JP2010534332A - 試料採取針 - Google Patents

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Abstract

本発明は、試料採取針、特に、ヒト又は動物の被験体からの卵母細胞回収に適した針に関し、当該針が、第2の管状領域と流体連通する第1の管状領域を備え、第1の管状領域が被験体への挿入用の前端を備え、第2の管状領域が流体を収容する手段と流体連通する後端を備え、第1の管状領域が第2の管状領域の外径よりも小さな外径を有し、第1の管状領域が第2の管状領域の内径よりも小さな内径を有する。本発明は、ヒト又は動物の被験体から試料、特に卵母細胞を回収する方法にも関する。

Description

本発明は、試料採取針、特に、ヒト又は動物の被験体からの卵母細胞回収に適した針に関する。本発明は、ヒト又は動物の被験体から試料、特に卵母細胞を回収する方法にも関する。
体外受精(IVF)は、子がいないことに悩む夫婦を支援するのに一般的な治療介入である。女性被験者の任意の必要なホルモン刺激の後の、IVF周期における第1の段階は、卵母細胞の回収すなわち吸引である。ホルモン刺激は、女性内で成熟する卵胞の数の増加につながる。通常の月経周期では、1個又は2個の卵母細胞が生成される。対照的に、上首尾なIVF周期では、一般的に約5個〜15個の卵母細胞が成熟する。今日では、ホルモン刺激を全く用いないか又は最小限にしか用いず、その代わりに回収後に卵母細胞を成熟させるか、又は通常は1個又は2個の成熟細胞でIVF処置には十分であると考えられる自然周期を用いることへの関心が高まっている。
ホルモン刺激の方法とは無関係に、各卵母細胞は卵胞内にある。IVF処置中、卵胞は、まだ卵巣内にある間に空にされる。これは通常は経膣的に行われ、これは卵母細胞回収針を用いて膣壁及び卵巣を穿通することを意味する。超音波による卵胞の位置確認後、卵母細胞回収針を用いて各卵胞を刺してこれに入り、続いて、卵母細胞を含有する卵胞液を吸引によって回収する。回収は、陰圧を引き起こすことによって行われる。卵母細胞が吸引のみでは卵胞から放出されない場合、予め温めたフラッシュ溶液を吸引と併用して、卵母細胞を放出し吸引される流体体積を増やすことができる。
IVF周期のために卵胞をin vivoで空にするのに用いられる卵母細胞回収針は、シングルルーメン又はダブルルーメンを備え得る。ダブルルーメン針は、卵胞から卵母細胞を回収する第1のルーメンと、同時に卵胞に媒体を流し込む第2のルーメンとを有する。これは、フラッシュなしのシングルルーメン針での回収よりも首尾よく卵胞から卵母細胞を放出すると考える人もいる。しかしながら、フラッシュなしでシングルルーメン針を用いる方が一般的である。シングルルーメン針を用いて回収及びフラッシュの両方を行うこともできるが、シングルルーメン針を用いてフラッシュ及び吸引を同時に行うことは不可能である。したがって、フラッシュでシングルルーメン針を用いる場合、卵母細胞が回収される代わりに流し落とされてしまう危険がある。
今日販売されている卵母細胞回収針は、針の全長に沿って均一な外径(OD)及び内径(ID)を有する。最も一般的な針は、それぞれ1.65mm及び1.47mmのODに相当する16ゲージ又は17ゲージである。これらの針は、例えば、Cook Medical Inc.(Bloomington, IN, USA)、Smiths Medical International(Watford, UK)、及びGynetics Medical Products N.V.(Achel, Belgium)から入手可能である。18ゲージ(1.27mmOD)の針が、Smiths Medical Internationalから入手可能である。
卵母細胞回収針の長さは、例えば、用いられる針ガイドのタイプに応じて変わり、針ガイドのタイプはさらに、用いられる超音波トランスデューサのタイプに応じて決まる。通常の針全長は、200mm〜400mmである。
卵母細胞回収針の内径(ID)すなわち内腔径は、ヒトの場合に約0.1mm〜0.2mmである卵母細胞の直径よりも大きくなければならない。針のIDは、卵母細胞を覆う卵丘細胞塊の移動も可能にするべきである。細い針内で卵母細胞に対して生じる圧力及び
摩擦と同様に、生産及び材料の制限が、IDをどれだけ小さくすることができるかに影響を及ぼす。
回収処置は、主に穿通して空にすべき卵胞の数に応じて、通常は約10分〜30分を要する。麻酔及び鎮静を用いなければ、これはかなり難しく、場合によっては女性にとって非常に苦痛な処置である。したがって、処置中に全身麻酔を用いることが国によっては標準である。しかしながら、全身麻酔の使用には医学的危険性が伴い、麻酔医の立ち会いを要件とすることで費用が嵩む。その結果、スカンジナビア諸国等の一部の国は、軽度の鎮静及び/又は局所麻酔下で卵母細胞回収を行う。今日の傾向では、より安価で安全であるため軽度の鎮静及び/又は局所麻酔の使用に向かう診療所が多くなっているが、これは女性にとっての不快感又は疼痛をより大きくする。
針の製造業者は、患者に与える疼痛を小さくするために、より細い卵母細胞回収針を生産することによって処置におけるこの変化に対応してきた。針の太さと被験者が感じる疼痛との間の関係が分かっている(非特許文献1)。この研究では、16ゲージ及び18ゲージの2つの針直径の使用を比較した。16ゲージ針を一方の卵巣で用い、18ゲージ針を他方の卵巣で用いた。各卵巣で異なる針を用いることで、被験者自身を対照として用いることができた。被験者に対して経度の鎮静を用い、0度〜5度で疼痛を自己評価した。細い針ほどそれに関連して知覚される疼痛が大幅に小さいことが分かった。
疼痛及び疝痛の知覚は、卵母細胞回収処置後の問題でもある。Millerらによる研究(非特許文献2)では、自己評価による疼痛及び疝痛を、卵母細胞回収の30分後及び24時間後で記録した。これは、卵母細胞吸引の30分後及び24時間後の両方で疼痛及び疝痛があったことを示していた。細い針ほど吸引処置後の疼痛及び疝痛が実際に低減されることを裏付けるデータは現時点ではないが、細い針ほど組織に生じる損傷が少なくなるため、これは期待されるであろう。
上述のように、細い針の方が太い針よりも生じる外傷及び出血が少ない。外傷及び出血は胚の着床に影響を及ぼし得るため、これは有利である。着床は、概して、卵母細胞の回収のわずか2日〜6日後に行われるため、回収プロセス中に外傷が生じた場合、これが適切な着床を妨げる可能性がある。
しかしながら、針が細いほどルーメンも狭くなるため、細い針の使用にはいくつかの欠点もある。例えば、試料、例えば卵母細胞が、細い針のルーメン内で詰まり且つ/又は傷付けられる可能性がある。ヒト卵母細胞のおおよその直径は、0.1mm〜0.2mmであり、卵丘細胞が卵母細胞を包囲した状態での全体的な細胞塊は、10mmもの大きさの直径を有し得る(非特許文献1)。したがって、針が細いほど、卵母細胞が針内を進むときに卵母細胞に損傷を与える危険が大きくなる。その結果、用いられる針が細いほど、卵母細胞を傷付ける危険が大きくなることで、IVF処置で妊娠に成功する可能性が低くなり得る。
細い針の別の欠点は、所与の陰圧を加える場合に、細い針を通した吸引の方が太い針よりも長時間を要することである。試料(例えば、卵母細胞及び卵胞液)が針内にある時間が長いほど、試料が室温に曝される時間が長くなるため試料の冷却が進む。針ルーメンが細いほど、針壁と試料との間の接触面積も大きくなり、これが試料の冷却をさらに進ませる。試料によっては、例えば卵母細胞は、生理的温度未満の温度に非常に敏感であり、温度が低下すると生存能力を失う。
細い針に必要な長い吸引時間の代案は、加える陰圧を大きくして針を通る卵胞液の移動を加速させることである。しかしながら、これには、高圧を加えることで試料に圧力がか
かるとともに他の物理的損傷を与え得るという欠点がある。加える陰圧が大きすぎることは、卵母細胞の透明帯を傷付ける可能性があるため、卵母細胞吸引中の共通の懸念である。また、加える陰圧は、標準圧力環境での作業時には1atm(101.3kPa)を超過することができない。さらに、細い針には、太い針よりも曲がりやすいためユーザがより操作し難いという欠点もある。
現在の卵母細胞回収針を、添付の図1〜図5に関して説明するが、図中では参照しやすいように類似の部品を類似の参照符号で参照している。本発明による針と他の針との比較の結果を提供するデータを、図6〜図10に示す。
図1は、基底部152、子宮筋層154、膣156、卵管160、卵巣158、及び卵胞104を備える、子宮150を示す。卵胞104の超音波ガイド付き経膣吸引用の通常の既知の装置100が、自然な位置で示されている。シングルルーメン卵母細胞回収針102が、卵母細胞を含有する卵胞104に経膣的に導入されて針ガイド106に保持され、針ガイド106はさらに、超音波トランスデューサ108に保持されている。超音波トランスデューサは、卵胞109の超音波視野を生成する。シングルルーメン針の後端は、吸引チューブ110に接続され、吸引チューブ110はさらに、卵母細胞を含有する卵胞液の採取用の試験管112に接続される。真空ポンプ(図示せず)の適用によって、試験管112に陰圧が導入される。試験管112は、コネクタ(図示せず)を有するシリコーンストッパ114で密閉される。
卵母細胞回収針102は、シングルルーメン針又はダブルルーメン針であり得る。シングルルーメン針を図2に示す。ダブルルーメン針を図3に示す。陰圧を導入するためにルアーコネクタ及びシリンジをそれぞれが有する他の吸引針構成を、図4及び図5に示す。
図2は、卵母細胞回収針202を備える既知のシングルルーメン針装置200を示す。針202の後端は、指先グリップ222を備える。針202の後端は、吸引チューブ210に接続され、吸引チューブ210はさらに、シリコーンストッパ214を介して試験管212に接続される。試験管212は、シリコーンストッパ214、ルアー接続部216、及び真空チューブ218を介して、真空ポンプ(図示せず)に接続される。真空チューブ218に真空を加えることで、流体が矢印Aの方向に針202に引き込まれ、結果として試験管212に引き込まれる。
図3は、既知のダブルルーメン針装置300を示す。卵母細胞回収針302の後端は、指先グリップ322を備える。針302の後端は、フラッシュチューブ324に接続される。フラッシュチューブ324の遠位端は、フラッシュ媒体源への接続用のルアー接続部325を備える。針302の後端は、吸引チューブ310にも接続され、吸引チューブ310はさらに、卵母細胞を含有する卵胞液の採取用の試験管312に接続される。真空ポンプ(図示せず)の適用によって、試験管312に陰圧が導入される。試験管312は、シリコーンストッパ314、ルアー接続部316、及び真空チューブ318を介して、真空ポンプ(図示せず)に接続される。真空チューブ318に真空を加えることで、流体が矢印Aの方向に針302に引き込まれ、結果として試験管312に引き込まれる。フラッシュ媒体は、矢印Bの方向にフラッシュチューブ324を通して針302に流し込まれ得る。
図4は、卵母細胞回収針402の後端に指先グリップ422を備える別の既知のシングルルーメン針装置400を示す。針402の後端は、ルアー接続部(図示せず)を介してシリンジ426に接続される。シリンジバレル430からシリンジプランジャ428を引き抜くことで、針402内に陰圧を生じさせ、流体が矢印Aの方向に針402に引き込まれ、結果としてシリンジ426に引き込まれる。
図5は、図4の針装置の既知の代替形態を示す。シングルルーメン針装置500が、後端に指先グリップ522があるシングルルーメン卵母細胞回収針502を備える。針502の後端は、吸引チューブ524及びルアー接続部(図示せず)を介してシリンジ526に接続される。シリンジバレル530からシリンジプランジャ528を引き抜くことで、針502内に陰圧を生じさせ、流体が矢印Aの方向に針502に引き込まれ、結果としてシリンジ526に引き込まれる。
卵母細胞回収針に関する以前の発明は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6に記載のものを含む。特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5に記載の針は、全て均一な直径で構成されている。したがって、これらは、女性に疼痛及び/又は組織損傷を与えるか、又は卵母細胞に対する圧力及び/又は外傷を引き起こし得る。大きな内径を有する針の使用には、回収される試料、例えば卵母細胞に対して生じる圧力及び/又は外傷を最小限に抑える且つ動作が速いという利点がある。小さな内径を有する針の使用には、回収すなわち吸引時間が長くなるという欠点がある。長い回収時間は、吸引を行う医師にとって不都合であり、試料を回収中の被験者にとって不都合且つ不快であり、回収処置中に試料が冷却される程度及び/又は別の面では試料が圧力又は外傷を受ける程度を大きくする。
特許文献1は、採卵と連係する内部卵巣周囲ブロッキング(internal periovarial blocking)用の麻酔針を開示している。
特許文献2は、ハンドル、ハンドルから延びる採取針、及び採取される卵子の損傷を防止するために採取針を選択された温度に維持する加熱機構を備える、採卵装置を開示している。この発明は、卵母細胞吸引中の温度問題を解決するかもしれないが、均一な直径の針を開示しており、したがって上述のように小さなIDを有する針又は大きなODを有する針の欠点を有する。
特許文献3及び特許文献7はいずれも、側部開口部を有する吸引針構造を開示している。特許文献3及び特許文献7の両方が、上述のように小さなIDを有する針又は大きなODを有する針の欠点を有する均等なサイズの針を開示している。
特許文献5は、卵胞から卵子及び卵胞液を回収する採卵装置を開示している。この装置は、針に対して吸引を生じさせることで試料が針に引き込まれる手段に接続される針を備える。
特許文献6は、小径の第2の領域に接続される大径の第1の領域を有する針を備えるシリンジを開示している。この針は、粘性の高い液体の回収ではなく患者の尿道、食道、及び血管等の導管への送出に用いられる。卵母細胞等の試料の採取に針を用いることは示唆されていない。
国際公開第2005/025434号明細書 米国特許出願公開第2005/0143619号明細書 米国特許第5,843,023号明細書 米国特許出願第10/233,431号明細書 米国特許第6,461,302号明細書 米国特許第6,929,623号明細書 米国特許第5,979,339号明細書
アジズ(Aziz)ら、1993年、ヒューマン・リプロダクション(Human Reproduction)第8巻、第7号、p.1098-1100 ミラー(Miller)ら、2004年、ファーティリティ・アンド・ステリリティ(Fertility and Sterility)第81巻、第1号、p.191-193
本発明は、細い針の利点を保持しながら太い針に関連する欠点を減らす且つ/又はなくす、試料採取針を提供する。したがって、本発明は、被験体からの生体試料、特に、組織へのアクセス及び穿通ができるようになるには体腔を通り抜ける必要がある場所等のアクセスし難い位置に位置付けられている試料の回収に適した針を提供する。例えば、生体試料は、卵母細胞であり得る。生体試料は、粘稠液であり得るか又は粘稠液中に存在し得る。針での卵母細胞の回収では、卵巣及び卵胞を穿通できるようになるには針が膣を通り抜けなければならない。試料採取針は、外科用又は医療用の針であり得る。
したがって、本発明の第1の態様は、第2の(後)管状領域と流体連通する第1の(前)管状領域を備え、第1の管状領域が被験体の組織を穿通する前端を備え、第2の管状領域が流体を受容する手段と流体連通する後端を備え、第1の管状領域が第2の管状領域の外径及び内径よりも小さな外径及び内径を有し、第1の管状領域が第2の管状領域の内径よりも小さな内径を有する、試料採取針を提供する。
本発明による試料採取針の利点は、比較的細い第1の管状領域のみが試料回収中の組織を侵襲する一方で、比較的太い第2の管状領域は組織を侵襲しないことである。
第1の管状領域及び第2の管状領域は、第1の管状領域及び第2の管状領域両方のルーメンを通って延びる共通の中心軸に沿って配置され得る。代替的に、第1の管状領域及び第2の管状領域は、互いに対して偏心的に配置され得る。すなわち、針は、第1の管状領域及び第2の管状領域両方のルーメンを通って延びる中心軸の周りで非対称である。
第1の管状領域は、テーパ領域を介して第2の管状領域に接続され得る。テーパ領域は、第1の管状領域と第2の管状領域との間で直径を徐々に変化させ得る。テーパ領域は、緩急いずれであってもよい。代替的に、テーパ領域がなくてもよく、第1の管状領域と第2の管状領域との間の接続部が実質的に直角であってもよい。
第1の管状領域自体がテーパ状であってもよい。好ましくは、テーパは、比較的狭い前端から、第1の管状領域を第2の管状領域に接続するより広い領域までである。
好ましくは、流体を回収する手段は、生体試料を収容するのに適している。流体を回収する手段は、密閉可能であることが好ましい。好ましくは、流体を回収する手段は無菌である。流体を回収する手段は、試験管を含む任意の適当な容器であり得る。
ヒト卵母細胞回収処置の場合、第1の管状領域の外径は、好ましくは0.6mm〜1.2mm、より好ましくは0.8mm〜1.0mm、最も好ましくは約0.9mmである。
ヒト卵母細胞回収処置の場合、第2の管状領域の外径は、好ましくは1.1mm以上、より好ましくは1.2mm以上、最も好ましくは1.4mm以上である。
ヒト卵母細胞回収処置の場合、第1の管状領域の内径は、好ましくは約0.2mm以上、より好ましくは約0.4mm以上、最も好ましくは約0.6mm以上である。卵母細胞
回収針の第1の管状領域の内径は、常に卵母細胞回収中の特定の種の卵母細胞の直径と少なくとも同程度に大きくあるべきである。試料が卵母細胞ではない場合、内径は、回収される試料の損傷を受けやすい部分の直径と少なくとも同程度に大きくあるべきである。
ヒト卵母細胞回収処置の場合、第2の管状領域の内径は、好ましくは約0.9mm以上、より好ましくは約1.1mm以上、最も好ましくは約1.2mm以上である。
使用の際、針の前端が被験体の組織を穿通する一方で、後端は被験体の組織を穿通しない。使用の際、針の前端は、患者等の被験体の膣壁、卵巣、及び卵胞の1つ又は複数を穿通し得る。本発明の試料採取針の利点は、比較的小さな外径を有する針の前領域が、前領域の外径が大きな針よりも小さな疼痛及び/又は小さな外傷及び/又は小さな組織損傷を被験体に与え得ることである。後領域が前領域よりも大きな内径を有することの利点は、等しい陰圧下で後領域内での材料の流れをより速くすることができるため、動作が速くなり、回収される試料、例えば卵母細胞に与える圧力がより小さくなり得ることである。したがって、第2の管状領域の内径が大きいことは、これが良好な輸送管としての役割を果たすことを意味する。
第1の管状領域は、回収対象の試料の部位に到達するために穿通されなければならない解剖学的距離と少なくとも同程度に長いことが好ましい。試料の部位は組織であり得る。例えば、卵母細胞回収の場合、第1の管状領域は、膣壁を通って卵巣内の卵胞に到達するのに十分なほど長いことが好ましい。ヒト被験者で用いるためには、第1の管状領域は、少なくとも30mmの長さ、より好ましくは少なくとも40mmの長さである。第1の管状領域は、30mm〜80mmの長さ、例えば、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、又は80mmの長さであり得る。針の第1の管状領域は、試料の部位に到達するのに必要なよりも長くすることができるが、第1の管状領域の長さが増すにつれて、第2の管状領域のより大きな直径に関連する利点が減る。針の細い部分が長いほど、卵母細胞が針内で費やす時間が長くなり、処置中の卵母細胞の冷却がより進み、より大きな摩擦及び場合によっては圧力が卵母細胞に対して生じる。
針の第1の管状領域及び第2の管状領域の全長は、試料に到達するのに十分なほど長くなければならない。卵母細胞回収針の場合、必要とされる全長は、女性被験者の解剖学的サイズ及び構造に応じて決まる。すなわち、第2の(後)管状領域は、膣を通り抜けるのに十分なほど長くなければならない。第1の(前)管状領域は、試料が位置付けられている部位、例えば組織、例えば卵巣、特に卵巣の卵胞を穿通して試料に接触しつつも、第2の(後)管状領域をその部位、例えば組織に穿通させることがないようにするのに十分なほど長くなければならない。試料への接触が、その部位からの試料の回収を可能にする。ヒト被験者の場合、第1の管状領域及び第2の管状領域を合わせた長さが150mm〜500mmであることが好ましい。例えば、第1の管状領域及び第2の管状領域を合わせた長さは、200mm〜400mm、例えば300mmであり得る。
第1の管状領域の長さが、第2の管状領域を試料、例えば組織に穿通させることなく試料に接触するのに十分なほど長いことが特に好ましい。好ましくは、試料が不必要な圧力を受けないことを確実にするために、第1の管状領域は長すぎない。ヒト卵母細胞回収針の場合、第1の管状領域は、好ましくは約30mm以上、より好ましくは約40mm以上で、且つ好ましくは100mm以下、より好ましくは80mm以下、最も好ましくは60mm以下とするべきである。
第2の管状領域の長さは、被験体の解剖学的構造に応じて決まり、すなわち試料に到達するのに十分なほど長く、また、針を安定させる且つ/又は試料を可視化するのに必要な
機器に応じて決まる。試料採取針の適切な寸法は、回収対象の試料及び試料回収対象の被験体に応じて変わる。例えば、一部の動物の卵母細胞は、ヒト卵母細胞よりも大きい。ヒト卵母細胞よりも小さな卵母細胞を有する動物もいる。したがって、試料及び被験体が、第1の管状領域及び第2の管状領域の内径及び外径に適した寸法を決める。同様に、動物によって解剖学的構造が異なる。例えば、或る動物の膣等の体腔は、ヒトのものよりも通り抜け長さが長いか又は短い場合がある。同様に、卵母細胞等の試料が卵巣又は卵胞等の部位内で、ヒトと比較して浅いか又は深い深度で位置付けられている場合がある。さらに、例えば身長、質量、及び体格指数により、解剖学的寸法は種内で自然な変動を示す。被験体は、ヒト、又は雌ウシ、雌ブタ、イヌ、ウマ、マウス、ゾウ、若しくはキリン等の動物であり得る。解剖学の知識を用いれば、当業者は試料採取針に適した寸法を選択することができる。
好ましくは、針の構成は、試料回収時間が許容吸引時間を維持するのに十分なほど短いような構成であり、許容吸引時間とは、実用的な目的で、標準針、例えば、1.4mmの均一な外径、1.0mmの均一な内径、及び355mmの長さを有する針を用いる場合に要する吸引時間に相当する吸引時間を意味する。試料の吸引時間は、加える陰圧、吸引される試料の粘度、及び吸引される試料の体積に応じて決まる。相当する吸引時間は、標準針での吸引時間と同じくらいの短さの吸引時間、標準針での吸引時間よりも短いか又は最大30%長い吸引時間、好ましくは標準針での吸引時間よりも20%以下しか長くない吸引時間である。標準針は、例えば、1.0mmの均一な内径及び1.4mmの均一な外径を有し、例えば355mmの長さを有する針である。許容可能な短さの吸引時間は、回収の際の試料の冷却を最小限に抑え、医師が立ち会う時間を最短にし、回収中に被験体が不快を感じる時間を最短にし、且つ回収される試料への損傷及び/又は外傷を最小にする吸引時間である。吸引時間は、2分未満、例えば1分未満であり得る。回収される試料は、3ml〜8ml、例えば4ml〜5mlの体積を有し得る。最大1気圧(すなわち、0kPa〜101.3kPa)の陰圧が、針の後端に加えられ得る。
試料採取針は、ステンレス鋼、炭素繊維、硬質プラスチック、セラミック、及びガラスから選択される1つ又は複数の材料から形成され得る。特に好ましい材料としては、AISI304、AISI316、SIS2346、及びSIS2543から選択されるステンレス鋼が挙げられる。最も好ましい材料は、AISI304ステンレス鋼である。第1の管状領域及び第2の管状領域は、同じ材料からできていても異なる材料からできていてもよい。
好ましくは、針は鋭い先端を備える。先端は、超音波下で可視性を高めるようになっていてもよい。先端はエコー源性であってもよい。例えば、針の先端の外面には、1つ又は複数の溝が設けられ得る。
試料採取針は、単一の材料片から形成されてもよく、又は単一の管を形成するように互いに接合される2つ以上の材料片から形成されてもよい。
本発明の試料採取針は、図1〜図5に関して説明されるもの等の、超音波トランスデューサ、真空ポンプ、吸引チューブ、フラッシュチューブ、採取管、採取管用のストッパ、真空ポンプ、シリンジ、針ガイド、指先グリップ、及びチューブを採取管、真空ポンプ、及びシリンジの1つ又は複数に接続するコネクタのうち、1つ又は複数に嵌着又は嵌合され得る。管材はTeflon(登録商標)を含み得る。さらに、本発明の試料採取針は、図1〜図5に関して説明されるもの等の、シングルルーメン又はダブルルーメン針装置で用いられ得る。例えば、この装置は、図1〜図5に関して説明される構成部品の1つ又は複数を備え得る。
本発明の第2の態様は、被験体から試料を採取する方法であって、上述のように、本発明による試料採取針を被験体に挿入すること、及び被験体から試料を引き抜くことを含む、被験体から試料を採取する方法を提供する。好ましくは、試料は卵母細胞である。好ましくは、被験体はヒトである。代替的に、被験体は、雌ウシ、雌ブタ、イヌ、ウマ、マウス、ゾウ、又はキリン等の動物であり得る。
好ましくは、試料採取針の第1の(前)管状領域のみが被験体の組織を穿通する。すなわち、好ましくは、試料採取針の第2の(後)管状領域は被験体の組織を穿通しない。これには、針の狭い部分すなわち第1の管状領域のみが被験体の組織を穿通することで、被験体が受ける疼痛、不快感、及び外傷を最小にし得るという利点がある。例えば、ヒト卵母細胞回収処置中には、第1の管状領域の約30mm又は約40mmが被験体に挿入され得る。
本発明の第3の態様は、被験体から試料を採取する方法における、上述のような試料採取針の使用を提供する。被験体は、ヒト、又は雌ウシ、雌ブタ、イヌ、ウマ、マウス、ゾウ、又はキリン等の動物であり得る。試料は、試料を含有する部位、例えば組織に針が侵襲的に入る場所から少し離れて位置し得る。試料は卵母細胞であり得る。
本発明による針及び方法を、単に一例として、さらなる図面の図6〜図15を参照して説明する。
子宮と、卵巣からの卵胞の超音波ガイド付き経膣吸引用の装置との概略縦断面図である(従来技術)。 図1に示す装置との併用に適したシングルルーメン針の概略縦断面図である(従来技術)。 図1に示す装置との併用に適したダブルルーメン針の縦断面図である(従来技術)。 卵巣からの卵胞の経膣吸引に適した、シリンジに接続されているシングルルーメン針の縦断面図である(従来技術)。 卵巣からの卵胞の経膣吸引に適した、チューブを介してシリンジに接続されているシングルルーメン針の縦断面図である(従来技術)。 本発明によるシングルルーメン試料採取針の縦断面図である。 テーパ領域が第1の管状領域と第2の管状領域とを接続している、本発明によるシングルルーメン針の縦断面図である。 第1の管状領域及び第2の管状領域が偏心的に配置されている、本発明によるシングルルーメン針の縦断面図である。 テーパ領域が第1の管状領域と第2の管状領域とを接続し、第1の管状領域及び第2の管状領域が偏心的に配置されている、本発明によるシングルルーメン針の縦断面図である。 テーパ状の第1の管状領域を有する、本発明によるシングルルーメン針の縦断面図である。 表1に寸法を示す針(a)、(b)、(c)、及び(d)を通した、in vivo注射に適した水の20ml試料に関する室温での吸引時間の差を示す棒グラフである。 表1に寸法を示す針(a)、(b)、(c)、及び(d)を通した、ヒアルロン酸ナトリウム溶液(0.2g.l-1)の10ml試料に関する室温での吸引時間の差を示す棒グラフである。 表1に寸法を示す針(a)、(b)、(c)、及び(d)を通した、ヒアルロン酸ナトリウム溶液(0.4g.l-1)の10ml試料に関する室温での吸引時間の差を示す棒グラフである。 表1に寸法を示す針(a)、(b)、(c)、及び(d)を通して吸引した場合の、in vivo注射に適した水の試料の温度の低下を示す棒グラフである。 表1に寸法を示す針(a)、(b)、(c)、及び(d)を通して吸引した場合の、in vivo注射に適した水の試料の温度の低下を示す棒グラフである。図15に示す試料の温度パラメータは、図14に示す試料の温度パラメータと異なる。
図11〜図15の生データは、別表に提供されている。
図6は、本発明によるシングルルーメン試料採取針632を示す。針は、第2の(後)管状領域636と流体連通する第1の(前)管状領域634を備え、第1の管状領域634は、被験体への挿入用の鋭い先である前端638を備え、第2の管状領域636は、流体収容チャンバ(図示せず)と流体連通する後端640を備える。針632の後端640に真空を加えることで、流体を矢印Aの方向に引く。針の全長(Z)は、約350mmである。針632の第2の管状領域636は、310mmの長さ(X)、1.4mmのOD、及び1.2mmの内径を有する。針632の第1の管状領域634は、40mmの長さ(Y)、0.9mmの外径、及び0.6mmの内径を有する。
第1の管状領域及び第2の管状領域の異なる配置が可能である。いくつかの例を図7〜図10に示す。
図7の試料採取針732では、第1の(前)管状領域734及び第2の(後)管状領域736が、テーパ領域735を介して接続される。
図8の試料採取針832では、第1の(前)管状領域834及び第2の(後)管状領域836が、互いに対して偏心している。
図9の試料採取針932では、第1の(前)管状領域934及び第2の(後)管状領域936が、互いに対して偏心している。第1の(前)管状領域934及び第2の(後)管状領域936が、テーパ領域935を介して接続される。
図10の試料採取針1032では、第1の(前)管状領域1034が第2の(後)管状領域1036に接続され、第1の(前)管状領域は、被験体への挿入用の鋭い先を提供する前端1038から、第1の(前)管状領域1034が第2の(後)管状領域1036につながる領域1035まで、テーパ状になっている。
図6〜図10の試料採取針は、図1〜図5に関して説明されるもの等の、超音波トランスデューサ、真空ポンプ、吸引チューブ、フラッシュチューブ、採取管、採取管用のストッパ、真空ポンプ、シリンジ、針ガイド、指先グリップ、及びチューブを採取管、真空ポンプ、及びシリンジの1つ又は複数に接続するコネクタのうち、1つ又は複数を含む、従来の試料回収装置に接続され得る。図6〜図10の試料採取針は、回収中及び/又は回収後の試料の温度低下を減らすために加熱機構も備え得る。
被験体からの卵母細胞の回収等、被験体から試料を回収する方法は、被験体への図6による試料採取針632の挿入を含む。針の後端640は、採取容器を介して真空に接続される。針の前端638は、被験体から回収すべき試料の部位に挿入される(例えば、卵母細胞回収の場合、部位は卵胞である)。試料採取針632の第1の管状領域634の一部のみ又は全部が、試料の部位を穿通する。第2の管状領域636は、試料の部位、例えば被験体の組織を穿通しない。従来の真空装置を用いて、試料採取針632の後端640に
真空が加えられ、これにより、試料が矢印Aの方向で針に入る。試料は、試料採取針632の後端640を通って採取容器(図示せず)に引き込まれる。
図7〜図10による試料採取針は、本明細書に記載されるような被験体から試料を回収する方法でも用いられ得る。
本発明による針についての分析
本発明による針を、実験状況下及び臨床状況下で分析した。
実験室分析
(a)細い針、(b)本発明による針、(c)標準針、及び(d)調整済み標準針を用いて、吸引時間及び回収される試料の温度変化を分析した。針の直径は、表1に示す。
Figure 2010534332
粘度の異なる試料の吸引時間に対する針寸法の影響を調査した。用いる試料は、in vivo注射に適した水(「注射用水」(「WFI」))、ヒアルロン酸ナトリウム溶液(0.2g.l-1)、及びヒアルロン酸ナトリウム溶液(0.4g.l-1)とした。ヒアルロン酸ナトリウム溶液は、WFI中にヒアルロン酸ナトリウムを溶解することによって調整した。
真空ポンプ(Rocket of London、240V、30W、50Hz)を−102mmHg(−13.6kPa)に調整して、較正済みの圧力計で各試験前に確かめた。針を、400mmチューブ(ID1.35mm)で真空ポンプに接続し、且つ1.35mmのIDを有する180cmの長さのPVCチューブ片を用いて50ml試験管に接続した。全ての試験で試験管と床との間で一定の距離を保つために、試験管(針に接続されている)を卓上の加熱ブロック内に入れた。加熱ブロックを所望の温度に調整するか、又はオフにした。試験全体を通して、針を垂直に保持した。室温で試料を保持している容器に針を挿入したときにタイマを開始させた。
WFIの吸引時間に対する針寸法の影響の試験の場合、20mlの試料が試験管に移ったときにタイマを停止させ、無作為な順序で各針に関して試験を5回繰り返した。各タイプ3本の針を用いた。試料の温度は20±2℃に保った。
ヒアルロン酸ナトリウム溶液の吸引時間に対する針寸法の影響の試験の場合、10mlの試料が試験管に移ったときにタイマを停止させた。無作為な順序で各針に関して試験を5回繰り返した。各タイプ2本の針を用いた。試料の温度は21±1℃に保った。
図11及び表2に示すように、本発明の針(針b)を用いて吸引したWFIの試料の吸引時間は、細い針(針a)を用いた吸引時間よりもはるかに短い。標準針(針c)は、本発明による針(針b)の43秒と比較して20mlWFIの吸引時間が35秒だったため、わずかに優れていた。調整済みの針(針d)は、針全体を通して最大(1.2mm)の内径を有するため、予想通りに吸引時間が最速であった(20mlを24秒で吸引した)。
Figure 2010534332
ヒアルロン酸ナトリウム溶液は、WFIよりも粘度が高い。高濃度のヒアルロン酸ナトリウム溶液の方が、低濃度のヒアルロン酸ナトリウム溶液よりも粘度が高い。図12及び図13に示すように、本発明の針(針b)を用いた0.2g.l-1ヒアルロン酸ナトリウム溶液及び0.4g.l-1ヒアルロン酸ナトリウム溶液の両方の吸引時間は、細い針(針a)を用いた吸引時間よりもはるかに短い(表3及び表4)。吸引時間の最も顕著な差は、細い針(針a)と他の針(針b、c、及びd)との間にあった。高濃度のヒアルロン酸ナトリウム溶液(すなわち、粘度のより高い溶液)では、本発明の針(針b)の吸引時間と標準針(針d)の吸引時間との間に有意な差はなかった。本発明による針(針b)と比較した場合、針a、c、及びdを用いてヒアルロン酸ナトリウム溶液(0.2g.l-1)を吸引するのに要する時間の間には有意な差があった(スチューデントt検定(別表))。とはいえ、本発明の針(針b)と標準針(針c)との間の差は、40秒から42秒への増加を伴うだけであるため、0.2g.l-1ヒアルロン酸ナトリウム溶液を吸引する場合は実質的な意義はない。通常の臨床試料サイズは、卵母細胞吸引の場合、約3ml〜8ml、より一般的には約3ml〜5mlである。この実験における吸引は10mlで行ったが、これは、卵母細胞吸引の臨床例であるこの体積の半分の吸引が、この実験的状況下で約1秒の時間差しかもたらさないことを意味する。
Figure 2010534332
Figure 2010534332
吸引する試料の温度に対する針寸法の影響を試験するために、水浴を37±0.5℃の試料回収温度に加熱し、加熱ブロックを25±0.5℃又は37±0.5℃の試料送出温度に加熱した。温度を標準化するために、20mlの水を収容した50ml試験管を加熱ブロックに入れた。較正済みの温度計(Vi No017−69)で各試験前に温度を確かめた。温水(37±0.5℃)が入っている水浴に針を入れるのと同時に、タイマを開始させた。20mlの温水を試験管に吸引したら、タイマを停止させ、針を水から取り出し、針を取り出した20秒後に試験管内の水の温度を測定した。吸引前後の温度の差を確定した。
無作為な順序で各針に関して試験を5回繰り返した。各試験後に、針を室温の水でフラッシュした。各試験が確実に室温のファルコン管で開始されるよう、実験用の試験管として4本の50mlファルコン管を用いた。各タイプ2本の針を用いた。図14は、37℃の回収温度から吸引して25℃でインキュベートした試験管に送出した場合のWFIの20ml試料の温度の低下が、本発明による針(針b)で吸引した場合と標準針(針c)で吸引した場合とで異ならなかったことを示す。針b及びcの両方に関して、標準針(針c)が本発明の針(針b)よりも速い吸引時間で吸引するにもかかわらず、試料の温度の低下は両方の針で(回収時点と送出時点との間で)2.6℃であった。細い針(針a)は、吸引時間が長いため予想通りに最大の温度損失を生じた。細い針(針a)及び調整済み標準針(針d)と比較して、本発明の針(針b)での37℃の回収温度から吸引して25℃の回収温度へ送出した場合のWFIの試料の温度低下には、有意な差があった(スチューデントt検定)。本発明の針(針b)で吸引される試料の温度低下と標準針(針c)で吸引される試料の温度低下との間では、有意な差がなかった。
図15は、37℃の回収温度から吸引して37℃でインキュベートした試験管に送出した場合のWFIの20ml試料の温度の低下が、回収温度が37℃で試験管を25℃でインキュベートした場合の温度の低下よりも小さかったことを示す。これらのデータは、本発明の針(針b)を用いて回収した試料が細い針(針a)を用いて回収した試料よりも小さな温度低下を示したことを示す。本発明の針(針b)及び標準針(針a)で回収した試料は、標準針(針a)の方が速く吸引するにもかかわらず同じ温度低下を示すように見える。
データは、細い針(OD:0.8mm、ID:0.6mm)と比較して、本発明の針で回収した試料の方が速い吸引時間を有し且つ小さな温度低下を示すことを示す。外径の小さな針に関連する疼痛がより低いレベルであることと組み合わせて、本発明の針は、臨床用途に有益である。卵母細胞は、実際にはWFIよりも高い粘度の液体中で回収されるため、本発明による針を用いた卵母細胞の回収は、標準針を用いた回収と同じか又はほぼ同じくらい短い吸引時間を示す可能性が高い。
膣は体温(37℃)である。したがって、膣を経由した試料採取針の使用は、回収される試料を膣の通過中に37℃でインキュベートすることになるため、温度損失を減らすことになる。
臨床分析
本発明による試料採取針(表1の針b)を、標準針(表1の針c)と臨床的に比較した。これらの針を用いて、女性被験者から卵母細胞を回収した。
スウェーデンの2つのIVF診療所がこの臨床試験に参加した。評価に参加した患者全員に対して、2つの異なる種類の吸引針を用いた。婦人科医が、子宮の異なる側で交互に針を用いた。本発明による針(針b)を標準針(針c)と比較した。針の外観が異なるため、婦人科医についての盲検化は不可能であった。調査対象集団は、調査期間中に診療所で治療を受ける厳選された数の患者から構成した。腹部手術既往のある患者及び子宮内膜症であることが分かっている患者は除外した。吸引プロセス及び麻酔法は、臨床標準手順に従って行い、両群で同じとした。
針が卵母細胞の品質に影響を及ぼさないことを確実にするために、以下のデータも収集した:採取した成熟卵母細胞の数、正常受精(2PN)した卵母細胞の数、及び初期胚の発生。
本発明の針は、容易な取り扱いを反映するパラメータについて、標準針と同じくらい有効であるか又は少なくとも同じくらい有効であると報告された。
診療所の1つのみが、各針で回収した卵母細胞の胚発生を分析した。分析の結果は、表5に示されており、上述のプロトコルに従って回収した卵母細胞を有する10人の患者を含む。本発明の針(針b)で吸引した卵母細胞に関する受精率及び2日目までの胚発生は、対照針(針c)で吸引した卵母細胞と比較して正常であった。
Figure 2010534332
この調査は、本発明による針(針b)での卵母細胞の吸引すなわち回収が、標準針(針c)での卵母細胞の吸引と比較して受精又は胚発生の成功に悪影響を及ぼさないことを示唆している。
Figure 2010534332
Figure 2010534332
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Claims (41)

  1. 第2の管状領域と流体連通する第1の管状領域を備え、該第1の管状領域が被験体への挿入用の前端を備え、前記第2の管状領域が流体を収容する手段と流体連通する後端を備え、前記第1の管状領域が前記第2の管状領域の外径よりも小さな外径を有し、前記第1の管状領域が前記第2の管状領域の内径よりも小さな内径を有する、試料採取針であって、使用の際、前記第2の管状領域は、体腔を通り抜けて試料が位置付けられている部位に接触するのに十分なほど長く、前記第1の管状領域は、前記第2の管状領域を前記部位に穿通させることなく前記試料に接触するために前記部位を穿通するのに十分なほど長いことを特徴とする、試料採取針。
  2. 前記第1の管状領域及び前記第2の管状領域それぞれの長さが、使用の際に針が膣を通り抜けて卵巣に接触するのに適している、請求項1に記載の試料採取針。
  3. 前記第1の管状領域が、針の長さに沿って1.0mmの均一な内径及び1.4mmの均一な外径を有する針での吸引時間よりも30%長い吸引時間以下の吸引時間を可能にするのに十分なほど短い、請求項1又は2に記載の試料採取針。
  4. 前記第1の管状領域が、2分未満の吸引時間を維持するのに十分なほど短い、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の試料採取針。
  5. 前記第1の管状領域の内径が、約0.2mm以上である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の試料採取針。
  6. 前記第1の管状領域の内径が、約0.4mm以上である、請求項5に記載の試料採取針。
  7. 前記第1の管状領域の内径が、約0.6mm以上である、請求項6に記載の試料採取針。
  8. 前記第2の管状領域の内径が、約0.9mm以上である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の試料採取針。
  9. 前記第2の管状領域の内径が、約1.1mm以上である、請求項8に記載の試料採取針。
  10. 前記第2の管状領域の内径が、約1.2mm以上である、請求項9に記載の試料採取針。
  11. 前記第1の管状領域の外径が、0.6mm〜1.2mmである、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の試料採取針。
  12. 前記第1の管状領域の外径が、0.8mm〜1.0mmである、請求項11に記載の試料採取針。
  13. 前記第1の管状領域の外径が、約0.9mmである、請求項12に記載の試料採取針。
  14. 前記第2の管状領域の外径が、約1.1mm以上である、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の試料採取針。
  15. 前記第2の管状領域の外径が、約1.2mm以上である、請求項14に記載の試料採取針。
  16. 前記第2の管状領域の外径が、約1.4mm以上である、請求項15に記載の試料採取針。
  17. 前記第1の管状領域及び前記第2の管状領域が、テーパ領域を介して接続されている、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の試料採取針。
  18. 前記第1の管状領域及び前記第2の管状領域が、合わせて150mm〜500mmの長さを有する、請求項1ないし17のいずれか1項に記載の試料採取針。
  19. 前記第1の管状領域及び前記第2の管状領域が、合わせて200mm〜400mmの長さを有する、請求項18に記載の試料採取針。
  20. 前記第1の管状領域の長さが、約30mm以上である、請求項1ないし19のいずれか1項に記載の試料採取針。
  21. 前記第1の管状領域の長さが、約40mm以上である、請求項20に記載の試料採取針。
  22. 前記第2の管状領域の長さが、約100mm以下である、請求項1ないし21のいずれか1項に記載の試料採取針。
  23. 前記第2の管状領域の長さが、約60mm以下である、請求項22に記載の試料採取針。
  24. 前記第1の管状領域が、ステンレス鋼、炭素繊維、硬質プラスチック、セラミック、及びガラスから選択される1つ又は複数の材料から形成される、請求項1ないし23のいずれか1項に記載の試料採取針。
  25. 前記第1の管状領域が、AISI304、AISI316、SIS2346、及びSIS2543から選択される1つ又は複数のステンレス鋼から形成される、請求項24に記載の試料採取針。
  26. 前記第2の管状領域が、ステンレス鋼、炭素繊維、硬質プラスチック、セラミック、及びガラスから選択される材料を含む、請求項1ないし25のいずれか1項に記載の試料採取針。
  27. 前記第2の管状領域が、AISI304、AISI316、SIS2346、及びSIS2543から選択されるステンレス鋼を含む、請求項26に記載の試料採取針。
  28. 前記試料採取針が卵母細胞回収針である、請求項1ないし27のいずれか1項に記載の試料採取針。
  29. 前記試料採取針がシングルルーメン針である、請求項1ないし28のいずれか1項に記載の試料採取針。
  30. 前記試料採取針がダブルルーメン針である、請求項1ないし28のいずれか1項に記載の試料採取針。
  31. 被験体から試料を採取する方法であって、請求項1ないし30のいずれか1項に記載の試料採取針を試料採取対象の部位に挿入すること、及び前記被験体から前記試料を引き抜くことを含む方法。
  32. 前記被験体がヒトである、請求項31に記載の方法。
  33. 前記被験体が、雌ウシ、雌ブタ、イヌ、ウマ、マウス、ゾウ、又はキリンである、請求項31に記載の方法。
  34. 前記試料採取針の前記第1の管状領域が、前記被験体の組織に約30mmの深さまで挿入される、請求項31又は32に記載の方法。
  35. 前記試料採取針の前記第1の管状領域が、前記被験体の組織に約40mmの深さまで挿入される、請求項34に記載の方法。
  36. 前記試料が卵母細胞である、請求項31ないし35のいずれか1項に記載の方法。
  37. 前記吸引時間が、針の長さに沿って1.0mmの均一な内径及び1.4mmの均一な外径を有する針での吸引時間よりも30%長い吸引時間以下である、請求項31ないし36のいずれか1項に記載の方法。
  38. 被験体から試料を採取する方法における、請求項1ないし30のいずれか1項に記載の試料採取針の使用。
  39. 図6〜図10のいずれか1つを参照して説明される試料採取針。
  40. 図6〜図10のいずれか1つを参照して説明される、被験体から試料を回収する方法。
  41. 図6〜図10のいずれか1つを参照して説明される、試料採取針の使用。
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