JP2010282957A - 2次電池用負極、電極用銅箔、2次電池および2次電池用負極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】日本工業規格で規定される表面粗さRz(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)が1μm以上の粗面を有する銅箔を用いた集電体基材の前記粗面上に、シリコン系の活物質皮膜が形成されている、非水溶媒電解液2次電池用負極であって、前記集電体基材の片面または両面の粗面上に、1g/m2〜18g/m2のシリコン系活物質皮膜が形成され、前記活物質皮膜は、水素化シリコンを含み、前記活物質皮膜全体に対する水素含有量が0.1原子%以上30原子%以下であることを特徴とする非水溶媒電解液2次電池用負極である。また、この負極を用いたことを特徴とする非水溶媒電解液を用いた2次電池である。
【選択図】図3
Description
また、年々性能を向上させてきたカーボン系負極も理論比容量の限界に近付きつつあり、現用の正負活物質系統の組み合わせではもはや大きな電源容量の向上は見込めなくなっている。そのため、現在のLiイオン電池では、今後の更なる電子機器の高機能化と長時間携帯化の要求や、電動工具、無停電電源、蓄電装置などの産業用途、並びに電気自動車用途への搭載には限界がある。
(1)日本工業規格で規定される表面粗さRz(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)が1μm以上の粗面を有する銅箔を用いた集電体基材の前記粗面上に、シリコン系の活物質皮膜が形成されている、非水溶媒電解液2次電池用負極であって、前記集電体基材の片面または両面の粗面上に、1g/m2〜18g/m2のシリコン系活物質皮膜が形成され、前記活物質皮膜は、水素化シリコンを含み、前記活物質皮膜全体に対する水素含有量が0.1原子%以上30原子%以下であることを特徴とする非水溶媒電解液2次電池用負極。
(2)前記集電体基材と前記シリコン系活物質皮膜との間、または前記シリコン系活物質皮膜上層の少なくとも一方に、リンまたはボロンを含有するシリコン層が1層以上形成されていることを特徴とする、(1)に記載の2次電池用負極。
(3)前記シリコン系活物質皮膜は、リンを含み、前記活物質皮膜全体に対するリンの含有量が0.1原子%以上30原子%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の2次電池用負極。
(4)前記シリコン系活物質皮膜は、さらに酸素を含み、前記活物質皮膜全体に対する酸素の含有量が1原子%以上50原子%以下であることを特徴とする(3)に記載の2次電池用負極。
(5)前記集電体基材の活物質形成面上に、ニッケルを0.01〜0.5g/m2含有する層または亜鉛を0.001〜0.1g/m2含有する層の少なくとも一方が形成された耐熱性層または耐熱性バリア皮膜を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の二次電池用負極。
(6)さらに前記耐熱性層または前記耐熱性バリア皮膜の上層に防錆層および/またはシランカップリング処理層が形成されていることを特徴とする(5)に記載の2次電池用負極。
(7)前記耐熱性層または前記耐熱性バリア皮膜における前記亜鉛が単層亜鉛として存在することを特徴とする(5)または(6)に記載の2次電池用負極。
(8)前記耐熱性層または前記耐熱性バリア皮膜における前記亜鉛が集電体基材またはニッケル層に拡散していることを特徴とする(5)または(6)に記載の2次電池用負極。
(9)(1)〜(8)のいずれか1項に記載の2次電池用負極に用いられ、日本工業規格(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)で規定される表面粗さRzが1μm以上の粗面を有することを特徴とする電極用銅箔。
(10)(1)〜(8)のいずれか1項に記載の負極を用いたことを特徴とする非水溶媒電解液を用いた2次電池。
(11)前記非水溶媒電解液が、フッ素を含む非水溶媒を含有することを特徴とする(10)に記載の2次電池。
(12)日本工業規格で規定される表面粗さRz(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)が1μm以上の粗面を有する銅箔を用い、温度180℃における伸び率が5%以上である前記集電体基材を、供給濃度比[H2]/[SiH4]が0〜100の範囲内でシランガスと水素ガスが供給される製膜室内に連続的に導入する工程と、前記集電体基材の温度を100℃〜350℃の範囲内に保持したCVD法によって、連続的に導入した前記集電体基材の片面または両面に、連続的に0.1原子%以上30原子%以下の水素を含有するシリコン系活物質層を形成する工程と、を備えることを特徴とする非水溶媒電解液2次電池用負極の製造方法。
(13)前記CVD法において、さらにフォスフィンガスを連続供給し、シリコン系活物質を形成する前記工程において、リンを含有するシリコン系活物質皮膜を形成することを特徴とする(12)に記載の2次電池用負極の製造方法。
(14)シリコン系活物質被膜を形成する前記工程の後、大気酸化または熱処理により前記シリコン系活物質皮膜に酸素を導入する工程をさらに具備することを特徴とする(12)または(13)に記載の2次電池用負極の製造方法。
を提供するものである。
また、主にCVD法やEB蒸着法形成によるシリコン系皮膜を用いるので、均一均質な活物質皮膜を工業上経済的に形成することができる。また、シリコン系活物質皮膜の上層または下層に、リンまたはボロンを含有する層を形成すると、活物質の導電性が向上し、充放電に際してのLiイオンの移動が助けられ、特に高レートでの充放電に際して効果がある。シリコン系活物質皮膜にリンを含むと導電性が向上しLiイオンの挿入脱離がし易く、またさらに酸素を含有するとLiイオンの挿入脱離による体積変化を緩和するので、充放電サイクル寿命が向上する。
集電体銅箔上に、耐熱性層または耐熱性バリア皮膜と、防錆能を有する層と、シランカップリング処理層とを形成すると、活物質形成までの経時劣化や製膜時高温の耐熱性を保持し、形成活物質皮膜と集電体表面との密着性が向上する。また、集電体成分銅がシリコン系活物質皮膜へ拡散することを抑止するので、活物質と銅の拡散合金化による充放電容量の低下を防止し、本来有するシリコンの高い比容量を得ることができる。特に、亜鉛層の上層にニッケル層を有する耐熱性バリア皮膜を形成すると拡散合金化を防止することができる。これら前記の負極を用いた2次電池は、高容量で長寿命を得ることができ、さらに用いる電解液の非水溶媒にフッ素を含有する電解液を用いると、充放電繰り返しによっても容量低下のより少ない2次電池を得ることができる。
さらには、集電体基材に使用する銅箔の引っ張り強度が300MPa〜1000MPa(1GPa)の範囲にあることが望ましい。シリコンなどの高容量が得られる活物質は、リチウムイオンとの合金化によって、2〜4倍の体積膨張を生じる。そのため、充電時の合金化では、集電体基材と活物質皮膜の界面において、活物質の体積膨張により銅箔を伸ばす応力や歪みが生じる。一方で、放電時の脱合金化では、銅箔を縮める応力や歪みが生じる。銅箔の強度が小さい場合には、この充放電繰り返しサイクルにより、銅箔にシワを生じ、ひどい場合には銅箔が破断する。つまり、サイクル寿命が小さくなる。一方、銅箔の強度が1GPaを超える場合には、銅箔が硬くなり過ぎ、かえって膨張収縮に追従できる伸び率が小さくなってしまう。
また、集電体基材に用いられる銅箔については、表面が平滑ではなく、また光沢を有さず、少なくとも活物質を形成する表面が粗面を呈する銅箔のみを用いる。表面が平滑な銅箔や光沢銅箔を集電体基材に用いると、その面に形成するシリコン系活物質皮膜が密着性に劣り、活物質皮膜が剥離する場合がある。そこで、JIS B0601−1994で規定される十点平均粗さRzが1μm以上の粗面を活物質面に有する銅箔を集電体基材として用いることが望ましい。これらの粗面は、銅箔の片面または両面いずれでも可能である。銅箔には、電解銅箔と圧延銅箔の2種類があり、圧延銅箔の場合には、それ自体は両面光沢を有する平滑箔に相当するので、少なくとも活物質を形成する面には、例えば、エッチングやめっき等による粗面化処理が必要である。電解銅箔の両面光沢箔の場合にも同様である。
圧延銅箔は、例えば、純銅材料を溶解鋳造し、得られる鋳塊を、常法により、順に、熱間圧延、冷間圧延、均質化処理、および脱脂する工程により、所定箔厚に製造することができる。電解銅箔は、プリント回路用銅箔原箔を銅箔の基材とすることができ、ステンレス製やチタン製の回転ドラムを硫酸と銅イオンを主体とする酸性電解液中にその一部を浸漬還元電解することにより電着される銅箔を連続的に剥離、巻き取ることにより製造される。所定箔厚は電解電流とドラム回転速度の設定により得られる。電解銅箔の場合には電着面側(回転ドラム面側)は常に光沢平滑面であるが、電解液面側は粗面の場合と光沢平滑面の場合といずれの場合もある。粗面の場合にはそのまま本発明にも用いることが可能であり、比較的好適に活物質形成面に用いることができる。いずれの銅箔も、その両面に活物質形成する場合には、少なくとも片面の粗面化処理が必要になる。前記の粗面化処理のうち、エッチングでは塩素イオン含有電解液による交流エッチング、めっきではプリント回路用銅箔において従来用いられている硫酸銅系電解液による限界電流密度前後の電流密度を用いた電解銅めっきにより微小銅粒子を生成電着させる粗化処理は特に有効である。
これにより本発明の効果が基本的に得られる。
水素化シリコンまたは、シリコンへの水素基の導入によって、シリコン単体の場合に比較して、柔軟性に優れる構造となり、負極活物質であるシリコンが、充電時にLiイオンを受け入れ合金化する際の体積膨張に対して、シリコン系活物質皮膜(負極活物質皮膜)自体が割れや欠陥を生じてイオンの移動や導電経路が断たれたり、シリコン系活物質皮膜の一部が集電体から脱離したりするのを抑止することができるようになる。特に、2水素化シリコンのSiH2を有すると、シリコンは2配位となるので、構造柔軟性が増加してその効果が増す。また、水素化シリコンは、シリコン系皮膜に不可避的に存在する未結合手(ダングリングボンド)の欠陥を水素終端しているので、不安定なシリコン欠陥の減少に繋がり、前記の導電経路に欠陥が生じるのを抑止する。これに対して、水素化シリコン割合が小さいか、含まないシリコン系皮膜は、緻密で堅い皮膜となるので、本用途には適さず、充放電の繰り返しによる体積変化によって、シリコン系皮膜が破壊され易く、集電体から脱離し易い傾向が認められる。
活物質シリコン系活物質はシリコンを主体とし、前記の水素のほか不可避的に含まれる物質から成り、特に何らかの特性向上効果を生ずる場合のほかは、原則として合金化成分など他の元素は含まないことが望ましい。さらに、水素化シリコンの存在によりシリコンと酸素との結合を抑止するので、結果として充放電時のリチウムイオン侵入脱離におけるリチウムと酸素との結合を抑止し、不可逆容量を小さくすることができ、初回充放電容量が高くなり、充放電繰り返しサイクルを重ねていくに従って生じる容量の低下を小さく抑えることができる。前記集電体基材表面には、このようなシリコン系活物質皮膜が1g/m2〜18g/m2形成される。なお、形成されるシリコン系活物質皮膜の結晶性は問わない。非晶質であっても、多結晶や微結晶のような結晶質であっても、または、これらが混在する形態であっても構わない。いずれのシリコン系活物質皮膜においても、本発明の効果は基本的に同様に得られる。
シリコン系皮膜全体に対する酸素の含有量は1原子%以上50原子%以下が好ましく、充放電効率とサイクル性能やリン濃度との関係から選択される。1原子%未満ではLiイオンの挿入脱離による体積変化抑制効果が認められず、50原子%を超える導入濃度では、シリコン量に対して過剰となり過ぎて、活物質の厚さや体積が増大したり、充放電容量が小さくなったり、或いは酸素とLiイオンとの結合量増加による初期不可逆容量が大きくなったりして、正極とのバランスが崩れて、二次電池とすることができない。
また、他の酸素を導入したシリコン系皮膜の製膜方法として、スパッタリングや酸素を導入した真空蒸着などに拠ることもできる。Siをターゲットとするスパッタリング装置や蒸着装置を用いて、製膜領域の雰囲気をアルゴン(Ar)と酸素(O2)のガス濃度により調整制御することにより、所望の酸素量を含有する反応性スパッタリングSi膜や蒸着膜を形成することができる。さらには、SiOを直接ターゲットとするスパッタリングや蒸着によって、酸素含有割合を制御したSi膜を製膜することも可能である。この場合には、SiOと共にSi単体やSiO2のターゲットも酸素濃度制御のために用いることができる。また、前記の製膜領域における雰囲気の酸素ガス濃度制御を併用することで、さらに微量の酸素濃度含有Si製膜制御が可能となる。
亜鉛は極めて容易に銅に拡散合金化し、銅の酸化、特に高温酸化を防止する耐熱性を付与することができる。その総量は少な過ぎては前記の効果が小さく、多過ぎては銅の集電性を低下させたり、上層皮膜との間に濃化して却って密着性を低下させたりする場合があり、好適には0.003〜0.05g/m2の範囲である。亜鉛は前記のように銅への拡散によって耐熱性を付与するが、上層の活物質層への銅の拡散防止の点で不充分であり、自身拡散せず物理的遮蔽層として機能するニッケルを含有する層を形成することで、集電体成分の銅などを活物質中へ拡散させない耐熱性が達成される。なお、ニッケルと亜鉛皮膜の形成方法は、湿式法や乾式法などの各種の形成方法を用いることが可能であるが、経済性と均一均質皮膜が電解条件によって容易に得られるため、公知の硫酸浴等を用いた電気めっき法が推奨できる。
集電体銅箔原箔1の山状粗面を、新たに粗面化処理をすることなくそのまま集電体基材として用いる。集電体銅箔原箔1の山状粗面は、例えば電解銅箔の電解液面側に形成された粗面が挙げられる。この表面に耐熱性層または耐熱性バリア層と防錆処理層またはシランカップリング処理層2を形成したのち、シリコン系活物質皮膜3が設けられている。
集電体銅箔原箔1の山状粗面に、さらに微細銅粒子4による粗面化処理を施したものを基材として用いる。この表面に耐熱性層または耐熱性バリア層と防錆処理層またはシランカップリング処理層2を形成したのち、シリコン系活物質皮膜3が設けられている。
集電体銅箔原箔5の両面平滑または光沢の片方の面に、さらに微細銅粒子4による粗面化処理を施したものを基材として用いる。集電体銅箔原箔5の両面平滑または光沢の片方の面は、例えば圧延銅箔の面や、電解銅箔の回転ドラム面側の面などが挙げられる。この表面に耐熱性層または耐熱性バリア層と防錆処理層またはシランカップリング処理層2を形成したのち、シリコン系活物質皮膜3が設けられている。
集電体銅箔原箔5の両面平滑または光沢の両方の面に、さらに微細銅粒子4による粗面化処理を施したものを基材として用いる。この両方の粗面化表面に耐熱性層または耐熱性バリア層と防錆処理層またはシランカップリング処理層2をそれぞれ形成したのち、それぞれの面にシリコン系活物質皮膜3が設けられており、図3の片面皮膜構成を両面に構成した形態である。なお、図3、図4では、微細銅粒子4は一層のみ積層して描かれているが、実際に粗面化処理を施すと、微細銅粒子4は複数層に積層することが多い。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。本実施例では図1〜3に説明した片面皮膜構成の本発明例を示すが、これらに限定されることはなく、例えば、片面の皮膜形成処理を両面に施した、図4の両面皮膜形成形態においても同様に実施することができる。
まず、試験評価用の本発明によるシリコン系負極試料と、これに用いる負極集電体、および比較に用いるシリコン系負極試料を以下のように作製した。
集電体銅箔に用いる銅箔原箔(表面処理していない銅箔基体)には、各種厚みの圧延銅箔(日本製箔製)と電解銅箔(古河電工製)を用いた。圧延箔原箔は両面光沢タイプ12μmを、電解箔原箔は両面光沢タイプの12μm、並びに片面光沢タイプ12μmと18μmを使用した。これらの原箔の表面を粗面化する場合には、プリント回路用途銅箔において公知の硫酸銅系水溶液を用いた銅めっきである(a)銅微粒子成長めっき(限界電流密度以上か、それに近い高電流密度で行う、いわゆる焼けめっき)と(b)通常の銅平滑状めっき(付与微粒子が脱落しないように限界電流密度未満で行う、一般の銅めっき)、による粗化処理を行った。また、耐熱性層を設ける処理例として、(c)公知の硫酸ニッケル系めっき液を用いたニッケルめっき、または(d)公知の硫酸亜鉛系めっき液による亜鉛めっきを実施し、複層の場合にはニッケルめっき後に亜鉛めっきを行った。他方、耐熱性バリア皮膜を形成する例として複層を形成する場合には、亜鉛めっき後にニッケルめっきを行った。さらに、防錆処理には(e)ベンゾトリアゾール水溶液への浸漬か、(f)三酸化クロム水溶液中での電解を用い、密着向上処理には(g)シランカップリング剤水溶液への浸漬処理とした。これらの銅箔を集電体として用いるため、シリコン系活物質を製膜する前に3ヶ月間室内保管をした。なお、これら集電体用銅箔の180℃に5分間保持しての伸び率をテンシロン試験機による引張試験にて測定し、表面粗さRzをJIS B0601(1994年版)に従った触針式粗さ試験機(小坂研究所製)にて測定した。耐熱性層のニッケルと亜鉛量は、単位面積当たりの試料表面皮膜を溶解した水溶液をICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析することにより測定した。
シリコン系活物質皮膜の製膜を、下記(h)〜(l)の方法により実施し、実施例1〜52、比較例1〜14とした。シリコンの製膜は、予め求めた製膜速度に基づいた製膜厚さと製膜時間の関係から各試料に付き、所定時間製膜を行い、製膜後にサンプル断面のSEM(走査型電子顕微鏡)像観察から確認を行った。また、シリコンの製膜前後での単位面積当たりの質量測定から、負極活物質であるシリコン製膜量を求めた。製膜したシリコン系皮膜は、まず、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いた赤外吸収スペクトル分析から水素の結合状態分析を行い、次いで、SIMS(2次イオン質量分析法)により水素濃度を測定した。以上の、まず(ア)耐熱性層としてニッケルめっき後に亜鉛めっきを形成した実施例を含む一連について、各試料に用いた集電体銅箔の仕様を表1に、また製膜前の室内保管後の外観異常と製膜仕様を表2に、それぞれ後掲した。次に(イ)耐熱性バリア皮膜形成実施例について述べる一連に付き、同様に各仕様を表4に、室内保管後の外観異常と製膜仕様を表5に、それぞれ後掲した。実施例12の製膜条件により製膜厚さを変えた実施例53〜55を作製したのち、下記(m)の方法により酸素を導入した。後掲の試験評価結果と共に表7に示した。シリコン系活物質へ含有させたリンや酸素は前記のICP分析に拠った。
(f)防錆処理2:70g/dm3三酸化クロム水溶液、pH12、1C/dm3、カソード電解
(g)シランカップリング処理:クリロキシ系シランカップリング剤(信越化学製)4g/dm3水溶液への浸漬
(i)シリコン製膜法2:シャワーヘッド構造のプラズマ電極を備えた平行平板型CVD(PECVD)装置(放電周波数60MHz)により、集電体温度200℃、水素希釈比=0のシランガス100sccm単独供給濃度を標準条件として、前記同様に水素希釈比を変えて製膜した。
(j)シリコン製膜法3:EB(電子ビーム)ガンとシリコン蒸発源を備えた蒸着装置(アルバック社製)により、高純度シリコン原料をEBにより200W加熱昇華させて集電体上に堆積させた。ここでは、水素ガス供給等による水素存在雰囲気とはしなかった。
(k)シリコン製膜法4:高純度シリコン原料、スパッタカソードを備えたスパッタリング装置(アルバック社製)により、アルゴンガス(スパッタガス)80sccm、高周波出力1kWにて集電体上に付着形成させた。
(l)シリコン製膜法5:高純度シリコン原料、抵抗加熱源を備えた真空蒸着装置(アルバック社製)により、原料を抵抗加熱溶融揮発させて製膜させた。
次に、前記のように作製した、本発明によるシリコン系負極試料、および比較に用いるシリコン系負極試料の試験評価を、次のように実施した。
前記の負極試料を20mm径に打ち抜き、これを試験極とし、リチウム箔を対極と参照極に用いた3極式セルを、非水溶媒電解液に、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を3:7の容量比の溶媒に、1Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた電解液を用いて、湿度7%以下の乾燥雰囲気25℃に密閉セルとして組み立てた。但し、一部の実施例では、フッ素をその化学構造に含む非水溶媒である、フルオロエチレンカーボネート(FEC)とメチルトリフルオロエチルカーボネート(MFEC)を1:3の容量比を有する溶媒を用いた。初回充電処理は、0.1Cレート定電流で、リチウムの酸化還元電位を基準として+0.02Vの電位まで行い、このとき得られた初回充電容量を各試料に付き試験測定し、活物質シリコンの単位質量当たりに換算した。これに続く、初回放電処理には、0.1Cレート定電流で、前記の同じリチウム電位基準に対して1.5Vまで放電させ、同様にその初回放電容量をそれぞれに付き測定し、シリコン単位質量当たりに換算した。また、先に測定しておいたシリコン活物質の製膜質量と放電電流量から、初回の実放電容量値を求めた。初回充放電処理終了後に、充放電レートを0.2Cとして、前記の初回充放電処理の各終了電位まで、充放電を繰り返すサイクルを50回実施した。50サイクル終了時の放電容量をそれぞれの試料に付き求め、単位質量当たりに換算した。以上の、初回の充放電容量と実放電容量値、並びに50サイクル後の放電容量値を、(ア)耐熱性層を含む一連の試料については表3に、(イ)耐熱性バリア皮膜については表6に、それぞれ後掲して示した。実施例5、12、53〜55のサンプルについては、充電容量を1000mAh/gに規制して、前記同様に放電させる容量規制による充放電サイクル試験を1千サイクル実施して、表7に示した。
2 耐熱性層または耐熱性バリア層と防錆処理層またはシランカップリング処理層
3 シリコン系活物質皮膜
4 粗化処理により付着した銅系微細粒子
5 集電体銅箔基材(両面平滑箔または光沢箔)
Claims (14)
- 日本工業規格で規定される表面粗さRz(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)が1μm以上の粗面を有する銅箔を用いた集電体基材の前記粗面上に、シリコン系の活物質皮膜が形成されている、非水溶媒電解液2次電池用負極であって、
前記集電体基材の片面または両面の粗面上に、1g/m2〜18g/m2のシリコン系活物質皮膜が形成され、
前記活物質皮膜は、水素化シリコンを含み、前記活物質皮膜全体に対する水素含有量が0.1原子%以上30原子%以下であることを特徴とする非水溶媒電解液2次電池用負極。 - 前記集電体基材と前記シリコン系活物質皮膜との間、または前記シリコン系活物質皮膜上層の少なくとも一方に、
リンまたはボロンを含有するシリコン層が1層以上形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の2次電池用負極。 - 前記シリコン系活物質皮膜は、リンを含み、
前記活物質皮膜全体に対するリンの含有量が0.1原子%以上30原子%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の2次電池用負極。 - 前記シリコン系活物質皮膜は、さらに酸素を含み、
前記活物質皮膜全体に対する酸素の含有量が1原子%以上50原子%以下であることを特徴とする請求項3に記載の2次電池用負極。 - 前記集電体基材の活物質皮膜形成面上に、ニッケルを0.01〜0.5g/m2含有する層または亜鉛を0.001〜0.1g/m2含有する層の少なくとも一方が形成された耐熱性層または耐熱性バリア皮膜を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池用負極。
- さらに前記耐熱性層または前記耐熱性バリア皮膜の上層に防錆層および/またはシランカップリング処理層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の2次電池用負極。
- 前記耐熱性層または前記耐熱性バリア皮膜における前記亜鉛が単層亜鉛として存在することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の2次電池用負極。
- 前記耐熱性層または前記耐熱性バリア皮膜における前記亜鉛が集電体基材またはニッケル層に拡散していることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の2次電池用負極。
- 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の2次電池用負極に用いられ、日本工業規格で規定される表面粗さRz(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)が1μm以上の粗面を有することを特徴とする電極用銅箔。
- 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の負極を用いたことを特徴とする非水溶媒電解液を用いた2次電池。
- 前記非水溶媒電解液が、フッ素を含む非水溶媒を含有することを特徴とする請求項10に記載の2次電池。
- 日本工業規格で規定される表面粗さRz(JIS B0601−1994 十点平均粗さ)が1μm以上の粗面を有する銅箔を用い、温度180℃における伸び率が5%以上である前記集電体基材を、供給濃度比[H2]/[SiH4]が0〜100の範囲内でシランガスと水素ガスが供給される製膜室内に連続的に導入する工程と、
前記集電体基材の温度を100℃〜350℃の範囲内に保持したCVD法によって、連続的に導入した前記集電体基材の片面または両面に、連続的に0.1原子%以上30原子%以下の水素を含有するシリコン系活物質層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする非水溶媒電解液2次電池用負極の製造方法。 - 前記CVD法において、さらにフォスフィンガスを連続供給し、
シリコン系活物質を形成する前記工程において、リンを含有するシリコン系活物質皮膜を形成することを特徴とする請求項12に記載の2次電池用負極の製造方法。 - シリコン系活物質被膜を形成する前記工程の後、大気酸化または熱処理により前記シリコン系活物質皮膜に酸素を導入する工程をさらに具備することを特徴とする請求項12または請求項13に記載の2次電池用負極の製造方法。
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