JP2011026577A - ポリカーボネート共重合体、それを用いた塗工液、及び電子写真感光体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記式(1)に記載の繰り返し単位からなる構造を有し、かつAr2/(Ar1+Ar2)が25モル%以上47モル%以下であるポリカーボネート共重合体。
{式中Ar1は、下記式(2)で表される基であり、Ar2は、置換あるいは無置換のビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、あるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンから誘導される二価の基であり、nはAr1ブロックの平均繰返し数で、1.09以上3.00以下の数を表す。}
【選択図】なし
Description
この電子写真感光体には、適用される電子写真プロセスに応じて、所定の感度や電気特性、光学特性を備えていることが要求される。この電子写真感光体は、その感光層の表面に、コロナ帯電、トナー現像、紙への転写、クリーニング処理などの操作が繰返し行われるため、これら操作を行う度に電気的、機械的な外力が加えられる。したがって、長期間にわたって電子写真の画質を維持するためには、電子写真感光体の表面に設けた感光層に、これら外力に対する耐久性が要求される。
また、電子写真感光体は、通常機能性材料と共にバインダー樹脂を有機溶剤に溶解し、導電性基板等にキャスト製膜する方法で製造される事から、有機溶剤への溶解性や溶液の安定性が求められる。
特許文献2には、オリゴマーの量体数を低減した原料を用い、ビフェノールの共重合比を増加させたポリマーとして、ビスフェノールAとビフェノールの交互共重合ポリカーボネートが開示されている。この交互共重合体に占めるビフェノールの共重合割合は50モル%となる。
すなわち、本発明は、以下のようなポリカーボネート共重合体、それを用いた塗工液、及び電子写真感光体を提供するものである。
[1]下記式(1)に記載の繰り返し単位からなる構造を有し、かつAr2/(Ar1+Ar2)で表されるモル共重合組成が25モル%以上47モル%以下であることを特徴とするポリカーボネート共重合体。
[3]上記[2]記載のポリカーボネート共重合体であって、二価の有機シロキサン変性フェニレン基は、下記式(2A)又は式(2B)で示される基であることが好ましい。
R23は、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
n1は、2〜4の整数であり、n2は、1〜600の整数である。)
R32は各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
R33は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
R34は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
Y及びY’は、炭素数2以上のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン、又は酸素原子である。
naは0又は1、nbは1又は2、ncは1又は2である。ただし、na+nb+ncは3である。
n1〜n4は、それぞれ0以上の整数であり、n1、n2、n3及びn4の和は、2〜600の整数であり、n3及びn4の和は1以上の整数である。
aは、0または1〜4までの整数である。)
[5]上記[4]に記載のポリカーボネート共重合体であって、連鎖末端の一価の芳香族基が一価の有機シロキサン変性フェニル基であることが好ましい。
[6]上記[5]に記載のポリカーボネート共重合体であって、一価の有機シロキサン変性フェニル基は、下記式(2C)で示される基であることが好ましい。
R41は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基である。
R42〜R45は各々独立に水素、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
R46〜R49は各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
nは2〜600の数であり、分子量分布を持つ場合には平均繰返し単位数を示す。)
[10]上記[1]から[9]のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体において、当該ポリカーボネート共重合体に、ジアルキルカルバミン酸クロリドが含まれている場合、前記ジアルキルカルバミン酸クロリドの含有量は、当該ポリカーボネート共重合体全質量基準で100質量ppm以下であることが好ましい。
[PC共重合体の構造]
本発明のPC共重合体は、下記式(1)に記載の繰り返し単位からなる構造を有し、かつAr2/(Ar1+Ar2)で表されるモル共重合組成が25モル%以上47モル%以下であることを特徴とするポリカーボネート共重合体である。
Ar2が47モル%を超えると、交互共重合と類似する規則性が高い構造の共重合体となるため、溶解性が低下する。25モル%未満だと耐摩耗性改善の効果が十分でなくなる。上記のモル%は、Ar2/(Ar1+Ar2)で表されるモル共重合組成をパーセントで示した値である。
また、Ar2同士の結合ブロックを持つ構造のポリマーはAr2からなるブロック成分の溶解性が低いため、有機溶媒に溶解させたポリマー溶液が白濁することがあり、塗工液としては好ましくない。
また、原料の入手性、更には耐摩耗性の点で、上記式(2)は、下記式(2’)の構造が好ましく、特に下記式(2”)の構造が好ましい。
さらに、原料の入手性、更には耐摩耗性の点で、水素原子以外のR1、R2としては、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基が好ましい。
R1、R2、R3、R4を構成する炭素数1〜12のアルキル基としては、直鎖アルキルあるいは分岐アルキルが挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、各種のプロピル基、各種のブチル基、各種のペンチル基、各種のヘキシル基である。また、シクロヘキシル基などの環状アルキルであってもよい。さらに、これらの基における水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。他の置換基としては、トリフルオロメチル基や、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基が挙げられる。これらの置換基を構成するアルキル基としては前記の基が挙げられ、アリール基としては、後記の基が挙げられる。
R1、R2、R3、R4を構成する炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基等が挙げられる。
上記の基において、アリール基が置換基を有する場合、置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基を挙げることができる。炭素数1〜6のアルキル基としては、上記のR1、R2、R3、R4の説明で挙げた基が挙げられる。他の置換基としては、ハロゲン原子やトリフルオロメチル基が挙げられる。
尚、R1、R2、R3、R4は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
Xを構成する炭素数2〜12の置換もしくは無置換のα,ω−アルキレン基としては、直鎖又は分岐アルキレン基が挙げられる。例えば、エタン、プロパン、ブタンに由来する二価の基が挙げられる。α,ω−アルキレン基に付加する置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基や炭素数6〜12のアリール基を挙げることができる。炭素数1〜6のアルキル基としては、上記のR1、R2、R3、R4の説明で挙げた基が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
Xを構成する1,8−メンタンジイル基、2,8−メンタンジイル基においては、炭素数1〜6のアルキル基や炭素数6〜12のアリール基等が付加した基であってもよい。炭素数1〜6のアルキル基としては、上記のR1、R2、R3、R4の説明で挙げた基が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
Ar2がビフェノール誘導体の場合、4,4’位で結合することが機械特性や耐摩耗性を向上させる点で好ましい。ナフタレン誘導体の場合、1〜8位のいずれかの位置で酸素原子と結合する態様を取り得るが、2,7位、2,6位、1,4位もしくは1,5位で結合することが機械特性や耐摩耗性を向上させる点で好ましい。その他の置換基及び酸素原子との結合位置については、Ar1と同じである。
二価の有機シロキサン変性フェニレン基としては、例えば、下記式(2A)で示される基である。
ハロゲン原子としては塩素原子が好ましい。炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基としては、R1,R2の説明で示した基が挙げられる。
R21およびR22としては、好ましくは水素原子または炭素数1〜3のアルコキシ基であり、更に好ましくは、後記する具体的構造が挙げられる。
R23は、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基としては、R1,R2の説明で示した基が挙げられる。好ましくは、フェニル基やメチル基である。
n1は、2〜4の整数であり、n2は、1〜600の整数である。)
ハロゲン原子としては塩素原子が好ましい。炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基としては、R1,R2の説明で示した基が挙げられる。
R32は各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基としては、R1,R2の説明で示した基が挙げられる。好ましくは、フェニル基やメチル基である。
R33は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
一価炭化水素基としては、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基が挙げられる。これらの中では炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。
R34は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
一価炭化水素基としては、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基が挙げられる。これらの中では炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。
Y及びY’は、炭素数2以上のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン、又は酸素原子である。好適には、炭素数2〜10のアルキレン基であり、更に好ましくは繰返し単位数が2〜4のメチレン基である。
naは0又は1、nbは1又は2、ncは1又は2である。ただし、na+nb+ncは3である。
n1〜n4は、それぞれ0以上の整数であり、n1、n2、n3及びn4の和は、2〜600の整数であり、n3及びn4の和は1以上の整数である。
aは、0または1〜4までの整数である。好ましくは、aは、0又は1である。)
このような二価の有機シロキサン変性フェニレン基としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
nを600以下とすることにより、PC共重合体との相溶性が良好となり、重合工程で反応を完結させることができる。従って、未反応の有機シロキサン変性フェノール化合物が最終のPC共重合体中に残存することを防止できるため、樹脂が白濁することなく、電子写真感光体のバインダー樹脂として適用した場合に残留電位の上昇を抑制できる。
一方、nを1以上とすることにより、電子写真感光体に表面エネルギー性を十分に付与でき、さらに異物の付着を良好に防止できる。
PC共重合体中の二価の有機シロキサン変性フェニレン基の割合は、0.01質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
当該割合を0.1質量%以上とすることにより、異物の付着をさらに良好に防止できる。一方、当該割合を50質量%以下とすることにより、耐摩耗性に優れた、十分な機械的強度を有する電子写真感光体用として好適に用いることができる。
末端基を構成する一価の芳香族基としては、炭素数6〜12のアリール基であると好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基やビフェニル基が挙げられる。芳香族基や芳香族基に付加するアルキル基等の脂肪族基に付加する置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。また、芳香族基に付加する置換基として炭素数1〜20アルキル基が挙げられる。このアルキル基は、上記のようにハロゲン原子が付加した基であってもよく、アリール基が付加した基であってもよい。
末端基を構成する一価のフッ素含有脂肪族基としては、炭素数1〜20のフッ素含有アルキル基が挙げられる。
一価の有機シロキサン変性フェニル基としては、例えば、下記式(2C)で示される基である。
R41は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基である。好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
R42〜R45は各々独立に水素、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
R46〜R49は各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基としては、R1,R2の説明で示した基が挙げられる。好ましくは、フェニル基やメチル基である。
nは2〜600の整数であり、分子量分布を持つ場合には平均繰返し単位数を示す。)
上記の効果を発現させる場合に必要な、一価の有機シロキサン変性フェニル基の割合は、PC共重合体全体に対して、0.01質量%以上、50質量%以下である。さらに好適には、0.1質量%以上、20質量%以下、特に好適には、0.5質量%以上、10質量%以下である。
一価の有機シロキサン変性フェニル基のほかに、二価の有機シロキサン変性フェニレン基に由来する単位が主鎖に含まれるPC共重合体においては、この単位も合算する。
本発明のPC共重合体は、例えば、下記式(3)に示す低量体数のビスクロロホーメートオリゴマーを用い、下記式(4)に示すコモノマーである二価フェノール性化合物を塩基存在下で反応させることにより得られる。
式(3)のビスクロロホーメートオリゴマーにおいて、その平均量体数n’は、1.0以上1.99以下の範囲にある。平均量体数が1.0以上1.99以下の範囲にあるビスクロロホーメートオリゴマーを使用することで、本発明のPC共重合体の製造が容易になる。平均量体数n’の算出方法は、実施例において後記する方法が挙げられる。
アミド化合物の含有量を700質量ppm以下とすることにより、電子写真感光体のバインダー樹脂としてPC共重合体を適用した場合に残留電位が上昇することを抑制できる。なお、ビスクロロホーメートオリゴマーは、固形物に限らず、液体でもよい。
ビスクロロホーメートオリゴマーを製造する際、トリエチルアミンなどのアミン化合物を大量に使用した場合、アミン化合物とビスクロロホーメート化合物が反応してアミド化合物が不純物として生成する場合がある。
しかしながら、ビスクロロホーメートオリゴマーの洗浄回数を増やすことにより、上記のように、アミド化合物の含有量を減らすことができる。
水洗以外の低減手段として、蒸留や吸着剤の使用、カラム分別が挙げられる。
ジアルキルカルバミン酸クロリドの含有量を100質量ppm以下とすることにより、残留電位が上昇することを抑制して、良好な感度を有する電子写真感光体が得られる。
尚、塩化メチレンに対する溶解度が2質量%以下であるか否かは、有機溶媒含有量が500質量ppm以下の、粘度平均分子量が15000〜30000の範囲にある固体状の単独重合体2質量部を室温で塩化メチレン98質量部に浸漬し、24時間放置した後、固液分離し、固体側を乾燥させて求めた質量減少が0.04質量部以上であるか否かにより確認できる。
中でも4,4’−ビフェノール、ヒドロキノン、レゾルシン、2,7−ナフタレンジオール、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタンが耐摩耗性に優れる樹脂が得られる事から好ましい。
H(CF2)nCH2OH・・・(7)
(nは、1〜12の整数)
F(CF2)mCH2OH・・・(8)
(mは、1〜12の整数)
これら分岐剤の添加量は、共重合組成比で30モル%以下、好ましくは5モル%以下であり、これが30モル%を超えると成形性の低下を招くことがある。
さらに、必要に応じて、この反応系に亜硫酸ナトリウムやハイドロサルファイト塩などの酸化防止剤を少量添加してもよい。
このビスクロロホーメートオリゴマーを製造する方法としては、次に示す方法によって製造されたものを用いると、PC共重合体製造時の洗浄工程が簡略化できることなどの点で好ましい。
滴下温度や反応温度は、通常0〜70℃、好ましくは5〜65℃であり、滴下時間、反応時間は共に、15分間〜4時間、好ましくは30分間〜3時間程度である。このようにして得られるポリカーボネートオリゴマーの平均量体数(n’)は好ましくは1.00以上1.99以下、さらに好ましくは1.00以上1.60以下である。
反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよいが、通常は、常圧もしくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応時間は、反応温度によって左右されるが、通常0.5分間〜10時間、好ましくは1分間〜3時間程度である。
また、このPC共重合体には、本発明の目的達成を阻害しない範囲で、Ar1およびAr2以外の構造単位を有するポリカーボネート単位や、ポリエステル、ポリエーテル構造を有する単位を含有しているものであってもよい。
また、得られた反応生成物(粗生成物)は、公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のものをPC共重合体として回収することができる。
本発明の塗工液は、少なくとも本発明のPC共重合体、及び本PC共重合体を溶解、又は分散可能な溶剤を含んでなる。また、塗工液には上記以外に低分子化合物、染料、顔料などの着色剤、電荷輸送材、電子輸送材、正孔輸送材、電荷発生材料等の機能性化合物、無機又は有機のフィラー、ファイバー、微粒子などの充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸捕捉剤等の添加剤を含んでいても良い。樹脂以外に含まれても良い物質の例は、例えば後述する電子写真感光体の構成成分に含まれるものが挙げられる。また、塗工液には本発明の効果を損なわない限り他の樹脂を含んでいても良く、その例は下記電子写真感光体の構成成分の例として挙げられる。また、本発明で使用される溶媒は本PC共重合体、他の材料の溶解性、分散性、粘度、蒸発速度、化学的安定性、物理的変化に対する安定性などを考慮し、単独、あるいは複数の溶媒を混合して使用することができる。その例は、後述する電子写真感光体の構成成分の例として挙げられる。
また本塗工液中のPC共重合体と電荷輸送物質との割合は、通常、質量比で20:80〜80:20、好ましくは30:70〜70:30とすることが望ましい。
本発明の塗工液中、本発明のPC共重合体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の電子写真感光体は、上述のPC共重合体を感光層中に用いる限り、公知の種々の形式の電子写真感光体はもとより、どのようなものとしてもよいが、感光層が、少なくとも1層の電荷発生層と少なくとも1層の電荷輸送層を有する積層型電子写真感光体、または、一層に電荷発生物質と電荷輸送物質を有する単層型電子写真感光体とすることが好ましい。
本発明の電子写真感光体において、前記した本発明のPC共重合体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、所望に応じて本発明の目的を阻害しない範囲で、他のポリカーボネート等のバインダー樹脂成分を含有させてもよい。さらに、酸化防止剤等の添加物を含有させてもよい。
前記した電荷発生層や電荷輸送層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知の各種のものを使用することができる。具体的には、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリケトン、ポリアクリルアミド、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、メタクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−スチレン共重合体、大豆油変性アルキッド樹脂、ニトロ化ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリイソプレン、ポリチオカーボネート、ポリアリレート、ポリハロアリレート、ポリアリルエーテル、ポリビニルアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いることもできるし、また、2種以上を混合して用いることもできる。なお、電荷発生層や電荷輸送層におけるバインダー樹脂としては、前記した本発明のPC共重合体を使用することが好適である。
この電荷輸送層において、本発明のPC共重合体は1種単独で用いることもでき、また2種以上混合して用いることもできる。また、本発明の目的を阻害しない範囲で、他のバインダー樹脂を本発明のPC共重合体と併用することも可能である。
本発明のPC共重合体と共に使用できる電荷輸送物質としては、公知の各種の化合物を使用することができる。このような化合物としては、カルバゾール化合物、インドール化合物、イミダゾール化合物、オキサゾール化合物、ピラゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ピラゾリン化合物、チアジアゾール化合物、アニリン化合物、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン化合物、脂肪族アミン化合物、スチルベン化合物、フルオレノン化合物、ブタジエン化合物、キノン化合物、キノジメタン化合物、チアゾール化合物、トリアゾール化合物、イミダゾロン化合物、イミダゾリジン化合物、ビスイミダゾリジン化合物、オキサゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンズイミダゾール化合物、キナゾリン化合物、ベンゾフラン化合物、アクリジン化合物、フェナジン化合物、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリ−9−ビニルフェニルアントラセン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾール樹脂、あるいはこれらの構造を主鎖や側鎖に有する重合体などが好適に用いられる。これら化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これら電荷輸送物質の中でも、特開平11−172003公報において具体的に例示されている化合物が特に好適に用いられる。
なお、本発明の電子写真感光体においては、電荷発生層か電荷輸送層の少なくともいずれかに本発明のPC共重合体をバインダー樹脂として用いることが好適である。
このような酸化防止剤の具体例としては、特開平11−172003号公報の明細書に記載された化学式[化94]〜[化101]の化合物が好適である。
これら酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい、そして、これらは前記感光層のほか、表面保護層や下引き層、ブロッキング層に添加してもよい。
各層の塗布は公知のものなど各種の塗布装置を用いて行なうことができ、具体的には、例えば、アプリケーター、スプレーコーター、ベーコーター、チップコーター、ロールコーター、ディップコーター、ドクタブレード等を用いて行なうことができる。
<製造例1:ビスフェノールCオリゴマー(ビスクロロホーメート)の合成>
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)230g(0.897mol)、塩化メチレン1058ml、ホスゲン187g(1.89mol)の混合液に、トリエチルアミン199.4g(1.97mol)を塩化メチレン460mlで希釈した溶液を13〜16℃で3時間6分かけて滴下した。反応混合物を14〜16℃で1時間38分撹拌した。反応混合物に濃塩酸5.0mlと純水200mlを加え洗浄した。その後水層が中性になるまで水洗を繰り返した。取り出した塩化メチレン溶液は、ビスクロロホーメート化合物含有溶液であり、1848.4gであった。
得られた溶液のクロロホーメート濃度は1.16モル/L、固形物濃度は0.24kg/L、平均量体数(n’)は1.12であった。また、得られたビスフェノールCオリゴマーに含まれるアミド化合物の含有量は、ビスフェノールCオリゴマー中の全窒素質量からトリエチルアミンに由来する窒素量を差し引いた値でありに基づき求められ、ビスフェノールCオリゴマー全質量基準で90質量ppmであることが分かった。また、トリエチルアミン由来の窒素量は0.3質量ppmであった。なお、ビスフェノールAオリゴマー中の窒素質量は、JIS K2609に準拠した化学発光法に従って全窒素量を定量した。これからガスクロ分析でトリエチルアミン量を定量し、これを窒素量に換算して、全窒素量から差し引き、アミド化合物に由来する窒素質量とした。以後この得られた原料をC−CFという。
ビスクロロホーメート化合物の塩化メチレン溶液から、塩化メチレンを50℃、減圧条件で乾固した。得られた固形分を用いて測定を行った。この結果を、別途ピリジンを標準物質として作成した検量線と比較する事で、窒素量の定量を行った。得られた結果を、ビスクロロホーメート化合物の塩化メチレン中での濃度で換算する事で、ビスクロロホーメート化合物中の全窒素量を算出した。
トリエチルアミンの定量は、上記の方法で得たビスクロロホーメート化合物の固形分に0.5N−NaOH水溶液を加えてpHを8以上とし、これにクロロホルムを添加して、クロロホルム抽出成分をトリエチルアミンとして、ガスクロマトグラフィー分析し、絶対検量線法で定量した。
機種:アジレント・テクノロジー製 7890A
カラム:CP−VOLAMINE(Varian製) 60m×0.32mm(内径)
注入口温度:150℃
カラム温度:40℃から150℃まで50℃/分で昇温、150℃で10分保持後、250℃まで50℃/分で昇温
キャリアガス:ヘリウム 40cm/秒 一定
注入量:2μl
注入方式:スプリットレス
検出器:FID
FID温度:260℃
平均量体数(n’)=1+(Mav−M1)/M2・・・(数1)
(式(数1)において、Mavは(2×1000/(CF価))であり、M2は(M1−98.92)であり、M1は前記式(3)において、n’=1のときのビスクロロホーメート化合物の分子量であり、CF価(N/kg)は(CF値/濃度)であり、CF値(N)は反応溶液1Lに含まれる前記式(3)で表されるビスクロロホーメート化合物中のクロル分子数であり、濃度(kg/L)は反応溶液1Lを濃縮して得られる固形分の量である。ここで、98.92は、ビスクロロホーメート化合物同士の重縮合で脱離する2個の塩素原子、1個の酸素原子および1個の炭素原子の合計の原子量である。)
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン(DMCP)76.7g(0.272モル)、塩化メチレン410mLで懸濁し、そこにトリエチルアミン53.8g(0.533モル)を加えて溶解した。これをホスゲン52.7g(0.533モル)を塩化メチレン225mLに溶解した液に14〜18.5℃で2時間50分かけて滴下した。18.5℃〜19℃で1時間撹拌後、10〜22℃で塩化メチレン250mLを留去した。残液に純水73mL、濃塩酸4.5mL、ハイドロサルファイト0.47gを加え洗浄した。その後、純水330mLで4回洗浄を繰り返し、分子末端にクロロホーメート基を有するビスフェノールEオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は0.89モル/L、固形物濃度は0.20kg/L、平均量体数(n’)は1.14であった。なお、得られたDMCPオリゴマー中のアミド化合物の含有量は、90質量ppmであることが分かった。また、トリエチルアミン由来の窒素量は0.3質量ppmであった。以後この得られた原料をDMCP−CFという。
製造例2において、DMCPを1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(CZ)80.5g(0.272モル)に変更した以外は、製造例2と同様にして、分子末端にクロロホーメート基を有するビスフェノールEオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は0.89モル/L、固形物濃度は0.21kg/L、平均量体数(n’)は1.16であった。なお、得られたCZオリゴマー中のアミド化合物の含有量は、90質量ppmであることが分かった。また、トリエチルアミン由来の窒素量は0.3質量ppmであった。以後この得られた原料をCZ−CFという。
製造例2において、DMCPを2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(PH)103.4g(0.272モル)に変更した以外は、製造例2と同様にして、分子末端にクロロホーメート基を有するビスフェノールEオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は0.79モル/L、固形物濃度は0.23kg/L、平均量体数(n’)は1.19であった。なお、得られたPHオリゴマー中のアミド化合物の含有量は、210質量ppmであることが分かった。また、トリエチルアミン由来の窒素量は0.3質量ppmであった。以後この得られた原料をPH−CFという。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)80.2g(0.352モル)を塩化メチレン450mLで懸濁し、そこにトリエチルアミン70.4g(0.702モル)を加えて溶解した。これをホスゲン69.8g(0.631モル)を塩化メチレン250mLに溶解した液に14〜18.5℃で2時間50分かけて滴下した。18.5℃〜19℃で1時間撹拌後、10〜22℃で塩化メチレン250mLを留去した。残液に純水73mL、濃塩酸4.5mL、ハイドロサルファイト0.47gを加え洗浄した。その後、純水330mLで4回洗浄を繰り返し、分子末端にクロロホーメート基を有するビスフェノールAオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は0.88モル/L、固形物濃度は0.21kg/L、平均量体数(n’)は1.49であった。なお、得られたビスフェノールAオリゴマー中のアミド化合物の含有量は、150質量ppmであることが分かった。また、トリエチルアミン由来の窒素量は0.3質量ppmであった。以後、この得られた原料をA−CFという。
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)56.6kg(224モル)を塩化メチレン1080Lで懸濁し、そこにホスゲン66.0kg(667モル)を加えて溶解した。これにトリエチルアミン44.0kg(435モル)を塩化メチレン120Lに溶解した液を2.2〜17.8℃で2時間50分かけて滴下した。17.9℃〜19.6℃で30分間撹拌後、14〜20℃で塩化メチレン900Lを留去した。残液に純水210L、濃塩酸1.2kg、ハイドロサルファイト450gを加え洗浄した。その後、純水210Lで5回洗浄を繰り返し、分子末端にクロロホーメート基を有するビスフェノールZオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られた溶液のクロロホーメート濃度は1.14モル/L、固形物濃度は0.22kg/L、平均量体数は1.02であった。なお、得られたビスフェノールCオリゴマー中のアミド化合物の含有量は、20質量ppmであることが分かった。また、トリエチルアミン由来の窒素量は0.3質量ppmであった。以後この得られた原料をC−CF2という。
<製造例7:ビスフェノールCオリゴマー(ビスクロロホーメート)の合成>
製造例1において、ビスフェノールCオリゴマー(C−CF)の合成反応後に行った純水洗浄の回数を、4回から2回に減らした以外は、製造例1と同様にして製造した。
なお、得られたビスフェノールCオリゴマー中のアミド化合物の含有量は、720質量ppmであることが分かった。以後この得られた原料をC−CF3という。
<PC共重合体の製造>
メカニカルスターラー、撹拌羽根、邪魔板を装着した反応容器に、製造例1のC−CF(30mL)と塩化メチレン(30mL)を注入した。これに末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール(以下、PTBPと表記)(0.05g)を添加し、十分に混合されるように撹拌した。この溶液に、別途調製した芳香族二価フェノールモノマー溶液を全量添加し(モノマー溶液調製法:2Nの水酸化ナトリウム水溶液29mLを調製し、室温以下に冷却した後、酸化防止剤としてハイドロサルファイトを0.1g、2,7−ジヒドロキシナフタレン2.8gを添加し、完全に溶解して調製した)、反応器内の温度が15℃になるまで冷却した後、撹拌しながらトリエチルアミン水溶液(7vol%)を0.2mL添加し、3時間撹拌を継続した。
得られた反応混合物を塩化メチレン0.2L、水0.1Lで希釈し、洗浄を行った。下層を分離し、さらに水0.1Lで一回、0.03N塩酸0.1Lで1回、水0.1Lで3回の順で洗浄を行った。得られた塩化メチレン溶液を、撹拌下メタノールに滴下投入し、得られた再沈物をろ過、乾燥する事により下記構造のPC共重合体(PC−1)を得た。
このようにして得られたPC共重合体(PC−1)を塩化メチレンに溶解して、濃度0.5g/dlの溶液を調製し、20℃における還元粘度[ηsp/C]を測定したところ、0.55dl/gであった。なお、得られたPC−1の構造及び組成を1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルにより分析したところ、下記の繰り返し単位、繰り返し単位数、及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、得られたポリカーボネート共重合体中のジエチルカルバミン酸クロリドの残留量は、このポリカーボネート共重合体全質量基準で10質量ppmであることがわかった。
Ar2/(Ar1+Ar2)=1/(n+1)・・・(数2)
導電性基体としてアルミニウム金属を蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、その表面に、電荷発生層と電荷輸送層を順次積層して積層型感光層を形成した電子写真感光体を製造した。電荷発生物質としてオキソチタニウムフタロシアニン0.5質量部を用い、バインダー樹脂としてブチラール樹脂0.5質量部を用いた。これらを溶媒の塩化メチレン19質量部に加え、ボールミルにて分散し、この分散液をバーコーターにより、前記導電性基体フィルム表面に塗工し、乾燥させることにより、膜厚約0.5ミクロンの電荷発生層を形成した。
つぎに、電荷輸送物質として、下記式(11)の化合物(CTM−1)0.5g、前記で得られたPC共重合体(PC−1)0.5gを10ミリリットルのテトラヒドロフランに分散し、塗工液を調製した。この塗工液をアプリケーターにより、前記電荷発生層の上に塗布し、乾燥し、膜厚約20ミクロンの電荷輸送層を形成した。
PC共重合体の溶解性は前述の塗工液の調製時に、調製した塗工液の白濁度を目視で観察することにより評価した。PC共重合体が溶解し白濁が認められない場合を○、不溶解部分がある場合を×、白濁した場合を「白濁」とした。
また、PC共重合体、及び電子写真感光体の耐摩耗性の評価を、以下の通り実施した。
〔1〕共重合体の耐摩耗性評価サンプル作製:PC−1(2g)を塩化メチレン(12mL)に溶解し、アプリケーターを用い市販のPETフィルム上にキャスト製膜した。このフィルムを減圧下加熱し溶剤を除去し、厚み約30μmのフィルムサンプルを得た。
〔2〕感光体の耐摩耗性評価サンプル作製:PC−1(1g)、及び上記式(11)のCTM−1(1g)を塩化メチレン(10mL)に溶解し、アプリケーターを用い市販のPETフィルム上にキャスト製膜した。このフィルムを減圧下加熱し溶剤を除去し、厚み約30μmのフィルムサンプルを得た。
〔3〕評価:前記〔1〕、〔2〕で作製したフィルムのキャスト面の耐摩耗性をスガ摩耗試験機NUS−ISO−3型(スガ試験機社製)を用いて評価した。試験条件は4.9Nの荷重をかけた摩耗紙(粒径3μmのアルミナ粒子を含有)を感光層表面と接触させて2,000回往復運動を行い、質量減少量を測定した。
〔4〕PC共重合体中に含まれる不純物(ジエチルカルバミン酸クロリド)の含有量の測定:ジエチルカルバミン酸クロリドは、ガスクロマトグラフィーを用いた絶対検量線法で測定した。
測定条件は次のとおりである。
サンプル:PC共重合体0.5gを塩化メチレン13.3gに溶解し、測定サンプルとした。
機器:アジレント・テクノロジー製 7890A
カラム:HP−1 30m×0.25mm(内径)(膜厚:0.25μm)
温度:40℃から、毎分10℃で300℃まで昇温し、300℃で30分保持
注入口:スプリット 300℃
検出器:310℃(FID)
キャリアガス:ヘリウム 40cm/秒
注入量:1μl
これらの結果を表1に示し、後述する実施例2〜10Dおよび比較例1〜4についても同様の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例1において、C−CF(30mL)を製造例2のDMCP−CF(18mL)に変更し、塩化メチレンの量を42mL、PTBP量を0.03g、2,7−ジヒドロキシナフタレンを4,4’−ビフェノール1.4g、2Nの水酸化ナトリウム水溶液量を10mLに変更し、反応時間を1時間に変更し、実施例1と同様にして、PC共重合体(PC−2)を製造した。
PC−2の還元粘度[ηsp/C]は1.17dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、PC共重合体中に含まれるジエチルカルバミン酸クロリドの含有量は、10質量ppmであった。
実施例1において、C−CF(30mL)を製造例3のCZ−CF(34mL)に変更し、塩化メチレンの量を26mL、2,7−ジヒドロキシナフタレンをレゾルシン1.7gに変更して、水酸化ナトリウム水溶液の量を26mLに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、PC共重合体(PC−3)を製造した。
PC−3の還元粘度[ηsp/C]は0.53dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、PC共重合体中に含まれるジエチルカルバミン酸クロリドの含有量は、10質量ppmであった。
実施例1において、2,7−ジヒドロキシナフタレンを9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン6.6gに変更して、水酸化ナトリウム水溶液29mLを2N水酸化カリウム水溶液29mLに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、PC共重合体(PC−4)を製造した。
PC−4の還元粘度[ηsp/C]は0.50dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、PC共重合体中に含まれるジエチルカルバミン酸クロリドの含有量は、10質量ppmであった。
実施例1において、C−CF(30mL)を製造例4のPH−CF(16mL)に変更し、塩化メチレンの量を44mL、PTBP量を0.03g、2,7−ジヒドロキシナフタレンをビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン1.3g、2N水酸化ナトリウム水溶液の量を10mL、反応時間を1時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、PC共重合体(PC−5)を製造した。
PC−5の還元粘度[ηsp/C]は1.12dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。また、PC共重合体中に含まれるジエチルカルバミン酸クロリドの含有量は、20質量ppmであった。
メカニカルスターラー、撹拌羽根、邪魔板を装着した反応容器に、製造例6のC−CF2(24mL)と塩化メチレン(36mL)を注入した。これに末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール(以下、PTBPと表記)(0.04g)と下記式(10A)で示すシロキサン変性フェノール0.1gを添加し、十分に混合されるように撹拌した。
この溶液に、別途調製したビフェノールモノマー溶液を全量添加し(モノマー溶液調製法:2Nの水酸化ナトリウム水溶液10mLを調製し、室温以下に冷却した後、酸化防止剤としてハイドロサルファイトを0.1g、4,4’−ビフェノール2.6gを添加し、完全に溶解して調製した)、反応器内の温度が15℃になるまで冷却した後、撹拌しながらトリエチルアミン水溶液(7vol%)を0.2mL添加し、1時間撹拌を継続した。
得られた反応混合物を塩化メチレン0.2L、水0.1Lで希釈し、洗浄を行った。下層を分離し、さらに水0.1Lで一回、0.03N塩酸0.1Lで1回、水0.1Lで5回の順で洗浄を行った。得られた塩化メチレン溶液を、撹拌下温水中に滴下投入し、塩化メチレンを蒸発させると共に樹脂固形分を得た。得られた析出物をろ過、乾燥することにより下記構造のポリカーボネート共重合体(PC−10A)を製造した。なお、PC共重合体(PC−10A)中の有機シロキサン変性フェニル基部分の質量割合は、PC共重合体全質量基準で3質量%である。また、下記式(10A)において、n=39である。
実施例10Aにおいて、シロキサン変性ビスフェノールを下記式(10B)で示すシロキサン変性フェノール0.4gに変更した以外は実施例10Aと同様にして、PC共重合体(PC−10B)を製造した。なお、PC共重合体(PC−10B)中の有機シロキサン変性フェニル基部分の質量割合は、PC共重合体全質量基準で5質量%である。また、下記式(10B)において、n=90である。
実施例10Aにおいて、シロキサン変性ビスフェノールを下記式(10C)で示すシロキサン変性フェノール0.2gに変更した以外は実施例10Aと同様にして、PC共重合体(PC−10C)を製造した。なお、PC共重合体(PC−10C)中の有機シロキサン変性フェニル基部分の質量割合は、PC共重合体全質量基準で5質量%である。また、下記式(10C)において、n=150である。
実施例10Aにおいて、シロキサン変性ビスフェノールを下記式(10D)で示すシロキサン変性フェノール0.2gに変更した以外は実施例10Aと同様にして、PC共重合体(PC−10D)を製造した。なお、PC共重合体(PC−10D)中の有機シロキサン変性フェニル基部分の質量割合は、PC共重合体全質量基準で5質量%である。また、下記式(10D)において、n=60である。
PC共重合体単独でフィルムを作製し、このフィルムを用いて超純水による接触角の測定を行った。
接触角の測定には、測定装置としてDM700(協和界面科学株式会社製)を用いた。
上述したように、PC共重合体を用いて電子写真感光体を作製し、市販のプリンター(FS−600、京セラ(株)製)を用いて評価した。
具体的には、プリンターに電子写真感光体をドラム状に装着し、常温・常湿条件下(23℃、50%)で、1時間繰返し運転を行った。
そして、電子写真感光体の中央の一定範囲内(2cm×2cmの正方形)での付着状態を目視確認した。評価基準は、以下の通りである。
◎:電子写真感光体の評価範囲内にトナーの付着がない。
○:トナーの付着がわずかに有る。エアーを吹き付けることで除去できる。
×:トナーの付着が有る。エアーを吹き付けても除去ができない。
実施例1において、C−CF(30mL)を製造例5のA−CF(17mL)に変更し、塩化メチレンの量を43mL、PTBP量を0.100gに変更し、2,7−ジヒドロキシナフタレン2.8gを4,4’−ビフェノール1.4gに変更して、2N水酸化ナトリウム水溶液の量を10mLに変更し、反応時間を1時間に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、PC共重合体(PC−6)を製造した。
PC−6の還元粘度[ηsp/C]は0.52dl/gであり、構造は前記式(1)において、下記の繰り返し単位及び組成からなるPC共重合体であることが確認された。
特開平5−70582の実施例2に従い、GPCポリスチレン換算の質量平均分子量が6万であるPC共重合体(PC−7)を以下の通り製造した。
撹拌機、温度計を備えた反応容器に塩化メチレン625mLを加え、撹拌しながら、ビスフェノールAビスクロロ蟻酸エステル35.3gを加え溶解した。さらにこれにイオン交換水125mLを加えた後、十分撹拌しながら、3.5%の水酸化ナトリウム水溶液228.6gにビフェノール18.6gを溶解した液を20〜25℃において1時間で滴下した。滴下後、同温で撹拌を続け、4時間後に28%の水酸化ナトリウム水溶液14.3gを加えさらに5時間撹拌を続け、分子量が6万(GPC、ポリスチレン換算)となったところで、撹拌を停止し、静置した。
得られた反応液を氷水中に注入し、析出する結晶をろ取し、水洗、乾燥後、アセトンを用いて再結晶を行い、PC−7を得た。
本PC共重合体の還元粘度[ηsp/C]は0.53dl/gであった。
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)(0.17kg)、4,4’−ビフェノール(0.03kg)を2Nの水酸化カリウム水溶液1.5L溶液と、塩化メチレン1.0kgとを混合して撹拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを1L/分の割合でpHが9以下になるまで吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜6であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。
次に、反応容器に、メカニカルスターラー、撹拌羽根、邪魔板を装着し、前記オリゴマー(26mL)に塩化メチレン(34mL)を添加した。これに末端停止剤としてPTBP(0.065g)を添加し、十分に混合されるように撹拌した。本溶液に、別途調製したビフェノールモノマー溶液を全量添加し(モノマー溶液調製法:2Nの水酸化ナトリウム水溶液15mLを調製し、室温以下に冷却した後、ハイドロサルファイトを0.02g、4,4’−ビフェノール1.2gを添加し、完全に溶解して調製した)、撹拌しながらトリエチルアミン水溶液(7vol%)を0.2mL添加し、引続き1時間撹拌を継続した。
得られた反応混合物を塩化メチレン0.2L、水0.1Lで希釈し、洗浄を行った。下層を分離し、さらに水0.1Lで1回、0.01N塩酸0.1Lで1回、水0.1Lで3回の順で洗浄を行った。得られた塩化メチレン溶液を、撹拌下メタノールに滴下投入し、得られた再沈物をろ過、乾燥することによりPC共重合体(PC−8)を得た。
PC−8の還元粘度[ηsp/C]は1.10dl/gであった。また、本PC共重合体には、4,4’−ビフェノールに由来する繰り返し単位が、カーボネート結合を介して2以上連結した成分として存在することが確認された。
実施例10Aで使用したビスフェノールCオリゴマー(C−CF2)を製造例7で製造されたビスフェノールCオリゴマー(C−CF3)に変更した以外は、実施例10Aと同様にしてPC共重合体(PC−9)を製造した。なお、PC共重合体(PC−9)の構造及び還元粘度は、実施例1と同様である。PC共重合体中に含まれるジエチルカルバミン酸クロリドの含有量は、110質量ppmであった。
表1に実施例1〜5,10A〜10Dおよび比較例1〜4の評価結果を示す。実施例1〜5,10A〜10Dと、比較例1〜4を比較すると、実施例1〜5,10A〜10DのPC共重合体では、有機溶剤への安定な溶解性を保持し、かつ、耐摩耗性評価において質量減少量が小さいことから、耐摩耗性に優れることがわかった。また、実施例1〜5,10A〜10Dの電子写真感光体では、初期残留電位(VR)の値が小さく、繰り返し残留電位(VR上昇)も小さいことから、耐摩耗性、電気特性、及び帯電特性のすべてについて優れていることがわかった。
一方、比較例1の電子写真感光体では、耐摩耗性評価において質量減少量が大きく、耐摩耗性が悪いことがわかった。
また、比較例2、3のPC共重合体では、溶解性が悪く、特に比較例2では溶解しなかった。また、比較例3では溶液が白濁し、電子写真感光体としても、初期残留電位(VR)の値が小さく、繰り返し残留電位(VR上昇)も小さいことから、電気特性、及び帯電特性が悪いことがわかった。
さらに、表2に示すように、実施例10A〜10Cでは、PC共重合体中に二価の有機シロキサン変性フェニレン基を有し、実施例10Dでは、PC共重合体中に一価の有機シロキサン変性フェニル基を有するため、有機シロキサン変性フェニル基を有しない実施例1よりも、水の接触角及びトナー付着性が向上することが分かった。
なお、表1中、「*不純物含有量」とは、ジエチルカルバミン酸クロリドの量を表す。
Claims (12)
- 下記式(1)に記載の繰り返し単位からなる構造を有し、
かつAr2/(Ar1+Ar2)で表されるモル共重合組成が25モル%以上47モル%以下である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
- 請求項1に記載のポリカーボネート共重合体であって、
Ar2として、二価の有機シロキサン変性フェニレン基をさらに含むことを特徴とするポリカーボネート共重合体。 - 請求項2に記載のポリカーボネート共重合体であって、
二価の有機シロキサン変性フェニレン基は、下記式(2A)又は式(2B)で示される基である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
(式(2A)中、R21およびR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を示す。
R23は、各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
n1は、2〜4の整数であり、n2は、1〜600の整数である。)
(式(2B)中、R31は、各々独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基または炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である
R32は各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
R33は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
R34は、脂肪族不飽和結合を含まない同種又は異種の一価炭化水素基である。
Y及びY’は、炭素数2以上のアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン、又は酸素原子である。
naは0又は1、nbは1又は2、ncは1又は2である。ただし、na+nb+ncは3である。
n1〜n4は、それぞれ0以上の整数であり、n1、n2、n3及びn4の和は、2〜600の整数であり、n3及びn4の和は1以上の整数である。
aは、0または1〜4までの整数である。) - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体であって、連鎖末端が一価の芳香族基あるいは一価のフッ素含有脂肪族基により封止されたことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
- 請求項4に記載のポリカーボネート共重合体であって、
連鎖末端の一価の芳香族基が一価の有機シロキサン変性フェニル基である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。 - 請求項5に記載のポリカーボネート共重合体であって、
一価の有機シロキサン変性フェニル基は、下記式(2C)で示される基である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
(Zは炭素数2〜6の炭化水素基である。
R41は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基である。
R42〜R45は各々独立に水素、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
R46〜R49は各々独立に炭素数1〜12の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。
nは2〜600の数であり、分子量分布を持つ場合には平均繰返し単位数を示す。) - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体であって、
下記式(3)に示されるビスクロロホーメートオリゴマーを原料とし、
前記ビスクロロホーメートオリゴマーの平均量体数(n’)が1.0以上1.99以下である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。
- 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体であって、
前記式(2)で示されるAr1が、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタンから選ばれた化合物から誘導される二価の基である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。 - 請求項7または請求項8に記載のポリカーボネート共重合体であって、
前記式(3)に示されるビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料に、アミド化合物が含まれている場合、
前記アミド化合物の含有量は、前記ビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料に含まれる窒素原子の質量に基づいて求められ、溶媒を除く前記ビスクロロホーメートオリゴマーを含む原料の全質量基準で700質量ppm以下である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。 - 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体であって、
当該ポリカーボネート共重合体に、ジアルキルカルバミン酸クロリドが含まれている場合、
前記ジアルキルカルバミン酸クロリドの含有量は、当該ポリカーボネート共重合体全質量基準で100質量ppm以下である
ことを特徴とするポリカーボネート共重合体。 - 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体と有機溶剤を含んでなる塗工液。
- 導電性基板上に感光層を設けた電子写真感光体において、
感光層の一成分として、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体を含有する
こと特徴とする電子写真感光体。
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