JP2011012364A - 内装用布地 - Google Patents

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Abstract

【課題】防汚性に優れる内装用布地、特に、黒ずみ汚れを含む各種の汚れが繊維に固着したり、内部拡散するのを防止できる内装用布地を提供する。
【解決手段】布地に対して、親水性ポリエステル樹脂化合物と、含フッ素防汚性樹脂化合物(その樹脂構造内にパーフルオロアルキル基からなるフッ素成分とポリアルキレングリコールなどからなる親水性成分の相反する成分から構成された樹脂化合物)とを付着させることにより、防汚性を付与した布地を提供し、特に、本加工を施した布地では、含フッ素防汚性樹脂化合物が表面張力を下げることにより、黒ずみ汚れを含む各種の汚れが繊維に固着したり、内部拡散するのを防止し、比較的内部に拡散した油性汚れは親水性ポリエステル樹脂系化合物が布表面に浮きあがらせるため、水に濡らして軽く絞った程度のタオル等で繊維表面を拭うだけで、布地に付着した各種汚れの除去を可能にした。
【選択図】図2

Description

本発明は、防汚性に優れる内装用布地に関するものである。
一般に、自動車内装に使われる布地(たとえば、シート、天井、ドア、ピラー、カーペット)や家屋の内装に使われる布地(たとえば、壁紙、カーペット)には、人が直接もしくは衣類を通して触れることで皮脂やタンパク質が付着する。付着したそれらがバインダーとなり、大気中のカーボンが付着することで黒ずみと呼ばれる汚れになっている。この黒ずみ汚れは付着することで見栄えが悪化する為、好ましくない。
この布地に付着した黒ずみ汚れを、洗濯機や有機溶剤を用いたドライクリーニングなどでの洗浄で除去することは可能である。しかし、自動車や家屋の内装に使われる布地は一体化(固定)されているために、取り外して洗浄することができない。
従来より、繊維製品などに対して、繊維に汚れを付着しにくくしたり(防汚性)、また繊維に付着した汚れを洗濯によって除去しやすくしたりする(汚れ除去性)ための防汚加工が行なわれている。例えば、特開2000−110069号公報には乳化剤としてアニオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を用いた乳化重合により製造されるフッ素系ポリマーエマルジョンを繊維表面に付与し、防汚効果を有する機能性生地を得る方法(特許文献1)が、特開2006−152487号公報には、スルホイソフタル酸又はその誘導体を重縮合成分として含有する水溶液と、フッ素系アクリル共重合体を含む水性液と、架橋剤とを繊維製品に付与し乾燥させることを特徴とする耐久防汚性繊維製品の製造方法(特許文献2)が開示されている。
特開2000−110069号公報 特開2006−152487号公報
前者(特開2000−110069)の発明は、黒ずみ汚れに対する防汚性能ならびにコーヒーやジュース等の飲み物をシートにこぼしても、すぐには布地に染み込まず、手早く拭き取れば染みが残らない機能を内装用布地に付与するものであるが、繊維に浸透した汚れ成分の除去は困難である。一方、後者(特開2006−152487)の発明では、油成分と無機物及び又は顔料に対する防汚性を布地に付与する発明である。架橋剤を使用することにより洗濯耐久性を有する樹脂となるため、許容以上の汚れに晒された場合であっても、洗濯機またはドライクリーニングなどを用いた洗濯によりその汚れを除去することが可能であり、洗濯後も防汚性を維持することができる。しかし内装用布地は洗濯やドライクリーニングによる汚れ除去を採用できないため、架橋剤を使用した2006−152487号公報で開示された発明以上の防汚性が要求される。
本発明は、上記のような従来技術に見られる問題点に着目してなされたものであり、上記黒ずみ汚れの除去性と、水性汚れの防汚性を両立し、軽く絞ったタオルなどによる水拭きだけで容易に汚れを除去することが可能な内装用布地の提供を目的としている。
本発明者らは、従来技術以上の防汚性を有する加工薬剤を検討すると共に、従来技術の防汚加工において、防汚性を阻害する可能性のある要因を洗い出し、その要因を排除することで、本発明の防汚性及び汚れ除去性に優れた内装用布地の完成に至った。すなわち、本発明は、架橋剤を実質的に用いることなく、合成繊維からなる布地に対して、親水性ポリエステル樹脂化合物と、含フッ素防汚性樹脂化合物(その樹脂構造内にパーフルオロアルキル基からなるフッ素成分とポリアルキレングリコールなどからなる親水性成分の相反する成分から構成された樹脂化合物)とを付着させることにより、防汚性を付与した布地を提供するものである。本発明の加工を施した布地では、含フッ素防汚性樹脂化合物が表面張力を下げることにより、黒ずみ汚れを含む各種の汚れが繊維に固着したり、内部に拡散したりするのを防止し、比較的内部に拡散した油性汚れは親水性ポリエステル樹脂系化合物が布表面に浮きあがらせるため、水に濡らして軽く絞った程度のタオル等で繊維表面を拭うだけで、布地に付着した各種汚れの除去が可能となる。
本発明の防汚加工において、親水性ポリエステル樹脂化合物及び含フッ素防汚性樹脂化合物の防汚性は次のようにして得られると考えられる。まず、含フッ素防汚性樹脂化合物とは、その樹脂構造内にパーフルオロアルキル基からなるフッ素成分とポリアルキレングリコールなどからなる親水性成分の相反する成分から構成される。このような含フッ素防汚性樹脂化合物と親水性ポリエステル樹脂化合物を布地に付着させた場合、最表面に含フッ素防汚性樹脂化合物のフッ素成分が繊維を覆う。これにより、水性汚れと油性汚れがはじかれ、繊維内部への汚れの拡散を防止する。繊維内部に拡散した汚れ成分に対しては、含フッ素防汚性樹脂化合物と繊維との間に存在する親水性ポリエステル樹脂化合物が、僅かな量の水を繊維内部へ引き込み、含フッ素防汚性樹脂化合物の親水性成分と相乗して油性汚れを表面へ押し出すことで汚れ除去が行われる。つまり、含フッ素防汚性樹脂化合物のフレキシブルな構造と親水性ポリエステル樹脂化合物の親水化が重要である。
ここに架橋剤が添加されると、各々又は相互の樹脂化合物間で架橋され、より高分子化が進む。また、繊維表面と各樹脂化合物との架橋で固定化が生じる。その結果、親水性ポリエステル樹脂化合物、含フッ素防汚性樹脂化合物のフレキシブル性が低下するため、汚れ成分を表面に浮き上がらせる効果が低下する恐れがある。また、親油(疎水)性の化合物である架橋剤は、油汚れへの親和性が高いため、汚れ付着の要因となる可能性がある。このように、防汚性樹脂に架橋剤を併用することで、樹脂に洗濯耐久性を付与できるが、架橋剤は防汚性を阻害する要因となる可能性がある。そこで、洗濯耐久性を要求されない内装用布地に対しては、架橋剤を実質的に併用しないことにより親水性ポリエステル樹脂化合物および含フッ素防汚性樹脂化合物それぞれの汚れ成分に対する特性を生かした、防汚性の内装用布地を得ることが可能となる。なお、本発明の防汚付与加工方法では架橋剤を実質的に用いないため、防汚性の洗濯耐久性は架橋剤を使用したときに比べて劣るが、本発明の防汚効果および汚れ除去効果に優れた内装用布地は、架橋剤に該当する成分を用いないことで得られるものであり、架橋剤を用いないことにより、良好な風合いを有する内装用布地を得ることができる。ここで、「架橋剤に該当する成分を用いない」とは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、架橋剤に該当する成分を使用しても構わないという趣旨である。架橋剤の使用量は、親水性ポリエステル樹脂化合物と防汚性フッ素樹脂化合物の合計量の1質量%未満であることが好ましく、架橋剤を全く使用しないことがより好ましい。架橋剤に該当する成分を親水性ポリエステル樹脂化合物と防汚性フッ素樹脂化合物の合計量に対して1質量%以上使用した場合、親水性ポリエステル樹脂化合物と含フッ素防汚性樹脂化合物と布地との間での架橋化反応により、親水性ポリエステル樹脂化合物や含フッ素防汚性樹脂化合物のフレキシブル性が一部抑制されることになり、十分な防汚性を発現できないおそれがある。本発明の、親水性ポリエステル樹脂化合物と防汚性フッ素樹脂化合物の合計量に対して1質量%未満であれば使用できる架橋剤として、例えばメラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、グリオギザール系架橋剤、エポシキ系架橋剤、シランカップリング剤系架橋剤、オキザゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤などを挙げることができる。
前記親水性ポリエステル樹脂化合物と、含フッ素防汚性樹脂化合物の布地に対する付着量は、前記親水性ポリエステル樹脂化合物が0.04〜7.92g/m2 、含フッ素防汚性樹脂化合物の付着量が0.02〜12.67g/m2 であるとき、特に容易に汚れを除去することができる。
さらに、本発明の前記親水性ポリエステル樹脂化合物と含フッ素防汚性樹脂化合物は、合成繊維からなる布地が、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維のいずれかの繊維か、又はこれらの交織もしくは混紡である布地に対して有効であり、シート、天井、ドア、ピラー、カーペットなどの自動車内装の主材繊維として好適に用いることができる。
取り外しができないため、洗濯して汚れを除去できない内装用各種布製品に対して、本発明の親水性ポリエステル樹脂と、含フッ素防汚性樹脂化合物を併用し、付着させることにより、黒ずみ汚れを含む各種汚れを水拭きだけで容易に除去することができるようになる。
次に、本発明を図1及び図2に基づいて具体的に説明する。図1は耐水浸み性の試験と黒ずみ洗浄試験の結果を示した表図、図2は耐水浸み性の試験と黒ずみ洗浄性の結果を示したグラフ図(縦軸、横軸ともに布地の薬剤付着量の対数を取り、判定結果との位置関係を示した)である。
前記本発明の布地は、親水性ポリエステル樹脂化合物と、含フッ素防汚性樹脂化合物とを含む溶液に合成繊維からなる布地を含浸し、乾燥してなる。親水性ポリエステル樹脂化合物を0.04〜7.92g/m2 、含フッ素防汚性樹脂化合物を0.02〜12.67g/m2 を付着させることが黒ずみ汚れを除去させる上で、特に重要である。
[処理浴の準備]
本発明において、親水性ポリエステル樹脂化合物と含フッ素防汚性樹脂化合物を布地に付与する方法に特に制限はなく、親水性ポリエステル樹脂化合物と含フッ素防汚性樹脂化合物とを含有する水溶液を布地に付与する一浴処理方法や、親水性ポリエステル樹脂化合物を含む水溶液を布地に付与後、含フッ素防汚性樹脂化合物を含む水溶液を布地に付与する二段処理方法が挙げられ、一浴処理法、二段処理法のいずれであっても、布地表面に親水性ポリエステル樹脂化合物が付着し、最表面を含フッ素防汚性樹脂化合物が覆う傾向にある。
[処理浴の準備]
本発明の親水性ポリエステル系樹脂化合物の布地への付着量は、布地に対して0.04〜7.92g/m2 であり、0.08〜0.75g/m2 であることがより好ましい。付着量が0.04g/m2 未満では油性汚れ除去性の効果が十分でなく、7.92g/m2 を超える量を付着しても、効果は上がらず、むしろ各種堅牢度低下が生じるため好ましくない。なお、ここでの付着量は、親水性ポリエステル樹脂化合物としての付着量であるため、濃度換算して処理液を調整する。処理液濃度に制限はなく、ピックアップ率に応じて適宜調整することができる。
前記含フッ素防汚性樹脂化合物の布地への好ましい付着量は、布地に対して0.02〜12.67g/m2 であり、0.03〜0.30g/m2 であることがより好ましい。なお、ここでも付着量は、含フッ素防汚性樹脂化合物としての付着量であるため、濃度換算して処理液を調整する。処理液濃度に制限はなく、ピックアップ率に応じて適宜調整することができる。付着量が0.02g/m2 未満では水性汚れの防汚性と油性汚れ除去性の効果が十分でなく、12.67g/m2 を超える量を付着しても、効果は上がらず、むしろ風合い粗硬、変色や各種堅牢度低下が生じるため好ましくない。
本発明においては、合成繊維からなる布地に、親水性ポリエステル樹脂化合物の付着量が0.08〜0.75g/m2 であり、かつ、含フッ素防汚性樹脂化合物の付着量が0.03〜0.30g/m2 のとき、特に優れた防汚効果を発現することができる。
また、本発明の合成繊維からなる内装用布地の製造の際、繊維と親水性ポリエステル樹脂化合物の親和性及び含フッ素防汚性樹脂化合物間の親和性を阻害しない範囲において、難燃剤、乾式防汚加工剤、帯電防止剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤などの通常内装材に用いられる加工薬剤を併用することもできる。
なお、市販の親水性ポリエステル樹脂化合物、含フッ素防汚性樹脂化合物、その他前記併用可能な各種薬剤は、一般に水溶液の状態で提供され、水以外の成分として、界面活性剤、有機溶剤を含有する場合がある。ここで空気中のカーボンはアニオンに帯電したような挙動を示す。そのためカチオン系界面活性剤はカーボンを引き寄せる傾向にある。又、低HLB非イオン界面活性剤は油性汚れ成分を吸着する傾向にある。本発明の防汚性を確保するためには、界面活性剤を含有しない薬剤、または、界面活性剤がアニオン系界面活性剤または高HLB非イオン界面活性剤である薬剤を用いるのが好ましい。
[処理液の布地への付与]
前記親水性ポリエステル系樹脂化合物と含フッ素系撥水撥油性樹脂化合物とを含む処理液を内装用布地に付与する方法としては、特に制限されず、従来行われている方法を適宜用いることができる。例えば、パッド法、浸漬法、スプレー(噴霧)法、泡加工法、コーティング法などにより布地に付与し、その後乾燥させることが可能である。また、乾燥の後、必要に応じてキュアリング(熱処理)工程を組み込んでもよい。乾燥方法については従来より用いられている方法を制限なく用いることができ、乾熱法でも湿熱法のいずれでもよい。このような乾燥工程の際の温度も特に制限されないが、80〜140°C程度が好ましい。また、必要に応じて実施されるキュアリング(熱処理)工程の際の温度も特に制限されないが、140°C〜200°C程度が好ましい。
前記合成繊維を含んでなる布地は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維の一種又は二種以上で構成された布地であってよく、これらの合成繊維の一種又は二種以上とこれらの合成繊維以外の繊維とで構成された布地であってもよい。これらは自動車内装品である天井、ドア、ピラー、カーペット、家屋の壁紙、カーペットの主材として用いられている繊維である。
前記布地には、親水性ポリエステル樹脂化合物と含フッ素防汚性樹脂化合物とを含む液を含浸し乾燥させてなるが、平時には表面張力の低い含フッ素防汚性樹脂化合物が最外層を構成している。一方、繊維との親和性が高く表面張力の高い親水性ポリエステル樹脂化合物基は層中に存在することとなる。したがって、黒ずみ汚れは、本願布の最外表面に構成する含フッ素防汚性樹脂化合物に接して反撥させられるか、撥水もしくは撥油した状態にある。場合によって、強い圧力を受けても繊維内部への拡散や固着の少ない状態で保留されることとなる。
前記本願布の表面に付着した黒ずみ汚れは、水に濡らして軽く絞った程度の市販タオル等で拭く(濡らす)と、含フッ素防汚性樹脂化合物が樹脂主鎖を中心にフリップフロップ現象を生じるとともに、樹脂皮膜内に存在する親水性ポリエステル樹脂化合物とが本願布の表面を親水性化することにより浮き上がり除去されることとなる。
つまり、本願布の原理として(1)繊維の最外層に水性汚れを弾き、油性汚れの布内部へ汚れの浸透、拡散を防ぐための含フッ素防汚性樹脂化合物が存在し、(2)内層に油性汚れとの親和性が弱く、水を引き寄せ易い親水性成分が存在する。さらに、この2成分を効果的な濃度で配合させることで、内装材特有の環境下でも通常洗浄と同様の効果を発揮することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
本発明に用いることができる親水性ポリエステル樹脂化合物を含有する製品は、油性汚れ除去性の観点から、親水性が高く特にアニオン性親水基を有することが好ましい。アニオン性親水基を有する親水性ポリエステル樹脂化合物を含有する製品として、日華化学(株)のナイスポールPR−99、PRK−60を挙げることができる。
本発明に用いることができる含フッ素防汚性樹脂化合物を含有する製品は、フッ素系撥水撥油性基を含有するとともに、親水性ポリエステル樹脂化合物との親和性が必要である観点から、親水性基を有することが好ましい。フッ素系撥水撥油性基と親水性基を有する含フッ素防汚性樹脂化合物として、日華化学(株)製のNKガードSR−200、SR−108を挙げることができる。
[合成例1]
含フッ素防汚性樹脂化合物A
四ッ口フラスコに、C6F13CH2CH2COOCH=CH2を20g、CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)9CH3を10g、CH2=C(CH3)COO(CH2CH(CH3)O)12Hを6g、CH2=C(CH3)COO(CH2CH(OH)CH2OHを4g、イソプロピルアルコール60gを入れ、窒素にて系内を充分に置換した後、アソビスイソプチロニトリル0.1gを添加し、70°Cにて10時間攪拌反応させた。反応終了後、40°C以下に冷却し、イソプロピルアルコール40gとイオン交換水60gを加え攪拌した。得られた重合体は、20.0質量%の固形分であった。また、共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、10,000(スチレン換算)であった。又、この含フッ素防汚性樹脂化合物A中のパーフルオロオクタン酸(PFOA)の濃度を高速液体クロマトグラフィー質量分析にて測定した結果、定量限界濃度(10ppb)未満であった。
本発明の実施例1〜20と、比較例1〜5の各防汚加工処理布は、シャーリング及び染色を終えた目付け220g/m2 、パイル長1mmのポリエステル100%のトリコット布地を十分に乾燥させた後、日華化学(株)製の含フッ素防汚性樹脂化合物であるNKガードSR−200、日華化学(株)製の親水性ポリエステル樹脂化合物であるナイスポールPR−99を、適量用いてパティング処理及び熱セット(150°C×300秒)をして作成したものである。
このうち、本発明の実施例1〜20は、前記親水性ポリエステル樹脂化合物を0.04〜7.92g/m2 、含フッ素防汚性樹脂化合物が0.02〜12.67g/m2 を付着させたもの、比較例1〜5は、前記親水性ポリエステル樹脂化合物及び含フッ素防汚性樹脂化合物のいずれか一方が上記付着g/m2 を下回り、もしくは上回って付着させたものである。耐水浸み性と黒ずみ洗浄試験とを行った結果を図1に示した。
なお、実施例3に、含フッ素防汚性樹脂化合物としてNKガードSR−200の代りに合成例1で合成したパーフルオロオクタン酸(PFOA)フリーの含フッ素防汚性樹脂化合物Aを用いて防汚加工処理布を得ることもある。パーフルオロオクタン酸(PFOA)フリーの含フッ素防汚性樹脂化合物Aを配合できる。このパーフルオロオクタン酸(PFOA)は、フッ素系モノマーの製造過程で生成するおそれのある不純物であり、環境への有害性が問題視されているため、製造メーカーなどで自主的な廃止を進めている物質である。
飲料の呑み零しを想定した前記耐水浸み性の試験では、純水をスポイトにて2ml滴下し、水の浸み込みが発生する時間(sec)を測定した。水浸み込み時間が180sec以上のものを「最良」、180sec未満で30sec以上のものを「良」、30sec未満のものを不合格と評価した。換言すると、30sec未満で浸み込むものでは時間が短いため、零した飲料を拭き取るのが困難である。30sec以上のものは零れた飲料を拭き取るまでの時間を確保できるため好ましく、180sec以上のものは零れた飲料を拭き取るものを準備する時間が充分に確保できるためより好ましい。
一方、黒ずみ洗浄試験は、次のように行った。まず、JIS Z 8901試験用粉体12種、JIS Z 8901試験用粉体8種を1:1の質量割合で混合した粉体と、オレイン酸を1:20の質量割合で混合して人工汚物を作成し、これをJIS L 3102規定のNO.9並綿帆布に含浸させて人工汚布とし、これを平面摩擦試験機に取り付けて一定の圧力を掛けながら上記防汚加工処理布(実施例1〜20及び比較例1〜5)上で摺動させて「汚れ」を付着させた。
次いで、JIS L 4105 3a)1号のタオルに純水を付着(質量0.05g/cm2 )させたものを拭き取り布とし、平面摩耗試験機に取り付け、上記防汚加工処理布の汚れ上を摺動させて上記「汚れ」を拭き取った。色差は汚す前の防汚加工処理布を基準とし、色彩色差計(コニカミノルタ製CM−512M3)で汚れ付着後と拭き取り後の色差ΔE*abを測定した。
前記拭き取り後の色差ΔE*abは、6以下が「最良」、6を越え11以下が「良」、11を越えると不合格と評価した。換言すると、ΔE*abが11よりも大きいと汚れが認められ気になる。ΔE*abが11以下であると汚れは認められるが殆ど気にならないため望ましい。ΔE*abが6以下であると汚れは僅かに認められるが気にならないためより望ましい。
前記耐水浸み性の試験と、黒ずみ洗浄試験の結果を図1に示している。図1には耐水浸み性の試験において水浸み込み発生が180sec以上、かつ、黒ずみ洗浄試験において黒ずみの拭取後の色差ΔE*abが6以下の最良であると「◎」、水浸み込み発生が180sec未満で30sec以上、かつ、色差ΔE*abが6を超え11以下の「良」であると「○」、水浸み込み発生が30sec未満、若しくは、ΔE*abが11よりも大きいと不合格として「×」を表示している。また、図2には耐水浸み性の試験と黒ずみ洗浄試験の結果が共に「◎」である範囲と「○」である範囲を、それぞれ示している。なお、180sec以上かつ6<ΔE*ab≦11であると「○」、30〜180secかつΔE*ab≦6であると「○」である。
上記実施例1〜20及び比較例1〜5における親水性ポリエステル樹脂化合物(ナイスポールPR−99)及び含フッ素防汚性樹脂化合物(NKガードSR−200)、乾布防汚加工剤として、シリコーン粒子(プライムトーンFF−1日華化学(株)製)、架橋剤(NKアシストV)の布地の付着具体量と、耐水浸み(sec)、黒ずみ付着時と拭き取り後の色差(ΔE*ab)および評価を図1に示している。上記図1に示すとおり、実施例1〜4及び実施例18〜20は評価「◎」、実施例5〜17は評価「○」、比較例1〜5は評価「×」であった。
図1において、実施例1〜20は、親水性ポリエステル樹脂化合物を0.04〜7.92g/cm2 、含フッ素防汚性樹脂化合物を0.02〜12.67g/cm2 を付着させたものである。耐浸み性と黒ずみ洗浄性は、いずれも「最良」もしくは「良」であり、汚性効果を発揮している。
図1において、実施例1〜4および実施例18〜20は、親水性ポリエステル樹脂化合物付着量が0.08〜0.75g/m2 、かつ、含フッ素防汚性樹脂化合物付着量が0.03〜0.30g/m2 の防汚加工処理布である。耐水浸み性と黒ずみ洗浄性がいずれも「最良」の評価であり、優れた防汚効果を発現している。
図1において、実施例4にシリコーン粒子を追加したのが実施例18であるが、耐水浸み性と黒ずみ洗浄性にほとんど差は認められない。
図1において、実施例4、実施例19、実施例20では防汚加工を施す対象繊維素材を変えた。本発明品は繊維素材がポリエステル(PET)、ナイロン(PA)、ポリプロピレン(PP)等の合成繊維の場合に優れた防汚効果を示す。なお、レーヨン(再生繊維)に対しては防汚効果が認められなかった。
図1において、実施例21は、実施例3のNKガードSR−200をパーフルオロオクタン酸(PFOA)フリーの含フッ素防汚性樹脂化合物Aに変更している。含フッ素防汚性樹脂化合物のパーフルオロアルキル基の炭素数を変えても、耐水浸み性、黒ずみ洗浄性のいずれも効果の差は見られなかった。
図1において、本発明の親水性ポリエステル樹脂化合物と含フッ素防汚性樹脂化合物を用いた内装用布地の防汚加工では、架橋剤の過剰な併用は防汚性を阻害する原因となるようである。
図1において、上記比較例1〜2及び5は、親水性ポリエステル樹脂化合物のみで防汚加工、比較例3〜4は、含フッ素防汚性樹脂化合物のみでの防汚加工である。親水性ポリエステル樹脂化合物のみでは耐水浸み性が得られず、含フッ素防汚性樹脂化合物のみでも黒ずみ洗浄性を得ることができない。本発明の防汚効果は、両成分の合成繊維への付着量により得られる効果である。
本発明では、通常では洗濯機等を用いて洗浄できない内装品(たとえば、車内装部材、家具など)の布地に対し、水性汚れや黒ずみ汚れ(油性汚れを含む)を水で濡らしたタオルなどで拭き取るのみで簡単に除去できる内装用布地を提供するものであり、自動車業界又は建設業界において利用性は高い。
耐水浸み性の試験と黒ずみ洗浄試験の結果を示した表図である。 耐水浸み性の試験と黒ずみ洗浄性の結果を示したグラフ図である。

Claims (3)

  1. 布地に、親水性ポリエステル樹脂化合物と、含フッ素防汚性樹脂化合物とを、付着させたことを特徴とする内装用布地。
  2. 前記親水性ポリエステル樹脂化合物の付着量が0.04〜7.92g/m2 、含フッ素防汚性樹脂化合物の付着量が0.02〜12.67g/m2 であることを特徴とする請求項1に記載の内装用布地。
  3. 前記布地が、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維のいずれかの繊維か、又はこれらの交織もしくは混紡であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内装用布地。
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