JP2010287564A - 電気化学素子用電解質およびその電気化学素子 - Google Patents

電気化学素子用電解質およびその電気化学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、電気化学素子のための新規添加剤を含む電解質と、その電気化学素子とを提供する。
【解決手段】その添加剤は、下記式(I):
Figure 2010287564

(式中、Rは、本明細書に定義されており、nは、2、3、または4である)で表される化合物である。本発明の添加剤は、アノード上の炭素質材料の表面を保護し、剥離の発生を抑制することにより、電気化学素子の寿命を向上させることができる。さらに、本発明の添加剤は、充放電サイクル中のカソード上の容量の減衰も遅らせ、こうしてより良好な性能を維持する。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気化学素子に関し、より詳細には、劣化の発生を抑制するのに有用な電解質添加物、およびそれを有する電気化学素子に関する。
近年、省エネ技術を研究する傾向が高まっている。携帯電話、カムコーダー、ノート型パソコンなどのいくつかの局面において、充電式電池が広く利用されている。二次電池により関心がもたれる関連分野についても広範囲に研究が行われている。二次電池については、主にエネルギー密度とそのサイクル寿命を高めることが研究されている。
現行の二次電池において、リチウム二次電池は1990年代に開発されたものである。水性電解質を用いた従来の電池(ニッケル水素化物電池、ニッケルカドミウム電池、および鉛酸電池など)と比較して、リチウムイオン二次電池は、高い使用電圧とエネルギー密度を有する。したがって、人々はリチウムイオン二次電池の研究に多くの時間を投じている。しかしながら、リチウムイオン二次電池の欠点のひとつに、充放電サイクルを繰り返す間に容量が減衰することがある。リチウムイオン電池の容量が大きいほど、この問題は深刻になる。したがって、リチウムイオン電池の寿命をさらに向上させる必要がある。リチウム電池の寿命を向上させる一つの手法としては、適切な添加剤によって電解質組成を改変することがある。
リチウムイオン電池の電解質において、カーボネート系有機化合物が溶媒として広く用いられている。それらは、構造および特性によって簡単に次の2つの群に分けられる。一方の群は、炭酸エチレン(EC)や炭酸プロピレン(PC)などの高い誘電率と粘性を有する環状カーボネートであり、他方の群は、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)および炭酸エチルメチル(EMC)などの低い誘電率と粘性を有する直鎖状カーボネートである。理想的な電解質は、高い誘電率と低い粘性とを同時に有していなければならない。したがって、一般的な電解質は、誘電率と粘性の両方の要求される特性を得るために、環状カーボネートと直鎖状カーボネートとの混合物を含んでいる。
しかしながら、ECおよびPCはそれぞれ次のような特性を有している。最初の充電工程において、ECは、アノード表面上に、固体電解質界面(SEI)などの安定した不活性化層を形成して、アノード材料が剥離するのを防ぐことができるが、PCはこれを行えない。しかしながら、ECは37℃(ECの融点)未満でその流動性を失うため、低温下においては電池の充放電性能が悪くなる。反対に、PCは融点が低い(−49℃)ことから、低温下でも良好な流動性を持つものの、充電過程の間に黒鉛層中にリチウムイオンとのコインターカレーションを引き起こしやすく、有害な黒鉛の剥離につながることになる。したがって、PCの含量が高すぎると、通常は電池の寿命が短くなる。
上記の問題を解決するために、市販の電解質においては、通常ECとPCの混合物を用いて、上記の欠点を回避し、電池の性能を高めている。溶媒の比率を調節する以外では、添加剤を用いることが、電池の寿命、容量、低温性能を向上させるための最も有効な方法である。それにもかかわらず、炭酸、亜硫酸、硫酸、リン酸ビニレンまたはその誘導体などの一般的な添加剤は、高額であるだけでなく、辛うじて満足な効果を有するにすぎない。
この点において、特許文献1は、リチウムイオン二次電池における電解質の添加物として使用されるアクリル酸化合物を開示している。この添加物(アクリル酸)は、リチウムイオン二次電池におけるガス還元とアノードの減衰を抑制することができる。さらに、特許文献2は、リチウムイオン二次電池における電解質の添加物として使用される、少なくとも3つのアクリルアルデヒド基を有するアクリル酸化合物を開示している。この化合物は、アノード上での還元反応によって、固体電解質界面(SEI)層を形成することができる。SEI層は、電解質の劣化を抑制し、電池のサイクル寿命を向上させることができる。さらに、特許文献3は、リチウムイオン二次電池における電解質の添加物として使用される重合可能な二重結合を有したアクリル酸化合物を開示している。このアクリル酸化合物もまたSEI層を形成する効果を有する。
既存の技術に基づいて、我々は、炭素質材料の表面上に安定なSEI層を形成して、その剥離を抑制することによりリチウムイオン二次電池の寿命をさらに向上させるために有用な新規なリチウムイオン二次電池の添加物を開発することを望んでいる。
特開2002−158034号公報 特開2003−168479号公報 国際公開第2008/050971号パンフレット
従来技術の欠点に鑑みて、本発明の1つの目的は、リチウムイオン二次電池などの電気化学素子のための電解質を提供することにある。新しい添加剤を用いることにより、アノードの炭素質材料の表面上に安定なSEI層を形成して、剥離の発生を抑えることにより電池の寿命を向上させることができる。さらに、この電解質は、充放電サイクル中のカソード上での容量の減衰を遅らせるのにも有益である。したがって、より良好な性能を長く維持することができる。
本発明の他の目的は、前記電解質を用いた電気化学素子を提供することにある。電解質が新規な添加剤を有しているので、アノードの炭素質材料の表面上に安定なSEI層を形成して、剥離の発生を抑えることにより電池の寿命を向上させることができる。さらに、電解質は、充放電サイクル中のカソード上での容量の減衰を遅らせるのにも有益である。したがって、より良好な性能を長く維持することができる。
上記の目的を達成するために、本発明は、1.18〜35.4重量%の塩と、0.1〜9重量%の下記式(I):
Figure 2010287564
(式中、Rは、非置換の、または置換基1つ以上で置換された脂肪族または芳香族残基であり、前記置換基は、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C10アリール、C〜C10アリールオキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルコキシ、C〜Cカルボキシ、および硫黄の1つ以上からなる群より選択され、nは、2、3、または4であり、ここで脂肪族または芳香族残基中のメチレン基(−CH−)の1つ以上は独立して、酸素(−O−)、C〜C10アリーレン、C〜C10シクロアルキレン、
Figure 2010287564
により置換されていてもよい)で表される化合物と、100重量%までの補足物としての有機溶媒とを含む電気化学素子用電解質を提供する。
式(I)で表される前記化合物は、電解質の添加剤として使用される場合、電気化学素子におけるアノードの炭素質材料の表面上に、特別のSEI層を形成することができる。前記特別のSEI層は、炭素質材料の構造を保護することができるだけでなく、充放電サイクル中の剥離の発生を抑制することもできる。したがって、それは、電池の寿命を向上させることができる。さらに、従来の添加剤であるプロパンスルトン(PS)および炭酸ビニレン(VC)と比較して、本発明の添加剤は、PC電解質中での炭素質材料の耐久性を高めることができ、より少量の添加剤で炭素質材料を保護する効果を達成することができる。さらに、その添加剤は、充放電サイクル中のカソード上の容量の減衰を遅らせるのに有用であり、こうしてより良好な性能を長い間維持する。
好ましくは、本発明の添加剤は、下記式:
Figure 2010287564
Figure 2010287564
を含む。
好ましくは、式(I)で表される化合物の量は、0.1〜9.0重量%である。より好ましくは、式(I)で表される化合物の量は、0.5〜5重量%である。
好ましくは、塩の量は、5.9〜23.6重量%である。好ましくは、前記有機溶媒は、環状炭酸塩、直鎖状炭酸塩、ラクトン、エーテル、エステル、アセトニトリル、ラクタム、ケトン、およびそれらのハロゲン誘導体からなる群より選択される。より好ましくは、有機溶媒は、環状炭酸塩と直鎖状炭酸塩との混合物である。
好ましくは、前記塩のカチオンは、Li、Na、およびKからなる群より選択され、前記塩のアニオンは、PF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、およびC(CFSO からなる群より選択される。
本発明は、アノードと、カソードと、本発明の電解質とを含む電気化学素子も提供する。
好ましくは、前記電気化学素子は、リチウムイオン二次電池である。
さらに本発明は、電解質の添加剤として用いるための式(I)で表される化合物の用途も提供する。
上記より、本発明の電気化学用電解質において、新しい添加剤が用いられる。この新しい添加剤は、アノードの炭素質材料の表面上に特別のSEI層を形成して、剥離の発生を抑制することにより、電池の寿命を向上させることができる。さらに、新しい添加剤は、カソード上での容量の減衰を遅らせることができる。従来の電解質の添加剤(プロパンスルトン(PS)および炭酸ビニレン(VC)など)と比較して、新しい添加剤は、剥離発生の抑制に対し、より優れた効果を有する。
(A)本発明の実施例1の電池による充放電試験の結果を示す図。(B)本発明の比較例2の電池による充放電試験の結果を示す図。 (A)本発明の比較例3の電池による充放電試験の結果を示す図。(B)本発明の比較例4の電池による充放電試験の結果を示す図。 本発明の比較例5の電池による充放電試験の結果を示す図。 (A)本発明の実施例2−1の電池による充放電試験の結果を示す図。(B)本発明の実施例2−2の電池による充放電試験の結果を示す図。 (A)本発明の実施例2−3の電池による充放電試験の結果を示す図。(B)本発明の実施例2−4の電池による充放電試験の結果を示す図。 (A)本発明の実施例2−5の電池による充放電試験の結果を示す図。(B)本発明の実施例2−6の電池による充放電試験の結果を示す図。 本発明の比較例6の電池による充放電試験の結果を示す図。 本発明の実施例3および比較例7の電池によるサイクル寿命試験の結果を示す図。 比較例8、実施例4−1、4−2、および4−3の電池による第1サイクルの充放電曲線。 比較例9、実施例5−1、5−2、および5−3の電池による第1サイクルの充放電曲線。 比較例10および実施例6の電池によるサイクル寿命試験の結果を示す図。
上述のように、本発明の電気化学素子用の電解質において、新しい添加剤が用いられる。新しい添加剤は、アノードの炭素質材料の表面上に特別のSEI層を形成することができる。この特別のSEI層は、炭素質材料の構造を保護できるだけでなく、充放電サイクル中の剥離の発生を抑制することもでき、結果として電池寿命が向上する。さらに、新しい添加剤は、PC電解質中での炭素質材料の耐久性を高めることができるだけでなく、従来の添加剤(PSおよびVC)と比べて、より少量の添加剤で炭素質材料を保護する効果を達成することができる。さらに、添加剤は、充放電サイクル中のカソード上の容量の減衰を遅らせて、より良好な性能を長い間維持するのにも有用である。
本発明において用いる有機溶媒は、主として、100重量%までの電解質の補足物として用いられる。好ましい実施形態において、溶媒の量は、好ましくは64.5〜98.81重量%、より好ましくは76.4〜94.1重量%である。しかし、溶媒の量を必要に応じて調整できることを、理解すべきである。本発明において用いる有機溶媒は、従来の有機溶媒、たとえば、限定はされないが、環状炭酸塩、直鎖状炭酸塩、ラクトン、エーテル、エステル、アセトニトリル、ラクタム、ケトン、またはそのハロゲン誘導体であってもよい。好ましくは、有機溶媒は、少なくとも1つの環状炭酸塩と少なくとも1つの直鎖状炭酸塩との混合物である。本発明の目的を達成できる場合のみ、混合物中の各有機溶媒の比が特に限定されず、たとえば、リチウム電池の伝統的な非水性電解質中で用いられる比を、用いることができる。
本発明において用いる塩も従来の塩である。塩のカチオンとしては、限定はされないが、Li、NaまたはKが挙げられ、塩のアニオンとしては、限定はされないが、PF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO またはC(CFSO が挙げられる。
本発明の電解質は、一般的な電気化学素子、特にリチウムイオン二次電池に適している。
本発明の実施例を以下に示すが、これらの例は本発明を限定するために用いられるものではない。本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限りにおいてあらゆる修正例および変更例が当業者によって行われうる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
表1には、本発明の実施例において使用した添加剤を示した。これらの添加剤は、例示のために提供したのであって、本発明の特許請求の範囲を限定するためのものではない。
Figure 2010287564
Figure 2010287564
実施例1:本発明の添加剤を有するリチウムイオン二次電池の充放電試験
本発明の実施例1による試験を、リチウムイオン二次電池において行った。表2には、実施例1および比較例2〜5のリチウムイオン二次電池において使用した材料と成分を示した。比較例2では、添加剤を用いないことを除いては実施例1と同じ材料を用い、比較例3では、1.0重量%のPSを添加剤として用いたことを除いては実施例1と同じ材料を用い、比較例4では、1.0重量%のVCを添加剤として用いたことを除いては実施例1と同じ材料を用いた。本発明において使用した電極材料およびその製造方法は、当該技術分野で周知のものであり、本発明の技術的特徴は、本開示に従って当業者により容易に理解および実施されうるものであるため、ここではその過程について詳述はしない。
Figure 2010287564
充放電試験
電池の充放電性能を調べるために、実施例1、ならびに比較例2、3、4、および5の電池をコイン半電池に加工した後、充放電試験機(8チャンネル)に接続した。充放電試験において、電池は、0.1Cでカットオフ電圧3mVまで充電した後、0.1Cでカットオフ電圧1800mVまで放電し、これを充放電サイクルと定義した。この試験において、全5回の充放電サイクルを行った。さらに、試験中の電圧の変化をコンピュータで記録し、得られたデータを計算して容量値を得た。
図1(A)〜図3に、それぞれ実施例1、比較例2、3、4、および5の電池による充放電試験の結果を示す。これらの図において、図1(A)は、1重量%の量の化合物1を含む実施例1の電池が、300mAh/gを超える放電容量を有したことを示し、このことから、その電池が連続5回の充放電試験の後でも優れた可逆的充放電性を維持したことがわかる。図1(B)は、添加剤を用いない比較例2の電池が、第1放電サイクル中に正常に放電を行うことができなかったことを示し、このことから、電池中で用いられた材料が、充放電試験の第1サイクル中に崩壊したことがわかる。図2(A)は、1重量%のPSを含む比較例3の電池が、正常に放電を行うことができたが、充放電試験の第2サイクルの後、充電および放電容量が急速に減衰したことを示している。この結果は、充放電試験の第2サイクルの後に、炭素質材料が剥離したことを実証した。さらに、図2(A)は、5回目の可逆的放電容量が、1回目の放電容量の7%未満のわずか21mAh/gであったことも示している。図2(B)によれば、1重量%のVCを含む比較例4の電池が、充放電試験の第1サイクル中に崩壊し、1回目の可逆的放電容量が20mAh/g未満であったことが示される。図3は、1重量%の化合物8を含む比較例5の電池が、充放電試験の第1サイクル中に正常に充電または放電を行うことができたことを示している。しかし充電容量および放電容量は、充放電試験の第2サイクルの後に急速に減衰しており、このことから、充放電試験の第2サイクルの後に、炭素質材料が剥離したことが示唆された。さらに、図3に示すように、5回目の可逆的放電容量は、10mAh/g未満(すなわち、1回目の放電容量の3%未満)であり、このことから、化合物8が高レベルのPCを含む電極中の炭素質材料を保護する能力を有さないことが示唆された。上記の結果から、本発明の電解質は、電池において使用した材料の剥離を抑制するのに有用であり、そうして電池の寿命を向上させた。
実施例2:本発明の添加剤を有するリチウムイオン二次電池の充放電試験
本発明の実施例2による試験を、リチウムイオン二次電池において行った。表3には、実施例2および比較例6のリチウムイオン二次電池において使用した材料と成分を示しており、比較例6では、1.5重量%のVCを添加剤として用いたことを除いては実施例1と同じ材料を用いた。
Figure 2010287564
図4(A)〜図7に、それぞれ実施例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、および2−6、ならびに比較例6の電池による充放電試験の結果を示す。これらの図において、図4(A)は、1.5重量%の量の化合物2を含む実施例2−1の電池が、250mAh/gを超える放電容量を有したことを示し、このことから、その電池が連続5回の充放電試験の後でも優れた可逆的充放電性を維持したことがわかる。図7は、1.5重量%のVCを含む比較例6の電池において使用した材料が、充放電試験の第1サイクル中に剥離したことを示している。図7に示すように、可逆的放電容量は、第1の放電サイクル中は2mAh/g未満、2回目および5回目の充放電中には30mAh/gであり、天然結晶片状黒鉛の実容量よりはるかに低かった。それは、1.5重量%のVCが高レベルのPCを含む電解質中の天然結晶片状黒鉛の剥離を効果的に抑制することができなかったことを立証した。上記の結果から、本発明の電解質の添加剤としての化合物2は、電池において使用した材料の剥離を抑制するのに有益であり、そうして電池の寿命を向上させた。
図4(B)に示すように、1.5重量%の化合物3を含む本発明の実施例2−2による電池は、1回目の放電中に306mAh/gの容量を有し、連続5回の充放電試験の後でも優れた可逆的充放電性(283mAh/gの容量)を維持した。この結果は、本発明の電解質の添加剤としての化合物3が、電池において使用した材料の剥離を抑制するのに有益であったため、電池の寿命を向上させたことを実証した。
図5(A)に示すように、1.5重量%の化合物4を含む本発明の実施例2−3による電池は、連続5回の充放電試験の後に286mAh/gの放電容量を有し、このことから、依然として優れた可逆的充放電性を維持したことがわかる。上記の結果から、本発明の電解質の添加剤としての化合物4は、電池において使用した材料の剥離を抑制するのに有益であったため、電池の寿命を向上させた。
図5(B)に示すように、1.5重量%の化合物5を含む本発明の実施例2−4による電池は、連続5回の充放電試験の後に300mAh/gを超える放電容量を有し、このことから、その電池が依然として優れた可逆的充放電性を維持したことがわかる。そのことは、本発明の電解質の添加剤としての化合物5が、電池において使用した材料の剥離を抑制するのに有益であり、それにより電池の寿命を向上させたことを立証した。
図6(A)に示すように、1.5重量%の化合物6を含む本発明の実施例2−5による電池は、1回目の放電中に160mAh/gの容量を有し、3回目の放電中に283mAh/gの容量を有した。上記の結果から、本発明の電解質の添加剤としての化合物6は、電池において使用した材料の剥離を抑制するのに有益であったため、電池の寿命を向上させた。
図6(B)に示すように、1.5重量%の化合物7を含む本発明の実施例2−6による電池は、1回目の放電中に260mAh/gの容量を有し、5回目の放電中に278mAh/gの容量を有した。この結果は、本発明の電解質の添加剤としての化合物7が、電池において使用した材料の剥離を抑制するのに有益であったため、電池の寿命を向上させたことを実証した。
実施例3:本発明の添加剤を有するリチウムイオン二次電池を使用した充放電試験
本発明の実施例3による試験を、リチウムイオン二次電池において行った。表4には、実施例3および比較例7のリチウムイオン二次電池において使用した材料と成分を示しており、比較例7では、添加剤を用いないことを除いては実施例3と同じ材料を用いた。
Figure 2010287564
サイクル寿命試験
電池のサイクル寿命を調べるために、実施例3および比較例7の電池をコイン半電池に加工した後、充放電試験機(8チャンネル)に接続した。充放電試験において、電池は、0.1Cでカットオフ電圧3mVまで充電した後、0.5Cでカットオフ電圧1800mVまで放電した。この試験において、全30回の充放電サイクルを行った。さらに、試験中の電圧の変化をコンピュータで記録し、得られたデータを計算して容量値を得た。
図8に、本発明の実施例3および比較例7の電池によるサイクル寿命試験の結果を示す。サイクル寿命試験の結果によれば、実施例3の電池の容量は、添加剤を用いない比較例7のものより高かった。さらに、実施例3の電池は、30回のサイクル寿命試験後でも300mAh/gを超える容量を有していたのに対し、比較例7の電池は、50mAh/g未満の容量にまで減衰していた。この結果は、本発明の添加剤が電池の容量を高め、電池のサイクル寿命を効果的に向上させることができることを示している。
実施例4:本発明の添加剤を有するリチウムイオン二次電池を使用した充放電試験
本発明の実施例4による試験を、リチウムイオン二次電池において行った。表5には、実施例4および比較例8のリチウムイオン二次電池において使用した材料と成分を示しており、比較例8では、添加剤を用いないことを除いては実施例4と同じ材料を用いた。
Figure 2010287564
図9に、比較例8、実施例4−1、4−2、および4−3の電池による第1サイクルの充放電曲線を示す。この図において、曲線1および1’は、添加剤を用いない比較例8において使用した材料が、充放電の第1サイクル中に剥離したことを示している。充放電の第1サイクルにおいて、比較例8の電池だけは、0.5mAh/gの可逆的放電容量を有し、正常に充電および放電を行うことができなかったことが示唆された。図9において、曲線2および2’、3および3’、ならびに4および4’は、それぞれ1.5重量%の化合物3を含む実施例4−1、1.5重量%の化合物5を含む実施例4−2、および1.0重量%の化合物1を含む実施例4−3の第1サイクルの充放電曲線を示す。この図に示すように、これらの曲線(2および2’、3および3’、ならびに4および4’)は、すべて、電池が優れた充放電効率を有したことを示している。上記の結果から、本発明の電解質の添加剤としての化合物3、5、および1は、すべて、高レベルのPCを含む電解質においてMCMB25−28の剥離を抑制して、アノード材料の充放電性能を改善するのに有用である。
実施例5:本発明の添加剤を有するリチウムイオン二次電池を使用した充放電試験
本発明の実施例5による試験を、リチウムイオン二次電池において行った。表6には、実施例5および比較例9のリチウムイオン二次電池において使用した材料と成分を示しており、比較例9では、添加剤を用いないことを除いては実施例5と同じ材料を用いた。
Figure 2010287564
図10に、比較例9、実施例5−1、5−2、および5−3の電池による第1サイクルの充放電曲線を示す。これらの充放電曲線図において、曲線1および1’は、添加剤を用いない比較例9において使用した材料が、充放電の第1サイクル中に剥離したことを示している。充放電の第1サイクルにおいて、比較例9の電池だけは、3mAh/g未満の可逆的放電容量を有し、それが正常に充電および放電を行うことができなかったことを実証している。図10において、曲線2および2’、3および3’、ならびに4および4’は、1.5重量%の化合物3を含む実施例5−1、1.5重量%の化合物5を含む実施例5−2、および1.0重量%の化合物1を含む実施例5−3、の第1サイクルの充放電曲線を示す。図10に示すように、これらの曲線(2および2’、3および3’、ならびに4および4’)は、すべて、電池が優れた充放電効率を有したことを示している。上記の結果から、本発明の電解質の添加剤としての化合物3、5、および1は、すべて、高レベルのPCを有した電解質においてMGPの剥離を抑制して、アノード材料の充放電性能を改善するのに有用である。
実施例6:カソードシートへの本発明の電解質の効果
上述のような実施例1〜5は、すべて、アノードシートへの本発明の電解質の効果を示す試験結果であった。本発明の電解質の、カソードシートへの効果を調べるために、LiFePO/導電性カーボンブラック/PVdFとリチウム金属とをそれぞれカソードとアノードとして用いた。表7には、実施例6および比較例10のリチウムイオン二次電池において使用した材料と成分を詳細に示した。同様に、本発明において使用したカソードシートの材料およびその製造方法は、当該技術分野において周知であるので、ここには記載しない。
Figure 2010287564
実施例6の電池の容量を、室温下での充放電サイクル試験で測定した。前記試験において、充電条件は、1Cの定電流充電および4000mVのカットオフ充電とし、放電条件は、1Cの定電流放電および2500mVのカットオフ放電とした。図11より、容量の変化が充放電サイクルの回数に依存したことがわかる。ただし、比較例10には、添加剤を用いないことを除いては実施例1と同じ材料を使用した。図11に示される結果から、本発明の電解質を用いた電気化学素子は、より高い容量を維持できる。
以上をまとめると、本発明の電解質は、新しい添加剤を用いることにより、アノードの炭素質材料上に安定なSEI層を形成して、炭素質材料の表面を保護し、剥離の発生を抑制し、それにより電池の寿命を高めることができる。さらに、本発明の添加剤は、カソード上の容量の減衰を遅らせるのに有用であり、こうしてより良好な性能を維持した。
他の実施形態
本明細書中に開示するすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。さらに本明細書中に開示する特徴は、同一、同等または同様の目的のために用いられる任意の特徴により置き換えることができる。したがって、特記しない限り、本明細書中に開示する特徴は、一連の同等または同様の特徴の例示である。
さらに、本開示に基づいて、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限りにおいて、異なる用途および状況に応じて、当業者により適当な変更および改変が行われてもよい。したがって、他の実施形態も本発明の請求の範囲に含まれる。

Claims (11)

  1. 1.18〜35.4重量%の塩と、
    0.1〜9重量%の下記式(I):
    Figure 2010287564
    (式中、Rは、非置換の、または置換基1つ以上で置換された脂肪族または芳香族残基であり、前記置換基は、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C10アリール、C〜C10アリールオキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルコキシ、C〜Cカルボキシ、および硫黄の1つ以上からなる群より選択され、nは、2、3、または4であり、
    ここで前記脂肪族または芳香族残基中のメチレン基(−CH−)の1つ以上は独立して、酸素(−O−)、C〜C10アリーレン、C〜C10シクロアルキレン、
    Figure 2010287564
    により置換されていてもよい)で表される化合物と、
    100重量%までの補足物としての有機溶媒と、
    を含む電気化学素子用電解質。
  2. 式(I)で表される化合物が、
    Figure 2010287564
    Figure 2010287564
    であることを特徴とする請求項1に記載の電解質。
  3. 式(I)で表される化合物の量が、0.5〜5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の電解質。
  4. 前記塩の量が、5.9〜23.6重量%であることを特徴とする請求項1に記載の電解質。
  5. 前記有機溶媒が、環状炭酸塩、直鎖状炭酸塩、ラクトン、エーテル、エステル、アセトニトリル、ラクタム、ケトン、およびそれらのハロゲン誘導体からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の電解質。
  6. 前記有機溶媒が、環状炭酸塩と直鎖状炭酸塩との混合物であることを特徴とする請求項5に記載の電解質。
  7. 前記塩のカチオンが、Li、Na、およびKからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の電解質。
  8. 前記塩のアニオンが、PF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、およびC(CFSO からなる群より選択されることを特徴とする請求項7に記載の電解質。
  9. アノードと、カソードと、請求項1に記載の電解質とを含む電気化学素子。
  10. リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項9に記載の電気化学素子。
  11. 電解質の添加剤として用いるための式(I)で表される化合物の使用方法。
    Figure 2010287564
    (式中、Rは、非置換の、または置換基1つ以上で置換された脂肪族または芳香族残基であり、前記置換基は、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C10アリール、C〜C10アリールオキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルコキシ、C〜Cカルボキシ、および硫黄の1つ以上からなる群より選択され、nは、2、3、または4であり、
    ここで前記脂肪族または芳香族残基中のメチレン基(−CH−)の1つ以上は独立して、酸素(−O−)、C〜C10アリーレン、C〜C10シクロアルキレン、
    Figure 2010287564
    により置換されていてもよい)
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