JP2008153167A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】カソード側に水が発生しても、空気の取入れを十分に確保して、発電時の出力のばらつきを低減する燃料電池の提供。
【解決手段】燃料電池100は、カソード側触媒5が固体高分子電解質膜1と向かい合う側とは反対側において、カソード側触媒5に向けて空気を拡散する多孔質体を備える。多孔質体は、第1多孔質部分10と、第1多孔質部分10に接続され、第1多孔質部分10よりも空気が通過する割合が低い第2多孔質部分20とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体高分子電解質膜と、固体高分子電解質膜の両面に配置されるアノード側触媒及びカソード側触媒とを備える燃料電池に関し、特に、携帯機器等の電源に用いるパッシブ型の燃料電池に関する。
近年、ノート型パソコンや携帯電話等のモバイル機器の電源として、従来の二次電池に変わり、高エネルギー密度を有する燃料電池が注目されている。これらの燃料電池の反応は固体高分子電解質膜−触媒−反応ガスの3者が接する界面(三相界面)で支配的に起こるとされている。
そのため効率的に発電するためには、良好な三相界面を常に維持しなければならない。特にカソード側においては、触媒に隣接するガス拡散層(GDL)には、(1)電子導電性が高いこと、(2)ガスの拡散性・通気性が高いこと、(3)反応で生成した水または水蒸気を効率的に排出すること、(4)電気化学的に安定であること等の機能が求められる。これらの機能を満たすGDLとして、カーボン製や金属製の材料が多く用いられてきた(例えば特許文献1参照)。
特開平6-5289
従来のカーボンペーパーと呼ばれる材質を用いた場合は、カソード側において、発電によって生じた水分の蒸発が十分ではなくフラッディングを起こし、カソード側で必要とする酸素の取入れを阻害し、出力の低下が見られていた。しかしながら、軽量化の必要がある携帯機器向けの燃料電池において、カソード側に送風機(ファン)等の補器を用いることは機器の重量を考慮すると不利になる。そのため、上述の送風機などの補器を用いない方法として、空隙度がカーボンペーパーより高い発泡金属を撥水処理し、当該発泡金属を介して発電によって生じた水を排出することが考えられる。
しかし、大きな電流密度で発電した場合、一度蒸発した水が再度凝縮して、水となり、燃料電池の姿勢によっては当該水が発泡金属に存在し続けることがある。これにより、発泡金属に存在している水が空気の取入れを阻害し、空気の取り入れが面内で不均一となり、発電時の出力が低下するという問題が生じていた。
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、カソード側に水が発生しても、空気の取入れを十分に確保して、発電時の出力のばらつきを低減することができる燃料電池を提供することを目的とする。
上記に示す課題を解決するために、本発明に係る第1の特徴は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の両面に配置されるアノード側触媒及びカソード側触媒とを備え、前記アノード側触媒に供給された燃料及び前記カソード側触媒に供給された空気を用いて発電する燃料電池であって、前記カソード側触媒が前記固体高分子電解質膜と向かい合う側とは反対側において、前記カソード側触媒と向かい合わせに配置され、前記カソード側触媒に向けて前記空気を拡散する多孔質体を備え、前記多孔質体は、第1多孔質部分と、前記第1多孔質部分に接続され、前記第1多孔質部分よりも前記空気が通過する割合(以下、空隙度)が低い第2多孔質部分とを備えることを要旨とする。
かかる特徴によれば、第2多孔質部分は第1多孔質部分よりも空隙度が低いことにより、発電によって生じた水は、いわゆる毛細管現象によって、第1多孔質部分から、その部分よりも密度が高い第2多孔質部分に向けて移動して外部に排出される。このため、カソード側に水が発生しても、空気の取入れを十分に確保することができるとともに、発電時の出力のばらつきを低減することができる。
本発明に係る第2の特徴は、前記第1多孔質部分が前記第2多孔質部分によって囲まれることを要旨とする。
本発明に係る第3の特徴は、前記第1多孔質部分は、前記第1多孔質部分の中心部分及び周縁部分を備えており、前記第1多孔質部分は、前記第1多孔質部分が前記カソード側触媒と向かい合う側とは反対側において前記中心部分が前記周縁部分よりも突出されており、前記中心部分から前記周縁部分に向けて傾斜していることを要旨とする。
本発明に係る第4の特徴は、前記第1多孔質部分が前記第2多孔質部分の側方に配置されることを要旨とする。
本発明に係る第5の特徴は、前記第1多孔質部分及び前記第2多孔質部分のそれぞれが球状の空孔を複数備えており、前記空孔のそれぞれが、前記第1多孔質部分から前記第2多孔質部分に向かうに従って、前記空孔の大きさが徐々に小さくなっていることを要旨とする。
本発明に係る第6の特徴は、前記第1多孔質部分及び前記第2多孔質部分は複数備えられており、前記第1多孔質部分及び前記第2多孔質部分は、交互に配置されることを要旨とする。
本発明に係る第7の特徴は、前記第2多孔質部分に接触して配置され、前記発電により発生した水を吸い取る吸水部材を備えることを要旨とする。
本発明に係る第8の特徴は、前記第1多孔質部分及び前記第2多孔質部分の総面積に対する前記第1多孔質部分の面積の割合が、20%以上90%未満であることを要旨とする。
本発明に係る特徴によれば、カソード側に水が発生しても、空気の取入れを十分に確保して、発電時の出力のばらつきを低減することができる。
(第1実施形態)
以下、本発明に係る燃料電池の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図面において同一の引用符号で表した構成要素は、各図面共通で同一の構成要素を示すものとする。
図1は、本実施形態に係る燃料電池の概略構成図である。図1に示すように、燃料電池100は、固体高分子電解質膜1と、固体高分子電解質膜1の両面に配置されるアノード側触媒2及びカソード側触媒5とを備える。燃料電池1は、アノード側触媒2に供給された燃料及びカソード側触媒5に供給された空気を用いて発電するものであり、カソード側触媒5が固体高分子電解質膜1と向かい合う側とは反対側において、カソード側触媒5と向かい合わせに配置され、カソード側触媒5に向けて空気を拡散する多孔質体(10,11)を備える。
本実施形態に係る多孔質体は、第1多孔質部分10と、第1多孔質部分10に接続され、第1多孔質部分よりも空気が通過する割合(空隙度)が低い第2多孔質部分20とを備える。
ここで、プロトン導電性の樹脂からなる固体高分子電解質膜1の両面にアノード側触媒2とカソード側触媒5を配置し、それぞれの触媒が向かい合う側とは逆側の面にアノード側のガス拡散層3及びカソード側のガス拡散層6を配置した。また、アノード側のガス拡散層3には、集電体4を配置した。さらに、カソード側のガス拡散層6と集電体8の間には、カソード側に付加したガス拡散層7を配置した。このカソード側に付加したガス拡散層7のみを取り出して、図2に記載する。
図2に示すように、カソード側に付加したガス拡散層7において空隙度の高い部分と空隙度の低い部分を作り分け、それぞれ平面内に二分割して配置した。この空隙度の高い部分10と空隙度の低い部分11をそれぞれ第1多孔質部分10と第2多孔質部分11とする。
ここで、各部材の詳細を説明する。アノード側触媒2およびカソード側触媒5は微粒子状の触媒を担持したカーボン粒子を含む。アノード側触媒2とガス拡散層3の間または、およびカソード側触媒5とガス拡散層6の間にPTFEなどで撥水処理を施したカーボン粒子で構成される導電性を有する撥水層を形成することができる(図示しない)。
本発明の燃料電池で用いるプロトン導電性の樹脂からなる固体高分子電解質膜1は、常温で、プロトン導電性を示すパーフルオロ樹脂膜やエンジニアリングプラスチックの複合化等のグラフト重合膜、部分フッ素化膜、炭化水素系の膜などを用いることが出来るが、プロトン導電性を有していればそれらの材質に限定されない。
カソード側触媒5、及び、アノード側触媒2に用いる触媒は白金を担持したカーボンと固体高分子電解質で構成された材料を用いることが出来る。また、電極の触媒として、白金等の貴金属に限らず各種合金や酸化物を用いる事が出来る。
導電性を有する多孔質体で構成されるカソード側に付加したガス拡散層7は、通気性能や通液性能以外にも、電子伝導性に富み、耐食性が高く、機械的強度を有することが要求される。そのため、機械的強度を持たせた骨格と電子伝導性を持たせた伝導層と耐食性の保護層の3つの機能をそれぞれ異なる種類の材料で構成されていても良いが、3つの異なる機能を金属の単体または合金で行なうことも可能である。例えば、金属チタン、金属ニッケル、又は、ニッケル−クロムの合金、又は、ステンレス鋼を使用することができる。
カソード側に付加したガス拡散層7は、金属繊維の焼結体、粉末金属の焼結体、導電性処理を施した樹脂にさらに金属メッキを施し焼結した材質等を用いることができる。さらに、カソード側に付加したガス拡散層7として、金属製ワイヤーを編んだ網やエキスパンドメタルを組み合わせて用いることができる。空隙度や通気の連通孔を考慮すると、カソード側に付加したガス拡散層7として、金属製の発泡金属体を用いることが最も望ましい。
カソード側に付加したガス拡散層7として、発泡金属体を用いた場合、骨格が海綿のように3次元の網目状になっているため、非常に高い空隙度により高い通気性能または通液性能を有する。発泡金属体の製法は、原粉粉末と、水溶性樹脂バインダーと、非水溶性炭化水素系有機溶剤である発泡剤と、必要に応じて添加される界面活性剤と、残部の水および不可避不純物とを混合してなる発泡スラリーを原料として、焼成された発泡焼結金属によって構成された発泡金属体でも良い。あるいは、発泡ウレタンに導電性処理を行ってからメッキを施し、必要に応じて熱処理を行うメッキプロセスで製造した発泡金属体でも良い。
カソード側に付加したガス拡散層7には、多孔質体の空隙度が高い部位と多孔質体の空隙度が低い部位を作製する。多孔質体の空隙度が高い部位とは、空気の通気性を高めるには空隙度が大きい方が好ましく、空隙度を70%以上とし、多孔質体の空隙度が低い部位とは、空隙度を70%未満とする。
上記カソード側に付加したガス拡散層7を電極に組み込む際は、酸化防止のために金をコートすることが望ましい。金をコートする方法は電解メッキ、無電解メッキ、溶射、蒸着、スッパリング、金属溶射等のいずれの方法を用いることができる。
また、カソード側に付加したガス拡散層7で、カーボン製多孔質体と接する面は酸化皮膜の除去を行なうことが好ましい。酸化皮膜の除去はサンドペーパーやサンブラストなどの物理的除去や塩酸、硫酸、硝酸等の酸性溶液で酸洗処理を行うなどの化学的除去を用いることが出来る。
撥水化処理は黒鉛等のカーボンを塗布する方法、フッ素を含有する有機物を塗布する方法、などを用いることで可能となる。カーボンの場合は前述の方法のほかにバインダーと混合した溶液やスラリーを塗布することも可能である。フッ素を含有する有機物を塗布の方法として、フッ素含有物を加熱炉中に配置し、前記のフッ素を含有する有機物の分解温度近傍(400℃未満)まで熱処理し、その分解蒸気を当てることで被覆することができる。または、おおよそ粒径が1〜15μmに揃ったフッ素を含有する有機物の微粒子を水、アルコール又はその他の有機溶剤に分散させた分散溶剤中に、カソード側に付加したガス拡散層7を浸漬後、カソード側に付加したガス拡散層7を引き上げ、カソード側に付加したガス拡散層7の表面に付着した余分な溶剤を除去後、カソード側に付加したガス拡散層7に塗布されたフッ素を含有する有機物の分散溶剤の溶媒の沸点以上の温度に加熱することにより溶媒を乾燥除去し、その後、フッ素を含有する有機物の分解温度近傍の温度(400℃未満)を用い加熱炉内で、熱処理することが出来る。
ここで、フッ素を含有する有機物として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)などを用いることができる。
さらに、特に、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)を用いる場合は、N−メチルピロリドン等の有機溶媒に希釈後、カソード側に付加したガス拡散層7を浸漬後、前出の方法を用いて、塗布することができる。
フッ素を含有する有機物の塗布に伴う熱処理は大気中、または、真空中の何れかで実施することが出来るが、真空中で行なうことがより望ましい。
カソード側のガス拡散層6またはアノード側のガス拡散層3として、紙状の“カーボンファイバーペーパー(以下、CFPと略す)”を用いることができる。カーボンファイバーペーパーは、短繊維をバインダーで結着させて作製したカーボン材料においては短繊維の10mm以上を用いることができる。または、複数本の炭素繊維 が集合してなる緯糸と経糸とで構成される織物を用いることが好ましい。この複数本の炭素繊維 が集合してなる緯糸と経糸とで構成される織物を “カーボンクロス(以下、CLと略す)”と呼ぶ。カーボン材料の純度は85%以上が好ましく、その密度は1.72〜2.1g/ccが好ましい。繊維径は1〜20μmが好ましい。緯糸と経糸とで構成される織物の場合、緯糸および経糸の密度は15〜25本/cmが好ましく。カーボン材料の密度は8〜200g/m2を有することが好ましく、より好ましくは、80〜200g/m2を有することが好ましい。そのカーボン材料を無加重における厚さは180〜450μmが好ましく、より好ましくは、280〜400μmである。その生地は、平編、フライス編、鹿の子編等を用いることができるが、平編みが好まれる。炭素材料の空隙度は70〜90%が好ましい。
ここで、カソード側のガス拡散層6の通気性の低下や生成物の排出性に影響の度合いから、カソード側のガス拡散層6およびカソード側に付加したガス拡散層7の積層方向の総厚さは5mm以下が好ましい。
さらに、撥水性のカーボン層は導電性を有するカーボンと上述したフッ素を含有する有機物の混合物を用いて、形成することができる。撥水性のカーボン層に用いる導電性を有するカーボンとして、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ランプブラックで分類されるカ−ボンブラック類は特異な粒子形状により比表面積が大きく好ましい。比表面積は用いる炭素質材料の種類によっても異なるが、同一炭素質材料であっても粉砕工程を経た後の粒径の分布の度合いによっても異なる。本発明でもちいる炭素質材料は比表面積(BET法)が5〜1500m2/gに分布していることが好ましい。
カソードに付加したガス拡散層7から直接電極のリード8を接触による電気的接続より、通電を行うことが出来る。さらに、リードの接続方法は抵抗溶接、レーザー溶接、超音波溶接等の手段を組み合わせて用いることができる。
本実施形態に係る燃料電池100はカソード側触媒5が大気に暴露し、アノード側触媒2に燃料を供給する。燃料とする水素は水素発生物質と水素発生を促進する物質を組み合わせることで発生させる。例えば、水素発生物質として水素化ホウ素ナトリウムと、水素発生を促進する物質として酸性水溶液を組み合わせて用いることが出来る。
かかる特徴によれば、第2多孔質部分11は第1多孔質部分10よりも空隙度が低いことにより、発電によって生じた水は、いわゆる毛細管現象によって、第1多孔質部分10から、その部分よりも密度が高い第2多孔質部分11に向けて移動して外部に排出される。このため、カソード側に水が発生しても、空気の取入れを十分に確保することができ、発電時の出力のばらつきを低減することができる。
具体的には、水素を燃料ガスとする携帯機器向けの燃料電池において、この多孔質体の空隙度の高い部分と低い部分を作り分け、その空隙度を連続的に変化させたことによって毛細管現象が発現し、この作用によりカソード側で生じた水が”多孔質体の空隙度の低い部位(第2多孔質部分11である密部)”に集まる。これにより、”多孔質体の空隙度の高い部位(第1多孔質部分である疎部)”では水が排出されるため、カソード側から安定的に空気を取り入れることができる。
さらに、空隙度の低い部位が直線状に連続して、線状に配置されているため、この様に線状に配置した空隙度の低い部分が流路として機能する。そのため、”多孔質体の空隙度の低い部位(密部)”における水は、当該流路を通じて外部へ効率的に排出され、ガス拡散層の外側に配置した吸水剤で水を効果的に回収することができる。
なお、”多孔質体の空隙度の低い部位(密部)”と”多孔質体の空隙度の高い部位(疎部)”が電極の面方向の全面に繰り返されることにより、多孔質体部分における水をさらに効率的に排出することができ、発電の電気化学反応を面全体で平均化することができるとともに、発電における面内の出力分布のばらつきを緩和することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、第1多孔質部分10と第2多孔質部分11とが並行に配置されているが、第2実施形態では、第1多孔質部分12は、第2多孔質部分13によって囲まれる点で相違する。以下では、第1実施形態と相違する部分についてのみ説明する。
図3は、本実施形態に係る第1多孔質部分及び第2多孔質部分を示す斜視図である。図3に示すように、多孔質体の空隙度の低い第1多孔質部分12と高い第2多孔質部分を作り分け、それぞれを平面内の中心部と周囲に配置した。
かかる特徴によれば、第1多孔質部分12が第2多孔質部分13に囲まれることにより、第1多孔質部分12に発生した水が第2多孔質部分13に向って放射状に移動する。このため、第1多孔質部分12から第2多孔質部分13に向けて水が移動し易くなり、第1多孔質部分12に発生した水がより効率的に排出されるため、カソード側触媒5に安定的に空気が取り込まれることとなり、発電時の出力のばらつきをより抑制することができる。
(第3実施形態)
第1実施形態及び第2実施形態では、第1多孔質部分は、板状に形成されているが、第3実施形態では、凸状に形成されている点で相違する。以下では、第1実施形態及び第2実施形態と相違する部分についてのみ説明する。
図4は、本実施形態に係る第1多孔質部分14及び第2多孔質部分15を示す斜視図である。図4に示すように、第1多孔質部分14は、第1多孔質部分14の中心部分C及び周縁部分Sを備えている。第1多孔質部分14は、第1多孔質部分14がカソード側触媒5と向かい合う側とは反対側において中心部分Cが周縁部分Sよりも突出されており、中心部分Cから周縁部分Sに向けて傾斜している。
ここで、図5に示すように、第2多孔質部分15は、第1多孔質部分14よりも空隙度が低いため、第1多孔質部分14に発生した水は、毛細管現象により水の表面張力が発現し易い状態にあり、第2多孔質部分15に向って移動し易くなる。また、第1多孔質部分14の傾斜部分を通じて、発生した水が第1多孔質部分14から第2多孔質部分15に向って移動し易くなる。これにより、第1多孔質部分14に発生した水がより効率的に排出されるため、第1多孔質部分14から空気を効率的に取り込むことができ、安定した発電をすることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1多孔質部分14及び第2多孔質部分15のそれぞれは、球状の空孔を複数備えており、空孔のそれぞれは、第1多孔質部分14から第2多孔質部分15に向かうに従って、空孔の大きさが徐々に小さくなっている点で第1実施形態乃至第3実施形態とは相違する。以下では、第1実施形態乃至第3実施形態と相違する部分についてのみ説明する。
図6は、本実施形態に係る第1多孔質部分及び第2多孔質部分を示す斜視図である。図7は、図6に示すF7方向から見た断面図で、空隙度の低い部分と高い部分を示した模式図である。ここで、他の実施形態と同一の名称についての詳細な説明は省略する。
図7に示す断面図からも明らかなように、多孔質体の空隙度が高い第1多孔質部分14と多孔質体の空隙度が低い第2多孔質部分15とにおける空孔(20,21)が連続的に変化している。多孔質体に形成されている空隙を球形と見なした場合、カソード側に付加したガス拡散層7には、多孔質体の空隙度が高い第1多孔質部分14の空隙の断面形状20はほぼ円形であり、厚み方向の直径と面方向の直径はほぼ等しい。よって、次の関係が成り立つ。
〔厚み方向の直径〕=〔面方向の直径〕・・・・(式1)
この時の球に相当する直径は約0.05mm〜3.2mmが好ましい。より好ましくは孔径が0.3mm以上で1mm未満である。
また、カソード側に付加したガス拡散層7の多孔質体の空隙度が低い第2多孔質部分15の厚み方向の断面形状21は長円形であり、厚み方向の直径は面方向の直径より小さい。よって、次の関係が成り立つ。
〔厚み方向の直径〕=y×〔面方向の直径〕・・・・(式2)
ここで、yは1以上とする。
カソード側に付加したガス拡散層7の多孔質体の空隙度が高い部位を構成する孔の個数は6〜522個/インチであり、より好ましくは大よそ27〜58個/インチである。水分を蒸発させる際に、多孔質体の空隙度が高い部位の比表面積は500〜7500m2/m3である。
かかる特徴によれば、空孔のそれぞれが、第1多孔質部分14から第2多孔質部分15に向かうに従って、空孔の大きさが徐々に小さくなっている。これにより、第1多孔質部分14から第2多孔質部分15に向うに従って連続的に空隙度が小さくなるため、第1多孔質部分14に発生した水が毛細管現象によってスムーズに排出されることとなり、第1多孔質部分14に発生した水をより効率的に排出することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態では、第1多孔質部分及び第2多孔質部分が複数備えられている点で第1実施形態乃至第4実施形態とは相違する。以下では、第1実施形態乃至第4実施形態と相違する部分についてのみ説明する。
図8に示すように、第1多孔質部分14及び第2多孔質部分15は複数備えられており、第1多孔質部分14及び第2多孔質部分15は、交互に配置されている。
カソード側に付加したガス拡散層9には、空隙度の低い第2多孔質部分15と空隙度の高い第1多孔質部分14が交互に連続して配置されている。これにより、空隙度の低い第2多孔質部分15が直線状に連続して線状に配置されることで流路として機能する。これらの空隙度の低い第2多孔質部分15によって構成された直線状の流路が複数存在し、これらの流路が交差して格子状に配置されることとなる。また、空隙度の高い部分と空隙度の低い部分は連続的に変化されている。この空隙度の変化は繰り返し行われ、その繰り返しの間隔は等間隔になっている。なお、線分で囲まれた格子の形状は、矩形または多角形で良く、その形状には限定されない。
図9に、格子状に配置した流路において、連続した水の流れを示した模式図を示す。ここで、毛細管現象によって、空隙度の低い部分15に集められた水は、空隙度の低い部位15が直線状に連続して線状に配置されることで流路として機能し、水を流す導線として機能する。
図10に、本発明の実施の形態における燃料電池を模式的に示した。カソード側に付加したガス拡散層9に、第1多孔質部分14及び第2多孔質部分15が交互に配置されていることが判る。
図11に、図10の本発明の実施の形態における燃料電池において、水と空気の流れを示した模式図を示す。図11に示すように、第1多孔質部分14から第2多孔質部分15に向けて水が効率的に排出されるとともに、当該第1多孔質部分14から空気が効率的に取り込まれることとなる。
なお、第1多孔質部分14及び第2多孔質部分15の総面積に対する第1多孔質部分14の面積の割合(開口率)は、20%以上90%未満であることが好ましい。開口率が20%未満である場合には、第2多孔質部分15の面積が第1多孔質部分14の面積よりも大き過ぎることとなり、第2多孔質部分15に留まった水により空気の取り込みが大きく阻害されるため、発電時の出力のばらつきを低減することができない。一方、開口率が90%以上である場合には、第1多孔質部分14の面積が第2多孔質部分15の面積よりも大き過ぎることとなり、第1多孔質部分14に発生した水が第2多孔質部分15に排出しきれなくなり、当該第1多孔質部分14に残留した水によって空気の取り込みが阻害され易くなる。したがって、開口率が20%以上90%未満であることにより、発生した水を効率的に排出することができ、発電時の出力のばらつきを低減することができる。
(実施例)
図12に、本発明の実施例に基づき発電を行った際の評価結果を示す。
まず、図中の記号について、説明を行う。発泡金属体の厚さとは本発明のカソード側に付帯する拡散層に用いたニッケル製の発泡金属体(三菱マテリアル製)であり、taはその基材となる多孔質体の空隙度の高い第1多孔質部分(疎部)の厚さを表す。同様にtbは多孔質体の空隙度の低い第2多孔質部分(疎部)の厚さを表す。taとtbは次の関係が成り立つ。なお、tbがtaよりも薄くなればなる程、第2多孔質部分の空隙度が第1多孔質部分の空隙度よりも低くなるものとする。
a>tb ・・・・(式3)
この時、多孔質体の空隙度が高い部位の厚さtaは加工前の発泡金属の厚みと同値であり、5mm以下を使用できる。
本実施例において、集電体8としてエキスパンドメタルを用いた。図12中のSWとは、エキスパンドメタルのメッシュ短目方向の中心距離を表し、図12中のLWとは、エキスパンドメタルのメッシュ長目方向の中心距離を現す。さらに、図12中のWとは、エキスパンドメタルの刻み幅を表す。また、図12中の開口率とは、エキスパンドメタルの目の開きの割合を表す。すなわち、開口率は、上述の通り第1多孔質部分及び第2多孔質部分の総面積に対する第1多孔質部分の面積の割合である。
図12中に記載された吸水剤とは、発泡金属体上に形成された直線状の複数の格子状に交差し配置された流路の末端に配置した吸水剤の有無を表す。
最後に、図12中に記載された電圧とは、本発明に基づき作製したセルの評価時の出力電圧であり、評価は以下のように行った。アノード側に純度99.99%で、24℃なる水素を、10cc/minの流量で、ほぼ大気圧の背圧になるように調整供給した。カソード側は約40%RH、25℃の大気に暴露した。このとき、電子負荷装置(菊水電子工業製、KFM2030型)を使用し、セルに対する負荷を0A/cm2〜0.8A/cm2の間で変化させ、その時の電圧を記録計にて記録した。この時、単位面積当たりの負荷電流密度が0.6A/sqcmにおける電圧も図12に記載した。
図12に示す実施例1から3において第1多孔質部分の空隙度が第2多孔質部分の空隙度よりも低いため、実施例1から3では、両者の空隙度が同等である比較例よりも、出力電圧が高いことが分かった。
これにより、カソード側のガス拡散層の一部に多孔質体を用い、この多孔質体に空隙度の高い第1多孔質部分と空隙度の低い第2多孔質部分とを設けることにより、発電時に高い電圧で且つ安定した電圧を出力することができ、優れた性能の固体高分子電解質型燃料電池を得ることができた。
ここで、図12の実施例より、“tb/ta”の値は0.7以下が好ましく、SWは1.8以上が好ましく、Wは0.5以上が好ましいことが分かった。また、開口率は、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましいことが分かった。さらに、吸水剤は、用いていた場合に好ましいことが、実施例を比較例と比べることで優れていることも分かった。
図1は、第1実施形態に係る燃料電池を示す概略構成図である。 図2は、第1実施形態に係る第1多孔質部分及び第2多孔質部分を示す斜視図である。 図3は、第2実施形態に係る第1多孔質部分及び第2多孔質部分を示す斜視図である。 図4は、第3実施形態に係る第1多孔質部分及び第2多孔質部分を示す斜視図である。 図5は、図4で示した多孔質体における空気や水の流れを示した模式図である。 図6は、第4実施形態に係る第1多孔質部分及び第2多孔質部分を示す斜視図である。 図7は、図6に示すF6から見た断面図である。 図8は、第5実施形態に係る第1多孔質部分及び第2多孔質部分が交互に連続していることを示した図である。 図9は、格子状に配置した流路において、連続した水の流れを示した模式図である。 図10は、第5実施形態に係る燃料電池を示す概略構成図である。 図11は、第5実施形態に係る多孔質体における水と空気の流れを示した模式図である。 図12は、本発明の実施例に基づき発電を行った際の評価結果を示す図である。
符号の説明
1 高分子固体高分子電解質
2 アノード側触媒
3 アノード側のガス拡散層
4 アノード側の集電体
5 カソード側触媒
6 カソード側のガス拡散層
7 カソード側に付加したガス拡散層
8 カソード側の集電体
10 第一多孔質部分
11 第二多孔質部分
12 第一多孔質部分
13 第二多孔質部分
14 第一多孔質部分
15 第二多孔質部分
20 第一多孔質部分の空隙(疎部)
21 第二多孔質部分の空隙(密部)

Claims (8)

  1. 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の両面に配置されるアノード側触媒及びカソード側触媒とを備え、前記アノード側触媒に供給された燃料及び前記カソード側触媒に供給された空気を用いて発電する燃料電池であって、
    前記カソード側触媒が前記固体高分子電解質膜と向かい合う側とは反対側において、前記カソード側触媒に向けて前記空気を拡散する多孔質体を備え、
    前記多孔質体は、第1多孔質部分と、前記第1多孔質部分に接続され、前記第1多孔質部分よりも前記空気が通過する割合が低い第2多孔質部分とを備える燃料電池。
  2. 前記第1多孔質部分は、前記第2多孔質部分によって囲まれる請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記第1多孔質部分は、前記第1多孔質部分の中心部分及び周縁部分を備えており、
    前記第1多孔質部分は、前記第1多孔質部分が前記カソード側触媒と向かい合う側とは反対側において前記中心部分が前記周縁部分よりも突出されており、前記中心部分から前記周縁部分に向けて傾斜している請求項2に記載の燃料電池。
  4. 前記第1多孔質部分は、前記第2多孔質部分の側方に配置される請求項1に記載の燃料電池。
  5. 前記第1多孔質部分及び前記第2多孔質部分のそれぞれは、球状の空孔を複数備えており、
    前記空孔のそれぞれは、前記第1多孔質部分から前記第2多孔質部分に向かうに従って、前記空孔の大きさが徐々に小さくなっている請求項1に記載の燃料電池。
  6. 前記第1多孔質部分及び前記第2多孔質部分は複数備えられており、
    前記第1多孔質部分及び前記第2多孔質部分は、交互に配置される請求項1に記載の燃料電池。
  7. 前記第2多孔質部分に接触して配置され、前記発電により発生した水を吸い取る吸水部材を備える請求項1又は請求項6のいずれかに記載の燃料電池。
  8. 前記第1多孔質部分及び前記第2多孔質部分の総面積に対する前記第1多孔質部分の面積の割合は、20%以上90%未満である請求項1に記載の燃料電池。
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