性保持回数はせいぜい53回以下であり、本発明に比して、長期間の使用条件下における親水性がはるかに劣ることが分かる。
Claims (2)
- 発泡金属の骨格表面が、平均膜厚0.01〜1μmのシリカで被覆されてなるシリカコーティング発泡金属体において、発泡金属の空隙全体の気孔率は50〜99体積%であり、また、発泡金属の少なくとも一つの最外面に開口する空隙の開口率は、該最外面の面積の5〜80面積%であり、さらに、最外面に開口する空隙の上記開口率は、該最外面に平行な発泡金属内部の任意の断面における空隙の断面開口率より小さいことを特徴とするシリカコーティング発泡金属体。
- 前記発泡金属の骨格が、Ti、Cu、Ni、Al、Ag、ステンレス鋼のうちのいずれかで構成されている請求項1に記載のシリカコーティング発泡金属体。
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