JP7151140B2 - フッ素樹脂シート、積層体及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
・エポキシ樹脂等の有機樹脂中に所定量のポーラスシリカが配合された樹脂組成物(特許文献1)。
・カルボニル基含有基等の官能基を有する含フッ素重合体を含む樹脂パウダーを、ポリイミド等の樹脂中に分散させた複合体を成形した成形体(特許文献2)。
・テトラフルオロエチレンに基づく単位と、カルボニル基含有基等の官能基を有する単位とを有する含フッ素重合体を含む樹脂パウダーと、無機質フィラーと、液状媒体とを含む液状組成物から形成されたフィルム(特許文献3)。
特許文献3では、無機質フィラーとして平均粒径0.7μmのシリカフィラーが用いられた。
特許文献2の成形体は、低熱膨張率、耐熱性が不充分である。熱膨張率が高いと、熱膨張による厚さの変化を一定以内に抑えるため、成形体の厚さを薄くする必要がある。そのため、成形体を厚くして電気特性の向上を図ることが難しい。
特許文献3のフィルムは、液状組成物がシリカフィラーを含まない場合に比べて、低熱膨張率で耐熱性に優れるものの、電気特性に劣る。
特許文献4では、非水系分散液をシート化することは検討されていない。
<1>フッ素樹脂シートであって、
含フッ素重合体と、比表面積が6.5m2/g以上であるシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の含有量が、前記フッ素樹脂シートの質量に対して0.005~50質量%であり、
厚さが1~500μmである、フッ素樹脂シート。
<2>前記含フッ素重合体が下記重合体X1である前記<1>のフッ素樹脂シート。
重合体X1:テトラフルオロエチレンに基づく単位を有し、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する含フッ素重合体。
<3>前記含フッ素重合体の融点が260℃以上である前記<1>又は<2>のフッ素樹脂シート。
<4>前記シリカ粒子がメソポーラスシリカ粒子、マイクロポーラスシリカ粒子、中空シリカ粒子、シリカエアロゲル粒子、及び一次粒子が鎖状に連なった構造のシリカ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記<1>~<3>のいずれかのフッ素樹脂シート。
<5>前記シリカ粒子が中空構造又はメソポーラス構造を有する前記<1>~<4>のいずれかのフッ素樹脂シート。
<6>-40~125℃での線膨張係数が100ppm/℃以下である、前記<1>~<5>のいずれかのフッ素樹脂シート。
<7>下記の組成物を、厚さが1~500μmのシート状に成形する、フッ素樹脂シートの製造方法。
組成物:含フッ素重合体と、比表面積が6.5m2/g以上であるシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の含有量が、前記組成物の固形分の質量に対して0.005~50質量%である、組成物。
<8>前記<1>~<6>のいずれかのフッ素樹脂シートからなる層Aと、
前記フッ素樹脂シート以外の基材からなる層Bと、を有する積層体。
<9>基材の表面に、下記の液状組成物を塗布し、乾燥した後、前記液状組成物中の含フッ素重合体の融点以上に加熱し、厚さが1~500μmの層Aを形成する、積層体の製造方法。
液状組成物:融点が260℃以上である含フッ素重合体を含む樹脂パウダーと、比表面積が6.5m2/g以上であるシリカ粒子と、前記樹脂パウダー及び前記シリカ粒子を分散する液状媒体とを含み、
前記シリカ粒子の含有量が、前記液状組成物の固形分の質量に対して0.005~50質量%である、液状組成物。
<10>前記樹脂パウダーは、体積基準累積50%径が0.1~6μm、体積基準累積90%径が8μm以下である前記<9>の積層体の製造方法。
<11>前記含フッ素重合体が下記重合体X1である前記<9>又は<10>の積層体の製造方法。
重合体X1:テトラフルオロエチレンに基づく単位を有し、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する含フッ素重合体。
<12>前記含フッ素重合体の融点が260℃以上である前記<9>~<11>のいずれかの積層体の製造方法。
<13>前記シリカ粒子がメソポーラスシリカ粒子、マイクロポーラスシリカ粒子、中空シリカ粒子、シリカエアロゲル粒子、及び一次粒子が鎖状に連なった構造のシリカ粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記<9>~<12>のいずれかの積層体の製造方法。
<14>前記シリカ粒子が中空構造又はメソポーラス構造を有する前記<9>~<13>のいずれかの積層体の製造方法。
<15>前記基材が、樹脂フィルム、ガラス基材、セラミックス基材、又は金属基材であり、
前記基材の表面の算術平均粗さRaが5μm以下である前記<9>~<14>のいずれかの積層体の製造方法。
「D50」は、レーザー回折・散乱法によって求められる体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「D90」は、レーザー回折・散乱法によって求められる体積基準累積90%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が90%となる点の粒子径である。
「比表面積」は、BET(Brunauer,Emmet,Teller)法によって吸着等温線から求めた比表面積である。吸着等温線の測定では、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。
「細孔容積」は、BJH法によって吸着等温線から求めた細孔容積である。吸着等温線の測定では、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。
「平均細孔径」は、BJH法によって吸着等温線から求めた平均細孔径である。吸着等温線の測定では、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。
「BJH法」は、吸着等温線から細孔径分布を求める方法の一つである、Barrett,Joyner及びHalendaによるメソ細孔径分布の決定法である。
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことを意味する。
「溶融流動性を示す」とは、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、MFRが0.01~1000g/10分となる温度が存在することを意味する。
「MFR」は、JIS K 7210-1:2014(対応国際規格ISO 1133-1:2011)に規定されるメルトマスフローレイトである。
「融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「比誘電率」及び「誘電正接」はそれぞれ、ASTM D 150準拠の変成器ブリッジ法にて、温度を23℃±2℃の範囲内、相対湿度を50%±5%RHの範囲内に保持した試験環境において、絶縁破壊試験装置(YSY-243-100RHO(ヤマヨ試験機社製))にて、1MHzで求めた値である。また、高周波数帯での比誘電率及び誘電正接については、SPDR(スピリットポスト誘電体共振器)法により、23℃±2℃、50±5%RHの範囲内の環境下にて、周波数20GHzで測定される値である。
「線膨張係数」は、熱機械分析装置を用いて、窒素雰囲気中、荷重:19.6mNの条件下、-65℃から150℃まで2℃/分の速度でサンプルを昇温し、サンプルの厚さの線膨張に伴う変位量を測定し、-40~125℃のサンプルの変位量から求められる値である。
「算術平均粗さRa」は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した値である。具体的には、Oxford Instruments社製のAFMを用いて、1μm2範囲の表面のRaを測定する。測定条件は下記である。
プローブ:AC160TS-C3(先端R <7nm、バネ定数 26N/m)、測定モード:AC-Air、Scan Rate:1Hz。
「カルボニル基含有基」とは、構造中にカルボニル基(-C(=O)-)を有する基を意味する。
「酸無水物残基」とは、-C(=O)-O-C(=O)-で表される基を意味する。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素-炭素原子間に1個存在する酸素原子を意味する。
「単量体に基づく単位」は、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。本明細書において、単量体に基づく単位を、単に、単量体単位とも記す。
「単量体」とは、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を意味する。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
本発明のフッ素樹脂シート(以下、「本シート」とも記す。)は、含フッ素重合体(以下、「重合体X」とも記す。)と、比表面積が6.5m2/g以上であるシリカ粒子とを含む。
本シートは、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、重合体X以外の樹脂、シリカ粒子以外のフィラー、ゴム、その他の添加剤等を含んでもよい。
本シートの厚さは、1~500μmであり、10~300μmが好ましく、20~200μmが特に好ましい。厚さが前記範囲の下限値以上であれば、電気特性が優れる。厚さが前記範囲の上限値以下であれば、熱膨張時の寸法変化が少なく、本シートや、本シートが他材料と積層された積層体(銅張積層板等)の反りを抑制できる。
重合体Xは、成形性の点から、溶融成形可能であることが好ましい。溶融成形可能な重合体Xの融点は、260~380℃が好ましく、260~320℃がより好ましく、280~320℃がさらに好ましく、295~315℃が特に好ましく、295~310℃が最も好ましい。重合体Xの融点が前記範囲の下限値以上であれば、耐熱性に優れる。重合体Xの融点が前記範囲の上限値以下であれば、溶融成形性に優れる。
重合体Xの融点は、重合体Xを構成する単位の種類や割合、重合体Xの分子量等によって調整できる。例えば、テトラフルオロエチレン単位の割合が多くなるほど、融点が上がる傾向がある。
MFRは、重合体Xの分子量の目安であり、MFRが大きいと分子量が小さく、MFRが小さいと分子量が大きいことを示す。
重合体XのMFRは、重合体Xの製造条件によって調整できる。例えば、単量体の重合時に重合時間を短縮するとMFRが大きくなる傾向がある。
重合体Xの比誘電率は、テトラフルオロエチレン単位の割合によって調整できる。
溶融成形可能な含フッ素重合体の代わりに、溶融成形できない含フッ素重合体、例えば溶融流動性を示さない未変性のポリテトラフルオロエチレンを用いた場合、後述する樹脂パウダーを製造する際に、機械的粉砕処理によってポリテトラフルオロエチレンがフィブリル化するため、樹脂パウダーを得ることが困難である。
重合体Xとして、接着性官能基を有する重合体Xと、接着性官能基を有しない重合体Xとを併用してもよい。
重合体X1:TFE単位を有し、接着性官能基を有する含フッ素重合体。
接着性官能基は、重合体X1中の単位に含まれてもよく、その場合、接着性官能基を有する単位はフッ素原子を有する単位であってもよく、フッ素原子を有しない単位であってもよい。以下、接着性官能基を有する単位を「接着性官能基含有単位」とも記す。接着性官能基含有単位としては、フッ素原子を有しない単位が好ましい。
接着性官能基は、重合体X1の主鎖の末端基に含まれてもよく、その場合、重合体X1は接着性官能基含有単位を有してもよく、有していなくてもよい。接着性官能基を有する末端基は、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基であり、接着性官能基を有する、又は重合体形成の反応の際に接着性官能基を生じる、重合開始剤及び連鎖移動剤のいずれか一方又は両方を用いることによって接着性官能基を有する末端基が形成される。また、重合体形成後にその末端基に接着性官能基を導入することもできる。末端基に含まれる接着性官能基としては、アルコキシカルボニル基、カーボネート基、カルボキシ基、フルオロホルミル基、酸無水物残基、ヒドロキシ基が好ましい。
カルボニル基含有基としては、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基、ポリフルオロアルコキシカルボニル基、脂肪酸残基等が挙げられる。カルボニル基含有基としては、重合体X1の機械的粉砕性、樹脂層と基板又は金属箔との接着性に優れる点から、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基及び酸無水物残基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、カルボキシ基及び酸無水物残基のいずれか一方又は両方がより好ましい。
ハロホルミル基は、-C(=O)-X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。
接着性官能基含有単量体が有する接着性官能基は、1個であっても2個以上であってもよい。2個以上の接着性官能基を有する場合、2個以上の接着性官能基は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
接着性官能基含有単量体としては、接着性官能基を1つ有し、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する化合物が好ましい。
カルボキシ基含有単量体としては、不飽和ジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、マレイン酸等)、不飽和モノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸等)等が挙げられる。
ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
(メタ)アクリレートとしては、例えば、(ポリフルオロアルキル)アクリレート、(ポリフルオロアルキル)メタクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有単量体としては、不飽和グリシジルエーテル(アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等)、不飽和グリシジルエステル(アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等)等が挙げられる。
イソシアネート基含有単量体としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
接着性官能基含有単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Rf2におけるペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rf2の炭素数は、1~3が好ましい。
CF2=CFORf2としては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3(以下、「PPVE」とも記す。)、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8F等が挙げられ、PPVEが好ましい。
PAVEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
CH2=CX4(CF2)tX5としては、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H等が挙げられ、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CH(CF2)2Fが好ましい。
他の単量体として、他の含フッ素単量体と他の非含フッ素単量体とを併用してもよい。
重合体X11:接着性官能基含有単位と、TFE単位と、PAVE単位とを有する共重合体。
重合体X12:接着性官能基含有単位と、TFE単位と、HFP単位とを有する共重合体。
TFE単位とPPVE単位とNAH単位とを有する共重合体、
TFE単位とPPVE単位とIAH単位とを有する共重合体、
TFE単位とPPVE単位とCAH単位とを有する共重合体。
重合体X11における接着性官能基含有単位、TFE単位及びPAVE単位の合計は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。接着性官能基含有単位、TFE単位及びPAVE単位の合計の上限値は、100モル%である。
TFE単位とHFP単位とNAH単位とを有する共重合体、
TFE単位とHFP単位とIAH単位とを有する共重合体、
TFE単位とHFP単位とCAH単位とを有する共重合体。
重合体X12は、重合体X11と同様に、接着性官能基を有する末端基を有してもよい。
重合体X12における接着性官能基含有単位、TFE単位及びHFP単位の合計は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。接着性官能基含有単位、TFE単位及びHFP単位の合計の上限値は、100モル%である。
シリカ粒子は、重合体Xへの分散性の向上の点から、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の表面処理剤による表面処理が施されてもよい。
中空構造又はメソポーラス構造を有するシリカ粒子としては、シェル部分がメソポーラス構造である中空シリカ粒子、ち密なシェルに覆われている中空シリカ粒子、多孔質シリカ粒子等が挙げられる。
フッ素樹脂以外の樹脂としては、国際公開第2018/016644号に記載の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び感光性樹脂等が挙げられる。
重合体Xは、電気特性、耐熱性に優れる。シリカ粒子は、線膨張係数の低減効果、耐熱性の向上効果、機械的強度の向上効果を奏するほか、比表面積が6.5m2/g以上であるため、重合体Xの電気特性を損ないにくく、さらには、シリカ粒子による上記の効果が少量でも発現しやすい。そのため、シリカ粒子を上記の含有量で含有させたときに、重合体Xによる優れた電気特性を充分に維持しつつ、100ppm/℃以下の低熱膨張率、優れた耐熱性等を達成できる。比表面積が6.5m2/g以上であることで前記の効果が得られる理由としては、重合体X中での分散性が向上していることが考えられる。
また、本シートは熱膨張率が100ppm/℃以下、厚さが500μm以下であるため、本シートを用いることにより、反りが抑制された平坦性に優れた積層体が得られる。
また、シリカ粒子の比表面積が6.5m2/g以上であるため、シートからのシリカ粒子の脱離、それに伴う外観不良の発生を抑制できる。かかる効果は、表面の凹凸が多い構造の比表面積の大きなシリカ粒子を用いる場合に特に優れる。
さらに、シリカ粒子の比表面積が6.5m2/g以上であれば、後述する液状組成物を用いて本シートを製造する場合に、液状組成物の安定性が優れる。すなわち、シリカ粒子の比表面積が6.5m2/g以上であれば、液状組成物中に分散している樹脂パウダーやシリカ粒子が沈降しにくく、また沈降しても容易に再分散できる。液状組成物の安定性が優れていれば、シリカ粒子が適度に分散されたシートが得られる。その結果、電気特性に優れ、熱膨張率の低いシートが得られる。
本発明のフッ素樹脂シートの製造方法は、下記の組成物を、厚さが1~500μmのシート状に成形する方法である。
組成物:重合体Xと、比表面積が6.5m2/g以上であるシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の含有量が、前記組成物の固形分の質量に対して0.005~50質量%である、組成物。
前記組成物の固形分は、液状媒体以外の成分である。
前記組成物の固形分の質量に対する、重合体X、シリカ粒子、重合体X以外の樹脂、シリカ粒子以外のフィラー、他の添加剤それぞれの含有量(質量%)は、本シートの質量に対するそれぞれの含有量と同じである。
例えば、重合体Xが溶融成形可能である場合、前記組成物を公知の溶融成形法(押出成形法、インフレーション成形法等)によりシート状に成形する方法を用い得る。
前記組成物が、重合体Xを含む樹脂パウダー及びシリカ粒子が液状媒体に分散した液状組成物である場合、後述する積層体の製造方法における層Aの形成方法と同様の方法を用い得る。例えば前記積層体の製造方法により積層体を製造し、得られた積層体から層Aを剥離することによりフッ素樹脂シートが得られる。前記液状組成物を用いた溶液キャスト法によってフッ素樹脂シートを製造してもよい。
表面処理は、フッ素樹脂シートの表層の樹脂を除去するエッチング処理を含むことが好ましい。エッチング処理によって、フッ素樹脂シートの表層の樹脂を除去し、前記樹脂で覆われていたシリカ粒子をフッ素樹脂シートの表面に露出させることができる。
フッ素樹脂シートの表面にシリカ粒子が露出していれば、前記表面に他の基材を積層したときに、シリカ粒子によるアンカー効果が得られ、フッ素樹脂シートと他の基材との接着性がより優れる。
なお、シリカ粒子表面の凹凸が多い構造の比表面積の大きなシリカ粒子を使用した場合には、シリカ粒子と重合体Xとの接触面積が大きく、上記のようにシリカ粒子を露出させても、フッ素樹脂シートからシリカ粒子が離脱しにくい。
エッチング処理方法としては、プラズマ処理が好ましい。
本発明の積層体は、前記した本シートからなる層Aと、本シート以外の基材からなる層Bと、を有する。
耐熱性樹脂としては、ポリイミド(芳香族ポリイミド等)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン(ポリエーテルスルホン等)、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル等が挙げられる。
耐熱性樹脂フィルムの厚さは、プリント配線板の薄肉化及び機械的強度のバランスの点から、0.5~100μmが好ましく、1~50μmがより好ましく、3~25μmがさらに好ましい。
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)の硬化物、耐熱性樹脂等が挙げられる。
強化繊維としては、無機繊維、有機繊維が挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維等が挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維等が挙げられる。
強化繊維の形態としては、織布、不織布等が挙げられる。
ガラス基材の厚さは、特に限定されず、用途に応じて、充分な機能が発揮できる厚さを選定すればよい。
セラミックス基材の厚さは、特に限定されず、用途に応じて、充分な機能が発揮できる厚さを選定すればよい。
金属基材としては、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が特に好ましい。
金属基材の厚さは、特に限定されず、用途に応じて、充分な機能が発揮できる厚さを選定すればよい。
本発明の積層体が有する層Bは1つでもよく複数でもよい。複数の層Bを有する場合、各層Bは同じものでもよく異なるものでもよい。
本発明の積層体がプリント配線板用途に用いられる場合、本発明の積層体は、層Bとして、金属基材からなる層(以下、「金属基材層」とも記す。)を有することが好ましい。金属基材層を有する場合、層Bとして、金属基材以外の基材からなる層、例えば樹脂基材からなる層(以下、「樹脂基材層」とも記す。)をさらに有してもよい。
積層体10は、金属基材層12と、金属基材層12の一方の表面に接する層A14とを有する。
積層体11は、金属基材層12と、金属基材層12の一方の表面に接する層A14と、層A14に接する樹脂基材層16とを有する。
・積層体における金属基材層をエッチング等によって所定のパターンの導体回路に加工する方法。
・積層体を用い、セミアディティブ法(SAP法)又はモディファイドセミアディティブ法(MSAP法)による電解めっきによって導体回路を形成する方法。
プリント配線板の製造においては、導体回路上にソルダーレジストを積層してもよい。ソルダーレジストは、例えば、後述する液状組成物によって形成できる。
プリント配線板の製造においては、導体回路上にカバーレイシートを積層してもよい。
本発明の積層体の製造方法は、下記の方法I又は方法IIによって、基材の表面に層Aを設ける方法である。
方法I:基材の表面に、下記の液状組成物を塗布し、乾燥した後、前記液状組成物中の重合体Xの融点以上に加熱し、厚さが0.2~500μmの層Aを形成する方法。
液状組成物:重合体Xを含む樹脂パウダーと、比表面積が6.5m2/g以上であるシリカ粒子と、前記樹脂パウダー及び前記シリカ粒子を分散する液状媒体とを含み、
前記シリカ粒子の含有量が、前記液状組成物の固形分の質量に対して0.15~50質量%である、液状組成物。
方法II:基材の表面に、本シートを、重合体Xの融点以上に加熱しながら積層する方法。
本発明においては、層Aを設けた後、層Aの表面を表面処理してもよい。
本発明においては、層Aを設けた後、層Aの表面に他の基材を積層してもよい。
液状組成物は、重合体Xを含む樹脂パウダーと、比表面積が6.5m2/g以上であるシリカ粒子と、液状媒体とを含む。樹脂パウダー及びシリカ粒子はそれぞれ液状媒体に分散している。
液状組成物は、液状媒体に溶解する樹脂(以下、「溶解性樹脂」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
液状組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、樹脂パウダー、シリカ粒子、液状媒体及び溶解性樹脂以外の成分(以下、「他の成分」とも記す。)を含んでもよい。
液状媒体は、液状組成物に含まれる液状媒体の以外の成分よりも低沸点であり、加熱等によって揮発し除去できるものが好ましい。
樹脂パウダーは、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて重合体Xを含まない樹脂パウダーQを含んでもよい。
・溶液重合法、懸濁重合法又は乳化重合法によって重合体Xを得て、有機溶媒又は水性媒体を除去して粒状の重合体Xを回収し、必要に応じて粒状の重合体Xを粉砕し、必要に応じて粉砕物を分級する方法。
・重合体X、必要に応じて他の成分を溶融混練し、混練物を粉砕し、必要に応じて粉砕物を分級する方法。
非硬化性樹脂としては、熱溶融性樹脂、非溶融性樹脂が挙げられる。熱溶融性樹脂としては、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。非溶融性樹脂としては、硬化性樹脂の硬化物等が挙げられる。
硬化性樹脂としては、反応性基を有する重合体、反応性基を有するオリゴマー、低分子化合物、反応性基を有する低分子化合物等が挙げられる。反応性基としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
非硬化性樹脂としては、熱溶融性樹脂、非溶融性樹脂が挙げられる。熱溶融性樹脂としては、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、プリント配線板に有用な点から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビスマレイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化性ポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸が好ましく、エポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化性ポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸がより好ましい。熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
基材の表面に液状組成物を塗布してウェット膜を形成する。
塗布方法としては、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法等が挙げられる。
乾燥においては、必ずしも液状媒体を完全に揮発させる必要はなく、前駆体層が膜形状を安定して維持できる程度まで揮発させればよい。乾燥においては、液状組成物に含まれていた液状媒体のうち、50質量%以上を揮発させることが好ましい。
乾燥は、1段階で実施してもよく、異なる温度にて2段階以上で実施してもよい。
ウェット膜の加熱温度は、50~150℃が好ましく、80~100℃がより好ましい。加熱温度が前記範囲の下限値以上であれば、生産性がよい。加熱温度が前記範囲の上限値以下であれば、液状媒体が揮発し、樹脂が金属箔の表面に固定される。ウェット膜の加熱温度は、雰囲気の温度である。
ウェット膜の加熱時間は、0.1~30分間が好ましく、0.5~20分間がより好ましい。
前駆体層を加熱し、重合体Xを溶融させることによって、樹脂パウダーの個々の粒子を溶融一体化し、均質な層を形成できる。液状組成物が熱溶融性の溶解性樹脂を含む場合は、重合体Xと溶解性樹脂との溶融ブレンド物からなる層を形成できる。液状組成物が熱硬化性の溶解性樹脂を含む場合は、重合体Xと熱硬化性樹脂の硬化物とからなる層を形成できる。
遠赤外線の有効波長帯は、重合体Xの均質な溶融をもたらし、溶融不充分な樹脂パウダーの残存が少ない樹脂層を形成できる点から、2~20μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。遠赤外線加熱と熱風加熱とを組み合わせてもよい。
不活性ガス雰囲気は、酸素ガス濃度が低く抑えられた不活性ガスからなる。不活性ガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等が挙げられ、窒素ガスが好ましい。
還元雰囲気は、酸素ガス濃度が低く抑えられ、還元性ガスを少し含む不活性ガスからなる。還元性ガスとしては、水素ガスが挙げられる。還元雰囲気は、窒素ガスと0.1体積%以上4体積%未満の水素ガスとの混合ガスが好ましい。
不活性ガス雰囲気及び還元雰囲気における酸素ガス濃度は、100~500ppm好ましく、200~300ppmがより好ましい。
前駆体層の加熱時間は、30秒~30分間が好ましく、30秒~10分間がより好ましく、1~1分30秒間がさらに好ましい。加熱時間が前記範囲の下限値以上であれば、重合体Xを充分に溶融できる。加熱時間が前記範囲の上限値以下であれば、生産性がよい。
積層方法としては、基材と本シートとを熱プレスする方法が挙げられる。
プレス温度は、重合体Xの融点以上であり、310~400℃が好ましく、320~380℃がより好ましく、330~370℃がさらに好ましい。プレス温度が前記範囲内であれば、本シートの熱劣化を抑制しつつ、基材と本シートとを充分に接着できる。
積層体をアニール処理してもよい。アニール処理によって厚さ方向の線膨張係数を低減できる。
アニール処理の温度は、80~190℃が好ましく、100~185℃がより好ましく、120~180℃がさらに好ましい。
アニール処理の時間は、10~300分間が好ましく、20~200分間がより好ましく、30~120分間がさらに好ましい。
アニール処理の際の圧力は、0.001~0.030MPaが好ましく、0.003~0.020MPaがより好ましく、0.005~0.015MPaがさらに好ましい。
基材と層Aとの積層体の層Aの表面に他の基材を積層する場合、層Aと他の基材との接着性を高めるために、層Aの表面を表面処理してもよい。
表面処理としては、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、UVオゾン処理、エキシマ処理、ケミカルエッチング、シランカップリング剤処理、微粗面化処理等が挙げられ、真空プラズマ処理が好ましい。
プラズマ処理に用いるガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、希ガス(アルゴン等)、水素ガス、アンモニアガス等が挙げられ、希ガス又は窒素ガスが好ましい。ガスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、アルゴンガス100体積%であってもよく、水素ガス/窒素ガスが70/30(体積比)の混合ガスでもよく、水素ガス/窒素ガス/アルゴンガスが35/15/50(体積比)の混合ガスでもよい。
積層体の層Aの表面に他の基材を積層してもよい。
他の基材としては、前記の基材と同様のものであってもよく、前記の基材の前駆体であってもよい。前駆体としては、繊維強化樹脂板の前駆体であるプリプレグ等が挙げられる。プリプレグは、強化繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)の基材(トウ、織布等)に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含浸させたシート状のものである。
他の基材がプリプレグの場合のプレス温度は、重合体Xの融点以下が好ましく、120~300℃がより好ましく、140~240℃がさらに好ましく、160~220℃が特に好ましい。プレス温度が前記範囲内であれば、プリプレグの熱劣化を抑制しつつ、層Aとプリプレグとを充分に接着できる。
他の基材が耐熱性樹脂フィルムの場合のプレス温度は、310~400℃が好ましく、320~380℃がより好ましく、330~370℃がさらに好ましい。プレス温度が前記範囲内であれば、耐熱性樹脂フィルムの熱劣化を抑制しつつ、層Aと耐熱性樹脂フィルムとを充分に接着できる。
例1~5は実施例であり、例6~7は比較例である。
含フッ素重合体(重合体X-1)の共重合組成のうち、NAHに基づく単位の割合(モル%)は、以下の赤外吸収スペクトル分析によって求めた。他の単位の割合は、溶融NMR分析及びフッ素含有量分析により求めた。
<NAHに基づく単位の割合(モル%)>
含フッ素重合体をプレス成形して厚さ200μmのシートを得た後、赤外分光法により分析して赤外吸収スペクトルを得た。赤外吸収スペクトルにおいて、含フッ素重合体中のNAHに基づく単位における吸収ピークは1778cm-1に現れる。該吸収ピークの吸光度を測定し、NAHのモル吸光係数20810mol-1・l・cm-1を用いて、含フッ素重合体におけるNAHに基づく単位の割合を求めた。
セイコー電子社製の示差走査熱量計(DSC装置)を用い、含フッ素重合体を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度(℃)を融点(Tm)とした。
テクノセブン社製のメルトインデクサーを用い、372℃、49N荷重下で、直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間(単位時間)に流出する含フッ素重合体の質量(g)を測定してMFRとした。
ASTM D 150準拠の変成器ブリッジ法にて、温度を23℃±2℃の範囲内、相対湿度を50%±5%RHの範囲内に保持した試験環境において、絶縁破壊試験装置(YSY-243-100RHO(ヤマヨ試験機社製))にて、1MHzでの比誘電率及び誘電正接を求めた。
2.000メッシュ篩(目開き2.400mm)、1.410メッシュ篩(目開き1.705mm)、1.000メッシュ篩(目開き1.205mm)、0.710メッシュ篩(目開き0.855mm)、0.500メッシュ篩(目開き0.605mm)、0.250メッシュ篩(目開き0.375mm)、0.149メッシュ篩(目開き0.100mm)、及び受け皿をこの順に上から重ねた。その上から試料(含フッ素重合体)を入れ、30分間振とう器で篩分けを行った。その後、各篩の上に残った試料の質量を測定し、各目開き値に対する通過質量の累計をグラフに表し、通過質量の累計が50%の時の粒径を試料の平均粒径とした。
堀場製作所社製のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-920測定器)を用い、樹脂パウダーを水中に分散させ、粒度分布を測定し、D50(μm)及びD90(μm)を算出した。
シリカ粒子のD50は、粒子を水に分散させてレーザー回折・散乱式粒度分析装置(日機装社製「MICROTRAC HRA DHSX100」)にて測定した。
シリカ粒子を230℃で減圧乾燥して水分を完全に除去し、試料とした。この試料について、マイクロメリティック社製の自動比表面積、細孔分布測定装置トライスターIIを用いて比表面積及び細孔容積を測定した。
Oxford Instruments社製のAFMを用いて、片面銅張積層体の層(A-1)の1μm2範囲の表面のRaを測定した。測定条件は下記である。
プローブ:AC160TS-C3(先端R <7nm、バネ定数 26N/m)
測定モード:AC-Air
Scan Rate:1Hz
各例で得た片面銅張積層板から180mm×180mmの正方形の試験片を切り出した。この試験片について、JIS C 6471:1995に規定されている測定方法に従い、反り率を測定した。反り率が小さいほど、片面銅張積層板を他材料と積層した場合に、積層加工時の反りによる他材料との積層不良や、積層体としての反りが抑制された平坦性の高いプリント基板を得ることが可能となる。
各例で得た片面銅張積層板から10mm×10mmの試験片を切り出した。この試験片について、熱機械分析装置(NETZSCH社製、TMA402 F1 Hyperion)を用いて厚さ方向の線膨張係数CTE(z)を測定した。具体的には、窒素雰囲気中、荷重を19.6mNとし、測定温度が-65℃から150℃の温度範囲を2℃/分の速度でサンプルを昇温し、サンプルの厚さの変位量を測定した。測定終了後、-40℃から125℃までのサンプルの変位量から-40~125℃での線膨張係数(CTE)を求めた。求めたCTEから以下の基準で低熱膨張性を評価した。
〇(良好):CTEが65ppm/℃以下。
△(不良):CTEが65ppm/℃超100ppm/℃以下。
×(不可):CTEが100ppm/℃超。
各例で得た片面銅張積層板の層Aについて、1MHzでの比誘電率及び誘電正接を測定し、それぞれ以下の基準で評価した。
「比誘電率」
◎(特に良好):比誘電率3.5未満。
〇(良好):比誘電率3.5以上6未満。
△(不良):比誘電率6以上10未満。
×(不可):比誘電率10以上。
「誘電正接」
◎(特に良好):誘電正接0.004未満。
〇(良好):誘電正接0.004以上0.015未満。
△(不良):誘電正接0.015以上0.02未満。
×(不可):誘電正接0.02以上。
各例で得た片面銅張積層板から50mm×50mmの試験片を切り出した。この試験片を、90℃、90%RH、10時間の条件で吸湿処理し、その後、260℃のハンダ槽に1分間浮かせた。その後、試験片の状態を肉眼で観察し、以下の基準で耐熱性を評価した。
〇(良好):剥がれ、変形、膨れ等の異常がない。
△(不良):部分的に剥がれ、変形、膨れ等の異常がある。
×(不可):全体的に剥がれ、変形、膨れ等の異常がある。
[沈降性]
蓋付きガラス容器(容量100mL)に、調製した分散液(液状組成物)を入れ、25℃で一カ月保存した。保管後の分散液の沈降物を目視により官能評価を行った。沈降物がない場合は「なし」、沈降物がある場合は「あり」とした。
前記沈降性の評価での保存後の分散液について、以下の基準で再分散性を評価した。
◎(特に良好):パドル翼による攪拌で容易に再分散する。
〇(良好):ハドル翼による攪拌で再分散する。
△(不良):再分散させるのに撹拌ローラーを用いた攪拌が必要。
×(不可):再分散させるのにボールミルを用いて十分な撹拌が必要。
単量体としてNAH(無水ハイミック酸、日立化成社製)、TFE及びPPVE(CF2=CFO(CF2)3F、旭硝子社製)を用いて、国際公開第2016/017801号の[0123]に記載の手順で重合体X-1を製造した。
重合体X-1の共重合組成は、NAH単位/TFE単位/PPVE単位=0.1/97.9/2.0(モル%)であった。重合体X-1の融点は300℃であり、比誘電率(1MHz)は2.1であり、MFRは17.6g/10分であり、平均粒径は1554μmであった。
次いで、ジェットミル(セイシン企業社製、シングルトラックジェットミル FS-4型)を用い、粉砕圧力0.5MPa、処理速度1kg/hrの条件で、重合体X-1を粉砕して樹脂パウダーP-1を得た。樹脂パウダーP-1のD50は2.58μmであり、D90は7.1μmであった。
樹脂パウダーP-1の155g、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント710FL)の15g、及びメチルエチルケトンの346gを横型ボールミルポットに投入し、15mm径のジルコニアボールにて分散を行い、分散液C-1を得た。
厚さ12μmの銅箔(福田金属箔粉工業社製、CF-T4X-SV)の表面に、分散液C-3を塗布し、窒素雰囲気下にて100℃で15分乾燥し、350℃で15分加熱した後、徐冷することで厚さ50μmの層A-1を形成し、片面銅張積層体を得た。
前記銅箔の、分散液C-3を塗布した表面のRaは4nmであった。
得られた片面銅張積層板を7cm×7cmに裁断した積層体は、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
例1の分散液C-2の調製において、シリカ粒子としてBY-800(東ソー社製)の25g(30質量%)と、MEKの223g(67質量%)と、フタージェント710FLの10g(3質量%)とを混合して分散液を得た以外は例1と同様の作業を行って片面銅張積層体を得た。得られた片面銅張積層板を7cm×7cmに裁断した積層体は、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
例1の分散液C-2の調製において、シリカ粒子としてAY-603(東ソー社製)の20g(30質量%)と、MEKの224g(67質量%)と、フタージェント710FLの10g(3質量%)とを混合して分散液を得た以外は例1と同様の作業を行って片面銅張積層体を得た。得られた片面銅張積層板を7cm×7cmに裁断した積層体は、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
例1の分散液C-2の調製において、シリカ粒子としてシリナックス(日鉄鉱業社製)の15g(30質量%)と、MEKの205g(67質量%)と、フタージェント710FLの9g(3質量%)とを混合して分散液を得た以外は例1と同様の作業を行って片面銅張積層体を得た。得られた片面銅張積層板を7cm×7cmに裁断した積層体は、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
例1の分散液C-2の調製において、シリカ粒子として表面積30m2/gであるサンスフェア NM30(旭硝子製)の90g(30質量%)と、MEKの205g(67質量%)と、フタージェント710FLの9g(3質量%)とを混合して分散液を得た以外は例1と同様の作業を行って片面銅張積層体を得た。得られた片面銅張積層板を7cm×7cmに裁断した積層体は、円筒状に丸まり、四隅に丸まりが見られた。
例1の分散液C-2の調製において、シリカ粒子としてSFP-30M(Denka社製)の90g(30質量%)と、MEKの200g(67質量%)と、フタージェント710FLの9g(3質量%)とを混合して分散液を得た以外は例1と同様の作業を行って片面銅張積層体を得た。得られた片面銅張積層板を7cm×7cmに裁断した積層体は、円筒状に丸まることはなかったが、四隅に丸まりが見られた。
分散液C-2を混合せず、分散液C-3の代わりに分散液C-1を用いた以外は例1と同様の作業を行って片面銅張積層体を得た。得られた片面銅張積層板を7cm×7cmに裁断した積層体は、円筒状に丸まり、反りが見られた。
例7の片面銅張積層体が有する層Aは、シリカ粒子を含まないため、線膨張係数が高く、耐熱性に劣っていた。また、層Aの形成に用いた分散液は分散安定性に劣っていた。
例6の片面銅張積層体が有する層Aは、シリカ粒子の比表面積が6.5m2/g未満のため、電気特性に劣っていた。また、線膨張係数及び耐熱性についても、例7よりは向上したものの、例1~5に比べて劣っていた。また、層Aの形成に用いた分散液は分散安定性に劣っていた。
Claims (7)
- フッ素樹脂シートであって、
融点が260~320℃である溶融成形可能な含フッ素重合体の溶融物と、比表面積が6.5m2/g以上であり、細孔容積が0.05~3.0mL/gであり、かつ体積基準累積50%径が0.005~100μmである、中空構造又はメソポーラス構造を有するシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の含有量が、前記フッ素樹脂シートの質量に対して0.005~50質量%であり、
厚さが1~500μmであり、
前記含フッ素重合体が下記重合体X1である、フッ素樹脂シート。
重合体X1:テトラフルオロエチレンに基づく単位を有し、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する含フッ素重合体。 - -40~125℃での線膨張係数が100ppm/℃以下である、請求項1に記載のフッ素樹脂シート。
- 下記の組成物を、溶融成形法により厚さが1~500μmのシート状に成形する、フッ素樹脂シートの製造方法。
組成物:融点が260~320℃である溶融成形可能な含フッ素重合体と、比表面積が6.5m2/g以上であり、細孔容積が0.05~3.0mL/gであり、かつ体積基準累積50%径が0.005~100μmである、中空構造又はメソポーラス構造を有するシリカ粒子とを含み、
前記シリカ粒子の含有量が、前記組成物の固形分の質量に対して0.005~50質量%であり、
前記含フッ素重合体が下記重合体X1である、組成物。
重合体X1:テトラフルオロエチレンに基づく単位を有し、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する含フッ素重合体。 - 請求項1又は2に記載のフッ素樹脂シートからなる層Aと、
前記フッ素樹脂シート以外の基材からなる層Bと、を有する積層体。 - 基材の表面に、下記の液状組成物を塗布し、乾燥した後、前記液状組成物中の含フッ素重合体の融点以上に加熱し、厚さが1~500μmの層Aを形成する、積層体の製造方法。
液状組成物:融点が260~320℃である溶融成形可能な含フッ素重合体を含む樹脂パウダーと、比表面積が6.5m2/g以上であり、細孔容積が0.05~3.0mL/gであり、かつ体積基準累積50%径が0.005~100μmである、中空構造又はメソポーラス構造を有するシリカ粒子と、前記樹脂パウダー及び前記シリカ粒子を分散する液状媒体とを含み、
前記シリカ粒子の含有量が、前記液状組成物の固形分の質量に対して0.005~50質量%であり、
前記含フッ素重合体が下記重合体X1である、液状組成物。
重合体X1:テトラフルオロエチレンに基づく単位を有し、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する含フッ素重合体。 - 前記樹脂パウダーは、体積基準累積50%径が0.1~6μm、体積基準累積90%径が8μm以下である請求項5に記載の積層体の製造方法。
- 前記基材が、樹脂フィルム、ガラス基材、セラミックス基材、又は金属基材であり、
前記基材の表面の算術平均粗さRaが5μm以下である請求項5又は6に記載の積層体の製造方法。
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