JP2010523688A - 剤形用の粒状物質 - Google Patents

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Abstract

平均粒径150〜800マイクロメートル;ならびに、沈降させていない状態での嵩密度0.1〜0.35g/cm3、および/または圧密圧力266MPaに供したときに引張強度少なくとも1.7MPaの圧密物をもたらす圧密化能を有する粒状物質であって;主成分が、セルロース誘導体またはアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物である粒状物質は、制御放出プロファイルを有する剤形の製造のために有用である。

Description

発明の分野
本発明は、剤形用、特に医薬剤形の賦形剤として有用な粒状物質、ならびに粒状物質および活性含有成分を含む剤形に関する。より特別には、本発明は、自由流動性の直接圧縮可能な粒状物質であって、活性含有成分とブレンドでき、そして剤形に直接圧縮できる粒状物質に関する。
発明の背景
持続放出剤形は、種々の技術領域,例えばパーソナルケアまたは農業用途、水処理および特に医薬用途における幅広い使用が見出されている。持続放出剤形は、有限量の化合物を水性環境中に長期間に亘って放出するように設計されている。公知の持続放出医薬剤形は、薬剤またはビタミンを含有し、その放出速度はポリマーマトリクスによって制御される。持続放出医薬剤形は望ましい。これらは長く続く用量を単独投与で過剰摂取なく送達する方法を与えるからである。米国特許第4,734,285号は、固形錠剤からの活性組成物の放出が、微粒子サイズのヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル組成物の使用により引延ばせることを開示する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルの粒子サイズは極めて小さいため、少なくとも90質量パーセントのセルロースエーテル粒子が100メッシュスクリーンを通過し、そして特に少なくとも97質量パーセントのセルロースエーテル粒子が140メッシュスクリーンを通過して、長い放出プロファイルを実現する。このようなヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル粒子は、優れた放出プロファイルを錠剤に与えるが、極めて小さいサイズのこれらの粒子は、流動性が乏しく、粉塵吸入または粉塵爆発の恐れを増大させることが公知である。
固体の成形剤形を粉末から製造するために、粉末はこれらの流動性および他の特徴(得られる物質が従来のプロセス(例えば錠剤化、カプセル化、成形等)によって、活性物質(例えば治療剤)を使用環境中に好適に送達できる満足できる単位形状に作り上げられることを可能にするもの)を改善するような様式で加工することが一般的に必要である。
種々のプロセスが、従って、粉末または他の粒子状物質を変えるために開発されており、ここで典型的には粉末はバインダー物質とともに、より大きい永続的な自由流動性の凝集体または粒状物に集められる(纏めて「造粒」(粒状化)(granulation)という)。粒状物質は、改善された乾燥流動特性、低減された粉塵および多くの場合において増大した分散性(溶液を調製する場合)という利益を与える。
例えば、溶媒で補助される「湿潤」造粒プロセスは、一般的には、粉末をバインダー物質と組合せ、そして水または有機溶媒で、湿潤粒状化物(次いで、これから溶媒を蒸発させなければならない)の形成をもたらす条件下で湿らせることを特徴とする。このようなプロセスは、広く用いられているが、所定の理解される制限(例えば、湿気または熱に対して敏感な薬剤または他の活性成分との関連)を有する。これに代えて、公知の「乾燥造粒」プロセス(これは好適な造粒を形成するためにかなり複雑な製粉スキームに左右される可能性がある)もまた、知られている不都合を有する。
直接圧縮プロセスは、圧縮された剤形を作製する、より単純でより経済的な手段を与えることができる。このようなプロセスにおいて、活性含有成分(例えば、生物学的に活性な含有成分,例えばビタミン、ハーブおよびミネラルのサプリメントおよび薬物)を賦形剤(すなわち、活性含有成分としては働かず、そして治療効果を有さないが、活性含有成分のための希釈剤、ビークルまたはバインダーとして用いられ、それ自体は、錠剤化のための必須の特性(例えば流動性、適切な粒子サイズ分布、結合力、許容できるバルクおよびタップ密度および/または溶解特性)を有することを特徴とする物質)と組合せる。得られるブレンド物は、従って、直接ダイキャビティまたは型に、圧密化のために、前造粒なしで提供できる。Shangraw,“Compressed Tablets by Direct Compression,”(Pharmaceutical Dosage Forms,2d Ed.,1989,Vol.1,pp.195−246中)を参照のこと。得られる圧縮剤形は、一般的に、固形剤形の必須の安定性、溶解または崩壊特性、錠剤−対−錠剤およびバッチの均一性ならびに他の望ましい特徴を与える。
該分野で用いられる物質は、直接圧縮ビークル(水溶性物質,例えば種々の形状のラクトース,例えばスプレー乾燥ラクトース、Fast Flow(商標)ラクトース、または無水ラクトース、更にスクロース、デキストロース、ソルビトール、マンニトールおよびマルトデキストリン、ならびに比較的不溶性の物質,例えば微結晶セルロース,例えばAvicel(商標)、スターチ、リン酸二カルシウム二水和物、および炭酸カルシウム等)の要求を実現させる度合いが変わる。米国特許第5,237,758号は、直接圧縮可能なポリエチレンオキサイドビークルの、直接圧縮可能な治療剤形の製造のための使用を開示する。米国特許第4,159,345号は、平均重合度60〜375、見掛け比体積1.6〜3.1cc/g、および安息角35〜42℃の微結晶セルロースの、高速直接圧縮における賦形剤としての使用を開示する。更に、錠剤およびカプセルの処方における流動促進剤としてヒュームドシリカを使用して粉末の流動を促進することが公知である。
本発明の1つの目的は、良好な流動性を有し、剤形用の賦形剤として有用である粒状物質、特に好適な硬度の錠剤を製造するためのものの提供である。本発明の好ましい目的は、剤形用の賦形剤として有用で、かつ、良好な流動性ならびに活性含有成分の剤形からの放出を遅延および/または制御(持続)する能力の組合された特性を有する粒状物質の提供である。本発明の更により好ましい目的は、剤形用の賦形剤として有用で、上記特性の良好な流動性および持続放出の能力を有し、そして剤形を製造するための直接圧縮プロセスにおいて有用な粒状物質の提供である。
発明の要約
従って、本発明の一側面は、平均粒径150〜800マイクロメートルを有し、圧密圧力266MPaに供したときに引張強度が少なくとも1.7MPaである圧密物(compact)をもたらす圧密化能(compactibility)を有し、主成分がセルロース誘導体、アルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物である、粒状物質である。
本発明の別の側面は、平均粒径150〜800マイクロメートルおよび沈降させていない状態での嵩密度(unsettled bulk density)0.1〜0.35g/cm3を有し、主成分がセルロース誘導体、アルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物である、粒状物質である。
本発明の更に別の側面は、上記粒状物質および活性含有成分を含む、剤形用の出発物質である。
本発明の更に別の側面は、上記粒状物質および活性含有成分を含む組成物から製造された、剤形である。
本発明の更に別の側面は、剤形を製造するための直接圧縮(compression)方法であって:a)活性含有成分、上記粒状物質、および1種以上の任意のアジュバントを、実質量の添加される溶媒または熱の不存在下でブレンドするステップ、ならびにb)得られる組成物を剤形に圧縮するステップを含む、方法である。
本発明の更に別の側面は、剤形を製造するための、上記粒状物質の使用である。
本発明の更に別の側面は、ポリマー粉末を粒状化する方法であって、流体床造粒機内でセルロース誘導体、アルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物を粒状化して、上記粒状物質を製造することを含む、方法である。
図1は、本発明の粒状物質で製造した医薬剤形の制御放出を、より小さい粒子サイズの公知の賦形剤で製造した医薬剤形と比較して示す。 図2は、種々の方法により粒状化した粒状物質の累積粒子サイズ分布を示す。 図3は、本発明の粒状物質から製造した圧密物および市販で入手可能な物質の引張強度を示す。
発明の詳細な説明
本発明の粒状物質は、平均粒子サイズ径が少なくとも150マイクロメートル、好ましくは少なくとも200マイクロメートル、より好ましくは少なくとも250マイクロメートルである。その平均粒子サイズ径は、800マイクロメートル以下、好ましくは500マイクロメートル以下、およびより好ましくは350マイクロメートル以下である。本明細書で用いる用語「平均粒子サイズ」は、D[4,3](等価体積平均(equivalent volume mean)とも規定される)を意味する。D[4,3]=Σd4/Σd3(式中、粒子の径dは、与えられる粒子の体積と同じ体積を有する球の直径である)。D[4,3]すなわち等価体積平均は、好ましくはRapidVue 5Xイメージアナライザ(Beckman Coulter,Inc.,Californiaから市販で入手可能)を用いて測定する。
本発明の粒状物質は良好な圧密化能を有する。圧密化能は、AlderbornおよびNystrom(Pharmaceutical Powder Compaction Technology,Marcel Dekker,New York,1996)によって、圧縮力の下で粉末床が圧密物に密着またはこれを形成する能力として規定する。
本発明の一側面において、粒状物質は、粒状物質を圧密圧力266MPaに供したときに、圧密強度が少なくとも1.7MPaの圧密物が形成されるような圧密化能を有する。好ましくは、粒状物質が、粒状物質を圧密圧力266MPaに供したときに、引張強度が少なくとも2.0MPa、より好ましくは少なくとも2.3MPaの圧密物をもたらす圧密化能を有する。一般的に、本発明の粒状物質の圧密化能は、粒状物質を圧密圧力266MPaに供したときに、圧密物が引張強度5MPa以下、典型的には4MPa以下、殆どの場合で3.5MPa以下を与えるようなものである。圧密圧力266MPa(10.3mm径錠剤パンチに適用される5000ポンドの力)は、錠剤を製造するためにプロセスにおいて典型的に適用される圧力である。圧密物の引張強度は、製造プロセスにおいて典型的に用いる圧力によって形成する場合、粒状物質の圧密化能の指標である。用語「引張強度」は破壊強度を意味し、これは、破断点での応力−歪み曲線に連携する応力を意味する。引張強度は、以下の式:引張強度=2P/(π)(t)(D)(式中、P=適用される負荷、t=圧密物の厚み(mm単位)、およびD=圧密物の径(mm単位))に従って算出できる。適用される負荷は、圧密物の破壊点での力であり、N(ニュートン)に変換される。(1N/mm2=1MPa;π=3.14159)。適用される負荷(すなわち、圧密物の破壊点での力)は、好ましくは、HT−300 Hardness Testerによって測定する。
製造される圧密物の引張強度を圧密圧力x(これに本発明の粒状物質を供する)の関数として表現する場合、典型的には直線が得られる。得られる傾きは、本発明の粒状物質の良好な圧密化能の別の指標である。
本発明の別の側面において、粒状物質は、沈降させていない状態での嵩密度0.1〜0.35g/cm3、好ましくは0.15〜0.30g/cm3、より好ましくは0.15〜0.25g/cm3を有する。沈降させていない状態での嵩密度は好ましくはScott Volumeterを用いて、例えばUnited States Pharmacopeia 30,<616>条 Bulk Density and Tapped Density,Method IIに記載されるように測定する。材料を漏斗内に、バッフルカラム経由で金属シリンダー内に既知体積注ぎ入れる。シリンダーが材料で溢れるまで装置内に材料を注ぎ入れる。過剰の粉末をスパチュラを用いて頂部から擦り取る。シリンダーを次いで計量して嵩密度を算出する。
好ましくは、本発明の粒状物質は上記の圧密化能および沈降させていない状態での嵩密度を組合せで有する。本発明者は、上記範囲内の沈降させていない状態での嵩密度が本発明の粒状物質の良好な圧密化能に寄与すると確信する。
本発明の粒状物質は、一般的に、粒子サイズ分布スパン0.75〜4、好ましくは0.75〜3、より好ましくは0.9〜2.5、最も好ましくは1〜2を有し、好ましくはイメージ分析法を用いてRapidVue 5Xイメージアナライザ(Beckman Coulter,Inc.,Californiaから市販で入手可能)で評価する。理論に拘束されることを望まないが、本発明者は、上記範囲内の粒子サイズ分布スパンが、持続放出剤形用の賦形剤に対して、特に直接圧縮プロセスにおいて使用する賦形剤に対して高度に所望される特性(例えば、錠剤−対−錠剤の物理特性の変動性が小さく、強く硬い錠剤をもたらす粒状物質の流れ、粒状物質の良好な圧密化能)の、活性含有成分の持続放出の再現可能な動態との組合せの特異なバランスに寄与することを確信する。粒子サイズ分布スパンは、[(d90−dl0)/d50](式中、dnは径であり、粒子のn質量パーセントがより小さい相当径(equivalent diameter)を有し、かつ(100−n)質量パーセントがより大きい相当径を有する)と定義する。例えば、d90は、粒子の90質量パーセントがこれよりも小さい相当径を有し、他の10質量パーセントがこれよりも大きい相当径を有するような径を意味する。相当粒子径dは、与えられる粒子の体積と同じ体積を有する球の直径である。
代替として、粒子サイズ分布スパンは、種々のスクリーンサイズのふるいを用いるふるい分析により評価できる。有利には、8メッシュ(スクリーンサイズ2360マイクロメートル)、12メッシュ(スクリーンサイズ1700マイクロメートル)、16メッシュ(スクリーンサイズ1180マイクロメートル)、20メッシュ(スクリーンサイズ850マイクロメートル)、30メッシュ(スクリーンサイズ600マイクロメートル)、40メッシュ(スクリーンサイズ425マイクロメートル)、50メッシュ(スクリーンサイズ300マイクロメートル)、70メッシュ(スクリーンサイズ212マイクロメートル)、100メッシュ(スクリーンサイズ150マイクロメートル)、140メッシュ(106マイクロメートル)、200メッシュ(スクリーンサイズ75マイクロメートル)および325メッシュ(スクリーンサイズ45マイクロメートル)のふるいを、本発明の粒状物質の粒子サイズ分布スパンの評価のためにそれぞれ用いる。既知スクリーンサイズを通過する物質の累積質量パーセントを評価する。データを、次いで、通過する物質の累積質量パーセント 対 既知スクリーンサイズとしてプロットして用いて本発明の粒状物質の粒子サイズ分布スパンを評価する。ふるい分析によって評価される粒子サイズ分布スパンを[(d’90−d’10)/d’50](式中、d’nは径であり、粒子のn質量パーセントがより小さい径を有し、かつ(100−n)質量パーセントがより大きい径を有する)と規定する。例えば、d’90は、ふるい分析によって評価したときに、粒子の90質量パーセントがこれよりも小さい径を有し、他の10質量パーセントがこれよりも大きい径を有するような径である。
本発明の粒状物質は、好ましくは、平均アスペクト比1〜2、より好ましくは1.4〜1.9、最も好ましくは1.6〜1.8を有する。粒子のアスペクト比は、最も小さい外接矩形の長さの幅に対する比として定義する。最も小さい外接矩形は、粒子を完全に包囲する最も小さい面積を有する矩形である。例えば、正方形によって外接されることができる粒子は、アスペクト比1を有する。本明細書で規定する平均アスペクト比は、粒子の平均長さの平均幅に対する比である。平均アスペクト比は、好ましくは、RapidVue 5Xイメージアナライザ(Beckman Coulter,Inc.,Californiaから市販で入手可能)を用いて測定する。
本発明の粒状物質は、剤形用の賦形剤として、特に持続放出剤形用の賦形剤(これは、これが活性含有成分の剤形からの長期間に亘る放出を管理する機能を有することを意味する)として有用である。用語「持続放出」は、本明細書において用語、長期放出(prolonged release);徐放(extended release);持続放出(sustained release);貯留放出(depot release);時間放出(time release);制御放出(controlled release);調節放出(modified release)または長期作用(持効)(prolonged action)と同義に用いる。「持続放出」は、これによって活性化合物(例えば生物学的に活性な化合物)が設計された速度および持続時間で意図する効果を達成できる手法である。例えば、経口制御放出薬物送達系は、所望の血漿プロファイルを実現するために、薬物の消化管内への放出を管理することによってその薬物の吸収速度を制御する手段または剤形である。これらの剤形は、低減された変動で、薬物の長期間に亘る遅く連続的な放出を介して血漿中で一定またはほぼ一定の薬物レベルを与えるように設計する。本発明の持続放出剤形において、一般的には0.75〜36時間、より好ましくは4〜30時間、および最も好ましくは8〜24時間かけて活性含有成分を剤形から放出させる。
本発明の粒状物質は、剤形用、特に持続放出剤形用の賦形剤として、種々の技術分野,例えばパーソナルケア、洗濯ケアまたは農業用途、水処理、および特に人間または動物のヘルスケア用途において、最も具体的には医薬用途(生物学的に活性な含有成分は、ビタミン、ハーブおよびミネラルサプリメントおよび薬物基質から選択される)において有用である。
粒状物質の主成分は、セルロース誘導体またはアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物である。セルロース誘導体またはアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーは、好ましくは水溶性であり、これは好ましくは水中の溶解性が、100グラムの蒸留水中25℃および1気圧にて、少なくとも2グラム、より好ましくは少なくとも3グラム、最も好ましくは少なくとも5グラムを有することを意味する。セルロース誘導体またはアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーは、一般的には、重量平均分子量少なくとも20,000、好ましくは少なくとも60,000、より好ましくは少なくとも80,000の下限を有する。重量平均分子量の好ましい上限は、ポリマーの種類、放出すべき活性含有成分の物理化学特性および所望時間量(これに亘り活性含有成分が放出されることになる)に大きく左右される。最適な持続放出特性を実現するために、セルロース誘導体またはアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーは、好ましくは重量平均分子量約100,000から最大10,000,000を有する。前記の範囲は例示の目的を意味し、これらはセルロース誘導体またはアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーの有用な適用を制限することを意図しない。
好ましいアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーは、エチレンオキサイドホモ−およびコポリマーである。用語「セルロース誘導体」は、変性されていないセルロース自体を包含しない。好ましいセルロース誘導体は、水溶性のセルロースエステルまたはセルロースエーテルである。好ましいセルロースエーテルは、カルボキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えば、カルボキシメチルセルロース;カルボキシ−C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース;C1−C3−アルキルセルロース,例えばメチルセルロース;C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはエチルヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;混合ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース;混合C1−C3−アルキルセルロース,例えばメチルエチルセルロース、またはアルコキシヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースであり、アルコキシ基は、直鎖または分岐であり、そして2〜8個の炭素原子を含有する。より好ましいセルロースエーテルは、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースであり、これらは当業者によって水溶性セルロースエーテルとして分類される。最も好ましい水溶性セルロースエーテルは、DSメトキシルが0.9〜2.8、好ましくは1.12〜2.04、およびMSヒドロキシプロポキシルが0.01〜1.14、好ましくは0.1〜0.34のヒドロキシプロピルメチルセルロースである。メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)は、米国薬局方(現行版)のそれぞれのモノグラフで与えられる手順に従って分析できる。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、METHOCEL K100M,METHOCEL K4M,METHOCEL K15M,およびMETHOCEL E4Mヒドロキシプロピルメチルセルロース)は、The Dow Chemical Companyから市販で入手可能である。特に有用なセルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの、ヒドロキシプロポキシル置換0.5〜32パーセント、およびメトキシル置換16〜32パーセントを有するもの、より好ましくヒドロキシプロポキシル置換4〜32パーセントおよびメトキシル置換16.5〜30パーセントを有するもの、および最も好ましくはヒドロキシプロポキシル置換4〜12パーセントおよびメトキシル置換19〜30パーセントを有するものである。水溶性セルロース誘導体は、一般的に、粘度5〜2,000,000cps(=mPa.s)、好ましくは50cps〜200,000cps、および最も好ましくは100〜100,000cpsを、好ましくは20℃の2質量パーセント水溶液としてキャピラリ粘度計を用いて測定したときに有する。代替として、粘度は、回転粘度計により測定できる。
一般的に、本発明の粒状物質の少なくとも60パーセント、好ましくは少なくとも80パーセント、より好ましくは少なくとも90パーセント、最も好ましくは少なくとも98パーセントは、セルロース誘導体またはアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物である。粒状物質は少量のアジュバント,例えばバインダー、または水のような液体の残留物(これらは、本発明の粒状物質を製造するために使用したものであることができる)を含んでもよいが、このようなアジュバントの量は、本発明の粒状物質の総質量基準で、一般的には40パーセント以下、好ましくは20パーセント以下、より好ましくは10パーセント以下、および最も好ましくは2パーセント以下である。
しかし、剤形は、1種以上の賦形剤および/またはアジュバントを、本発明の粒状物質に加えて含むことができることに留意すべきである。剤形は、好ましくは、セルロース誘導体またはアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物の量が、医薬剤形の総質量基準で10〜60パーセント、より好ましくは15〜50パーセント、最も好ましくは25〜40パーセントであるような量の本発明の粒状物質を含む。
本発明の粒状物質は、粉末形状の、セルロース誘導体またはアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物を、造粒ステップに供して、得られる粒子の、生成物パラメータの上記組合せを有するような部分を選択することによって得ることができる。種々の造粒方法が当該分野において公知であり、例えば、抽出、乾燥造粒(例えばローラー圧密化)、または、好ましくは、湿潤造粒のプロセスがある。粉末形状のポリマー(これは造粒において使用される)は、一般的に、平均粒径150マイクロメートル未満、殆どの場合120マイクロメートル未満を有する。
多くの造粒プロセスは、当該分野において公知であり、そしてしばしば、粒状化される粉末床上に働く剪断力の大きさによって分類される。例えば、所謂「低剪断造粒」は、通常、遊星ミキサーを用いて実現され、ここで垂直混合ブレードは、粉末を通って比較的低速で回転する。幾らかより大きい(すなわち「中程度」の)剪断力を造粒設備内で生成でき、ここで粉末をシリンダー状シェル内に閉じ込めて粉末を粒状化液体(これはバインダーを含有してもしなくてもよい)の存在下で、リボン型ブレードにより撹拌する。「高剪断造粒」は、典型的には、主な撹拌機またはインペラが高剪断および圧密力を粉末に加える(「プラウシェア」型ブレードおよびこれらが動く比較的高い回転速度の組合せで)設備内で行ない;加えて、設備はまた、一般的に、より小さく独立に制御される高速チョッパー(これは、造粒プロセスの間に生成される大きな塊を壊してばらばらにするように設計されている)を特徴とする。チョッパーはまた、粒状化液体を物質中により完全に組込む(これが、典型的にはスプレーノズル経由で混合容器に導入されるに従い)ことを助ける。高剪断造粒機の具体的な種類は、「ロディゲ(Lodige)造粒機」(最初の市販設備の名称にちなみ)という。ロディゲ造粒機は、特別に設計されたプラウシェアブレードおよび高速チョッパーを備える。得られる粒子の所望の部分は、公知の粒子−粒子分離技術,例えばふるい分けまたはスクリーニングによって選択できる。
本発明の粒状物質を得るための特に有用なプロセスは、流体床造粒(流動床造粒ともいう)である。このプロセスにおいて、結合液体を流動化粉末の床の中または上にスプレーする。好ましくは、結合液体を圧縮エアによって霧化(例えば二元ノズル中で、これを流動化粉末の床の中または上にスプレーする前に)する。粉末を公知の様式で、例えば加工容器の底部の分配板を介して垂直に流れるガスによって流動化する。結合液体は、一般的には水、有機溶媒またはこれらの混合物であり、これらは任意にバインダーまたは界面活性剤を含む。有用な有機液体はアルコールであり、好ましくは一官能アルコール(例えば、エタノール;アルケン、アルカン、ハロゲン化アルケン、ハロゲン化アルカン、エーテル、エステルまたは油,例えばパラフィン油、動物油または植物油である。最も好ましくは、結合液体は水である。有用なバインダーまたは界面活性剤は当該分野で公知である。これらの量は、存在する場合、液体の質量基準で、好ましくは0.5〜10パーセント、より好ましくは1〜5パーセントである。バインダーを使用する場合、粒状物質と同じ種類のセルロース誘導体またはアルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーをポリマーバインダーとして使用することが特に好ましい。スプレー可能な溶液を得るために液体中のポリマー質量およびポリマー濃度をどのように選択するかは当業者に公知である。一般的には、粉末形状のポリマーと結合液体との間の質量比は、0.33〜0.005:1、好ましくは0.25〜0.01:1、より好ましくは0.18〜0.02:1である。これらの質量比は、結合液体が水である場合に特に有用である。
驚くべきことに、本発明の粒状物質を得るための流動化床造粒プロセスの使用が、他の造粒プロセスに対して顕著な利点を有することを見出した。流動床造粒プロセスは、持続放出剤形用の賦形剤のために、特に直接加工プロセスにおいて使用する賦形剤のために重要な特性(例えば、錠剤−対−錠剤の物理特性の変動性が小さく、強く硬い錠剤をもたらす粒状物質の流れ、粒状物質の良好な圧密化能)の、活性含有成分の持続放出の再現可能な動態との組合せの特異なバランスを有する本発明の粒状物質を与える。本発明の粒状物質は、流体床造粒プロセスによって、効率的な様式で、造粒後に必要以上の量のスクリーニング/ふるい分けを必要とせずに得ることができる。特性のこの特異なバランスは、持続放出医薬剤形用の賦形剤に対して特に重要である。
本発明者は、狭い粒子サイズ分布スパンを有する本発明の粒状物質を得るために流体床造粒プロセスを用いることができることを見出した。粒子サイズ分布スパンは、上記で詳述するように評価する。驚くべきことに、流体床造粒によって得られる粒状物質が、他の造粒プロセス(例えば高剪断造粒)によって得られる粒状物質よりも顕著に狭い粒子サイズ分布スパンを有することを見出した。驚くべきことに、流体床造粒によって得られる粒状物質が、ロディゲ造粒によって得られる粒状物質よりも大幅に狭い粒子サイズ分布スパンを有することも見出した。理論に拘束されることを望まないが、本発明者は、本発明の流体床造粒プロセスによって得られる狭い粒子サイズ分布スパンが、特性の上記の特異なバランスに寄与することを確信する。
本発明者はまた、流体床造粒プロセスを用いて、良好な圧密化能を有する本発明の粒状物質を得ることができることを見出した。流体床造粒プロセスを用いて、高剪断造粒プロセスによって製造された比較の粒状物質に対して優れた圧密化能の粒状物質を得ることができることを見出した。特に、流体床造粒プロセスを用いて、ロディゲ造粒によって製造された比較の粒状物質に対してかなり優れた圧密化能を有する粒状物質を得ることができることを見出した。粒状物質の優れた圧密化能が、剤形(例えば錠剤)(これは活性含有成分、粒状物質および1種以上の任意のアジュバントを含む組成物から製造される)に引き継がれることもまた見出した。本発明の粒状物質を用いる場合、圧縮された剤形(例えば錠剤)はより高い硬度(直径破砕強度としても公知)を有する。当業者は、典型的には、圧縮された錠剤の機械特性を、硬度または破砕強度について定量化する。
上記の粒状物質は、特異な組合せの特徴(剤形中、例えば医薬剤形中の賦形剤としてこれらを極めて有用にする)を有する。粒状物質は良好な流動特性を有する。これは、効率的に、生物学的に活性な含有成分および所望であれば1種以上の任意のアジュバントと、実質量の添加溶媒または熱の不存在下であってもブレンドできる。1種以上の上記の粒状物質および1種以上の活性含有成分を1種以上の任意のアジュバントとブレンドして剤形を作製できることを理解すべきである。好ましくは、ブレンドプロセスはほぼ室温で行なう。
多種多様な活性含有成分が有用であり、剤形の意図する最終用途に左右される。活性含有成分は当該分野で公知であり、中でも、ランドリーケア用途用の洗剤または界面活性剤;肥料、除草剤または殺虫剤(農業用途において長期間に亘って生物活性剤を放出するために設計された処方におけるもの)が挙げられる。広範囲の生物学的に活性な含有成分は有用であり、例えばビタミン、ハーブおよびミネラルのサプリメントおよび薬物がある。生物学的に活性な含有成分としては、疎水性、親水性および両親媒性の化合物が挙げられる。生物学的に活性な含有成分は、適応症,例えば例としては、限定されるものではないが、炎症、通風、高コレステロール血症、微生物感染症、AIDS、結核、真菌感染症、アメーバ感染症、寄生虫感染症、悪性腫瘍、臓器拒絶、糖尿病、心不全、関節炎、喘息、疼痛、鬱血、尿路感染症、膣感染症、発作関連障害、うつ病、精神病、痙攣、糖尿病、血液凝固、高血圧症および避妊を処置するために使用できる。医薬剤形中に詰められる生物学的に活性な含有成分の量は、化合物の薬理活性、処置される適応症、目的の投与計画、投与の計画方法、最終組成の完全性もしくは安定性または他のこのような理由に従って変動する。
活性含有成分の量は、一般的に少なくとも0.5パーセント、好ましくは少なくとも1パーセント、より好ましくは少なくとも5パーセント、最も好ましくは少なくとも10パーセント(剤形の総質量基準)であり、一般的に、75パーセント以下、好ましくは65パーセント以下、より好ましくは55パーセント以下、最も好ましくは45パーセント以下(剤形の総質量基準)である。活性含有成分は、一般的には固体であり、そして好ましくは上記で更に規定する平均粒子サイズ径1〜500マイクロメートルを有する。有用な任意のアジュバントは当該分野で公知であり、そして一般的には固体であり,例えば1種以上のフィラー、顔料、色剤、香料、崩壊剤、バインダー、可塑剤、塩、酸性および塩基性のpH調整剤、酸化防止剤ならびに/または潤滑剤である。このようなアジュバントの例は、アカシア、コーンスターチ、グアーガム、ポテトスターチ、アルギン酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム、微結晶セルロース、糖、ミネラル、セルロース粉末またはセルロース繊維である。任意のアジュバントは、一般的には固体であり、そして好ましくは上記で更に規定する平均粒子サイズ径1〜500マイクロメートルを有する。
本発明の、1種以上の本発明の粒状物質のブレンド物、1種以上の活性含有成分および1種以上の任意のアジュバントは、良好な流動特性を有し、そして最小限の偏析を示し、これはブレンド物が優れた均一性を示すことを意味する。これにより、ブレンド物が部分に分けられる場合、活性含有成分の量は本質的に全ての部分で同じであることが意味される。ブレンド物は、直接カプセル中に充填できるか、または直接圧縮プロセスに供して錠剤または類似の剤形を生成できる。ブレンド物のカプセル充填手段または圧縮手段への効率的な供給により、均一質量の剤形が可能になる。良好な粉末流れ、最小限の偏析および良好な圧密化能の組合せは、ブレンド物が直接圧縮プロセスにおいて、実質量の添加溶媒、熱または追加の加工ステップの不存在下であっても効率的に加工されることを可能にする。用語「実質量の添加溶媒または熱の不存在下」により、溶媒または熱を活性含有成分と粒状物質とのブレンド物に十分量で添加せずにブレンド物の更なる造粒を行なうことが意味される。好ましくは、直接圧縮プロセスは、いずれの量の添加溶媒または熱も不存在下で実施する。
錠剤を製造するための直接圧縮プロセスは当該分野で公知である。典型的には、圧密圧力150MPa〜375MPaが、良好な品質の錠剤を製造するのに十分である。本発明の直接圧縮プロセスは、剤形の処方者が1種以上の活性含有成分と1種以上の賦形剤とのブレンド物を、ブレンド物を錠剤に圧縮する前に湿潤造粒ステップに供する必要性を排除する。湿潤造粒ステップは、湿潤化、乾燥およびスクリーニングのステップを含み、これは湿度感受性または熱感受性の薬物には望ましくない。本発明の直接圧縮プロセスはまた、複雑な乾燥造粒プロセスの必要性を排除する。加えて、直接圧縮プロセスによって形成される生成物は、湿潤または乾燥の造粒プロセスを用いる場合に製造されるものよりも低コストである。
驚くべきことに、優れた薬物放出プロファイルを有する持続放出医薬剤形は、粒状物質が米国特許第4,734,285号における持続放出医薬剤形のために推奨されるものよりも大幅に大きい平均粒子サイズを有する場合であっても製造できることを見出した。
粒状物質はまた、剤形のコーティングとして、特に圧縮コーティングとして使用して、活性含有成分の放出を制御できる。しかし、より好ましくは、粒状物質は剤形のマトリクスの少なくとも一部を形成する。
本発明を、本発明の範囲を限定すると解釈すべきでない以下の例によって更に説明する。特記がない限り全ての部およびパーセントは質量基準である。
比較例Aおよび実施例1
以下に示すヒドロキシプロピルメチルセルロースの平均粒子径、平均アスペクト比および粒子サイズ分布スパンを、RapidVue 5Xイメージアナライザ(Beckman Coulter,Inc.,Californiaから市販で入手可能)を用いて測定する。
比較例Aの賦形剤
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(The Dow Chemical Companyから、商標METHOCEL K4M Premium CR Gradeにて市販で入手可能)を比較例Aで用いる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、メトキシル量19〜24パーセント、ヒドロキシプロポキシル量7〜12パーセント、公称粘度約4000mPa.s、および下記表1に列挙する物理特性を有する。この、微粒子サイズの非粒状化ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、医薬制御放出錠剤用の賦形剤として有用であることが公知である。
実施例1の粒状物質の製造
比較例Aで記載するヒドロキシプロピルメチルセルロースは、流体床造粒機内で、水を粒状化流体として用いて粒状化する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの質量基準で約28%の水を用いる。Glatt,モデルGPCG−300流体床系を造粒のために用いる。Glatt造粒機は、内蔵ファン、エアヒーター、スプレーノズルおよび集塵機を有する円錐流体床系である。造粒したヒドロキシプロピルメチルセルロースは、下記表2に列挙する物理特性を有する。本発明の粒状物質を医薬制御放出錠剤用の賦形剤として用いることを試験する。
実施例1および比較例Aのブレンド物の調製
比較例Aおよび実施例1の賦形剤を、下記表1および2に列挙する他の含有成分とV−ブレンダー内で10分間ドライブレンドして医薬組成物を調製する。
Figure 2010523688
Figure 2010523688
比較例Aおよび実施例1のブレンド物の流動を、市販で入手可能なAeroFlow(登録商標)テスターで測定する。Aeroflowはブレンド物のアバランシェ(なだれ)挙動を測定する。なだれ間の時間がより短いことは、より良好に流動するブレンド物であることを示す。比較例Aのブレンド物がなだれを起こすまでの平均時間(MTA)は、9.1秒であり、そして実施例1のブレンド物のMTAは5.5秒である。これは、本発明の粒状物質を含む実施例1のブレンド物が、微粉末形状の対応の賦形剤を有する対応のブレンド物と比べて改善された流動特性を有することの指標である。実施例1のブレンド物の改善された流動性の追加の指標は、出口サイズ2.25”(約5.715cm)の錠剤プレスホッパーを通る物質の自由流動により証明されるが、比較例Aのブレンド物はホッパーを通って自由には流動せず、そして外部振動の適用なしではホッパー出口上で曲がる。
錠剤製造
表1および2に記載するブレンド物を、直接圧縮プロセスに従って錠剤に圧縮する。錠剤は、目的錠剤質量が各400mgであるManesty Beta Tablet Pressを用いて形成する。プレスで用いる工具は、10.3mm径で丸型の平坦面およびベベルエッジのものである。錠剤プレスは、速度約17RPM(毎分の回転数)に設定し、そして錠剤は、目的圧縮力5000lb(22.2kN)で圧縮し、圧密圧力266MPaを生成する。ブレンド物を約40分間続く各実施で錠剤化する。
各錠剤を、分析用天秤を用いて計量し、次いで各錠剤をHT−300Hardness Testerを用いて破砕する。下記表3は、比較例Aおよび実施例1のブレンド物間の比較を示す。実施例1のブレンド物は、目的の錠剤質量を実現し、そして比較例Aのブレンド物から形成されるものよりも大幅に小さい錠剤対錠剤変動を示す。錠剤−対−錠剤変動がより小さいことは、実施例1の物質の優れた流動特性の指標である。
下記表3はまた、2つの処方の間の錠剤硬度値の比較を示す。実施例1のブレンド物から製造される錠剤の錠剤硬度は、比較例Aのブレンド物から製造される錠剤よりも若干低いが、錠剤−対−錠剤の硬度の変動は、錠剤を実施例1のブレンド物から製造する場合、比較例Aのブレンド物からの場合よりも大幅に低い。実施例1の処方から製造される錠剤の硬度は、工業で典型的に要求される値を超える。典型的に許容される錠剤硬度の工業値はこのサイズの錠剤について7kp以上(1kp=1キロポンド,キログラム−力と等価)である。
錠剤の持続放出性能もまた比較する。薬物酒石酸メトプロロールの制御または持続される放出は、各処方から6錠剤を用いて測定する。錠剤は、脱イオン水中に、Varian Total Solution w/Dual VK 7025溶解システム(市販で入手可能)を用いて溶解させる。図1に示すように、比較例Aおよび実施例1の錠剤の溶解プロファイルはほぼ重なり、2つの処方が同レベルの制御放出性能を与えることを示す。加えて、表3は、各処方について5時間後に放出される薬物の量が同じであることを示す。
Figure 2010523688
比較例Aおよび実施例1において得られる結果は、本発明の粒状物質が、持続放出医薬剤形の他の含有成分とブレンドした場合であっても、微粉末形状の対応の賦形剤と比べて改善された流動性を有することを示す。比較例Aおよび実施例1において得られる結果はまた、本発明の粒状物質が、持続放出医薬剤形(例えば錠剤)を、微粉末形状の対応の賦形剤と比べてより小さい錠剤−対−錠剤変動の錠剤物理特性で生成することを示す。これらの利点は、極めて類似または更には本質的に同一の持続薬物放出プロファイルを実現する一方で得られる。持続放出プロファイルを得るためには小さい粒子サイズの賦形剤が高度に好適であるという公知の事実に鑑み、大幅により大きい平均粒子サイズの粒状物質で本質的に同じ持続薬物放出プロファイルを得ることができることは極めて驚くべきことである。実施例1の賦形剤の平均粒径は、微粉末形状の比較例Aの賦形剤の平均粒径の2倍以上である。
実施例2および比較例B
種々の造粒方法を試験する。
ロディゲ造粒機における造粒
5リットルのロディゲM5Rプラウシェアミキサーを用いてMETHOCEL K4M Premium CR Gradeヒドロキシプロピルメチルセルロースを水の存在下で凝集させる。600グラムの乾燥物質をミキサーに充填して200グラムの水を注入し、そしてヒドロキシプロピルメチルセルロースと5分間混合する。混合を改良するために、主ブレードを速度300rpmで運転し、そして高速(3600rpm)チョッパーブレードは、プロセスのこの湿潤化/凝集段階の間、操作中である。湿潤物質は33パーセント湿度を含有し、湿度量が4質量パーセント未満に低下するまで乾燥させる。プロセスのこの乾燥段階の間は主ブレード速度を低下させチョッパーブレードを止めて、粒状化された物質が過度にばらばらになることを防止する。
高剪断造粒機における造粒
約1.5kgのMETHOCEL K4M Premium CR Gradeヒドロキシプロピルメチルセルロースを、METHOCEL K3 Premium LVヒドロキシプロピルメチルセルロースの2%溶液の存在下で粒状化する。高剪断造粒機を、300rpm主ブレード速度および1500rpmサイドチョッパー速度を用いて操作する。製造される湿潤粒状物質は、実験室スケールCoMil(スクエア穴スクリーンを備え、1000rpmで操作する)を用いて湿潤ミルする。湿潤粒状物質を1晩トレー乾燥させる。乾燥した物質を、同じ実験室スケールCoMil(グレーター型(grater-type)スクリーンを備え、1000rpmで操作する)を用いて乾燥ミルする。ミル後、1180ミクロン超の顆粒を試験前に除去する。
流体床造粒機における造粒
同じGlatt,model GPCG−300、流体床系を用いて実施例1でのようにサンプルを粒状化する。50℃に加熱したエアをコーン底部の分散板を介して上へ注入し、粉末化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを流体化させる。結合剤としての水を、スプレーノズル(噴霧圧力30psia)経由でスプレー速度900グラム毎分にて流体床中間部に下向きに注入して、固体粒子を湿潤化する。約28パーセント(乾燥粉末の質量基準)の水を注入した後、湿潤化したヒドロキシプロピルメチルセルロースを流体床内で60℃で乾燥させて最終揮発物量を3質量%未満とする。各実施についての総時間は約35〜50分間である。
製造される粒状物質の粒子サイズ分布は、ふるい分析によって、6メッシュ(スクリーンサイズ3350マイクロメートル)、8メッシュ(スクリーンサイズ2360マイクロメートル)、12メッシュ(スクリーンサイズ1700マイクロメートル)、16メッシュ(スクリーンサイズ1180マイクロメートル)、20メッシュ(スクリーンサイズ850マイクロメートル)、30メッシュ(スクリーンサイズ600マイクロメートル)、40メッシュ(スクリーンサイズ425マイクロメートル)、50メッシュ(スクリーンサイズ300マイクロメートル)、70メッシュ(スクリーンサイズ212マイクロメートル)、100メッシュ(スクリーンサイズ150マイクロメートル)、140メッシュ(106マイクロメートル)、200メッシュ(スクリーンサイズ75マイクロメートル)および325メッシュ(スクリーンサイズ45マイクロメートル)のそれぞれのふるいを用いて評価する。データを、次いで、通過する物質 対 与えられるスクリーンサイズの累積パーセントとしてプロットする。図2は、累積粒子サイズ分布(累積PSD)を示す。これは与えられるサイズよりも小さい粒子の累積パーセントである。粒子サイズ分布カーブ(「供給」と規定されるもの)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース微粉末(The Dow Chemical Companyから商標METHOCEL K4M Premium CR Gradeにて市販で入手可能のもの)の粒子サイズ分布である。粒子サイズ分布スパンは、更に上記される累積粒子サイズ分布に基づいて評価する。
Figure 2010523688
表4および図2における結果は、流体床造粒プロセスによって得られる狭い粒子サイズ分布スパンを、他の粒子造粒技術との比較で示す。
ロディゲ造粒機、高剪断造粒機、および流体床造粒機において粒状化したMETHOCEL K4M Premium CR Gradeヒドロキシプロピルメチルセルロースを、単独ステーションCarverプレスを用いて圧密物に圧縮する。目的質量は各300mgである。圧密物は、目的圧縮力5000lb(22.2kN)で圧縮し、圧密圧力266MPaを生成する。各錠剤をHT−300Hardness Testerを用いて破砕してその硬度を評価する。圧密物の引張強度を、下記式:引張強度=2P/(π)(t)(D)(式中、P=適用される負荷、t=圧密物の厚み(mm単位)、およびD=圧密物の径(mm単位))に基づいて算出する。適用される負荷は、HT−300硬度試験機によって圧密物の破壊点で測定される力であり、N(ニュートン)に変換される。(1N/mm2=1MPa;π=3.14159)。
比較例Bに従い、目的質量各300mgの圧密物を、同じ様式で、市販で入手可能な競合ポリマー物質Bからプレスする。これは良好な粉末流動特性を有することを目的とする。競合ポリマー物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、メトキシル量19〜24パーセント、ヒドロキシプロポキシル量7〜12パーセント、公称粘度約4000mPa.s、平均粒径約200マイクロメートル、粒子サイズ分布スパン約1、平均アスペクト比約1.6および沈降させていない状態での嵩密度約0.45g/cm3を有するものである。
下記表5は、上記のロディゲ造粒機、高剪断造粒機、および流体床造粒機を用いて粒状化された実施例2の粒状物質からプレスされる圧密物、および市販で入手可能な競合ポリマー物質Bからプレスされる圧密物の引張強度を示す。
Figure 2010523688
流体床造粒を介して形成されるヒドロキシプロピルメチルセルロース圧密物についてのより高い引張強度は、この粒状物質の、高剪断造粒およびロディゲ造粒を介して形成されるヒドロキシプロピルメチルセルロース圧密物に対する改善された圧密化能特性を示し、これは次には、比較例Bに係る競合のヒドロキシプロピルメチルセルロース物質に対して改善された圧密化能特性を示す。比較例Aの非粒状化METHOCEL K4M Premium CR Gradeヒドロキシプロピルメチルセルロース(これは、種々の造粒方法のための供給物質として用いる)からの圧密物は優れた引張強度を有するが、粉末形状の供給物質は不十分な流動特性を有する(実施例1および比較例Aに示す通り)。
図3は、圧密物の引張強度を、圧密圧力xの関数で、a)流体床造粒を介して形成される本発明の粒状物質、およびb)比較例Bの物質について示す。図3は、流体床造粒を介して形成される本発明の粒状物質から形成される圧密物が、より高い引張強度を有するのみでなく、より高い傾きΔy/Δxも示すことを示す。
本発明の粒状物質の優れた圧密化能は、下記表6に示すように、実施上の意義を医薬処方に持ち越す。表6に列挙する組成の医薬処方を調製する。各処方からの錠剤は、Manesty Beta Tablet Pressを用いて、目的錠剤質量各400mgおよび目的圧縮力22.2kN(5000ポンド力)で形成し、圧密圧力266MPaを生成する。プレスにおいて用いる工具は13/32”(10.3mm)、丸型の平坦面およびベベルエッジのものである。各錠剤を、分析用天秤を用いて計量し、次いで各錠剤をHT−300Hardness Testerを用いて破砕する。示される硬度値は10錠剤の平均である。
Figure 2010523688

Claims (25)

  1. 平均粒径150〜800マイクロメートルを有し、圧密圧力266MPaに供したときに引張強度が少なくとも1.7MPaである圧密物をもたらす圧密化能を有し、主成分がセルロース誘導体、アルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物である、粒状物質。
  2. 沈降させていない状態での嵩密度が、0.1〜0.35g/cm3である、請求項1に記載の粒状物質。
  3. 平均粒径150〜800マイクロメートルおよび沈降させていない状態での嵩密度0.1〜0.35g/cm3を有し、主成分がセルロース誘導体、アルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物である、粒状物質。
  4. 圧密圧力266MPaに供したときに引張強度が少なくとも1.7MPaである圧密物をもたらす圧密化能を有する、請求項3に記載の粒状物質。
  5. 粒子サイズ分布スパンが0.75〜4である、請求項1〜4のいずれかに記載の粒状物質。
  6. 粒子サイズ分布スパンが0.75〜3である、請求項5に記載の粒状物質。
  7. 粒子サイズ分布スパンが1〜2である、請求項6に記載の粒状物質。
  8. 平均アスペクト比が1〜2である、請求項1〜7のいずれかに記載の粒状物質。
  9. 平均粒径が200〜500マイクロメートルである、請求項1〜8のいずれかに記載の粒状物質。
  10. 圧密圧力266MPaに供したときに引張強度が2〜4MPaである圧密物をもたらす圧密化能を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の粒状物質。
  11. 沈降させていない状態での嵩密度が、0.15〜0.25g/cm3である、請求項1〜10のいずれかに記載の粒状物質。
  12. 剤形用賦形剤である、請求項1〜11のいずれかに記載の粒状物質。
  13. 持続放出剤形用の賦形剤である、請求項12に記載の粒状物質。
  14. 医薬剤形用の賦形剤である、請求項12または13に記載の粒状物質。
  15. 主成分が水溶性セルロースエーテルまたは水溶性セルロースエステルである、請求項1〜14のいずれかに記載の粒状物質。
  16. 主成分が、ヒドロキシプロポキシル置換4〜12パーセントおよびメトキシル置換19〜30パーセントを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項15に記載の粒状物質。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載の粒状物質および活性含有成分を含む、剤形用の出発物質。
  18. 請求項1〜17のいずれかに記載の粒状物質および活性含有成分を含む組成物から製造される、剤形。
  19. 医薬剤形である、請求項18に記載の剤形。
  20. 持続放出剤形である、請求項18または19に記載の剤形。
  21. 医薬剤形の総質量基準で10〜60パーセントの、セルロース誘導体、アルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物を含む、請求項18〜20のいずれかに記載の剤形。
  22. 粒状物質が剤形のマトリクスの少なくとも一部を形成する、請求項18〜21のいずれかに記載の剤形。
  23. 剤形を製造するための直接圧縮方法であって:
    a)活性含有成分、請求項1〜16のいずれかに記載の粒状物質、および1種以上の任意のアジュバントを、実質量の添加される溶媒または熱の不存在下でブレンドするステップ、ならびに
    b)得られる組成物を剤形に圧縮するステップ
    を含む、方法。
  24. 剤形を製造するための、請求項1〜16のいずれかに記載の粒状物質の使用。
  25. ポリマー粉末を粒状化する方法であって、流体床造粒機内でセルロース誘導体、アルキレンオキサイドホモ−もしくはコポリマーまたはこれらのブレンド物を粒状化して、請求項1〜16のいずれかに記載の粒状物質を製造するステップを含む、方法。
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