JP2010284174A - プラスミド、それらの構築およびそれらのインターロイキン−4およびインターロイキン−4ムテインの製造における使用 - Google Patents
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Abstract
【課題】5′から3′への順序で下記の機能しうるように結合した要素を含む大腸菌の菌株におけるIL−4およびIL−4ムテインの製造のための発現プラスミド、およびそのプラスミドで形質転換された大腸菌株を提供する。
【解決手段】大腸菌ファージT5プロモーターおよび2つのlacオペレーター配列からなる調節可能なプロモーターと、大腸菌ファージT7g10からのリボソーム結合部位と、翻訳開始コドンと、IL−4のための構造遺伝子またはIL−4ムテインと、この構造遺伝子の下流の一つの転写ターミネーター。
【選択図】なし
【解決手段】大腸菌ファージT5プロモーターおよび2つのlacオペレーター配列からなる調節可能なプロモーターと、大腸菌ファージT7g10からのリボソーム結合部位と、翻訳開始コドンと、IL−4のための構造遺伝子またはIL−4ムテインと、この構造遺伝子の下流の一つの転写ターミネーター。
【選択図】なし
Description
本発明は組み換えインターロイキン−4(IL−4)およびインターロイキン−4ムテインの製造における発現プラスミドの構築および使用に関する。
成熟ヒトインターロイキン−4(IL−4)は129個のアミノ酸から成り、マウスIL−4に対する相同性が50%である。IL−4はTヘルパー細胞の分化をTH2表現型に向けることが知られている唯一のサイトカインである(非特許文献1:Mosmann and Sad,Immunol.Today 17,138−146,1996)。IL−4はリンパ細胞および他の細胞に2種のサイトカインレセプタ、IL−4αおよび共通のγ−鎖(γc)、のヘテロ二量体複合体を介してシグナルを送る。拮抗的IL−4ミュータントが文献に記載されている(非特許文献2:Kruse et al.,EMBOJ.11,3237−3244,1992)。C−末端に近い3個のアミノ酸(R121,Y124およびS125)がγc−鎖に結合するために重要である。Asp(D)をこれらの位置へ導入するとレセプタの二量化と膜を通しての(transmembrane)シグナリング(signaling)とをブロックする。
インターロイキン−4ダブルムテイン(interleukin double mutein)(IL−4 DM)は位置121および124で2個のアミノ酸が変化したIL−4変異体であり、IL−4 R121D Y124Dと呼ばれる。IL−4 DMはIL−4活性およびIL−13活性の両方をブロックすることができる。すべての単一部位ミュータント(single site mutants)とは対照的に、このムテイン(mutein)については拮抗的活性はなんら残留していない。IL−4DMのこれらの拮抗的性質はTH2発現および/またはIgE産性が関係する疾病の治療に有効であると考えられる(非特許文献3:Ryan,J.Allergy Clin.Immunol.99,1−5,1997)。
種々の刊行物に記載されているように、原核生物を用いて組み換えIL−4およびIL−4ムテインを産性することができる。残念ながら、記載されているシステムは多くの欠点(低発現レベル、発現ベクターの低安定性)を持つためIL−4およびIL−4ムテインの大量生産が不可能であるかあるいは経済的に実施できない。
効率的かつ安全な発現系の主な基準としては下記がある:
・高産性収率
・調節可能な安定的発現
・発現ベクターの安定性
発現プラスミドのいくつかの特長が上記リストの基準に重要である(非特許文献4:Hannig et al.,TIBTECH.16,54−60,1998)。これらは:
・プロモーター
・リボソーム結合部位(rbs)
・相当する遺伝子のコドン使用頻度
・転写ターミネーター
・耐性遺伝子
・発現の調節
・複製起点(ori)
である。
・高産性収率
・調節可能な安定的発現
・発現ベクターの安定性
発現プラスミドのいくつかの特長が上記リストの基準に重要である(非特許文献4:Hannig et al.,TIBTECH.16,54−60,1998)。これらは:
・プロモーター
・リボソーム結合部位(rbs)
・相当する遺伝子のコドン使用頻度
・転写ターミネーター
・耐性遺伝子
・発現の調節
・複製起点(ori)
である。
Mosmann and Sad,Immunol.Today 17,138−146,1996
Kruse et al.,EMBOJ.11,3237−3244,1992
Ryan,J.Allergy Clin.Immunol.99,1−5,1997
Hannig et al.,TIBTECH.16,54−60,1998
インターロイキン−4(IL−4)および効率的かつ安全な発現系に関連する要素のすべてにおける改変を伴うインターロイキン−4ムテインに対する発現プラスミドを創製した。相当する発現系の品質と適合性を主に下記の基準に従って分類した。
・IL−4およびIL−4ムテインの収率
・プラスミドの安定性
・誘導能力の維持
従って、本発明の目的は組み換えインターロイキン−4(IL−4)およびインターロイキン−4ムテインの大量生産における発現プラスミドの構築および使用方法を利用し得るようにすることである。さらに、新規に開発されたホスト/ベクター系は他のタンパク(サイトカイン、成長因子、可溶性レセプタ、抗体等)の発現によく適している必要がある。
・IL−4およびIL−4ムテインの収率
・プラスミドの安定性
・誘導能力の維持
従って、本発明の目的は組み換えインターロイキン−4(IL−4)およびインターロイキン−4ムテインの大量生産における発現プラスミドの構築および使用方法を利用し得るようにすることである。さらに、新規に開発されたホスト/ベクター系は他のタンパク(サイトカイン、成長因子、可溶性レセプタ、抗体等)の発現によく適している必要がある。
意外にも、本発明に係るプラスミドで形質転換したバクテリアは同じ宿主を当該技術分野において知られたプラスミドで形質転換した後に観察されるものよりも幾倍も高い発現率(expression rates)、プラスミドおよび発現安定性値を与える。従って、本発明のプラスミドは組み換えインターロイキン−4(IL−4)およびインターロイキン−4ムテインの調製に対して従来知られているすべてのプラスミドよりもはるかに有効である。
すなわち、本発明に従えば、5′から3′への順序で下記の機能しうるように結合された要素:大腸菌ファージT5プロモーターおよび2つのlacオペレーター配列からなる調節可能なプロモーターと、大腸菌ファージT7g10からのリボソーム結合部位と、翻訳開始コドンと、IL−4のための構造遺伝子またはIL−4ムテインと、この構造遺伝子の下流の一つの転写ターミネーターとを含む大腸菌の菌株におけるIL−4およびIL−4の製造のためのオペロンが提供される。
新規に開発されたベクター系は下記の要素を含む。
T5プロモーター
2つのlacオペレーター配列を持つ大腸菌(E.coli)ファージT5プロモーターは、プラスミドのpDSファミリーに属するpQE30プラスミド(Qiagen)から導かれる(Bujard et al.,Methods Enzymol.155,416−433,1987およびStueber et al.,Immunological Methods,I.Lefkovits and B.Pernis,eds.,Academic Press,Inc.,Vol.IV,121−152,1990)。
2つのlacオペレーター配列を持つ大腸菌(E.coli)ファージT5プロモーターは、プラスミドのpDSファミリーに属するpQE30プラスミド(Qiagen)から導かれる(Bujard et al.,Methods Enzymol.155,416−433,1987およびStueber et al.,Immunological Methods,I.Lefkovits and B.Pernis,eds.,Academic Press,Inc.,Vol.IV,121−152,1990)。
T7g10リボソーム結合部位
リボソーム結合部位(rbs)はファージT7(T7g10リーダー)の遺伝子10の上流領域から導かれる。ファージT7の遺伝子10はコートタンパクをコードしており、
このコートタンパクはT7感染後発現される主要タンパクである。T7g10 rbsはベクターpET−9aから得られた(Studier et al.,Methods Enzymol.185,60−89,1990)。T7g10リーダーは約100bpの領域の長さにわたっている(Olins et al.,Gene 227−235,1988)。最終発現構築物において、XbaI部位の上流領域が削除されている。T7g10リーダー配列はいまや42bpの長さにわたっており、好適なプラスミドの3638位置でGからAへの一塩基交換を有している。
リボソーム結合部位(rbs)はファージT7(T7g10リーダー)の遺伝子10の上流領域から導かれる。ファージT7の遺伝子10はコートタンパクをコードしており、
このコートタンパクはT7感染後発現される主要タンパクである。T7g10 rbsはベクターpET−9aから得られた(Studier et al.,Methods Enzymol.185,60−89,1990)。T7g10リーダーは約100bpの領域の長さにわたっている(Olins et al.,Gene 227−235,1988)。最終発現構築物において、XbaI部位の上流領域が削除されている。T7g10リーダー配列はいまや42bpの長さにわたっており、好適なプラスミドの3638位置でGからAへの一塩基交換を有している。
天然IL−4配列のコドン使用頻度
同義コドン使用頻度バイアスの有効な測定法として、コドン適応指数(CAI)は所与の遺伝子の発現レベルを予言するのに有用であり得る(Sharp et al.,Nucleic Acids Res.15,1281−1295,1987およびApeler et al.,Eur.J.Biochem.247,890−895,1997)。CAIは、遺伝子に用いられているコドンのそれぞれに対応する相対的同義コドン使用頻度(RSCU)の幾何学的意味を、同じアミノ酸組成の遺伝子の最大可能CAIで除したものとして計算される。各コドンに対するRSCU値は特定の生物、例えば大腸菌の非常に高度に発現された遺伝子から計算され、コドンの観察された頻度をアミノ酸の同義コドンは等しい使用頻度であるという仮定の下に期待される頻度で除したものを表す。高度に発現された遺伝子、例えばリボソームタンパクをコードする遺伝子は一般に高いCAI値>0.46を有する。大腸菌のlac1およびtrpRのように発現の悪い遺伝子は低いCAI値<0.3を有する。
同義コドン使用頻度バイアスの有効な測定法として、コドン適応指数(CAI)は所与の遺伝子の発現レベルを予言するのに有用であり得る(Sharp et al.,Nucleic Acids Res.15,1281−1295,1987およびApeler et al.,Eur.J.Biochem.247,890−895,1997)。CAIは、遺伝子に用いられているコドンのそれぞれに対応する相対的同義コドン使用頻度(RSCU)の幾何学的意味を、同じアミノ酸組成の遺伝子の最大可能CAIで除したものとして計算される。各コドンに対するRSCU値は特定の生物、例えば大腸菌の非常に高度に発現された遺伝子から計算され、コドンの観察された頻度をアミノ酸の同義コドンは等しい使用頻度であるという仮定の下に期待される頻度で除したものを表す。高度に発現された遺伝子、例えばリボソームタンパクをコードする遺伝子は一般に高いCAI値>0.46を有する。大腸菌のlac1およびtrpRのように発現の悪い遺伝子は低いCAI値<0.3を有する。
天然IL−4配列に対して計算された大腸菌CAI値は0.733である。これは、天然遺伝子は大腸菌における高レベル発現によく適合していなければならないことを意味する。それにもかかわらず、最適の大腸菌コドン使用頻度(CAI値=1)を有する合成遺伝子は発現レベルをさらに増加させる可能性を有する。従って、合成IL−4およびIL−4ムテイン遺伝子を設計しクローニングした。
転写ターミネーター
転写ターミネーターTφを含むT7DNAフラグメントはベクターpET−9aから導かれる(Studier et al.,Methods Enzylmol.185,60−89,1990)。転写ターミネーターはmRNA−RNAポリメラーゼ−DNA複合体が解離し、それにより転写を終了する点を決定する。転写ターミネーターが高度に発現された遺伝子の端部に存在することはいくつかの利点を有する:不必要な転写に関与しているかもしれないRNAポリメラーゼの封鎖を最低限にし、mRNA長を最低限に制限してエネルギー消費を制限するが、これは強い転写は複製起点に干渉するので、転写ターミネーターがコピー数の維持によりプラスミド安定性を向上するからである(Balbas and Bolivar,Methods Enzymol.185,14−37,1990)。
転写ターミネーターTφを含むT7DNAフラグメントはベクターpET−9aから導かれる(Studier et al.,Methods Enzylmol.185,60−89,1990)。転写ターミネーターはmRNA−RNAポリメラーゼ−DNA複合体が解離し、それにより転写を終了する点を決定する。転写ターミネーターが高度に発現された遺伝子の端部に存在することはいくつかの利点を有する:不必要な転写に関与しているかもしれないRNAポリメラーゼの封鎖を最低限にし、mRNA長を最低限に制限してエネルギー消費を制限するが、これは強い転写は複製起点に干渉するので、転写ターミネーターがコピー数の維持によりプラスミド安定性を向上するからである(Balbas and Bolivar,Methods Enzymol.185,14−37,1990)。
耐性遺伝子
kan耐性遺伝子はベクターpET−9aから導かれる(Studier et al.,Methods Enzylmol.185,60−89,1990)。起源的には、これはベクターpUC4KISS(Barany,Gene 37,111−123,1985)からのTn903のkan遺伝子である。好適なプラスミドにおいては、kan遺伝子とIL−4およびIL−4ムテイン遺伝子とは反対の配向をしており、そのためT5プロモーターからのリードスルー(read−through)転写により誘導後kan遺伝子産物の増加が起きないようにしている。カナマイシンを選択マーカーとして選択したが、これはGMP−目的に好適な抗生物質であるからである。さらに、kan遺伝子に基づくベクターはアンピシリン耐性(bla)プラスミドよりも安定である。アンピシリン選択はこの薬剤が分泌されるβ−ラクタマーゼ酵素により分解されるので培養中に失われがちである。カナマイシンに対するバクテリアの耐性の態様はこの抗生物質を不活性化するアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼに依存している。
kan耐性遺伝子はベクターpET−9aから導かれる(Studier et al.,Methods Enzylmol.185,60−89,1990)。起源的には、これはベクターpUC4KISS(Barany,Gene 37,111−123,1985)からのTn903のkan遺伝子である。好適なプラスミドにおいては、kan遺伝子とIL−4およびIL−4ムテイン遺伝子とは反対の配向をしており、そのためT5プロモーターからのリードスルー(read−through)転写により誘導後kan遺伝子産物の増加が起きないようにしている。カナマイシンを選択マーカーとして選択したが、これはGMP−目的に好適な抗生物質であるからである。さらに、kan遺伝子に基づくベクターはアンピシリン耐性(bla)プラスミドよりも安定である。アンピシリン選択はこの薬剤が分泌されるβ−ラクタマーゼ酵素により分解されるので培養中に失われがちである。カナマイシンに対するバクテリアの耐性の態様はこの抗生物質を不活性化するアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼに依存している。
発現の調節
制御された遺伝子発現は、安定なプラスミド系の確立のために、特に注目しているタンパクがホスト細胞にとって有害であるならば、絶対必要である。好適なプラスミドは、lacリプレッサー遺伝子(lacI)および2つの合成lacオペレーター配列を大腸菌ファージT5プロモーターの下流に融合したものからなるlacに基づいた誘導可能系を用いる。lacIqプロモーターおよびlacI構造遺伝子はベクターpTrc99Aから単離された(Amann et al.,Gene 69,301−315,1988)。IqはlacIリプレッサーの過剰産性に導くプロモーター突然変異である。野生型lacリプレッサーはそれぞれ360アミノ酸の同一のサブユニット4個を含む4量体分子である。lacリプレッサーテトラマーは2つの機能的ダイマーのダイマーである。4つのサブユニットは残基340−360から形成される4−ヘリックスバンドルにより相互に保持されている。NarI切断によりベクターpTrc99AからlacI遺伝子が単離することにより、アミノ酸331を越える残基が削除され、正常ではlacI遺伝子にコードされていない10アミノ酸が付加される。アミノ酸329を越える、lacIのC−末端部分に起きる突然変異または欠失の結果、表現型が野生型リプレッサーに類似するように見える機能的ダイマーが得られる(Pace et al.,TIBS 22,334−339,1997)。
制御された遺伝子発現は、安定なプラスミド系の確立のために、特に注目しているタンパクがホスト細胞にとって有害であるならば、絶対必要である。好適なプラスミドは、lacリプレッサー遺伝子(lacI)および2つの合成lacオペレーター配列を大腸菌ファージT5プロモーターの下流に融合したものからなるlacに基づいた誘導可能系を用いる。lacIqプロモーターおよびlacI構造遺伝子はベクターpTrc99Aから単離された(Amann et al.,Gene 69,301−315,1988)。IqはlacIリプレッサーの過剰産性に導くプロモーター突然変異である。野生型lacリプレッサーはそれぞれ360アミノ酸の同一のサブユニット4個を含む4量体分子である。lacリプレッサーテトラマーは2つの機能的ダイマーのダイマーである。4つのサブユニットは残基340−360から形成される4−ヘリックスバンドルにより相互に保持されている。NarI切断によりベクターpTrc99AからlacI遺伝子が単離することにより、アミノ酸331を越える残基が削除され、正常ではlacI遺伝子にコードされていない10アミノ酸が付加される。アミノ酸329を越える、lacIのC−末端部分に起きる突然変異または欠失の結果、表現型が野生型リプレッサーに類似するように見える機能的ダイマーが得られる(Pace et al.,TIBS 22,334−339,1997)。
複製起点(ori)
好適なプラスミドの複製起点(ori)はベクターpET−9a、pBR322に由来するori、から導かれる。好適なプラスミドは従ってpMB1(Co1E1)レプリコンを担持する。このレプリコンを持つプラスミドは「緩和された」様式で複製する多コピープラスミドである。正常な成長条件下では各バクテリア細胞内に最低15−20コピーのプラスミドが維持される。好適なプラスミドの実際の数はこの範囲内にある。Co1E1−型oriの複製は555−ヌクレオチドRNA転写産物、RNAII、により開始され、ori近傍にあるそのテンプレートDNAと永続型ハイブリッドを形成する。RNAII−DNAハイブリッドはついでRNaseHによりoriで切断して、DNAポリメラーゼIのプライマーとして役立つ遊離3′OHを生じる。このDNA合成のプライミングはRNAI、すなわちRNAIIの5′末端に相補的な108−ヌクレオチドRNA分子、により負の調節を受ける。アンチセンスRNAIとRNAIIの相互作用はRNAIIの立体配座の変化を引き起こしてRNAIIのテンプレートDNAへの結合を阻害し、その結果プラスミドDNA合成の開始を妨げる。RNAIとRNAIIとの間の結合は63アミノ酸の小さいタンパク(Ropタンパク、Repressor of primer)により増強されるが、このタンパクは複製起点から400ヌクレオチド下流に位置する遺伝子によってコードされている(Sambrook et al.,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor,1989)。rop遺伝子の欠失はコピー数の増加を導き、遺伝子量効果によりそのプラスミドをコードする異種遺伝子の発現レベルを向上させる。この観察は試験したIL−4発現ベクターについてもなされた。しかし、rop-−プラスミドは不安定であり非選択的条件下での発酵中に非常に急速に失われた。従って、好適なプラスミドのレプリコンはrop遺伝子を含有して高いプラスミド安定性を確保している。好適なプラスミドは動態化に必要とされるmob遺伝子を欠いているため、一つの細菌から他の細菌への独自の接合移入(conjugal transfer)を誘導することができない。
好適なプラスミドの複製起点(ori)はベクターpET−9a、pBR322に由来するori、から導かれる。好適なプラスミドは従ってpMB1(Co1E1)レプリコンを担持する。このレプリコンを持つプラスミドは「緩和された」様式で複製する多コピープラスミドである。正常な成長条件下では各バクテリア細胞内に最低15−20コピーのプラスミドが維持される。好適なプラスミドの実際の数はこの範囲内にある。Co1E1−型oriの複製は555−ヌクレオチドRNA転写産物、RNAII、により開始され、ori近傍にあるそのテンプレートDNAと永続型ハイブリッドを形成する。RNAII−DNAハイブリッドはついでRNaseHによりoriで切断して、DNAポリメラーゼIのプライマーとして役立つ遊離3′OHを生じる。このDNA合成のプライミングはRNAI、すなわちRNAIIの5′末端に相補的な108−ヌクレオチドRNA分子、により負の調節を受ける。アンチセンスRNAIとRNAIIの相互作用はRNAIIの立体配座の変化を引き起こしてRNAIIのテンプレートDNAへの結合を阻害し、その結果プラスミドDNA合成の開始を妨げる。RNAIとRNAIIとの間の結合は63アミノ酸の小さいタンパク(Ropタンパク、Repressor of primer)により増強されるが、このタンパクは複製起点から400ヌクレオチド下流に位置する遺伝子によってコードされている(Sambrook et al.,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor,1989)。rop遺伝子の欠失はコピー数の増加を導き、遺伝子量効果によりそのプラスミドをコードする異種遺伝子の発現レベルを向上させる。この観察は試験したIL−4発現ベクターについてもなされた。しかし、rop-−プラスミドは不安定であり非選択的条件下での発酵中に非常に急速に失われた。従って、好適なプラスミドのレプリコンはrop遺伝子を含有して高いプラスミド安定性を確保している。好適なプラスミドは動態化に必要とされるmob遺伝子を欠いているため、一つの細菌から他の細菌への独自の接合移入(conjugal transfer)を誘導することができない。
好適なプラスミドでは、プラスミド複製、耐性および調節可能な発現に不必要な要素はすべて削除されている。
本発明の範囲内にあるためには、上述の特長のすべてを好適な発現プラスミドの構築において取り込む必要はない。例えば、天然のインターロイキン−4またはインターロイキン−4ムテイン遺伝子を、最適化された大腸菌コドン使用頻度をもつ合成のものの代わりに使用することができる。好適な転写ターミネーターはTφであるが、rrnBT2またはaspAのような他のターミネーターも使用できる。同様に、好適なプラスミドの構築用の要素をここに記載した市販のベクター以外から採用することも可能である。
発現系確立の過程で用いた方法を以下に記載する。
材料と方法
酵素
制限エンドヌクレアーゼ、ウシ腸アルカリホスファターゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、およびT4DNAリガーゼをBoehringer MannheimおよびGIBCO−BRLから購入して供給元の推奨に従って使用した。
酵素
制限エンドヌクレアーゼ、ウシ腸アルカリホスファターゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、およびT4DNAリガーゼをBoehringer MannheimおよびGIBCO−BRLから購入して供給元の推奨に従って使用した。
組み換えDNA法
標準クローニング手順がSambrook et al.(Molecular Cloning,Cold Spring Harbor,1989)に記載されている。形質転換はM.Scott(Seed and Aruffo,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,3365−3369,1987)に従って行った。形質転換の宿主として、大腸菌菌株DH5α(GIBCO BRL)およびW3110(ATCC 27325)を主として用いた。W3110の遺伝子型はK12,F-、[N(rrnD−rrnE)]λ-である。
標準クローニング手順がSambrook et al.(Molecular Cloning,Cold Spring Harbor,1989)に記載されている。形質転換はM.Scott(Seed and Aruffo,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,3365−3369,1987)に従って行った。形質転換の宿主として、大腸菌菌株DH5α(GIBCO BRL)およびW3110(ATCC 27325)を主として用いた。W3110の遺伝子型はK12,F-、[N(rrnD−rrnE)]λ-である。
プラスミドDNAの大量単離はQiagen−チップ(Qiagen)を用いて行った。アガロースゲルからのDNAフラグメントの抽出はJetsorb(Genomed)を供給元の推奨に従って用いて行った。
部位指定突然変異誘発、PCR反応および配列決定のためのオリゴヌクレオチドはMWG Biotech、Pharmacia BiotechまたはGIBCO BRLから得た。
突然変異誘発実験はDeng and Nickoloffの方法(Deng and
Nickoloff,Anal.Biochem.200,81−88,1992)によりPharmacia Biotechからの「ユニーク部位除去突然変異誘発(Unique Site Elimination Mutagenesis)」系を用いて行った。T7g10 rbsの改造に用いたプライマーは下記の配列を有する:
5′TCAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACATCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAA3′(配列1)
Nickoloff,Anal.Biochem.200,81−88,1992)によりPharmacia Biotechからの「ユニーク部位除去突然変異誘発(Unique Site Elimination Mutagenesis)」系を用いて行った。T7g10 rbsの改造に用いたプライマーは下記の配列を有する:
5′TCAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACATCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAA3′(配列1)
すべての構築物およびDNA配列はABI 373Aシーケンサー(Applied Biosystems)でAmpliTaqDNAポリメラーゼ、FSを用いたダイターミネーターサイクルシーケンシング(Dye Terminator Cycle Sequencing)を使用して確認した。
本発明を以下の実施例、図面および配列情報によりさらに詳細に説明する。
プラスミド安定性試験
プラスミド安定性試験は常に液体窒素中で凍結した培養物を用いて開始した。融解した培養物のOD600を決定し、この培養物をPBSバッファーに10-4まで希釈し、抗生物質無添加LB寒天培地上にプレーティングした。
プラスミド安定性試験は常に液体窒素中で凍結した培養物を用いて開始した。融解した培養物のOD600を決定し、この培養物をPBSバッファーに10-4まで希釈し、抗生物質無添加LB寒天培地上にプレーティングした。
融解培養物1mlをペプトン培地(1リットル当り、大豆ペプトン30g、イーストエキス20g、KH2PO45g、グリセロール20g、MgSO4x7H2O 1g、pH7.0)100mlに移植し、37℃、280rpmで24時間インキュベートした。
成長した培養物のOD600を決定し、この培養物をPBSバッファーに10-6まで希釈し、抗生物質無添加LB寒天培地上にプレーティングしてよく分離したコロニーを得た。
成長した培養物100μmをペプトン培地100mlに移植し、37℃、280rpmで24時間インキュベートした。この手順を8回繰り返した。
LB培地からのよく分離したコロニー100個をカナマイシン(25μg/ml)添加LBプレートおよびカナマイシン無添加LBプレート上に碁盤の目状に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。耐性コロニーのパーセンテージを毎日決定した。
一日当たりの世代数を次式:
世代数/日=log[OD600END/OD600BEG]/log2
に従って計算した。
世代数/日=log[OD600END/OD600BEG]/log2
に従って計算した。
発現検討のため、成長した培養物1mlをLB培地に100倍希釈し下記(実施例2参照)のように取り扱った。
発現
小規模発現のために、インターロイキン−4およびインターロイキン−4ムテイン細胞をLB培地(バクトトリプトン(Bacto tryptone)10g、イーストエキス5g、NaCl 10g/l、pH7.5)中でOD600が0.8−1.0に達するまで成長した。IPTGを終濃度0.5mMまで添加することにより発現を誘導し、インキュベーションを5時間継続した。細胞を遠心により収穫した。
小規模発現のために、インターロイキン−4およびインターロイキン−4ムテイン細胞をLB培地(バクトトリプトン(Bacto tryptone)10g、イーストエキス5g、NaCl 10g/l、pH7.5)中でOD600が0.8−1.0に達するまで成長した。IPTGを終濃度0.5mMまで添加することにより発現を誘導し、インキュベーションを5時間継続した。細胞を遠心により収穫した。
SDS−PAGEのために細胞をSDS−PAGE装填バッファーに1OD600ユニット/100μlの濃度になるように懸濁した。
本発明の主な特徴および態様を示せば以下のとおりである。
1.5′から3′への順序で下記の操作可能に結合された要素:大腸菌ファージT5プロモーターおよび2つのlacオペレーター配列からなる調節可能なプロモーターと、大腸菌ファージT7g10からのリボソーム結合部位と、翻訳開始コドンと、IL−4のための構造遺伝子またはIL−4ムテインと、この構造遺伝子の下流の一つの転写ターミネーターとを含む大腸菌の菌株におけるIL−4およびIL−4の製造のためのオペロン。
2.大腸菌/pRO2.1.O。
3.上記1または2のプラスミドの1種以上で形質転換された大腸菌。
4.IL−4およびIL−4ムテインの調製方法における上記1または2によるプラスミドの使用。
Claims (3)
- 5′から3′への順序で下記の機能するように結合された要素:大腸菌(Escherichia coli)ファージT5プロモーターおよび2つのlacオペレーター配列からなる調節可能なプロモーターと、大腸菌ファージT7g10からのリボソーム結合部位と、翻訳開始コドンと、IL−4またはIL−4ムテインのための構造遺伝子と、この構造遺伝子の下流の一つの転写ターミネーターとを含む大腸菌の菌株におけるIL−4またはIL−4ムテインの製造用発現プラスミド。
- プラスミドがpRO2.1.0である請求項1記載の要素を含むプラスミド。
- 請求項1または2の1種以上のプラスミドで形質転換された大腸菌細胞。
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