JP2011011457A - 多層フッ素樹脂基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(B)ポリイミド樹脂層/(A)フッ素樹脂層/(C)無機基板がこの順に積層されてなる多層フッ素樹脂基板で、該多層フッ素樹脂基板中(A)層(B)層積層体の線膨張係数、(C)無機基板の線膨張係数、(A)層の厚さ比、を所定範囲内とする多層フッ素樹脂基板。
【選択図】なし
Description
1.(B)ポリイミド樹脂層/(A)フッ素樹脂層/(C)無機基板がこの順に積層されてなる多層フッ素樹脂基板において、該多層フッ素樹脂基板中(A)層(B)層積層体の線膨張係数が0ppm/℃〜10ppm/℃であり、(C)無機基板の線膨張係数が0ppm/℃〜10ppm/℃であり、(A)層の厚さ比{(A)層/(A)(B)層積層体}が1.0%〜35%であり、かつ該(A)層がテトラフルオロエチレン・パ−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)のいずれかからなる熱可塑性フッ素樹脂の層である多層フッ素樹脂基板。
2.(A)層が、官能基含有熱可塑性フッ素樹脂の層である1.の多層フッ素樹脂基板。
3.(B)層が、ポリイミドベンゾオキサゾール成分を有するポリイミドの層であり、線膨張係数が−10ppm/℃〜10ppm/℃である1.または2.の多層フッ素樹脂基板。
4.(A)層の厚みが1.0μm〜25μmであり、かつ(B)層の厚みが1.0μm〜75μmである1.〜3.いずれかの多層フッ素樹脂基板。
5.(A)層の室温での貯蔵弾性率:E’(A)と(B)層の室温での貯蔵弾性率:E’(B)の比{E’(A)/E’(B)}が2.0%〜20%である1.〜4.いずれかの多層フッ素樹脂基板。
6.(C)無機基板が、セラミック基板、ガラス基板、および/または半導体基板である1.〜5.いずれかの多層フッ素樹脂基板。
即ち、本発明の多層フッ素樹脂基板は、高温高湿時において層間剥離が発生せず、かつ耐熱性、難燃性、寸法安定性、電気特性、信頼性に優れるため、極めて有意義である。
本発明で用いる(A)フッ素樹脂層は、フッ素樹脂溶融体を流延してフィルムとなす方法で得られるフッ素樹脂フィルム、また前記フッ素樹脂溶融体をポリイミド樹脂層(フィルム)に塗布して形成した層などであるが、取り扱いや生産性などからフッ素樹脂フィルムの形態が好ましい。
前記フッ素樹脂は、一般成形に用いられている従来公知の熱可塑性フッ素樹脂から適宜選択して使用することができる。
熱可塑性フッ素樹脂の例として、不飽和フッ素化炭化水素、不飽和フッ素化塩素化炭化水素、エーテル基含有不飽和炭化水素などの重合体又は共重合体、またはこれら不飽和フッ素化炭化水素類とエチレンの共重合体などを挙げることができる。具体的な例としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテ)、ビニリデンフルオライド及びビニルフルオライドから選ばれるモノマーの重合体又は共重合体、あるいはこれらモノマーとエチレンの共重合体などを挙げることができる。
熱可塑性フッ素樹脂のより具体的な例として、テトラフルオロエチレン・パ−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエテレン・エチレン共重合体(ECTFE)などを挙げることができる。
中でも、耐熱性、難燃性、および電気特性の点から、全フッ素の共重合体であるテトラフルオロエチレン・パ−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)が好ましい。
官能基を含有する熱可塑性フッ素樹脂としては、カルボン酸基又はその誘導基、水酸基、ニトリル基、シアナト基、カルバモイルオキシ基、ホスホノオキシ基、ハロホスホノオキシ基、スルホン酸基又はその誘導基及びスルホハライド基から選ばれる官能基を含有する熱可塑性フッ素樹脂(官能基含有フッ素樹脂)を挙げることができる。このように官能基含有フッ素樹脂は、通常前記一般成形に用いられる熱可塑性フッ素樹脂に、その性質を大きく損なわない範囲で前記官能基を含有させたものが使用される。このような官能基含有フッ素樹脂を得るには、例えば一般成形に用いられる前記例で示すような熱可塑性フッ素樹脂を合成しておき、後からこれら官能基を付加あるいは置換することにより導入するか、あるいは前記例示の熱可塑性フッ素樹脂の合成時にこれら官能基を持ったモノマーを共重合させることによって得ることができる。
前記官能基の具体例として、―COOH、−CH2COOH、−COOCH3、−CONH2、−OH、−CH2OH、−CN、−CH2O(CO)NH2、−CH2OCN、−CH2OP(O)(OH)2、−CH2OP(O)Cl2、−SO2Fなどの基を例示することができる。これらの官能基は、官能基を有するフッ素含有モノマーをフッ素樹脂製造時に共重合することによりフッ素樹脂中に導入するのが好ましい。
前記官能基含有フッ素樹脂の粘度あるいは分子量にはとくに制限がないが、これら官能基含有フッ素樹脂を配合する一般成形用の熱可塑性フッ素樹脂の粘度あるいは分子量を越えない範囲であって、好ましくは同じレベルのものがよい。
前記フッ素樹脂は、帯電防止性を付与する帯電防止剤の0.1〜2質量%を含有することも好ましい。帯電防止剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤等の界面活性剤が好ましい。
前記無機フィラーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもより。無機フィラーの含有量はフッ素樹脂に対して1〜100質量%が好ましい。また、これらの無機フィラーが多孔質であることが誘電率や誘電正接がさらに低くなるので好ましい。
前記フッ素樹脂層の貯蔵弾性率:E’(A)は特に限定されず、前記組成のフッ素樹脂を用いれば一般的に0.3GPa〜1.0GPaの値を取ることが知られている。
また、前記フッ素樹脂層の線膨張係数は特に限定されず、前記組成のフッ素樹脂を用いれば一般的に60ppm/℃〜160ppm/℃の値を取ることが知られている。
さらに、高周波対応の観点からフィルムの誘電率、および誘電正接は小さい方が好ましい。前記フッ素樹脂層の誘電率、および誘電正接は特に限定されず、前記組成のフッ素樹脂を用いれば一般的に低い値を取ることが知られている。具体的には、1MHzにおける誘電率は2.0〜2.2であり、1MHzおける誘電正接は3.0×10−4〜5.0×10−4である。
前記フッ素樹脂層の表面には、必要に応じてカップリング剤(アミノシラン、エポキシシランなど)による処理、サンドプラスト処理、ホ−リング処理、コロナ処理、プラズマ処理、イオンガン処理、エッチング処理などに供してもよい。
以下主にポリイミドフィルムについて詳述する。
前記ポリイミドは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との組み合わせ。
B.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.ジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
中でも特にA.のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基を有するポリイ
ミドフィルムが好ましい。
さらに、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以下であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
さらに、ポリイミドにシリカ粒子をナノ分散した、ポリイミド−シリカハイブリッド(荒川化学工業社製、商品名:コンポセラン)を用いてもよい。
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミドフィルムを形成するためには、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥することによりグリーンフィルム(自己支持性の前駆体フィルムを得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
前記ポリイミド樹脂層を形成するポリイミドフィルムの貯蔵弾性率:E’(B)は、特に限定されないが、6.0GPa以上が好ましく、より好ましくは7.0GPa以上、さらに好ましくは8.0GPa以上である。引張破断強度が6GPaより小さいと、ポリイミドフィルムによるフッ素樹脂層の補強効果が得られない恐れがある。
また、前記ポリイミド樹脂層を形成するポリイミドフィルムの線膨張係数は−10ppm/℃〜10ppm/℃であることが好ましく、より好ましくは−7.5ppm/℃〜7.5ppm/℃、さらに好ましくは−5ppm/℃〜5ppm/℃である。線膨張係数がこの範囲を超えると、半田付けなどの高温暴露において歪みや皺が発生する恐れがある。
前記ポリイミド樹脂層を形成するポリイミドフィルムには、必要に応じてカップリング剤(アミノシラン、エポキシシランなど)による処理、サンドプラスト処理、ホ−リング処理、コロナ処理、プラズマ処理、イオンガン処理、エッチング処理などに供してもよい。
(A)層(B)層積層体の線膨張係数を0ppm/℃〜10ppm/℃の範囲内にするためには、(A)層(B)層積層体における(A)層の厚さ比{全(A)層/(A)層(B)層積層体}が1.0%〜35%であり、かつ(A)層の室温での貯蔵弾性率:E’(A)と(B)層の室温での貯蔵弾性率:E’(B)の比{E’(A)/E’(B)}が2.0%〜20%であることが好ましく、より好ましくは厚さ比が5.0%〜35%、かつ貯蔵弾性率比が2.5%〜15%であり、さらに好ましくは厚さ比が10%〜35%、かつ貯蔵弾性率比が3.0%〜10%である。厚さ比、もしくは貯蔵弾性率比をこの範囲とすることで、目標とする線膨張係数の(A)層(B)層積層体を得ることができる。
(1)ポリイミドフィルム/フッ素樹脂フィルム/無機基板を配し、熱プレスにより積層させる方法
(2)共押し出しによる方法、ポリイミドフィルム上にフッ素樹脂を流延する方法、ポリイミドフィルムの前駆体フィルム上にフッ素樹脂を流延しイミド化する方法、などで得た(A)層(B)層積層体を、無機基板との熱プレスにより積層させる方法
(3)無機基板上にフッ素樹脂を設けた後に、ポリイミドフィルムを熱プレスにより積層させる方法
などが挙げられる。
ガラス基板としては、従来公知のガラス基板が使用でき、例えばソーダライムガラス、ソーダカリガラス、ソーダアルミケイ酸塩ガラス、アルミノボレ−トガラス、アルミノボロシリケートガラス、低膨張ガラス、石英ガラス等のガラスからなるものが挙げられる。またガラス基板にスルーホール、導体回路や抵抗やインダクタ、コンデンサを設けたものであってもよい。
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
測定対象のフィルムについて、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
測定対象のフィルムについて、下記条件で粘弾性測定(DMA)を行い、25℃における貯蔵弾性率:E’の値を求めた。
装置名 : ユービーエム社製 Rheogel−E4000
冶具 : 伸張冶具
試料長さ : 14mm
試料幅 : 5mm
周波数 : 10Hz
昇温開始温度 : 0℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : 窒素
測定対象のフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、90〜100℃、100〜110℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を400℃まで行い、100℃から300℃までの全測定値の平均値をCTE(平均値)として算出した。
装置名 : MACサイエンス社製 TMA4000S
サンプル長さ : 10mm
サンプル幅 : 2mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
測定対象のフィルムについて、下記条件で示差走査熱量測定(DSC)を行い、融点(Tm)をJIS K 7121に準拠して求めた。
装置名 : MACサイエンス社製 DSC3100S
パン : アルミパン(非気密型)
試料質量 : 4mg
昇温開始温度 : 30℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 20℃/min
雰囲気 : アルゴン
測定対象のフッ素樹脂フィルムについて、3mm(厚さ)×200mm×120mmの大きさに切断し試験フィルムを作成した。試験フィルムの両面に導電ペーストを塗布して配線し、1MHzにおける誘電率および誘電正接を測定した。
ポリイミドフィルム/フッ素樹脂フィルム/無機基板間の剥離強度は下記条件で180°剥離試験を行うことで求めた。
装置名 : 島津製作所社製 オートグラフAG−IS
サンプル長さ : 100mm
サンプル幅 : 10mm
測定温度 : 25℃
剥離速度 : 50mm/min
雰囲気 : 大気
ポリイミドフィルム/フッ素樹脂フィルム/無機基板から成る各多層フッ素樹脂基板につき、JEDEC LEVEL1条件下(85℃/85%RH−168hr+245℃/3sec×3回)で処理を行い、試験後の剥離強度を評価した。また、試験後の外観検査により、剥がれ,膨れ,変色の全く見られないものを○、剥がれ,膨れ,変色が僅か見られるものを△、剥がれ,膨れ,変色が見られるものを×とした。
ポリイミドフィルム/フッ素樹脂フィルム/無機基板から成る各多層フッ素樹脂基板につき、ステンレスメッシュ性の籠に入れ、大気中で250℃−24hr、加熱処理を行い試験後の剥離強度を評価した。また、試験後の外観検査により、剥がれ,膨れ,変色の全く見られないものを○、剥がれ,膨れ,変色が僅か見られるものを△、剥がれ,膨れ,変色が見られるものを×とした。
40μmピッチの櫛形パターン(図1)を形成したポリイミドフィルム/フッ素樹脂フィルム/無機基板から成る各テスト用多層フッ素樹脂基板に電圧(DC60V)を印荷し、85℃・85%RHの恒温恒湿槽(FX412Pタイプ、エタック社製)の中に入れ電圧負荷状態のまま5分毎に絶縁抵抗値を測定し、線間の抵抗値が100Mオーム以下に達する時間を測定し、1000時間以上を○、1000時間未満を×として評価した。
(ポリイミドフィルムAの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度は3.9dl/gであった。
このポリアミド酸溶液Aを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、ポリイミドフィルムA1〜A4を得た。
得られたポリイミドフィルムA1〜A4の物性値を表1に示す。
ポリイミドフィルムA1〜A4をA4サイズに切り取り、開口部を有するステンレス製の枠に挟んで固定した。この枠をスパッタリング装置内の基板ホルダーに固定した。基板ホルダーと、ポリイミドフィルムは密着するように固定する。このため、基板ホルダー内に冷媒を流すことによってポリイミドフィルムの温度を設定できる。次いで、ポリイミドフィルム表面のプラズマ処理を行った。プラズマ処理条件はアルゴンガス中で、周波数13.56MHz、出力200W、ガス圧1×10−3Torrの条件であり、処理時の温度は2℃、処理時間は2分間であった。次いで、周波数13.56MHz、出力450W、ガス圧3×10−3Torrの条件、ニッケル−クロム(クロム10質量%)合金のターゲットを用い、アルゴン雰囲気下にてDCマグネトロンスパッタリング法により、1nm/秒のレートで厚さ7nmのニッケル−クロム合金被膜(下地層)を形成し、その後、基板の温度を2℃に設定するよう、基板のスパッタ面の裏面を2℃に温度コントロールした冷媒を中に流した。次いで、基板ホルダーのSUSプレートと接する状態でスパッタリングを行い、厚さ0.25μmの銅薄膜を形成させ、片面下地金属薄膜形成ポリイミドフィルムA1〜A4を得た。ここで、銅およびNiCr層の厚さは蛍光X線法によって確認した。得られた片面下地金属薄膜形成ポリイミドフィルムA1〜A4をプラスチック製の枠に固定し、硫酸銅めっき浴をもちいて、厚さ9μmの銅層を形成した。電解めっき条件は電解めっき液(硫酸銅80g/l、硫酸210g/l、HCl、光沢剤少量)に浸漬、電気を1.5Adm2流した。引き続き120℃で10分間熱処理乾燥し、片面に銅層を形成したポリイミドフィルムである銅貼り積層板(CCL)A1〜A4を得た。
銅貼り積層板(CCL)A1〜A4を使用し、フォトレジスト(FR−200、シプレー社製)を塗布・乾燥後にガラスフォトマスクで密着露光し、さらに1.2質量%KOH水溶液にて現像した。次に、HClと過酸化水素を含む塩化第二銅のエッチングラインで、40℃、2kgf/cm2のスプレー圧でエッチングし、評価試験に必要な図1に示すような「櫛形パターン」である、導体幅と導体間隔は40μm/40μm、パターン本数は片側20本のテストパターンを形成後、洗浄、125℃、1時間のアニール処理を行い、パターン付銅貼り積層板A1〜A4を得た。
(ポリイミドフィルムBの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ジアミノジフェニルエーテル200質量部、N−メチル−2−ピロリドン4170質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。この還元粘度は3.6dl/gであった。
このポリアミド酸溶液Bを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目400℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、ポリイミドフィルムBを得た。
得られたポリイミドフィルムBの物性値を表1に示す。
次いで、製造例1と同様の方法でスパッタリング、めっき、およびパターン形成を行い、銅貼り積層板(CCL)B、パターン付銅貼り積層板Bを得た。
(ポリイミドフィルムCの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、フェニレンジアミン108質量部、N−メチル−2−ピロリドン4010質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)と、ジフェニルテトラカルボン酸二無水物292.5質量部を加え、25℃の反応温度で12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度は4.3dl/gであった。
このポリアミド酸溶液Cを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目460℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、厚さ25μmのポリイミドフィルムCを得た。
得られたポリイミドフィルムCの物性値を表1に示す。
次いで、製造例1と同様の方法でスパッタリング、めっき、およびパターン形成を行い、銅貼り積層板(CCL)C、パターン付銅貼り積層板Cを得た。
(フッ素樹脂フィルムの作成)
市販のフッ素樹脂を用い、従来公知の手法にてフッ素樹脂フィルムを作成した。
得られたフッ素樹脂フィルムの種類とその物性を表2、3に示す。
150mm×150mmのサイズに切り出したポリイミドフィルムA1の片面に官能基含有フッ素樹脂フィルムD1を配し、フッ素樹脂フィルムの融点以上である330℃、5MPaにて30分間加熱加圧成形を行い、(A)層(B)層積層体を得た。得られた(A)層(B)層積層体の厚さ比、貯蔵弾性率比、および線膨張係数の評価結果を表4に示す。
一方、150mm×150mmのサイズに切り出したポリイミドフィルムA1の片面に官能基含有フッ素樹脂フィルムD1、ガラス基板(コーニング社製、商品名:1737ガラス、厚さ1.0mm、線膨張係数3.0ppm/℃)をこの順に配し、フッ素樹脂フィルムの融点以上である330℃、5MPaにて30分間加熱加圧成形を行い、多層フッ素樹脂基板を得た。得られた多層フッ素樹脂基板の耐湿熱性、耐熱性の評価結果を表4に示す。
さらに、150mm×150mmのサイズに切り出したパターン付銅貼り積層板A1のポリイミドフィルムA1面に官能基含有フッ素樹脂フィルムD1、ガラス基板(コーニング社製、商品名:1737ガラス、厚さ1.0mm、線膨張係数3.0ppm/℃)をこの順に配し、フッ素樹脂フィルムの融点以上である330℃、5MPaにて30分間加熱加圧成形を行い、テスト用多層フッ素樹脂基板を得た。得られたテスト用多層フッ素樹脂基板の耐マイグレーション性の評価結果を表4に示す。
官能基含有フッ素樹脂フィルムD1の代わりに官能基含有フッ素樹脂フィルムD2〜D4を使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。評価結果を表4に示す。
ポリイミドフィルムA1の代わりにポリイミドフィルムA2を、パターン付銅貼り積層板A1の代わりにパターン付銅貼り積層板A2を使用する以外は、実施例1〜4と同様の方法で積層体を作成し、評価した。評価結果を表5に示す。
ポリイミドフィルムA1の代わりにポリイミドフィルムA3を、パターン付銅貼り積層板A1の代わりにパターン付銅貼り積層板A3を使用する以外は、実施例2、3と同様の方法で積層体を作成し、評価した。評価結果を表6に示す。
ガラス基板の代わりにセラミック基板(日本カーバイド工業社製、商品名:アルミナセラミック、厚さ1.0mm、線膨張係数6.0ppm/℃)を使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。評価結果を表6に示す。
ガラス基板の代わりにシリコンウェハー(直径約100mm、厚さ0.25mm、線膨張係数2.0ppm/℃)を使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。評価結果を表6に示す。なお、フッ素樹脂フィルムは、シリコンウェハーのミラー面と接するよう積層した。
A4サイズに切り出したポリイミドフィルムA1、およびパターン付銅貼り積層板A1を日放電子製プラズマ処理機にセットし、真空度:3×10Pa、ガス流量:1.5SLM、放電電力:12KW、ガス種:酸素 の条件で減圧プラズマ処理を行い、プラズマ処理ポリイミドフィルムA1、およびプラズマ処理パターン付銅貼り積層板A1を得た。
ポリイミドフィルムA1の代わりにプラズマ処理ポリイミドフィルムA1を、パターン付銅貼り積層板A1の代わりにプラズマ処理パターン付銅貼り積層板A1を、官能基含有フッ素樹脂フィルムD1の代わりに官能基未含有フッ素樹脂フィルムE(Fluon PFA、旭硝子社製)、F(ネオフロン PFA、ダイキン工業社製)、G(ネオフロン FEP、ダイキン工業社製)、H(EPE、ダイキン工業社製)を使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。評価結果を表7に示す。
ポリイミドフィルムA1の代わりにポリイミドフィルムB、Cを、パターン付銅貼り積層板A1の代わりにパターン付き銅貼り積層板B、Cを使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。評価結果を表8に示す。
ポリイミドフィルムの線膨張係数が大きいと、得られる(A)層(B)層積層体の線膨張係数も大きくなり、ガラス基板の線膨張係数との乖離が大きくなるため、信頼性試験後の接着性および品位が低下した。
官能基含有フッ素樹脂フィルムD1の代わりに官能基含有フッ素樹脂フィルムI(Fluon LM−ETFE AH2000、旭硝子社製)、J(ネオフロン EFEP RP5000、ダイキン工業社製)を使用する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を作成し、評価した。評価結果を表8に示す。
ETFEは、PFA、FEP、EPE等の全フッ素系の樹脂と比較して、耐熱性、耐湿熱性、および電気特性に劣るため、信頼性試験後の接着性および品位が低下した。
官能基未含有フッ素樹脂フィルムEの代わりに官能基未含有フッ素樹脂フィルムK(Fluon ETFE、旭硝子社製)、L(ネオフロン ETFE、ダイキン工業社製)を使用する以外は、実施例13と同様の方法で積層体を作成し、評価した。評価結果を表9に示す。
ETFEは、PFA、FEP、EPE等の全フッ素系の樹脂と比較して、耐熱性、耐湿熱性、および電気特性に劣るため、信頼性試験後の接着性および品位が低下した。
ポリイミドフィルムA1の代わりにポリイミドフィルムA4を、パターン付銅貼り積層板A1の代わりにパターン付き銅貼り積層板A4を使用する以外は、実施例1〜3と同様の方法で積層体を作成し、評価した。評価結果を表9に示す。
フッ素樹脂の厚さ比が大きすぎると、得られる(A)層(B)層積層体の線膨張係数も大きくなり、ガラス基板の線膨張係数との乖離が大きくなるため、信頼性試験後の接着性および品位が低下した。
即ち、本発明の多層フッ素樹脂基板は、高温高湿時において層間剥離が発生せず、かつ耐熱性、難燃性、寸法安定性、電気特性、信頼性に優れるため、産業上極めて有意義なものである。
Claims (6)
- (B)ポリイミド樹脂層/(A)フッ素樹脂層/(C)無機基板がこの順に積層されてなる多層フッ素樹脂基板において、該多層フッ素樹脂基板中(A)層(B)層積層体の線膨張係数が0ppm/℃〜10ppm/℃であり、(C)無機基板の線膨張係数が0ppm/℃〜10ppm/℃であり、(A)層の厚さ比{(A)層/(A)(B)層積層体}が1.0%〜35%であり、かつ該(A)層がテトラフルオロエチレン・パ−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)のいずれかからなる熱可塑性フッ素樹脂の層である多層フッ素樹脂基板。
- (A)層が、官能基含有熱可塑性フッ素樹脂の層である請求項1に記載の多層フッ素樹脂基板。
- (B)層が、ポリイミドベンゾオキサゾール成分を有するポリイミドの層であり、線膨張係数が−10ppm/℃〜10ppm/℃である請求項1または2に記載の多層フッ素樹脂基板。
- (A)層の厚みが1.0μm〜25μmであり、かつ(B)層の厚みが1.0μm〜75μmである請求項1〜3いずれかに記載の多層フッ素樹脂基板。
- (A)層の室温での貯蔵弾性率:E’(A)と(B)層の室温での貯蔵弾性率:E’(B)の比{E’(A)/E’(B)}が2.0%〜20%である請求項1〜4いずれかに記載の多層フッ素樹脂基板。
- (C)無機基板が、セラミック基板、ガラス基板、および/または半導体基板である請求項1〜5いずれかに記載の多層フッ素樹脂基板。
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