JP2011030466A - 肉牛飼料及びそれを用いた肉牛の肥育方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】肉牛の体重増加量に影響を及ぼすことなく脂肪交雑度が高くロース芯面積が大きい肉牛に肥育することができる肉牛飼料及びそれを用いた肉牛の肥育方法を提供する。
【解決手段】菌床で培養したキノコを採取した後の廃菌床又は/及びキノコの子実体からなる主材料と適宜の副材料とを7〜9:3〜1の質量比で含む培養基を乳酸菌にてヘテロ型発酵してなる肉牛飼料用原料材を15質量%以上25質量%以下含む肉牛飼料を、生後、適宜日齢が経過した肉牛に与える。
【選択図】なし
【解決手段】菌床で培養したキノコを採取した後の廃菌床又は/及びキノコの子実体からなる主材料と適宜の副材料とを7〜9:3〜1の質量比で含む培養基を乳酸菌にてヘテロ型発酵してなる肉牛飼料用原料材を15質量%以上25質量%以下含む肉牛飼料を、生後、適宜日齢が経過した肉牛に与える。
【選択図】なし
Description
本発明は、食肉用の肉牛を肥育するための飼料の原料である肉牛飼料用原料材、及び該肉牛飼料用原料材を含む肉牛飼料、並びにこの肉牛飼料を用いて肉牛を肥育する方法に関する。
食肉用の肉牛にあっては、背肉部位であるロースは肉質としての評価が高く、また枝肉の歩留に影響が大きいため、胸最長筋(ロース芯)の面積であるロース芯面積がより大きい牛に肥育することが重要である。また、筋肉組織内に脂肪が交雑する脂肪交雑度が高く、交雑した脂肪組織が霜降り状になった所謂サシと呼ばれる肉質の評価も高いので、脂肪交雑がより高い筋肉組織を有する牛に肥育することも重要である。
肉牛を肥育する事業者にあっては、ビタミンA又はβカロチンの含有量を低減させた飼料を牛に与えることによって、筋肉組織の脂肪交雑を向上させ得ることが知られているが、後記する特許文献1には次のような飼料を用いた肥育方法が開示されている。
すなわち、杉のオガコ、米ぬか、ふすま、コーンコブを主成分とする菌床にヒラタケ菌を接種・培養してその子実体を収穫した後の廃菌床を採取し、その廃菌床を粉砕した後、略22時間山積みしておくことによって飼料を得る。そして、得られた飼料を牛舎内に放置し、35日間程度自由採食させるのである。
これによって、通常飼料である「はぐくみ」(JA東海くみあい飼料株式会社製)で肥育した牛に比べて、血中ビタミンAの濃度を低減させることができる。
しかしながら、前述した如きヒラタケの廃菌床を山積みしてなる飼料にあっては、牛の血中ビタミンAの濃度を低減させることはできるものの、当該飼料の栄養価が低い上に、牛が当該飼料を好まず、飼料の摂取量が少ないため、牛の体重増加量が少ない。従って、かかる飼料によっては、脂肪交雑度が高く、またロース芯面積が大きい牛を肥育することは困難であった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、肉牛の体重増加量に影響を及ぼすことなく脂肪交雑度が高くロース芯面積が大きい肉牛に肥育することができる肉牛飼料の原料である肉牛飼料用原料材、及び該肉牛飼料用原料材を含む肉牛飼料、並びにこの肉牛飼料を用いて肉牛を肥育する方法を提供する。
(1)本発明に係る肉牛飼料用原料材は、菌床で培養したキノコを採取した後の廃菌床又は/及びキノコの子実体を含み、肉牛を肥育する肉牛飼料に用いられる肉牛飼料用原料材であって、前記廃菌床又は/及び前記子実体からなる主材料と適宜の副材料とを含む培養基を乳酸菌にて発酵してなることを特徴とする。
本発明の肉牛飼料用原料材にあっては、菌床で培養したキノコを採取した後の廃菌床又は/及びキノコの子実体からなる主材料と適宜の副材料とを含む培養基を、乳酸菌にて発酵することによって構成してある。
前述した菌床としては、培養対象のキノコの種類に応じて使用される組成であればよいが、例えば広葉樹又は針葉樹のオガコにふすま、脱脂大豆、植物油粕、及び/又は米ぬか等を適宜量添加したものを用いることができる。
また、キノコとしては、エノキタケ、エリンギ、ヒラタケ、舞茸、椎茸、シメジ、ハナビラタケ、アガリスク、マッシュルーム等、菌床にて培養可能な種々のものを用いることができる。
かかる廃菌床又は/及びキノコの子実体からなる主材料と適宜の副材料とを含む培養基を乳酸菌にて発酵させる。
ここで副材料としては、ふすま、脱脂大豆、デンプン粕、植物油粕、米ぬか、焼酎粕、ビート粕、コーンスティープリカー、バガス、廃糖蜜、麦芽自己消化物等、蛋白質、炭水化物及び/又は脂質等を含む素材を単独で、又は複数を組み合わせて用いることができる。更に、カルシウム、鉄、マグネシウム等の無機物、酵母抽出物といったビタミン類を乳酸菌の生育に必要な量だけ添加することもできる。
前記主材料と副材料とを含む培養基を滅菌処理した後、液体培養又は固体培養により予め培養しておいた乳酸菌を前記培養基に添加し、添加した乳酸菌を培養することによって培養基を発酵させ、肉牛飼料用原料材を得る。
キノコの子実体及び廃菌床中に密に生育したキノコの菌糸には、ビタミンA及びビタミンAの前駆体であるカロチン類が含まれないので、少なくとも肉牛飼料に含ませる肉牛飼料用原料材の割合に応じて、肉牛に摂取されるビタミンAの量が低減される。
従って、肉牛がこれら廃菌床又は/及びキノコの子実体を含む肉牛飼料を摂食すれば、筋肉組織の脂肪交雑を向上させることができる。
一方、肉牛飼料用原料材は、廃菌床又は/及びキノコの子実体からなる主材料と前記副材料とを含む培養基を乳酸菌にて発酵してなるため、肉牛の嗜好性が向上し、肉牛によって良く摂食される。
これは、乳酸菌が発酵することによって培養基中へ産生される物質が直接的に肉牛の嗜好性を向上させると共に、乳酸菌が生育することによって、前記物質が廃菌床又は/及びキノコの子実体からなる主材料に起因する臭気等、摂食を忌避又は低減させる物質を分解又は被覆して間接的に嗜好性を向上させるからである。
このように肉牛飼料用原料材は、肉牛の嗜好性が向上し、肉牛によって良く摂食されるため、肉牛の体重増加量に影響を及ぼすことなく脂肪交雑度が高くロース芯面積が大きい肉牛に肥育することができる。
(2)本発明に係る肉牛飼料用原料材は必要に応じて、前記乳酸菌はヘテロ型発酵を行う種を用いてなることを特徴とする。
本発明の肉牛飼料用原料材にあっては、前記培養基を発酵する乳酸菌はヘテロ型発酵を行うものを用いて構成してある。
へテロ型発酵を行う乳酸菌にあっては、乳酸以外にも、酢酸、アルコール等を産生するが、これらの物質が直接的に肉牛の嗜好性を向上させる。
へテロ型発酵を行う乳酸菌としては、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、テトラコッカス(Tetracoccus)属等を挙げることができ、更にラクトバチルス属にあっては、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ1R(Lactobacillus fermentum kirishima1R) NITE AP−784、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ2R(Lactobacillus fermentum kirishima2R) NITE AP−785、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・パストリナス(Lactobacillus pastrianus)、ラクトバチルス・ブケネリ(Lactobacillus buchneri)を挙げることができるが、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ1R NITE AP−784、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ2R NITE AP−785を用いた場合が好適である。これらの乳酸菌は1種又は複数種を組み合わせて用いることができる。
(3)本発明に係る肉牛飼料は、菌床で培養したキノコを採取した後の廃菌床又は/及びキノコの子実体を含有する肉牛飼料用原料材を含み、肉牛の肥育に用いられる肉牛飼料であって、前記(1)又は(2)記載の肉牛飼料用原料材を含むことを特徴とする。
本発明の肉牛飼料にあっては、前記(1)又は(2)記載の肉牛飼料用原料材を含むものである。
前述したように(1)又は(2)記載の肉牛飼料用原料材にあっては、ビタミンA及びビタミンAの前駆体であるカロチン類が含まれないので、少なくとも肉牛飼料に含ませる肉牛飼料用原料材の割合に応じて、肉牛に摂取されるビタミンAの量が低減される。
従って、肉牛飼料用原料材を含む肉牛飼料を肉牛が摂食すれば、当該肉牛の筋肉組織の脂肪交雑を向上させることができる。
一方、乳酸菌にて発酵してなる肉牛飼料用原料材を含む肉牛飼料は、肉牛の嗜好性が向上し、肉牛によって良く摂食されるため、肉牛の体重増加量に影響を及ぼすことなく脂肪交雑度が高くロース芯面積が大きい肉牛に肥育することができる。
(4)本発明に係る肉牛飼料は必要に応じて、前記肉牛飼料用原料材を5質量%以上30質量%以下含むことを特徴とする。
本発明の肉牛飼料にあっては、前記肉牛飼料用原料材を5質量%以上30質量%以下含むものである。
肉牛飼料における肉牛飼料用原料材の含有量が5質量%未満では、肥育した肉牛について脂肪交雑度及びロース芯面積等、所要の肉質向上効果が得られず、また、肉牛飼料用原料材の含有量が30質量%を超えると、肉牛による当該飼料の摂食量が肉牛飼料用原料材を含有しない飼料を与えた場合に比べて減少するため、当該肉牛の体重増加量が低減する。
しかし、肉牛飼料用原料材の含有量が5質量%以上30質量%以下の場合、当該飼料の肉牛による摂食量は肉牛飼料用原料材を含有しない飼料の摂食量と略同じであるので、肉牛の体重増加量も飼料用原料材を含有しない飼料を与えた場合と略同じであり、従って肉牛の体重増加量に影響を及ぼさない。
(5)本発明に係る肉牛の肥育方法は、肉牛飼料を与えて肉牛を肥育する方法において、生後、前記肉牛に応じて定められる適宜日齢が経過してから、前記(3)又は(4)記載の肉牛飼料を前記肉牛に与えることを特徴とする。
本発明の肉牛の肥育方法にあっては、肉牛飼料を与えて肉牛を肥育する場合、生後、肉牛に応じて定められる適宜日齢が経過してから、前記(3)又は(4)に記載した肉牛飼料を肉牛に与える。
肥育対象とする肉牛の基本的な骨格、筋肉組織及び内蔵の発育が略終了する日齢又は月齢が経過した後に前述した肉牛飼料の給与を開始し、適宜の日齢又は月齢まで肉牛飼料の給与を継続することによって、当該肉牛を肥育する。
肉牛の基本的な骨格、筋肉組織及び内蔵の発育が略終了する日齢又は月齢が経過するまでの期間にあっては、前記発育にビタミンAが要求されるので、ビタミンA又は/及びカロチンを十分に含んだ飼料を与える。
そして、当該日齢又は月齢が経過した後、前述した肉牛飼料の給与を開始し、適宜の日齢又は月齢まで肉牛飼料の給与を継続することによって、当該肉牛を肥育するため、肉牛の体重増加量に影響を及ぼすことなく脂肪交雑度が高くロース芯面積が大きい肉牛に肥育することができる。
(肉牛飼料用原料材)
本発明に係る肉牛飼料用原料材を製造する方法について説明する。
本発明に係る肉牛飼料用原料材を製造する方法について説明する。
本肉牛飼料用原料材は、キノコの子実体又は/及び後述する菌床で培養したキノコを収穫した後の廃菌床を主材料とし、これに適宜の副材料を添加し、これらを乳酸以外の発酵生産物も産生するヘテロ型発酵を行う乳酸菌で発酵させることによって製造する。
キノコとしては、エノキタケ、エリンギ、ヒラタケ、舞茸、椎茸、シメジ、ハナビラタケ、アガリスク、マッシュルーム等、菌床にて培養可能な種々のものを用いることができる。
これらのキノコの菌床としては、培養対象のキノコの種類に応じて使用される組成であればよいが、例えば広葉樹又は針葉樹のオガコにふすま、脱脂大豆、植物油粕、及び/又は米ぬか等を適宜量添加したものを用いることができる。
滅菌処理した菌床にキノコの菌を接種し、所定の温度・湿度に保った培養室内で数日間培養することによって子実体を形成させた後、当該子実体を収穫し、収穫した子実体、収穫後に残った廃菌床、又は子実体の収穫作業を行うことなく子実体及び廃菌床の混合物を得て、それらを主材料とすることができるが、食用として需要者に供給されずに廃棄される廃菌床を用いた場合、原材料コストを低減することができ、また廃棄物を削減することができるため好適である。
キノコの子実体及び廃菌床中に密に生育したキノコの菌糸には、ビタミンA及びビタミンAの前駆体であるカロチン類が含まれないので、少なくとも飼料に含ませるキノコの廃菌床又は/及びキノコの子実体の割合に応じて、肉牛に摂取されるビタミンAの量が低減される。
一方、キノコの菌糸及び子実体を構成するグルカンは、肉牛の免疫力を増強させるとともに感染症に対する抵抗力を増大させる作用を有するため、肉牛の罹病率を低減させることができるとともに、薬剤の使用を抑制することができるため、かかる肉牛から生産される食肉の安全性が高い。また、離乳した子牛の罹病率も低減させることができるため、子牛の死亡率が低減し、食肉の生産性を向上させることができる。また、グルカンは、肉牛の体内バランスを調整する作用も有するため、肉牛のストレスを低減することができ、これによって肉牛の肉質の向上にも寄与する。
ところで、本飼料用原料材の副材料としては、ふすま、脱脂大豆、デンプン粕、植物油粕、米ぬか、焼酎粕、ビート粕、コーンスティープリカー、バガス、廃糖蜜、麦芽自己消化物等、蛋白質、炭水化物及び/又は脂質等を含む素材を単独で、又は複数を組み合わせて用いることができる。更に、カルシウム、鉄、マグネシウム等の無機物、酵母抽出物といったビタミン類を乳酸菌の生育に必要な量だけ添加してもよい。
ここで、副材料の添加量は乳酸菌の生育に必要な量だけ添加すればよいが、例えば質量比で、主材料:副材料=7〜9:3〜1程度にすることができる。
主材料の混合比が7割未満の場合、後述する肉牛飼料を調製する際に肉牛飼料用原料材の添加量を多くしなければならないため肥育効率性が低下する虞がある一方、主材料の混合比が9割を超える場合、比較的高価な副材料を使用する必要が生じるため、原材料コストが高くなってしまう。
ところで、ヘテロ型の発酵を行う乳酸菌としては、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、テトラコッカス(Tetracoccus)属等を挙げることができ、更にラクトバチルス属にあっては、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ1R(Lactobacillus fermentum kirishima1R) NITE AP−784、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ2R(Lactobacillus fermentum kirishima2R) NITE AP−785、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・パストリナス(Lactobacillus pastrianus)、ラクトバチルス・ブケネリ(Lactobacillus buchneri)を挙げることができる。かかる乳酸菌は1種又は複数種を組み合わせて用いることができる。
なお、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ1R NITE AP−784及びラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ2R NITE AP−785は、鹿児島地方の焼酎粕から分離したものである。
乳酸菌を培養するためのスタータ培地としては、使用する乳酸菌に適したものを用いればよいが、例えば、スキムミルク培地を用いることができる。このスキムミルク培地は、例えば次のようにして調製することができる。すなわち、水に5質量%となるようにスキムミルクを溶解させた溶液に蛋白質分解酵素を適宜量添加して、撹拌しつつ50℃で3時間程度酵素処理することによってスキムミルク中の蛋白質を消化させ、滅菌処理を施した後、沈殿物を除去することによってスタータ培地を得る。なお、滅菌処理は121℃で15分間程度の高圧加熱処理を行うことによって実施する。
所要量のスタータ培地に乳酸菌を接種し、所要の温度、例えば略30℃〜略40℃の温度で1昼夜程度培養することによって、108cfu/mL〜109cfu/mL程度の菌数の乳酸菌培養液を得る。ここで、使用するスタータ培地の容量に応じて、スタータ培地の仕込み量を段階的に増大させるようにしてもよい。
一方、前述した主材料に適宜量の副材料を混合しておき、これに蒸気を導入して例えば60℃〜90℃で30分〜15分間程度の滅菌処理を施した後、適宜温度まで冷却する。このようにして得られた培養基に、適宜量の乳酸菌培養液を添加し、それらを十分に混合させた後、30℃程度の温度で1昼夜程度培養することによって肉牛飼料用原料材を得る。なお、乳酸菌培養液を培養基に添加する量としては、培養基の0.1容量/質量%〜5.0容量/質量%にする。また、培養基は10cm程度〜200cm程度の適宜深さにする。
このようにして得られた肉牛飼料用原料材は、乳酸菌の発酵によって乳酸が産生されているため、保存性が向上しており、比較的長期に亘って保存することができる。また、乳酸菌による後発酵を抑制させ、保存性を更に向上させるために、得られた肉牛飼料用原料材を冷蔵庫等によって10℃以下で低温保存するようにしてもよい。更に、得られた肉牛飼料用原料材を温風乾燥又は凍結乾燥させてもよく、乾燥物を粉砕してセルロース、コーンスターチ又はコーンコブ粉等によって媒散させてもよい。
一方、前記肉牛飼料用原料材の製造に用いたヘテロ型発酵を行う乳酸菌は、乳酸以外にも酢酸及びアルコール等を産生するため、かかる乳酸菌を用いて製造した飼料用原料材は、乳酸以外の物質を殆ど産生しないホモ型発酵を行う乳酸菌を用いて製造した飼料用原料材に比べ、肉牛の嗜好性が向上する。
(肉牛飼料)
肉牛飼料は、市販の肥育飼料に、前述した如く製造した肉牛飼料用原料材を5質量%以上30質量%以下の適宜量、好ましくは15質量%以上25質量%以下の適宜量混合することによって調製する。
肉牛飼料は、市販の肥育飼料に、前述した如く製造した肉牛飼料用原料材を5質量%以上30質量%以下の適宜量、好ましくは15質量%以上25質量%以下の適宜量混合することによって調製する。
肉牛飼料用原料材の添加量が5質量%未満では、肥育した肉牛について脂肪交雑度及びロース芯面積等、所要の肉質向上効果が得られず、また、肉牛飼料用原料材の添加量が30質量%を超えると、肉牛による当該飼料の摂食量が肉牛飼料用原料材を添加してない飼料を与えた場合に比べて減少するため、当該肉牛の体重増加量が低減する。
しかし、肉牛飼料用原料材の添加量が5質量%以上30質量%以下の場合、当該飼料の肉牛による摂食量は肉牛飼料用原料材を添加していない飼料の摂食量と略同じであるので、肉牛の体重増加量も飼料用原料材を添加していない飼料を与えた場合と略同じであり、従って肉牛の体重増加量に影響を及ぼさない。
このように肉牛飼料用原料材の添加量を30質量%にした飼料であっても、肉牛の摂食量が殆ど変わらないのは、前述した如く、へテロ型発酵を行う乳酸菌にて製造した肉牛飼料用原料材を用いているからである。
一方、市販の肥育飼料はビタミンA及びカロチン類が含有量を比較的低くしてあるが、これに肉牛飼料用原料材を添加した場合、前述したように肉牛飼料用原料材にはビタミンA及びカロチン類が殆ど含まれていないので、調製された肉牛飼料は肉牛飼料用原料材を添加した分だけ単位質量当たりのビタミンA及びカロチン類の含有量が低下する。このように、ビタミンA及びカロチン類の含有量を低下させた肉牛飼料を肉牛に与えることによって、肥育された肉牛の脂肪交雑度を向上させることができる。これに加えて、本肉牛飼料によって肥育された肉牛の脂肪交雑度を向上させることができるのは、肉牛飼料用原料材に含まれるキノコ由来の成分が肉牛に摂食されることに起因することも考えられる。かかる状態において本肉牛飼料の肉牛による摂食量は肉牛飼料用原料材を添加していない飼料の摂食量と略同じであるので、肥育された肉牛のロース芯面積が増大する。
一方、前述した如くキノコの菌糸及び子実体を構成するグルカンは、肉牛の免疫力を増強させるとともに感染症に対する抵抗力を増大させる効果を有するため、肉牛の罹病率を低減させることができるとともに、薬剤の使用を抑制することができるため、かかる肉牛から生産される食肉の安全性が高い。また、離乳した肉牛の罹病率も低減させることができるため、当該肉牛の死亡率が低減し、食肉の生産性を向上させることができる。また、グルカンは、肉牛の体内バランスを調整する作用も有するため、肉牛のストレスを低減することができ、当該肉牛肉質の向上にも寄与する。
更に、肉牛飼料用原料材の添加量が15質量%以上25質量%以下の場合、当該肉牛飼料の摂食量と、ビタミンAの低減量とのバランスが良好であり、肥育された肉牛の体重増加量に影響を及ぼすことなく、脂肪交雑度が高くロース芯面積が大きい肉牛を確実に肥育することができる。
ところで、乳酸には肉牛の下痢の原因菌を死滅させる作用がある上に、整腸作用を奏する乳酸菌は他の菌を死滅させる物質も産生するため、前記肉牛飼料用原料材も同様の作用効果を奏する。従って、かかる肉牛飼料用原料材を含む肉牛飼料を離乳直後の肉牛に与えた場合、薬剤を与えることなく下痢を回避することができ、当該肉牛の死亡率を低減させることができる。ただし、離乳してから所定日齢に達するまでの飼育期間においては、肉牛に所要量のビタミンAを与える必要があるため、前述した肉牛飼料には適宜量のビタミンA又は/及びカロチンを添加しておくとよい。
(肥育方法)
このような肉牛飼料を用いて肉牛を肥育するには、基本的な骨格、筋肉組織及び内蔵の発育が略終了する日齢又は月齢が経過した後に肉牛飼料の給与を開始し、適宜の日齢又は月齢まで前記肉牛飼料の給与を継続する。すなわち、略9月齢以降が好適である。このとき、例えば肉牛が牛である場合、前記肉牛飼料以外にワラというようにビタミンA及びカロチンの含有量が少ない粗飼料を適宜量与えることができる。
このような肉牛飼料を用いて肉牛を肥育するには、基本的な骨格、筋肉組織及び内蔵の発育が略終了する日齢又は月齢が経過した後に肉牛飼料の給与を開始し、適宜の日齢又は月齢まで前記肉牛飼料の給与を継続する。すなわち、略9月齢以降が好適である。このとき、例えば肉牛が牛である場合、前記肉牛飼料以外にワラというようにビタミンA及びカロチンの含有量が少ない粗飼料を適宜量与えることができる。
一方、離乳直後から前記肉牛飼料を与えることもできるが、かかる場合は前述した如く適宜量のビタミンA又は/及びカロチンを添加した肉牛飼料を用いる。
(実施例1)
次に、肉牛飼料用原料材に係る牛の嗜好試験を行った結果について説明する。
次に、肉牛飼料用原料材に係る牛の嗜好試験を行った結果について説明する。
次の表1は本試験に用いた肉牛飼料用原料材の主材料及び副材料の種類及び混合量を示したものである。なお、表1中、廃菌床はエリンギを培養したものを用いた。
前述したスキムミルク培地150mLが投入してある複数の三角フラスコにそれぞれ、表2に示した乳酸菌を摂取し、略30℃で1昼夜程度培養することによって、109cfu/mLの菌数の乳酸菌培養液を得た。得られた各乳酸菌培養液をそれぞれ、前記主材料及び副材料を混合させた培養基に全量投入した後、それらを混合し、30℃で24時間程度培養することによって肉牛飼料用原料材を得た。
得られた肉牛飼料用原料材を10頭の黒毛和種の牛にそれぞれ与え、当該肉牛飼料用原料材を摂食した牛の頭数を計数して表2に示した。
なお、対照例として乳酸菌を添加していない培養基を与えた結果も示した。
表2に示したように、本発明例に係る乳酸菌としては、いずれもヘテロ型発酵を行うラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ1R NITE AP−784(本発明例1)、ラクトバチルス・ファーメンタム NBRC3071(本発明例2)、及びラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ2R NITE AP−785(本発明例3)を用いた。一方、比較例に係る乳酸菌としては、いずれもホモ型発酵を行うペディオコッカス・ペントサセウス キリシマ1C(Pediococcus pentosaseus kirishima1C) NITE AP−787(比較例1)、エンテロコッカス・フェカリス NBRC3989(Enterococcus faecalis NBRC3989)(比較例2)、及びラクトコッカス・ラクティス 亜種 ラクティス NBRC12007(Lactococcus lactis subsp.lactis NBRC12007)(比較例3)を用いた。
表2から明らかな如く、肉牛飼料用原料材には、本発明例1〜3及び比較例1〜3のいずれも107cfu/g程度の菌数の乳酸菌が生育していた。
そして、本発明例1〜3に係る肉牛飼料用原料材にあっては90%〜100%(9〜10頭/10頭)の牛が摂食したが、比較例1〜3に係る肉牛飼料用原料材にあっては40%〜60%(4〜6頭/10頭)の牛しか摂食せず、更に、対照例にあっては20%(2頭/10頭)の牛しか摂食しなかった。
これは、主材料が廃菌床を用いた場合、牛の嗜好性が低いために殆どの牛が摂食しない
ものの、乳酸発酵させることによって牛の嗜好性を向上させることができ、更にヘテロ型発酵を行わせることによって牛の嗜好性をより向上させて、ほとんど全ての牛に摂食させることができるということを示している。
ものの、乳酸発酵させることによって牛の嗜好性を向上させることができ、更にヘテロ型発酵を行わせることによって牛の嗜好性をより向上させて、ほとんど全ての牛に摂食させることができるということを示している。
ホモ型発酵を行う乳酸菌よりヘテロ型発酵を行う乳酸菌を用いた場合の方が牛の嗜好性をより向上させるのは、ヘテロ型発酵により、乳酸以外にも酢酸及びアルコール等が産生されているためであると考えられる。
表2に示した場合にあっては、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ1R NITE AP−784、及びラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ2R NITE AP−785を用いた場合、全ての牛に摂食させることができた。
(実施例2)
次に、本発明に係る肉牛飼料と市販の肥育飼料とを用いて牛を肥育した結果について説明する。
次に、本発明に係る肉牛飼料と市販の肥育飼料とを用いて牛を肥育した結果について説明する。
本発明に係る肉牛飼料に用いた肉牛飼料用原料材は次のようにして製造した。
次の表3は本実施例に用いた肉牛飼料用原料材の主材料及び副材料の種類及び混合量を示したものである。なお、表3中、廃菌床はエリンギを培養したものを用いた。
前述したスキムミルク培地6Lが投入してあるジャーに、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ2R NITE AP−785を摂取し、略30℃で1昼夜程度培養することによって、109cfu/mLの菌数の乳酸菌培養液を得た。得られた乳酸菌培養液を、前記主材料及び副材料を混合させた培養基に全量投入した後、それらを混合し、30℃で1昼夜程度培養することによって肉牛飼料用原料材を得た。なお、得られた肉牛飼料用原料材に含まれる乳酸菌の数は、2.3×108cfu/gであった。
この肉牛飼料用原料材と一般肥育用飼料である「そお肥育飼料さくら」(南日本飼料株式会社製)とを質量比で2:8になるように混合して肉牛飼料を得た。
前述した如く得られた肉牛飼料用原料材及びそお肥育飼料さくらの成分分析を行った結果を表4に示した。
このようにして得た肉牛飼料を4頭の牛にそれぞれ1日当たり平均9kgずつ与えて肥育し、肥育後の各牛の肉質等を検査した結果を本発明例1〜4として次の表6に示した。また、比較例1〜4として、そお肥育飼料さくらを用いて前同様に肥育し、肥育後の各牛の肉質等を検査した結果も示した。
なお、いずれの例でも略9月齢で肥育開始体重が272〜321kgの黒毛和種の去勢牛を用い、前記両肥育飼料の他に稲ワラをそれぞれ1日当たり平均0.7kg〜0.8kgずつ与えた。
また、肉質は社団法人日本食肉格付け協会によって評価された結果を示している。なお、肉質を示す「格付け」はA、B、Cそれぞれについて5段階にランク付けされており、A5が最も上質であり、C1が最も低質である。また、肉質を示す「脂肪交雑」は1〜12の12段階にランク付けされており、12が最も脂肪交雑が高い。一方、肉質を示す「牛肉色基準」は1〜7の7段階にランク付けされており、3〜5が良好であると判断される。
ここで、本発明例1〜4で使用した肉牛飼料の成分分析を行った結果を表5に示した。
表6から明らかな如く、本発明例の肉質と比較例の肉質とを比較すると、牛肉色基準はいずれも4程度で良好であったが、脂肪交雑は本発明例の方が有意に高く、ロース芯面積も本発明例の方が高い平均値を示していた。そして、格付けは本発明例1〜4の全においてA5であったのに対し、比較例では1例を除いてA5より低いランクであった。
一方、表6から明らかな如く、期間増加体重については、個体差はあるものの本発明例と比較例との間で殆ど差が見られなかった。
更に、このようにして肥育試験を行った本発明例1〜4のロース部位の成分分析を行った結果を表7に示した。なお、比較のため、表6の比較例1〜4にあって格付けが本発明例と同じA5ランクであった比較例4についてそのロース部位の成分分析を行った結果も示した。
表7から明らかなように、エネルギ、水分、蛋白質、脂質、炭水化物、灰分、α−トコフェロールの各項目については、本発明例1〜4と比較例4との間に差は認められなかった。
これに対して、格付けはいずれもA5であるにも拘らず、旨味成分であるイノシン酸については、本発明例1〜4は比較例4に比べて2.7倍から4倍多く含有しており、より肉質が向上されていた。
Claims (5)
- 菌床で培養したキノコを採取した後の廃菌床又は/及びキノコの子実体を含み、肉牛を肥育する肉牛飼料に用いられる肉牛飼料用原料材であって、
前記廃菌床又は/及び前記子実体からなる主材料と適宜の副材料とを含む培養基を乳酸菌にて発酵してなることを特徴とする肉牛飼料用原料材。 - 前記乳酸菌はヘテロ型発酵を行うものを用いてなる請求項1記載の肉牛飼料用原料材。
- 菌床で培養したキノコを採取した後の廃菌床又は/及びキノコの子実体を含有する肉牛飼料用原料材を含み、肉牛の肥育に用いられる肉牛飼料であって、
請求項1又は2記載の肉牛飼料用原料材を含むことを特徴とする肉牛飼料。 - 前記肉牛飼料用原料材を5質量%以上30質量%以下含む請求項3記載の肉牛飼料。
- 肉牛飼料を与えて肉牛を肥育する方法において、
生後、前記肉牛に応じて定められる適宜日齢が経過してから、請求項3又は4記載の肉牛飼料を前記肉牛に与えることを特徴とする肉牛の肥育方法。
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